特に自動車用のスライド式ルーフ装置
【課題】本発明は、可動パネル(10)を備える車両、特に自動車用のスライド式ルーフ装置(1)であって、可動パネル(10)の前部(11)は車両の長手方向にスライド可能に取り付けられ、可動パネル(10)の後部(12)は車両の長手方向に同様にスライド可能に取り付けられる少なくとも1つの引き上げレバー(21、22)にヒンジで取り付けられてなるスライド式ルーフ装置(1)に関する。
【解決手段】スライド式ルーフ装置(1)が、各引き上げレバー(21)を車両の長手方向における変位方向に直接駆動することにより可動パネル(10)を変位させることができる駆動手段(30)をさらに備える場合、本発明は注目に値する。
【解決手段】スライド式ルーフ装置(1)が、各引き上げレバー(21)を車両の長手方向における変位方向に直接駆動することにより可動パネル(10)を変位させることができる駆動手段(30)をさらに備える場合、本発明は注目に値する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部(プリアンブル)に記載のスライド式ルーフ装置に関する。
【0002】
本発明は、自動車産業で特に効果的に用いられるが、ただしそれに限定されない。
【背景技術】
【0003】
従来技術で公知のスライド式ルーフ装置では、スライド可能に取り付けられたパネルがしばしば使われる。可動パネルの前部がスライド部材に連結されたスライド式ルーフがドイツ国特許公開公報DE 41 08 197 A1に開示されている。スライド部材は、パネルで覆ったり、露出させたりできるルーフ開口の両側に位置する側方ガイドレールに沿ってスライド可能に取り付けられている。パネルの後部は、車両ルーフの両側に配置される2本のガイドレールに沿ってスライド可能に取り付けられた側方の引き上げレバー端部に連結している。このようなスライド式ルーフ装置をモータで作動できるとき、通常、電動モータに接続したケーブルによって前方のスライド部材をスライド可能に駆動することによって、スライド式パネルの開閉が行われる。
【0004】
しかしながら、この種のスライド式ルーフには、その機構が比較的広い構造空間を必要とするという問題点がある。しかしながら、このようなスライド式ルーフには、特に後方の引き上げレバーのレバー動作に関連した問題点もある。特に、ここでは可動パネルの閉フェーズの終わりで更に力が必要になるという問題、その可動パネルの変位時にガタガタするという問題が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の主題が解決すべき目的は、動作特性が大幅に改善されると同時に車両ルーフと容易に一体化できる車両、特に自動車用のスライド式ルーフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る技術的目的の解決策は、スライド式ルーフ装置が、長手方向に後方引き上げ装置を直接駆動することによって、可動パネルを変位させることができる駆動装置も備えるということである。
【0007】
ここで強調すべき点は、空間位置付けに関する全ての文章と用語は、車両の長手軸と、運転時の正常方向に関係するということである。特に、「横」「長手」「前」「後」ではこれが当てはまる。
【0008】
また、「移動(translation)」という用語は広義で理解しなければならないという点を明らかにすることが大切である。すなわち、この用語は等しく線形な移動、曲線移動またはこれら2種類の移動を任意に組み合わせた移動を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
いずれにしても、本発明には、可動パネルの後部を即座に引き上げられる機構を有する点で効果がある。その機構が必要とする側方及び可動パネルを中心とした長手方向での構造空間を著しく減少させてもよい。したがって、本発明に係るスライド式ルーフ装置を車両ルーフの使用が限られた上下空間でもはるかに簡単に取り付けられ、これによって純粋
に技術的な観点と美的観点のいずれからも効果が与えられる。
【0010】
さらに、本発明は、従属請求項の特徴と、以下の説明から明らかになり、個々にまたは考えうる全ての技術的な組み合わせによって考慮しなければならない特徴にも関連する。
【0011】
本願の説明は発明を限定しない例であり、発明の構成と実施方法の理解を助けるためのものである。さらに、添付の図面を参照して説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るスライド式ルーフ装置を含む挿入ルーフモジュールを有する自動車ルーフを示す図であって、スライド式ルーフ装置に属する可動パネルが閉位置にあるときの自動車ルーフを示す図。
【図2】図1に係るモジュールであって、可動パネルが引き上げ位置にあるときのモジュールを示す図。
【図3】図2に係るモジュールに属するスライド式ルーフ装置であって、可動パネルが開位置にあるときのスライド式ルーフ装置を示す図。
【図4】図3に係る図であるが下から見た斜視図。
【図5】上から見た斜視図であって、図3に係る図と同様に、閉位置と開位置間で変位するときの可動パネルを示す図。
【図6】可動パネルの前方部の保持及びスライドの誘導を確実に行う機械的接続の1つであって、可動パネルが開位置にあるときの様子を示す図。
【図7】可動パネルの後方部の保持及びスライドの誘導を確実に行う機械的接続の1つであって、可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの様子を示す内側から見た図。
【図8】図7の場合と同様な可動パネルの後方部の機械的接続を、外側から見た図。
【図9】図7と図8に係る機械的接続の断面図。
【図10】可動パネルが閉位置にあるときの図7と同様な図。
【図11】可動パネルが閉位置にあるときの図8と同様な図。
【図12】可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの図7と同様な図。
【図13】可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの図8と同様な図。
【図14】可動パネルが引き上げ位置にあるときの図7と同様な図。
【図15】可動パネルがスライドフェーズの中間にあるときの図8と同様な図。
【図16】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置にあるときの可動パネルを示す図。
