説明

特定のグラフトゴムを有するポリカーボネート成型用組成物

【課題】 本発明は、高い機械強度(特に衝撃強度と破断時の伸び)および高い加工性能(流動特性)を特徴とするポリカーボネート組成物、ハウジング部品、建築および構造分野における被覆パネルそして自動車分野における部品としての成形品、シートまたはフィルムの製造のための前記組成物の使用、および成形品、シートまたはフィルムそのもの
【解決手段】 本発明は、熱可塑性ポリカーボネート/グラフトポリマー成形用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い機械特性(特に衝撃強度や破断時の伸び)および高い加工性能(流動特性)を有する熱可塑性ポリカーボネート/グラフトポリマー成形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定のグラフトゴムは、一般に周知である(特許文献1および特許文献2)。これは、良好な靭性、加工性および表面品質(グロス、色の印象)を特徴とする。グラフトゴムは、芳香族ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂に使用でき、また成形用組成物中でのグラフトポリマーの割合は、10重量%〜80重量%、特に20重量%〜75重量%であると記載されている。しかし、前記公報には、成形用組成物が有する有利な特性については何ら記載されていない。特許文献1は、この出願に記載の本発明の組成物を開示していない。
【0003】
特許文献3には、ABS部分が種々の粒子寸法のグラフトポリマーの混合物を含有しかつ高い加工性能を特徴とするポリカーボネート-ABS混合物が開示されている。しかし、この成形用組成物を用いて達成され得る機械特性、特にノッチ付き衝撃強度と破断時の伸びの組み合わせは多くの用途には十分ではない。
【0004】
耐燃性ポリカーボネート-ABS成形用組成物は、また、機械特性の点で益々厳しい要求を満足するように求められている。
【0005】
ポリカーボネート成形用組成物のための難燃剤としてのオリゴホスフェートなどの有機ホスフェートの使用は、周知であり、例えば、特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載されている。オリゴホスフェートを難燃剤として用いることの問題点は、常に、機械特性に関する劣化である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第A-745624号明細書
【特許文献2】米国特許第A-5741853号明細書
【特許文献3】欧州特許第A-19639821号明細書
【特許文献4】欧州特許第A-0363608号明細書
【特許文献5】欧州特許第A-0771851号明細書
【特許文献6】欧州特許第A-0755977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、高い機械特性(特に衝撃強度や破断時の伸び)および高い加工性能を有するポリカーボネート/グラフトポリマー(特にABS系の)成形用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特別な二峰性の粒径分布とポリカーボネート中のゴム主鎖における特別なゲル含量とを有する特定のグラフトゴム系の使用は、所望の範囲の特性を有する成形用組成物をもたらすことが分かった。
【0009】
本発明は、
A)芳香族ポリカーボネート5〜95重量部、好ましくは10〜90重量部、特に好ましくは20〜80重量部、
B)スチレンとアクリロニトリルの重量比90:10〜50:50を、ビニルモノマー0重量%〜50重量部を共重合形態で更に含有する少なくとも2種のゴムラテックス(A)および(B)の存在下でエマルション重合することにより生成される少なくとも1種のグラフトゴムであって、スチレンおよび/またはアクリロニトリルは、α-メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN-フェニルマレイミドで完全にまたは部分的に置き換えてよく、使用されるモノマーと使用されるゴムラテックスとの重量比が25:75〜70:30であり、ゴムラテックス(B1)が、粒径d50350nm以下、好ましくは260nm〜310nm、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲30nm〜100nm、好ましくは40nm〜80nm、およびゲル含量70重量%以下、好ましくは40重量%〜65重量%を有し、そしてゴムラテックス(B2)が、粒径d50350nm以上、好ましくは380nm〜450nm、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲50nm〜500nm、好ましくは100nm〜400nm、およびゲル含量70重量%以上、好ましくは75重量%〜90重量%を有し、そして平均粒径の差が50nm以上、好ましくは80nm以上、特に好ましくは100nm以上であることを特徴とするもの1〜50重量部、好ましくは2〜40重量部、および特に好ましくは3〜30重量部、
C)スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、N-置換マレイミドまたはこれらの混合物を含有する少なくとも1種の熱可塑性ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマー0〜50重量部、好ましくは0〜40重量部、および特に好ましくは0〜30重量部、および
D)任意に、少なくとも1種の難燃剤および場合により、潤滑剤、離型剤またはこれらの混合物などの通常使用される添加物(前記成分A、B、CおよびDの和100重量部につき)0.5〜25重量部、好ましくは2〜20重量部、および特に好ましくは3〜15重量部
を含有する組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
成分A
本発明の好適な成分Aに係る熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、下記の式(I)で表されるジフェノールまたは下記の式(II)で表されるアルキル置換ジヒドロキシフェニルシクロアルカンをベースとするものである。
【化1】

(前記式中、Aは、単結合、C〜C-アルキレン、C〜C-アルキリデン、C〜C-シクロアルキリデン、-S-または-SO-であり、Bは、塩素または臭素であり、qは、0、1または2であり、およびpは、1または0である。)
