説明

特に医薬に使用するための新規な多機能ペプチダーゼインヒビター

本発明は、一般式(1)の化合物またはその有機酸および/もしくは無機酸との酸付加塩;ならびに医薬における一般式(1)の化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼならびに(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼを協調的に阻害し得る新規な物質および化合物(「デュアルインヒビター」)に関する。また、この新規な物質は、酵素(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼまたは(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼを個々に阻害することもできるもの(「単独インヒビター」)である。さらに、本発明は、DPIVおよびAPNの該新規な二重インヒビターの調製方法に関する。また、本発明は、医薬に使用するための上記の新規な化合物に関する。さらに、本発明は、自己免疫疾患、過剰な免疫応答を示す疾患および/または炎症発生を有する疾患、神経疾患および脳損傷、腫瘍疾患、皮膚疾患、I型糖尿病ならびにSARSの予防および治療のため、ならびにこれらの予防および治療のための医薬の製造のための上記のデュアルインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV,CD26,EC3.4.14.5)は、遍在的に存在し、プロリンの後、および程度は低いがアラニンの後、または制限を伴うが、さらに、N末端の第2位のセリン、スレオニン、バリンおよびグリシンなどのさらなるアミノ酸の後ろのペプチドの加水分解を特異的に触媒するセリンプロテアーゼである。DPIV−類似の酵素作用を有する酵素の遺伝子ファミリーに属する酵素は、とりわけ、DP II、DP 8、DP 9およびFAP/セプラーゼ[T.Chenら:Adv.Exp.Med.Biol.524,79,2003]。DPIVに類似した基質特異性は、アトラクチン(マホガニータンパク質)でも見られた[J.S.Duke−Cohanら:J.Immunol.156,1714,1996]。前記酵素もDPIVインヒビターによって阻害される。
【0003】
アラニルアミノペプチダーゼの群に属している(同様に遍在的に存在する)のは、アミノペプチダーゼN(APN,CD13,EC3.4.11.2)(主に、II型膜タンパク質として見られる)と、細胞質ゾル内可溶性アラニルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.14,ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ,アミノ−ペプチダーゼPS,エンセファリン分解アミノペプチダーゼ)である。アラニルアミノペプチダーゼは、金属に依存的に(例えば、亜鉛に依存的に)作用し、オリゴペプチドのN末端アミノ酸の後ろのペプチド結合の加水分解を、APNの場合はN末端のアラニンを優先して触媒する[A.J.Barrettら:Handbook of Proteolytic Enzymes,Academic Press 1998]。また、アミノペプチダーゼNのインヒビターはすべて、細胞質ゾル内アミノペプチダーゼの特異的インヒビターが存在している間も細胞質ゾル内アラニルアミノペプチダーゼも阻害する[M.Komodoら:Bioorg.and Med.Chem.9,121,2001]。
【0004】
どちらの酵素群についても、重要な生物学的機能が種々の細胞系において示された。これは、免疫機構[U.Lendeckelら:Intern.J.Mol.Med.4,17,1999;T.Kahneら:Intern.J.Mol.Med.4,3,1999;I.De Meesterら:Advanc.Exp.Med.Biol.524,3,2002;国際特許出願WO01/89,569;国際特許出願WO02/053,170;国際特許出願PCT/EP03/07,199];神経系[国際特許出願WO02/053,169および独国特許出願103 37 074.9];線維芽細胞[独国特許出願103 30 842.3];ケラチノサイト[国際特許出願WO02/053,170];皮脂腺細胞/脂腺細胞[国際特許出願PCT/EP03/02,356];腫瘍ならびにウイルス因性感染(例えば、コロナウイルス)[D.P.Kontoyiannisら:Lancet 361,1558,2003]でも示されている。
【0005】
内分泌腺ホルモンGIPおよびGLPを特異的に不活化できるDPIVの能力により、グルコース代謝障害を処置するための新たな治療概念が開発されるに至った[D.M.Evans:Drugs 5,577,2002]。
【0006】
どちらの酵素群についても、種々のインヒビターが知られている[概説は:D.M.Evans:Drugs 5,577,2002;ならびに:M.−C.Fournie−ZaluskiおよびB.P.Roques:in J.Langner and S.Ansorge:Ectopeptidases,Kluwer Academic/Plenum Publishers,p.51,2002において知得される]。
【0007】
アラニルアミノペプチダーゼおよびジペプチジルペプチダーゼIVの単独阻害、ならびに類似した基質特異性を有する酵素の阻害、特に、両方の酵素群の酵素の複合阻害により、免疫細胞のDNA合成の強力な阻害がもたらされ、したがって、細胞増殖の強力な阻害ならびにサイトカイン生成の変化、特に、免疫抑制サイトカインTGF−β1の誘導[国際特許出願WO01/89,569;国際特許出願WO02/053,170]ならびにTH1型の炎症サイトカイン、例えば、インターロイキン−2(IL−2)、およびTH2型、例えば、インターロイキン−4(IL−4)の生成および放出の阻害[国際特許出願WO02/053,170および独国特許出願101 02 392.8]がもたらされる。アラニルアミノペプチダーゼのインヒビターは、調節性T細胞におけるTGF−β1の強い誘導[国際特許出願PCT/EP03/07,199]および免疫抑制表現型の調節性T細胞の活性化[独国特許出願10 2006 703 942]をもたらす。神経系では、両方の酵素系の阻害により、急性および慢性脳損傷プロセスの減少または遅滞が示された[国際特許出願WO02/053,169および独国特許出願103 37 074.9]。さらに、線維芽細胞[独国特許出願103 30 842.3]、ケラチノサイト[国際特許出願WO02/053,170)および脂腺細胞[国際特許出願PCT/EP03/02,356]では、アラニルアミノペプチダーゼNとDPIVの複合阻害により、細胞増殖の阻害およびサイトカイン生成の変化がもたらされることが示された。
【0008】
これにより、アラニルアミノペプチダーゼとジペプチジルペプチダーゼIVならびに類似の酵素作用を有する酵素は、種々の器官および細胞系において基本的な中心的生物学的機能を果たしている、ならびに両方の酵素群の複合阻害は、種々の炎症性および/または神経変性疾患の処置のための新たな有効な治療原理を提示するという驚くべき結果が得られる。
【0009】
自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症、関節リウマチ、および乾癬)、アレルギーならびに同種移植片拒絶などの慢性炎症性の疾患は、望ましくない免疫応答、特に、細胞および組織の損傷をもたらす活性化リンパ球集団の作用によるものである。
【0010】
例えば、主に、Tヘルパー1(TH)およびTヘルパー17(TH17)リンパ球は、自己免疫疾患の場合の病原性プロセスに関与しており、Tヘルパー2(TH)リンパ球は、気管支喘息などのアレルギーの場合の病原性プロセスに、その選択的サイトカインと複合的に関与している。
【0011】
そのため、慢性炎症性の疾患の処置ストラテジーは、3つの主たる薬理学的介入:
(1)T細胞増殖(growth/proliferation)の低減;
(2)炎症サイトカイン(インターフェロン−γ,IL−17およびIL−4など)の生成の抑制;ならびに
(3)ヘルパー細胞およびエフェクター細胞を抑制し得るいわゆるT調節性細胞(Treg)の活性化
に基づいたものである。
【0012】
よく知られた抗炎症薬/免疫抑制薬は、例えば、シクロスポリンAおよびラパマイシンである。どちらの化合物も、その薬理学的作用を、それぞれT細胞増殖およびDNA合成をブロックすること、ならびにT細胞が活性化されると通常誘導されるいくつかのサイトカイン遺伝子の発現を抑制することにより奏する[C.A.Janeway,P.Travers,M.Walport,M.Shlomchick:Immunobiology,Garland Publishing,New York(2001),第553頁〜566頁]。
【0013】
さらに、ラパマイシンもTreg細胞を活性化し得るものである(D.A.A.Vignali,L.W.Collison,C.J.Workman:How regulatory cells work、Nature Review Immunology 8,523−532(2008)]。
【0014】
一方、本出願人らは、承認された動物モデルにおいて、特に、前記ペプチダーゼの両方の群のインヒビターを複合投与すると、種々の細胞系の増殖の阻害、ならびに過剰な免疫応答、慢性の炎症性プロセスおよび脳損傷の抑制が、インビボでももたらされることを示すことができた[国際特許出願WO01/89,569]。1種類の既知インヒビターの単独投与では作用は減弱される。
【0015】
以前に報告した結果は、主に、文献に記載および一部市販のアラニルアミノペプチダーゼNとジペプチジルペプチダーゼIVの既知のインヒビター単独によって得られたものであるが、特に、両方の群の酵素のインヒビターの組合せによるものではない。
【0016】
欧州特許出願06 829 004.8には、新規な、主に非ペプチド系の低分子量物質が報告されており、これはプロドラッグとして使用され得、生理学的および病理学的条件下で有効な薬剤または有効な薬剤混合物として作用するものであり得、アラニルアミノペプチダーゼNおよび類似した基質特異性を有する酵素、ならびにジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似した基質特異性を有する酵素も同様に二重様式で阻害する。プロドラッグの変換は、−S−S−または−Se−Se−橋状結合、好ましくは細胞内チオール(−SH−基を有する化合物)の還元によって行なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記の2つの群のアミノペプチダーゼ、すなわち、(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼならびに(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼの多機能デュアルインヒビター(「デュアルインヒビター」)として好適な新規な物質であって、医薬分野における使用に適しておりず、例えば、自己免疫疾患、過剰な免疫応答を示す疾患および/または炎症発生を有する疾患、神経疾患ならびに脳損傷、腫瘍疾患、皮膚疾患、I型糖尿病ならびにSARSの予防および治療に使用できる物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、Ala−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼおよびGly−Pro−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼを特異的に阻害(「二重阻害」)することができる新規な物質であり、したがって、1つの物質だけで両方の群のペプチダーゼの協調阻害能力を兼ね備えた物質に関する。もちろん、この新規な物質は、単一の各群のペプチダーゼ、すなわち、Ala−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼまたはGly−Pro−p−ニトロアニリドを切断するペプチダーゼを阻害(「単独阻害」)することもできる。
【0019】
本明細書に記載の多機能ペプチダーゼインヒビターは新規な物質である。該インヒビターは、T細胞の増殖を抑制し、炎症性サイトカインの生成の抑制に結びつくことにより、炎症に対処することができる。さらに、この新規な化学物質化合物は、Treg細胞を活性化することもでき、このことにより、該物質および該物質を含む薬剤は、炎症性の疾患の処置のための強力な薬物候補となる。
【0020】
さらに、本発明は、過剰な免疫応答を有する疾患(自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶、セプシス)、他の慢性−炎症性の疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患および脳損傷、皮膚疾患(とりわけ、ざ瘡および乾癬)、腫瘍疾患および特定のウイルス感染(とりわけ、SARS)ならびにI型糖尿病の予防および治療のために、そのままでも使用され得るが、他の物質の出発物質としても使用され得る新規な物質に関する。
【0021】
本発明は、一般式(1)
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、
、X、X、XおよびXは、互いに同一であっても異なっていてもよく、−H、−OH、−NO、−ハロゲン、−NH、−OR、−NHR、−NR、−CHNHR、−CHNR、−SH、−SR、−CH(C=O)R、−P(=O)(OH)、−P(=O)(OH)(OR)、−P(=O)(OR)(OR)、−P(=O)(=O)(OH)、−P(=O)(=O)(OR)、−P(=O)(=O)(H)および−P(=O)(=O)(R)、置換基RおよびRで置換された同素環式および複素環式、芳香族および非芳香族、縮合および非縮合環系(複素環式部分の場合は、N、O、S、Pからなる群より選択される1個、2個または数個のヘテロ原子を有することが許容される。)からなる群より選択される。ここで、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、−H、−OH、−NH、−NO、置換および非置換の直鎖または1回もしくは多数回分岐している脂肪族炭化水素、エステル、アミド、カーボネートならびにカルバメート残基(同残基は、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、1つまたは多数有し、1〜29個の炭素原子を有し、2つの鎖内炭素原子の間の化学的に可能な任意の鎖の位置にO、S、NHまたは第2級アミノ部分を有していてもよく、該第2級アミノ基の1つまたは2つの副鎖が本明細書に記載の主鎖の定義に従って構築されていてもよい。);および3〜10個の環構成員を有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族または非芳香族同素環式もしくは複素環式の縮合もしくは非縮合脂肪族炭化水素残基(複素環式部分の場合は、O、N、SおよびPから選択される1つまたは数個の同一または異なるヘテロ原子を含む。非芳香族環式系の場合は、炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子二重結合がないか、1個もしくは数個有するか、または炭素−炭素三重結合がないか、1個もしくは数個有する。)からなる群より選択される。前記RおよびR残基は、任意選択で独立してX、X、X、XおよびXから選択される1つ、2つもしくはそれ以上の置換基を有しているか、または任意選択で、可能な各位置に、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カーボネートならびにカルバメートからなる群より選択される1つ以上の部分を有している。ただし、RおよびRの定義に従って定義される置換基は、直接的な−N−N−および−O−O−基の形成が回避される位置のみを占めることが許容される。さらに、RとRが同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合されており、結合価の状態が許容される場合、RおよびR置換基は、スピロ環系の一部であってもよく、非置換またはX、X、X、XおよびXからなる群より選択される1つ、2つまたはそれ以上の置換基で置換された同素環式または複素環式の縮合または非縮合環を形成していてもよい。
【0024】
、R、RおよびRは、独立して異なっていてもよく、RおよびRで上記に定義した残基を表すか、または置換基R、R、RおよびRの入れ替え可能なあらゆるペアが、これらが結合している基本構造(1)の原子と一緒に、縮合型であっても非縮合型であってもよく、非置換であってもよく、上記に定義した1つ以上の置換基Rで置換されていてもよい、5〜14員の複素環式の芳香族(化学的に可能な場合)もしくは非芳香族環構造を形成していてもよい。
【0025】
Spは、主鎖内に2〜8個の炭素原子を有し、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有する脂肪族炭化水素鎖、3〜10個の環内原子からなり、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有するか、または−O−、−S−、−NH−および−NR−置換基(式中、Rは、上記に定義したものである。)を有する非芳香族同素環式または複素環式またはホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族の非縮合もしくは縮合環系を表す。
− Lは、−CR13、>C=Oまたは>C=NR13(式中、R13は上記のRと同じ意味を有する残基を表す。ただし、Lが>C=Oまたは>C=NR13(式中、R13は、上記にRとして定義したものである)を表す場合、Rは存在しないか、またはLが、それぞれ窒素もしくは酸素であってよい。また、分子内のそれぞれの部分との結合は、−N−N−または−O−O−単位との直接的な結合をもたらすものでない。)を表す。
【0026】
は、下記の置換基(a)、(b)、(c)または(d)のうちの1つを表す:
(a)
【0027】
【化2】

【0028】
(式中
Aは、置換基Lに直接結合された構造要素であり、単結合を表すか、または>C=O、>C=NR、もしくは>C=CR、直鎖または1回もしくは数回分岐した、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基で置換されている1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖から選択される置換基(式中、RおよびRは上記に定義した意味を有する。)を表すか、あるいはAは、−NR、−O−または−S−であり得る。ただし、AとL間の結合は−N−N−または−O−O−結合を形成せず、nは、0、1および2から選択される整数である。
【0029】
およびBは、同一であるか、または互いに異なっており、−H、−CH、−ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR10または上記に定義したRのすべての意味(式中、RおよびR10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rとして上記に定義したすべての置換基からなる群より選択され得る。)からなる群より選択される残基を表すか;あるいはBとBが一緒になって、>N−、−O−、−S−および>P<から選択されるヘテロ原子がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、またはRとして上記に定義したすべての置換基から選択される1つまたは数個の置換基で置換されていてもよい、3〜10員の同素環式または複素環式の芳香族または非芳香族の飽和または1度もしくは数度の不飽和の非縮合もしくは縮合環の一部であってもよく、一緒になって該環を形成してもよい。
【0030】
は、上記のRで表されるあらゆる置換基からなる群より選択される置換基を表すか、あるいは上記の置換基Aまたは上記の置換基Spに含まれた炭素もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖(前記炭化水素鎖は、直鎖内に1〜6個の炭素原子を有し、炭素−炭素二重結合もしくは三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基(式中、Rは上記に定義した意味を有する。)で置換されているか、あるいは前記直鎖炭化水素鎖内に、−O−、−S−、>NHおよび>NR12(式中、R12は、上記に定義したRとしてのあらゆる意味を有するものであり得る。)からなる群より選択される1個または数個のヘテロ原子を含有しているか、あるいは二重結合もしくは三重結合がないか、1つまたは多数有し、Rのあらゆる意味から選択される置換基がないか、1つまたは多数有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族環または非芳香族の同素環式もしくは複素環式の環を表す。)であり得る。
【0031】
、Y、Y、YおよびYは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基X、X、X、XおよびXと同じ意味を有する置換基から選択され得;ここで、連続番号を有する該Y置換基は、C、N、O、SまたはPからなる群より選択される原子を介して結合して、3〜10個の環構成員を有し、非置換であってもよく、上記に定義したRおよびRで表される1個、2個もしくは数個の残基で、フェニル環が縮合系の一部となるように置換されていてもよい、縮合もしくは非縮合の同素環式もしくは複素環式の非芳香族もしくはホモ芳香族または(化学的状況が許容すれば)ヘテロ芳香族の環系の一部であり得る);
(b)
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、A、B、B、およびY〜Yは、上記の式(a)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数であり、Zは、−H、Rのあらゆる意味から選択される意味を有する残基を表すか、またはRについて上記に示した炭化水素鎖の意味から選択され、B、B、R、またはSpの炭素原子もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖であり得る。);
(c)
【0034】
【化4】