【図17】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図18】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図19】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図20】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置にあるときの可動パネルを示す図。
【図21】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置から開位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図22】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置から開位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
わかりやすくするために、同一の要素には同一の参照番号を付している。また、発明の
理解に必要な要素のみを示し、縮尺を考慮せず概略的に示している。
【0014】
図1は、ガラスからなる可動パネル10を用いるスライド式ルーフ装置1を備える自動車200のルーフ210を示す。この特定の実施形態で、この実施形態は一例として選択したものにすぎないが、スライド式ルーフ装置1は、2枚のガラスパネル、すなわち可動フロントパネル10と固定リアパネル110を組み合わせてなるモジュール100内に一体化して設けられている。モジュール100は特に車両ルーフの全面を占め、横断方向では、2つの上側部材220の間に位置する空間全体を覆い、縦方向では、実質的にフロントガラス230からリアウィンドウまでに延び、これによって車両ルーフの薄板金部が後方横部材全体にわたって単一のストリップ240に縮小している。
【0015】
図2に示されるように、モジュール100はスライド式ルーフ装置1と固定後方パネル110の支持部として機能するフレーム120を用いており、これによってモジュール全体に均一なモジュール特性が与えられる。また、フレーム120は、車両200の箱形車体に直接固定できるよう設計されているので、車両200の車体に確実に接続する機能を有する。2つの装飾用ストリップ131と132は、フレーム120の側方輪郭を覆う。
【0016】
図3では、スライド式ルーフ装置1にパネル10が設けられ、パネル10の前部11は車両の長手方向に変位するために移動可能に取り付けられ、パネル10の後部12は少なくとも1つの引き上げレバー21、22に連結して、前部11同様に車両の長手方向に変位するために移動可能に取り付けられている。そのユニットは、車両200のルーフ210の開口を閉じることができるような閉位置(図1)と、開口から離れたところに延びて実質的にこの開口を露出させることが主としてできる開位置(図3と図4)との間でパネル10がスライド移動可能であるように配置される。
【0017】
本発明の主題によれば、図4と図5には、スライド式ルーフ装置1が、車両の長手方向変位するために各引き上げレバー21、22を直接駆動することによって可動パネル10を変位することができる駆動装置30も有することが示されている。
【0018】
この一例としての実施形態において、可動パネル10の前部11は開口の両側に位置する2本のガイドレール61、62にスライド可能に取り付けられる。実際、図4と図6に示されるように、2つの傾斜取付具63、64が可動パネル10の前部11の角の下にそれぞれ取り付けられて、補強横材67を介して接続される。傾斜取付具63、64はそれぞれ支持板65、66の係留点として機能し、傾斜取付具63、64それぞれの端部に、対応のガイドレール61、62に沿ってスライドできるようなスライド片68が回転可能に取り付けられている。
【0019】
次に、可動パネル10の後部12が2つの側方引き上げレバー21、22に連結され、引き上げレバー21、22は車両200のルーフ210の各側部で実質的に同一軸上に配置される2本の後方ガイドレール23、24にスライド可能に取り付けられ、ガイドレール61、62と位置合わせされている。
【0020】
図7乃至15には、各後方ガイドレール23、24が車両200の内側に向かって下方傾斜して、開口レベルの下方まで延びている前方部分を有する、ことが示されている。ユニットは、可動パネル10が閉位置に達して、ガイドレール23、24の各傾斜レール部分によって、対応の引き上げレバー21、22が開口面内で実質的に傾斜できるようになっており、その結果、固定リアパネル110と面一になるよう可動パネル10の後部12を位置付けする。
【0021】
図7乃至15には、また、割り当てられた後方ガイドレール23、24内で各引き上げ
レバー21、22が2つの独立したスライド片26a、26bによってスライドすることが示されている。
【0022】
本発明の特殊性によれば、駆動装置30には先ず、駆動技術で引き上げレバー21、22に結合した少なくとも1つのスライド部材31が設けられており、可動パネル10の変位方向に実質的に平行な方向に並進移動可能に取り付けられている。さらに、駆動装置30には、たとえば圧力に抗して固定するように誘導される駆動ケーブルの形状で、フレキシブル接続部材51、52を介して各スライド部材31に接続し、各スライド部材31を長手方向に並進移動させて同時に駆動することによって、各引き上げレバー21、22を同時に変位させることができる駆動機構40も設けられている。
【0023】
スライド部材31を駆動によって引き上げレバー21、22に結合させるというのは、これらの2つの要素が広義では固定して互いに接続される、すなわち関連の接続が必ずしも固定接続ではなく互いに接続されることを意味する。
【0024】
なお、この一例としての実施形態では、スライド式ルーフ装置1は電動で、駆動機構40は、電動モータ42とギア機構43を組み合わせた従来の構成のアクチュエータ41からなる。しかし、スライド式ルーフ装置1を手動制御して、たとえばクランクによって手動で作動するような機構形態の駆動機構40を備えるようにしてもよい。
【0025】
最後に、各フレキシブル接続部材51、52は、先験的に、任意の種類でおよび/または任意の構造をとることができることを明確にしておかなければならない。しかし、この一例としての実施形態の各フレキシブル接続部材51、52はこの場合、駆動ケーブルからなるものであれば特に効果的である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、駆動機構30は、可動パネル10に連結する各引き上げレバー21、22用のスライド部材31を備える。各スライド部材31は、専用のフレキシブル接続部材51、52を介して駆動機構40に接続する。ユニットは、駆動機構40が、全てのフレキシブル接続部材51、52を同時に引っ張る又は押すことによって、2つのスライド部材31、32を同時に変位することができるように配置される。
