説明

特に自動車分野の好ましくは摺動リングシールにおける、少なくとも1つの漏れ箇所の蒸気放出を検出するための検査装置

【課題】特に自動車分野の好ましくは摺動リングシールにおける、少なくとも1つの漏れ箇所の蒸気放出を検出するための検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置は、漏れ箇所(113)の前後に測定ユニット(118、120)を有する。漏れ損失に関して簡単に確実に漏れ箇所(113)を検出できるように、検査装置を形成するために、両方の測定ユニット(118、120)は直列に接続される。漏れ箇所(113)の蒸気放出に関し、漏れ箇所(113)の前の測定ユニット(118)は、基準流れの測定値を検出し、そして漏れ箇所(113)の後の測定ユニット(120)は、基準流れの測定値を検出する。両方の測定ユニット(118、120)の測定値の比較により、漏れ箇所(113)の蒸気放出の尺度が得られる。検査装置は、摺動リングシールの漏れを突き止めるために適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、特に自動車分野の好ましくは摺動リングシールにおける、少なくとも1つの漏れ箇所の蒸気放出を検出するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野では、ウォータポンプが使用され、そのシャフトは、摺動リングシールによって固定ウォータポンプハウジングに対しシールされる。図1は、摺動リング1、ベローズ2、シールハウジング3、圧力ばね4、ホルダ5、カウンタリング6及びスリーブ7を備える摺動リングシールを有するウォータポンプを示している。カウンタリング6は、ホルダ5のスリーブ7に固定される。ホルダ5は、シールすべきポンプシャフト8の上に回転不能に着座し、このポンプシャフトに、ポンプハウジング9から間隔を空けてインペラ10が回転不能に着座する。摺動リング1は、ベローズ2及び圧力ばね4の力の下にカウンタリング6に密接して位置する。摺動リング1とカウンタリング6との間に、多少大きなシールギャップ11が形成される。このシールギャップ11には、典型的に、冷却系に含まれる水と冷却/凍結防止剤との混合物が充填される。シールギャップ11内のこの媒体は、摺動相手材1、6が運転中に冷却されかつ摩擦が最小化されるために必要である。車両の運転中に、シールギャップ11内に発生する熱によって混合物の部分的な蒸発が生じるので、摺動リングシールの平均蒸気放出は、自動車産業によって300mg/hの量まで許容されている。混合物の過度の損失は、冷却系の冷却能力を低減し、したがって、エンジン損傷の危険性を高める。冷却剤の損失はまた、環境にとって負荷である。この冷却剤損失を可能な限り小さく保持するために、維持費、したがって運転者にとってコストが必要であった。
【0003】
この理由から、蒸気放出の量を測定しなければならない。このことは、空気中に含まれる水分の測定によって実施される。このための公知の検査装置が図3に示されている。検査すべき摺動リングシール12は、電動モータ13によって回転可能に駆動されるポンプシャフト8の上に着座する。検査装置は、シールすべき媒体15が存在する検査ヘッド14を有する。シャフト8は、検査ヘッド14に設けられかつ摺動リングシール12を覆うカバー16を通して突出する。摺動リングシール12の蒸気放出を検査するために、ポンプにより基準流れ17が凝縮器18を通して導かれる。さらに、基準空気17は、摺動リングシール12に生じる蒸気放出19と共に、ポンプによって別の凝縮器20に供給される。凝縮器18、20では、基準空気及び蒸気放出からの基準空気17又は混合気17、19が冷却される。凝縮器18、20の冷却は、ペルチエ素子によって行われる。冷却の結果、空気が吸収できる水は少なくなり、この結果、凝縮器18、20内の水は、凝水として落ちる。水は凝縮器18、20内で流れ落ち、その下に装備された容器21、22に集められる。凝水量は、検査工程の終了後に量ることができ、基準空気17に由来する凝水量は、混合気17、19から形成された凝水量から差し引かれる。その差から、摺動リングシール12の蒸気放出の尺度である漏れ量が得られる。
【0004】
ウォータポンプハウジング9は、図2に示すように、測定用の送風孔25を備える。この送風孔を介して、漏れ箇所に流れる圧縮空気が導かれる。直径を成すように向かい合って、別の孔23が設けられ、この孔を介して、空気は漏れ箇所の後方で摺動リングシールに流れ出る。測定ガス流は、孔25を通して供給される。測定ガスは、シャフト8の周りをリング状に、かつシール部12に沿って流れる。次に、測定ガス流は、孔23を通して漏れ箇所から導いて排出される。液漏れは、下方にタンク24内に流れる。
【0005】
図2は、測定ガスが導かれる2つの方法を示している。左の実施形態では、孔25は垂直に配置される。孔23は、孔25に対し面一に位置しかつ容器24に接続される孔23’から分岐する。孔23’を介して、液漏れはタンク24内に達する。孔23では、測定ガス流が転送される。
