説明

特にミシン/刺繍機のためのインクジェット印刷ヘッド、前記インクジェット印刷ヘッドを作製する方法、および糸を着色する方法

支持構造物(10)と、前記支持構造物(10)に具備された複数の発射セル(11)であって、ミシン/刺繍機(2)で使用される糸(4)を着色するために、各発射セル(11)は各噴射口(12)を介してインクを噴出するようになっている、複数の発射セル(11)と、前記糸(4)を前記噴射口(12)に対向している位置に案内するために、前記支持構造物(10)上に設けられた案内要素(20)とを含む、特にミシン/刺繍機のためのインクジェット印刷ヘッド。また、前記印刷ヘッドと前記印刷ヘッドを作製する方法とを含めて、ミシン/刺繍機が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン/刺繍機のためのインクジェット印刷ヘッドに関する。
【0002】
本発明はまた、糸が縫製および/または刺繍に使用される前に同糸を着色するためのインクジェット印刷ヘッドを設けられているミシン/刺繍機に関する。
【0003】
本発明はまた、ミシン/刺繍機で使用するためのインクジェット印刷ヘッドを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
既知である通り、現況技術は、糸が縫製および/または刺繍に使用される前に同糸を着色するインクジェット印刷ヘッドを設けられているミシン/刺繍機を含む。
【0005】
さらに詳細には、そのような機械は、糸が周囲に巻き付けられている糸巻きと、糸が供給されかつ糸がインクジェット印刷ヘッドを通過して着色される印刷部位と、糸が例えば織物製品などの所定の製品を縫製し刺繍するために使用されるのに適切であるように、着色された糸が加熱され乾燥させられる乾燥部位と、前記製品が正確に配置され、前記糸を用いて縫製されかつ/または刺繍される、動作部位とを具備する。
【0006】
文献米国特許第6,189,989号が、インクジェットヘッドから糸上にインクを放出することにより刺繍用糸を染色する部位を有するインクジェット印刷装置を開示している。印刷制御装置は、糸とインクジェットヘッドとの相対運動の速度に基づいて、単位時間当たりの糸上に放出されるインク量を制御する。また、インクジェット印刷ユニットと刺繍機の刺繍針の先端との間の、単位時間当たりの使用不可能な糸の長さが考慮される。
【0007】
現況技術による機械に見られる欠点は、噴出用噴射口に対する糸の不正確な整列に関するものである。
【0008】
実際には、前述の糸巻きから解かれた後、糸は、一般に、糸巻きと印刷部位との間に取り付けられている第1の滑車により案内される。
【0009】
次に、着色され乾燥された後、糸は、裁縫部材/刺繍部材に供給する第2の滑車により案内される。
【0010】
換言すれば、糸と噴射口との間の相対位置は、言及した第1の滑車と第2の滑車とにより画定される。
【0011】
第1の滑車と第2の滑車との間の距離が約30cmである場合、印刷ヘッドに対する(詳細には噴射口に対する)滑車の位置における最小誤差または最小公差によっても、糸が噴射口の正面に正確に配置されないことを、出願人は指摘している。
【0012】
さらに、機械の印刷ヘッドおよび印刷ヘッドを印刷位置に持ってくる作動部材の位置に関する、印刷ヘッドの組立て時の不可避の公差が、噴射口に対する糸のずれの一因となる。
【0013】
そのような不正確な相互配置により、糸の着色が不均一かつ非均質になり、縫製および刺繍後に得られる最終製品の質が低下する。
【0014】
例として、機械の骨組みに対する第1の滑車の配置の公差は約±1mmであり、印刷ヘッド上の噴射口の位置の公差は約±0.05mmであり、往復台支持体(carriage support)に対する印刷ヘッドの配置の公差は約±0.1mmであり、機械の骨組みに対する往復台支持体の配置の公差は約±0.25mmであり、機械の骨組みに対する第2の滑車の配置の公差は約±1mmである。
【0015】
したがって、最悪の場合、噴射口に対する糸のずれは約±1.4mmである。
【0016】
出願人は、付加的な案内要素が、印刷ヘッドを支持しかつ印刷ヘッドがその機能中にそれに対して定期的に移動する往復台上に取り付けられているという、可能性のある解決策を見出した。
【0017】
この解決策では、糸と噴射口との間の最大のずれは低減するが、そのずれは依然として受け入れ難い。
【0018】