【化2】

(前記式中、RおよびRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、C〜C-アルキル、C〜C-シクロアルキル、C〜C10-アリール、好ましくはフェニル、およびC〜C12-アラルキル、好ましくはフェニル-C〜C-アルキル、特にベンジルを表し、mは、4、5、6または7、好ましくは4または5を表し、各Zについて別個に選択され得るR10およびR11は、互いに独立して水素またはC〜C-アルキルを表し、およびZは、少なくとも1個のZ原子において、R10およびR11が同時にアルキルをあらわすのであれば、炭素を表す。)
【0011】
前記式(I)で表される好適なジフェノールの例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンが挙げられる。
【0012】
前記式(I)で表される好ましいジフェノールは、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンおよび1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサンである。
【0013】
式(II)で表される好ましいジフェノールは、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよび1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2,4,4-トリメチルシクロペンタンである。
【0014】
本発明の好適なポリカーボネートは、ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方である。
【0015】
成分Aは、前記熱可塑性ポリカーボネートの混合物であってもよい。
【0016】
ポリカーボネートは、ジフェノールとホスゲンから相境界法により、またはホスゲンとの、ピリジン法として知られる均質な相中での方法により公知の方法で調製されてよい。ここで、ポリカーボネートの分子量は、公知の方法で、適当量の公知の連鎖停止剤により調節されてよい。
【0017】
好適な連鎖停止剤の例としては、フェノール、p-クロロフェノール、p-tert-ブチルフェノールまたは2,4,6-トリブロモフェノール、そして更に、独国特許出願公開第OS-2842005号明細書(LeA19006)に記載の4-(1,3-テトラメチルブチル)-フェノールなどの長鎖アルキルフェノール、または独国特許出願第P3506472.2号(LeA23654)に記載のアルキル置換基中の合計炭素数が8〜20のモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、p-イソオクチルフェノール)、p-tert-オクチルフェノール、p-ドデシルフェノール、2-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4-(3,5-ジメチルヘプチル)-フェノールが挙げられる。
【0018】
連鎖停止剤の量は、いずれの場合も、使用される式(I)および/または(II)で表されるジフェノールの合計を基準として、一般には0.5モル%〜10モル%である。
【0019】
本発明の好適なポリカーボネートAは、平均分子量(
【数1】

、例えば、超遠心分離または光散乱法により測定される重量平均分子量)10,000〜200,000、好ましくは20,000〜80,000を有する。
【0020】
本発明の好適なポリカーボネートAは、公知の方法で、好ましくは3官能以上の化合物(例えば、フェノール性基を3個以上有するもの)を、用いられるジフェノールの合計に対して0.05モル%〜2モル%組み込むことにより枝分かれされていてよい。
【0021】
ビスフェノールA-ホモポリカーボネート以外の好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、ジフェノールの合計モル数に対して15モル%までの2,2-ビス-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンとのコポリカーボネート、およびビスフェノールAと、ジフェノールの合計モル数に対して60モル%までの1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンとのコポリカーボネートである。
【0022】
好ましいポリカーボネートは、ポリシロキサン構造を有するコポリカーボネートであってもよい。
【0023】
成分B
グラフト重合において、少なくとも2種のゴムラテックスの混合物であって、このうち1種が前記B1およびB2であるものを使用する。B1:B2の重量比は、ラテックスの固形分(solids proportion)を基準として、好ましくは90:10〜10:90、特に好ましくは60:40〜30:70である。
【0024】
好適なゴムラテックスの例としては、ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわちエチレン/プロピレンおよび任意にジエンをベースとするもの)、およびアクリレートゴムが挙げられ、かつ好ましく選択される。これらゴムラテックスのガラス転移温度は一般に、10℃以下、好ましくは0℃以下、特に−10℃以下である。ジエンゴムが好ましい。特に好ましいジエンゴムは、ブタジエンをベースとするものであって、イソプレン、クロロプレン、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、C〜C-アルキルスチレン、C〜C-アルキルアクリレート、C〜C-アルキルメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート、アルキレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、またはこれらの混合物から成る群より選択される他のモノマーをコモノマーとして(ゴムラテックスを調製するのに使用されるモノマーの合計重量に対して)50重量%まで、好ましくは30重量%まで含有し得る。好ましいコモノマーは、スチレン、アクリロニトリルまたはメチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物である。ポリブタジエンが特に好ましい。ゴムラテックスB1およびB2は、前記モノマーのエマルション重合により調製されてよい。この重合反応は、周知であり、例えば、ホウベン-ヴェイル(Houben-Weyl)著、メトーデン・デル・オルガニッシェン・ヘミー(Methoden der Organischen Chemie)、マクロモレクラレ・シュトッフェ(Makromolekulare Stoffe)、パート1、第674頁(1961年)、ティエメ・フェルラーク・シュトゥットガルト(Thieme Verlag Stuttgart)に記載されている。微粒子ゴムラテックスを公知の方法で調製し、その後、これを公知の方法で凝集して所望の粒径を得ることも可能である。
【0025】
関連する方法は開示されている(欧州特許第A-0029613号明細書;同第A-0007810号明細書;独国特許発明第A-144415号明細書、同第A-1233131号明細書;同第A-1258076号明細書;同第A-2101650号明細書;米国特許第A-1379391号明細書参照)。
【0026】
微粒子ブタジエンポリマーを先ず調製し、次いでそれをブタジエンを含有するモノマーと更に重合してもっと大きな粒子にする、いわゆる播種重合を行うことも可能である。
【0027】
グラフト重合は、モノマーをブタジエンポリマーラテックスB1とB2の混合物に、モノマー55重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜80重量%、特に好ましくは65重量%〜75重量%をモノマー供給時間の最初の半分の時間で添加するように供給することにより好ましく行われる。
【0028】
一般には、ブタジエンポリマーラテックスB1およびB2は、微粒子ブタジエンポリマーを水性媒体中に乳化することによって調製されてもよい(特開昭55-125102号公報)。
【0029】
ブタジエンポリマーラテックスB1は、平均粒径d50が350nm以下、好ましくは260nm〜310nm、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲が30nm〜100nm、好ましくは40nm〜80nm、そしてゲル含量が70重量%以下、好ましくは40重量%〜65重量%である。
【0030】
ゴムラテックスB2は、粒径d50が350nm以上、好ましくは380nm〜450nm、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲が50nm〜500nm、好ましくは100nm〜400nm、そしてゲル含量が70重量%以上、好ましくは75重量%〜90重量%である。
【0031】
本発明のゴムラテックスは、平均粒径の差が50nm以上、好ましくは80nm以上、特に好ましくは100nm以上であることを特徴とする。より好ましくは、ゴムラテックスは、平均粒径の差80nm〜350nm、好ましくは100nm〜250nmを有する。
【0032】
平均粒径d50およびd90とd10の値の決定は、超遠心分離測定により行われ(ダブリュー・ショルタン(W. Scholtan)、エイチ・ランゲ(H. Lange)著、コロイド・ツァイシュリフト・ウント・ツァイシュリフト・フューア・ポリメレ(Kolloid, Z. und Z. Polymere)、250、782〜796頁(1972年)参照)、ゲル含量に関する前記の値は、トルエン中でのワイヤーケージ法(wire cage method)による決定に関する(ホウベン-ヴェイル著、メトーデン・デル・オルガニッシェン・ヘミー、マクロモレクラレ・シュトッフェ、パート1、第307頁(1961年)、ティエメ・フェルラーク、シュトゥットガルト参照)。
【0033】
ゴムラテックスB1およびB2のゲル含量は、公知の方法で、一般には好適な反応条件を用いて調節されてよい(例えば、高い反応温度および/または高い転化率までの重合、そして高いゲル含量を得るための架橋効果を有する物質の任意の添加、あるいは低い反応温度および/または過剰な架橋が生じる前の重合反応の停止、そして低いゲル含量を得るためのn-ドデシルメルカプタンまたはt-ドデシルメルカプタンなどの分子量制御剤の任意の添加、など)。使用される乳化剤は、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネート、飽和または不飽和脂肪酸やアルカリ不均化または水素化アビエチン酸もしくはトール油酸の石鹸などの通常のアニオン性乳化剤を包含する。カルボキシル基を含む乳化剤(例えば、C10〜C18-脂肪酸の塩、不均化アビエチン酸など)が好ましく使用される。
【0034】
グラフト重合は、モノマー混合物が連続してゴムラテックスB1とB2の混合物に添加されて重合されるように行われてよい。
【0035】
特定のモノマーとゴムの比、およびモノマーをゴムラテックスに添加するための細かな手順を説明する。
【0036】
本発明の生成物を製造するために、好ましくは、スチレンとアクリロニトリルの混合物であって、場合により1種以上のコモノマーを(グラフト重合に使用されるモノマーの合計量を基準として)50重量%まで含有し得るもの25〜70重量部、特に好ましくは30〜60重量部を、B1とB2のブタジエンポリマーラテックス混合物(固形分に対して)好ましくは30〜75重量部、特に好ましくは40〜70重量部の存在下で重合する。
【0037】
グラフト重合で使用されるモノマーは、好ましくは、スチレンとアクリロニトリルの重量比90:10〜50:50、特に好ましくは重量比65:35〜80:20の混合物である。ここで、スチレンおよび/またはアクリロニトリルは、共重合性モノマー、好ましくはα-メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN-フェニルマレイミドで完全にまたは部分的に置き換えられてよい。
【0038】
加えて、分子量制御剤をグラフト重合に、好ましくは(グラフト重合工程におけるモノマー全重量を基準として)0.05重量%〜2重量%の量、特に好ましくは0.1重量%〜1重量%の量で使用してもよい。好適な分子量制御剤の例としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレン二量体、テルピノールが挙げられる。
【0039】
好適な開始剤は、無機および有機過酸化物(例えば、過酸化水素、ジ-tert-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジシクロヘキシルペルカーボネート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド(p-menthane hydroperoxide))、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤、過硫酸アンモニウム、ナトリウムまたはカリウムや過ホウ酸ナトリウムなどの無機過酸塩、および酸化剤(通常は有機酸化剤)と還元剤を含有するレドックス系が挙げられる。重金属イオンが反応媒体中に含まれていてよい(ホウベン-ヴェイル中、エイチ・ロゲーマン著、メトーデン・デル・オルガニッシェン・ヘミー、第14/1巻、第263〜297頁)。
【0040】
反応温度は、25℃〜160℃、好ましくは40℃〜90℃である。前記化合物は乳化剤として使用してよい。
【0041】
本発明の生成物を製造するために、グラフト重合で使用されるモノマー合計の、好ましくは60重量%〜80重量%、特に好ましくは65重量%〜75重量%が合計モノマー添加時間の最初の半分の時間で添加されるようにモノマーを添加してグラフト重合を行う。残りのモノマーは、合計モノマー添加時間の次の半分の時間で添加される。
【0042】
最後に、生成されたグラフトポリマーを、少なくとも1種の熱可塑性樹脂(成分C)と混合する。これは、種々の方法で行うことができる。熱可塑性樹脂自体がエマルション重合で製造されたのであれば、ラテックスは、混合して、沈降させて、合わせて精製する。熱可塑性樹脂が溶液重合または塊重合で製造されたのであれば、グラフトポリマーは、噴霧乾燥か、または塩および/または酸を添加して、沈殿生成物を洗浄して粉末を乾燥させた後、(好ましくは多重ロールミル、コンパウンド化押出機または均質混合機において)好ましくは顆粒形態で存在する熱可塑性樹脂と混合するなどの公知の方法で単離しなければならない。この方法が好ましく使用される。
【0043】
成分C
成分Cは、1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーを包含する。
【0044】
好適なビニル(コ)ポリマーCは、ビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸-(C〜C)-アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(無水物およびイミドなど)から成る群より選択される少なくとも1種のモノマーのポリマーである。特に好適な(コ)ポリマーは、
C.1 ビニル芳香族および/または核置換されたビニル芳香族(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン)および/または(メタ)アクリル酸-(C〜C)-アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と、
C.2 アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのビニルシアニド(不飽和ニトリル)、および/または(メタ)アクリル酸-(C〜C)-アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレートなど)および/または不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸など)および/または不飽和カルボン酸の(無水物およびイミドなどの)誘導体(例えば、無水マレイン酸およびN-フェニルマレイミドなど)1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部
の(コ)ポリマーである。
【0045】
(コ)ポリマーCは、樹脂状で、熱可塑性であるが、ゴムを含まない。
【0046】
C.1スチレンとC.2アクリロニトリルの(コ)ポリマーが特に好ましい。
【0047】
好ましいビニル樹脂は、スチレンとアクリロニトリルの重量比90:10〜50:50のコポリマーである。ここで、スチレンおよび/またはアクリロニトリルは、α-メチルスチレンおよび/またはメチルメタクリレートで完全にまたは部分的に置き換えられてよい。
【0048】
成分Cの(コ)ポリマーは、周知であり、フリーラジカル重合により、特にエマルション重合、懸濁重合、溶液重合または塊重合により調製されてよい(独国特許出願公開第AS-2420385号明細書、独国特許発明第A-2724360号明細書参照)。(コ)ポリマーは、好ましくは分子量
【数2】

(光散乱法または沈降法により測定される重量平均分子量)15,000〜200,000を有する。
【0049】
成分D
本発明で使用される好適な成分Dは、難燃剤および場合により、潤滑剤、静電気防止剤、離型剤またはこれらの混合物などの通常使用される添加物である。
【0050】
難燃剤の例は、ハロゲン含有化合物およびハロゲンを含まない化合物の両方である。
【0051】
好適なハロゲン化合物は、有機塩素および/または臭素化合物である。
【0052】
ハロゲン含有難燃剤の例としては、以下のものが挙げられる。
1.オクタクロロジフェニル、デカクロロジフェニル、オクタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルなどの塩素化および臭素化ジフェニル。
2.オクタ-およびデカ-クロロジフェニルエーテルや、オクタ-およびデカ-ブロモジフェニルエーテルなどの塩素化臭素化ジフェニルエーテル。
3.塩素化および臭素化フタル酸無水物、およびフタルイミドおよびビスフタルイミドなどのそれらの誘導体(例えば、テトラクロロ-およびテトラブロモ-フタル酸無水物、テトラクロロ-およびテトラブロモ-フタルイミド、N,N'-エチレン-ビス-テトラクロロ-およびN,N'-エチレン-ビス-テトラブロモ-フタルイミド、N-メチルテトラクロロ-およびN-メチルテトラブロモ-フタルイミド)。
4.2,2-ビス-(3,5-ジ-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンおよび2,2-ビス-(3,5-ジ-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンなどの塩素化および臭素化ビスフェノール。
5.平均重縮合度が2〜20の2,2-ビス-(3,5-ジ-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンオリゴカーボネートおよび2,2-ビス-(3,5-ジ-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンオリゴカーボネート。
【0053】
臭素化合物は、塩素化合物よりも好ましい。ハロゲンを含まない難燃剤が好ましい。
【0054】
好適な難燃剤は、好ましくは、この目的のために使用される全てのリン化合物であり、特にホスフィンオキサイド、リンの酸の誘導体、そしてリンの酸の塩およびリンの酸誘導体である。
【0055】
リンの酸の誘導体(例えば、エステル)およびリンの酸の塩は好ましく、リンの酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、亜リン酸、およびこれらの脱水素化物が包含され、塩は、好ましくは前記酸のアルカリ、アルカリ土類、およびアンモニウム塩であり、リンの酸の誘導体(例えば、部分エステル化された酸)も包含される。
【0056】
特に好ましいリン化合物は、下記式(III)で表されるものである。
【化3】

(式中、R12、R13およびR14は、互いに独立して、任意にハロゲン化されたC〜C-アルキル、任意にハロゲン化および/またはアルキル化されたCまたはC-シクロアルキル、または任意にハロゲン化および/またはアルキル化および/またはアラルキル化されたC〜C30-アリールを表し、そしてnおよびmは、互いに独立して、0または1である。)
【0057】
前記リン化合物は、一般に公知である(例えば、ウルマン(Ulmann)著、エンジクロペディ・デル・テクニッシェン・ヘミー(Enzyklopadie der Technischen Chemie)、第18巻、第301頁以降、1979年参照)。アラルキル化されたリン化合物は、例えば、独国特許出願公開第OS-38243560号明細書に記載されている。
【0058】
前記式(III)および後述の(IV)で表される任意にハロゲン化されたC〜C-アルキル基は、モノ-またはポリ-ハロゲン化されて、直鎖であっても、枝分かれされていてもよい。アルキル基の例は、クロロエチル、2-クロロプロピル、2,3-ジブロモプロピル、ブチル、メチルまたはオクチルである。
【0059】
前記式(III)および/または後述の(IV)で表される化合物に係る任意にハロゲン化されたおよび/またはアルキル化されたC-またはC-シクロアルキルは、任意にモノ-またはポリ-ハロゲン化および/またはアルキル化されたC-またはC-シクロアルキル、すなわち、シクロペンチル、シクロヘキシル、3,3,3-トリメチルシクロヘキシルおよび完全に塩素化されたシクロヘキシルである。
【0060】
前記式(III)で表される化合物に係る任意にハロゲン化および/またはアルキル化および/またはアラルキル化されたC〜C30-アリール基は、場合により、単核または多核の、モノ-またはポリ-ハロゲン化および/またはアルキル化および/またはアラルキル化されており、例えば、クロロフェニル、ブロモフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタブロモフェニル、フェニル、クレジル、イソプロピルフェニル、ベンジル置換フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0061】
本発明によれば、前記式(III)で表される好適なリン化合物は、トリブチルホスフェート、トリス-(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス-(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルクレジルホスフェート、トリ-(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス-(p-ベンジルフェニル)ホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジメチルエステル、メタンホスホン酸ジフェニルエステルおよびフェニルホスホン酸ジエチルエステルを包含する。
【0062】
さらに、好適な難燃剤は、下記の式(IV)で表されるリン化合物オリゴマーである。
【化4】

(式中、R15、R16、R17およびR18は、互いに独立して、C〜C-アルキル、好ましくはメチル、C〜C-シクロアルキル、C〜C10-アリール、好ましくはフェニル、C〜C12-アラルキル、好ましくはフェニル-C〜C-アルキルを表し、nは、互いに独立して、0または1を表し、Nは、1〜5までの数を表し、そしてXは、炭素数が6〜30の単核または多核の芳香族基、好ましくは前記式(I)で表されるジフェノールから、特にビスフェノールA、ヒドロキノンまたはレゾルシノールから誘導されるものを表す。)
【0063】
式(IV)で表される数種のホスフェートの混合物では、Nは、1〜5までの平均値を表す。
【0064】
式(IV)で表されるリン化合物の分子量は、一般に2000g/モル未満、好ましくは1000g/モル未満である。これは、例えば、欧州特許第A-0363608号明細書に記載されている。
【0065】
好ましい難燃剤は、式(III)で表されるリン化合物と式(IV)で表されるリン化合物との混合物でもある。
【0066】
本発明の組成物は、難燃剤としてのリン化合物を、(全組成物100重量部を基準として)0.5〜25重量部、好ましくは2〜20重量部、特に3〜15重量部含有する。
【0067】
潤滑剤の例は、炭化水素(例えば、パラフィンオイル、ポリエチレンワックス)、アルコール(例えば、ステアリルアルコール)、カルボン酸(例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)、カルボン酸アミド(ステアリン酸アミド、エチレンジアミンビス-ステアリルアミド)、カルボン酸エステル(例えば、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸ステアリル、モノステアリン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール)であり、好ましい潤滑剤は、カルボン酸アミドおよびカルボン酸エステルである。
【0068】
静電気防止剤の例は、カチオン性化合物(例えば、4級アンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウム塩)、アニオン性化合物(例えば、アルカリまたはアルカリ土類金属塩の形態のアルキルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルホスフェートまたはカルボキシレート)、および非イオン性化合物(例えば、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アミン)であるが、好ましい静電気防止剤は、非イオン性化合物である。
【0069】
離型剤の例は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールであるが、好ましい離型剤は、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールである。
【0070】
難燃性に関する特定の要件の場合には、ポリカーボネート/グラフトポリマー成形用組成物は、フッ素化ポリオレフィンを含有していてよい。これは、高分子量の化合物であり、しかもガラス転移温度が−30℃を超え、通常100℃を超え、フッ素含量が好ましくは65重量%〜76重量%、好ましくは70重量%〜76重量%であり、そして平均粒径d50が0.05μm〜1000μm、好ましくは0.08μm〜20μmである。フッ素化ポリオレフィンは、一般に、密度1.2g/m〜2.3g/mを有する。好ましいフッ素化ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロ-プロピレンコポリマーおよびエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーである。フッ素化ポリオレフィンは、周知である(シルトクネヒト(Shildknecht)著「ビニル・アンド・リレイテッド・ポリマー(Vinyl and Relate Polymer)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons, Inc.)、ニューヨーク、1962年、第484〜494頁;ウォール(Wall)著「フルオロポリマーズ(Fluoropolymers)」、ワイリー-インターサイエンス(Wiley-Interscience)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド、ニューヨーク、第13巻、1970年、第623〜654頁;「モダーン・プラスティックス・エンサイクロペディア(Modern Plastics Encyclopedia)」、1970−1971、第47巻、第10A号、1970年10月、マグロー-ヒル・インコーポレイテッド(McGrow-Hill Inc.)、ニューヨーク、第134および774頁;「モダーン・プラスティックス・エンサイクロペディア」、1975−1976、1975年10月、第52巻、第10A号、マグロー-ヒル・インコーポレイテッド、ニューヨーク、第27、28および472頁、および米国特許第PS-3671487号公報、同第3723373号公報および同第3838092号公報参照)。
【0071】
本発明の組成物は、フッ素化ポリオレフィンを(全組成物100重量部を基準として)0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.6重量部含有する。
【0072】
特に好ましい組成物は、
A)少なくとも1種の芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート60〜98重量部、好ましくは70〜95重量部、特に好ましくは75〜90重量部、
B)成分Bに係る少なくとも1種のグラフトゴム0.5〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、特に2〜20重量部、
C)ビニル(コ)ポリマー0〜40重量部、好ましくは0〜30重量部、特に0〜20重量部、
D)前記式(III)または(IV)で表される化合物またはこれらの混合物から選択される少なくとも1種のリン化合物0.5〜25重量部、好ましくは2〜20重量部、特に3〜15重量部、
E)フッ素化ポリオレフィン0.01〜1.5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、特に0.1〜0.8重量部
を含有する。ただし、前記成分の重量部の和は100である。
【0073】
前記添加物に加えて、本発明の成形用組成物は、安定化剤、顔料、フィラーおよび強化剤を含有していてもよい。好ましいフィラーは、ガラスビーズ、マイカ、シリケート、石英、タルク、二酸化チタンまたは珪灰石である。好ましい強化剤は、ガラス繊維または炭素繊維である。
【0074】
前記成分A〜Dおよび任意に他の公知の添加物(例えば、安定化剤、染料、顔料、フィラー、強化剤および/または核形成剤)を含有する本発明の成形用組成物は、関連成分を公知の方法で混合して、均質混合機、押出機および二軸スクリューなどの汎用の装置において200℃〜330℃の温度で溶融コンパウンド化または溶融押出しすることにより調製される。
【0075】
従って、本発明は、前記成分A〜Dおよび任意に安定化剤、染料、顔料、フィラー、強化剤および/または核形成剤を含有する熱可塑性成形用組成物の製造方法であって、前記成分A〜Dおよび任意に安定化剤、染料、顔料、流動制御剤、フィラー、強化剤および/または核形成剤を、混合した後、汎用の装置において、200℃〜330℃の温度で溶融コンパウンド化または溶融押出しすることを特徴とする熱可塑性成形用組成物の製造方法も提供する。
【0076】
個々の成分は、公知の方法で連続的そして同時に、約20℃(室温)そして高温で混合され得る。
【0077】
本発明の成形用組成物は、あらゆる種類の成形部品の製造のために使用されてよい。特に、成形部品は、射出成形により製造されてよい。製造され得る成形部品の例は、あらゆる種類のハウジング部品であって、例えば、ジューサー、コーヒーメーカー、ミキサーなどの家庭内器具用、事務用機器用のもの、または住宅分野における被覆プレート、および自動車分野における部品である。これは、非常に良好な電気特性を有することから、電気工学分野でも使用される。
【0078】
本発明の成形用組成物は、使用するプラスチック材料が、ノッチ付き衝撃強度、破断時の伸びおよび応力クラッキング耐性の点で特に厳しい要件を満たさなければならない、薄い壁の成形品(例えば、データ処理用のハウジング部品)の製造に特に好適である。
【0079】
別の加工形態は、予め製造されたシートまたはフィルムからのブロー成形法または熱成形法による成形部品の製造である。
【実施例】
【0080】
実施例
用いる成分
A1:塩化メチレン中、0.5g/100mLの濃度で25℃において測定される相対溶液粘度1.28を有するビスフェノールAをベースとするポリカーボネート。
【0081】
A2:塩化メチレン中、0.5g/100mLの濃度で25℃において測定される相対溶液粘度1.20を有するビスフェノールAをベースとするポリカーボネート。
【0082】
B0:平均粒径(d50)約280nmのポリブタジエンラテックス60重量部(固形分換算)の存在下、フェノール性酸化防止剤を約1.0重量部加えた、スチレンとアクリロニトリル(重量比73:27)から成るモノマー混合物40重量部をエマルション重合し、硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて凝集させ、ポリマー粉末を乾燥させることにより生成したグラフトポリマー。
【0083】
B1:d50値が277nmで、d90からd10を減じた値が44nmで、しかもゲル含量が58重量%のフリーラジカル重合により調製されたアニオン性乳化ポリブタジエンラテックス(ラテックスB1)29重量部(固形分換算)と、d50値が415nmで、d90からd10を減じた値が144nmで、しかもゲル含量が83重量%のフリーラジカル重合により調製されたアニオン性乳化ポリブタジエンラテックス(ラテックスB2)29重量部(固形分換算)を水で固形分約20重量%とし、その後、この混合物を70℃に加熱する。
次いで、tert-ブチルヒドロペルオキシド0.26重量部とアスコルビン酸ナトリウム0.22重量部、およびモノマー混合物(スチレン:アクリロニトリルの比73:27のもの)42重量部を、6時間で同時に計量して供給し、その後2時間で温度を82℃まで上げる。これと同時に、樹脂酸混合物のナトリウム塩(ドレッシネート(Dresinate)731、アビータ・ヘミー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング(Abieta Chemie GmbH)、ゲルシュトーフェン(Gersthofen))1.72重量部(固形分換算)を計量して供給する。
4時間の後反応後、フェノール酸化防止剤約1.0重量部を添加した後、グラフトラテックスを硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて凝集し、得られた粉末を水で洗浄した後、減圧下、70℃で乾燥させる。
【0084】
C:スチレンとアクリロニトリルのモル比72:28で、重量粘度(ジメチルホルムアミド中、20℃で測定)が0.55dl/gであるスチレン/アクリロニトリル(コ)ポリマー混合物。
【0085】
D1:難燃剤:アクゾ・ノーベル・ケミカルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(AKZO Nobel Chemicals GmbH、デューレン、ドイツ)製レゾルシノール-オリゴホスフェート、フィロールフレックス(Fyrolflex)(登録商標)RDP。
【0086】
D2:難燃剤:バイエル・アクチエンゲゼルシャフト (Bayer AG、レーフェルクーゼン、ドイツ)製トリフェニルホスフェート、ジスフラモール(Disflamol)(登録商標)TP。
【0087】
E:フッ素化ポリオレフィン:テトラフルオロエチレンポリマーを、成分B1に係るグラフトポリマーの水中エマルションと、テトラフルオロエチレンポリマーの水中エマルションの凝集混合物として用いる。この混合物中のグラフトポリマーB1とテトラフルオロエチレンポリマーとの重量比は、90重量%と10重量%である。テトラフルオロエチレンポリマーエマルションの固形分は60重量%であり、粒径は50nm〜500nmである。グラフトポリマーエマルションの固形分は34重量%である。
【0088】
離型剤:テトラステアリン酸ペンタエリスリトール。
【0089】
前述の成分を、表1に示す量で、均質混合機において約200℃〜220℃で均質に混合した後、顆粒状に転化する。
【0090】
【表1】

【0091】
VicatB軟化点の決定は、DIN53460(ISO306)に準拠し、寸法80×10×4mmのロッドについて行う。
【0092】
破断時の伸びは、ISO527に準拠して求める。
【0093】
MVR(溶融体積フローインデックス)は、ISO1133に準拠して求める。ノッチ付き衝撃強度は、ISO180/1Aに準拠して求める。
【0094】
火炎特性は、UL-題目94Vに準拠して、射出成形機において260℃で製造した寸法127×12.7×1.6mmのロッドについて測定する。
【0095】
【表2】

【0096】
表1および表2の両方において(難燃性PC/ABS成形用組成物)、特定のグラフトポリマーを含有する本発明の成形用組成物は、ノッチ付き衝撃強度と破断時の伸びに関し、特性の顕著な改良を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)芳香族ポリカーボネート5〜95重量部、
B)スチレンとアクリロニトリルの重量比90:10〜50:50を、ビニルモノマー0重量%〜50重量部を共重合形態で更に含有する少なくとも2種のゴムラテックス(B1)および(B2)の存在下でエマルション重合することにより生成される少なくとも1種のグラフトゴムであって、スチレンおよび/またはアクリロニトリルは、α-メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN-フェニルマレイミドで完全にまたは部分的に置き換えてよく、使用されるモノマーと使用されるゴムラテックスとの重量比が25:75〜70:30であり、ゴムラテックス(B1)が、粒径d50350nm以下、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲30nm〜100nm、およびゲル含量70重量%以下を有し、そしてゴムラテックス(B2)が、粒径d50350nm以上、(積算粒径分布からのd90からd10を減じた値として測定される)粒径分布範囲50nm〜500nm、およびゲル含量70重量%以上を有し、そしてB1とB2の平均粒径の差が50nm以上であることを特徴とするもの1〜50重量部、
C)スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートおよびN-置換マレイミドから成る群より選択される少なくとも1種のモノマーを含有する熱可塑性ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマー少なくとも1種0〜50重量部、および
D)任意に、少なくとも1種の難燃剤および場合により、通常使用される添加物0.5〜25重量部
を含有し、前記成分の重量部の和が100である、ポリカーボネート組成物。
【請求項2】
下記の式(III)で表されるホスフェートまたはこの混合物および下記の式(IV)で表されるリン化合物オリゴマーから成る少なくとも1つの群より選択される難燃剤を含有する請求項1記載の組成物。
【化1】

(式中、R12、R13およびR14は、互いに独立して、任意にハロゲン化されたC〜C-アルキル、または任意にハロゲン化および/またはアルキル化されたC-またはC-シクロアルキル、または任意にハロゲン化および/またはアルキル化および/またはアラルキル化されたC〜C30-アリールを表し、そしてnおよびmは、互いに独立して、0または1である。)
【化2】

(式中、R15、R16、R17およびR18は、互いに独立して、C〜C-アルキル、C〜C-シクロアルキル、C〜C10-アリール、C〜C12-アラルキルを表し、nは、互いに独立して、0または1を表し、Nは、1〜5までの数を表し、そしてXは、炭素数が6〜30の単核または多核の芳香族基を表す。)
【請求項3】
芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはこれらの混合物を10〜90重量%含有する請求項1および2に記載のポリカーボネート組成物。
【請求項4】
芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはこれらの混合物を20〜80重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項5】
成分Bを2〜40重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項6】
成分Bを3〜30重量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項7】
成分Cを0〜40重量部含有する請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項8】
成分Cを0〜30重量部含有する請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項9】
成分Dを2〜20重量部含有する請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項10】
ゴムラテックスB1およびB2がジエンゴム、EPDMゴムおよびアクリレートゴムまたはこれらの混合物から選択される請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項11】
ゴムラテックスがジエンゴムである請求項1〜10のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項12】
ゴムラテックスが、イソプレン、クロロプレン、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、C〜C-アルキルスチレン、C〜C-アルキルアクリレート、C〜C-アルキルメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート、アルキレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、またはこれらの混合物から成る群より選択される別のモノマーをコモノマーとして(ゴムラテックスの製造に使用されるモノマーの合計量に対して)50重量%まで含有し得るブタジエンをベースとするジエンゴムであり、好ましい前記コモノマーが、スチレン、アクリロニトリルまたはメチル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物である請求項1〜11のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項13】
コモノマーが、スチレン、アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレートおよびこれらの混合物から成る群より選択される請求項1〜12のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項14】
スチレンおよびアクリロニトリルから成る1種以上のポリマーを含有し、α-メチルスチレンまたはメチルメタクリレートまたはこれらの混合物を更に包含する請求項1〜13のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項15】
難燃剤、潤滑剤、静電気防止剤、安定化剤、顔料、染料、フィラーおよび強化剤、離型剤および核形成剤から成る少なくとも1つの群から選択される成分を更に含有する請求項1〜14のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項16】
12、R13およびR14が、互いに独立して、フェニルまたはそのハロゲン化またはアルキル化誘導体を表し、そしてnおよびmが1を表す式(III)のリン化合物、およびR15、R16、R17およびR18が、互いに独立して、フェニルまたはそのハロゲン化またはアルキル化誘導体を表し、nは、1を表し、Nは、1〜5までの数を表し、そしてXは、
【化3】

またはフェニルを表す式(IV)のリン化合物オリゴマーから成る群より選択される少なくとも1種のリン化合物を含有する請求項1〜15のいずれかに記載のポリカーボネート組成物。
【請求項17】
成形品、シートまたはフィルムの製造のための請求項1〜16に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1〜16に記載の組成物から製造される成形品、シートまたはフィルム。
【請求項19】
請求項18記載のハウジング部品、建築および構造分野における被覆パネル、および自動車分野における部品。

【公開番号】特開2012−97286(P2012−97286A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35303(P2012−35303)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2001−565803(P2001−565803)の分割
【原出願日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】