【0006】
図2の右の実施形態では、孔23、25は水平に位置し、一方、孔23、25の間の領域の容器24に通じる孔23’は下方に延在する。
【0007】
凝縮器18、20を有するこの測定システムには、室内の室温又は湿度のような変化する周囲条件によって、十分な凝水を形成する凝縮器の性能が変更される欠点がある。凝縮器のペルチエ素子によって提供される冷却能力は、変化する周囲条件に合わせることはできない。測定精度は、凝縮器18、20で流出しない凝水によっても影響を受け、この凝水は、圧縮空気で容器21、22に吹き込まれなければならない。さらに、測定可能な結果を達成するために、測定時間は少なくとも24時間でなければならない。摺動リングシールの最適化及び開発を考慮すると、このような長時間測定の場合、漏れ発生の推移について判定を行うことができないことは、特に不都合である。漏れが測定時間にわたって一様に発生したかどうか、あるいは漏れ量が測定時間中に変化したかどうかを確認できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、漏れ損失に関して漏れ箇所を簡単に確実に検出できる同一範疇の検査装置を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、同一範疇の検査装置の場合、本発明に従って請求項1の特徴によって解決される。
【0010】
本発明による検査装置の場合、両方の測定ユニットは直列に接続される。一方の測定ユニットは、点検すべき漏れ箇所の前に、他方の測定ユニットは当該箇所の後に配置される。漏れ箇所の前に配置される測定ユニットは、基準流れの特徴的な測定値を供給し、一方、漏れ箇所の後に配置される測定ユニットは、漏れ箇所の基準流れと蒸気放出とからなる混合気の特徴的な測定値を発生する。両方の測定ユニットの測定値の比較により、漏れ箇所の蒸気放出の尺度が得られる。両方の測定ユニットは、測定値を連続的に供給することが有利であり、この結果、時間経過の漏れ発生が正確に確認される。このように、漏れ箇所の漏れが測定時間にわたって均一に又は不均一に生じているかどうかについて正確に述べることができる。
【0011】
本発明のさらなる特徴が、別の請求項、詳細な説明及び図面から得られる。
【0012】
図面に示した実施形態を参照して、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図4と図5による検査装置により、特に自動車分野の好ましくは摺動リングシールにおける蒸気放出を確実かつ正確に検出できる。検査装置は、簡単な測定構造を特徴とし、廉価に製造でき、そして十分な測定範囲と十分に高い測定精度とを有する。検査装置は、移動式で有利に使用可能であり、蒸気放出の連続的な測定を可能にする。検査装置により、オンライン測定も可能である。蒸気放出の測定は、高い精度で、温度、室内湿度等の周囲条件と無関係に行うことができる。摺動リングシールは液漏れも有することがあるので、検査装置は、検査装置により、液漏れ及び蒸気漏れを分離して測定できるように形成される。
【0014】
検査装置は、有利にスイッチが設けられた電源102を備えるハウジング101を有する。ハウジング1の同じ側面に、測定セル用の2つのプラグ103、104があり、測定用セルで空間湿度ならびに温度を測定できる。ハウジング1には、電源105、端子ストリップ106、ポンプ107及び2つのセンサ収容部108がある。ハウジング101の外側には、2つの流量測定器109、110があり、これらの測定器により、なお説明する方法で、流入し、かつ流出する空気量が測定される。
【0015】
ハウジング101には、フィルタ、好ましくは活性炭フィルタ用のホルダ111が設けられる。最後に、ハウジング1に圧縮空気接続部112が設けられる。
【0016】
ハウジング101を有する検査装置は、コンパクトに形成され、以下に説明する検査工程に必要なすべての構成要素を含む。この検査装置により、場所及び位置の検査が問題なく可能である。
【0017】
図5を参照して、検査装置により実施される試験方法について個別に説明する。漏れ箇所113により、摺動リングシールの漏れ箇所が表示され、この箇所で、図1〜図3を参照して説明したような蒸気放出が現れる。ハウジング101の圧縮空気接続部112に接続される圧縮空気源114は、漏れ箇所113の方向に導かれる圧縮空気流を発生する。圧縮空気源114から出る圧縮空気は、最初に減圧弁115に達し、この減圧弁により、圧縮空気の圧力は、適合する尺度に減圧される。次に、圧縮空気は、圧縮空気の流動方向に漏れ箇所113の前にある流量測定器109に達する。減圧弁115と流量測定器109との間の圧縮空気ライン116では、圧力計117が着座し、この圧力計により、流量測定器109に入る前の圧縮空気の圧力を測定することができる。圧力が高すぎる場合、適切な尺度に圧力を低減するために、対応する信号を減圧弁115に送信することができる。同時に、この信号を用いて、流量測定器109への圧縮空気の供給を中断することも可能である。