実際には、機械の骨組みと支持往復台との間の公差は±0.25mmであり、支持往復台とその上に取り付けられている印刷ヘッドとの間の公差は±0.1mmであり、印刷ヘッドと噴射口との間の公差は±0.05mmであり、印刷ヘッドと支持往復台上に取り付けられている案内要素との間の公差は±0.05mmであり、第2の滑車と機械の骨組みとの間の公差は±1mmであることを考慮して、第1の滑車と第2の滑車との間の距離が25cmであり、第1の滑車と第1の噴射口との間の距離が10cmであり、第1の噴射口と最後の噴射口との間の距離が11cmである場合に、以下
【0019】
【数1】

の結果が得られ、最大のずれは、
0.05+0.05+0.12=±0.22mm
に実質的に等しい。
【0020】
別の可能性のある解決策が、インクジェットユニットの数および/または噴射口の数を増加させることであると考えられ、その結果、より大きな噴出領域が得られ、糸へのインク供給の可能性が相応に増大する。
【0021】
しかし、そのような解決策は、例えば使用される構成要素数の増加(1つの印刷ヘッドの代わりに2つの印刷ヘッド)、実際には噴出されたインクのごく一部しか糸によって受け止められないので、浪費される大量のインク、噴射されるインク量を増加させるためにより多数の発射セル(firing cell)が作動されなければならないので、エネルギー消費の増大などの受け入れ難い欠点を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
付加的な案内要素を使用することにより、噴出用噴射口に対する糸の位置は非常に正確な方法で画定されることが可能であり、それにより上記の問題を解決し、言及した欠点を克服することを、出願人は指摘している。
【0023】
さらに詳細には、案内要素は、印刷ヘッドと少なくとも部分的に実質的に一体であるように、同印刷ヘッド上に設けられている。
【0024】
同様に、第1の滑車および第2の滑車の位置に関係なく、糸は、噴出用噴射口に対向する位置に正確に案内される。
【0025】
第1の態様によれば、本発明は、特に、
− 支持構造物と、
− 前記支持構造物に具備されている複数の発射セルであり、ミシン/刺繍機で使用される糸を着色するために、各発射セルは各噴射口を介してインクを噴出するようになされている、複数の発射セルと、
− 前記糸を前記噴射口に対向する位置に案内するために、前記支持構造物上に設けられている案内要素と、
を含むミシン/刺繍機のためのインクジェット印刷ヘッドに関する。
【0026】
好ましくは、案内要素は、噴射口が作製されている板状要素に略平行でかつ糸の整列方向に略垂直な第1の方向の、かつ前記板状要素に略垂直な第2の方向の、糸の位置を画定する。
【0027】
同様に、噴射口との整列および噴射口からの距離の両方が、前記案内要素により画定される。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、
− 少なくとも糸を供給する供給部材と、
− 前記糸を受容し同糸を着色するようになされている印刷部位と、
− 印刷部位により供給された着色された糸が乾燥される、乾燥部位と、
− 前記糸は所定の製品を縫製しかつ/または刺繍するために使用される、動作部位と、
を含み、
前記印刷部位は、上記のインクジェット印刷ヘッドを含む、
縫製および/または刺繍のための機械に関する。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、
− 複数の発射セルを具備する支持構造物を設けるステップであり、各発射セルは、ミシン/刺繍機に使用される糸を着色するために、各噴射口を介してインクを噴出するようになされている、設けるステップと、
− 前記糸を前記噴射口に対向する位置に案内するために、前記支持構造物上に案内要素を設けるステップと
を含む、ミシン/刺繍機に使用するためのインクジェット印刷ヘッドを作製する方法に関する。
【0030】
好ましくは、本方法は、以下の
− 前記支持構造物上の最初の位置に前記案内要素を取り付けるステップであり、前記案内要素は、前記印刷ヘッドが使用中である場合に各々が前記糸の各位置に対応している前記支持構造物上の2つ以上の位置で移動可能である、取り付けるステップと、
− 前記噴射口に対する前記案内要素の目標位置を画定するステップと、
− 前記案内要素の現在位置を検出するステップと、
− 前記噴射口の位置を検出するステップと、
− 前記案内要素の位置を前記噴射口の位置と比較するステップと、
− 前記案内要素を前記目標位置に配置するために、前記比較次第で前記案内要素を移動させるステップと、
をさらに含む。
【0031】
案内要素がその目標位置にある場合、同案内要素は、支持構造物に固定されている。
【0032】