【0027】
各スライド部材31は、可動パネル10の変位方向に実質的に平行に延びる後方ガイドレール33、34に沿ってスライド可能に取り付けられると特に効果的である。
【0028】
本発明の更に効果的な特徴によれば、可動パネル10に連結する各引き上げレバー21、22が長手方向に配置された別の後方ガイドレール23、24に沿ってスライド可能に取り付けられている。各スライド部材31の後方ガイドレール33、34は、対応する引き上げレバー21、22に割り当てられた別の後方ガイドレール23、24に対して水平に取り付けられる。スライド部材31のガイドレール33、34が対応する引き上げレバー21、22のガイドレール23、24に対して水平に取り付けられるので、これらの2つの要素は単一の構成部材の一部とするのが効果的である。
【0029】
本発明のさらに別の特殊性は特に図7乃至15で明らかであるが、この特殊性によれば、各スライド部材31は、指形に構成され、スライドすることでガイド25と協動する結合要素35によって、駆動されて対応する引き上げレバー21、22と結合され、指形35はスライド部材31に固定接続され、ガイド25は引き上げレバー21、22それぞれの上に配置される。
【0030】
この特徴により、閉止時の力を最小限に抑えることができる。結合要素35がガイド25内でスライドすることは、言い換えれば、可動パネル10の閉フェーズがそれに応じて
設計されたガイド25によって分割することが可能となる。
【0031】
これに関連して、図16乃至22には、各ガイド25は、3つの部分に分割できるようほぼ湾曲形状になっていることが示されている。
【0032】
まず、ガイド25には、可動パネル10が閉位置近くにあるとき(図16)、スライド部材31の変位方向に実質的に平行に延びる第1の実質的に直線な部分27が設けられている。装置は、可動パネル10が閉位置近くにあるとき、対応の結合要素35が第1の部分27に沿ってスライド可能になるように構成されている。
【0033】
この特徴によって、可動パネル10の開フェーズのまさに開始時と、閉フェーズの終りに見られるアイドル状態を利用することができる。
【0034】
また、ガイド25には、可動パネル10が開フェーズの始まりか閉フェーズの終りにあるとき(図17乃至19)、スライド部材31の変位方向に対して斜めに延びる第2の実質的に直線な部分28が設けられている。可動パネル10が開フェーズの始まりか閉フェーズの終りに実際に位置しているとき、対応の結合要素35が第2の部分28に沿ってスライド可能になるように構成されている。
【0035】
この特徴によって、スライド部材31によって引き上げレバー21、22を前進するよう駆動させることができる。
【0036】
さらに、ガイド25には、可動パネル10が開フェーズの中間か閉フェーズの中間にあるとき(図20乃至22)、スライド部材31の変位方向に実質的に垂直に延びる第3の実質的に直線な部分29が設けられている。対応の結合要素35が図20によれば可動パネル10の後方端の完全に引き上げられた部分から始まり、第3の部分29で停止して、開フェーズでは後方にさらに変位するか、閉フェーズでは前方に反転移動するように構成されている。
【0037】
この特徴によって、可動パネル10が引き上げ位置と完全開位置との間で変位している一方で、引き上げレバー21、22とスライド部材31をほとんど強固に結合させることができる。引き上げレバー21、22はスライド部材31によって直接駆動され、駆動機構40によってスライド部材31にかかる張力または推力が引き上げレバー21、22にすべて伝えられる。
【0038】
なお、上記の3つのケースでは、ガイド25の考慮中の部分27、28及び29の、スライド部材31の変位方向に対する位置合わせは、引き上げレバー21、22上での個々の配置と、スライド部材31の変位方向に対する引き上げレバー21、22の位置の両方の要因に応じて変化する。
【0039】
図16乃至22の縦断面図により、上記のスライド式ルーフ装置1を作動させるための運動学的システムが容易に理解できる。
【0040】
特に、図16には、閉位置にあるパネル10が面一で固定リアパネル110に隣接していることが示されている。リップシール140は、この場合のように前記パネルが閉位置にあるとき、可動パネル10に対して確実に封印できるように開口を定義するフレーム部120の外形全体にわたって延びている。ガイドレール23の前方傾斜端部に水平に位置しているとき、引き上げレバー21は開口内で実質的に水平に延びる。結合要素35はガイド25の第1の部分27に位置する。これは、スライド部材31と引き上げレバー21とが可動パネル10にできるだけ近づいた位置にある点で互いに接続していることを意味
し、これによって引き上げレバー21の閉位置で最適に固定させることができる。
【0041】
可動パネル10の開フェーズは、前記アクチュエータがケーブル51(図16乃至22には不図示)を介してスライド部材31に張力をかけ、これによってスライド部材31がガイドレール33に沿ってスライドするように(図17)アクチュエータ41を作動することによって開始する。なお、わかりやすくするために、ガイドレールもここでは図示されていない。開フェーズのまさに開始時、結合要素35はガイド25の第1の部分27内をスライドするが、この場合の第1の部分27はスライド部材31の変位方向と実質的に同一直線上にあるので、このことは可動パネル10の大幅な変位にはつながらない。
【0042】
図18から明らかなように、可動パネル10は、結合要素35がガイド25の第2の部分28に到達するときに効果的に開く。スライド部材31が後方への並進移動を続ける限りにおいて、ガイド25の第2の部分28がその後スライド部材31のスライド方向に対して傾斜するために、引き上げレバー21は変位方向に前進するように駆動されて後方まで移動する。その結果、引き上げレバー21が同時に同様に徐々に引き上げられる。
【0043】
図19に示すように、結合要素35がガイド25の第2の部分28の後端に到達すると、可動パネル10は引き上げ位置の近くに位置している。この場合、パネル10の前部が後方に移動するのはほんのわずかであるが、後部12は大きく引き上げられる。
【0044】