【0018】
流量測定器109には、漏れ箇所113の前で、空間湿度及び温度に関して流入する空気を測定する第1の湿度/温度センサ118が後接続される。このセンサ118で測定された値は、測定工程の基準値を形成する。
【0019】
流量測定器109とセンサ118との間に領域に、流量測定器109からセンサ118への圧縮空気の規則正しい流量を表示する表示部119が設けられる。好ましくは、表示部119は流量測定器109の部分であり、図示した実施形態と異なり、センサ118の後にも設けられる。
【0020】
漏れ箇所113の後方に流動方向に、第2のセンサ120があり、このセンサにより、漏れ箇所113から流出する空気流の空間湿度及び温度が算定される。測定結果を誤らせるおそれがある測定ガス内の成分による負の影響から第2のセンサ120を保護するために、センサ120に少なくとも1つのフィルタ121、好ましくは活性炭フィルタが前接続される。実施形態のように、ウォータポンプの摺動リングシールの漏れが点検される場合、漏れ箇所113から流れる空気内にグリコールがあり、これは、フィルタ121に確実に抑止される。漏れ箇所113から流れる空気は、圧縮空気源114から来る圧縮空気及び蒸気放出から部分的に構成される。それに応じて、センサ120は、この混合気の空間湿度及び温度を検出する。
【0021】
フィルタ121の最適な動作範囲に位置するために、有利に前調整された圧縮空気、すなわち、脱脂されかつ乾燥された圧縮空気が、流入するガスとして使用される。
【0022】
センサ120には、流量測定器110が後接続され、この流量測定器110により、流量測定器109と同様に空気量を制御することができる。例えば、個々のシステム構成要素、特にウォータポンプの気密性を保証できない場合、排気量としてより大きな送風量を選択すること、したがって、システム内の小さな過圧によって空間空気の流入を回避することが重要である。両方の流量測定器109、110により、流量測定器109が、より大きな量の圧縮空気を漏れ箇所113に流入させるように、当該測定器を調整することによって、このことを問題なく実施できる。約5〜約25%の範囲の相対湿度の圧縮空気によって測定されるので、流入する空間空気は結果を明らかに誤らせるであろう。
【0023】
流量測定器110には、同様に、流量測定器110を通して圧縮空気が流れるかどうかを表示する表示部122が付設される。表示部122は、流量測定器110の部分であることが有利である。表示部はまた、漏れ箇所113と流量測定器110との間の領域に配置することができる。
【0024】
両方のセンサ118、120は、センサ収容部108に格納される。図4では、センサ118は、下方のセンサ収容部108に着座し、漏れ箇所113の前に流動方向に配置される。図4の上方のセンサ収容部108には、漏れ箇所113の後に位置するセンサ120が着座する。
【0025】
ポンプ107は、システム構成要素、特にウォータポンプの気密性が保証されない場合に、初めて作動されることが有利である。この場合、圧縮空気源114が圧力を発生し、一方、ポンプ107は圧縮空気を引く。これによって、僅かな空気のみがシステム全体の漏れ箇所に流出するに過ぎない。これに対し、システム全体が密である場合、ポンプ107を作動する必要はなく、圧縮空気源114を用いて圧縮空気を供給することで十分である。
【0026】
より簡単な実施形態の場合、漏れ箇所113の後に第2の流量測定器110は設けられない。このことは、検査装置を通した圧縮空気の流量体積が一定であることを前提とした場合に可能である。
【0027】
流出する空気の湿度量は、次式、
p・V=m・R・T
に従って計算することができる。この式から次式が得られる。
m=p・V/R・T
【0028】
それぞれの圧力は、次式に従って決定することができる。
p=rF・p
ここでは、以下の意味、すなわち、
rF=相対湿度
=飽和/蒸気圧
を示す。
【0029】
この式を考慮して、湿度量について次式が得られる。
m=rF・p・V/R・T
【0030】
飽和/蒸気圧Pは、温度に関係する。これについて、表では、温度値Tに対応する飽和/蒸気圧Pが割り当てられる。
【0031】
記載した検査装置により、簡単にそしてそれにもかかわらず正確に、圧縮空気に含まれる湿度の記載した差の測定によって蒸気放出量を決定することができる。両方のセンサ118、120によって算出された測定値は、有利に(図示せず)コンピュータに供給され、このコンピュータは、算出された値の比較から、湿度量、したがって蒸気放出を確実に決定することができる。流量測定器109、110により、流量を最適に制御できるので、非常に正確な測定が保証される。
【0032】
検査装置は、摺動リングシールの漏れを測定するために、有利に、自動車分野で使用される。検査装置により、例えば、さらに、例えば有機又は無機成分を含む大気内の湿度も測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ウォータポンプのシャフトに着座する摺動リングシールの半部の軸方向概略断面図である。