【0035】
(式中、A、B、B、Y〜YおよびZは、式(a)および(b)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数である。);または
(d)
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、Y〜YおよびZは、式(a)、(b)および(c)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜6の範囲から選択される整数である。)。
【0038】
の4つの表示(a)、(b)、(c)および(d)について、構造要素A、B、B、RとLを連結している橋状結合は、これらの要素の2つ以上の間に許容され、そのため、2つを超える部分が連結する場合は、それぞれ、橋状縮合籠様副構造が形成され得;該橋状結合部分として、それぞれ、非置換のおよび、RおよびRの定義に従う置換基で置換された、連続のまたはO、SおよびNRで割り込まれた、直鎖のおよび1回または多数回分岐の炭素鎖であって、二重結合および三重結合がないか、1つまたは数個有するものが可能である。]
の化合物、またはその有機酸および/もしくは無機酸との塩に関する。
【0039】
一般式(1)の化合物のキラル炭素原子は、S配置であってもR配置であってもよい。
一般式(1)の化合物の好ましい実施形態は、従属請求項2〜3によるものである。
【0040】
上記の一般式(1)の化合物は、単一の化合物または化合物群について例示的に以下に詳細に記載する、有機化学の一般的に知られた合成方法によって合成され得る。かかる合成方法は、有機合成の当業者によく知られている。このような方法は、特に、一般式(1)の化合物が高収率で、および医薬適用、特に患者への投与に適した高い純度で得られることがわかっている。
【0041】
また、本発明は、医薬に使用するための、上記のおよび詳細に後述する一般式(1)の化合物に関する。
【0042】
さらに、本発明は、インヒビター前駆体である上記の、および詳細に後述する一般式(1)の化合物に関する。
好ましい実施形態は、従属請求項6〜7によるものである。
【0043】
さらに、本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患およびウイルス因性疾患、ならびにI型糖尿病およびSARSの予防および治療のための、上記のおよび詳細に後述する一般式(1)の少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0044】
また、本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患およびウイルス因性疾患、ならびにI型糖尿病およびSARSの予防および治療のための医薬の調製のための、上記のおよび詳細に後述する一般式(1)の少なくとも1つの化合物の使用に関する。
該使用の好ましい実施形態は、請求項10〜13において特許請求しているものである。
【0045】
さらに、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種類のデュアルインヒビターを、上記の定義および以下の詳細説明による一般式(1)の少なくとも1つの化合物から作製する方法であって、一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、細胞および組織内に存在する条件に曝露する、例えば細胞内酵素に曝露する、好ましくはデアシラーゼに曝露する方法に関する。
該方法の好ましい実施形態は、請求項15によるものである。
【0046】
また、本発明は、請求項1〜7のうちの1つによる、および下記の詳細説明による一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、任意選択で1つ以上の薬学的に、または化粧料として許容され得る担体、補助化合物および/または補助剤と組合せて含有する医薬調製物または化粧料調製物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明によれば、新規な化合物は、一般式(1):
【0048】
【化6】

【0049】
を有する。
驚くべきことに、前記の式の化合物はそれ自体が、後述する酵素に関して阻害作用を有し、さらに、規定の条件下で、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびに/またはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのデュアルまたは単独インヒビターとなる化合物に変換され得ることがわかった。したがって、上記の一般式(1)の化合物は、かかるインヒビターの前駆体であり得る。
【0050】
一般式(1)の化合物の「前駆体」という用語は、本説明および特許請求の範囲において用いる場合、残基R、RまたはR(後者はRで表される置換基(a)に存在する)を有するN−またはO−原子にアシル残基を有する一般式(1)の化合物を意味し、前記アシル残基は−H基で置き換えられる;「活性」インヒビターのこのようなアシル前駆体(ここで、「活性インヒビター」は、前駆体のアシル基がH基を有する一般式(1)の化合物を意味する)は、細胞内N−アシラーゼまたはO−アシラーゼの作用によって該インヒビターの「活性」形態に変換される。
【0051】
用語「前駆体」は、規定の薬理学的(例えば、阻害)作用を有する薬物に変換される以前に前駆体自体が、薬理学的作用(例えば、上記の2種類の酵素のうちの1種類または2種類の阻害)を発揮することができるものであることを排除しない。哺乳動物またはヒトにおいて前駆体が薬物に変換される条件は、それぞれ、哺乳動物(例えばヒト)の生理学的環境内、または哺乳動物の体内(例えばヒトの体内)、より特別には、哺乳動物またはヒトの身体の細胞内に通常存在している条件であり得る。あるいはまた、かかる生理学的条件は、哺乳動物、例えばヒト、より特別には細胞内の規定の条件下でのみ、例えば、ある疾患パターンに存在する規定の生理学的条件下でのみ、存在するものであってもよく、外的影響、例えば(限定されないが)、哺乳動物の生体(例えば、ヒトの生体、特に、ヒト身体の細胞が例示される)に対する医薬の影響によって誘導または誘発され得るものであってもよい。
【0052】
以下の説明および特許請求の範囲において用語「ジペプチジルペプチダーゼIV「(DPIV,CD26,EC3.4.14.5)を使用することで、特異的にプロリンの後、および程度は低いがアラニンの後、および制限を伴うが、それぞれのペプチドのN末端の第2位のセリン、スレオニン、バリンおよびグリシンなどの他のアミノ酸の後の、ペプチド結合の加水分解を触媒するセリンプロテアーゼを認識されたい。
【0053】
用語「ジペプチジルペプチダーゼIV−類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」を使用することで、本説明および特許請求の範囲において、N末端の第2位のプロリンまたはアラニンの後のペプチドの加水分解を特異的に触媒するペプチダーゼを認識されたい。ジペプチジルペプチダーゼIVの類似の酵素作用を有するペプチダーゼの例(本発明はそれに限定されない)は、DP II、DP 8、DP 9およびFAP/セプラーゼである[T.Chenら,a.a.O.]およびアトラクチン(マホガニータンパク質)[J.S.Duke−Cohanら,a.a.O.]。
【0054】
本説明および特許請求の範囲において用語「アラニルアミノペプチダーゼN」(APN,CD13,EC3.4.11.2)を使用することで、金属−(亜鉛−)依存的に作用し、特異的にペプチドのN末端のアミノ酸、好ましくはN末端のアラニンの後のペプチド結合の加水分解を触媒するプロテアーゼを認識されたい。
【0055】
用語「アラニルアミノペプチダーゼN−類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」を使用することで、本説明および特許請求の範囲において、APNと同様に金属依存的に作用し、特異的にペプチドのN末端のアミノ酸、好ましくはN末端のアラニンの後ろのペプチド結合の加水分解を触媒するペプチダーゼを認識されたい。アラニルアミノペプチダーゼN−類似の酵素作用を有するペプチダーゼの例(本発明はそれに限定されない)は、細胞質ゾル内可溶性アラニルアミノペプチダーゼ(EC3.4.11.14)、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼPS、エンセファリン分解アミノ−ペプチダーゼである[A.J.Barretら,a.a.O.]。
【0056】
本説明および特許請求の範囲において用語「インヒビター」を使用することで、酵素または酵素群に対して調節作用、特に阻害作用を有する、天然起源、合成起源または合成による修飾を有する天然起源のかかる化合物を認識されたい。調節作用は、用語「インヒビター」の上記の定義を限定せずに、最も異なる作用に基づくことができる。本発明による好ましいインヒビターは、上記定義の通り、酵素、より好ましくは酵素群に対する阻害作用を有するインヒビター、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)およびジペプチジルペプチダーゼIVの類似の酵素作用を有するペプチダーゼに対する阻害作用を有するインヒビター、またはそれぞれ、アラニルアミノペプチダーゼN(APN)、およびアラニルアミノペプチダーゼNの類似の酵素作用を有するペプチダーゼに対する阻害作用を有するインヒビターである。
【0057】
本説明および特許請求の範囲において用語「単独インヒビター」を使用することで、酵素(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼ(「類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」)または酵素(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼ(「類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」)を阻害し得る物質または化学物質化合物を認識されたい。上記のように、また、この技術分野のよく知られた文献にも示されているが、酵素(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)類似の酵素作用を有するペプチダーゼは、同一のインヒビターによって阻害され得る。同様に、酵素(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)類似の酵素作用を有するペプチダーゼは、同一のインヒビターによって阻害され得る。
【0058】
本説明および特許請求の範囲において用語「デュアルインヒビター」を使用することで、酵素(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼ(「類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」)ならびに(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用を有するペプチダーゼ(「類似の酵素作用を有するペプチダーゼ」)を阻害し得る物質または化学物質化合物を認識されたい。かかる阻害作用は、本説明および特許請求の範囲において、場合によっては「協調阻害」と称している。
【0059】
本説明および特許請求の範囲において用語「協調阻害(する)」を使用することで、本発明の化合物によってもたらされる阻害作用であり、該化合物が、上記の2つの群のペプチダーゼ多機能デュアルインヒビターである、すなわち、(ia)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および(ib)ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼ、ならびに(iia)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)および(iib)アラニルアミノペプチダーゼN(APN)に類似した酵素作用(「類似の酵素作用」)を有するペプチダーゼのデュアルインヒビターである阻害作用を認識されたい。上記の酵素のかかる協調阻害能を有する化合物を、本説明および特許請求の範囲において「デュアルインヒビター」と称する。
【0060】
上記の一般式(1)の化合物において、置換基X、X、X、XおよびX、すなわち、末端ベンジル残基における置換基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。本発明によれば、該置換基は、−H、−OH、−NO、−ハロゲン、−NH、−OR、−NHR、−NR、−CHNHR、−CHNR、−SH、−SR、−CH(C=O)R、−P(=O)(OH)、−P(=O)(OH)(OR)、−P(=O)(OR)(OR)、−P(=O)(=O)(OH)、−P(=O)(=O)(OR)、−P(=O)(=O)(H)および−P(=O)(=O)(R)、置換基RおよびRで置換された同素環式および複素環式、芳香族および非芳香族、縮合および非縮合環系(複素環式部分の場合は、N、O、S、Pからなる群より選択される1個、2個または数個のヘテロ原子を有することが許容される。)からなる群より選択される。上記の基において、RおよびRは、互いに同一であっても互いに異なっていてもよく、−H、−OH、−NH、−NO、置換および非置換の直鎖または1回もしくは多数回分岐している脂肪族炭化水素、エステル、アミド、カーボネートならびにカルバメート残基(同残基は、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、1つまたは多数有し、1〜29個の炭素原子を有し、2つの鎖内炭素原子の間の化学的に可能な任意の鎖の位置にO、S、NHまたは第2級アミノ部分を有していてもよく、該第2級アミノ基の1つまたは2つの副鎖が本明細書に記載の主鎖の定義に従って構築されていてもよい。);および3〜10個の環構成員を有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族または非芳香族同素環式もしくは複素環式の縮合もしくは非縮合脂肪族炭化水素残基(複素環式部分の場合は、O、N、SおよびPから選択される1つまたは数個の同一または異なるヘテロ原子を含む。非芳香族環式系の場合は、炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子二重結合がないか、1個もしくは数個有するか、または炭素−炭素三重結合がないか、1個もしくは数個有する。)からなる群より選択される。前記RおよびR残基は、任意選択で独立してX、X、X、XおよびXから選択される1つ、2つもしくはそれ以上の置換基を有しているか、または任意選択で、可能な各位置に、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カーボネートならびにカルバメートからなる群より選択される1つ以上の部分を有している。ただし、RおよびRの定義に従って定義される置換基は、直接的な−N−N−および−O−O−基の形成が回避される位置のみを占めることが許容される。さらに、RとRが同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合されており、結合価の状態が許容される場合、RおよびR置換基は、スピロ環系の一部であってもよく、非置換またはX、X、X、XおよびXからなる群より選択される1つ、2つまたはそれ以上の置換基で置換された同素環式または複素環式の縮合または非縮合環を形成していてもよい。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、X、X、X、XおよびXで表されるハロゲン残基は、−F、−Cl、−Brおよび−Iであるハロゲンから選択され得る。−Clおよび−Brからの選択がさらにより好ましい。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態は、一般式(1)において、X、X、X、XおよびXが互いに同一であるか、または互いに異なり、より好ましくは、残基X、X、X、XおよびXすべてが同一である(例えば、限定されないが、残基X、X、X、XおよびXすべてが−Hを表す)か、またはそのうちの少なくとも3つ、より好ましくはそのうちの4つが同一であり(例えば、限定されないが、Hを表す)、少なくとも1つ(好ましい)またはさらには2つが他のものと異なり、ハロゲン(好ましくは、限定されないが、−Clおよび/または−Br)、−OH、−C(=O)OH、−NHまたは−NHR(式中、Rは、上記に定義した意味を有する)から選択される置換基を表す、化合物に関する。本発明の択一的な同様に好ましい実施形態において、置換基Rは、末端ベンジル残基に直接結合されていてもよい。さらに好ましい実施形態では、末端ベンジル残基に直接結合されたRは、アルキルもしくはアルケニル残基(例えば(限定されないが)、−メチルもしくは−エチル)から選択され得るか、5つもしくは6つの環構成員を有するホモ芳香族残基(例えば(限定されないが)、−フェニル(任意選択で置換されていてもよい)であり得る)から選択され得るか、または5つもしくは6つの環構成員を有し、N、O、SまたはPから選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族残基(例えば(限定されないが)、−チオフェニルもしくは−ピリジニルもしくは−ピリミジニルなどの残基)から選択され得る。
【0063】
本発明によれば、残基X、X、X、XおよびXの1個または数個または全部が、一般式Rを有する残基を表すか、または残基RおよびRのうち1つもしくは2つを有する残基(例えば、−NR、−ORもしくは−P(=O)(OR)(OR))を含む場合、残基RおよびRは各々、互いに同一であり得るか、または互いに異なり得るかのいずれかである。
【0064】
本発明の好ましい実施形態によれば、置換基として供される環系(例えば、置換基RまたはRとして供される)は、1つの環からなる、例えば、限定されないが、1つのフェニル環(ホモ芳香族6員環の一例として)からなるか、または1つのピペリジニル環もしくは1つのテトラヒドロフラニル環(複素環式6員環および複素環式5員環の一例として)からなる系であってもよく、数個の(任意選択で縮合している)環からなる(例えば、限定されないが、インドリル環系(ベンゾ縮合ヘテロ芳香族環系の一例として)からなる)系であってもよい。
【0065】
本発明によれば、R、R、RおよびRは、独立して異なっていてもよく、RおよびRで上記に定義した残基を表していてもよい。あるいはまた、置換基R、R、RおよびRの入れ替え可能なあらゆるペアが、これらが結合している基本構造(1)の原子と一緒に、5〜14員の複素環式の芳香族(化学的に可能な場合)もしくは非芳香族環構造を形成していてもよく、該環構造は、縮合であっても非縮合型であってもよく、非置換であってもよく、上記に定義した1つ以上の置換基Rで置換されていてもよい。
【0066】
一般式(1)の化合物の好ましい実施形態において、Rは、C〜C29、好ましくはC〜C18、より好ましくはC〜C16のアルキル残基またはアルカノイル残基であり得る。好ましいのは、直鎖(すなわち、n−アルキルまたはn−アルカノイル)残基であり、これは、1個または数個の残基Rを置換基として有するものであってもよく、ここで、Rは上記に定義したものである。
【0067】
別の好ましい実施形態では、Rは、下位式−C1〜14−XX−C1〜14−(式中、XXは、−O−、−S−、−NH−または−NR11−を表し、R11は、Rで上記に定義したものと同じ意味を有するものであり得る)を有する非置換単位または置換単位を表すものであり得る。主鎖R内に独立して−XX−基が1個または数個存在していてもよい。
【0068】
一般式(1)の化合物の別の好ましい実施形態では、記載のあらゆる意味の場合で、RはRに、C、O、N、SおよびPから選択される原子によって連結されていてもよい。
【0069】
一般式(1)の化合物のさらなる好ましい実施形態では、Rは、3員〜10員の非芳香族同素環式もしくは複素環式の環もしくは環系または5員〜8員のホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族の環もしくは環系であり得、これは、非置換であってもよく、1個または数個の置換基Rで任意選択的に置換されていてもよい。該環は、単一の環、複数の非縮合環または複数の縮合環であってもよい。
【0070】
本発明によれば、Spは、主鎖内に2〜8個の炭素原子を有し、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有する脂肪族炭化水素鎖、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族の5〜8員環;炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子二重結合あるいは炭素−炭素三重結合がないか、1個または数個有し、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有する脂肪族炭化水素鎖同素環式または複素環式脂肪族3〜8員環を表す。該炭化水素鎖の例は、メチレン、ビスメチレン(エチレン)、トリス−メチレン(プロピレン)およびブチレン基であり、これらは、好ましくは、その鎖内において直鎖である。また、Spは、分枝鎖アルキレン基またはシクロアルキレン基を表していてもよい。ホモ芳香族環系のSpの例は、フェニレン基であり、一方、同素環式の環の例は、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレン基である。Spで表される飽和もしくは不飽和の同素環式もしくは複素環式の環またはホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族環は単一の環であってもよく、非縮合環であってもよく、縮合環系であってもよい。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、Spは上記に定義したものであり得るが、Spは、連結された残基RとRの共通の炭化水素鎖によって形成される環の一部である(残基RおよびRの上記の定義を参照のこと)。非限定的な例として、RとRは一緒になって−CH−CH−単位を形成していてもよく、Lは同時にNであり得、Spは、残基R、R、LおよびSpとの組合せでピペラジニル残基になる−CH−CH−を表す。
【0072】
本発明によれば、Lは、−CR13、>C=O、>C=NHまたは>C=NR13(式中、R13は、−Hまたは上記のRと同じ意味を有する残基を表す。ただし、Lが>C=O、>C=NHまたは>C=NR13を表す場合、Rは存在しない。)を表す。あるいはまた、Lは窒素であり得るが、分子のそれぞれの部分との結合は、直接結合された−N−N−または−O−O−単位をもたらすものではない。
【0073】
本発明によれば、Rは、式(a)、(b)、(c)または(d)のうちの1つの意味を有する:
(a)
【0074】
【化7】

