説明

特定遺伝子の発現を抑制するための方法および薬剤

【課題】本発明は、標的遺伝子の発現を抑制するように設計された少なくとも1の二本鎖オリゴリボヌクレオチド(二本鎖RNA)を含む薬剤に関する。
【解決手段】本発明によれば、その二本鎖RNAの1の鎖は、少なくとも一部が標的遺伝子に相補的である。標的遺伝子は下記の群から選択することができる:ガン遺伝子、サイトカイン遺伝子、Id蛋白質遺伝子、発生遺伝子、プリオン遺伝子。標的遺伝子は、病原性生物(特に、プラスモディウム)において発現し得る。標的遺伝子はまた、好ましくはヒトに対して病原性であるウイルスまたはウイロイドの一部であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および2のプリアンブルに記載される方法に関する。本発明はさらに、二本鎖オリゴリボヌクレオチドの薬剤およびその使用に関し、そして二本鎖オリゴリボヌクレオチドをコードするベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、本発明の優先権日に公開されていない国際特許出願公開WO99/32619により知られている。この知られている方法は、無脊椎動物の細胞における遺伝子の発現を抑制することを目的としている。この目的のために、二本鎖のオリゴリボヌクレオチドは、標的遺伝子と同一である配列で、少なくとも50塩基の長さを有する配列を示さなければならない。効率的な抑制を達成するために、同一の配列は、長さが300塩基対〜1000塩基対でなければならない。そのようなオリゴリボヌクレオチドは、調製することが複雑である。
【0003】
ドイツ国特許DE19631919C2には、特異的な二次構造を有するアンチセンスRNAであって、それをコードするベクターの形態で存在するアンチセンスRNAが記載されている。このアンチセンスRNAは、mRNAの領域に対して相補的であるRNA分子の形態を取っている。遺伝子発現の抑制が、これらの領域に結合することによって引き起こされる。この抑制は、特に、疾患(例えば、腫瘍疾患またはウイルス感染症)の診断および/または治療のために用いることができる。しかし、その欠点は、アンチセンスRNAを少なくともmRNAの量と同じくらい多くの量で細胞に導入しなければならないということである。この知られているアンチセンス方法は特に効果的ではない。
【0004】
米国特許第5,712,257号には、ミスマッチの二本鎖RNA(dsRNA)およびdsRNAの生物活性なミスマッチのフラグメントを界面活性剤との三成分複合体の形態で含む薬剤が開示されている。この目的に使用されるdsRNAは、規定された塩基配列を有しない合成された核酸の一本鎖からなる。この一本鎖は、「非ワトソン・クリック」塩基対形成としても知られる変則的な塩基対形成を生じさせ、これによりミスマッチした二本鎖が生じる。この知られているdsRNAは、HIVなどのレトロウイルスの増幅を抑制するために使用される。ウイルスの増幅は、配列非特異的なdsRNAが細胞内に導入されたときに抑制され得る。これにより、ウイルスの増幅を抑制することを目的とするインターフェロンの誘導がもたらされる。この方法の抑制効果または活性は良くない。
抑制すべき線虫遺伝子に対して一方の鎖が部分的に相補的であるdsRNAによってこの遺伝子の発現が非常に効率よく抑制されることが、Fire,A.他、NATURE、第391巻、806頁により知られている。使用されたdsRNAの線虫細胞におけるこの特定の活性は、アンチセンス原理のためではなく、おそらくはdsRNAの触媒作用的な性質、またはそれによって誘導された酵素に基づいていると考えられる。しかし、この論文には、特に哺乳動物細胞およびヒト細胞における遺伝子発現を抑制することに関する特異的なdsRNAの活性については何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開WO99/32619
【特許文献2】ドイツ国特許DE19631919C2
【特許文献3】米国特許第5,712,257号