【図2】ウォータポンプの2つの実施形態の図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図3】蒸気放出を検出するための従来技術による検査装置の概略図である。
【図4】蒸気放出を検出するための本発明による検査装置の概略図である。
【図5】図4による検査装置の構成要素の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1 摺動リング
2 ベローズ
3 シールハウジング
4 圧力ばね
5 ホルダ
6 カウンタリング
7 スリーブ
8 ポンプシャフト
9 ポンプハウジング
10 インペラ
11 シールギャップ
12 摺動リングシール
13 電動モータ13
14 検査ヘッド
15 媒体
16 カバー
17 基準流れ、混合気
18、20 凝縮器
19 蒸気放出、混合気
21、22 容器
23、23’ 孔
24 タンク
25 送風孔
101 ハウジング
102 電源
103、104 プラグ
105 電源
106 端子ストリップ
107 ポンプ
108 センサ収容部
109、110 流量測定器
111 ホルダ
112 圧縮空気接続部
113 漏れ箇所
114 圧縮空気源
115 減圧弁
116 圧縮空気ライン
117 圧力計
118、120 測定ユニット
119、122 表示部
121 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏れ箇所の前に少なくとも1つの測定ユニット、そして前記漏れ箇所の後に少なくとも1つの測定ユニットを有する、特に自動車分野の好ましくは摺動リングシールにおける、少なくとも1つの漏れ箇所の蒸気放出を検出するための検査装置であって、
前記両方の測定ユニット(118、120)が直列に接続され、前記漏れ箇所(113)の蒸気放出に加えて、前記両方の測定ユニットの内の前記漏れ箇所(113)の前の測定ユニット(118)が基準流れの測定値を検出し、かつ前記漏れ箇所(113)の後の測定ユニット(120)が前記基準流れの測定値を検出することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記両方の測定ユニット(118、120)の測定値がコンピュータに供給されることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記測定ユニット(118、120)が、前記基準流れの相対湿度(rF)及び/又は温度を測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
第1の測定ユニット(118)に流量計(109)が前側接続又は後側接続されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
第2の測定ユニット(120)に流量計(110)が前側接続又は後側接続されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記基準流れが、圧縮空気によって形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査装置が、少なくとも1つの圧縮空気接続部(112)を備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記第1の測定ユニット(118)に、減圧器(115)が前側接続されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記減圧器(115)が、圧縮空気源と前記第1の測定ユニット(118)との間に存在することを特徴とする、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記第1又は前記第2の測定ユニット(118、120)に、フィルタ(121)が前側接続されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
ポンプ(107)が備えられることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項12】
前記測定ユニット(118、120)が、湿度センサと熱電対とを備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−218918(P2007−218918A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36256(P2007−36256)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(507052382)カコ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (3)
【Fターム(参考)】