説明

特に練條機、梳綿機等におけるスライバ貯留装置用回転テーブル

【課題】スライバとスライバ通路との間の摩擦抵抗を低減することを目的とする。
【解決手段】入口が回転軸線の近傍又は同軸線上に配置され、且つ出口がその入口に対して半径方向及び軸方向に離れて配置されているスライバ用入口12a及び出口12bを備え、空間的に曲げられたスライバ通路12を有する、特に練條機、梳綿機等のスライバ貯留装置用回転テーブルにおいて、スライバ9は引張ドラフトを受けており、そして移動するスライバとスライバ通路12の内壁12cとの間に相対的な動きがあり、スライバには内壁を介して摩擦抵抗が作用している。スライバ案内とスライバ品質の改善を可能とするために、スライバ9とスライバ通路12の内壁12cとの間の相互作用及び/又は空間的配置を変更することによって、摩擦抵抗が少なくとも部分的に低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、入口が回転軸線の近傍又は同軸線上に配置され、且つ出口がその入口に対して半径方向及び軸方向に離れて配置されているスライバ用入口及び出口を備え、空間的に曲げられたスライバ通路を有し、移動するスライバにスライバを介して引張ドラフトが作用し、移動するスライバとスライバ通路の内壁との間に相対的な動きがあり、スライバ通路の内壁が摩擦抵抗を作用する、特に練條機、梳綿機等のスライバ貯留装置用回転テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
運転の実際において、スライバ通路内のスライバは、数種の運動を行い及び数種の力の作用を受ける。テークオフローラと自分で動く容器との間で、スライバは既知の送り出しドラフトを受ける、即ち牽引力が作用し、これによってスライバは入口から出口まで動く。出口が入口に対して軸方向に離れて配置されているために、回転運動により外向きに側方へ追加的に遠心力がスライバに対して作用し、それは「膨らみ」により予期せぬ不当な力を生ずることがある。外向きに作用する遠心力は、回転軸線に対する曲がりスライバ通路の距離を小さくすることによって小さくされる、即ち内壁がスライバに反力を作用する「膨らみ」は減少する。反力は内壁との繊維材料の高い摩擦を引き起こし、これによりスライバの移動速度が損なわれ、そして又摩擦を生ずる不当なドラフトが無くなることがない。
【0003】
1000m/min迄の送り出し速度に対して、研磨された特殊鋼からなる曲がりスライバ通路を持つ回転テーブルが提案された。しかしながら、この方法では1000m/minを越えるスライバ移動速度の持続する上昇が不可能であることが明らかになっている。特に繊細な練條機のスライバでは、内壁に対する大きい摩擦力が望ましくない不当なドラフトを生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、本発明は前述の欠点を防止し、特にスライバ案内とスライバ品質の改良を可能とする初めに述べた技術の回転テーブルを提供するという課題を基にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題の解決は、請求項1の特徴部分の構成によってなされる。
【0006】
本発明による処置は、スライバ通路の内部空間におけるスライバの種々の運動及びスライバへの種々の力の作用を斟酌している。作用する力は、全ての場所において同じ大きさでは発生しない。そのために、スライバと内壁の間の相互作用及び/又は配置を変更することによって望ましくない、つまり乱れを生ずる力が部分的に及び個別的に対処されることが出来る。この様にして、スライバ案内とスライバ品質の本質的な改善が達成され、そして、特に練條機における1000m/minを越えるスライバ移動速度の相当に大きな上昇が達成できる。同様な程度に、本発明によるスライバ案内の改善が、特に梳綿機において、1000m/minより下のスライバ移動速度の下でスライバ品質の向上を可能とする。スライバは本質的に均質であり、即ち種々の区間乃至領域においてドラフトに関し均一である。スライバ通路内における部分ドラフト及びスライバの区間乃至領域へのその作用は一様であり、そして引張ドラフトは全体として改善される。
【0007】
請求項2乃至21は、本発明の有利な更なる構成を内包している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、図面に示された実施例に基づいて以下に詳細に説明される。
【0009】
図1による側面図は、練條機、例えばツリュツラー型練條機HSRの導入領域1、測定領域2、ドラフト領域(ドラフトローラ)3及びスライバ容器置き場4を(部分的に)示している。導入領域1では、スライバ導入台6(クリール)の下側に2列の容器列を持つ練條機のスライバ容器(丸容器)5が配置されており、供給スライバ7は導入ローラ8を介して引き込まれ、そしてドラフトローラ3に導入される。ドラフト領域3を通過した後に、引き延ばされたスライバ9はスライバ容器置き場4の回転テーブル10に達し、そして出口容器11の中にリング状に送出される。回転テーブル10の中に、スライバ通路12、例えば曲管、が配置されていて、それを通ってスライバ9が移動する。符号Aにより練條機の作動方向が示されている。符号17a、17bにより、カレンダローラが示されている。
【0010】