前述の例を参照すると、付加的な案内要素が印刷ヘッドの支持構造物と共成形されている場合、糸と噴射口との間の最大のずれは、以下の原因
印刷ヘッドと噴射口との間の公差である±0.05mm、
印刷ヘッドと案内要素との間の公差である±0.02mm、
第2の滑車と機械の骨組みとの間の公差である±1mm
により決定される。
【0033】
したがって、
(1/250)・(7+11)=±0.07mm
であり、最大のずれは、
0.05+0.01+0.07=±0.13mm
に実質的に等しい。
【0034】
付加的な案内要素が、印刷ヘッドの構造物に固定される前に調整される場合、最大のずれは、
(1/250)・(7+11)=±0.07mm
に制限され、それにより、糸と噴射口との間の整列において著しい向上が得られる。
【0035】
さらに別の態様によれば、本発明は、
− ミシン/刺繍機に具備されている印刷部位に糸を供給するステップであり、前記印刷部位には、複数の噴射口を具備する支持構造物を含むインクジェット印刷ヘッドが設けられている、供給するステップと、
− 前記支持構造物上に設けられている案内要素を介して、前記糸を前記噴射口に対向する位置に案内するステップと、
− 前記糸を着色するために、前記噴射口を介してインクを噴出するステップと
を含む、ミシン/刺繍機で使用される糸を着色する方法に関する。
【0036】
さらなる特徴および利点が、本発明の好適であるが非排他的な実施形態のより詳細な説明からさらに明らかになるであろう。本説明は、非限定的な例として与えられている添付図面を参照して、本明細書以下に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による印刷ヘッドが使用されている縫製/刺繍のための機械の概略ブロック図である。
【図2】本発明による印刷ヘッドの第1の実施形態の概略斜視図である。
【図3】図2の印刷ヘッドの概略底面図である。
【図4】本発明による印刷ヘッドの第2の実施形態の概略斜視図である。
【図5】図4の印刷ヘッドの概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面を参照すると、本発明によるインクジェット印刷ヘッドは、全般的に1で示されている。
【0039】
インクジェット印刷ヘッド1は、ミシン/刺繍機2に具備されている。
【0040】
図1に概略的に示されている通り、機械2は、機械2に具備されているその他の部材に糸4を供給するようになされている供給部材3を具備する。
【0041】
例えば、供給部材3は、糸4が周囲に巻き付けられている糸巻きとして実現されることが可能である。
【0042】
糸は、例えばポリエステル糸であるが、他の織物材料もまた糸として可能である。
【0043】
供給部材3は、印刷部位5に糸4を供給し、そこには印刷ヘッド1が配置されている。
【0044】
印刷ヘッド1は、糸4を着色するために、同4上にインクを噴出する。
【0045】
機械2は乾燥部位6をさらに含み、そこでは、同糸が例えば織物製品などの所定の製品を縫製するかまたは刺繍するために使用されるのに適しているように、好ましくは加熱することにより着色された糸が乾燥される。
【0046】
機械2は動作部位7をさらに含み、そこでは、前記製品は正確に配置され、前記糸4を用いて縫製されるかつ/または刺繍される。
【0047】
このように、糸4は、好ましくは供給部材3、印刷部位5、乾燥部位6、および動作部位7の連続により画定される前進方向Dを有する。
【0048】
さらに詳細には、印刷ヘッド1(図2〜図5)は、支持構造物10を含み、その支持構造物は、略平行6面体箱構造の形態であり得る。支持構造物10は、複数の発射セル11を具備し、各発射セル11は、糸4を着色するために、各噴射口12を介してインクを噴出するようになされている。
【0049】
好ましくは、噴射口12は、支持構造物10と一体である板状要素13に作製されており、詳細には、噴射口12は、前記板状要素13に作製されている貫通孔である。
【0050】
各発射セル11は、噴出されるインクを受容するために、インク容器に水圧で接続されている。
【0051】
各発射セル11にはまた、適切な電流により正確に加熱された場合に泡を形成させインク液滴を噴出する各抵抗器が設けられている。
【0052】
好ましくは、印刷ヘッド1は、発射セル11を選択的に作動させる制御回路(図示せず)をさらに含み、詳細には、制御回路は、発射セル11の抵抗器を加熱するための点火電流命令を生成する。
【0053】
有利に、印刷ヘッド1は、糸4を上記の噴射口12に対向する位置に案内するために、支持構造物10上に設けられている案内要素20をさらに含む。
【0054】
案内要素20は、噴射口12に対する糸4の位置を画定する。
【0055】
詳細には、案内要素20は、板状要素13に略平行なかつ糸の整列方向に略垂直な第1の方向Xに沿って、前記板状要素13に対して横断するかつ好ましくは略垂直な第2の方向Yに沿って、糸4の位置を画定する。
【0056】
図2〜図5に概略的に示されている通り、案内要素20は、第1の方向Xの糸4の位置を画定する第1の部分21と、第2の方向Yの糸4の位置を画定する第2の部分22とを含む。
【0057】
好ましくは、第1の部分21は、板状要素13に対して横断するかつ詳細には垂直な主長手方向Lを有する。
【0058】
好ましくは、第2の部分22は、板状要素13に対して略平行なかつ好ましくは糸の整列方向に略垂直な主長手方向Kを有する。
【0059】
例えば、案内要素20の第2の部分22は、0.5mmと1.5mmとの間に含まれ得る噴射口12からの糸4の距離を画定する。
【0060】
好ましくは、案内要素20は、糸4の前進方向Dに従って噴射口12の前方にあるように、支持構造物10上に設けられている。
【0061】
換言すれば、供給部材3により供給される糸4は、同糸4が噴射口12に対向する前に案内要素20により案内される。
【0062】
したがって、案内要素4は、噴射口12に対する糸4の位置を正確に画定することができる。
【0063】
好ましくは、噴射口12は、そのような配置が対称軸Sを有するように、板状要素13上に配置されている。
【0064】
好ましくは、対称軸Sは、糸4がそれに沿って整列されるべきである経路を画定する。
【0065】
好ましくは、案内要素20の第1の部分21は、噴射口12の対称軸Sに対して左右対称に配置されていない。
【0066】
同様に、第1の部分21の外面の一部により案内されている糸4が前記対称軸Sに沿って正確に配置され得るように、第1の部分21の外面のそのような部分が、対称軸Sに実質的に整列されている(実質的に接している)。
【0067】
噴射口12に対する糸4のそのような位置により、同糸4の正確かつ効率的な着色が可能になる。
【0068】
好ましくは、案内要素20は、支持構造物10と少なくとも部分的に一体であり、詳細には、案内要素20は、支持構造物10と完全に一体であり得る。
【0069】
好ましくは、案内要素20は、板状要素13と一体である。
【0070】
図2〜図3は、案内要素20の第1の実施形態を概略的に示す。
【0071】
第1の実施形態では、案内要素20は、支持構造物10と完全に一体であり、好ましくは、支持構造物10と案内要素20とは共成形される。
【0072】
第1の実施形態では、案内要素20は、好ましくは「L」字形状である。
【0073】
「L」字形状の垂直部分は、案内要素20の第1の部分21、すなわち板状要素13に平行な方向Xの糸4の位置を画定する部分を構成する。好ましくは、第1の部分21は、板状要素13に垂直である。
【0074】
「L」字形状の水平部分は、第2の部分22を構成し、その部分は、板状要素13に垂直な方向Yに従った糸の位置を画定する。
【0075】
好ましくは、第2の部分22は、板状要素13に平行である。
【0076】
第2の部分22は、噴射口12と糸4との間の正確な距離を画定する楔部を構成することができる。
【0077】
好ましくは、第1の実施形態では、支持構造物10と案内要素20とは、例えばポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスルホン(PSU)、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリブチレンテレフタレートを配合したテレフタル酸ポリエチレン(PET+PBT)等などの同一材料で作製される。
【0078】
図4〜図5は、案内要素20の第2の実施形態を概略的に示す。
【0079】
第2の実施形態では、案内要素20の第1の部分21は、板状基部23と、基部23上に偏心して取り付けられておりかつ基部23と一体であるピン24とを含む。
【0080】
好ましくは、板状基部23は、略六角形の外周を有する。
【0081】
第2の実施形態では、第1の部分21は、好ましくは支持構造物10とは異なる材料で作製されている。
【0082】
支持構造物10は、例えばポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスルホン(PSU)、テレフタル酸ポリエチレン(PET)、ポリブチレンテレフタレートと配合したテレフタル酸ポリエチレン(PET+PBT)等で作製されることが可能である。
