説明

特に比表面積の大きい多孔質複合物、製造方法、及び電気化学的集成体用の多孔質複合フィルム製の電極

【課題】特に比表面積の大きい、新規な多孔質複合物の提供。
【解決手段】本発明は、ポリマー物質と、少なくとも20%の一種もしくは数種のフィラーとから形成されてなり、押出により得られる多孔質複合物に関する。本発明はまた、a)一種もしくは数種の不溶性ポリマー、一種もしくは数種の溶解性の、もしくは焼成可能なポリマー、及び一種もしくは数種のフィラーを含んでなる混合物を形成し、b)押出先駆物を形成させるために前記混合物を押出し、c)押出先駆物中の溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーを除去し、多孔質複合物を回収することからなる多孔質複合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にフィルムの形態の、特に比表面積の大きい多孔質複合物、及びそのような複合物の製造方法に関するものである。
【0002】
本発明はまた、該方法を実施する際に用いられる先駆複合物に関するものである。
【0003】
本発明はまた、フィルムの形態にある多孔質複合物の、あらゆる種類の電気化学品用の電極としての利用、及び比表面積の大きい多孔質複合物の、選択膜、包装、もしくは触媒の分野における一般的な応用に関するものである。
【背景技術】
【0004】
第一の熱可塑性ポリマーと第二の熱可塑性ポリマーの混合物を溶解温度で紡糸し、その後、適切な溶剤を用いて第二のポリマーを除去することにより得られる低密度の多孔質フィルムが、特にヨーロッパ特許出願第A-283,187号明細書によ り既に知られている。このような多孔質フィルムは、様々な用途に、特に濾過や分離の分野で用いることができる。
【0005】
ヨーロッパ特許出願第A-430,439号明細書には、このようなフィルムの製造を 改良する為の方法であって、第一の熱可塑性ポリマーと第二の不混和性熱可塑性ポリマーの混合物を押出ダイに通して押出し、その後、溶剤を用いて不混和性ポリマーを除去する方法が開示されている。この方法は、多孔度の低い長さ方向の領域と、多孔度のより高い長さ方向の別の領域とからなる多孔質構造体を得る為に、有孔遮断板を押出ダイの上流に挿入することを特徴とするものである。
【0006】
また、多量の電荷を帯電、もしくは放電することのできる二層型の静電コンデンサーに用いることのできる、分極可能な電極が知られている。
【0007】
スパーコンデンサーに用いることのできる分極可能な電極は、活性炭のような、軽くて交換表面積の大きい、理想的に分極する物質をベースとするものである。このような物質は、比表面積が大きい、特に1000m/gよりも大きい、炭素質物質である。
【0008】
電極が最高の効率を示す為には、電極は、最大の活量率と、この量への最適な近づき易さを有していなければならない。この後者の特性には、電極が開孔構造をもつことが必要とされる。これには、例えば、活性化された布で作られた電極が当てはまる。活性炭の布は、ビスコース、もしくはポリアクリロニトリルをベースとする布を炭化させ、その後、活性化させて作る。
【0009】
しかしながら、このような電極は高価で、しかも厚さが厚くて不均一(通常300μmを超える)である。更に、このような製造方法は、少なくとも理論的に はスプーリング技術の使用を可能にするものであるが、実際問題としては、作業を行うのが難しいことが分かる。
【0010】
活量率の非常に高い(一般的には98%を超える)電極は、燒結によっても得られる。活性炭、及び様々な添加物、特に導電性ブラックを、懸濁液が得られる迄、機械的に液体と混合する。得られた溶液を、部分真空下に置かれた濾過隔壁上に注ぐ。一定時間後には、全ての成分がこの濾過隔壁上に均質に付着するが、液体はこの隔壁を通過してしまう。部分真空により、成分間に、加圧下での圧縮に相当する凝集力が生じる。電極は、隔壁上で回収された乾燥物質である。
【0011】
しかしながら、上記のように、この技術には数多くの欠点がある。特に、スプーリング技術を用いるのが難しく、また電極の厚み、均質性、及び均一性を制御するのが難しい。更に、これらの方法では、ポリマーの選択に制限がある。特に、ポリオレフィンは使用できない。
【0012】
非常に粘度の高いペーストが得られる迄、炭素質フィラーを、低い割合の結合ポリマー、例えば3%のテフロン、と機械的に混合し、その後、電極を作る為に中空の押抜き具を用いて切断されるシートを得る為に、圧延することもできる。
【0013】
この方法には、前述の製造方法と同じ欠点がある。
【0014】
塗布による製造方法も挙げられる。この方法では、活性なフィラーと、結合ポリマーのような一種、もしくはそれ以上の添加物を、制御された粘度をもつペーストが得られる迄、溶剤と混合する。このペーストを、後で集電装置としての役目を果たすことのできる支持シートに塗布する。溶剤を蒸発させる為に、このシートをオーブンに入れる。