【0075】
(式中
Aは、置換基Lに直接結合された構造要素であり、単結合を表すか、または>C=O、>C=NR、もしくは>C=CR、直鎖または1回もしくは数回分岐した、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基で置換されている1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖から選択される置換基(式中、RおよびRは上記に定義した意味を有する。)を表すか、あるいはAは、−NR、−O−または−S−であり得る。ただし、AとL間の結合は−N−N−または−O−O−結合を形成せず、nは、0、1および2から選択される整数である。
【0076】
およびBは、同一であるか、または互いに異なっており、−H、−CH、−ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR10または上記に定義したRのすべての意味(式中、RおよびR10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rとして上記に定義したすべての置換基からなる群より選択され得る。)からなる群より選択される残基を表すか;あるいはBとBが一緒になって、>N−、−O−、−S−および>P<から選択されるヘテロ原子がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、またはRとして上記に定義したすべての置換基から選択される1つまたは数個の置換基で置換されていてもよい、3〜10員の同素環式または複素環式の芳香族または非芳香族の飽和または1度もしくは数度の不飽和の非縮合もしくは縮合環の一部であってもよく、一緒になって該環を形成してもよい。
【0077】
は、上記のRで表されるあらゆる置換基からなる群より選択される置換基を表すか、あるいは上記の置換基Aまたは上記の置換基Spに含まれた炭素もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖(前記炭化水素鎖は、直鎖内に1〜6個の炭素原子を有し、炭素−炭素二重結合もしくは三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基(式中、Rは上記に定義した意味を有する。)で置換されているか、あるいは前記直鎖炭化水素鎖内に、−O−、−S−、>NHおよび>NR12(式中、R12は、上記に定義したRとしてのあらゆる意味を有するものであり得る。)からなる群より選択される1個または数個のヘテロ原子を含有しているか、あるいは二重結合もしくは三重結合がないか、1つまたは多数有し、Rのあらゆる意味から選択される置換基がないか、1つまたは多数有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族環または非芳香族の同素環式もしくは複素環式の環を表す。)であり得る。
【0078】
、Y、Y、YおよびYは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基X、X、X、XおよびXと同じ意味を有する置換基から選択され得;ここで、連続番号を有する該Y置換基は、C、N、O、SまたはPからなる群より選択される原子を介して結合して、3〜10個の環構成員を有し、非置換であってもよく、上記に定義したRおよびRで表される1個、2個もしくは数個の残基で、フェニル環が縮合系の一部となるように置換されていてもよい、縮合もしくは非縮合の同素環式もしくは複素環式の非芳香族もしくはホモ芳香族または(化学的状況が許容すれば)ヘテロ芳香族の環系の一部であり得る);
(b)
【0079】
【化8】

【0080】
(式中、
A、B、B、およびY〜Yは、上記の式(a)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数であり、Zは、−H、Rのあらゆる意味から選択される意味を有する残基を表すか、またはRについて上記に示した炭化水素鎖の意味から選択され、B、B、R、またはSpの炭素原子もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖であり得る。);
(c)
【0081】
【化9】

【0082】
(式中、A、B、B、Y〜YおよびZは、式(a)および(b)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数である。);または
(d)
【0083】
【化10】

【0084】
(式中、Y〜YおよびZは、式(a)、(b)および(c)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜6の範囲から選択される整数である。)。
【0085】
の4つの表示(a)、(b)、(c)および(d)について、構造要素A、B、B、RとLを連結している橋状結合は、これらの要素の2つ以上の間に許容され、そのため、2つを超える部分が連結する場合は、それぞれ、橋状縮合籠様副構造が形成され得;該橋状結合部分として、それぞれ、非置換のおよび、RおよびRの定義に従う置換基で置換された、連続のまたはO、SおよびNRで割り込まれた、直鎖のおよび1回または多数回分岐の炭素鎖であって、二重結合および三重結合がないか、1つまたは数個有するものが可能である。
【0086】
上記の式(a)を有する残基Rにおいて、炭化水素鎖Aは直鎖であり、メチレン、ビス−メチレン(エチレン)、トリス−メチレン(プロピレン)、n−ブチレン、ペンタ−メチレン(n−ペンチレン)およびヘキサ−メチレン(ヘキシレン)基が例示される。前記炭化水素鎖は、二重および/または三重結合がないか、1つまたは複数含むものであり得る。また、Aは、単結合であってもよく、その場合、残基(a)は直接、すなわち、前記単結合によってL−R単位に結合される。また、Aは>C=Oまたは−C(=O)NH−であってもよく、Lが>C=Oまたは>C=NHのいずれかを表す場合、Aは−NH−であってもよい。
【0087】
一般式(1)の化合物の好ましい実施形態において、Rの残基(a)内の残基BおよびBは、ハロゲンとして−F、−Cl、−Brまたは−Iを表し得る。
【0088】
また、対応する定義が、Rが一般式(b)、(c)および(d)のうちの1つを表す本発明による一般式(1)の化合物にも適用され得る。
【0089】
式(1)の化合物に存在する複素環式またはヘテロ芳香族化合物はすべて、1個または複数のヘテロ原子N、O、SまたはPを含むものであり得、前記ヘテロ原子は、それぞれの原子に一般的に許容される任意の酸化状態を有するものであり得る。
【0090】
置換基R〜R13、L、A、B、B、XX、X〜X、Y〜YおよびZはすべて、化学結合則(エルレンマイヤー則)に従って可能な限り、互いに独立して異なり得る。上記に示し、本明細書および特許請求の範囲においてさらに示すすべての構造要素の選択では、−N−N−と−O−O−の直接結合を回避する。
【0091】
縮合環系が一般式(1)の化合物に許容される場合はいつでも、縮合度は1〜3であり得る。ホモ芳香族、ヘテロ芳香族、非芳香族同素環式および複素環式系は、所望により組み合わせてもよい。
【0092】
本説明および特許請求の範囲において用語「アルキル残基」を使用することで、互いに単結合で連結された炭素原子で構成され、該炭素原子に水素原子が結合されている一価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基を認識されたい。したがって、アルキル残基は、本発明によれば、一価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)の化合物におけるアルキル残基は、1〜18個の炭素原子を含むものであり、したがって、残基メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルならびに残基ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルの数多くの種々の直鎖および分枝鎖の異性体から選択される。特に好ましいのは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル残基であり、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキル残基がさらにより好ましい。最も好ましいのは、残基メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルである。
【0093】
したがって、本説明および特許請求の範囲において、用語「アルケニル残基」および「アルキニル残基」は、互いに分子内の随意だが規定された位置に単結合および少なくとも1つの二重結合または三重結合でそれぞれ連結された炭素原子の一価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基であって、該炭素原子の残りの結合部に水素原子が結合されているものであって、炭素原子が少なくとも2個から炭素原子が18個までのものと認識されたい。かかる残基は、例えば、好ましくはビニル残基またはアリル残基であるが、炭素−炭素多重結合含有残基は前記残基に限定されない。
【0094】
本説明および特許請求の範囲において、用語「アルキレン残基」は、互いに単結合で連結されており、水素原子が結合されている炭素原子の二価の直鎖(「非分枝鎖」)または分枝鎖の残基であると認識されたい。したがって、アルキレン残基は、本発明によれば、二価の飽和炭化水素残基である。好ましくは、一般式(1)および(2)の化合物におけるアルキレン残基は、1〜18個の炭素原子を含み、したがって、残基メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレンならびに残基ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレンおよびオクタデシレンの数多くの種々の直鎖および分枝鎖の異性体から選択される。特に好ましいのは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキレン残基であり、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖のアルキレン残基がより好ましい。最も好ましいのは、残基メチレン、エチレン、n−プロピレン、2,2−プロピレン、1,2−プロピレンおよび数多くの種々のブチレン位置異性体である。
【0095】
本発明における一般式(1)の化合物の一部であり得るアルキル残基および/またはアルキレン残基において、炭素原子の鎖には、O原子、N原子またはS原子が割り込んでいてもよい。したがって、鎖の途中に、1つ以上の−CH基の代わりに、−O−、−NH−および−S−基である1つ以上の基が存在していてもよいが、通常、−O−、−NH−および/または−S−基のうち2つが鎖内で互いに続いていることはない。前記1つ以上の−O−、−NH−または−S−基は、分子内の随意の位置に挿入され得る。好ましくは、該種類のヘテロ基が存在する場合、該種類の基が分子内に存在する。
【0096】
直鎖ならびに分枝鎖のアルキル−またはアルキレン残基は、本発明に従って、さらなる実施形態の一般式(1)の化合物において、1つ以上の置換基、好ましくは1つの置換基で置換されてもよい。さらにより好ましくは、該置換基は、Rから選択される残基から選択される。置換基は、主鎖の随意の位置に存在し得、炭素原子で形成されたものであり得、好ましくは、本発明を限定するものでないが、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素(塩素および臭素が特に好ましい)などのハロゲン原子、各々1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(1〜4個の炭素原子を有するアルキル基が特に好ましい)、アルキル残基内に1〜6個の炭素原子を有する(好ましくは、アルキル残基内に1〜3個の炭素原子を有する)アルコキシ基、非置換のアミノ基または互いに独立して1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む1つもしくは2つのアルキル残基で置換されたアミノ基、カルボニル基およびカルボキシル基からなる群より選択され得る。また、後者は、アルキル残基内に1〜6個の炭素原子を有するアルコールとの塩またはエステルの形態で存在していてもよい。したがって、用語「カルボキシル基」は、一般構造−COO(ここで、M=アルカリ金属原子などの一価の金属原子)または半分の当量のアルカリ土類金属原子などの二価の金属原子などの整合する当量の多価金属原子)または一般構造−COOR(ここで、R=1〜6個の炭素原子を有するアルキル基)の基を包含する。置換するアルキル基は、上記に詳細に記載したアルキル基から選択され、特に好ましいのはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である。
【0097】
アルコキシ基は、炭素原子で形成された主鎖にO原子によって結合された上記に定義した意味のアルキル基である。これは、好ましくは、残基メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシからなる群より選択される。
【0098】
アミノ基は、一般構造−NR(式中、残基RおよびRは互いに独立に水素または、1〜6個の炭素原子を有し、特に好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基(上記の定義による)であり、残基RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)の基である。置換基として特に好ましいかかるアミノ基は、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(Cである。また、用語「アミノ基」には、有機酸もしくは無機酸との塩形成(例えば、構造Rの残基(式中、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一であり、RおよびRは上記に定義した意味を有するものであり得、該残基の少なくとも1つは、該有機酸もしくは無機酸との4級化に由来する水素であり、Qは、該有機もしくは無機酸の酸に由来する酸残基である。))、または当業者に知られた適当な4級化試薬、例えば(限定されないが)ハロゲン化アルキルとの塩形成のいずれかによる、第4級アンモニウムイオンとして存在している上記に定義した構造の基も含まれる。
【0099】
本説明および特許請求の範囲において、用語「シクロアルキル」は、閉環の形態に互いに連結された−CH基の非置換または置換型の一価の残基に対して用いる。本発明によれば、前記環は、好ましくは3〜8個の原子が含まれて該環を形成しているものであり得、炭素原子のみを含むもの、または−O−、−S−および−NR−(式中、Rは、水素もしくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基(上記に定義)である。)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むもののいずれかであり得る。ヘテロ原子が環内に挿入されている場合、前記ヘテロ原子は(ヘテロ原子が1個より多い場合)同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、該ヘテロ原子が存在する場合において、該ヘテロ原子は環内に1つ挿入されている。純粋に炭素環式の環の中でも、特に好ましいのは、残基シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニルおよびシクロヘプタトリエニルである。ヘテロ原子含有シクロアルキル残基(これは、本発明のさらなる実施形態において、多くの場合、ヘテロシクロアルキル残基と称する)の例は、残基テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルである。
【0100】
炭素環式または複素環式のシクロアルキル残基における可能な置換基は、好ましくは、本発明を限定するものでないが、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択されるものであり得る。シクロアルキル基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。
【0101】
本説明および特許請求の範囲において、用語「シクロアルキレン」は、閉環に連結された−CH基の非置換または置換型の二価の残基に対して用いる。本発明によれば、これは、好ましくは、環内に3〜8個の原子を含むものであり得、炭素原子のみからなるもの、または−O−、−S−および−NR−(式中、Rは、水素もしくは1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基(上記に定義)である)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むもののいずれかであり得る。純粋に炭素環式の環の中でも、特に好ましいのは、残基シクロペンチレン、シクロペンテニレン、シクロペンタジエニレン、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、シクロヘキサジエニレン、シクロヘプチレン、シクロヘプテニレン、シクロヘプタジエニレンおよびシクロヘプタトリエニレンである。また、シクロアルキル残基に関して上記に定義した複素環式基は、一般式(1)の化合物において、二価の残基の形態の「B」基としてみられるものであってもよく、特に好ましいのは、環内に−O−または−NR−基が1つ挿入されているかかる環状の二価の残基である。その場合、どちらの結合価も環内の随意のC原子に存在している。好ましくは、1個のヘテロ原子または2個のヘテロ原子(1つもしくは複数)が環内に挿入され、かかる基の特に好ましい実施形態では、該二価の残基は、テトラヒドロフラン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンに由来するものである。
【0102】
このような炭素環式または複素環式のシクロアルキレン残基における可能な置換基は、好ましくは、本発明を限定するものでないが、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得る。該シクロアルキレン基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。
【0103】
本説明および特許請求の範囲において用語「アリール残基」を使用することで、非置換であるか、置換されていてもよい芳香族性(環形状の軌道において非局在化状態の4n+2π電子)を有する環状の分子に由来する一価の炭化水素残基を認識されたい。かかるアリール残基の環構造は、1つの環を有する5、6または7員の環構造であるか、または互いに結合された2つ以上の(「縮環した」)環によって形成された構造(ここで、該縮環した環は同一または異なる数の環構成員、特にC原子を有する。)であり得る。互いに縮合している少なくとも2つの環からなる系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環の少なくとも1つが、C原子のみを含む芳香族の6員環(例えば、フェニル環)である環系が特に好ましい。アリール環の典型的だが非限定的な例は、シクロペンタジエニル残基(C)(5員環である)、フェニル残基(6員環である)、シクロヘプタトリエニル残基(C)(7員環である)、ナフチル残基(2つの縮環した6員環を含む環系である)ならびにアントラセンおよびフェナントレンに由来する一価の残基(3つの縮環した6員環である)である。本発明によれば、最も好ましいアリール残基はフェニル残基およびナフチル残基である。
【0104】
炭素環式アリール残基の可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明は、これらの置換基に限定されない。アリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシおよび−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。この群の1つ以上の置換基(互いに同一であっても異なっていてもよい)が結合して、本発明による1つのアリール残基になっていてもよい。アリール環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0105】
用語「アリーレン残基」の定義に関して、アリール残基の場合に対応する定義が、本説明および特許請求の範囲に適用される。これに関して、その元素組成、その選択およびその置換基がアリール残基の上記の定義に対応するが、随意の2つの炭素原子において挿入され得るのは二価の残基であるという例外を伴う二価の残基を認識されたい。
【0106】
本説明および特許請求の範囲において、用語「ヘテロアリール残基」により、その環構造に、分子の芳香族性を失うことなく、好ましくはO、NまたはSの群の1個以上のヘテロ原子が含まれているアリール残基を(上記の定義に従って)認識されたい。かかるヘテロアリール残基の環構造は、1つの環を有する5員の、6員もしくは7員の環構造のいずれかであり得るか、または互いに結合された2つ以上(「縮環した」)環によって形成された構造(ここで、該縮環した環は、同一の数の環構成員を有するものであっても、異なる数の環構成員を有するものであってもよい。)であり得る。ヘテロ原子は、1つの環単独に存在していても、環系の1つより多くの環に存在していてもよい。
【0107】
ヘテロアリール残基は、好ましくは、1つまたは2つの環からなる。1つより多くの環(例えば、互いに縮合している2つの環)からなる系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環の少なくとも1つが芳香族炭素環式(すなわち、C原子のみを含む)6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアリール残基は、フラニル、チオフェニル、ピリジル、インドリル、クマロニル、チオナフテニル、キノリニル(ベンゾピリジル)、キナゾリニル(ベンゾピリミジニル)およびキノキシリニル(ベンゾピラジニル)から選択される。
【0108】
ヘテロアリール残基は、本発明に従って、非置換であっても、置換されていてもよい。このようなヘテロアリール残基における可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明は、これらの置換基に限定されない。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。該基の1つ以上の置換基(互いに同一であっても異なっていてもよい)が、本発明による1つのヘテロアリール残基に結合してもよい。ヘテロアリール環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0109】
用語「ヘテロアリーレン残基」の定義に関して、ヘテロアリール残基の場合に対応する定義が、本説明および特許請求の範囲に適用される。これに関して、その一般組成、その選択およびその置換基は、「ヘテロアリール残基」の上記の定義に対応するが、それぞれ環または環系の随意の2つの炭素原子において、同様に窒素原子において挿入され得るのは二価の残基であるという例外を伴う二価の残基を認識されたい。
【0110】
本説明との関連および特許請求の範囲において、用語「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」は、結合部の1つが、アリール残基(上記の一般定義および明示した定義によるもの)、ヘテロアリール残基(上記の一般定義および明示した定義によるもの)、ヘテロシクリル残基(ヘテロ原子で置換されたシクロアルキル残基の上記の一般定義および明示した定義によるもの)、アリールアミド残基(下記の一般定義および明示した定義によるもの)またはヘテロアリールアミド残基(下記の一般定義および明示した定義によるもの)で置換された、上記の一般定義および明示した定義によるアルキル残基(または、より具体的には、アルキレン残基)を意味する。これらの残基は非置換であっても、置換されていてもよい。
【0111】
本発明の好ましい実施形態において、アラルキル残基は、アリール残基がフェニル残基、置換フェニル残基、ナフチル残基または置換ナフチル残基であり、アルキル(レン)基が直鎖または分枝鎖であり、かつ1〜6個の炭素原子を有するものであり得る基である残基である。非常に特別で好都合な様式では、残基ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルおよびナフチルエチルがアラルキル残基として使用され得、ベンジル残基が特に好ましい。
【0112】
アラルキル残基のアリール基における可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明は該置換基に限定されない。アラルキル残基のアリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。該基の互いに同一であっても異なっていてもよい1つ以上の置換基が、本発明によるアラルキル残基の1つのアリール基に結合してもよい。アリール環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0113】
本発明の好ましい実施形態において、ヘテロアルキル残基は、本発明によるヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基は置換されており、アルキレン基は、直鎖または分枝鎖であり、1〜6個の炭素原子を有するものであり得るような残基である。かかるヘテロアリール残基の環構造は、1つの環を有する環構造であってもよく、互いに結合された2つまたは2つより多くの(「縮環した」)環によって形成された構造(該縮環した環は、同一の数の環構成員を有するものであっても、異なる数の環構成員を有するものであってもよい。)であってもよい。ヘテロ原子は、環系の1つ以上の環に存在し得る。ヘテロアリールアルキル残基のヘテロアリール残基は、好ましくは、1つまたは2つの環からなるものである。互いに縮合している少なくとも2つの環で構成されたヘテロアリールアルキル系の場合、ベンゾ縮合環、すなわち、環の少なくとも1つが芳香族炭素環式6員環である環系が特に好ましい。特に好ましいヘテロアラルキル残基は、フラニルメチルおよび−エチル、チオフェニルメチルおよび−エチル、ピリジルメチルおよび−エチル、インドリルメチルおよび−エチル、クマロニルメチルおよび−エチル、チオナフテニルメチルおよび−エチル、キノリニル−(ベンゾピリジル−)メチルおよび−エチル、キナゾリニル−(ベンゾピリミジニル−)およびキノキシリニル−(ベンゾピラジニル−)メチルおよび−エチルから選択される。
【0114】
ヘテロアリールアルキル残基のこのようなヘテロアリール基における可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明はそれに限定されない。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。互いに同一であっても異なっていてもよい該基の1つ以上の置換基が、本発明による1つのヘテロアリールアルキル残基に結合してもよい。ヘテロアリール環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0115】
本発明の好ましい実施形態において、ヘテロシクロアルキル残基は、−O−、−S−および−NR−(式中、Rは水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル残基(上記に定義)である。)から選択される1個以上のヘテロ原子を含み、ヘテロシクロアルキル残基のアルキル(レン)基は直鎖または分枝鎖であり、1〜6個の炭素原子を有し得る、上記の一般定義および明示した定義によるシクロアルキル残基である。少なくとも2個のヘテロ原子が環内(1つまたは複数)に挿入されている場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、1個のヘテロ原子が環内に組み込まれている。ヘテロ原子含有シクロアルキル残基の好ましい例(ヘテロシクロアルキル残基とも称する)は、本発明のさらなる実施形態では、残基テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびモルホリニルである。
【0116】
このようなヘテロシクロアルキル残基における可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明は該置換基に限定されない。ヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。該基の1つ以上の置換基(互いに同一であっても異なっていてもよい)が、本発明による1つのヘテロシクロアルキル残基に結合してもよい。ヘテロシクロアルキル環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0117】
本説明および特許請求の範囲において用語「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」を使用することで、結合部の1つが、一般式Ar−NR−C(=O)−または一般式Ar−C(=O)−NR−(式中、Rは、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、Arは、上記の一般定義および明示した定義による随意のアリール残基またはヘテロアリール残基である。)のアリールアミド残基またはヘテロアリールアミド残基で置換されている、上記の一般定義および明示した定義によるアルキル残基(より厳密にはアルキレン残基)を認識されたい。このようなアリールまたはヘテロアリール残基は非置換であっても置換していてもよい。アリール−アミドアルキル残基の好ましい例(本発明を限定するものでないが)は、2−、3−もしくは4−安息香酸−アミノ−n−ブチル残基または2−ニトロ−3−、−4−、−5−もしくは−6−安息香酸−アミド−n−ブチル残基であり、ヘテロアリールアミドアルキル残基の好ましいが非限定的な例は、2−、4−、5−または6−ピリジン−3−カルボン酸−アミド−n−ブチル残基である。
【0118】
このようなアリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基における可能な置換基は、好ましくは、線状アルキル基について上記の置換基の群から選択され得るが、本発明は該置換基に限定されない。アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基のアリール基またはヘテロアリール基に対する特に好ましい置換基は、置換基−Cl、−Br、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−i−プロピル、−n−ブチル、−i−ブチル、−sec−ブチルまたは−tert−ブチル、−メトキシ、−エトキシ、−n−プロポキシ、−i−プロポキシ、−n−ブトキシ、−i−ブトキシ、−sec−ブトキシ、−tert−ブトキシ、−NH、−NH(CH)、−N(CH、−NH(C)および−N(C、−カルボニルおよび−カルボキシルである。互いに同一であっても異なっていてもよい該基の1つ以上の置換基が、本発明によるアリールアミドアルキル残基またはヘテロアリールアミドアルキル残基のアリールまたはヘテロアリール基に結合してもよい。芳香族環(系)の置換位置は随意に選択され得る。
【0119】
本説明の文脈および特許請求の範囲において、用語「アラルキレン残基」、「ヘテロアリールアルキレン残基」、「ヘテロシクロアルキレン残基」、「アリールアミドアルキレン残基」および「ヘテロアリールアミドアルキレン残基」の定義に関して、アラルキル残基、ヘテロアリールアルキル残基、ヘテロシクロアルキル残基、アリールアミドアルキル残基およびヘテロアリールアミドアルキル残基に対応する定義が適用される。これらは、その一般組成、その選択およびその置換基が、「アラルキル残基」、「ヘテロアリールアルキル残基」、「ヘテロシクロアルキル残基」、「アリールアミドアルキル残基」および「ヘテロアリールアミドアルキル残基」の上記の定義に対応するが、いずれかの場合においても、アルキレン基の環もしくは環系のそれぞれの随意の2つの炭素原子において、または同様にヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環系の窒素原子においても挿入され得るのが二価の残基であるという例外を伴う二価の残基と理解されたい。
【0120】
本発明によれば、一般式(1)の化合物は、中性分子の形態で存在し、本発明に従って中性の分子として使用される。あるいはまた、一般式(1)の化合物は、無機および/または有機酸との酸付加塩として存在するものであってもよい。分子内における塩基性原子(たいていは、アルカリ性窒素原子)の存在のため、かかる酸付加塩は、1分子以上のH−酸化合物(ブレンステッドの酸)、好ましくは、1分子のH−酸化合物の付加によって形成され、例えば水などの極性媒体における分子の可溶性の改善をもたらす。後者の特性は、薬理学的作用を示すような化合物には、特に効果的である。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、酸付加塩は、薬学的に許容され得る酸の塩であり、一般式(1)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩からなる群より好都合に選択される(が本発明を限定するものでない)。
【0122】
本発明の特に好ましい実施形態において、一般式(1)
【0123】
【化11】