【0083】
案内要素20の第1の部分21は、例えばガラス繊維と配合したポリフェニレンオキシド(PPO)(PPO+GF)、ポリブチレンテレフタレートおよびガラス繊維と配合したテレフタル酸ポリエチレン(PET+PBT+GF)等で作製されることが可能である。
【0084】
第1の部分21は、例えば超音波溶接により、または第1の部分21と支持構造物10との間に適切に間置されている粘着性物質により、支持構造物10に固定され得る。
【0085】
支持構造物10と案内の第1の部分21とに2つの異なる材料を使用して、要素20は、同案内要素20上でのその滑動中の糸の動作に起因する損耗に対する抵抗に関して、利点を達成することができることに留意すべきである。
【0086】
実際には、支持構造物10が作製される材料は、主として、浸食特徴を有する可能性があるインクに接触することに抵抗しなければならない。
【0087】
案内要素20に異なる材料が使用された場合、滑動する糸の動作に対する抵抗に重大な懸念が寄せられる可能性がある。
【0088】
さらに、第1の部分21が支持構造物10に超音波溶接されていない場合、超音波溶接との適合性に関して制約がないので、第1の部分21の材料の選択においてより多くの可能性が得られる。
【0089】
第2の実施形態では、第2の部分22は、噴射口12に対して第1の部分21と同じ側に、支持構造物10上に取り付けられているかまたはそれに固定されている楔部として実現され得る。
【0090】
詳細には、楔部は、噴射口12と案内要素20の第1の部分21との間に間置されることが可能である。
【0091】
前述の通り、本発明はまた、インクジェット印刷ヘッド1を作製する方法に関する。
【0092】
一般に、そのような方法は、以下の
− 支持構造物10を設けるステップと、
− 発射セル11を支持構造物10上に取り付けるステップと、
− 糸4を噴射口12に対向する位置に案内するために、案内要素20を支持構造物10上に取り付けるステップと
を含む。
【0093】
詳細には、案内要素20の第2の実施形態を参照すると、支持構造物10と案内要素20の第1の部分21とは、最初は分離されている。
【0094】
次に、本方法は、好ましくは、案内要素20の第1の部分21を支持構造物10上の最初の位置に取り付けるステップを含む。
【0095】
換言すれば、ピン24に対して板状基部23の反対側上に延出する第1の部分21の突出部は、支持構造物10の座部内に挿入される。
【0096】
このように、案内要素20の第1の部分21は、ピン24および突出部の長手方向延長部により画定される軸を中心に回転することができるので、案内要素20の第1の部分21は、支持構造物10上の多数の異なる位置に移動可能である。
【0097】
ピン24は、板状基部23上に偏心して配置されているので、支持構造物10上の第1の部分21の各位置は、機械の使用中に噴射口12に対する糸4の各位置に対応することに留意すべきである。
【0098】
目標位置が前記案内要素20のために決定され、その位置は、噴射口12の対称軸Sと実質的に揃えられている糸の配置に対応する。
【0099】
換言すれば、糸が正確に効率的に着色され得るように、糸が噴射口12の対称軸Sに沿って配置されることが望ましい。
【0100】
次に、光学系により、噴射口12に対する案内要素20の現在位置が判定される。
【0101】
仮想の糸が噴射口配置の対称軸Sに沿って配置されているように、案内要素20が正確に配置されている場合、すなわち、案内要素20が目標位置にある場合、案内要素20の第1の部分21の位置は正しく、支持構造物10に固定されればよいだけのことである。
【0102】
前記案内要素20により案内される仮想の糸が噴射口配置の対称軸Sと揃えられていないように、案内要素20が正確に配置されていない場合、すなわち、案内要素20が目標位置にない場合、案内要素20の位置を相応に変更し同案内要素20を目標位置に到達させるために、案内要素20の第1の部分21は移動させられる。
【0103】
好ましくは、上記の光学系は電子ユニットに接続されており、その電子ユニットは、光学系により供給された情報を処理し、案内要素の現在位置を目標位置と比較する。
【0104】
好ましくは、電子ユニットは、前記比較に基づいて、案内要素20の第1の部分21を移動させる電機機械作動装置を駆動するようになされており、その結果、同案内要素20は、目標位置に到達することができる。
【0105】