【0015】
この付着層は、比較的薄く(最低数ミクロン)均質になることがあり、しかも活量率が高い。
【0016】
それにもかかわらず、この方法は、有毒なことのある溶剤を使用する可能性があるので、実施するのが困難な方法である。
【0017】
スプーリング技術の使用を可能にするフィルム状の、特にポリオレフィンフィルム状の、電極も知られている。
【0018】
これらの分極可能な電極は、炭素質物質、例えば比表面積の大きい、特に比表面積が1000m/gの、活性炭、及びポリオレフィン、特にポリエチレンやポリプロピレン、又はポリエステル、ポリカーボネートもしくはポリイミドのようなその他のポリマーのようなバインダーをベースとするものである。
【0019】
ポリエチレンもしくはポリプロピレンバインダーと、活性炭粉末を用いる分極可能な電極が、例えば日本特許出願公開平4−22062号明細書に記載されている。
【0020】
しかしながら、ポリエチレンやポリプロピレンのようなバインダーをベースとする分極可能な電極は、非常に低い多孔度を示す。
【0021】
このような現象は、上記の他のバインダーを用いた場合にも生じる。
【0022】
ベルギー特許出願第A−693,135号明細書には、グラファイトや金属のような導電性フィラー物質をシートの重量の98%以下含む、完全にフィブリルの形態にあるポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質シートが開示されている。
【0023】
この種の構造体は、ポリテトラフルオロエチレン粒子の水性懸濁液と、抽出可能なポリマーとを混合し、次いで圧延することにより得られる。この圧延は、ポリテトラフルオロエチレン粒子を変形させ、それらの粒子を、細長く伸びた繊維からなる網状構造に変える重要な工程を構成するものである。その後、抽出を行って、抽出可能なポリマーを除去する。最終的な構造体の細孔は、0.1μmより も大きい。これらのシートは、燃料電池の電極として用いることができる。
【0024】
日本特許出願公開昭57−100142号の要約書には、ポリオレフィン樹脂15〜60体積%、ポリエーテル3〜40体積%、抽出可能な微粉20〜80体積%、及び不溶性の粉末0.5〜10体積%からなる混合物を押出し、その後、ポリエーテルと抽出可能な粉末を抽出することからなる、多孔質膜の製造が開示されている。本出願人は、この文書に開示されている方法によっては、機械的特性に大きな影響を及ぼすことなくフィラーの割合のより高いシートを得るのは不可能である、ということを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願第A−430439号明細書
【特許文献2】ベルギー特許出願第A−693,135号明細書
【特許文献3】特開昭57−100142号公報
【発明の概要】
【0026】
従って、大量に製造することができ、スプーリング技術の使用を可能にする、バインダーとフィラーとで形成される、特に比表面積の大きい、多孔質電極を作ることが望ましい。
【0027】
本発明の目的は、具体的には、この技術的課題に対する解決策を提供することにある。
【0028】
本発明の一つの目的は、特に比表面積の大きい、新規な多孔質複合物を提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、特に比表面積の大きい、フィラー含有率の高い、スプーリング技術の使用を可能にする、複合フィルムを提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、ポリマーの幅広い選択を可能にすることである。
【0031】
本発明の他の目的は、製造に費用のかからない多孔質の複合物もしくは複合フィルムを提供することである。
【0032】
本発明の他の目的は、用いる押出技術により、パイプ、ロッド、フィルム、もしくはその他の押出物のような、使用可能な様々な形の物を得ることを可能にすることである。
【0033】
本発明の他の目的は、非常に活量率の高い、薄くて均質で理想的に分極する多孔質フィルムの形態の炭素質電極を提供することである。
【0034】
本発明の他の主題は、この多孔質複合物の、選択膜、包装用フィルム、もしくは絶縁フィルムとしての利用に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、第一に、ポリマー物質と、少なくとも20%の、特に比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーとを含んでなることを特徴とする、特に比表面積の大きい多孔質複合物に関するものである。該複合物は、押し出しにより得ることのできるものである。
