説明

特に軸流機械に用いられるディフューザ

【課題】特に工業用タービンに用いられるディフューザを改善して、簡単な形式でガスタービンの総効率のさらなる改善をもたらす。
【解決手段】第1の横断面積を有する環状通路(17)から、該第1の横断面積よりも大きな第2の横断面積を有する流出スペース(21)へと機械軸線(31)に沿って移行する、特に軸流機械、有利には据置型のガスタービン(10)に用いられるディフューザ(20,20a,20b)において、環状通路(17)と流出スペース(21)との間で前記移行が複数の段部(22a−c)により行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流機械の分野に関する。本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式のディフューザ、すなわち第1の横断面積を有する環状通路から、該第1の横断面積よりも大きな第2の横断面積を有する流出スペースへと機械軸線に沿って移行する、特に軸流機械に用いられるディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
据置型のガスタービンの出口に配置され、タービンから到来するガスの流速を低下させ、かつガスタービンの効率を改善するために圧力上昇を生じさせることが望ましいディフューザは、以前から公知先行技術に基づいて知られている(たとえば、欧州特許第0491966号明細書または米国特許出願公開第2011/058939号明細書および当該明細書の図1を参照)。
【0003】
ガスタービンの出口に設けられたディフューザの作用、ひいては機械の総効率を改善するために、過去に種々異なる提案が成された。そこで、特に欧州特許第0265633号明細書において、ディフューザを、半径方向で、流れをガイドするガイド金属薄板を用いて複数のディフューザ部分に分割することが提案されている。
【0004】
既に述べた米国特許出願公開第2011/058939号明細書では、ディフューザ内の流れ状態を改善するために、ディフューザの、先細りした内側部分に制御可能なコアンダ流(コアンダ効果に起因する流れ)が形成される。このコアンダ流により、ディフューザ内の流れに有利に影響が与えられ得る。ディフューザの内側部分、つまりハブは、段部を形成することなく、下流に向かって先鋭に延びている。ガスは外部の供給源からハブ内の環状室へと案内されて、環状室から複数のスリットノズルを介して高温の排ガスの流れ方向で、ハブの表面に対して平行に吹き込まれる。公知のコアンダ効果に基づいて、この付加的なガス流は、高温の排ガスを吸い込み、この高温の排ガスをハブに向かう方向に変向させる。排ガス流は、そこで加速され、下流側に向かって先細りするハブの表面に付着する。ディフューザ内の排ガス流への所望の影響を達成するために、排ガス質量流の4%までが付加ガスに吹き込まれなければならず、このことは、著しい手間に等しい。
【0005】
これに対して欧州特許第0265633号明細書では、ディフューザの出口において、横断面積の急激な移行部が設けられている。このディフューザはカルノー型ディフューザとも呼ばれる。
【0006】
上述の処置により効率のある程度の改善がもたらされるが、ディフューザの領域内において影響を及ぼす可能性は未だ利用し尽くされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0491966号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/058939号明細書
【特許文献3】欧州特許第0265633号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、特に工業用タービンに用いられるディフューザを改善して、簡単な形式でガスタービンの総効率のさらなる改善をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するための本願の請求項1に記載の構成では、第1の横断面積を有する環状通路から、該第1の横断面積よりも大きな第2の横断面積を有する流出スペースへと機械軸線に沿って移行する、特に軸流機械、有利には据置型のガスタービンに用いられるディフューザにおいて、前記移行が、複数の段部で行われるようにした。
【0010】
本発明の有利な態様では、ディフューザの内部の横断面積が2つの段部で拡大している。
【0011】
本発明の有利な態様では、ディフューザは、カルノー型ディフューザとして形成されている。
【0012】
本発明の有利な態様では、ディフューザは、外側周壁と内側周壁とを有していて、外側周壁と内側周壁との間で媒体はディフューザを貫流し、横断面積における段部(横断面積が変化している段部)は、直径段部(直径の変化による段部)により内側周壁に形成されている。
【0013】
本発明の有利な態様では、隣接した2つの段部の間に、凸状に湾曲されて直径が先細りした環状のガイド面が配置されており、2つの段部のうち上流側に位置する段部に、環状ギャップが設けられており、該環状ギャップを通じてガス流が流出し、コアンダ流としてガイド面に沿って流れるようになっている。
【0014】