図2は、供給ローラ21、供給台22、テーカインロール23、シリンダ24、ドッファ25、引き取りローラ26、スクイーズローラ27、28、フリースガイド29、トランペット30、デリバリローラ31、32フラットバー34を有する回転フラット33、カレンダーローラ17a、17bカバー、スライバ容器11及びスライバ容器置き場20を備えた梳綿機、例えばツリュツラー型高性能梳綿機を示している。ローラの回転方向は曲がった矢印で示されている。符号Bによって梳綿機の作動方向が示されている。スライバ容器置き場20のカバー板の上方にハウジングがあり、その中に旋回する回転テーブル10がある。スライバ容器11は、回転テーブル10を通してスライバ13が充填される間に、(図示されない)駆動装置によって動かされる。回転テーブル10の中にスライバ通路12、例えば曲管が配置されており、それを貫通してスライバ13が移動する。
【0011】
図3によれば、スライバ通路12は空間的に曲げられており、スライバ9(図4参照)の為の入口12aと出口12bを有している。入口12aは、回転軸線16と同軸に、そして出口12bは入口12aに対して半径方向距離aで且つ軸方向距離bで配設されている。回転テーブル10は位置固定のパネル14の中に配置されている。回転テーブル10は、スライバ入口開口12aとスライバ出口開口12bの間で、スライバ案内通路12、例えば、曲管を有する。下側の回転ヘッド板15の中にあるスライバ出口開口12bは、略楕円の形状を有する。スライバ9はスライバ通路12の中で矢印の方向に動き、スライバ出口開口12bを通ってスライバ容器11の中に入る(図1参照)。符号15a、15bによって玉軸受が示されている。
【0012】
スライバ9は、スライバ通路12の中で軽い引張ドラフトを受けている、即ち牽引力Zが作用している。通過する間、スライバ9はスライバ通路12の曲がりに従う。この曲がりと牽引力のために、スライバ9は、領域x、yにおいてスライバ通路12の内壁12cに、押し付け力、つまりは摩擦力P1、P2を内壁12の残りの位置を除いて及ぼす。走行するスライバ9と内壁12cとの間で相対運動が生ずる。
【0013】
スライバ9と内壁12cの間の摩擦抵抗は、本発明によれば、スライバ9とスライバ通路12の内壁12cとの間の相互作用及び/又は空間的な配置の変更により低減される。内壁12cの「臨界的な」領域x、yはその際重要な意義を持っている。従って、スライバ9と内壁12cの領域x、yとの間の摩擦は、摩擦係数μの減少により、摩擦角αの減少により、及び/又は曲率半径rの増大により減らすことができる。又、カレンダローラ17a、17bと容器11の重量とによって決まる引張ドラフトも、変えることが出来る(引張力Z)。この処置により押し付け力P1、P2が個別に又は組合わさって低減される。これは図2のスライバ13の場合も同様である。
【0014】
スライバ9の送り出しは、スライバ形成機械の産出するスライバ9、13をスライバ容器11の中に環状に出し置きするという役目を持つ回転テーブル10によって行われる。環状形成は、2個の回転運動、即ち回転テーブル10によって行われる速い運動とスライバ容器11によって行われるゆっくりした運動、の組み合わせによって行われる(矩形容器の場合は第2の運動は並進である。)。スライバ貯留プロセスにおいて、スライバ通路(管)12の中のスライバ9、13は種々の力を受ける。重力、遠心力、作用する引張力による偏倚力、並びにスライバ9、13の移動方向に対抗する方向に作用し、これによってスライバ貯留プロセスを妨害するスライバ9、13と管内壁12cの間の摩擦力が作用する。正確な送り出し状況を得るために引張ドラフトが測定され、このためスライバ通路12内のスライバは常にいくらかの張力を受ける。この様にして、スライバ通路12の曲がり領域内において、各湾曲部の中高に曲げられた小半径部にスライバが常に寄りかかっている。上述の摩擦力は実質的に、この接触領域x、yにおいて、スライバと管との間の相互作用によって生ずる。機械の運転状態とスライバ品質に対する既述の悪影響は、とりわけスライバ9とそれを案内するスライバ通路12の内壁12cとの間のこの摩擦によって生ずる。
【0015】
回転テーブル10のスライバ通路12内のスライバガイドを改善するために、以下の処置が個別の又は複合した形で行われる。
【0016】
繊維材料と、セグメント毎に検分され又は摩擦の少ない材料から実施されるスライバ通路(管)12の内表面12cとの摩擦度の低減。この様にして、例えば張力は小さくされ、そしてそれにより不当なドラフトが防止される。
【0017】
スライバ案内器官の幾何学的形状は、繊維材料のほぐれがスライバ通路(スライバ案内器官)12の周面によって防止されるように変更される。
【0018】
スライバ案内器官12の幾何学的形状は、特に入口12aにおいて拡げられる。これによって、引張の影響下におけるスライバ9、13のスライバ通路(スライバ案内器官)12によるリラックス現象が最小化される。
【0019】
スライバ9、13に(例えば、磁界又は電界の発生により)外力が作用される。これにより、例えば繊維と繊維を案内する表面12cとの間の摩擦が減少する。
【0020】
スライバ貯留によって生ずるスライバ負荷の変動は、制御される要因、例えば容器、によって調節される。
【0021】
スライバ案内距離は、回転テーブルとスライバ案内通路(案内器官)の一体化構造により減少される。
【0022】
スライバ通路(スライバ案内器官)12は、丸い実施形状(例えば楕円形)とは別のものを有する。
【0023】