今度は、図20によれば、結合要素35は、ガイド25の第3の部分29に挿入されるとすぐに引き上げ位置に最終的に達する。引き上げレバー21が今や実質的に固定してスライド部材31に接続されていることによって、駆動機構40の動作が一時的に停止して、この位置にスライド部材31を保持しつつ、この位置を永久に保つことができる。ちょうどこの時点で、可動パネル10の前部11は比較的大きな程度まで降下し、その裏面は前方シールにもたれ、スライド片68がガイドレール61の実質的に水平な中間部分に位置していることにより非常に安定した状態にある。
【0045】
図21から明らかなように、スライド部材31がさらに後方に向かって駆動されると、パネル10だけがさらに開放に向かう移動をしている間に、純粋に直線の並進方向に移動するにつれ、可動パネル10の後部12と水平にわずかな幾何学的変化が生じる。前部11と水平の状態では、前記前部がガイドレール61の傾斜部分の引き上げに従わねばならないので、状況が異なる。
【0046】
この過程が終わると、図21と図22に示すように、可動パネル10の前部11も引き上げられる。したがって、前部11に対してガイドレール61、62の実質的に直線な部分に水平で、しかも後部12に対してガイドレール23、24の実質的に直線な部分に水平な状態で単純にスライドさせることにより、可動パネル10の後方への変位が継続し、最終的に完全開位置に達する。この場合、引き上げレバー21のがたつく危険性を有利に減少させることができる、2つのスライド片26aと26bの間の点でスライド部材31と引き上げレバー21とが接続されることが観察されている。
【0047】
実質的に反対方向の運動学的システムまたは運動に応じて、可動パネル10が閉止されるので、閉止についてはここでは詳しく説明しない。
【0048】
当然ながら、より一般的にいえば、本発明は、上記の少なくとも1つのスライド式ルーフ装置1を有する任意の車両に関するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部(プリアンブル)に記載のスライド式ルーフ装置に関する。
【0002】
本発明は、自動車産業で特に効果的に用いられるが、ただしそれに限定されない。
【背景技術】
【0003】
従来技術で公知のスライド式ルーフ装置では、スライド可能に取り付けられたパネルがしばしば使われる。可動パネルの前部がスライド部材に連結されたスライド式ルーフがドイツ国特許公開公報DE 41 08 197 A1に開示されている。スライド部材は、パネルで覆ったり、露出させたりできるルーフ開口の両側に位置する側方ガイドレールに沿ってスライド可能に取り付けられている。パネルの後部は、車両ルーフの両側に配置される2本のガイドレールに沿ってスライド可能に取り付けられた側方の引き上げレバー端部に連結している。このようなスライド式ルーフ装置をモータで作動できるとき、通常、電動モータに接続したケーブルによって前方のスライド部材をスライド可能に駆動することによって、スライド式パネルの開閉が行われる。
【0004】
しかしながら、この種のスライド式ルーフには、その機構が比較的広い構造空間を必要とするという問題点がある。しかしながら、このようなスライド式ルーフには、特に後方の引き上げレバーのレバー動作に関連した問題点もある。特に、ここでは可動パネルの閉フェーズの終わりで更に力が必要になるという問題、その可動パネルの変位時にガタガタするという問題が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の主題が解決すべき目的は、動作特性が大幅に改善されると同時に車両ルーフと容易に一体化できる車両、特に自動車用のスライド式ルーフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る技術的目的の解決策は、スライド式ルーフ装置が、長手方向に後方引き上げ装置を直接駆動することによって、可動パネルを変位させることができる駆動装置も備えるということである。
【0007】
ここで強調すべき点は、空間位置付けに関する全ての文章と用語は、車両の長手軸と、運転時の正常方向に関係するということである。特に、「横」「長手」「前」「後」ではこれが当てはまる。
【0008】
また、「移動(translation)」という用語は広義で理解しなければならないという点を明らかにすることが大切である。すなわち、この用語は等しく線形な移動、曲線移動またはこれら2種類の移動を任意に組み合わせた移動を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
いずれにしても、本発明には、可動パネルの後部を即座に引き上げられる機構を有する点で効果がある。その機構が必要とする側方及び可動パネルを中心とした長手方向での構造空間を著しく減少させてもよい。したがって、本発明に係るスライド式ルーフ装置を車両ルーフの使用が限られた上下空間でもはるかに簡単に取り付けられ、これによって純粋
に技術的な観点と美的観点のいずれからも効果が与えられる。
【0010】
さらに、本発明は、従属請求項の特徴と、以下の説明から明らかになり、個々にまたは考えうる全ての技術的な組み合わせによって考慮しなければならない特徴にも関連する。
【0011】
本願の説明は発明を限定しない例であり、発明の構成と実施方法の理解を助けるためのものである。さらに、添付の図面を参照して説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るスライド式ルーフ装置を含む挿入ルーフモジュールを有する自動車ルーフを示す図であって、スライド式ルーフ装置に属する可動パネルが閉位置にあるときの自動車ルーフを示す図。
【図2】図1に係るモジュールであって、可動パネルが引き上げ位置にあるときのモジュールを示す図。
【図3】図2に係るモジュールに属するスライド式ルーフ装置であって、可動パネルが開位置にあるときのスライド式ルーフ装置を示す図。
【図4】図3に係る図であるが下から見た斜視図。
【図5】上から見た斜視図であって、図3に係る図と同様に、閉位置と開位置間で変位するときの可動パネルを示す図。
【図6】可動パネルの前方部の保持及びスライドの誘導を確実に行う機械的接続の1つであって、可動パネルが開位置にあるときの様子を示す図。
【図7】可動パネルの後方部の保持及びスライドの誘導を確実に行う機械的接続の1つであって、可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの様子を示す内側から見た図。
【図8】図7の場合と同様な可動パネルの後方部の機械的接続を、外側から見た図。
【図9】図7と図8に係る機械的接続の断面図。
【図10】可動パネルが閉位置にあるときの図7と同様な図。
【図11】可動パネルが閉位置にあるときの図8と同様な図。