【特許文献4】ドイツ国特許DE19618797A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解決することである。特に、本発明は、特定の標的遺伝子の発現の特に効果的な抑制をもたらし得るできる限り効果的な方法、薬剤、または薬剤を調製するための使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1、2、37、38ならびに74および75の特徴によって達成される。好都合な実施形態は、請求項3〜36、39〜73および76〜112から理解することができる。
【0008】
方法に関する発明に従い、標的遺伝子に対して相補的である領域Iが49以下の連続したヌクレオチド対を示すことがそれぞれの場合に提供される。
【0009】
本発明により、オリゴリボヌクレオチドまたはオリゴリボヌクレオチドをコードするベクターが提供される。少なくともこのオリゴリボヌクレオチドの一部は、規定されたヌクレオチド配列を示す。規定されたセグメントは、相補的な領域Iに限定されていてもよい。しかし、二本鎖オリゴリボヌクレオチドのすべてが規定されたヌクレオチド配列を示すことも可能である。
【0010】
驚くべきことに、相補的な領域Iが49塩基対以下の長さである場合でさえ、標的遺伝子の発現の効果的な抑制が達成され得ることが明らかにされた。そのようなオリゴリボヌクレオチドを提供する手順はあまり複雑ではない。
【0011】
特に、長さが50ヌクレオチド対を越えるdsRNAは、哺乳動物細胞およびヒト細胞における特定の細胞機構、例えば、dsRNA依存性蛋白質キナーゼまたは2−5Aシステムを誘導する。これにより、規定された配列を示すdsRNAによって媒介される干渉作用の消失がもたらされる。その結果、細胞における蛋白質生合成が阻止される。本発明は、特にこの欠点を克服する。
【0012】
さらに、鎖長が短いdsRNAの細胞内または核内への取込みが、より長い鎖のdsRNAよりも著しく促進される。
【0013】
dsRNAまたはベクターが、ミセル構造に、特にリポソームにパッケージされて存在することは好都合であることが明らかにされた。dsRNAまたはベクターは、同様に、ウイルスの天然のキャプシドに、あるいは化学的または酵素的に作製された人工的なキャプシドまたはそれに由来する構造体に封入させることができる。上記の特徴により、dsRNAまたはベクターを特定の標的細胞に導入することが可能になる。
【0014】
さらなる側面において、dsRNAは、10塩基対〜1000塩基対、好ましくは15塩基対〜49塩基対を有する。従って、dsRNAは、標的遺伝子に対して相補的である領域Iよりも長くすることができる。相補的な領域Iは、末端部に位置させることができ、あるいはdsRNA内に挿入することができる。相補的な領域Iをコードするために提供されるそのようなdsRNAまたはベクターは、従来的な方法で合成的または酵素的に作製することができる。
【0015】
抑制される遺伝子は、真核生物細胞において都合良く発現される。標的遺伝子は下記の群から選択することができる:ガン遺伝子、サイトカイン(cytokin)遺伝子、Id蛋白質遺伝子、発生遺伝子、プリオン遺伝子。標的遺伝子は、病原性生物(特に、プラスモディウム)において発現し得る。標的遺伝子はまた、好ましくはヒトに対して病原性であるウイルスまたはウイロイドの一部であり得る。提案された方法は、遺伝子的に決定された疾患(例えば、ガン、ウイルス疾患またはアルツハイマー病)の治療に対する組成物を製造することを可能にする。
【0016】
ウイルスまたはウイロイドはまた、動物に対して病原性であるか、または植物病原体であるウイルスまたはウイロイドであり得る。この場合、本発明による方法はまた、動物または植物の病気を処置するための組成物の提供を可能にする。
【0017】
さらなる側面において、dsRNAの一部は二本鎖として設計される。二本鎖構造において相補的である領域IIは、2つの異なるRNA一本鎖によって形成されるか、または環状形態であることが好ましい位相幾何学的に閉環したRNA一本鎖の自己相補的な領域によって形成される。
【0018】
dsRNAの両端は、細胞内での分解または一本鎖への解離が妨げられるように改変することができる。解離は、低濃度または短い鎖長が使用されたときに特に生じる。特に効果的な様式で解離を抑制するために、ヌクレオチド対によりもたらされる相補的な領域IIの密着性(結合)を、少なくとも1つ(好ましくは、2つ)のさらなる化学結合によって増大させることができる。解離を低下させた本発明によるdsRNAは、細胞または生物における酵素的および化学的な分解に対するより大きな安定性を示す。