【0124】
のいくつかの例示的(非限定的)な化合物を調製しており、これらを以下の表1に表示および要約する。
【0125】
表1:一般式(1)の具体的な化合物の例
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
【表5】

【0130】
【表6】

【0131】
【表7】

【0132】
【表8】

【0133】
【表9】

【0134】
【表10】

【0135】
DPIV活性の測定
DPIV活性の阻害を、精製組換えヒトDPIV(最終酵素濃度およそ1nM)を使用することにより測定した。アッセイは、0.05%Triton(v/v)、0.05%BSA(w/v)、2mM MgClを補給した0.05M TRIS/HClバッファー(pH7.5)中で行なった。
【0136】
DPIVの酵素活性を、蛍光発生基質ビス−(L−アラニル−プロリル)−ローダミン−110(ビス−トリフルオロアセテート,略号(Ala−Pro)−R110)の加水分解によってアッセイした。最終基質濃度は0.5μΜとした。
【0137】
アッセイは、蛍光測定用の白色マイクロタイタープレートにおいて行なった。試験対象物、基質および酵素は、アッセイバッファー中で希釈した。使用した最大試験対象物濃度は25μΜとした。IC50値の計算のため、各試験対象物の少なくとも16種類のlog2−希釈物を解析した。対照として、試験対象物の非存在下でのDPIV活性および基質の自発加水分解を調べた。
【0138】
蛍光加水分解生成物ローダミン−110の放出を、励起波長485nmおよび発光波長530nmで、マイクロタイター蛍光リーダーを使用することにより、基質添加直後ならびに添加の30、60および120分後に測定した。
【0139】
APN活性の測定
ヒト組換えアミノペプチダーゼN(終濃度およそ5nM)の酵素活性に対する試験対象物の阻害作用を、蛍光発生基質ビス−(L−アラニル)−ローダミン−110(ビス−トリフルオロアセテート、略号(Ala)−R110)を終濃度0.5μΜで使用することによりアッセイした。アッセイは、0.05%Triton(v/v)、0.05%BSA(w/v)、2mM MgClを補給した0.05M TRIS/HClバッファー(pH7.5)中で行なった。
アッセイは、蛍光測定用の白色マイクロタイタープレートにおいて行なった。
【0140】
IC50値の計算のため、各試験対象物の少なくとも16種類のlog2−希釈物(濃度25μΜから開始)を解析した。対照として、試験対象物の非存在下での(Ala)−R110の加水分解活性ならびに自発的基質加水分解を調べた。
【0141】
蛍光加水分解生成物ローダミン−110の放出を、励起波長485nmおよび発光波長530nmで、マイクロタイター蛍光リーダーを使用することにより、基質添加直後ならびに添加の30、60および120分後に測定した。
【0142】
インヒビターの合成
上記の一般式(1)の化合物の合成方法は、有機化合物の通常の合成経路に従う。一般式(1)の具体的な化合物の合成作業に取り組む当業者は、有機化合物の合成経路に関する自身の知識を基にして、文献および有機合成の通常の手引書にてよく知られ、記録された通常の手順を適用することができよう。かかる合成のための出発化合物は、市販品にて容易に入手可能である。
【0143】
一般式(1)の具体的な化合物(具体的には上記の表1に記載のもの)が得られる合成経路を、以下に実験の部において詳細に説明する。
【0144】
本発明によれば、一般式(1)の化合物は、特に、その厳密なキャラクタライゼーションが行なわれ、続いて水性環境において使用される場合、合成において、以下に詳細に記載する方法のうちの1つに従って酸付加塩の形態で得られる。好ましくは、特定の生理学的に(すなわち、薬理学的に、および/または化粧料として)許容され得る無機酸または有機酸との酸付加塩が、キャラクタライゼーションのため、および一般式(1)の化合物の以下の使用のために調製される。本発明の好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩および/またはクエン酸塩からなる群からの薬学的に許容され得る酸の塩が酸付加塩として調製される。
【0145】
上記に一般的および詳細に(式(1)に関して)記載し、例えば、前述の方法のうちの1つを用いて調製され得る化合物は、数多くの目的に使用され得る(該化合物の調製は前記方法のうちの1つに限定されない)。
【0146】
驚くべきことに、本発明により、該化合物は医薬の分野に使用され得ることがわかった。特に、本発明によるこの新規な化合物は、それ自体が、ジペプチジルペプチダーゼIVまたは類似の酵素作用を有する酵素およびアラニルアミノペプチダーゼNまたは類似の酵素作用を有する酵素のインヒビターであることがわかった。
【0147】
本発明の好ましい実施形態において、該化合物は、インヒビター前駆体として成功裡に使用され得る。用語「インヒビター」および「前駆体」の定義に関しては、上記の定義を参照し得る。
【0148】
本発明によるさらに好ましい化合物は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターの前駆体としての使用に供されるものである。すなわち、驚くべきことに、本発明による化合物は、生理学的または病理学的条件下でと反応し、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの高度に有効なインヒビター、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの高度に有効なインヒビターとなり得るような化合物であることがわかった。本発明によれば、上記の式(1)による新規な化合物のうち1つが一般説明もしくは特定の説明に従って使用され得るか、または上記の化合物の1つより多くが組み合わせて使用され得る。前記1つより多くの化合物の組合せは、一般式(1)の1つより多くの化合物、すなわち、一般式(1)の少なくとも2つの化合物の組合せを含むものであり得る。
【0149】
また、本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患およびウイルス因性疾患ならびにI型糖尿病の予防および治療のための、上記の一般説明および詳細説明による一般式(1)の1つ以上の化合物、例えば少なくとも1つの化合物、特に好ましくは厳密に1つの化合物の使用に関する。
【0150】
さらに、本発明は、過剰免疫応答および炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患およびウイルス因性疾患ならびにI型糖尿病の予防および治療のための医薬または化粧料調製物の調製のための、上記の一般説明および詳細説明による一般式(1)の1つ以上の化合物、例えば少なくとも1つの化合物、特に好ましくは厳密に1つの化合物の使用に関する。
【0151】
さらに、本発明は、化粧料調製物の調製のための、上記の一般説明および詳細説明による一般式(1)の1つ以上の化合物、例えば少なくとも1つの化合物、特に好ましくは厳密に1つの化合物の使用に関する。
【0152】
本発明の好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物一般が使用され、好ましくは、表1による化合物が単独もしくは組合せで、または医薬調製物もしくは化粧料調製物の形態で使用される。かかる調製物には、1つまたは1つより多く、すなわち少なくとも2つの前記化合物が含まれる。医薬調製物は、例えば、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性結腸炎、および他の自己免疫疾患ならびに炎症性の疾患、気管支喘息および他のアレルギー性疾患、皮膚および粘膜関連疾患、例えば、乾癬、ざ瘡ならびに線維芽細胞の過剰増殖および分化状態の変更を伴う皮膚科系の疾患、良性の線維形成性および硬化性の皮膚疾患ならびに悪性の線維芽細胞過剰増殖状態、急性神経疾患、例えば、虚血性もしくは出血性卒中、頭蓋脳損傷、心停止、心臓発作後の、あるいは心臓外科処置的介入の帰結としての虚血因性脳損傷など、慢性神経疾患、例えば、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性、前頭側頭型痴呆、パーキンソン病、特に、第17染色体に連鎖しているパーキンソニズム、ハンティングトン病、プリオン因性の病状または疾患および筋萎縮性側索硬化症、動脈硬化、動脈の炎症、ステント再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍、転移、前立腺癌、重症急性呼吸器症候群(SARS)、およびセプシスおよびセプシス様の病状ならびにI型糖尿病などの疾患の予防および治療のためのものである。
【0153】
本発明のさらに好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物一般が、好ましくは表1による化合物が単独もしくは組合せで、または医薬調製物もしくは化粧料調製物の形態で使用される。かかる調製物には、1つ以上の前記化合物が含まれる。医薬調製物は、移植された組織および細胞の拒絶の予防および治療のために使用される。かかる使用の一例として、1つ以上の上記の化合物または1つ以上の上記の化合物を含有する医薬調製物の使用が、同種異系遺伝子(allogene)または異種遺伝子(xenogene)が移植された器官、組織および細胞、例えば、骨髄、腎臓、心臓、肝臓、膵臓、皮膚または幹細胞の移植、ならびに対宿主性移植片病(GvHD)に関して挙げられ得る。
【0154】
本発明のさらに好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物一般が、好ましくは上記の表による化合物が、単独もしくは組合せで、または医薬調製物もしくは化粧料調製物の形態で使用される。かかる調製物には、1つ以上の前記化合物が含有される。医薬調製物は、生物体に埋入される医療デバイスにおける(または該デバイスによって引き起こされる)拒絶または炎症に関する反応の予防および治療のために使用される。該デバイスは、例えば、ステント、血管用バルーン、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、心臓ペースメーカーまたは他のインプラントであり得る。
【0155】
本発明のさらに好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物一般が使用され、好ましくは上記の表1による化合物が単独もしくは組合せで、または医薬調製物または化粧料調製物の形態で使用される。かかる調製物には、1つ以上の前記化合物が、該化合物または調製物がコーティングもしくは湿潤剤の形態で対象物に適用されるような様式で、または少なくとも1つの該化合物もしくは調製物が対象物に物質的に混合されるような様式で含まれている。また、この場合、該化合物または調製物の一方を(適用可能な場合は、逐次または並行して)局所または全身に適用することが確実に可能である。
【0156】
上記と同様にして(および同等の目的のため、または上記の例示的だが網羅していない疾患および病状の予防および治療のために)、一般式(1)の化合物一般が、好ましい実施形態では、上記の表による化合物、ならびに前記化合物を含有する以下の医薬調製物および化粧料調製物が単独で、または1つより多くの組合せで、上記の疾患および病状の処置のための医薬または化粧料調製物を調製するために使用され得る。該調製物は、上記の化合物を後述する量で、任意選択で、それ自体既知の担体物質、補助物質および/または添加剤と組合せて含有できる。
【0157】
本発明の使用との関連において、一般式(1)の少なくとも1つの前記化合物の適用は、それ自体既知である当業者に知られた任意の経路にて行なわれ得る。一般式(1)の化合物一般、さらに好ましくは、上記の表による化合物、または医薬調製物もしくは化粧料調製物(それぞれ、1つ以上の上記の化合物をそれ自体既知の通常の担体物質、補助物質および/または添加剤と組合せて含有する)の適用は、一方において局所適用として(例えば、クリーム剤、軟膏、ペースト剤、ゲル剤、液剤、スプレー剤、リポソームおよびナノソーム、シェイク混合物、分解性「ペグ」製剤(例えば、生理学的条件下で分解性)デポー−マトリックス、ハイドロコロイド絆創膏、硬膏剤、マイクロスポンジ、プレポリマーおよび同様の新規担体基材、ジェット注射または他の皮膚科用主剤/ビヒクル(例えば、点眼適用)の形態で)ならびに他方において全身性適用として(経口、経皮、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、髄腔内適用のため、適当な製剤または適当な生薬形態で、したがって、錠剤、糖衣錠、ロゼンジ剤、カプセル剤、エーロゾル剤、スプレー剤、液剤、乳剤および懸濁液の形態で)のいずれかで行なわれる。
【0158】
また、本発明は、アラニルアミノペプチダーゼNの活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性およびジペプチジルペプチダーゼのIV活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性を阻害するための方法であって、単独で、あるいはアラニルアミノペプチダーゼNの他のインヒビターもしくは類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターおよび/またはDPIVの他のインヒビターもしくは類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターとの組合せのいずれかで、一般式(1)の少なくとも1つの化合物または一般式(1)の少なくとも1つの化合物を含有する医薬調製物もしくは化粧料調製物を、上記の詳細説明に従って、該酵素活性の阻害に必要な量で適用することにより阻害するための方法に関する。一般式(1)の化合物一般または上記の表による化合物の量は、それぞれ、使用対象の疾患または病状、およびかかる疾患および病状の重症度、ならびに適用される投与経路でかなり異なる。選択される一例を示すにすぎず、本発明を限定するものではないが、量は、上記のように、適用単位あたり少なくとも1つの化合物が0.01〜10,000mgの範囲、好ましくは、適用単位あたり0.1〜1,000mgの範囲である。
【0159】
さらに、本発明は、アラニルアミノペプチダーゼNの活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性に局所作用するため、ならびにジペプチジルペプチダーゼのIV活性または類似の酵素作用を有するペプチダーゼの活性に局所作用するための方法であって、単独で、あるいは他のアラニルアミノペプチダーゼNインヒビターもしくは類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターおよび/または他のジペプチジルペプチダーゼIVインヒビターもしくは類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターとの組合せのいずれかで、一般式(1)の少なくとも1つの化合物または医薬調製物または化粧料調製物を、下記の詳細説明に従って、該酵素活性への作用または操作に必要な量で適用することにより局所作用する方法に関する。また、この場合、一般式(1)の化合物の量は、上記の範囲である。
【0160】
さらに、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1つのインヒビターを、一般式(1)の少なくとも1つの化合物から作製する方法に関する。本発明による方法は、一般式(1)の少なくとも1つの化合物を上記の説明による適当な条件に曝露する工程を含む。一般式(1)の少なくとも1つの化合物(これは、本発明のジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)のインヒビターおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)のインヒビターおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターの合成における中間体とみなすことも、その範囲でできる)を、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)の実際のインヒビターおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)実際のインヒビターおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターに変換するための適当な条件に関しては、前述のように当業者は制限されない。
【0161】
さらに、本発明は、数多くの疾患、例えば、過剰免疫応答を伴う疾患(自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶(例えば、対宿主性移植片病(GvHD))、他の慢性炎症性の疾患、神経疾患および脳損傷、皮膚疾患(とりわけ、ざ瘡および乾癬)、腫瘍疾患および特定のウイルス感染(とりわけ、SARS)ならびにI型糖尿病、特に、上記に詳細に挙げた疾患の予防および治療のための方法に関する。これは、例えば、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性結腸炎、および他の自己免疫疾患ならびに炎症性の疾患、気管支喘息および他のアレルギー性疾患、皮膚および粘膜疾患、例えば、乾癬、ざ瘡およびアトピー性皮膚炎、ならびに線維芽細胞の過剰増殖および分化状態の変更を伴う皮膚科系の疾患、良性の線維形成性および硬化性の皮膚疾患ならびに悪性の線維芽細胞過剰増殖状態、急性神経疾患、例えば、虚血性もしくは出血性卒中、頭蓋脳損傷、心停止、心臓発作後の、あるいは心臓外科処置的介入の帰結としての虚血因性脳損傷など、慢性神経疾患、例えば、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性、前頭側頭型痴呆、パーキンソン病、特に、第17染色体に連鎖しているパーキンソニズム、ハンティングトン病、プリオンによって引き起こされる疾患状態および筋萎縮性側索硬化症、動脈硬化、動脈の炎症、ステント再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍、転移、前立腺癌、重症急性呼吸器症候群(SARS)、およびセプシスおよびセプシス様の病状などの疾患の予防および治療のための方法を含む。該方法は、少なくとも1つの化合物または医薬調製物を、下記の詳細説明に従って、該当する疾患の予防または治療に必要な量で適用することを含む。また、この場合、該化合物の例示的(非限定的)な量は、適用単位あたり該化合物が上記の0.01〜10,000mgの範囲、好ましくは、適用単位あたり0.1〜1000mgの範囲である。
【0162】
また、本発明は、上記の一般説明および詳細説明の少なくとも1つの一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、任意選択で1つ以上の薬学的に許容され得る担体物質、補助物質および/または補助剤と組合せて含有する医薬調製物に関する。
【0163】
さらに、本発明は、上記の一般説明および詳細説明の少なくとも1つの一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、適用可能な場合は、1つ以上の化粧料として許容され得る担体物質、補助物質および/または補助剤と組合せて含有する化粧料調製物に関する。
【0164】
このような調製物に関して、薬学的に、または化粧料として許容され得る担体物質、補助物質および/または補助剤は、製薬または化粧品分野の当業者に充分に知られており、なんらさらなる詳細な記載は必要とされないものである。
【0165】
記載の医薬調製物または化粧料調製物は、一般式(1)の少なくとも1つの化合物、一般式(1)の好ましくは1つまたは2つの化合物を、製薬または化粧品分野において所望される効果に必要であるような量で含有してもよい。該量は、特に限定されず、いくつかのパラメータ、例えば、適用経路、具体的な疾患パターンまたは美容状態、哺乳動物(例えば、ヒトなど)であり得る対象の体質、使用される化合物のバイオアベイラビリティなどに依存する。特に好ましい実施形態(本発明を限定しない)では、医薬適用単位または化粧料適用単位には、それぞれ、適用単位あたり化合物が0.01〜2,000mgの範囲、好ましくは、適用単位あたり0.1〜500mgの範囲の量の一般式(1)の少なくとも1つの化合物が含まれる。通常、適用単位は、1日あたり1回以下、さらに好ましくは2回または3回の適用単位での適用が、患者または受容者(例えば、哺乳動物、特にヒト)に対する少なくとも1つの化合物(1)に関する全身性の医薬的または化粧的処置に必要な量の適用に充分な型のもの(およびかかる濃度の一般式(1)の少なくとも1つの化合物を含むもの)であり得る。
【0166】
本発明を以下において、特に好ましい実施形態の実施例により説明する。以下の実施形態の実施例は、本発明を限定するものではなく、例示的な実例を示すものにすぎない。
【実施例】
【0167】
実施例1
一般式(1)の化合物の調製
一般式(1)の化合物を、以下の方法を用いて調製した。
【0168】
スキーム1:α−ヒドロキシ−β−ホモフェニルアラニン断片5
【化12】