【図12】可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの図7と同様な図。
【図13】可動パネルが開フェーズの開始時にあるときの図8と同様な図。
【図14】可動パネルが引き上げ位置にあるときの図7と同様な図。
【図15】可動パネルがスライドフェーズの中間にあるときの図8と同様な図。
【図16】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置にあるときの可動パネルを示す図。
【図17】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図18】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図19】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、閉位置から引き上げ位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図20】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置にあるときの可動パネルを示す図。
【図21】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置から開位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【図22】スライド式ルーフ装置に属する可動パネルの運動学的システムを示す縦断面図であって、引き上げ位置から開位置に変位するときの可動パネルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
わかりやすくするために、同一の要素には同一の参照番号を付している。また、発明の
理解に必要な要素のみを示し、縮尺を考慮せず概略的に示している。
【0014】
図1は、ガラスからなる可動パネル10を用いるスライド式ルーフ装置1を備える自動車200のルーフ210を示す。この特定の実施形態で、この実施形態は一例として選択したものにすぎないが、スライド式ルーフ装置1は、2枚のガラスパネル、すなわち可動フロントパネル10と固定リアパネル110を組み合わせてなるモジュール100内に一体化して設けられている。モジュール100は特に車両ルーフの全面を占め、横断方向では、2つの上側部材220の間に位置する空間全体を覆い、縦方向では、実質的にフロントガラス230からリアウィンドウまでに延び、これによって車両ルーフの薄板金部が後方横部材全体にわたって単一のストリップ240に縮小している。
【0015】
図2に示されるように、モジュール100はスライド式ルーフ装置1と固定後方パネル110の支持部として機能するフレーム120を用いており、これによってモジュール全体に均一なモジュール特性が与えられる。また、フレーム120は、車両200の箱形車体に直接固定できるよう設計されているので、車両200の車体に確実に接続する機能を有する。2つの装飾用ストリップ131と132は、フレーム120の側方輪郭を覆う。
【0016】
図3では、スライド式ルーフ装置1にパネル10が設けられ、パネル10の前部11は車両の長手方向に変位するために移動可能に取り付けられ、パネル10の後部12は少なくとも1つの引き上げレバー21、22に連結して、前部11同様に車両の長手方向に変位するために移動可能に取り付けられている。そのユニットは、車両200のルーフ210の開口を閉じることができるような閉位置(図1)と、開口から離れたところに延びて実質的にこの開口を露出させることが主としてできる開位置(図3と図4)との間でパネル10がスライド移動可能であるように配置される。
【0017】
本発明の主題によれば、図4と図5には、スライド式ルーフ装置1が、車両の長手方向変位するために各引き上げレバー21、22を直接駆動することによって可動パネル10を変位することができる駆動装置30も有することが示されている。
【0018】
この一例としての実施形態において、可動パネル10の前部11は開口の両側に位置する2本のガイドレール61、62にスライド可能に取り付けられる。実際、図4と図6に示されるように、2つの傾斜取付具63、64が可動パネル10の前部11の角の下にそれぞれ取り付けられて、補強横材67を介して接続される。傾斜取付具63、64はそれぞれ支持板65、66の係留点として機能し、傾斜取付具63、64それぞれの端部に、対応のガイドレール61、62に沿ってスライドできるようなスライド片68が回転可能に取り付けられている。
【0019】
次に、可動パネル10の後部12が2つの側方引き上げレバー21、22に連結され、引き上げレバー21、22は車両200のルーフ210の各側部で実質的に同一軸上に配置される2本の後方ガイドレール23、24にスライド可能に取り付けられ、ガイドレール61、62と位置合わせされている。
【0020】
図7乃至15には、各後方ガイドレール23、24が車両200の内側に向かって下方傾斜して、開口レベルの下方まで延びている前方部分を有する、ことが示されている。ユニットは、可動パネル10が閉位置に達して、ガイドレール23、24の各傾斜レール部分によって、対応の引き上げレバー21、22が開口面内で実質的に傾斜できるようになっており、その結果、固定リアパネル110と面一になるよう可動パネル10の後部12を位置付けする。
【0021】
図7乃至15には、また、割り当てられた後方ガイドレール23、24内で各引き上げ
レバー21、22が2つの独立したスライド片26a、26bによってスライドすることが示されている。
【0022】
本発明の特殊性によれば、駆動装置30には先ず、駆動技術で引き上げレバー21、22に結合した少なくとも1つのスライド部材31が設けられており、可動パネル10の変位方向に実質的に平行な方向に並進移動可能に取り付けられている。さらに、駆動装置30には、たとえば圧力に抗して固定するように誘導される駆動ケーブルの形状で、フレキシブル接続部材51、52を介して各スライド部材31に接続し、各スライド部材31を長手方向に並進移動させて同時に駆動することによって、各引き上げレバー21、22を同時に変位させることができる駆動機構40も設けられている。
【0023】
スライド部材31を駆動によって引き上げレバー21、22に結合させるというのは、これらの2つの要素が広義では固定して互いに接続される、すなわち関連の接続が必ずしも固定接続ではなく互いに接続されることを意味する。
【0024】