実際には、電機機械作動装置は、第1の部分21を正しい位置に回転させるために、板状基部23の六角形の外周に係合するようになされている動作工具を含む。
【0106】
有利に、支持構造物10および板状基部23には、光学系にそれらの位置を画定させかつ必要であれば第1の部分21の位置を正しく変更するために、例えばマーキングキャビティ(marking cavity)などのマーキング部(marking portion)25が設けられている。
【0107】
好ましくは、案内要素20が設けられているので、糸4と噴射口20との間の最大のずれは、±0.13mmより小さく、より好ましくは±0.07mmより小さい。
【0108】
案内要素20、および特に第1の部分21が、案内要素20がその目標位置にあるような位置に配置された後、同第1の部分21は支持構造物10に固定される。
【0109】
固定するステップは、(例えばエポキシ樹脂(Ecobond E3200、DELO VE43309、DELO monopox)、アクリル樹脂等などの接着性物質により実施されることが可能であり、詳細には、接着性物質は、板状基部23と支持構造物10との間に間置され得る。接着性物質はまた、突出部が中に挿入される前に座部を部分的に満たす。
【0110】
接着性物質は、数秒間、第1の部分21の変更を可能にし、次いで、同第1の部分21を支持構造物10に固定する。
【0111】
代替案として、第1の部分21を支持構造物10に固定するのに超音波溶接が使用され得る。
【0112】
両実施形態において、案内要素20の第1の部分21は、糸4を機械2から除去することなく印刷ヘッド1を移動させるために、片側すなわち例えば図3の下向き側または図5の上向き側)上でのみ、糸4に係合することに留意すべきである。
【0113】
実際には、印刷ヘッド1は、交換されなければならない場合、一日の終わりに蒸発防止非動作位置に配置されなければならない場合に、その動作位置から遠ざけられる必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にミシン/刺繍機のためのインクジェット印刷ヘッドにおいて、
支持構造物(10)と、
前記支持構造物(10)に具備された複数の発射セル(11)であって、ミシン/刺繍機(2)で使用される糸(4)を着色するために、各発射セル(11)は各噴射口(12)を介してインクを噴出するようになっている、複数の発射セルと、
前記糸(4)を前記噴射口(12)に対向する位置に案内するために、前記支持構造物(10)上に設けられた案内要素(20)とを含む、印刷ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記支持構造物(10)は、前記噴射口(12)が作製されている板状要素(13)を含み、前記案内要素(20)は、前記板状要素(13)に平行なかつ糸の整列方向に垂直な第1の方向(X)、および前記板状要素(13)に対して横断する第2の方向(Y)に沿って前記糸(4)の位置を画定する、印刷ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記案内要素(20)は、前記第1の方向(X)の前記糸(4)の前記位置を画定する第1の部分(21)と、前記第2の方向(Y)の前記糸(4)の前記位置を画定する第2の部分(22)とを含む、印刷ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記案内要素(20)は、前記支持構造物(10)と少なくとも部分的に一体である、印刷ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷ヘッドにおいて、前記噴射口(12)は、噴射口(12)の配置が、前記糸が前記噴射口(12)の正面で移動させられる方向を実質的に画定する対称軸(S)を有するように配置された、印刷ヘッド。
【請求項6】
請求項3または5に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記印刷ヘッド(1)が使用中である場合、前記案内要素(20)の前記第1の部分(21)は、前記対称軸(S)に対して左右対称に配置されていない、印刷ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記第1の部分(21)は、
板状基部(23)と、
前記板状基部(23)上に偏心して取り付けられておりかつ同前記板状基部(23)と一体であるピン(24)とを含む、印刷ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷ヘッドにおいて、
少なくとも前記第1の部分(21)は、前記支持構造物(10)とは異なる材料で作製された、印刷ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記案内要素(20)は、前記支持構造物(10)の少なくとも一部と完全に一体である、印刷ヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記案内要素(20)は、略L字形状である、印刷ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の印刷ヘッドにおいて、
前記案内要素(20)は、前記糸(4)の前進方向(D)に従って前記噴射口(12)の前方にあるように前記支持構造物(10)上に設けられた、印刷ヘッド。
【請求項12】
ミシン/刺繍機に使用するためのインクジェット印刷ヘッドを作製する方法において、
複数の発射セル(11)を具備する支持構造物(10)を設けるステップであって、各発射セル(11)は、ミシン/刺繍機(2)に使用される糸(4)を着色するために、各噴射口(12)を介してインクを噴出するようになされている、ステップと、
前記糸(4)を前記噴射口(12)に対向する位置に案内するために、前記支持構造物(10)上に案内要素(20)を設けるステップとを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
前記支持構造物(10)上の最初の位置に前記案内要素(20)を取り付けるステップであって、前記案内要素(20)は、前記印刷ヘッド(1)が使用中である場合に各々が前記糸(4)の各位置に対応している前記支持構造物(10)上の2つ以上の位置で移動可能である、ステップと、
前記噴射口(12)に対する前記案内要素(20)の目標位置を画定するステップと、
前記案内要素(20)の現在位置を検出するステップと、
前記噴射口(12)の位置を検出するステップと、
前記案内要素(20)の前記位置を前記噴射口(12)の前記位置と比較するステップと、
前記案内要素(20)を前記目標位置に配置するために、前記比較次第で前記案内要素(20)を移動させるステップとを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
前記案内要素(20)は実質的に前記目標位置にあることを確認するステップと、
前記案内要素(20)を前記支持構造物(10)に固定するステップとを含む、方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の方法において、
前記案内要素(20)は、前記噴射口(12)が作製された板状要素(13)に平行な第1の方向(X)の前記糸の位置を決定する少なくとも第1の部分(21)を含み、
前記第1の部分(21)は、前記支持構造物(10)に対して偏心して回転可能であり、
前記案内要素(20)を移動させる前記ステップは、前記案内要素(20)の前記第1の部分(21)を偏心して回転させるステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記第1の部分(21)は、前記板状要素(13)に略垂直な回転軸を有する、方法。
【請求項17】
ミシン/刺繍機で使用される糸を着色する方法において、
ミシン/刺繍機(2)に具備されている印刷部位(5)に糸(4)を供給するステップであって、前記印刷部位(5)には、複数の噴射口(12)を具備する支持構造物(10)を含むインクジェット印刷ヘッド(1)が設けられた、ステップと、
前記支持構造物(10)上に設けられた案内要素(20)を介して、前記糸(4)を前記噴射口(12)に対向する位置に案内するステップと、
前記糸(4)を着色するために、前記噴射口(12)を介してインクを噴出するステップとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513817(P2012−513817A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542980(P2011−542980)
【出願日】平成20年12月30日(2008.12.30)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000811
【国際公開番号】WO2010/076823
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(503148270)テレコム・イタリア・エッセ・ピー・アー (87)
【Fターム(参考)】