試薬および条件:i)1.LiAlH,THF、還流;2.NaOH/HO,BocO/DCM,室温。ii)1.(COCl),DMSO,DIPEA,DCM,−78℃⇒−10℃;2.ビニルマグネシウムブロミド,THF/DCM,室温。iii)ビニルエチルエーテル,PPTS,DCM,室温。iv)NaIO,NaHCO,RuCl,CHCN/CCl/HO,室温。
【0169】
スキーム2:β−ホモフェニルアラニン断片10
【化13】

試薬および条件:i)1.LiAlH,THF,還流;2.NaOH/HO,BocO/DCM,室温。ii)CHSOCl,TEA,DCM,室温。iii)NaCN,DMF,60℃。iv)1.NaOH,HO,100℃;2.BocO/1,4−ジオキサン,室温。v)BnBr,KCO,DMF。vi)LiHMDS,THF,−78℃ 次いで、BrCHCOO−t−BuまたはMeI。vii)H,Pd/C,MeOH。
【0170】
表2:
【表11】

市販の化合物
【0171】
スキーム3:
【化14】

試薬および条件:i)HOBt,DCC,DCM,ジアミノ化合物,0℃⇒室温。ii)a)HOBt,DCC,DCM,モノCbz保護ジアミノ化合物,0℃⇒室温;b)H,Pd/C,MeOH。iii)a)HOBt,DCC,DCM,ニトロアミノ化合物,0℃⇒室温;b)HCOONH,Pd/C,MeOH。iv)5,HOBt,DCC,DCM,0℃⇒室温。v)HCl水溶液(37%),EtOH,室温。
【0172】
表3:
【表12】

【0173】
【表13】

【0174】
スキーム4:
【化15】

試薬および条件:i)HOBt,DCC,DCM,ジアミノ化合物,0℃⇒室温。ii)i,HOBt,DCC,DCM,0℃⇒室温。iii)塩化アルカノイル,TEA,DMAP,DCM,室温。iv)臭化アルキル,NaH,KI,DMF。v)TFA,DCM,室温。
【0175】
表4:
【表14】

【0176】
スキーム5:
【化16】

試薬および条件:i)MgO,THF/HO,塩化アルカノイル。ii)アルデヒド,THF,MS 3Å 次いで、NaCNBH
【0177】
表5:
【表15】

【0178】
スキーム6:
【化17】

試薬および条件:i)PPh,DEAD,フタルイミド,THF,0℃⇒室温。ii)HNNH,EtOH,還流。iii)HOBt,DCC,DCM,3−アミノ安息香酸,0℃⇒室温。iv)HOBt,DCC,DCM,0℃⇒室温。v)TFA,DCM,室温。
【0179】
スキーム7:
【化18】

試薬および条件:i)HOBt,DCC,DCM,モノCbz保護ジアミノ化合物,0℃⇒室温。ii)TFA,DCM,室温。
【0180】
スキーム8:
【化19】

試薬および条件:i)デス−マーチン−ペルヨージナン,DCM,0℃→室温。ii)16,THF,MS 3Å 次いで、NaCNBH,室温。iii)HCl水溶液(37%),EtOH,室温。
【0181】
スキーム9:
【化20】

試薬および条件:i)CDI,THF,室温。ii)LDA,EtOAc,THF,−78℃。iii)TiCl,PyBH,DCM,−78℃。iv)LiOH・HO,MeOH,室温。v)DCC,HOBt,13,DCM,0℃→室温。vi)HCl水溶液(37%),EtOH,室温。
【0182】
表6:
【表16】

【0183】
スキーム10:
【化21】

試薬および条件:i)CDI,チアゾリジン,DCM,室温。ii)LiOH・HO,MeOH,室温。iii)DCC,HOBt,ジアミン,0℃→室温。iv)16,DCC,HOBt,0℃→室温。v)HCl水溶液(37%),EtOH,室温。
【0184】
表7:
【表17】

【0185】
スキーム11:
【化22】

試薬および条件:i)n−BuLi,ペント−4−エノイルクロリド,THF,−78℃→室温。ii)LiHMDS,臭化ベンジル,THF,−78℃→室温。iii)LiAlH,THF,−78℃→室温。iv)フタルイミド,PPh,DEAD,THF,−0℃→室温。v)ヒドラジン水和物,EtOH,還流。vi)BocO,NaHCO,水/1,4−ジオキサン。vii)OsO,NMMO,水/THF,0℃→室温。viii)NaIO,水/THF,0℃。ix)PCC,MS 3Å,ジクロロメタン,室温。x)LiOH,水/THF,室温。xi)1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン,HOBt,DCC,ジクロロメタン,0℃→室温。xii)5,HOBt,DCC,ジクロロメタン,0℃→室温。xiii)HCl,EtOH,室温。
【0186】
スキーム12:
【化23】

試薬および条件:i)CBz−Cl,NaHCO,HO/1,4−ジオキサン。ii)22,DCC,HOBt,DCM,0℃→室温。iii)H,触媒Pd/C,MeOH,室温,1気圧。iv)10c,DCC,HOBt,DCM,0℃→室温。
【0187】
スキーム13:
【化24】

試薬および条件:i)EtOH,濃HCl,還流,17時間。ii)LiHMDS,THF,4−Br−BnBr,−78℃,22時間。iii)1M NaOH水溶液,ジオキサン,室温から還流まで。iv)TFAA,0℃,EtOH。v)ジフェニルホスホン酸アジド,EtN,ベンゼン,還流。vi)BocO,4−DMAP,EtN,CHCl,室温,4時間。
【0188】
スキーム14:
【化25】

試薬および条件:i)アリールボロン酸,触媒Pd(PPh,KCO,トルエン,90℃。ii)LiOH,MeOH/HO。iii)アリールボロン酸,触媒Pd(PPh,KCO,トルエン/EtOH,90℃。iv)LiOH,MeOH/HO。v)62,DCC,HOBt,DCM,0℃→室温。vi)61,DCC,HOBt,DCM,0℃→室温。vii)HCl/EtOH,室温。
【0189】
表8:
【表18】

【0190】
スキーム15:
【化26】

試薬および条件:i)DCC,HOBt,CHCl,0℃から室温まで。ii)t−BuLi,−78℃,CO。iii)TFA,CHCl,0℃から室温まで。iv)CsCO,MeOH/HO。
【0191】
スキーム16:
【化27】

試薬および条件:i)TFA,CHCl,0℃から室温まで 20時間。ii)アミン10c,DCC,HOBt,CHCl,0℃から室温まで iii)CsCO,MeOH/HO,室温,2時間。iv)TFA,CHCl,0℃から室温まで 20時間。
【0192】
スキーム17:
【化28】

試薬および条件:i)DCC,HOBt,CHCl,0℃から室温まで。ii)t−BuLi,B(OMe),THF,−78℃,H,0℃から室温まで。iii)CsCO,MeOH/HO,室温。iv)TFA,CHCl,0℃から室温まで。
【0193】
実験手順
【0194】
【化29】

【0195】
2(スキーム1):D−フェニルアラニン1(5.00g,30.3mmol)を、LiAlH(2.30g,60.5mmol)のTHF(100mL)懸濁液にゆっくり添加した。得られた混合物を6時間加熱還流し、次いで0℃まで冷却した。過剰のLiAlHを、その後、10%NaOH水溶液(5mL)と水(5mL)でクエンチした。スラリーを周囲温度で30分間撹拌し、BocO(6.93g,31.8mmol)含有ジクロロメタン(30mL)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、短経路(short path)のシリカで濾過した。溶媒の留去により1(7.53g)を得た。
【0196】
【化30】

【0197】
3(スキーム1):塩化オキサリル(1.61mL,16.9mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液をドライアイス/アセトンで−78℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド(2.74mL,16.9mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液を10分間にわたって添加した。混合物を15分間撹拌した後、2(3.87g,15.4mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液を20分間にわたって添加した。混合物を30分間撹拌した後、エチル−ジイソプロピル−アミン(10.6mL,61.6mmol)を添加した。温度をゆっくり−10℃まで上げた後、反応混合物を再度−78℃まで冷却した。この冷混合物を両頭針の使用によって、ビニルマグネシウムブロミド(100mLの1Mテトラヒドロフラン溶液,100mmol)とジクロロメタン(100mL)の混合物に移した。得られた混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで、KHSO(200mL,1M水溶液)でクエンチした。層を分離し、水層をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。3(2.28g)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0198】
【化31】

【0199】
4(スキーム1):3(2.51g,9,05mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液を、エチルビニルエーテル(8.7mL,90.5mmol)およびピリジニウム−パラ−トルエンスルホネート(229mg,0.905mmol)とともに210分間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)に供し、4(3.01g)を得た。
【0200】
【化32】

【0201】
5(スキーム1):4(6.48g,18.5mmol)を含むアセトニトリル(55mL)、四塩化炭素(55mL)と水(84mL)の溶液を、その後、NaHCO(10.1g,121mmol)とNaIO(21.8g,102mmol)で処理した。スラリーを30分間撹拌し、RuCl水和物(583mg,2,96mmol)を添加した。周囲温度で3日後、混合物を水(400mL)で希釈し、ジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。水層を濃塩酸でpH<1にし、ジクロロメタン(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。5(4.09g)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0202】
【化33】

【0203】
7(スキーム2):アミノ酸6(1.0当量)を、LiAlH(2.0当量)のTHF(3mL/mmol)懸濁液にゆっくり添加した。得られた混合物を6時間加熱還流し、次いで0℃まで冷却した。過剰のLiAlHを、その後、10%NaOH水溶液(0.17mL/mmol)と水(0.17mL/mmol)でクエンチした。スラリーを周囲温度で30分間撹拌し、BocO(1.1当量)含有ジクロロメタン(1mL/mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、短経路のシリカで濾過した。溶媒の留去により7を得た。
【0204】
【化34】

【0205】
8(スキーム2):7(1.0当量)のジクロロメタン(2mL/mmol)溶液を0℃まで冷却し、トリエチルアミン(1.2当量)とメタンスルホニルクロリド(1.1当量)を添加した。得られた混合物を一晩撹拌し、1M KHSOで洗浄した。溶媒の留去により8を得、これを、さらに精製せずに使用した。
【0206】
【化35】

【0207】
9(スキーム2):8(1.0当量)、シアン化ナトリウム(2.0当量)およびジメチルホルムアミド(1.5ml/mmol)の混合物を60℃まで加熱した。18時間後、溶媒を留去し、残渣を水とジクロロメタン間に分配させた。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。9を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0208】
【化36】

【0209】
10a−c(スキーム2):9(1.0当量)を、水酸化ナトリウム(1g/mmol)の水(2ml/mmol)溶液とともに6時間加熱還流した。周囲温度まで冷却後、混合物を濃塩酸で中和した。NaHCO(2.4当量)と、BocO(1.2当量)の1,4−ジオキサン(3ml/mmol)溶液を添加した。18時間撹拌後、ジオキサンを留去し、残渣を1M塩酸とジクロロメタン間に分配させた。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。10a−cを、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって精製した。
【0210】
【化37】

【0211】
11(スキーム2):10c(1.0当量)、臭化ベンジル(2.0当量)およびKCO(2当量)のジメチルホルムアミド(3mL/mmol)溶液を周囲温度で18時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)に供し、11を得た。
【0212】
【化38】

【0213】
12(スキーム2):11(1.0当量)のテトラヒドロフラン(10mL/mmol)溶液を−78℃まで冷却した。LiHMDS(2.2当量,1Mテトラヒドロフラン溶液)を添加し、得られた混合物を−78℃で2時間撹拌した。ハロゲン化アルキル(1.5当量)をニートで添加し、撹拌をさらに4時間継続した。飽和NHCl水溶液の添加によって反応混合物をクエンチした。層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。12を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0214】
【化39】

【0215】
10d−e(スキーム2):12(1.0当量)のメタノール(6mL/mmol)溶液を、10%パラジウム担持活性炭(0.10当量)で処理した。この懸濁液を水素雰囲気下、大気圧および周囲温度で2時間撹拌した。濾過および留去により、10d−eを得た(さらなる精製なし)。
【0216】
【化40】

【0217】
13:方法i(スキーム3,対称非保護ジアミン(HRN−X−NRH)):10(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、HRN−X−NRH(5当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。13を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0218】
13:方法ii(スキーム3,モノ−ベンジルオキシカルボニル保護ジアミン(BnO−CORN−X−NRH)):10(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、BnOCORN−X−NRH(1当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。残渣をメタノール(3ml/mmol)に溶解させ、10%パラジウム担持活性炭(0.05当量)を添加した。この懸濁液を水素雰囲気下、大気圧で16時間撹拌した。濾過および留去によって得られた粗製生成物をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)に供した。
【0219】
13:方法iii(スキーム3,ニトロアミノ化合物(ON−X−NRH)):10(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、ON−X−NRH(1.0当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。残渣をメタノール(5ml/mmol)に溶解させ、10%パラジウム担持活性炭(0.1当量)とギ酸アンモニウム(4.6当量)を添加した。周囲温度で3時間後、溶媒を留去し、残渣を水とジクロロメタン間に分配させた。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。13をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって精製した。
【0220】
【化41】

【0221】
14(スキーム3):5(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、13(1.0当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去し、粗製物14を、さらに精製せずに使用した。
【0222】
【化42】

【0223】
15(スキーム3):14(1.0当量)を、濃塩酸(37%,0.1ml/mmol)のエタノール(0.9ml/mmol)溶液に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、15を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0224】
【化43】

【0225】
16(スキーム4):5(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、HRN−X−NRH(5当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。16を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0226】
【化44】

【0227】
17(スキーム4):10(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、16(1.0当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。17を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0228】
【化45】

【0229】
18:方法iii(スキーム4,R=アルカノイル):17(1.0当量)のジクロロメタン(10mL/mmol)溶液を、トリエチルアミン(4当量)、塩化アルカノイル(3当量)およびN,N’−ジメチルアミノピリジン(0.2当量)で処理した。混合物を18時間撹拌し、その後、直接、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)に供し、18を得た。
【0230】
方法iv(スキーム4,R=アルキル):17(1.0当量)のN,N’−ジメチルホルムアミド(20mL/mmol)溶液を、ヨウ化カリウム(2当量)、臭化アルキル(5当量)および水素化ナトリウム(1.5当量)で処理した。反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、続いて、水とジエチルエーテル間に分配させた。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。18を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0231】
【化46】

【0232】
19(スキーム4):18(1.0当量)を、ジクロロメタン(0.5ml/mmol)とトリフルオロ酢酸(0.5ml/mmol)の混合物に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、15を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0233】
【化47】

【0234】
20:方法i(スキーム5,R=アルカノイル):15(1.0当量)を含むテトラヒドロフラン(20mL/mmol)と水(5ml/mmol)の溶液に、酸化マグネシウム(5当量)を添加し、得られた懸濁液を45分間撹拌した後、塩化アルカノイル(2当量)を添加した。混合物を15時間撹拌し、続いて、水と酢酸エチル間に分配させた。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。20を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0235】
方法ii(スキーム5,R=アルキル):15(1.0当量)のテトラヒドロフラン(20mL/mmol)溶液に、モレキュラーシーブ3Å(1g/mmol)とアルデヒド(2.0当量)を添加し、得られた懸濁液を2時間撹拌した後、ナトリウムシアノボロヒドリド(4.0当量)を添加した。混合物を15時間撹拌し、続いて、水と酢酸エチル間に分配させた。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。20を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0236】
【化48】

【0237】
21(スキーム6):7(1.0当量)のテトラヒドロフラン(10ml/mmol)溶液に、トリフェニルホスフィン(3.0当量)とフタルイミド(1.5当量)を添加し、混合物を0℃まで冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(2.5当量)を滴下した。続いて、冷却浴を除き、反応混合物を16時間撹拌した。溶媒の除去およびメタノールからの再結晶により21を得た。
【0238】
【化49】

【0239】
22(スキーム6):21(1.0当量)とヒドラジン水和物(1mL/mmol)を含むエタノール(20mL/mmol)の溶液を2時間加熱還流した。析出物を濾別し、濾液を酢酸エチル(160ml/mmol)で希釈した。この溶液を水で2回および飽和NaCl水溶液で1回洗浄した。乾燥(MgSO)および留去により22を得、これを、さらに精製せずに使用した。
【0240】
【化50】

【0241】
23(スキーム6):5(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.05当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.05当量)を添加した。この温度で1時間後、3−アミノ安息香酸(1.3当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、1M KHSO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去し、得られた粗製物23を、さらに精製せずに使用した。
【0242】
【化51】

【0243】
24(スキーム6):23(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、22(1.1当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去し、得られた粗製物24を、さらに精製せずに使用した。
【0244】
【化52】

【0245】
25(スキーム6):24(1.0当量)を、ジクロロメタン(0.5ml/mmol)とトリフルオロ酢酸(0.5ml/mmol)の混合物に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、25を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0246】
【化53】

【0247】
26:(スキーム7):5(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、BnOCOHN−(CH−NHMe(1当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)に供した。
【0248】
【化54】

【0249】
27(スキーム7):26(1.0当量)を、ジクロロメタン(0.5ml/mmol)とトリフルオロ酢酸(0.5ml/mmol)の混合物に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、27を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0250】
【化55】

【0251】
28(スキーム8):7(267mg)のジクロロメタン(8ml)溶液を、0℃にて、デス−マーチン−ペルヨージナン溶液(2.06ml,15%ジクロロメタン溶液)で処理し、続いて、この温度で15分間および周囲温度でさらに10分間撹拌した。反応混合物を直接、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)に供し、28を得た(213mg)。
【0252】
【化56】

【0253】
29(スキーム8):16(77.1mg)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液に、モレキュラーシーブス3Å(100mg)と28(44.6mg)を添加し、得られた懸濁液を1時間撹拌した後、ナトリウムシアノボロヒドリド(29.5mg)を添加した。混合物を24時間撹拌し、続いて、水と酢酸エチル間に分配させた。有機層を乾燥させ(MgSO)、粗製物20(84mg)を、さらに精製せずに使用した。
【0254】
【化57】

【0255】
30(スキーム8):29(84mg)を、濃塩酸(0.5ml)のエタノール(4.5ml)溶液に溶解させ、周囲温度で16時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、30を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0256】
【化58】

【0257】
32(スキーム9):Boc−D−フェニルアラニン31(1.55g)を含むテトラヒドロフラン(10ml)を、周囲温度にて、N,N’−カルボニルジイミダゾール(1.04g)で処理し、3時間撹拌した。混合物をジエチルエーテル(100ml)で希釈し、水(2×50ml)とブライン(50ml)で洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の留去により32を得た(1.65g)。
【0258】
【化59】

【0259】
33(スキーム9):ジイソプロピルアミン(2.20ml)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を0℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(6.28ml、2.5Mテトラヒドロフラン溶液)で処理し、この温度で20分間撹拌した。この溶液を−78℃まで冷却し、酢酸エチル(1.54ml)のテトラヒドロフラン(3.5ml)溶液をゆっくり添加した。1時間後、32(1.65g)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液をゆっくり添加した。得られた混合物を−78℃で2時間撹拌し、次いで、KHSO(50mL、1M水溶液)でクエンチした。層を分離し、水層をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、留去し、33を得た(1.75g)(さらに精製せず)。
【0260】
【化60】

【0261】
34(スキーム9):33(565mg)のジクロロメタン(17ml)溶液を冷却し(−78℃)、TiCl(0.222ml)で処理した。3分後、ピリジン−ボラン−錯体(0.187ml)を滴下し、混合物を30分間撹拌した。塩酸(20ml,1M)を添加し、温度をゆっくり周囲温度まで上げた。層を分離し、水層をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。34(351mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0262】
【化61】

【0263】
35(スキーム9):34(341mg)をメタノール(8ml)に溶解させ、LiOH・HO(212mg)を添加した。室温で4時間後、メタノールを減圧留去し、残渣をKHSO(20ml)と酢酸エチル(20ml)間に分配させた。層を分離し、水層を酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去し、35を得(299mg)、これを、さらに精製せずに使用した。
【0264】
【化62】

【0265】
36(スキーム9):35(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、13(1.0当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。粗製物14を、さらに精製せずに使用した。
【0266】
【化63】

【0267】
37(スキーム9):36(1.0当量)を、濃塩酸(37%,0.1ml/mmol)のエタノール(0.9ml/mmol)溶液に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、37を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0268】
【化64】

【0269】
39(スキーム10):38(3.02g)のジクロロメタン(25ml)を、周囲温度にて、N,N’−カルボニルジイミダゾール(1.51g)で処理し、2時間撹拌した。チアゾリジン(0.736ml)を添加し、得られた混合物を一晩撹拌した。この溶液を、その後、KHSO(20ml,1M)および飽和NaHCOで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、留去した。39(2.70g)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0270】
【化65】

【0271】
40(スキーム10):39(525mg)をメタノール(10ml)に溶解させ、LiOH・HO(69.8mg)を添加した。室温で15分後、メタノールを減圧留去し、残渣をKHSO(20ml)とジクロロメタン(20ml)間に分配させた。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。40(257mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって精製した。
【0272】
【化66】

【0273】
41(スキーム10):10(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、HN−X−NH(5当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。41を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0274】
【化67】

【0275】
42(スキーム10):16(1.0当量)のジクロロメタン(10ml/mmol)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、41(1.0当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去し、粗製物42を、さらに精製せずに使用した。
【0276】
【化68】

【0277】
43(スキーム10):42(1.0当量)を、濃塩酸(37%,1ml/mmol)のエタノール(9ml/mmol)溶液に溶解させ、周囲温度で18時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(10ml/mmol)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g/mmol)を添加し、この懸濁液を30分間激しく撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、43を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0278】
【化69】

【0279】
45(スキーム11):44(4.96g)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液を−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(12.2ml,2.5Mテトラヒドロフラン溶液)をゆっくり添加した。混合物をこの温度で45分間撹拌した後、ペント−4−エン酸塩化物(4.03ml)を添加した。1時間後、混合物をゆっくり周囲温度まで昇温させ、さらに15時間撹拌した。反応液を水(100ml)でクエンチし、層を分離した。水層を酢酸エチル(100ml)で2回抽出し、合わせた有機層を、その後、飽和NaHCO水溶液とブラインで洗浄した。乾燥(MgSO)および溶媒の留去後、45(7.12g)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって精製した。
【0280】
【化70】

【0281】
46(スキーム11):45(638mg)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を−78℃まで冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(2.73ml,1.0Mテトラヒドロフラン溶液)をゆっくり添加した。混合物をこの温度で2時間撹拌した後、臭化ベンジル(0.62ml)のテトラヒドロフラン(3ml)溶液を添加した。2時間後、混合物をゆっくり周囲温度まで昇温させ、さらに15時間撹拌した。反応液を水(30ml)でクエンチし、層を分離した。水層を酢酸エチル(30ml)で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。46(654mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0282】
【化71】

【0283】
47(スキーム11):LiAlH(70.5mg)のテトラヒドロフラン(8ml)懸濁液を−78℃まで冷却し、46(623mg)のテトラヒドロフラン(8ml)溶液をゆっくり添加した。30分後、混合物をゆっくり周囲温度まで昇温させ、1時間撹拌した。反応液を水(0.8ml)でクエンチし、短経路のセライト(登録商標)に通して濾過した。溶媒を留去し、47(158mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0284】
【化72】

【0285】
48(スキーム11):47(158mg)、フタルイミド(145mg)およびトリフェニルホスフィン(295mg)を含むテトラヒドロフラン(9ml)の溶液を0℃まで冷却し、アゾジカルボン酸ジエチル(0.155ml)で処理した。混合物を周囲温度まで昇温させ、16時間撹拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)に供し、48を得た(276mg)。
【0286】
【化73】

【0287】
49(スキーム11):48(276mg)のエタノール(10ml)溶液を、ヒドラジン水和物(0.28ml)で処理し、得られた混合物を3時間加熱還流した。周囲温度まで冷却後、析出物を濾別した。濾液を飽和NaHCO(20ml)とジクロロメタン(20ml)間に分配させた。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×20ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒の留去により49を得(142mg)、これを、さらに精製せずに使用した。
【0288】
【化74】

【0289】
50(スキーム11):49(1.07g)を、NaHCO(1.03g)を含む水(12ml)と重炭酸ジ−tert−ブチル(1.60g)を含む1,4−ジオキサン(12ml)で処理した。混合物を5時間撹拌し、続いて、水(50ml)とジエチルエーテル(50ml)間に分配させた。層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させた(MgSO)。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/ジエチルエーテル)に供し、50を得た(1.67g)。
【0290】
【化75】

【0291】
51(スキーム11):50(800mg)を含むテトラヒドロフラン(22ml)と水(22ml)の溶液を0℃まで冷却し、N−メチルモルホリンN−オキシド(473mg)と四酸化オスミウム(1ml,2.5%t−ブタノール溶液)を添加した。6時間後、さらなるN−メチルモルホリンN−オキシド(473mg)を添加し、混合物をさらに16時間撹拌した。反応混合物をNa(10ml,1M水溶液)と酢酸エチル(50ml)間に分配させた。層を分離し、水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させた(MgSO)。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル)に供し、51を得た(880mg)。
【0292】
【化76】

【0293】
52(スキーム11):51(800mg)のテトラヒドロフラン(52ml)溶液を0℃まで冷却し、NaIO(929mg)を含む水(5.2ml)で処理した。0℃で3.5時間後、反応混合物を水(20ml)と酢酸エチル(50ml)間に分配させた。層を分離し、水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させた(MgSO)。溶媒を留去し、残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ペンタン/酢酸エチル)に供し、52を得た(540mg)。
【0294】
【化77】

【0295】
53(スキーム11):52(540mg)のジクロロメタン(6ml)(モレキュラーシーブス(800mg)含有)溶液を、一度のクロロクロム酸ピリジニウム(842mg)で処理した。混合物を周囲温度で一晩撹拌し、次いで、短経路のセライトに通して濾過した。溶媒の留去およびシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/酢酸エチル)により53を得た(390mg)。
【0296】
【化78】

【0297】
54(スキーム11):53(250mg)をテトラヒドロフラン(5.8ml)に溶解させ、LiOH水溶液(4.7ml,1M)を添加した。周囲温度で2時間後、溶媒を減圧留去し、残渣を塩酸(10ml,3M)とジエチルエーテル(20ml)間に分配させた。層を分離し、水層をジエチルエーテル(2×20ml)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。54(240mg)をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール)によって精製した。
【0298】
【化79】

【0299】
55(スキーム11):54(94.0mg)のジクロロメタン(5ml)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(56、3mg)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(99.2mg)を添加した。この温度で1時間後、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン(164mg)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(40ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。55(71.3mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0300】
【化80】

【0301】
56(スキーム11):5(69.4mg)のジクロロメタン(3ml)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(33.2mg)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(58.5mg)を添加した。この温度で1時間後、55(71.3mg)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(40ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。粗製物56(164mg)を、さらに精製せずに使用した。
【0302】
【化81】

【0303】
57(スキーム11):粗製物56(164mg)を、濃塩酸(37%,1ml)のエタノール(9ml)溶液に溶解させ、周囲温度で一晩撹拌した。溶媒を留去し、残渣をジクロロメタン(15ml)に懸濁させた。炭酸ナトリウム10水和物(1g)を添加し、この懸濁液を激しく30分間撹拌した。MgSOの添加および濾過後、溶媒を留去し、57(56.3mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール)によって単離した。
【0304】
【化82】

【0305】
59(スキーム12):m−アミノ安息香酸(3.52g)を含む水(50ml)に、その後、NaHCO(5.40g)と、クロロギ酸ベンジル(4.51ml)の1,4−ジオキサン(30ml)溶液を添加した。17時間後、混合物をKHSO(1M,70ml)に注入し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。2−プロパノールからの再結晶により純粋な59を得た(4.83g)。
【0306】
【化83】

【0307】
60(スキーム12):59(526mg)のジクロロメタン(15ml)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(288mg)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(505mg)を添加した。この温度で1時間後、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン(71.3mg)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(40ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。60(732mg)を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0308】
【化84】

【0309】
61(スキーム12):60(732mg)をメタノール(10ml)に溶解させ、10%パラジウム担持活性炭(72mg)を添加した。この懸濁液を水素雰囲気下、大気圧で16時間撹拌した。濾過および留去によって得られた粗製生成物を、さらに精製せずに使用した。
【0310】
【化85】

【0311】
62(スキーム12):10c(573mg)のジクロロメタン(15ml)溶液を0℃まで冷却し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(270mg)とΝ,Ν’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(563mg)を添加した。この温度で1時間後、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン(1.20ml)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。62を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/トリエチルアミン)によって単離した。
【0312】
【化86】

【0313】
64(スキーム13):(S)−リンゴ酸63のエタノール(0.8ml/mmol)溶液に、室温で、触媒量の濃HClを添加し、反応液を17時間還流した。この期間の後、反応液を室温にし、溶媒を留去した。得られた懸濁液をEtOで希釈し、次いで、飽和NaHCO水溶液で洗浄し(3×50ml)、最後にブライン溶液で洗浄した。合わせた有機部分をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた油状生成物を真空蒸留に供するとリンゴ酸(S)−ジエチルが得られる。単離収率(74%)[沸点 122℃(2mm)]。
【0314】
【化87】