なお、この一例としての実施形態では、スライド式ルーフ装置1は電動で、駆動機構40は、電動モータ42とギア機構43を組み合わせた従来の構成のアクチュエータ41からなる。しかし、スライド式ルーフ装置1を手動制御して、たとえばクランクによって手動で作動するような機構形態の駆動機構40を備えるようにしてもよい。
【0025】
最後に、各フレキシブル接続部材51、52は、先験的に、任意の種類でおよび/または任意の構造をとることができることを明確にしておかなければならない。しかし、この一例としての実施形態の各フレキシブル接続部材51、52はこの場合、駆動ケーブルからなるものであれば特に効果的である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、駆動機構30は、可動パネル10に連結する各引き上げレバー21、22用のスライド部材31を備える。各スライド部材31は、専用のフレキシブル接続部材51、52を介して駆動機構40に接続する。ユニットは、駆動機構40が、全てのフレキシブル接続部材51、52を同時に引っ張る又は押すことによって、2つのスライド部材31、32を同時に変位することができるように配置される。
【0027】
各スライド部材31は、可動パネル10の変位方向に実質的に平行に延びる後方ガイドレール33、34に沿ってスライド可能に取り付けられると特に効果的である。
【0028】
本発明の更に効果的な特徴によれば、可動パネル10に連結する各引き上げレバー21、22が長手方向に配置された別の後方ガイドレール23、24に沿ってスライド可能に取り付けられている。各スライド部材31の後方ガイドレール33、34は、対応する引き上げレバー21、22に割り当てられた別の後方ガイドレール23、24に対して水平に取り付けられる。スライド部材31のガイドレール33、34が対応する引き上げレバー21、22のガイドレール23、24に対して水平に取り付けられるので、これらの2つの要素は単一の構成部材の一部とするのが効果的である。
【0029】
本発明のさらに別の特殊性は特に図7乃至15で明らかであるが、この特殊性によれば、各スライド部材31は、指形に構成され、スライドすることでガイド25と協動する結合要素35によって、駆動されて対応する引き上げレバー21、22と結合され、指形35はスライド部材31に固定接続され、ガイド25は引き上げレバー21、22それぞれの上に配置される。
【0030】
この特徴により、閉止時の力を最小限に抑えることができる。結合要素35がガイド25内でスライドすることは、言い換えれば、可動パネル10の閉フェーズがそれに応じて
設計されたガイド25によって分割することが可能となる。
【0031】
これに関連して、図16乃至22には、各ガイド25は、3つの部分に分割できるようほぼ湾曲形状になっていることが示されている。
【0032】
まず、ガイド25には、可動パネル10が閉位置近くにあるとき(図16)、スライド部材31の変位方向に実質的に平行に延びる第1の実質的に直線な部分27が設けられている。装置は、可動パネル10が閉位置近くにあるとき、対応の結合要素35が第1の部分27に沿ってスライド可能になるように構成されている。
【0033】
この特徴によって、可動パネル10の開フェーズのまさに開始時と、閉フェーズの終りに見られるアイドル状態を利用することができる。
【0034】
また、ガイド25には、可動パネル10が開フェーズの始まりか閉フェーズの終りにあるとき(図17乃至19)、スライド部材31の変位方向に対して斜めに延びる第2の実質的に直線な部分28が設けられている。可動パネル10が開フェーズの始まりか閉フェーズの終りに実際に位置しているとき、対応の結合要素35が第2の部分28に沿ってスライド可能になるように構成されている。
【0035】
この特徴によって、スライド部材31によって引き上げレバー21、22を前進するよう駆動させることができる。
【0036】
さらに、ガイド25には、可動パネル10が開フェーズの中間か閉フェーズの中間にあるとき(図20乃至22)、スライド部材31の変位方向に実質的に垂直に延びる第3の実質的に直線な部分29が設けられている。対応の結合要素35が図20によれば可動パネル10の後方端の完全に引き上げられた部分から始まり、第3の部分29で停止して、開フェーズでは後方にさらに変位するか、閉フェーズでは前方に反転移動するように構成されている。
【0037】
この特徴によって、可動パネル10が引き上げ位置と完全開位置との間で変位している一方で、引き上げレバー21、22とスライド部材31をほとんど強固に結合させることができる。引き上げレバー21、22はスライド部材31によって直接駆動され、駆動機構40によってスライド部材31にかかる張力または推力が引き上げレバー21、22にすべて伝えられる。
【0038】
なお、上記の3つのケースでは、ガイド25の考慮中の部分27、28及び29の、スライド部材31の変位方向に対する位置合わせは、引き上げレバー21、22上での個々の配置と、スライド部材31の変位方向に対する引き上げレバー21、22の位置の両方の要因に応じて変化する。
【0039】
図16乃至22の縦断面図により、上記のスライド式ルーフ装置1を作動させるための運動学的システムが容易に理解できる。
【0040】
特に、図16には、閉位置にあるパネル10が面一で固定リアパネル110に隣接していることが示されている。リップシール140は、この場合のように前記パネルが閉位置にあるとき、可動パネル10に対して確実に封印できるように開口を定義するフレーム部120の外形全体にわたって延びている。ガイドレール23の前方傾斜端部に水平に位置しているとき、引き上げレバー21は開口内で実質的に水平に延びる。結合要素35はガイド25の第1の部分27に位置する。これは、スライド部材31と引き上げレバー21とが可動パネル10にできるだけ近づいた位置にある点で互いに接続していることを意味
し、これによって引き上げレバー21の閉位置で最適に固定させることができる。
【0041】
可動パネル10の開フェーズは、前記アクチュエータがケーブル51(図16乃至22には不図示)を介してスライド部材31に張力をかけ、これによってスライド部材31がガイドレール33に沿ってスライドするように(図17)アクチュエータ41を作動することによって開始する。なお、わかりやすくするために、ガイドレールもここでは図示されていない。開フェーズのまさに開始時、結合要素35はガイド25の第1の部分27内をスライドするが、この場合の第1の部分27はスライド部材31の変位方向と実質的に同一直線上にあるので、このことは可動パネル10の大幅な変位にはつながらない。
【0042】