【0036】
「(複合)物」という表現は、集成体であって、その凝集力が、支えなしにその一体性を保持するのに十分であるものを意味するものとする。
【0037】
特に比表面積の大きいフィラーがポリマー物質中に極めて均質に分布している為に、またポリマー物質の構造が連続的である為に、本発明による複合物が新規な構造を示すということは、注目すべき重要な点である。また、このポリマー物質は、フィブリル化されていない。
【0038】
これは、本発明による複合物に欠くことのできない特性の一つである。十分な均質性を示さない複合物は、上で示したフィラーのレベルでは不適切な機械的特性を示すことになる、ということを本出願人が確認したからである。
【0039】
「押し出しにより得られる」という表現は、複合物が押出品の特性を示すことを意味する。
【0040】
「押し出しにより得られる」複合物が所望の均質性を示す為には、この押し出しを、できるだけ均質な混合物について行う必要がある。このような均質な混合物は、二軸スクリュー押出機により得ることができる。その他の適切な混合機も用いることができる。
【0041】
従って、当該複合物は、本明細書の前文に記載したような塗布技術により得られるものとは、根本的に異なっている。
【0042】
本発明による多孔質複合物に欠くことのできない特性の一つは、好ましくは、それが大きな比表面積を示すことである。
【0043】
比表面積とは、例えば出版物である Technique de l‘ingenieur [エンジニアの技術], Pbis 45-1 (Etude de structure =mesure de surface specifique) [構造の研究 = 比表面積の測定], Jean Charpin and Bernard Rasneurに記載されているような「BET」測定法によって数値が求められるものである。
【0044】
本発明による多孔質複合物の比表面積は約10m/gより大きく、好ましくは約20m/gより大きい。20〜100m/gが都合よい。
【0045】
複合物の多孔度は、5体積%よりも大きい。一般的には、多孔度は約80%未満である。
【0046】
スパーコンデンサーや蓄電池に利用する為には、多孔度は通常、15〜50%である。
【0047】
このことは細孔の平均直径は、通常1μm未満であることを意味する。好ましい別の態様によれば、細孔の平均直径は0.5μm未満であり、好ましくは0.1μm未満であり、好便には0.02μm未満である。
【0048】
フッ素化されたポリオレフィンといった具体的な場合には、細孔の直径は通常、0.5μm未満である。これは特に、ポリテトラフルオロエチレンに当てはまる。
【0049】
高BET比表面積と機械的特性の他に、これらの複合物は、電気化学的容量が2F/gより大きく、好ましくは10F/gより大きいというのが、注目すべき点で ある。
【0050】
スパーコンデンサー用の電極の場合、望ましい孔はメソ細孔であるが、一方、「燃料電池」用の電極に関するベルギー特許第693,135号の場合、燃料の流動性を高くする為には、望ましい孔は開孔(マクロ細孔)である。
【0051】
フィルム状の多孔質複合物の場合、これらのフィルムが、それらに対してスプーリング技術を使うことができるような、注目すべき機械的特性を示すことに留意すべきである。通常、これらのフィルムは、破断点引張り強さが室温で4M Paより大きく、好便には6M Paより大きい。
【0052】
フィラーの中でも、比表面積の小さいグラファイトやカーボンブラックのようなカーボン類、金属酸化物、シリカ、もしくはタルクが挙げられよう。
【0053】
このような複合物の製造に適した比表面積の大きいフィラーの中でも、例えばラネー金属、稀土類金属酸化物、多孔質セラミックス、パーライト、ゼオライト、もしくはクレイのような、比表面積の大きい炭素質物質、無機粒子、及び金属粒子が特に挙げられる。
【0054】
炭素質物質に要求される特性は、高重量のユニットごとに表面が拡大されており、電気抵抗が小さく、電気化学的安定性に優れていることである。
【0055】
炭素質物質は粉末の形態で得ることができ、また、例えばオイルピッチ、フェノール樹脂、ココナツシェル、及びその他の有機産物から得られる。
【0056】
活性炭は特に、300〜3000m/gの、好ましくは1000m/gより大きい、比表面積(BET)を示す。
【0057】
ポリマー物質は、水性及び/又は有機性の溶剤に不溶であって、複合物の凝集力を確実なものとする熱可塑性エラストマーもしくはポリマー(構造用ポリマーもしくはエラストマー)と、該多孔質複合物もしくはフィルムをもたらす製造方法を実施した後に複合物中に残存する極性基をもつ熱可塑性ポリマーもしくはエラストマーとで形成される。
【0058】