本発明の有利な態様では、ガイド面が、ディフューザの最後から2つ目の段部と、最後の段部との間に配置されている。
【0015】
本発明の有利な態様では、ディフューザは、据置型のガスタービンの出口に配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特に軸流機械、有利には据置型のガスタービンに用いられるディフューザを起点とする。ディフューザは、第1の横断面積を有する環状通路から、第1の横断面積よりも大きな第2の横断面積を有する流出スペースへと機械軸線に沿って移行する。このディフューザは、上記移行が複数の段部で行われることにより傑出している。
【0017】
本発明の第1の態様は、ディフューザの内側の横断面積が2つの段部で拡大していることを特徴としている。このディフューザは、構造が特に単純である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、ディフューザが、カルノー型ディフューザ(管断面積が急拡大しているディフューザ)として構成されている。
【0019】
本発明の別の態様は、ディフューザが、外側周壁と内側周壁とを有していて、該外側周壁と内側周壁との間で、媒体がディフューザを貫流し、段部が、横断面積において直径段部によって内側周壁に形成されていることにより傑出している。
【0020】
本発明の別の態様は、隣り合う2つの段部の間に、凸状に湾曲されて直径が先細りした環状のガイド面が配置されていて、2つの段部のうち上流側に位置する段部に環状ギャップが設けられていて、該環状ギャップを通じてガス流が流出して、コアンダ流としてガイド面に沿って流れることができることを特徴とする。これによって、ディフューザ内の流れが有利に影響を受ける。
【0021】
有利には、ガイド面が、ディフューザの最後から2つ目の段部と最後の段部との間に配置されている。
【0022】
本発明のさらに別の態様は,ディフューザが工業用ガスタービンの出口に配置されていることを特徴としている。
【0023】
以下に本発明を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自体公知の排ガスディフューザを有するガスタービンの概略的な構造を示す図である。
【図2】従来のカルノー型ディフューザの内側の構造を示す図である。
【図3】図2と比較して、本発明の実施の形態による多段式のディフューザの内側の構造を示す図である。
【図4】本発明の別の実施の形態による2段のディフューザを側面から見た斜視図である。
【図5】本発明の別の実施の形態によるコアンダ制御部を有する2段式のディフューザの内側の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、公知先行技術から知られているような排ガスディフューザを備えたガスタービンの概略的な構造が再現されている。図1に図示されたガスタービン10は、空気流入口11を介して空気を吸い込み、その空気を圧縮する圧縮機12を有している。圧縮された空気は、燃焼器13に供給され、該燃焼器13において燃料14を燃焼するために利用される。発生する高温ガスは、後続のタービン15内において作業出力を取り出しながら膨張され、次いでディフューザ16を貫流する。これによって、ディフューザ16において流速を減じられて、圧力上昇を引き起こすことができる。
【0026】
従来のカルノー型ディフューザ(管断面積が急拡大しているディフューザ:Carnot-Diffusor)の内側の構造が、図2に著しく簡略化して再現されている。機械軸線31に対して同心的に形成されたこのようなディフューザ16は、入り口側に環状通路17を有している。この環状通路17を介して、タービンの排ガス19がディフューザ16に流入する。比較的に小さな横断面積を備えた環状通路17には、流出スペース21が接続している。流出スペース21は、流れのために著しく大きな横断面積を有している。環状通路17と流出スペース21との間の移行は、図2に示した例では、急激な1つの段部22によって行われている。この段部22が、当該ディフューザ16をカルノー型ディフューザとして特徴付けている。環状通路17内には半径方向の支柱18が配置されていてよい。これらの支柱18は、ディフューザ16の内側部分と外側部分とを接続すると同時に、流れを変向するために機能する。
【0027】
これに対して本発明は、図3に図示した実施の形態によれば、ディフューザ20において、環状通路17と流出スペース21との間の移行部を、多段式につまり複数の段部によって形成することを提案する。このためには、図示された実施の形態では2つの段部22aおよび22bが設けられている。(図3では破線で示されている)別の段部22cは任意である。しかし、段部の個数は上限を有していない。段部22a−cに関連した直径の飛躍的な変化(Durchmessersprung)は、図3に示した実施の形態では、ディフューザ20の内側部分に限定されている。しかし、同様に直径の飛躍的な変化をディフューザの外側部分において設けることも十分に考えられる。
【0028】
複数回段付けされたこのような内側輪郭により、タービン効率の0.1%である、本出願人のGT26型のガスタービンでは約50万ワットの出力利得を意味する圧力上昇利得が生じる。