【0019】
相補的な領域IIは、特に、本発明によるベクターが使用された場合、RNAヘアピンループの自己相補的な領域によって形成され得る。分解からの保護を得るために、ヌクレオチドを二本鎖構造間のループ領域において化学的に修飾することが好都合である。
【0020】
化学的な結合は、共有結合またはイオン結合、水素結合、疎水性相互作用、好ましくはファンデルワールス相互作用またはスタッキング(重なり)相互作用によって、あるいは金属イオンの配位によって都合良く形成される。特に好都合な側面において、化学的な結合を、相補的な領域IIの少なくとも一方の末端に、好ましくは両端に形成させることができる。
【0021】
さらに、化学的な結合を1つまたは2つ以上の結合基によって形成させることは好都合であることが明らかにされた。この場合、結合基は、好ましくはポリ(オキシホスフィニコオキシ−1,3−プロパンジオール)鎖および/またはポリエチレングリコール鎖である。化学的な結合はまた、相補的な領域IIにおいてプリンの代わりに使用されるプリンアナログ(類縁体)によって形成させることができる。化学的な結合を、相補的な領域IIに導入されたアザベンゼン単位によって形成させることもまた好都合である。その上、化学的な結合は、相補的な領域IIにおいてヌクレオチドの代わりに使用される分枝状ヌクレオチドアナログによって形成させることができる。
【0022】
化学的な結合を生成させるために下記の基の少なくとも1つを使用することが好都合であることが明らかにされた:メチレンブルー;二官能性基、好ましくは、ビス(2−クロロエチル)アミン;N−アシル−N’−(p−グリオキシルベンゾイル)シスタミン;4−チオウラシル;ソラレン。化学的な結合は、さらに、二本鎖領域の両端に提供されたチオホスホリル基によって形成させることができる。二本鎖領域の両端における化学的な結合は、好ましくは三重らせんの結合によって形成される。
【0023】
化学的な結合は、好都合なことに、紫外光により誘導させることができる。
【0024】
dsRNAのヌクレオチドは改変することができる。これにより、二本鎖RNAに依存する蛋白質キナーゼ(PKR)の細胞内での活性化が妨げられる。有益には、相補的な領域IIにおけるdsRNAのヌクレオチドの少なくとも1つの2’−ヒドロキシル基は、好ましくは2’−アミノ基または2’−メチル基の化学基によって置換される。相補的な領域IIの少なくとも一方の鎖における少なくとも1つのヌクレオチドもまた、好ましくは2’−O、4’−Cメチレン架橋により化学的に修飾された糖の環により固定された(ロックされた)ヌクレオチドであり得る。好都合なことに、数ヌクレオチドが、固定されたヌクレオチドである。
【0025】
さらに特に好都合な実施形態は、dsRNAまたはベクターが、ウイルス起源であるか、またはウイルスに由来するか、または合成的に調製された少なくとも1つのウイルス外殻蛋白質に結合するか、会合するか、または囲まれているものを提供する。外殻蛋白質は、ポリオーマウイルスに由来し得る。外殻蛋白質は、ポリオーマウイルスのウイルス蛋白質1(VP1)および/またはウイルス蛋白質2(VP2)を含有することができる。そのような外殻蛋白質の使用は、例えば、ドイツ国特許DE19618797A1(この開示は本明細書中に組み込まれる)により知られている。上記の特徴は、細胞内へのdsRNAまたはベクターの導入をかなり容易にする。
【0026】
キャプシド構造またはキャプシドタイプの構造が外殻蛋白質から形成される場合、一の側面は、好ましくはキャプシド構造またはキャプシドタイプの構造の内部と向き合う。形成された構造は特に安定である。
【0027】
dsRNAは、標的遺伝子の一次RNA転写物またはプロセシングされたRNA転写物に対して相補的であり得る。細胞は、脊椎動物細胞またはヒト細胞であり得る。
【0028】
互いに異なる少なくとも2つのdsRNA、またはそれらをコードする少なくとも1つのベクターを細胞内に導入することができる。この場合、少なくともそれぞれのdsRNAの一方の鎖の一部は、それぞれの場合、少なくとも2つの異なる標的遺伝子の1つに対して相補的である。これにより、少なくとも2つの異なる標的遺伝子の発現を同時に抑制することが可能になる。二本鎖RNAに依存する蛋白質キナーゼ(PKR)の発現を細胞内で抑制するために、標的遺伝子の1つは、好都合にはPKR遺伝子である。これにより、細胞内におけるPKR活性の効果的な抑制が可能になる。