スライバ通路(スライバ案内器官)における比較緩和の低減の為の処置は、練條機、梳綿機、コーマで適用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明による回転テーブルを備えた練條機を示す側面図である。
【図2】図2は本発明による回転テーブルを備えた梳綿機を示す側面図である。
【図3】図3は図1及び図2によるスライバ通路を備えた回転テーブルを示す断面図である。
【図4】図4はスライバ通路の側面をスライバと共に示す断面図である。
【図5】図5はスライバ通路を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
9 スライバ
10 回転テーブル
11 容器
12 スライバ通路
13 スライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口が回転軸線の近傍又は同軸線上に配置され、且つ出口がその入口に対して半径方向及び軸方向に離れて配置されているスライバ用入口及び出口を備え、空間的に曲げられたスライバ通路を有し、スライバが引張ドラフトを受けており、そして移動するスライバとスライバ通路の内壁との間に相対的な動きがあり、内壁を介してスライバに摩擦抵抗が作用しているスライバ貯留装置用回転テーブルであって、スライバ(9、13)とスライバ通路(12)の内壁(12c)の間の相互作用及び/又は空間的配置を変更することによって、該摩擦抵抗が少なくとも部分的に低減され、
該摩擦抵抗が内壁(12c)に隣接して部分的に低減可能であることを特徴とする回転テーブル。
【請求項2】
該摩擦抵抗が内壁(12c)に隣接して区分されて低減可能であることを特徴とする請求項1に記載の回転テーブル。
【請求項3】
スライバの移動方向で見て中高に曲げられた内壁(12c)の領域で変更が実現されることを特徴とする請求項1または2に記載の回転テーブル。
【請求項4】
摩擦係数μが低減されることを特徴とする請求項1乃至3の一つに記載の回転テーブル。
【請求項5】
摩擦角αが低減されることを特徴とする請求項1乃至4の一つに記載の回転テーブル。
【請求項6】
曲率半径rが増大されることを特徴とする請求項1乃至5の一つに記載の回転テーブル。
【請求項7】
引張ドラフトが低減されることを特徴とする請求項1乃至6の一つに記載の回転テーブル。
【請求項8】
内壁(12c)が摩擦の少ない材料から少なくとも部分的に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の一つに記載の装置。
【請求項9】
内壁(12c)が摩擦の少ない材料で少なくとも部分的に被覆されていることを特徴とする請求項1乃至8の一つに記載の装置。
【請求項10】
内壁(12c)が少なくとも部分的に区分構造で構成されていることを特徴とする請求項1乃至9の一つに記載の装置。
【請求項11】
スライバ通路(12)が摩擦の少ない材料から構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の一つに記載の装置。
【請求項12】
スライバ通路(12)の曲がりが連続運転時のスライバ経路のバルーン状の構成に接近していることを特徴とする請求項1乃至11の一つに記載の装置。
【請求項13】
スライバ通路(12)の入口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の一つに記載の装置。
【請求項14】
スライバ(9、13)に作用する力が、内壁(12c)へのスライバ(9、13)の押し付け力(P1、2)に等しいかそれより大きいことを特徴とする請求項1乃至13の一つに記載の装置。
【請求項15】
スライバ通路(12)が少なくとも部分的に円形の断面を持つことを特徴とする請求項1乃至14の一つに記載の装置。
【請求項16】
スライバ通路(12)の断面が少なくとも部分的に楕円形であることを特徴とする請求項1乃至15の一つに記載の装置。
【請求項17】
スライバ通路(12)の断面が少なくとも部分的に多角形、例えば矩形、正方形であることを特徴とする請求項1乃至16の一つに記載の装置。
【請求項18】
最大接触圧の位置(x、y)での摩擦抵抗が、つまり内壁(12c)に対するスライバ(9、13)の摩擦抵抗が低減可能であることを特徴とする請求項1乃至17の一つに記載の装置。
【請求項19】
スライバ通路(12)の出口が楕円形断面を有していることを特徴とする請求項1乃至18の一つに記載の装置。
【請求項20】
磁界及び/又は電界がスライバに作用されることを特徴とする請求項1乃至19の一つに記載の装置。
【請求項21】
容器(11)の引張ドラフト及び動きが、互いに、例えば運転制御により調和されることを特徴とする請求項1乃至20の一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−247613(P2008−247613A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152935(P2008−152935)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【分割の表示】特願2002−165445(P2002−165445)の分割
【原出願日】平成14年6月6日(2002.6.6)
【出願人】(590002323)ツリュツラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (85)
【Fターム(参考)】