説明

特定区間最適速度データ作成装置及びその方法、並びに特定区間最適速度データを作成するためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】信号機付交差点から別の信号機付交差点までを特定区間とし、当該特定区間の最適速度データを自動的に作成する装置及びその方法を提供する。
【解決手段】走行履歴データ保存部に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と信号機付交差点情報保存部に保存される信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成し、当該複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された当該区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出し、抽出した当該特定区間データから特定区間の最適速度を算出することにより、特定区間の最適速度データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定区間最適速度データ作成装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション装置を用いた、省燃費走行を案内する技術が提案されている。また、一般に、車輌が停止状態から加速する際、燃料消費量の増加が顕著となることが知られている。
このような燃料消費量の増加を抑えるため特許文献1では、信号機が青となる基準時刻、色変化の周期及び時間配分に示される信号情報に基づいて、走行ルート上の信号機を青で通過できる最適速度を計算し、利用者に提示する技術が提案されている。すなわち、信号機付交差点等で停止することのないよう計算された最適速度によれば、停止、発進の繰り返しによる燃料消費量の増大を抑制できる。
本件発明に関連する従来技術を開示する特許文献2も参考されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−121000号公報
【特許文献2】特開2006−3147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、より実際に即した最適速度データを作成すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、次の課題を見出すに至った。
上記従来技術では、車輌走行中都度、最適速度を計算することとなるため処理装置への高負荷が懸念される。
また、信号情報のみに基づいて計算された最適速度では、実際の走行環境を反映することは困難である。
さらに、一般に、連続する交差点においては信号の切り替わるタイミングが連動することが多いことに着目すれば、より精度の高い最適速度データを作成することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理装置の負荷が低減され、より実際に即した最適速度データを作成可能な技術を提供することにある。
即ち、この発明の第1の局面は次のように規定される。
複数の走行履歴データを保存する走行履歴データ保存部と、
信号機付交差点情報を保存する信号機付交差点情報保存部と、
前記複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と前記信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成部と、
前記区間データを保存する区間データ保存部と、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出部と、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出部と、
算出された前記最適速度とその前記特定区間データとを関連付けて、特定区間−最適速度データとして保存する特定区間−最適速度保存部と、
を備える、ことを特徴とする特定区間最適速度データ作成装置。
【0006】
このように規定される第1の局面の特定区間最適速度データ作成装置によれば、車輌の走行履歴データ、信号機付交差点情報に基づき、信号機付交差点から別の信号機付交差点までの区間における最適速度データを作成する。このように、車輌が実際に走行した際の走行履歴データを用いることにより、実態に即し、走行環境を反映した特定区間の最適速度データを作成することが可能となる。また、最適速度を算出するための区間として、信号機付交差点で停止し、発車した後、別の信号機付交差点で停止した走行履歴の区間データを用いるため、連続する交差点における信号の切替タイミングの連動を考慮した最適速度の算出が可能となる。ここで、当該最適速度は、平均速度又は標準速度帯とすることができる(第3の局面)。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の特定区間最適速度データ作成装置において、算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算部を更に備え、
前記信頼度は、前記特定区間−最適速度データに関連付けられて、特定区間−最適速度保存部へ保存される。
このように規定される第2の局面の特定区間最適速度データ作成装置によれば、算出された最適速度の信頼性を示す信頼度を当該最適速度に付与することが可能となる。
ここで、信頼度とは、特定区間の始点、すなわち、信号機付交差点を発車した車輌が上記算出された最適速度で走行したとき、少なくとも終点まで停止することなく走行可能な度合いをいう。
【0008】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3のいずれかの局面に規定の特定区間最適速度データ作成装置において、前記最適速度は指定された条件ごとに算出される。
このように規定される第4の局面の特定区間最適速度データ作成装置によれば、指定された条件ごとの特定区間最適速度データを作成することができる。当該指定された条件は、時間帯及び/又は曜日とすることができる(第5の局面)。
【0009】
また、この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
走行履歴データ保存部に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と信号機付交差点情報保存部に保存される信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成ステップと、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出ステップと、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出ステップと、
を備える、ことを特徴とする特定区間最適速度データ作成方法。
このように規定される第6の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0010】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第6の局面に規定の特定区間最適速度データ作成方法において、算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算ステップを更に備える。
このように規定される第7の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0011】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第6又は第7の局面に規定の特定区間最適速度データ作成方法において、前記最適速度は平均速度又は標準速度帯である。
このように規定される第8の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0012】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
第6〜第8のいずれかの局面に規定の特定区間最適速度データ作成方法において、前記最適速度は指定された条件ごとに算出される。
このように規定される第9の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0013】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面に規定の特定区間最適速度データ作成方法において、前記指定された条件は、時間帯及び/又は曜日である。
このように規定される第10の局面に規定の発明によれば、第5の局面と同等の効果を奏する。
【0014】
更に、この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
特定区間最適速度データを作成するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
走行履歴データ保存部に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と信号機付交差点情報保存部に保存される信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成手段と、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出手段と、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第11の局面に規定の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0015】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第11の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算手段、として機能させる。
このように規定される第12の局面に規定の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0016】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第11又は第12の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記最適速度は平均速度又は標準速度帯である。
このように規定される第13の局面に規定の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0017】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第11〜第13のいずれかの局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記最適速度は指定された条件ごとに算出される。
このように規定される第14の局面に規定の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0018】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第14の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記指定された条件は、時間帯及び/又は曜日である。
このように規定される第15の局面に規定の発明によれば、第5の局面と同等の効果を奏する。
【0019】
第11〜第15のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第16の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の特定区間最適速度算出部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態のステップ1の詳細動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態のステップ5の詳細動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の他の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の信頼度演算部の詳細構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の他の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施の形態のステップ21の詳細動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置を構成するコンピュータシステムを示す。
【図12】特定区間最適速度データ作成装置で作成された特定区間最適速度データを利用するナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置を説明する。
図1に、この発明の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置1の概略構成を示す。図3には特定区間最適速度データ作成装置1の動作に対応するフローチャートを示す。
図1に示すように、この特定区間最適速度データ作成装置1は、走行履歴データ保存部2、信号機付交差点情報保存部3、区間データ形成部4、区間データ保存部5、特定区間データ抽出部6、特定区間データ保存部7、特定区間最適速度算出部8及び特定区間−最適速度保存部9を備える。
【0022】
走行履歴データ保存部2には、実際に車輌が走行した際の走行履歴データが保存される。走行履歴データとしては、例えば、プローブ情報を挙げることができる。当該プローブ情報には、少なくとも座標情報、時間情報、プローブカーを特定するID情報が含まれる。GPS等の位置検出機能を有する車輌であればこれらの情報を特定することができる。更に、速度情報、方位情報、高度情報、アクセル開度、エンジン回転数、前後加速度、ヨーレイト、ストップランプ、ABSウォーニングランプ、燃料消費量、電力残存容量、舵角(ハンドルの回転角度情報)、シフトレバー情報等を備えることが好ましい。
信号機付交差点情報保存部3には、信号機付交差点情報が保存される。信号機付交差点情報は地図上において信号機が設置されている交差点を特定する情報であって、例えば、地図情報としてのノードと道路情報としての信号機の有無に関する情報との組合せを用いることができる。
【0023】
区間データ形成部4は、走行履歴データ保存部2に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切った後、信号機付交差点情報保存部3を参照して、当該区切られた走行履歴データの始点及び終点と当該信号機付交差点情報とが合致する区間データを抽出することにより、走行履歴データから信号機付交差点を始点及び終点とする区間データを形成する。ここで、走行履歴データの停止地点の判別は、特に制限されないが、例えば、走行履歴データ中の車速がゼロとなった地点を赤信号により停止した地点とすることができる。当該形成された区間データは、区間データ保存部5に送られ、保存される。
【0024】
特定区間データ抽出部6は、区間データ保存部5に保存される複数の区間データの中から、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する。当該抽出された特定区間データは、特定区間データ保存部7に送られ、保存される。
特定区間最適速度算出部8は、特定区間データ保存部7に保存される複数の特定区間データから特定区間の最適速度を算出する。当該最適速度としては、特定区間を走行するために適した速度であれば特に限定されないが、例えば、平均速度、標準速度帯とすることができる。
ここで、最適速度として平均速度を算出する場合、特定区間最適速度算出部8は、上記複数の特定区間データにつきそれぞれ平均速度を算出した後、特定区間データ全体の平均速度を算出しても良いし、抽出された複数の特定区間データから特定区間データ全体の平均速度を一度に算出しても良い。
【0025】
また、最適速度として標準速度帯を算出する場合の特定区間最適速度算出部8の構成について、図2を用いて詳細に説明する。
図2において、図1と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2において、特定区間データ抽出部6は、始点a及び終点a’を有し、走行履歴が同一である特定区間Aのデータを抽出する特定区間データA抽出部61、始点b及び終点b’を有し、走行履歴が同一である特定区間データB抽出部62、…、特定区間データn抽出部6nを備える。また、特定区間データ保存部7は、特定区間データ抽出部6に対応する、特定区間データA保存部71、特定区間データB保存部72、…、特定区間データn保存部7nを備える。
【0026】
特定区間最適速度算出部8は、特定区間データA保存部71に保存された特定区間データA1〜Amに基づき特定区間Aの最適速度としての標準速度帯Vを算出する特定区間A最適速度算出部81、特定区間Bの標準速度帯Vを算出する特定区間B最適速度算出部82、…、特定区間nの標準速度帯Vを算出する特定区間n最適速度算出部8nを備える。
さらに、特定区間A最適速度算出部81は、平均速度算出部811、速度帯仕分部812、標準速度帯特定部813を備える。
平均速度算出部811は、平均速度VA1算出部8111、平均速度VA2算出部8112、…、平均速度VAm算出部811nを備え、上記保存された特定区間データA1〜Amの平均速度VA1〜VAmをそれぞれ算出する。算出された平均速度VA1〜VAmは、速度帯仕分部812へ送られる。
【0027】
速度帯仕分部812は、上記平均速度VA1〜VAmを、予め定められた第1〜第pの速度帯に仕分ける第1速度帯仕分部8121、第2速度帯仕分部8122、…、第p速度帯仕分部812pを備える。当該速度帯としては、適宜定めればよく、例えば、第1速度帯を41〜50km/h、第2速度帯を51〜60km/h、第3速度帯を61〜70km/hとすることができる。速度帯仕分部812は、更に、当該仕分けられた平均速度データの数をカウントする第1〜第pのカウンタを備える。
【0028】
当該第1〜第pカウンタによってカウントされた数に基づき、標準速度帯特定部813は、特定区間Aにおける標準速度帯Vを特定する。当該特定は、特定区間Aを停止することなく走行した車輌の最頻の走行速度が反映されるよう特定できれば良く、例えば、最もカウント数の多い速度帯を標準速度と特定することができる。他にも、第1〜第pカウンタでカウントされた数の合計に占める、各速度帯のカウント数の割合に基づき、所定割合以上のカウント数を有する速度帯を標準速度帯と特定することもできる。特定される標準速度帯は、1つでも良いし、2つ以上特定することとしても良い。
なお、特定区間最適速度算出部8は、特定区間データ保存部7に保存された特定区間データの数が所定閾値数以上のとき、特定区間最適速度を算出することとしても良い。
当該特定された標準速度帯は、最適速度として、特定区間Aに関連付けて、特定区間−最適速度保存部9に保存される。例えば、上記特定区間A最適速度は、特定区間データAと関連付けて、特定区間A最適速度データとして保存される。
【0029】
図3及び図4を用いて、図1及び図2に示す特定区間最適速度データ作成装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、走行履歴データ保存部2及び信号機付交差点情報保存部3を参照し、最適速度データの作成対象となる区間データを形成し、保存する。
【0030】
図4を用いて、ステップ1の詳細動作を説明する。
ステップ11では、まず、走行履歴データ保存部2から走行履歴データを抽出する。当該抽出された走行履歴データは停止地点毎に区切られる(ステップ12)。当該停止地点の判別は、特に制限されないが、例えば、走行履歴データ中の車速がゼロであるとき、停止地点と特定することができる。ステップ13では、信号機付交差点情報保存部3を参照し、ステップ12で区切られた走行履歴データの始点及び終点と、信号機付交差点情報とが合致する区切られた走行履歴データを抽出することで、区間データを形成する。当該区間データは、区間データ保存部5に送られ、保存される(ステップ14)。
【0031】
図3に戻り、ステップ3では、区間データ保存部5に保存される複数の区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを抽出し、保存する。当該抽出された区間データが特定区間データとなる。
次いで、上記抽出された特定区間データから当該特定区間の最適速度を算出する(ステップ5)。当該算出される最適速度としては、特定区間を走行するために適した速度であれば特に限定されないが、例えば、平均速度、標準速度帯とすることができる。
【0032】
ここで、最適速度として標準速度帯を算出する場合のステップ5の詳細動作を図5を用いて説明する。
ステップ51では、平均速度算出部811において、ステップ3で抽出・保存された特定区間データA1〜Amの平均速度VA1〜VAmを算出する。当該算出された平均速度VA1〜VAmは、速度帯仕分部812において、予め定められた第1〜第pの速度帯にそれぞれ仕分けられ、その数がカウントされる(第1〜第pカウント数)。得られた第1〜第pカウント数のうち、最もカウント数の大きい速度帯を標準速度帯Vと特定する(ステップ53)。当該標準速度帯Vが、特定区間Aにおける最適速度Vとなる。
【0033】
図3に戻り、ステップ5で算出された最適速度Vは、当該特定区間データAと関連付けられて、特定区間−最適速度保存部9に保存される(ステップ7)。
【0034】
図6に、他の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置21を示す。図6において、図1及び図2と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図6に示すのは、予め指定された条件ごとに特定区間最適速度を算出可能な特定区間最適速度データ作成装置21である。すなわち、当該装置21は、図2に示す特定区間最適速度データ作成装置1内の第1カウンタ8123に代えて、第1速度帯仕分部8121で仕分けられた平均速度データを、第1の条件に基づきカウントする第1−1カウンタ8125、及び、第2の条件に基づきカウントする第1−2カウンタ8126を備える。同様に、第2カウンタ、…、第pカウンタに代えて、第2−1カウンタ8127、第2−2カウンタ8128、…、第p−1カウンタ、第p−2カウンタを備える。
【0035】
特定区間最適速度データ作成装置21では、予め指定された条件として、第1の条件を平日(月曜〜金曜)、第2の条件を休日(土日祝日)とした。1の速度帯仕分部に対応するカウンタの数は、条件の数に応じて備えればよい。また、条件は、目的に応じて適宜指定すればよく、例えば、走行時間帯、曜日、走行車線、天候等とすることができる。走行車線別、天候別を条件とする場合には、走行履歴データが車線別情報、各地域の天候情報、ワイパー及びヘッドライトの動作情報等を持つか、あるいは、それらの情報が走行履歴データに関連付けられていれば、当該条件ごとにカウント可能である。
【0036】
標準速度帯特定部813は、第1の条件に対応する第1標準速度帯特定部8131、及び、第2の条件に対応する第2標準速度帯特定部8132を備える。
第1標準速度帯特定部8131は、速度帯仕分部812において、各速度帯仕分部で仕分けられた平均速度データを第1の条件に基づきカウントした第1−1カウンタ8125、第2−1カウンタ8127、…、第p−1カウンタを参照し、上記第1の条件における特定区間Aの最適速度としての標準速度帯を特定する。当該特定は、特定区間最適速度データ作成装置1の標準速度帯特定部813と同様に、最もカウント数の多い速度帯を標準速度と特定する等により行うことができる。同様にして、第2標準速度帯特定部8132は、上記第2の条件における特定区間Aの標準速度を特定する。
特定された第1の条件における標準速度帯、第2の条件における標準速度帯は、それぞれ各条件における最適速度として、特定区間−最適速度保存部9内の第1保存部91、第2保存部92に特定区間Aに関連付けて保存される。
【0037】
図7に、他の実施の形態の特定区間最適速度データ作成装置31を示す。図7において、図1及び図2と同一の要素には同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図7に示す特定区間最適速度データ作成装置31では、図1に示す特定区間最適速度データ作成装置1において、更に信頼度演算部33備えている。
信頼度演算部33は、特定区間データ保存部7及び特定区間最適速度算出部8を参照し、当該特定区間最適速度算出部8で算出された最適速度の信頼度を演算する。ここで、信頼度とは、特定区間の始点、すなわち、信号機付交差点を発車した車輌が上記算出された最適速度で走行したとき、少なくとも終点まで停止することなく走行可能な度合いをいう。
【0038】
図8を用いて、信頼度演算部33の詳細構成を説明する。
信頼度演算部33は、特定区間最適速度算出部8内で算出された標準速度帯V、標準速度帯V、…、標準速度帯Vの信頼度を演算する、それぞれ標準速度帯V信頼度演算部331、標準速度帯V信頼度演算部332、…、標準速度帯V信頼度演算部33nを備える。
標準速度帯V信頼度演算部331は、更に、a’以降終点取得部3311、a’前終点取得部3312を備える。a’以降終点取得部3311は、特定区間最適速度算出部8内で算出された平均速度データから、平均速度が標準速度帯特定部813で特定された標準速度帯V内にあり、かつ、特定区間Aの始点aから同一ルートを走行し、終点a’及び終点a’を通過した点に終点を有する平均速度データを取得する。同様にして、a’前終点取得部3312は、特定区間Aの始点aから同一ルートを走行し、終点a’に到達しない当該ルート上に終点を有する平均速度データを取得する。当該取得されたデータは、それぞれ備えられたカウンタによりカウントされる。
【0039】
演算部3320は、上記カウント数に基づいて標準速度帯Vの信頼度を演算する。標準速度帯Vの信頼度は、上記カウントされたカウント数の合計に占める、a’以降終点カウンタでカウントされたカウント数の割合に基づき演算される。当該演算結果は、標準速度帯V及び特定区間データAに関連付けて、特定区間−最適速度保存部9に保存される。
【0040】
図9及び図10を用いて、図7及び図8に示す特定区間最適速度データ作成装置31の動作を説明する。図9において、図3と同一のステップには同一の符号を付して、その説明を部分的に省略する。
図9において、ステップ21は、ステップ5で得られた最適速度の信頼度を信頼度演算部33で演算する。当該得られた信頼度は、特定区間−最適速度データと関連付けて、特定区間−最適速度保存部9に保存される(ステップ23)。
【0041】
図10を用いて、ステップ21の詳細動作を説明する。
ステップ5で、特定区間Aの最適速度としての標準速度帯Vが算出されると、信頼度演算部33は、特定区間最適速度算出部8から、当該標準速度帯Vを平均速度とし、特定区間Aの始点aから同一ルートを走行する特定区間データを抽出する(ステップ211)。当該抽出されたデータから、a’以降終点取得部3311は、終点a’以降に終点を有する特定区間データを取得し、そのデータ数をカウントする(ステップ212)。当該カウント結果を、a’以降カウント数とする。ステップ213では、ステップ211で抽出されたデータから、a’前に終点を有する特定区間データを取得し、そのデータ数をカウントする。当該カウント結果を、a’前カウント数とする。
【0042】
ステップ214では、ステップ212及びステップ213で得られたカウント数に基づいて、a’以降カウント数とa’前カウント数の合計に占める、a’以降カウント数の割合を演算する。当該演算結果が、標準速度帯Vの信頼度となる。
図9に戻り、上記得られた信頼度は特定区間−最適速度データに関連付けられて、特定区間−最適速度保存部9に保存される(ステップ23)。
【0043】
図11は特定区間最適速度データ作成装置21のハード構成を示すブロック図である。
この装置21のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを特定区間最適速度データ作成装置21として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域が、走行履歴データ保存部2及び信号機付交差点情報保存部3用に割り付けられる。
【0044】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0045】
この装置21はネットワークアダプタ261を介して、ネットワークNに接続される。このネットワークNにはプローブカーが連結されていてもよい。当該プローブカーからセンター(装置21)へプローブ情報を定期的に送信している場合、逐次当該プローブカーから走行履歴データを抽出し、最適速度の更新を行うことができる。
【0046】
このコンピュータシステムからなる特定区間最適速度データ作成装置21を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0047】
特定区間−最適速度保存部9の情報はナビゲーションシステムによりそのまま利用できる。ナビゲーションシステムの例を図12に示す。
このナビゲーションシステム400は制御部401、メモリ部402、入力部403、出力部404、インターフェース部405、自車位置特定部406、探索部407、特定区間−最適速度保存部9を備えている。
制御部401はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーションシステム400を構成する他の要素を制御する。
メモリ部402にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部401に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
入力部403は目的地等を設定するために用いられる。入力部403としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
【0048】
出力部404はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、その他の情報を表示する。この出力部404は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部405はナビゲーションシステム400を無線ネットワーク等へ連結させる。
自車位置特定部406はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を検出する。
探索部407は指定された出発地から目的地までの経路を探索する。当該案内されたルート走行中、信号機付交差点で停止した際に、特定区間−最適速度保存部9を参照し、当該信号機付交差点を始点とし、案内されたルート上に終点を有する特定区間の最適速度を出力する。出力態様は特に限定されないが、例えば出力部404のディスプレイへ当該最適速度を表示する。併せて音声案内を行なうこともできる。
更には、特定区間−最適速度保存部9に信頼度が保存されている場合は、当該信頼度を参照して、所定(例えば70%)以上の信頼度のある最適速度のみを表示することもできる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態及び実施例について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0050】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 21 31 特定区間最適速度データ作成装置
2 走行履歴データ保存部
3 信号機付交差点情報保存部
4 区間データ形成部
5 区間データ保存部
6 特定区間データ抽出部
7 特定区間データ保存部
8 特定区間最適速度算出部
9 特定区間−最適速度保存部
33 信頼度演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行履歴データを保存する走行履歴データ保存部と、
信号機付交差点情報を保存する信号機付交差点情報保存部と、
前記複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と前記信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成部と、
前記区間データを保存する区間データ保存部と、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出部と、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出部と、
算出された前記最適速度とその前記特定区間データとを関連付けて、特定区間−最適速度データとして保存する特定区間−最適速度保存部と、
を備える、ことを特徴とする特定区間最適速度データ作成装置。
【請求項2】
算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算部を更に備え、
前記信頼度は、前記特定区間−最適速度データに関連付けられて、特定区間−最適速度保存部へ保存される、
ことを特徴とする請求項1に記載の特定区間最適速度データ作成装置。
【請求項3】
前記最適速度は平均速度又は標準速度帯である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の特定区間最適速度データ作成装置。
【請求項4】
前記最適速度は指定された条件ごとに算出される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の特定区間最適速度データ作成装置。
【請求項5】
前記指定された条件は、時間帯及び/又は曜日である、ことを特徴とする請求項4に記載の特定区間最適速度データ作成装置。
【請求項6】
走行履歴データ保存部に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と信号機付交差点情報保存部に保存される信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成ステップと、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出ステップと、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出ステップと、
を備える、ことを特徴とする特定区間最適速度データ作成方法。
【請求項7】
算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算ステップを更に備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の特定区間最適速度データ作成方法。
【請求項8】
前記最適速度は平均速度又は標準速度帯である、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の特定区間最適速度データ作成方法。
【請求項9】
前記最適速度は指定された条件ごとに算出される、ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の特定区間最適速度データ作成方法。
【請求項10】
前記指定された条件は、時間帯及び/又は曜日である、ことを特徴とする請求項9に記載の特定区間最適速度データ作成方法。
【請求項11】
特定区間最適速度データを作成するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
走行履歴データ保存部に保存される複数の走行履歴データのそれぞれを停止地点毎に区切り、該区切られた走行履歴データの始点及び終点と信号機付交差点情報保存部に保存される信号機付交差点情報とが合致する区間データを形成する区間データ形成手段と、
前記複数の走行履歴データについてそれぞれ形成された前記区間データから、同一始点及び同一終点を有する区間データを特定区間データとして抽出する特定区間データ抽出手段と、
抽出した前記特定区間データから特定区間の最適速度を算出する特定区間最適速度算出手段、
として機能させる、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを、更に、
算出された前記最適速度の信頼度を演算する信頼度演算手段、
として機能させる、ことを特徴とする請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記最適速度は平均速度又は標準速度帯である、ことを特徴とする請求項11又は12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記最適速度は指定された条件ごとに算出される、ことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記指定された条件は、時間帯及び/又は曜日である、ことを特徴とする請求項14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項11〜請求項15のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−153834(P2011−153834A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13758(P2010−13758)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】