【0315】
65(スキーム13):ジエチルエステル64(1当量)のTHF(3ml/mmol)溶液に、窒素雰囲気下で−78℃まで冷却したLiHMDS(1M THF溶液)(2.2当量)を40分間にわたって滴下し、反応を同じ温度でさらに1時間継続した。この後、反応液を−30℃まで昇温させ、次いで−78℃まで再冷却した。この温度で、臭化4−ブロモベンジル(2.0当量)を、少量に分けて、反応液に導入し、同じ温度でさらに1時間持続させ、次いで、22時間にわたって−30℃まで昇温させた。反応液を−78℃まで冷却し、飽和NHCl水溶液の添加によってクエンチし、次いで室温まで昇温させた。層を分離し、水層をMTBエーテルで抽出した。合わせた有機部分を、逐次、HO、次いでブライン溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた油状物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理した(ペンタン/ジエチルエーテル(1:1)を使用)。単離収率(91%)。
【0316】
【化88】

【0317】
66(スキーム13):ジエチルエステル65(1当量)のジオキサン(2ml/mmol)溶液に、室温で、1M NaOH水溶液(22ml/mmol)を添加し、反応液を加熱還流した。5時間後、反応液を室温にし、揮発物質を留去した。得られた懸濁液を1M HCl水溶液で酸性にし、次いでEtOAcで抽出した。層を分離し、水層をEtOAc(3×50ml)で抽出した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた生成物は、さらに精製せずに次のシーケンス工程で使用する。
【0318】
【化89】

【0319】
67(スキーム13):ジカルボン酸66(1当量)に、窒素雰囲気下、0℃でTFAA(3.25当量)を滴下した。反応をさらに30分間継続し、次いで室温まで昇温させた。4時間後、反応を停止させ、すべての揮発物質を留去した。得られた懸濁液をEtOH(0.8ml/mmol)に溶解させ、室温で持続させた。反応終了後、すべての揮発物質を留去し、得られたシロップ状の液状物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理した(ペンタンを使用)。単離収率(77%)。
【0320】
【化90】

【0321】
68(スキーム13):モノカルボン酸67(1当量)を含むベンゼン(3.4ml/mmol)に、窒素雰囲気下、室温で、EtN(1.15当量)を滴下した。10分後、ジフェニルホスホン酸アジド(DPPA)(1.10当量)を反応液に滴下した。得られた懸濁液を、さらに4時間還流した。この後、反応液を室温にし、揮発物質を留去した。得られた懸濁液を水で希釈し、次いでEtOAcで抽出した。合わせた有機部分を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた生成物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理した(ペンタン/EtOAc(13:10)を使用)。単離収率(68%)。
【0322】
【化91】

【0323】
69(スキーム13):オキサゾリジノン68(1当量)を含むCHCl(1ml/mmol)に、窒素雰囲気下、室温で、BocO(1.1当量)、4−DMAP(0.2当量)およびEtN(1.2当量)を逐次添加した。4時間後、反応液をHOでクエンチし、次いで、1M HCl水溶液で酸性化した。層を分離し、水層をCHClで抽出した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行なった(ペンタン/EtOAc(1:1)を使用)。単離収率(95%)。
【0324】
【化92】

【0325】
70(スキーム14):69(1当量)、ボロン酸アリール(2当量)、KCO(3当量)とトルエン(3ml/mmol)の混合物を、この懸濁液中でNを15分間起泡させることにより脱気した。Pd(PPh(0.05当量)を添加し、反応混合物を90℃で2時間加熱した。冷却した混合物を酢酸エチル(30ml/mmol)で希釈し、逐次、塩酸(1M,10ml/mmol)、飽和NaHCO水溶液(10ml/mmol)およびブライン(10ml/mmol)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。70を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジエチルエーテル/ペンタン)によって単離した。
【0326】
【化93】

【0327】
71(スキーム14):69(1当量)、ボロン酸アリール(2当量)、KCO(3当量)とトルエン(3ml/mmol)およびエタノール(1.5ml/mmol)の混合物を、この懸濁液中でNを15分間起泡させることにより脱気した。Pd(PPh(0.05当量)を添加し、反応混合物を90℃で2時間加熱した。冷却した混合物を酢酸エチル(30ml/mmol)で希釈し、逐次、塩酸(1M,10ml/mmol)、飽和NaHCO水溶液(10ml/mmol)およびブライン(10ml/mmol)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。71を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジエチルエーテル)によって単離した。
【0328】
【化94】

【0329】
72a(Ar=フェニル,チオフェン−3−イル,スキーム14):70(1当量)をメタノール/水(9:1,10ml/mmol)に溶解させ、LiOH・HO(5当量)を添加した。室温で5時間後、メタノールを減圧留去し、残渣を塩酸(1M,20ml/mmol)とジクロロメタン(20ml/mmol)間に分配させた。層を分離し、水層をジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、溶媒を留去した。72aを、なんら精製を行なわずに、さらなる反応に使用した。
【0330】
【化95】

【0331】
72b(Ar=3−ピリジル,5−ピリミジニル,スキーム14):70(1当量)をメタノール/水(9:1,10ml/mmol)に溶解させ、LiOH・HO(2当量)を添加した。室温で5時間後、メタノールを減圧留去した。72bを、なんら精製を行なわずに、さらなる反応に使用した。
【0332】
【化96】

【0333】
73(スキーム14):粗製物72(1当量)をジクロロメタン(10ml/mmol)に溶解または懸濁させ、0℃まで冷却した。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、62(1当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。73を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0334】
【化97】

【0335】
74(スキーム14):粗製物72(1当量)をジクロロメタン(10ml/mmol)に溶解または懸濁させ、0℃まで冷却した。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.3当量)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.5当量)を添加した。この温度で1時間後、61(1当量)を添加し、温度を周囲温度まで上げた。この懸濁液を18時間撹拌した後、濾過し、酢酸エチル(ジクロロメタン1ml当たり5ml)で希釈した。濾液を、その後、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO)、留去した。74を、シリカでのフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン/ジエチルエーテル)によって単離した。
【0336】
【化98】

【0337】
75(スキーム14):73(1.0当量)を、濃塩酸(37%,0.1ml/mmol)のエタノール(0.9ml/mmol)溶液に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣を可能な限り最小量のメタノールに溶解させた。ジエチルエーテル(メタノールの5〜10倍量)を添加すると、75が析出し、濾別し、高真空にて乾燥させた。
【0338】
【化99】

【0339】
76(スキーム14):74(1.0当量)を、濃塩酸(37%,0.1ml/mmol)のエタノール(0.9ml/mmol)溶液に溶解させ、周囲温度で6時間撹拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣を可能な限り最小量のメタノールに溶解させた。ジエチルエーテル(メタノールの5〜10倍量)を添加すると、76が析出し、濾別し、高真空にて乾燥させた。
【0340】
【化100】

【0341】
77(スキーム15):窒素雰囲気下で0℃まで冷却したオキサゾリジンカルボン酸68(1当量)のCHCl溶液に、HOBT(1.3当量)とDCC(1.5当量)を添加し、反応を同じ温度でさらに1時間継続した。この期間の後、アミン(1.0当量)のCHCl溶液を滴下し、反応を15分間継続し、次いで室温まで昇温させた。6時間後、反応液をEtOAcで希釈し、固形の副生成物を濾過し、濾液を、逐次、飽和NaHCO水溶液、次いでブライン溶液で洗浄した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行なった(CHCl/MeOH(5:1)を使用)。
【0342】
【化101】

【0343】
78(スキーム15):窒素雰囲気下で−78℃まで冷却したペプチド77(1.0当量)のTHF(6ml/mmol)溶液に、t−BuLi(1.7Mペンタン溶液)を滴下した。30分後、窒素供給口を二酸化炭素ガス供給口と交換し、−78℃でさらに15分間持続させ、次いで、二酸化炭素の通過を継続しながら室温まで昇温させた。3時間後、水の添加により反応液をクエンチし、揮発物質を留去し、得られた懸濁液を酢酸で酸性化し、EtOAcで抽出した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた生成物は、さらに精製せずに次のシーケンス工程で使用する。
【0344】
【化102】

【0345】
79(スキーム15):窒素雰囲気下で0℃まで冷却したオキサゾリジノンカルボン酸78(1当量)のCHCl溶液に、トリフルオロ酢酸(15当量)を滴下した。15分後、反応液を室温まで昇温させた。18時間後、反応を停止させ、揮発物質を留去した。得られた生成物は、さらに精製せずに次のシーケンス工程で使用する。
【0346】
【化103】

【0347】
80(スキーム15):アミノカルボン酸79(1当量)のEtOH溶液に、室温で、1M NaOH水溶液(30ml/mmol)を添加し、反応を室温で継続した。3時間後、反応を停止させ、揮発物質を留去した。得られた残渣を1M HCl水溶液で酸性にし、次いでEtOAcで抽出した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、次いで濃縮し、目的生成物80を得た。
【0348】
【化104】

【0349】
81(スキーム16):窒素雰囲気下で0℃まで冷却したブロモオキサゾリジノン77(1当量)のCHCl溶液に、トリフルオロ酢酸(15当量)を滴下し、反応をさらに15分間継続し、次いで室温まで昇温させた。20時間後、反応を停止させ、揮発物質を留去した。シリカゲルでの残渣のクロマトグラフィー精製を行なった(CHCl/MeOH(9:1)を使用)。単離収率(94%)。
【0350】
【化105】

【0351】
82(スキーム16):窒素雰囲気下で0℃まで冷却した4−ブロモ−フェニルオキサゾリジノン69(1当量)のCHCl溶液に、HOBT(1.3当量)とDCC(1.5当量)を添加した。1時間後、アミン10c(1.0当量)のCHCl溶液を滴下した。反応をさらに30分間継続し、次いで室温まで昇温させた。22時間後、反応液をEtOAcで希釈し、濾過し、濾液を、逐次、飽和NaHCO水溶液、次いでブライン溶液で洗浄した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行なった(CHCl/MeOH(20:1)を使用)。単離収率(79%)。
【0352】
【化106】

【0353】
83(スキーム16):ブロモオキサゾリジノン(1当量)を含むMeOH(5.2ml/mmol)に、窒素雰囲気下、室温で、CSCOを一度に添加した。2時間後、反応液をEtOAc/HO(6:1)間に分配させた。層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機部分をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた生成物は、さらに精製せずに次のシーケンス工程で使用する。
【0354】
【化107】

【0355】
84(スキーム16):窒素雰囲気下で0℃まで冷却したブロモオキサゾリジノン(1当量)のCHCl溶液に、トリフルオロ酢酸(15当量)を滴下し、反応をさらに15分間継続し、次いで室温まで昇温させた。20時間後、反応を停止させ、揮発物質を留去した。シリカゲルでフラッシュクロマトグラフィー精製を行なった(CHCl/MeOH(65:35)を使用)。
【0356】
【化108】

【0357】
85(スキーム17):窒素雰囲気下で0℃まで冷却したブロモオキサゾリジノンカルボン酸(1当量)のCHCl溶液に、HOBT(1.3当量)とDCC(1.5当量)を添加した。1時間後、アミン(1.0当量)のCHCl溶液を滴下した。反応をさらに15分間継続し、次いで室温まで昇温させた。6時間後、反応液をEtOAcで希釈し、濾過し、濾液を、逐次、飽和NaHCO水溶液、次いでブライン溶液で洗浄した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行なった(CHCl/MeOH(5:1)を使用)。
【0358】
【化109】

【0359】
86(スキーム17):窒素雰囲気下で−78℃まで冷却したペプチドのTHF(6ml/mmol)溶液に、t−BuLi(1.7Mペンタン溶液)(6.25当量)を滴下した。反応液は、すぐに薄黄色になった。反応をさらに15分間継続し、次いで、−20℃まで昇温させ、次いで、さらに15分間継続し、次いで−78℃まで再冷却した。B(OMe)のTHF(1.5ml/mmol)溶液を滴下し、これを室温まで昇温させた。40分後、反応液を0℃まで冷却し、AcOHのTHF溶液(1ml/mmol)を滴下し、さらに15分間継続し、次いで、35%H水溶液のTHF溶液(1ml/mmol)を滴下した。16時間後、飽和NaHCO水溶液の添加によって反応液をクエンチし、次いでEtOAcで抽出した。合わせた有機部分をMgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーを行なった(EtO/MeOH(15:1)を使用)。単離収率(76%)。
【0360】
【化110】

【0361】
87(スキーム17):ヒドロキシオキサゾリジノン(1当量)を含むMeOH(5.2ml/mmol)に、窒素雰囲気下、室温で、CSCO(2.85当量)を一度に添加した。22時間後、反応液をEtOAc/HO(6:1)間に分配させた。層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機部分をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。生成物は、さらに精製せずに次のシーケンス工程で使用する。
【0362】
【化111】

【0363】
88(スキーム17):窒素雰囲気下で0℃まで冷却した化合物(1当量)のCHCl(30ml/mmol)溶液に、トリフルオロ酢酸(15当量)を滴下し、反応をさらに15分間継続し、次いで、これを室温まで昇温させた。20時間後、反応を停止させ、揮発物質を留去した。シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製を行なった(CHCl/MeOH(7:3)を使用)。
【0364】
実施例2
SKH−1hrマウスにおけるクロトン油誘導性急性炎症に対する効果
クロトン油は、アジアに自生している、または栽培されているトウダイグサ科に属する樹木Croton tigliumの種子から調製される。外用すると、この油は、典型的な急性炎症の徴候:赤み、発熱および腫脹を伴う急性の皮膚刺激を引き起こすことが知られている。症状は6時間で最大に達し、適用から24〜48時間後に衰退する。この動物モデルは、哺乳動物における非特異的急性皮膚炎症の一般的に認められたモデルの1つである。
【0365】
典型的な実験設定である20μlの1%クロトン油含有アセトンを、3匹の雌と雄のSKH−1hrヌードマウスの群(8〜12週齢)の右の耳の前面と後面に経表面的に適用した。
耳の腫脹を、マイクロメートルゲージによって測定し、耳の表面温度を、炎症の指標として、クロトン油適用前と適用の6時間後および24時間後に接触体温計によって測定した。
【0366】
試験化合物は、異なる実験において、それぞれ、経口投与または腹腔内注射した。投薬量は、経口および腹腔内適用で10mg/kgBWとした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または1%カルボキシメチルセルロース(CMC)を腹腔内投与および経口投与のそれぞれのビヒクル対照として使用した。
デキサメタゾン(5mg/kgBW)を陽性対照として適用した。
先行技術で知られたDPIVおよび/またはAPNインヒビターを用い、上記の試験と同様にして比較試験を行なった。
【0367】
炎症パラメータの変化割合を、式:
ΔIt/ΔIc×100
[式中、IcおよびItは、それぞれ、対照および処置マウスの耳の厚み(d[μm])および温度(t[℃])の増分を示す。]
に従って計算した。
【0368】
阻害の結果を以下の表9に示す。
先行技術で知られた比較化合物で得られた効果を以下の表10に示す。
【0369】
表9: SKH−1hrマウスでの一般式(1)の具体的な化合物によるクロトン油誘導性急性炎症に対する効果
【表19】

【0370】
【表20】

【0371】
【表21】

【0372】
【表22】

【0373】
【表23】

【0374】
表10:対照物質ならびにDPIVおよびAPNの既知インヒビターによるSKH−1hrマウスのクロトン油誘導性急性炎症に対する効果
【表24】

【0375】
実施例3
ヒト末梢血単球およびTリンパ球の増殖の阻害
健常ヒト志願者由来の末梢血単球(PBMC)を、密度勾配遠心分離によって新たに単離した。Tリンパ球(T細胞,Tc)をPBMC画分からナイロンウール付着によって単離した。細胞を、96ウェル平底マイクロタイタープレート内で標準的な細胞培養培地中で培養し、1μg/mlのフィトヘマグルチニンの添加によって48時間刺激した。試験化合物は、全アッセイ期間において0.1〜250μΜの濃度範囲で添加した。
【0376】
増殖PBMCのDNA合成は、ヌクレオチド類似体ブロモデオキシウリジン(BrdU)の取込み、続いて、450nmでの光学密度(OD)の検出によってアッセイした。
増殖T細胞のDNA合成は、放射標識トリチウムチミジンの取込みおよびその後の放射能検出によって調べた。
【0377】
データ出力は、未加工データおよび試験化合物の非存在下でのPHA活性化T細胞に関連する相対増殖応答の計算を基準にした(対照が100%)。
増殖抑制のIC50値をグラフによる評価によってアッセイした。
【0378】
表11:一般式(1)の具体的な化合物による単球(MNC)およびT細胞(Tc)の増殖の阻害
【表25】