不溶性のエラストマーやポリマーの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、もしくはエチレンやプロピレンのコポリマーのようなポリオレフィンが特に挙げられる。これらのポリオレフィンは、フィルム状にすることができ、また特に包装用フィルムとして良く知られているものである。それらは例えば、必要に応じてコポリマーとしてアルファ−オレフィンを多少含んでいる、低密度もしくは高密度ポリエチレンである。
【0059】
それらは、ポリエーテル−ブロック−ポリアミドのようなポリアミド、ポリイミド、エチレンモノマーを高い割合で含んでいるポリ(エチレン/ビニルアセテート)のような、エチレンモノマーを高い割合で含んでいるビニルコポリマー、アクリルポリマー、例えばポリスチレン−ブタジエンコポリマーといったポリスチレンのような芳香族ポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)、もしくは上記の族の内の一つに属するモノマーから生成されるコポリマー、例えばフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーや、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとのコポリマーのようなフッ素化ポリマーであってもよい。
【0060】
溶剤に不溶な熱可塑性エラストマーもしくはポリマーは、ポリオレフィンの群から選ばれるのが好ましい。
【0061】
溶解性ポリマーの中でも、以下の溶剤、すなわち、水、アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、もしくはアセトンに可溶なポリマーが特に挙げられる。
【0062】
勿論、重合度が溶剤による除去に適しているというのであれば、溶解性ポリマーは特に、ポリオキシエチレンやポリオキソプロピレンのようなポリエーテル、もしくはポリ(ビニルアルコール)やエチレン−ビニルアルコールコポリマーのようなポリアルコールから選ばれる。これらのポリマーの中でも、分子量が200,000〜1,000,000であるものが、好便にはポリエーテルが、特に挙げられる。
【0063】
通常の方法に従って焼成することのできるポリマーも、挙げられる。
【0064】
焼成可能なポリマーは上記の溶剤に可溶なポリマーに相当し、構造用ポリマーもしくはエラストマーの分解温度よりも低い分解温度を持つポリマー、例えばセルロース、から選ぶこともできる。
【0065】
これらのポリマーの選択は、当業者の能力の及ぶ範囲に入る簡便な試験により、公知の方法で行うことができる。
【0066】
複合物は、好ましくはフィラーを少なくとも20重量%、好便には30〜90%、好ましくは50〜85%、含んでなる。
【0067】
複合物は、好ましくは、水性及び/又は有機性の溶剤に不溶な熱可塑性ポリマーもしくはエラストマーを10〜40%と、水性及び/又は有機性の溶剤に可溶なポリマーを5〜40%とを含んでなる。
【0068】
複合物は、
− ポリオレフィンを10〜40%、
− ポリエーテルを5〜40%、
− フィラーを全体が100%になる迄
含んでなるのがより好ましい。
【0069】
本発明による多孔質複合物のもう一つの特徴は、それが均質で均一な形態で得られるということ、すなわち、例えば、炭素質フィラーと低い割合のポリテトラフルオロエチレンタイプの結合ポリマーとの混合物を塗布して得られるシートとは違い、フィラーがポリマー物質と均質に混ぜ合わされるということにある。 本発明による複合物は、フィルムの形態で得ることができ、スプーリング技術を用いることができるという長所を示す。
【0070】
これらのフィルムには、支持体を用いる必要がない。
【0071】
本発明はまた、上記のような複合物の製造方法であって、
a)一種もしくはそれ以上の不溶性ポリマー、一種もしくはそれ以上の溶
解性の、もしくは焼成可能なポリマー、及び比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーを含んでなる混合物を形成し、
b)押出先駆物を形成させる為に該混合物を押し出し、
c)溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーを押出先駆物から除去し、
d)多孔質複合物を回収する
ことを特徴とする方法に関するものである。
【0072】
従って、該方法は、比表面積の大きい多孔質複合物を得ることを可能にする、押出−除去法である。
【0073】
「除去する」という表現は、細孔を形成させる為に、溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーの大部分を排除することを示すものである。特にこれらのポリマーの活性炭に対する親和性の故に、それらが完全に除去されることは恐らくないであろうと思われる。