図18から明らかなように、可動パネル10は、結合要素35がガイド25の第2の部分28に到達するときに効果的に開く。スライド部材31が後方への並進移動を続ける限りにおいて、ガイド25の第2の部分28がその後スライド部材31のスライド方向に対して傾斜するために、引き上げレバー21は変位方向に前進するように駆動されて後方まで移動する。その結果、引き上げレバー21が同時に同様に徐々に引き上げられる。
【0043】
図19に示すように、結合要素35がガイド25の第2の部分28の後端に到達すると、可動パネル10は引き上げ位置の近くに位置している。この場合、パネル10の前部が後方に移動するのはほんのわずかであるが、後部12は大きく引き上げられる。
【0044】
今度は、図20によれば、結合要素35は、ガイド25の第3の部分29に挿入されるとすぐに引き上げ位置に最終的に達する。引き上げレバー21が今や実質的に固定してスライド部材31に接続されていることによって、駆動機構40の動作が一時的に停止して、この位置にスライド部材31を保持しつつ、この位置を永久に保つことができる。ちょうどこの時点で、可動パネル10の前部11は比較的大きな程度まで降下し、その裏面は前方シールにもたれ、スライド片68がガイドレール61の実質的に水平な中間部分に位置していることにより非常に安定した状態にある。
【0045】
図21から明らかなように、スライド部材31がさらに後方に向かって駆動されると、パネル10だけがさらに開放に向かう移動をしている間に、純粋に直線の並進方向に移動するにつれ、可動パネル10の後部12と水平にわずかな幾何学的変化が生じる。前部11と水平の状態では、前記前部がガイドレール61の傾斜部分の引き上げに従わねばならないので、状況が異なる。
【0046】
この過程が終わると、図21と図22に示すように、可動パネル10の前部11も引き上げられる。したがって、前部11に対してガイドレール61、62の実質的に直線な部分に水平で、しかも後部12に対してガイドレール23、24の実質的に直線な部分に水平な状態で単純にスライドさせることにより、可動パネル10の後方への変位が継続し、最終的に完全開位置に達する。この場合、引き上げレバー21のがたつく危険性を有利に減少させることができる、2つのスライド片26aと26bの間の点でスライド部材31と引き上げレバー21とが接続されることが観察されている。
【0047】
実質的に反対方向の運動学的システムまたは運動に応じて、可動パネル10が閉止されるので、閉止についてはここでは詳しく説明しない。
【0048】
当然ながら、より一般的にいえば、本発明は、上記の少なくとも1つのスライド式ルーフ装置1を有する任意の車両に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(200)、特に自動車用のスライド式ルーフ装置(1)であって、可動パネル(10)を備え、可動パネル(10)の前部(11)が車両の長手方向に変位可能に取り付けられ、可動パネル(10)の後部(12)が車両の長手方向に枢軸可能、且つ変位可能に取り付けられる少なくとも1つの引き上げレバー(21、22)に連結してなるスライド式ルーフ装置(1)であって、
スライド式ルーフ装置(1)は、引き上げレバー(21、22)を車両の長手方向における変位方向に直接駆動することにより、可動パネル(10)を変位させることができる駆動装置(30)を備えることを特徴とするスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項2】
駆動装置(30)は、引き上げレバー(21、22)に駆動により結合され、可動パネル(10)の変位方向に対して実質的に平行な方向に変位可能に取り付けられた少なくとも1つのスライド部材(31)と、フレキシブル接続部材(51)を介して各スライド部材(31)に接続され、車両の長手方向における変位方向に各スライド部材(31)を同時に駆動することによって各引き上げレバー(21、22)を同時に変位させることができる駆動機構(40)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項3】
駆動装置(30)は、可動パネル(10)に連結される各引き上げレバー(21、22)用のスライド部材(31)を備え、各スライド部材(31)は、専用のフレキシブル接続部材(51、52)を介して駆動機構(40)に接続されることを特徴とする請求項2に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項4】
各スライド部材(31)は、可動パネル(10)の変位方向に対して実質的に平行に延びるガイドレール(33、34)上に変位可能に取り付けられることを特徴とする請求項2または3に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項5】
各引き上げレバー(21、22)は、長手方向に配置され、対応する引き上げレバー(21、22)に割り当てられるスライド部材(31)のガイドレール(33、34)に水平に取り付けられるガイドレール(23、24)に沿って変位可能に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項6】
各スライド部材(31)は、スライド部材(31)に接続されて引き上げレバー(21、22)上に配置されるガイド(25)と協動する結合要素(35)を介して駆動によって、対応する引き上げレバー(21、22)に結合されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項7】
各ガイド(25)は、パネル(10)が閉じているとき、スライド部材(31)の変位方向に対して実質的に平行に延びる第1の実質的に直線部分(27)を備え、結合要素(35)は、可動パネル(10)が閉位置近くにあるとき、第1の部分(27)に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項6に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項8】
各ガイド(25)は、可動パネル(10)が開フェーズの始め又は閉フェーズの終りにあるとき、スライド部材(31)の変位方向に対して斜めに延びる第2の実質的に直線部分(28)を備え、対応する結合要素(35)は、可動パネル(10)が開フェーズの始め又は閉フェーズの終りに位置するとき、第2の部分(28)に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項6または7に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項9】