【0379】
【表26】

【0380】
【表27】

【0381】
【表28】

【0382】
【表29】

【0383】
【表30】

【0384】
【表31】

【0385】
【表32】

【0386】
【表33】

【0387】
実施例4
中大脳動脈閉塞によって誘導した一過性局所脳虚血後の梗塞体積に対する本発明のデュアルインヒビターの神経保護的有効性
【0388】
a.材料および方法
動物
この試験に記載の動物実験のプロトコルはすべて、1998年のドイツ動物保護法(Tierschutzgesetz)に従って行なったものである。
【0389】
試験は、Harlan Winkelmann(Borchen,Germany)から入手した雄Sprague−Dawleyラット(250〜280g)において行なった。動物は、周囲温度21±2℃および相対湿度40%の一定の環境条件下に維持した。ラットは12時間の明暗サイクル下に収容し、飼料と水は随意に与えた。
【0390】
デュアルDPIV/APNインヒビター
化合物のストック溶液のため、試験における使用のための測定対象化合物(25mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO,Sigma−Aldrich,Germany)に溶解させ、0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)で最終容量10mmol/lに希釈した。2μlの10mmol/lの試験化合物のPBS/DMSO溶液を、一過性局所脳虚血の誘導後の種々の時間点で脳室内投与した。特に記載のない限り、他の化学薬品はすべて、入手可能な最高純度のものとした。
【0391】
一過性局所脳虚血の誘導
中大脳動脈の隣接部へのエンドセリン1のマイクロインジェクションによる中大脳動脈閉塞での一過性局所脳虚血の誘導の手順は、SharkeyおよびButcher,1995に既報のものを変形した。亜酸化窒素/酸素(70:30,v/v)との混合物のハロタンで麻酔を誘導し、以下の手順の間は2〜3%ハロタンで維持した。ラットをKopf定位枠に配置し、ノーズコーンによってさらに麻酔した。局所脳虚血の誘導のため、頭蓋内(座標:ブレグマの前方0.90mm,矢状縫合の側方5.2mm)にドリルでバー穿頭孔を作製し、(直径1mm)、硬膜を注意深く切開した。29−ゲージカニューレを、PaxinosおよびWatson(31)のラット脳アトラスによる硬膜下7.5mmまで下降させた。中大脳動脈閉塞を誘導するため、ラットに、60pmolのエンドセリン1(ED−1,Sigma−Aldrich)(3μlの0.1Mリン酸緩衝生理食塩水,pH7.4、中)の注射を、5分間にわたって施与した。さらに5分後、カニューレをゆっくり引き抜いた。
【0392】
局所脳虚血後の梗塞体積に対する選択した化合物の効果
選択した化合物の脳室内適用のため、ドリルで第2のバー穿頭孔を頭蓋内(座標:ブレグマの前方0.80mm,矢状縫合の側方1.5mm)に作製し、第2の29−ゲージカニューレを硬膜下4.5mmまで下降させた。選択した化合物(2μlの10mmol/lのPBS/DMSO溶液,pH7.4)の脳室内適用は、虚血時、再灌流の6時間後および24時間後に行なった。
ラットは、施術処置を通して37〜38℃に維持し、直腸温度プローブを用いて体温をモニタリングした。
【0393】
次いで、動物を、麻酔から回復するまでインキュベータ内に入れて適温に維持した。麻酔から回復後、動物をホームケージに戻した。対照では、偽手術動物において正中切開後、ドリルでバー穿頭孔を頭蓋内に作製したが、エンドセリン1は注入しなかった。
【0394】
梗塞体積の測定
エンドセリン誘導性中大脳動脈閉塞(eMCAO)後、7日間生存させた後、動物をペントバルビタールの腹腔内注射によって麻酔し、生理食塩水、続いて4%パラホルムアルデヒド含有0.1Mリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で経心的に灌流固定した。次いで、脳を注意深く取り出し、同じ固定液中で2時間、後固定し、齧歯類脳マトリックス(ラット,Activational Systems Inc.,Scientific Instrumentation)中に入れた。1mm冠状面脳薄片を、14の所定の前面−後面でかみそりの刃で切り出した。30%スクロース中で凍結防止後、薄片をイソペンタン中で急速に凍結させ、−80℃で保存した。各脳薄片から4〜5つの低温保持切片(30μmm)をクリオミクロトーム内に切り出し、トルイジンブルーで染色した。
【0395】
虚血性障害後の皮質の損傷の程度を、PaxinosおよびWatson(31)の脳アトラスによる前−後面を示すNissl染色薄片の顕微鏡写真画像により記録した。皮質の梗塞体積は、群組成に対して盲検的な作業者が測定した。
【0396】
各面の梗塞面積の程度を、各定位面の損傷面積と種々の面間の距離を積分することにより計算した。4倍対物レンズを備えた光学顕微鏡(Nikon,Eclipse TE 3000)を使用し、コンピュータ支援画像解析システム(Luciaソフトウェア,バージョン4.2.1)を用いて画像解析を行なった。
【0397】
データを、対応なしのスチューデントのt検定によって統計学的に解析した。データを平均±S.E.M.で示す。確率0.001のレベルを統計学的有意とした。
【0398】
b.結果
梗塞体積に対する選択した本発明の化合物の神経保護的有効性を、エンドセリン1によって誘導した一過性局所脳虚血(中大脳動脈閉塞)(eMCAO)後に、上記のようにして調べた。
【0399】
梗塞体積は、eMCAOの誘導の7日後に測定した。梗塞体積は、対照群(ビヒクル適用でのeMCAO)(これを100%と設定した)に対する梗塞体積パーセントとして計算した。以下に示すデータは、平均梗塞体積パーセント±S.E.Mで示している。統計学的有意性***p<0.001(対応なしのスチューデントのt検定による)。
【0400】
表12:eMCAOの誘導の7日後の皮質の梗塞体積の減少
【表34】

【0401】
【表35】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、
、X、X、XおよびXは、互いに同一であっても異なっていてもよく、−H、−OH、−NO、−ハロゲン、−NH、−OR、−NHR、−NR、−CHNHR、−CHNR、−SH、−SR、−CH(C=O)R、−P(=O)(OH)、−P(=O)(OH)(OR)、−P(=O)(OR)(OR)、−P(=O)(=O)(OH)、−P(=O)(=O)(OR)、−P(=O)(=O)(H)および−P(=O)(=O)(R)、置換基RおよびRで置換された同素環式および複素環式、芳香族および非芳香族、縮合および非縮合環系(複素環式部分の場合は、N、O、S、Pからなる群より選択される1個、2個または数個のヘテロ原子を有することが許容される。)からなる群より選択される。ここで、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、−H、−OH、−NH、−NO、置換および非置換の直鎖または1回もしくは多数回分岐している脂肪族炭化水素、エステル、アミド、カーボネートならびにカルバメート残基(同残基は、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、1つまたは多数有し、1〜29個の炭素原子を有し、2つの鎖内炭素原子の間の化学的に可能な任意の鎖の位置にO、S、NHまたは第2級アミノ部分を有していてもよく、該第2級アミノ基の1つまたは2つの副鎖が本明細書に記載の主鎖の定義に従って構築されていてもよい。);および3〜10個の環構成員を有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族または非芳香族同素環式もしくは複素環式の縮合もしくは非縮合脂肪族炭化水素残基(複素環式部分の場合は、O、N、SおよびPから選択される1つまたは数個の同一または異なるヘテロ原子を含む。非芳香族環式系の場合は、炭素−炭素もしくは炭素−ヘテロ原子二重結合がないか、1個もしくは数個有するか、または炭素−炭素三重結合がないか、1個もしくは数個有する。)からなる群より選択される。前記RおよびR残基は、任意選択で独立してX、X、X、XおよびXから選択される1つ、2つもしくはそれ以上の置換基を有しているか、または任意選択で、可能な各位置に、カルボニル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カーボネートならびにカルバメートからなる群より選択される1つ以上の部分を有している。ただし、RおよびRの定義に従って定義される置換基は、直接的な−N−N−および−O−O−基の形成が回避される位置のみを占めることが許容される。さらに、RとRが同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合されており、結合価の状態が許容される場合、RおよびR置換基は、スピロ環系の一部であってもよく、非置換またはX、X、X、XおよびXからなる群より選択される1つ、2つまたはそれ以上の置換基で置換された同素環式または複素環式の縮合または非縮合環を形成していてもよい。
、R、RおよびRは、独立して異なっていてもよく、RおよびRで上記に定義した残基を表すか、または置換基R、R、RおよびRの入れ替え可能なあらゆるペアが、これらが結合している基本構造(1)の原子と一緒に、縮合型であっても非縮合型であってもよく、非置換であってもよく、上記に定義した1つ以上の置換基Rで置換されていてもよい、5〜14員の複素環式の芳香族(化学的に可能な場合)もしくは非芳香族環構造を形成していてもよい。
Spは、主鎖内に2〜8個の炭素原子を有し、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有する脂肪族炭化水素鎖、3〜10個の環内原子からなり、上記に定義した置換基Rがないか、1個もしくは数個有するか、または−O−、−S−、−NH−および−NR−置換基(式中、Rは、上記に定義したものである。)を有する非芳香族同素環式または複素環式またはホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族の非縮合もしくは縮合環系を表す。
− Lは、−CR13、>C=Oまたは>C=NR13(式中、R13は上記のRと同じ意味を有する残基を表す。ただし、Lが>C=Oまたは>C=NR13(式中、R13は、上記にRとして定義したものである)を表す場合、Rは存在しないか、またはLが、それぞれ窒素もしくは酸素であってよい。また、分子内のそれぞれの部分との結合は、−N−N−または−O−O−単位との直接的な結合をもたらすものでない。)を表す。
は、下記の置換基(a)、(b)、(c)または(d)のうちの1つを表す:
(a)
【化2】

(式中
Aは、置換基Lに直接結合された構造要素であり、単結合を表すか、または>C=O、>C=NR、もしくは>C=CR、直鎖または1回もしくは数回分岐した、炭素−炭素二重結合または三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基で置換されている1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素鎖から選択される置換基(式中、RおよびRは上記に定義した意味を有する。)を表すか、あるいはAは、−NR、−O−または−S−であり得る。ただし、AとL間の結合は−N−N−または−O−O−結合を形成せず、nは、0、1および2から選択される整数である。
およびBは、同一であるか、または互いに異なっており、−H、−CH、−ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR10または上記に定義したRのすべての意味(式中、RおよびR10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rとして上記に定義したすべての置換基からなる群より選択され得る。)からなる群より選択される残基を表すか;あるいはBとBが一緒になって、>N−、−O−、−S−および>P<から選択されるヘテロ原子がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、またはRとして上記に定義したすべての置換基から選択される1つまたは数個の置換基で置換されていてもよい、3〜10員の同素環式または複素環式の芳香族または非芳香族の飽和または1度もしくは数度の不飽和の非縮合もしくは縮合環の一部であってもよく、一緒になって該環を形成してもよい。
は、上記のRで表されるあらゆる置換基からなる群より選択される置換基を表すか、あるいは上記の置換基Aまたは上記の置換基Spに含まれた炭素もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖(前記炭化水素鎖は、直鎖内に1〜6個の炭素原子を有し、炭素−炭素二重結合もしくは三重結合がないか、または1個もしくは数個有し、非置換であるか、または1個もしくは数個のR置換基(式中、Rは上記に定義した意味を有する。)で置換されているか、あるいは前記直鎖炭化水素鎖内に、−O−、−S−、>NHおよび>NR12(式中、R12は、上記に定義したRとしてのあらゆる意味を有するものであり得る。)からなる群より選択される1個または数個のヘテロ原子を含有しているか、あるいは二重結合もしくは三重結合がないか、1つまたは多数有し、Rのあらゆる意味から選択される置換基がないか、1つまたは多数有するホモ芳香族もしくはヘテロ芳香族環または非芳香族の同素環式もしくは複素環式の環を表す。)であり得る。
、Y、Y、YおよびYは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基X、X、X、XおよびXと同じ意味を有する置換基から選択され得;ここで、連続番号を有する該Y置換基は、C、N、O、SまたはPからなる群より選択される原子を介して結合して、3〜10個の環構成員を有し、非置換であってもよく、上記に定義したRおよびRで表される1個、2個もしくは数個の残基で、フェニル環が縮合系の一部となるように置換されていてもよい、縮合もしくは非縮合の同素環式もしくは複素環式の非芳香族もしくはホモ芳香族または(化学的状況が許容すれば)ヘテロ芳香族の環系の一部であり得る);
(b)
【化3】

(式中、A、B、B、およびY〜Yは、上記の式(a)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数であり、Zは、−H、Rのあらゆる意味から選択される意味を有する残基を表すか、またはRについて上記に示した炭化水素鎖の意味から選択され、B、B、R、またはSpの炭素原子もしくはヘテロ原子に橋状結合している炭化水素鎖であり得る。);
(c)
【化4】

(式中、A、B、B、Y〜YおよびZは、式(a)および(b)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜3の範囲から選択される整数である。);または
(d)
【化5】

(式中、Y〜YおよびZは、式(a)、(b)および(c)の対応する置換基と同じ意味を有するものであり得、nは、0〜6の範囲から選択される整数である。)。
の4つの表示(a)、(b)、(c)および(d)について、構造要素A、B、B、RとLを連結している橋状結合は、これらの要素の2つ以上の間に許容され、そのため、2つを超える部分が連結する場合は、それぞれ、橋状縮合籠様副構造が形成され得;該橋状結合部分として、それぞれ、非置換のおよび、RおよびRの定義に従う置換基で置換された、連続のまたはO、SおよびNRで割り込まれた、直鎖のおよび1回または多数回分岐の炭素鎖であって、二重結合および三重結合がないか、1つまたは数個有するものが可能である。]
の化合物またはその有機酸および/もしくは無機酸との塩。
【請求項2】
、X、X、XおよびXで表されるハロゲン残基が、−F、−Cl、−Brおよび−I、より好ましくは−Clおよび−Brから選択され得る;および/または
残基X、X、X、XおよびXすべてが同一である(好ましくは、残基X、X、X、XおよびXすべてが−Hを表す。)か;あるいは残基X、X、X、XおよびXのうちの少なくとも3つ、好ましくは4つが同一であり(より好ましくはHを表す。)、残基X、X、X、XおよびXのうち少なくとも1つ(好ましい)またはさらには2つが他のものと異なる(好ましくは、ハロゲン(より好ましくは、−Clおよび/または−Br)、−OH、−C(=O)OH、−NHまたは−NHR(式中、Rは、上記に定義した意味を有する。)から選択される置換基を表すかのいずれかである;および/または
置換基Rは、末端ベンジル残基に直接結合されていてもよく、その場合、好ましくは、末端ベンジル残基に直接結合されたRは、C〜C18−アルキルまたは−アルケニル残基から、好ましくは−(メチル)もしくは−(エチル)から、または5つもしくは6つの環構成員を有するホモ芳香族残基から選択され、好ましくは、−(フェニル)(これは、さらにより好ましくは、置換されたものであり得る。)であり得るか、または5つもしくは6つの環構成員を有し、N、O、SまたはPから選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有するヘテロ芳香族残基から選択され得、その場合、より好ましくは、Rは、残基−(チオフェニル)、−(ピリジニル)および−(ピリミジニル)から選択される;および/または
置換基RまたはRとして供される環系は、1つの環からなる(好ましくは、ホモ芳香族6員の環の一例として1つのフェニル環からなる、または複素環式6員環および複素環式5員環の例としての1つのピペリジニル環または1つのテトラヒドロフラニル環からなる)系であるか、あるいは数個の(任意選択で縮合している)環からなる(好ましくは、ベンゾ縮合ヘテロ芳香族環系の一例としてインドリル環系からなる)系である、
請求項1に記載の一般式(1)の化合物。
【請求項3】
以下の化合物:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

である、請求項1または2に記載の一般式(1)を有する化合物。
【請求項4】
医薬に使用される請求項1〜3のうちの1つ、またはそれ以上に記載の化合物。
【請求項5】
インヒビター前駆体としての請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのデュアルインヒビターとしての、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターとしての、ならびにジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼのデュアルインヒビターのための前駆体としての、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターのための前駆体としての、請求項4または請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
ジペプチジルペプチダーゼIVおよび類似の酵素作用を有するペプチダーゼの単独インヒビターとして、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターとして、ならびにジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの単独インヒビターのための前駆体として、ならびにアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼのインヒビターのための前駆体として使用される、請求項4または請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
自己免疫疾患、過剰免疫応答および/または炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患、移植片拒絶、対宿主性移植片病(GvHD)およびウイルス因性疾患ならびにI型糖尿病の予防および治療のための請求項1〜7いずれか1項に記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項9】
自己免疫疾患、過剰免疫応答および/または炎症発生を伴う疾患、例えば、動脈硬化、神経疾患、脳損傷、皮膚疾患、腫瘍疾患、移植片拒絶、対宿主性移植片病(GvHD)およびウイルス因性疾患ならびにI型糖尿病の予防および治療のための医薬の調製のための請求項1〜7いずれか1項に記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項10】
該疾患または病状が、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性結腸炎、および他の自己免疫疾患ならびに炎症性の疾患、気管支喘息および他のアレルギー性疾患、皮膚および粘膜関連疾患、乾癬、ざ瘡ならびに線維芽細胞の過剰増殖および分化状態の変更を伴う皮膚科系の疾患、良性の線維形成性および硬化性の皮膚疾患ならびに悪性の線維芽細胞過剰増殖状態、急性神経疾患、虚血性もしくは出血性卒中、頭蓋脳損傷、心停止、心臓発作後の、あるいは心臓外科処置的介入の帰結としての虚血因性脳損傷、慢性神経疾患、例えば、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性、前頭側頭型痴呆、パーキンソン病、特に、第17染色体に連鎖しているパーキンソニズム、ハンティングトン病、プリオン因性の病状または疾患および筋萎縮性側索硬化症、動脈硬化、動脈の炎症、ステント再狭窄、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腫瘍、転移、前立腺癌、重症急性呼吸器症候群(SARS)、対宿主性移植片病(GvHD)ならびにセプシスおよびセプシス様の病状ならびにI型糖尿病、ならびに同種異系遺伝子または異種遺伝子が移植された器官、組織および細胞、例えば、骨髄、腎臓、心臓、肝臓、膵臓、皮膚または幹細胞の移植、ならびにステント、血管用バルーン、関節インプラント(膝関節インプラント、股関節インプラント)、骨インプラント、心臓ペースメーカーまたは他のインプラントに関連するものである、請求項8または請求項9に記載の使用。
【請求項11】
化粧料調製物の調製のための請求項1〜7のうちの1項に記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物により、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびに/またはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1つの単独またはデュアルインヒビターが作製される、請求項8〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
生理学的条件下または病態生理学的条件下での請求項10〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物から、該一般式(1)の少なくとも1種類の化合物を細胞、組織または生きている生物体に曝露して、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPIV)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼ、ならびに/またはアラニルアミノペプチダーゼN(APN)および類似の酵素作用を有するペプチダーゼの少なくとも1種類の単独またはデュアルインヒビターを作製する方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、細胞、組織または生きている生物体の生理学的条件にインビボで曝露する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、任意選択で、薬学的に許容され得る担体、補助物質および/または補助剤の1つ以上と組合せて含有する医薬調製物。
【請求項17】
請求項1〜7に記載の少なくとも1つの一般式(1)の少なくとも1つの化合物を、任意選択で、化粧料として許容され得る担体、補助物質および/または補助剤の1つ以上と組合せて含有する化粧料調製物。

【公表番号】特表2013−503829(P2013−503829A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527286(P2012−527286)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062472
【国際公開番号】WO2011/026781
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505008187)イーエムテーエム ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】