【0029】
実際には、相応するディフューザはたとえば図4に再現されているような構成である。図4に示したディフューザ20aは環状の外側周壁23を有していて、該外側周壁23は、同心的に内側周壁24を取り囲んで、この内側周壁24と一緒に流路を形成している。内側周壁24と外側周壁23とは、半径方向の支柱25によって接続されている。ディフューザ20aの出口には、軸方向で相前後して、直径において段付けされた2つの環状部26および27が配置されている。これらの環状部26,27によって、ディフューザ20aの複数回段付けされた拡大部が形成される。
【0030】
流れ横断面の多段式の拡大部に対して付加的に、基本的には冒頭で挙げた刊行物、米国特許出願公開第2011/058939号明細書において提案されているように、ディフューザ内においてコアンダ流によって流れ特性に影響が与えられ得る。このためには、図5に示されているように、ディフューザ20bにおいて、2つの段部22aおよび22bの間に、凸状に湾曲されて直径が先細りした環状のガイド面28が配置されている。両段部22aおよび22bのうち上流側に位置する段部に、環状ギャップ29が設けられており、この環状ギャップ29を通じてガス流が流出スペース21に流出し、コアンダ流30としてガイド面28に沿って流れることができる。この場合、コアンダ流30のためのガス供給は、種々異なる形式で行うことができる。しかし上述の刊行物が教示しているのとは異なり、本発明によれば、能動的に吹き込まれる付加的なガスのための外部の供給源が省略されることが望ましい。構成部材の適切な配置により、ディフューザの急激な横断面拡大部の領域に占める圧力状態が利用されることが望ましく、この場合、運転の間に自動的に、湾曲されたガイド面28に沿った壁流30が形成され、この壁流30が平行な排ガス流19を変向するようになる。環状部27の背後(下流側)の静圧pは、横断面拡大による流れ遅延の結果として、環状ギャップにおける流入圧pよりも高くなる。相応して、より高い圧力領域からより低い圧力領域への流れ32が形成される。ディフューザ内に2つよりも多くの段部が設けられている場合、コアンダ流が最後から2つ目の段部と最後の段部との間において使用されると有利である。
【符号の説明】
【0031】
10 ガスタービン
11 空気流入部
12 圧縮機
13 燃焼器
14 燃料
15 タービン
16,20 ディフューザ
17 環状通路
18,25 支柱
19 排ガス
20a,b ディフューザ
21 流出スペース
22a−c 段部(横断面積)
23 外側周壁
24 内側周壁
26,27 環状部
28 ガイド面(凸状に湾曲)
29 環状ギャップ
30 コアンダ流
31 機械軸線
32 戻り流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の横断面積を有する環状通路(17)から、該第1の横断面積よりも大きな第2の横断面積を有する流出スペース(21)へと機械軸線(31)に沿って移行する、特に軸流機械、有利には据置型のガスタービン(10)に用いられるディフューザ(20,20a,20b)であって、
前記移行が、複数の段部(22a−c)で行われることを特徴とするディフューザ。
【請求項2】
前記ディフューザ(20,20a,20b)の内部の横断面積は、2つの段部(22a,22b)で拡大している、請求項1記載のディフューザ。
【請求項3】
前記ディフューザ(20,20a,20b)は、カルノー型ディフューザとして形成されている、請求項1または2記載のディフューザ。
【請求項4】
前記ディフューザ(20a)は、外側周壁(23)と内側周壁(24)とを有していて、該外側周壁(23)と内側周壁(24)との間で、媒体がディフューザ(20a)を貫流し、横断面積における段部(22a−c)は、直径段部によって前記内側周壁(24)に形成される、請求項1から3までのいずれか1項記載のディフューザ。
【請求項5】
隣り合う2つの段部(22a,22b)の間に、凸状に湾曲されて直径が先細りした環状のガイド面(28)が配置されており、前記2つの段部(22a,22b)のうちの上流側に位置する段部に、環状ギャップ(29)が設けられており、該環状ギャップ(29)を通じてガス流が流出し、コアンダ流(30)として前記ガイド面(28)に沿って流れるようになっている、請求項1から4までのいずれか1項記載のディフューザ。
【請求項6】
前記ガイド面(28)が、前記ディフューザ(20b)の最後から2つ目の段部と、最後の段部との間に配置されている、請求項5記載のディフューザ。
【請求項7】
前記ディフューザ(20,20a,20b)は、据置型のガスタービン(10)の出口に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のディフューザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108498(P2013−108498A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−252515(P2012−252515)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland