説明

特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂、及び該化合物を含有するエポキシ樹脂組成物

【課題】
耐熱性と硬化性に優れた特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂と、それを用いて硬化させた際、硬化後の着色が小さく柔軟性に優れた硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとエピハロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、及び該化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂と、それを用いて得られるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂は、接着性、機械特性、耐熱性、耐薬品性、電気特性などに優れていることから、接着剤、塗料、土木建築材料、電気・電子部品材料や絶縁材料などの様々な分野で使用されている。エポキシ樹脂の硬化システムは、アミン、カルボン酸、酸無水物、アルコール類等の硬化剤による常温硬化又は加熱硬化が一般的であるが、近年、生産性、小型化、省エネルギー化及び高性能化に伴い、カチオン重合による光又は熱硬化システムが注目されている。
【0003】
カチオン重合でエポキシ樹脂を硬化させる場合、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂は、種類は豊富であるが多官能でないと硬化性が悪い傾向があった。一方、脂環式タイプのエポキシ樹脂は、硬化性は良好なものの、硬化物が脆くクラックが発生しやすい問題があった(特許文献1)。これらの問題に対して、従来から、ポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂が市販されているが、多官能であるために硬化性は比較的高いものの、従来品はポリグリセリンの分子量分布が広い為に耐熱性が悪く、また、硬化後の着色に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−54277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐熱性と硬化性に優れた特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂と、それを用いて硬化させた際、硬化後の着色が小さく柔軟性に優れた硬化物が得られるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であるポリグリセリンとエピハロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、及び該化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物により上記課題を解決にするに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂は耐熱性が高く硬化性に優れ、また、該化合物を配合したエポキシ樹脂組成物は硬化させた際、硬化後の着色が小さく柔軟性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂を用いることを特徴とするが、原料であるポリグリセリンについて説明する。
【0009】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂に使用されるポリグリセリンは、グリセリンの脱水縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン等のグリセリン類縁物質を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られるが、一般的には、グリセリンに少量のアルカリ触媒を加えて200℃以上の高温に加熱し、生成する水を除去しながら重縮合させる方法により得られる。反応は、逐次的な分子間脱水反応により順次高重合体が生成するが、反応組成物は均一なものではなく、未反応グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等の複雑な混合生成物となり、反応温度が高いほど、あるいは反応時間が長いほど反応は高分子量側にシフトする。また、未反応のグリセリンは減圧蒸留による蒸留が可能であり、ジグリセリンは分子蒸留による蒸留が可能であるため、一般的にはジグリセリンは高純度品が使用され、それ以上の重合度のポリグリセリンは、複雑な他成分の混合物やグリセリン、ジグリセリンを蒸留した残分が使用される。
【0010】
ポリグリセリンの組成分析は、一例として、ポリグリセリン試料を約0.5g、及び内部標準物質としてパルミチン酸メチル(1級試薬;キシダ化学)を約0.05g精秤し、ピリジン(特級試薬;キシダ化学)約1.8mlにこれらを溶解させ、次いで、この溶液20μlに対してTMS−HT(試薬;東京化成工業)を0.2ml注入し、温浴にて反応後に上澄み液を1μlと下記の分析に供することで判定される。
【0011】
ガスクロマトグラフ:GC−14B(島津製作所製)
カラム:OV−1(GLサイエンス製、内径3mm、長さ1.5m)
カラム温度:100℃〜350℃(昇温速度10℃/min)
キャリアーガス:窒素(50ml/min)
注入部温度:350℃
検出器温度:350℃
検出器:FID
【0012】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂に使用されるポリグリセリンは、ポリグリセリン組成中のトリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。60重量%未満のポリグリセリンを用いた場合、分子量分布の広いポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂となり、耐熱性、硬化性などの性能を全て満たすことが困難となるため好ましくない。
【0013】
さらに、本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂に使用されるポリグリセリンは、トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上のポリグリセリンについて、トリグリセリンとテトラグリセリンの各々の濃度が好ましくは10重量%〜70重量%の範囲であり、さらに好ましくは20重量%〜70重量%の範囲である。これらの下限範囲を外れる組成のポリグリセリンを用いた場合、前記同様に分子量分布の広いポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂となり、耐熱性、硬化性などの性能を全て満たすことが困難となるため好ましくない。また、上限範囲を外れる組成のポリグリセリンを用いた場合、これを製造するには複数の蒸留工程が必要となるため、非常に不経済なものとなるため好ましくない。