【0074】
本方法のa)工程で、全ての成分、すなわち、複合物の構造を形成するポリマー物質に相当する、溶剤に不溶な一種もしくはそれ以上のポリマー、一種もしくはそれ以上の他の溶剤溶解性の、もしくは焼成可能なポリマー、及び比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーを、溶解もしくは懸濁により均質に混合する。複合物の凝集力を確実なものにするポリマー(不溶性ポリマー)と比表面積の大きいフィラーは、c)工程では除去されないということが分かっている。この混合は、b)工程を実施する押出機により行ってもよい。
【0075】
c)工程で除去される溶解性ポリマーは、a)工程に従って混合することのできるあらゆる溶解性ポリマーから選ぶことができ、例えば水、アルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、もしくはアセトンに可溶なポリマーが特に挙げられる。
【0076】
勿論、重合度が溶剤による除去に適しているというのであれば、溶解性ポリマーは特に、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンのようなポリエーテル、もしくはポリ(ビニルアルコール)やエチレン/ビニルアルコールコポリマーのようなポリアルコールから選ばれる。
【0077】
細孔を形成される為に除去することのできるポリマーとしては、通常の方法に従って焼成可能なポリマーも挙げられる。
【0078】
焼成可能なポリマーは、構造用ポリマーもしくはエラストマーの分解温度よりも低い分解温度をもつポリマー、例えばセルロース、から選ぶことができる。
【0079】
これらのポリマーの選択は、当業者の能力の及ぶ範囲に入る簡便な試験により、公知の方法で行うことができる。
【0080】
複合物の様々な成分を、適切な温度で、特に押出機を用いて混合する。この場合、非常に小さいBET比表面積(約1m/g未満)を示す中間先駆物を得る為に、a)工程とb)工程を同時に行う。
【0081】
この先駆物は、フィルム、特に厚さが約300μm未満の薄いフィルムの形状に再押し出しすることができる。
【0082】
従って、有利な別の形態によれば、b)工程を、以下の二つの工程で行う。
− 粒子を形成することからなる第一の押出工程 (i)、
− フィルムを形成させることからなる第二の押出工程(ii)。
【0083】
第一の工程は、例えば棒抽出ダイをもつ共回転二軸スクリュー押出機で行うのが便利であり、一方、第二の工程は、フラットダイをもつ一軸スクリュー押出機で行うのが便利である。
【0084】
粒状の、もしくはフィルム状の押出先駆物を、その後、除去工程c)に付して、溶解性ポリマーを除去する。
【0085】
この除去工程は、特に溶解性ポリマーを適切な溶剤と接触させて溶解させることにより行うことができる。
【0086】
除去しようとするポリマーの分解温度まで、温度をゆっくり上昇させることからなる公知の方法に従って焼成を行っても良い。
【0087】
その後、複合物を回収すると、約10m/gよりも大きい、好ましくは約20m/gよりも大きい、「BET」比表面積を示す。
【0088】
従って、本発明のもう一つの主題は、ポリマー物質と、比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーとで形成される、比表面積の大きい多孔質複合物であって、上記のような押出−除去法により得られることを特徴とするものである。
【0089】
本発明のもう一つの主題は、除去工程の前に得られる先駆物である。上記の方法を実施する際に特に用いられるこれらの先駆物は、溶剤に不溶な一種もしくはそれ以上のポリマー、一種もしくはそれ以上の溶剤溶解性の、もしくは焼成可能なポリマー、及び比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーを含んでなるものである。
【0090】
不溶性ポリマー/溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーの重量比は、好ましくは0.1〜5であり、好便には0.1〜2である。
【0091】
先駆物をもたらす、溶剤を含んでいない混合物中の比表面積の大きいフィラーの割合は、好ましくは20〜60重量%である。
【0092】
本発明はまた、本発明による比表面積の大きい多孔質複合物で形成される、フィルム状の電極に関するものである。
【0093】
多孔質フィルムの形態にあるこれらの電極は、一般的に、蓄電池、二層コンデンサー、もしくはスパーコンデンサーのような電気化学的集成体の製造に用いることができる。
【0094】
スパーコンデンサーは、分極可能な電極二つ、及び電解質を含浸させた隔壁一つから、公知の方法で形成されるものである。これらの集成体は、「電解二重層コンデンサー」という語によっても表される。