各ガイド(25)は、可動パネル(10)が開フェーズの最後の部分又は閉フェーズの
最初の部分にあるとき、スライド部材(31)の変位方向に対して実質的に垂直に延びる第3の実質的に直線部分(29)を備え、対応する結合要素(35)は、可動パネル(10)がそれぞれ開フェーズまたは閉フェーズにあるとき、第3の部分(29)内に固定させることができることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項10】
前記請求項の1つに記載の少なくとも1つのスライド式ルーフ装置(1)を備えることを特徴とする自動車(200)。
【請求項1】
車両(200)、特に自動車用のスライド式ルーフ装置(1)であって、可動パネル(10)を備え、可動パネル(10)の前部(11)が車両の長手方向に変位可能に取り付けられ、可動パネル(10)の後部(12)が車両の長手方向に枢軸可能、且つ変位可能に取り付けられる少なくとも1つの引き上げレバー(21、22)に連結してなるスライド式ルーフ装置(1)であって、
スライド式ルーフ装置(1)は、引き上げレバー(21、22)を車両の長手方向における変位方向に直接駆動することにより、可動パネル(10)を変位させることができる駆動装置(30)を備えることを特徴とするスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項2】
駆動装置(30)は、引き上げレバー(21、22)に駆動により結合され、可動パネル(10)の変位方向に対して実質的に平行な方向に変位可能に取り付けられた少なくとも1つのスライド部材(31)と、フレキシブル接続部材(51)を介して各スライド部材(31)に接続され、車両の長手方向における変位方向に各スライド部材(31)を同時に駆動することによって各引き上げレバー(21、22)を同時に変位させることができる駆動機構(40)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項3】
駆動装置(30)は、可動パネル(10)に連結される各引き上げレバー(21、22)用のスライド部材(31)を備え、各スライド部材(31)は、専用のフレキシブル接続部材(51、52)を介して駆動機構(40)に接続されることを特徴とする請求項2に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項4】
各スライド部材(31)は、可動パネル(10)の変位方向に対して実質的に平行に延びるガイドレール(33、34)上に変位可能に取り付けられることを特徴とする請求項2または3に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項5】
各引き上げレバー(21、22)は、長手方向に配置され、対応する引き上げレバー(21、22)に割り当てられるスライド部材(31)のガイドレール(33、34)に水平に取り付けられるガイドレール(23、24)に沿って変位可能に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項6】
各スライド部材(31)は、スライド部材(31)に接続されて引き上げレバー(21、22)上に配置されるガイド(25)と協動する結合要素(35)を介して駆動によって、対応する引き上げレバー(21、22)に結合されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項7】
各ガイド(25)は、パネル(10)が閉じているとき、スライド部材(31)の変位方向に対して実質的に平行に延びる第1の実質的に直線部分(27)を備え、結合要素(35)は、可動パネル(10)が閉位置近くにあるとき、第1の部分(27)に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項6に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項8】
各ガイド(25)は、可動パネル(10)が開フェーズの始め又は閉フェーズの終りにあるとき、スライド部材(31)の変位方向に対して斜めに延びる第2の実質的に直線部分(28)を備え、対応する結合要素(35)は、可動パネル(10)が開フェーズの始め又は閉フェーズの終りに位置するとき、第2の部分(28)に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項6または7に記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項9】
各ガイド(25)は、可動パネル(10)が開フェーズの最後の部分又は閉フェーズの
最初の部分にあるとき、スライド部材(31)の変位方向に対して実質的に垂直に延びる第3の実質的に直線部分(29)を備え、対応する結合要素(35)は、可動パネル(10)がそれぞれ開フェーズまたは閉フェーズにあるとき、第3の部分(29)内に固定させることができることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1つに記載のスライド式ルーフ装置(1)。
【請求項10】
前記請求項の1つに記載の少なくとも1つのスライド式ルーフ装置(1)を備えることを特徴とする自動車(200)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−532064(P2012−532064A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518829(P2012−518829)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004182
【国際公開番号】WO2011/003617
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506027147)ヴェバスト ソシエタス エウロペア (7)
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004182
【国際公開番号】WO2011/003617
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(506027147)ヴェバスト ソシエタス エウロペア (7)
【氏名又は名称原語表記】Webasto Societas Europaea
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