【0014】
また、これに加えて、本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂に使用されるポリグリセリンは、ジグリセリン濃度が10重量%未満、ヘキサグリセリン以上のポリグリセリン濃度が15%未満であることが望ましい。ジグリセリン濃度が範囲を外れるポリグリセリンを用いた場合、得られるポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂の耐熱性が低下するため好ましくない。また、ヘキサグリセリン以上のポリグリセリン濃度が範囲を外れるポリグリセリンを用いた場合、得られるポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂の粘度が上昇し作業性が悪くなる。
【0015】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂は公知の方法で製造でき、特定のポリグリセリンとエピハロヒドリンを反応させることにより得ることができる。これにはトルエンやキシレンなどの不活性溶媒中で、アミン類やルイス酸などの触媒を用いて、付加反応させたのち、NaOHなどのアルカリを用いて閉環反応を経る2段階の反応方法や、エピハロヒドリン溶媒中でアルカリを用いて直接1段階で反応させる方法を用いて製造できる。この反応で使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられるが、工業的に入手し易く安価であるエピクロルヒドリンが好ましい。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴とするが、本発明で用いられるエポキシ樹脂を単独で硬化させてもよいし、他の公知のエポキシ樹脂を単独若しくは2種以上併用しても良い。樹脂組成物に対し、耐熱性や硬化性、硬化後の着色や柔軟性などの性能が損なわれない限り、任意の割合で併用することが出来る。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有される硬化剤としては、配合後加熱又は活性エネルギー線照射により硬化が可能なカチオン重合開始剤や、配合後常温又は加熱により硬化が可能な酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、潜在性硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、配合樹脂組成物の取り扱いの作業性や硬化後の特性を考慮すると、カチオン重合開始剤が好ましい。
【0018】
カチオン重合開始剤としては、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウムなどから選ばれる少なくとも1種のカチオンと、BF4−、PF6−、SbF6−から選ばれる少なくとも1種のアニオンとから構成されるオニウム塩等があげられる。このようなカチオン重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0019】
芳香族スルホニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム テトラフルオロボレート、(2−エトキシ−1−メチル−2−オキソエチル)メチル−2−ナフタレニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0020】
芳香族ヨードニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0021】
芳香族ジアゾニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウム テトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0022】
芳香族アンモニウム塩系のカチオン重合開始剤の具体例としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0023】
カチオン重合開始剤の含有量はエポキシ樹脂全体の100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.3〜7重量部の範囲であることがより好ましい。
【0024】
本発明における酸無水物系硬化剤の具体例としては、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート等が挙げられる。
【0025】
酸無水物系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0026】
本発明におけるアミン系硬化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ポリオキシペンチレンジアミン、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミン、ポリオキシペンチレントリアミン、ジエチレントリアミン<DETA>、トリエチレンテトラミン<TETA>、テトラエチレンペンタミン<TEPA>、m−キシレンジアミン<MXDA>、トリメチルヘキサメチレンジアミン<TMD>、2−メチルペンタメチレンジアミン<2−MPMDA>、ジエチルアミノプロピルアミン<DEAPA>、イソフォロンジアミン<IPDA>、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン<1,3−BAC>、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン<PACM>、ノルボルネンジアミン<NBDA>、1,2−ジアミノシクロヘキサン<1,2−DCH>、ラロミンC−260、ジアミノジフェニルメタン<DDM>、メタフェニレンジアミン<MPDA>、ジアミノジフェニルスルフォン<DDS>、N−アミノエチルピペラジン<N−AEP>等が挙げられる。また、これらの変性物、例えばMXDA変性物、IPDA変性物等を用いても良い。
【0027】
アミン系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0028】
本発明におけるフェノール系硬化剤の具体例としては、各種フェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、テルペン骨格含有フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。上記で使用される各種フェノールとしてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ナフトール類等が挙げられる。
【0029】
フェノール系硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると0.8〜1.2当量の範囲であることがより好ましい。
【0030】
潜在性硬化剤の具体例としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジヒドラジド化合物、アミンアダクト系潜在性硬化剤、ケチミン化合物等が挙げられる。これらの潜在性硬化剤はあらかじめエポキシ樹脂に混合した状態で長期間保存できるため、取り扱いが容易なので好ましい。
【0031】
潜在性硬化剤の含有量はエポキシ樹脂全体の100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、硬化性、硬化物の物性を考慮すると5〜20重量部の範囲であることがより好ましい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、樹脂粒子、濡れ性改良剤、消泡剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤;炭酸カルシウム、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラー等を併用することができる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は常温又は加熱によって硬化する事ができるが、活性エネルギー線を照射して硬化させる事もできる。活性エネルギー線とは、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等エネルギーの高い電子線若しくは電磁波の総称であり、通常装置の簡便性及び普及性により紫外線が好ましい。紫外線を照射できる装置として多くの種類があるが、任意に選択できる。また、低波長領域側の可視光等エネルギーとして、青色LEDを用いることも可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでない。なお、今回使用したポリグリセリンは、下記の合成例に示すポリグリセリンA〜Hを用いた。ただし、%は重量基準である。
【0035】
<ポリグリセリンA〜Hの合成例>
温度計、撹拌機を備えた反応容器に精製グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)、及び触媒として水酸化ナトリウムを添加し、窒素気流下にて250℃で反応させ、ポリグリセリン組成物を得た。次いで、この組成物を減圧蒸留して表1に示すポリグリセリン組成物A〜Fを得た。なお、減圧蒸留工程を実施しないものとして、ポリグリセリンG、及びHを得た。
【0036】
【表1】

【0037】
<エポキシ樹脂の合成例A1〜H1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応器に、ポリグリセリンA200g、トルエン400gを仕込み、撹拌下、三フッ化ほう素エーテル錯塩1gを添加した。内温を約60℃に保ちながら、滴下ロートによりエピクロルヒドリン300gを約3時間かけて滴下し、さらに30分撹拌した。次に、同温度で固形水酸化ナトリウム90gを2時間かけて添加し、更に同温度で1時間熟成を行い、生成塩を水洗分液操作にて除去した後、水洗分液操作を数回繰り返した。その後、トルエンを減圧留去し、ポリグリセリンのエポキシ樹脂A1を得た。以下同様に、ポリグリセリンの種類(B〜H)を変化させて、ポリグリセリンのエポキシ樹脂(B1〜H1)を合成した。但し、ポリグリセリンF及びHを用いた合成については、エピクロルヒドリンの量をそれぞれ400g、250gに変更した。
【0038】
実施例1〜5、比較例1〜4を表2に示すような処方で(数値は重量部を示す)各成分を混合し、各種組成物をカチオン重合開始剤が溶解し均一になるよう調製し、各種評価を行った。なお、耐熱性の指標とした熱重量減少温度の測定は、カチオン重合開始剤を配合する前に評価した。実施例中の評価は、以下の方法で行った。
【0039】
熱重量減少温度(耐熱性):各種エポキシ樹脂の熱重量減少温度をTG−DTA8120(株式会社リガク製)を用い、Td1(1%重量減少温度)、Td5(5%重量減少温度)を測定した。
【0040】
硬化性:調製された組成物を型枠(50mm×50mm×深さ5mm)に流し込み、90℃×3時間+120℃×3時間かけて加熱し、硬化性を評価した。
○・・・上記硬化条件で完全硬化した。
×・・・上記硬化条件で完全硬化せず。
【0041】
柔軟性:90℃×3時間+150℃×3時間かけて加熱硬化させ、硬化物のクラックの有無と型から外す際の割れの有無により、柔軟性を評価した。
○・・・硬化物にクラックが見られず、型から外す際に割れなし。
△・・・硬化物にクラックが見られないが、型から外す際に割れあり。
×・・・硬化物にクラックが見られる。
【0042】
硬化後の着色:柔軟性と同様の方法で硬化した硬化物の黄色度(YI:イエローインデックス)を測色色差計(ZE6000;日本電色工業(株)製)にて測定した。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の評価結果から、本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂は、耐熱性が高く、該化合物を配合したエポキシ樹脂組成物は硬化速度が速く、それを用いて硬化させた際、硬化後の着色が小さく柔軟性に優れた硬化物が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の特定のポリグリセリン構造を有するエポキシ樹脂は、耐熱性が高く、該化合物を配合したエポキシ樹脂組成物は硬化速度が速く、それを用いて硬化させた際、硬化後の着色が小さく柔軟性に優れた硬化物が得られる。この事から、コーティング剤、接着剤、電気・電子部品用、封止剤、光学材料等の様々な分野への応用が可能であり、産業上における利用価値が極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリン濃度とテトラグリセリン濃度の合計が60重量%以上であることを特徴とするポリグリセリンとエピハロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂。
【請求項2】
ポリグリセリンを構成するトリグリセリンおよびテトラグリセリンの各々の濃度が10重量%〜70重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
ポリグリセリンを構成するジグリセリン濃度が10重量%未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂と硬化剤を含有する事を特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤がカチオン重合開始剤である請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−91687(P2013−91687A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233265(P2011−233265)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】