【0095】
本発明による電極は、特に得られる非常に高い活量率により、フィルムの容量を大いに向上させる。
【0096】
以下の分野での利用が、特に挙げられる。
− エネルギーを電気化学的に貯蔵する為の多孔質電極[電気化学的発電機、レドックス蓄電池、空気蓄電池、電気化学的スパーコンデンサーもしくは二層コンデンサー、又は燃料電池]。
− 電気透析処理用の多孔質電極[飲料水の製造、海水からの塩の製造、有機産物(乳漿、ミルク、ワイン等)の脱塩、消費用水の塩分除去、ボイラー水の軟化、もしくは原子力発電所の排水の汚染除去]。
− 容量性脱イオン処理用の多孔質電極[飲料水の製造、海水からの塩の製造、有機産物(乳漿、ミルク、ワイン等)の脱塩、消費用水の塩分除去、ボイラー水の軟化、もしくは原子力発電所の排水の汚染除去]。
− 電気分解処理用の多孔質電極[塩素や水酸化ナトリウムの製造、水の電気分解、酸の製造、もしくは塩からの塩基の製造]。
− 透析や電気透析処理用の電気膜[飲料水の製造、海水からの塩の製造、有機産物(乳漿、ミルク、ワイン等)の脱塩、消費用水の塩分除去、ボイラー水の軟化、もしくは原子力発電所の排水の汚染除去]。
− 濾過処理用の電気膜[有機産物の選択的電気濾過、もしくは精密濾過]。 本発明はまた、粒子もしくはフィルムの形態にあるこれらの複合物の、以下のものへの利用に関するものである。
− 濾過法や吸着法、例えば周囲の気体や液体の除湿、選択的吸着(物理的、及び/又は化学的)、分子ふるい、もしくは汚染された空気の濾過に、
− 触媒に、
− エネルギー交換(例えば、断熱、遮音、もしくは熱交換)に、
− 包装、特に選択的透過性を必要とするデリケートな製品の包装に。
【実施例】
【0097】
目安の為に示す以下の例により、本発明を説明する。
【0098】
例1
出発化合物(粉末)の質量による割合は、以下の通りである。
− 活性炭(比表面積1250m/g)40%、
− エチレン−プロピレンコポリマー20%、
− ポリオキシエチレン(POE300,000)40%。
【0099】
粉末状の成分を合わせたものを、混練部が二つと、移送部が三つある、長さが40Dの共回転二軸スクリュー押出機で混合することにより、できる限り均質に混ぜ合わせる。用いる装置は直径58mmの二軸スクリューであり、また用いる温度プロファイルは以下の通りである:
50/120/120/110/110/100/100/120/120/ 150/170。
ダイ圧力:8MPa
1分間の回転数:85
スループット:34kg/h
【0100】
一次混合物の押し出しを行う為に、得られた粒子を、長さが30Dの一軸スクリューに導入する。用いる装置は直径30mmの二軸スクリューであり、また用いる温度プロファイルは以下の通りである:
165/170/170/170/185℃。
ダイ圧力:8MPa
1分間の回転数:10
スループット:2kg/h
得られたフィルムの厚さは200μmである。
【0101】
その次の工程は、得られたフィルムを室温で水中に5分間浸すことからなるものである。その後、このフィルムを40℃で1時間乾燥させる。
【0102】
処理後の、各化合物の質量による平均的な割合は、以下の通りである。
− 活性炭52%、
− エチレン−プロピレンコポリマー26%、
− ポリオキシエチレン22%。
【0103】
アルミニウムで金属処理を行うことができる(例:処理前、もしくは処理後に、0.01Pa(10−4ミリバール)のオーダーの圧で、金属処理装置中で得た、0.5Ω/□のフィルム)。
【0104】
得られたフィルムの物理的特性付けを行うと、フィルムに金属処理がなされていようとなかろうと、以下のようなデータが得られる。
− 破断点伸び(以下の表を参照のこと)
− スプーリング張力(コアの直径6ミリ):0.05g/μm/mm
− 電極の電気化学的容量は26F/g(ガルヴァノスタットモードでのスーパーコンデンサーの放電曲線の勾配により測定)
− 押出出口でのフィルムの「BET」比表面積は1m/g未満、また電極を約5分間浸すことからなる方法に従って水に通した後のフィルムの「BET」比表面積は28m/g。
【0105】
例2
出発化合物(粉末)の質量による割合は、以下の通りである。
− 活性炭(比表面積1250m/g)40%、
− エチレン−プロピレンコポリマー10%、
− ポリオキシエチレン(POE300,000)50%。
【0106】
粉末状の成分を合わせたものを、混練部が二つと、移送部が三つある、長さが25Dの共回転二軸スクリュー押出機で混合することにより、できる限り均質に混ぜ合わせる。用いる装置は直径19mmの二軸スクリューであり、また用いる温度プロファイルは以下の通りである:160/170/180/190/
200℃。
ダイ圧力:10.5MPa
1分間の回転数:400
スループット:1.8kg/h
【0107】
一次混合物の押し出しを行う為に、得られた粒子を、長さが30Dの一軸スクリューに導入する。用いる装置は直径30mmの二軸スクリューであり、また用いる温度プロファイルは以下の通りである:160/170/180/190/220℃。
ダイ圧力:17.5MPa
1分間の回転数:15
スループット:2.5kg/h。得られたフィルムの厚さは180μmである。
【0108】
その次の工程は、得られたフィルムを室温で水中に5分間浸すことからなるものである。その後、このフィルムを40℃で1時間乾燥させる。
【0109】
処理後の、各化合物の質量による平均的な割合は、以下の通りである。
− 活性炭60%、
− エチレン−プロピレンコポリマー15%、
− ポリオキシエチレン25%。
【0110】
その後、アルミニウムで金属処理を行うことができる(例:0.01Pa
(10−4ミリバール)のオーダーの圧で、金属処理装置中で得た0.5Ω/□のフィルム)。
【0111】
得られたフィルムの物理的特性付けを行うと、フィルムに金属処理がなされていようとなかろうと、以下のようなデータが得られる。
− 破断点伸び(以下の表を参照のこと)
− スプーリング張力(コアの直径6ミリ):0.05g/μm/mm
− 例1に記載した方法による電極の電気化学的容量は26F/g
− 押出出口でのフィルムの「BET」比表面積は1m/g未満、また例1に記載した方法に従って水に通した後のフィルムの「BET」比表面積は60m/g。
【0112】
【表1】

【0113】
例3
出発化合物(粉末)の質量による割合は、以下の通りである。
− 活性炭(比表面積1250m/gの活性炭)40%、
− エチレン−プロピレンコポリマー20%、
− ポリオキシエチレン(POE300,000)40%。
【0114】
粉末状の成分を合わせたものを、混練部が二つと、移送部が三つある、長さが40Dの共回転二軸スクリュー押出機で混合することにより、できる限り均質に混ぜ合わせる。用いる装置は直径58mmの二軸スクリューであり、また用いる温度プロファイルは以下の通りである:
50/120/120/110/110/100/100/120/120/150/170。
ダイ圧力:8MPa
1分間の回転数:85
スループット:34kg/h
【0115】
その次の工程は、得られた粒子(2mm/mm)を室温で水中に5分間浸す ことからなるものである。その後、フィルムを40℃で1時間乾燥させる。
【0116】
処理後の、各化合物の質量による平均的な割合は、以下の通りである。
− 活性炭60%
− エチレン−プロピレンコポリマー15%、
− ポリオキシエチレン25%。
【0117】
得られた粒子は、30m/gという拡大した表面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー物質と、少なくとも20%の一種もしくはそれ以上のフィラーとから形成されてなり、押出しにより得られうることを特徴とする、多孔質複合物。
【請求項2】
比表面積が大きい、請求項1に記載の多孔質複合物。
【請求項3】
細孔の平均直径が0.5μm未満である、請求項1または2に記載の複合物。
【請求項4】
ポリマー物質が、必要に応じてフッ素化されるポリオレフィン、アクリルポリマー、芳香族ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、高い割合でエチルモノマーを含むビニルポリマーからなる群から選ばれるエラストマーもしくはポリマーと、必要に応じて、製造工程を実施した後に残存する、極性有機溶剤もしくは水に可溶な熱可塑性ポリマーまたはエラストマーとを含んでなる、請求項1に記載の複合物。
【請求項5】
ポリマー物質が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィンコポリマーからなる群から選ばれるエラストマーもしくはポリマーと、必要に応じて、製造工程を実施した後に残存する、極性有機溶剤もしくは水に可溶な熱可塑性ポリマーもしくはエラストマーとを含んでなる、請求項4に記載の複合物。
【請求項6】
製造工程を実施した後に残存する、極性有機溶剤もしくは水に可溶な熱可塑性エラストマーが、ポリエーテル、ポリ(ビニルアルコール)、もしくはエチレン−ビニルアルコールコポリマーから選ばれるものであって、好ましくは分子量が200,000〜1,000,000のポリエーテルである、請求項4または5に記載の複合物。
【請求項7】
複合物が、
− ポリオレフィンを10〜40%、
− ポリエーテルを5〜40%、
− フィラーを全体が100%になるまで
含んでなる、請求項6に記載の複合物。
【請求項8】
フィラーが、特に活性炭、無機粒子、もしくは金属粒子からなる、比表面積の大きいフィラーから選ばれるものである、請求項1に記載の複合物。
【請求項9】
フィラーの比表面積が300〜3000m/gである、請求項8に記載の複合物。
【請求項10】
フィラーを30〜90重量%含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項11】
フィラーを50〜85重量%含んでなる、請求項10に記載の複合物。
【請求項12】
「BET」比表面積が10m/gより大きい、好ましくは20m/gより大 きい、ものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項13】
フィルムの形態で得られたものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項14】
フィルムの形態にある複合物が、4M Paよりも大きい、好ましくは6M Paよりも大きい、破断点引張強さを示すものである、請求項13に記載の複合物。
【請求項15】
粒子の形態で得られたものである、請求項1〜12のいずれか一項に 記載の複合物。
【請求項16】
a)一種もしくはそれ以上の不溶性ポリマー、一種もしくはそれ以上の溶解性の、もしくは焼成可能なポリマー、及び特に比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーを含んでなる均質な混合物を形成させ、
b)押出先駆物を形成させるために前記混合物を押出し、
c)細孔を形成させる為に、溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーを 押出先駆物から除去し、
d)多孔質複合物を回収する
ことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の多孔質複合物の製造方法。
【請求項17】
除去工程c)を、押出先駆物を適切な溶剤に接触させることにより行う、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
除去工程c)を、押出先駆物を焼成することにより行う、請求項17 に記載の製造方法。
【請求項19】
工程a)を混合機、もしくは二軸スクリュー押出機により行って、ポリマーと、特に比表面積の大きいフィラーとの均質な混合を確実なものとする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項20】
不溶性ポリマー/溶解性の、もしくは焼成可能なポリマーの重量比が0.1〜5である、請求項16〜19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法を実施する際に特に用いられる、一種もしくはそれ以上の不溶性ポリマー、一種もしくはそれ以上の溶解性の、もしくは焼成可能な他のポリマー、及び特に比表面積の大きい一種もしくはそれ以上のフィラーを含んでなる、押出複合先駆物。
【請求項22】
2F/gよりも大きい、好ましくは10F/gよりも大きい、電気化学的容量をもつ、請求項13または14に記載の多孔質複合物のフィルムと、電気化学的に活性な物質とから形成されていることを特徴とする、電気化学的発電機もしくは蓄電池のような電気化学的集成体用の電極。
【請求項23】
電気化学的容量が2F/gよりも大きい、好ましくは10F/gよりも大きいことを特徴とし、請求項13または14に記載の多孔質複合物のフィルムで形成されていることを特徴とする、スパーコンデンサーもしくはコンデンサー用の電極。
【請求項24】
請求項22または23に記載の電極二つと、電解質を含浸させた隔壁一つとを含んでなる電気化学的集成体、特に電気化学的発電機、コンデンサー、もしくはスパーコンデンサー。
【請求項25】
請求項13または14に記載の複合物の、エネルギーの電気化学的貯蔵への利用。
【請求項26】
請求項13または14に記載の複合物の、包装、もしくは絶縁への利用。
【請求項27】
請求項1〜12および請求項15のいずれか一項に記載の複合物の、選択濾過への利用。
【請求項28】
請求項13または14に記載の複合物の、電気透析処理、もしくは容量性脱イオン処理への利用。
【請求項29】
請求項13または14に記載の複合物の、電気分解処理への利用。

【公開番号】特開2009−197227(P2009−197227A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24129(P2009−24129)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願平10−533872の分割
【原出願日】平成10年2月5日(1998.2.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509004826)
【氏名又は名称原語表記】BOLLORE
【Fターム(参考)】