【0029】
本発明はさらに、特定の標的遺伝子の発現を抑制するための、二本鎖構造を有するオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の少なくとも1つを有する薬剤を提供する。この場合、dsRNAの一方の鎖は、少なくとも一部が標的遺伝子に対して相補的である領域Iを有する。驚くべきことに、そのようなdsRNAは、哺乳動物細胞における特定の遺伝子の発現を抑制するための薬剤として好適であることが明らかにされた。一本鎖オリゴリボヌクレオチドの使用との比較において、抑制が、少なくとも1桁低い濃度で既に生じている。本発明による薬剤は非常に効果的である。副作用はほとんど予想され得ない。
【0030】
本発明はさらに、特定の標的遺伝子の発現を抑制するための、二本鎖構造を有するオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の少なくとも1つをコードするための少なくとも1つのベクターを有する薬剤を提供する。この場合、dsRNAの一方の鎖は、少なくとも一部が標的遺伝子に対して相補的である領域Iを有する。提案された薬剤は上記の利点を示す。ベクターを使用することによって、特に製造コストを減少させることができる。
【0031】
特に好都合な実施形態において、相補的な領域Iは、49以下の連続したヌクレオチド対を有する。驚くべきことに、相補的な領域Iが49塩基対以下の長さである場合でさえ、標的遺伝子の発現の効果的な抑制が達成され得ることが明らかにされた。そのようなオリゴリボヌクレオチドを提供する手順はあまり複雑ではない。
【0032】
本発明はさらに、特定の標的遺伝子の発現を抑制するための薬剤を調製するための、二本鎖構造を有するオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の使用を提供する。この場合、dsRNAの一方の鎖は、少なくとも一部が標的遺伝子に対して相補的である領域Iを有する。驚くべきことに、そのようなdsRNAは、特定の遺伝子の発現を抑制するための薬剤を調製するために適している。一本鎖オリゴリボヌクレオチドの使用との比較において、抑制が、dsRNAを使用したときには少なくとも1桁低い濃度で既に生じている。従って、本発明による使用により、特に効果的な薬剤の調製が可能になる。
【0033】
本発明はさらに、特定の標的遺伝子の発現を抑制するための薬剤を調製するための、二本鎖構造を有するオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の少なくとも1つをコードするためのベクターの使用を提供する。この場合、dsRNAの一方の鎖は、少なくとも複数のセグメントがこの標的遺伝子に対して相補的である領域Iを有する。ベクターの使用により、特に効果的な遺伝子治療が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
薬剤および使用の好都合な実施形態に関して、上記の特徴の説明が参照される。
【0035】
本発明の使用例を、図を参照して下記にさらに詳しく例示する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、T7ポリメラーゼおよびSP6ポリメラーゼを用いたインビトロ転写のためのプラスミドの概略図を示す。
【図2】図2は、8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動および臭化エチジウムで染色した後のRNAを示す。
【図3】図3は、Instant Imagerによる、7M尿素を含む8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動後の放射活性なRNA転写物の一例を示す。
【図4a】図4aは、マウス繊維芽細胞におけるテキサスレッドおよびYFPの蛍光を示す。
【図4b】図4a参照。
【図4c】図4a参照。
【図4d】図4a参照。
【図4e】図4a参照。
【実施例】
【0037】
使用例1:
転写抑制を、ヒトHeLa細胞からの核抽出物を用いたインビトロ転写システムにおける配列相同的なdsRNAによって検出した。この実験に対するDNAテンプレートは、BamHIで線状化されたプラスミドpCMV1200であった。
【0038】
テンプレートプラスミドの作製:
図1に示されるプラスミドを、dsRNAの酵素的合成において使用するために構築した。この目的のために、Promega(Madison、米国)によるHelaScribe(登録商標)核抽出物インビトロ転写キットの「陽性コントロールDNA」をDNAテンプレートとして用いたポリメラーゼ連鎖反(PCR)を最初に行った。使用したプライマーの1つには、配列番号1に示されているように、EcoRI切断部位およびT7RNAポリメラーゼプロモーターの配列が含まれた。もう一方のプライマーには、配列番号2に示されているように、BamHI切断部位およびSP6RNAポリメラーゼプロモーターの配列が含まれた。さらに、この2つのプライマーは、3’末端に、DNAテンプレートと同一である領域、またはDNAテンプレートに対して相補的である領域を有した。PCRを、Qiagen(Hilden、ドイツ)による「Taq PCR Coreキット」で製造者の説明書に従って行った。1.5mMのMgCl2、200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー、2.5UのTaqDNAポリメラーゼ、およびテンプレートとしての約100ngの「陽性コントロールDNA」を、100μlの容量のPCR緩衝液において用いた。94℃で5分間加熱することによってテンプレートDNAを最初に変性した後、増幅を、それぞれの場合において、94℃で60秒間の変性、プライマーの計算された融解温度よりも5℃低い温度で60秒間のアニーリング、および72℃で1.5分間〜2分間の重合の30サイクルで行った。72℃で5分間の最後の重合を行った後、反応液の5μlをアガロースゲル電気泳動により分析した。このように増幅されたDNAフラグメントの長さは400塩基対であった。340塩基対は「陽性コントロールDNA」に対応した。PCR産物を精製し、EcoRIおよびBamHIで加水分解し、そして再び精製した後、EcoRIおよびBamHIで同様に加水分解されたpUC18ベクターとの連結において用いた。その後、大腸菌XL1−blueを形質転換した。得られたプラスミド(pCMV5)は、5’末端にはT7プロモーターが隣接し、3’末端にはSP6プロモーターが隣接するDNAフラグメントを有する。プラスミドをBamHIで線状化することによって、プラスミドは、長さが340ヌクレオチドであり、配列番号3に示される一本鎖RNAのラン・オフ転写のためにT7RNAポリメラーゼとともにインビトロで用いることができる。プラスミドをEcoRIで線状化すれば、プラスミドは、SP6RNAポリメラーゼを用いたラン・オフ転写のために用いることができ、これにより相補鎖が得られる。本明細書中上記に概略された方法により、長さが23ヌクレオチドのRNAもまた合成された。この目的に対して、配列番号4に示されるDNAを、EcoRIおよびBamHIの切断部位を介してpUC18ベクターに連結した。
【0039】
プラスミドpCMV1200を、HeLa核抽出物を用いたインビトロ転写のためのDNAテンプレートとして構築した。この目的のために、HeLaScribe(登録商標)核抽出物インビトロ転写キットに含まれる陽性コントロールDNAの1191bpのEcoRI/BamHIフラグメントをPCRにより増幅した。増幅フラグメントは、828bpの「極初期」CMVプロモーターと363bpの転写可能なDNAフラグメントとを含む。PCR産物を「T突出」連結によりベクターpGEM−Tに連結した。BamHI切断部位がフラグメントの5’末端に存在する。プラスミドを、BamHIでの加水分解により線状化して、ラン・オフ転写におけるテンプレートとして使用した。
【0040】
相補的な一本鎖のインビトロ転写:
pCMV5プラスミドDNAをEcoRIまたはBamHIで線状化した。これを、SP6RNAポリメラーゼおよびT7RNAポリメラーゼをそれぞれ用いた相補的なRNA一本鎖のインビトロ転写のためのDNAテンプレートとして使用した。Promega(Madison、米国)による「Riboprobeインビトロ転写」システムをこの目的のために用いた。製造者の説明書に従い、2μgの線状化プラスミドDNAを100μlの転写緩衝液において40UのT7RNAポリメラーゼまたはSP6RNAポリメラーゼと37℃で5時間〜6時間インキュベーションした。続いて、DNAテンプレートを、2.5μlのRNase非含有DNase RQ1を加え、37℃で30分間インキュベーションすることによって分解した。転写反応液をH2Oで300μlにしてフェノール抽出により精製した。RNAを、150μlの7M酢酸アンモニウム[sic]および1125μlのエタノールを加えることによって沈殿させて、ハイブリダイゼーションに使用されるまで−65℃で保存した。
【0041】
RNA二本鎖の作製:
ハイブリダイゼーションのために、エタノール中に保存され、沈殿させた500μlの一本鎖RNAを遠心分離した。得られたペレットを乾燥し、80%ホルアミド、400mMのNaClおよび1mMのEDTAの存在下、30μlのPIPES緩衝液(pH6.4)に溶解した。それぞれの場合において、15μlの相補的な一本鎖を一緒にして、85℃で10分間加熱した。続いて、反応液を50℃で一晩インキュベーションして、室温に冷却した。
【0042】
ほぼ等モル量の2つの一本鎖のみをハイブリダイゼーションにおいて用いた。これは、一本鎖RNA(ssRNA)が混入物としてdsRNA調製物に含まれたためである。これらのssRNA混入物を除くために、反応液を、ハイブリダイゼーション後、一本鎖に特異的なリボヌクレアーゼのウシ膵臓RNaseAおよびAspergillus oryzae RNaseT1で処理した。RNaseAは、ピリミジンに特異的なエンドリボヌクレアーゼである。RNaseT1は、グアノシンの3’側を優先的に切断するエンドリボヌクレアーゼである。dsRNAは、これらのリボヌクレアーゼの基質ではない。RNase処理のために、Tris(pH7.4)、300mMのNaClおよび5mMのEDTAからなる300μlにおける反応液を、濃度が10mg/mlのRNaseAの1.2μlと、濃度が290μg/mlのRNaseT1の2μlとで処理した。反応液を30℃で1.5時間インキュベーションした。その後すぐ、これらのRNaseを、濃度が20mg/mlのプロテイナーゼKの5μlと、20%のSDSの10μlとを加えて、37℃で30分間インキュベーションすることによって変性させた。dsRNAをフェノール抽出により精製し、エタノールで沈殿させた。RNase消化の完全性を確認するために、2つのコントロール反応液を、ハイブリダイゼーション反応液と同様にssRNAを用いて処理した。
【0043】
乾燥ペレットを15μlのTE緩衝液(pH6.5)に溶解し、8%ゲルでの未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した。続いて、アクリルアミドゲルを臭化エチジウム溶液で染色し、水浴で洗浄した。図2には、UVトランスイルミネーターにおいて可視化されたRNAが示されている。レーン1に加えられたセンスRNA、およびレーン2に加えられたアンチセンスRNAは、レーン3に加えられたハイブリダイゼーション反応液のdsRNAとは異なる移動挙動を、選ばれた条件下で示した。レーン4およびレーン5にそれぞれ加えられたRNase処理されたセンスRNAおよびアンチセンスRNAは、視認されるバンドをもたらさなかった。このことは、一本鎖RNAが完全に分解されたことを示している。レーン6に加えられたハイブリダイゼーション反応液のRNase処理dsRNAは、RNase処理に対して耐性である。レーン3に加えられたdsRNAと比較して、未変性ゲルにおいてより早く移動するバンドは、ssRNAを含まないdsRNAに由来する。優勢な主バンドに加えて、より早く移動するより弱いバンドが、RNase処理の後に認められる。
【0044】
ヒト核抽出物を用いたインビトロ転写試験:
Promega(Madison、米国)によるHeLaScribe(登録商標)核抽出物インビトロ転写キットを使用して、プラスミドpCMV1200に存在し、かつその「陽性コントロールDNA」に対して相同的である上記DNAフラグメントの転写効率を、配列相同性を有するdsRNA(dsRNA−CMV5)の存在下で測定した。また、配列相同性を有さず、黄色蛍光蛋白質(YFP)遺伝子に対応するdsRNA(dsRNA−YFP)の影響も調べた。このdsRNAは、配列相同性を有するdsRNAと同様に作製された。このdsRNAの鎖の配列は配列番号5に見出され得る。プラスミドpCMV1200をラン・オフ転写のテンプレートとして使用した。このプラスミドは、真核生物RNAポリメラーゼIIによって認識される「極初期」サイトメガロウイルスプロモーターと、転写可能なDNAフラグメントとを有する。転写を、転写に必要な蛋白質をすべて含有するHeLa核抽出物によって行った。[・−32P]rGTPを転写反応液に加えることによって、放射能標識された転写物が得られた。使用した[・−32P]rGTPは、比活性が400Ci/mmol(10mCi/ml)であった。転写緩衝液において、3mMのMgCl2、それぞれが400μMのrATP、rCTP、rUTP、16μMのrGTP、0.4μMの[・−32P]rGTP、ならびに実験に依存して、1fmolの線状化プラスミドDNA、および様々な量のdsRNAを反応毎に用いた。各バッチを8.5μlの容量にH2Oで作製した。反応液を注意深く混合した。転写を開始させるために、4UのHeLa核抽出物を4μlの容量で加え、30℃で60分間インキュベーションした。反応を、30℃に暖められた87.5μlの停止混合液を加えることによって停止させた。蛋白質を除くために、反応液を、TE緩衝液(pH5.0)を飽和させた100μlのフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1 v/v/v)で処理した。反応液を1分間激しく混合した。相分離のために、反応液を12000rpmで約1分間遠心分離して、上部相を新しい反応容器に移した。それぞれの反応液を250μlのエタノールで処理した。反応液を十分に混合し、ドライアイス/メタノールにおいて少なくとも15分間インキュベーションした。RNAを沈殿させるために、反応液を40℃において12000rpmで20分間遠心分離した。上清を捨てた。ペレットを真空下で15分間乾燥して、10μlのH2Oに再懸濁した。それぞれの反応液を10μlの変性ローディング緩衝液で処理した。遊離GTPを、7M尿素を含む8%ゲルでの変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、形成された転写物から分離した。HeLa核抽出物を用いて転写させたときに形成されたRNA転写物を、変性ローディング緩衝液中で90℃で10分間加熱して、10μl部分を、新しく洗浄したポケットに直ちに加えた。電気泳動を40mAで行った。転写時に形成された放射活性なssRNAの量を、電気泳動後、Instant Imagerの助けによって分析した。
【0045】
図3には、Instant Imagerによって示された、代表的な試験から得られた放射活性なRNAが示されている。下記の転写反応液から得られたサンプルを加えた:
レーン1:テンプレートDNAなし、dsRNAなし;
レーン1:50ngのテンプレートDNA、dsRNAなし;
レーン3:50ngのテンプレートDNA、0.5μgのdsRNA YFP;
レーン4:50ngのテンプレートDNA、1.5μgのdsRNA YFP;
レーン5:50ngのテンプレートDNA、3μgのdsRNA YFP;
レーン6:50ngのテンプレートDNA、5μgのdsRNA YFP;
レーン7:テンプレートDNAなし、1.5μgのdsRNA YFP;
レーン8:50ngのテンプレートDNA、dsRNAなし;
レーン9:50ngのテンプレートDNA、0.5μgのdsRNA CMV5:
レーン10:50ngのテンプレートDNA、1.5μgのdsRNA CMV5:
レーン11:50ngのテンプレートDNA、3μgのdsRNA CMV5:
レーン12:50ngのテンプレートDNA、5μgのdsRNA CMV5:
【0046】
転写物の量は、dsRNAを含まないコントロール反応液、および配列相同性を有しないdsRNA YFPを用いた反応液と比較して、配列相同性を有するdsRNAの存在下で著しく減少することが明らかにされた。レーン2における陽性コントロールは、放射活性な転写物が、HeLa核抽出物を用いたインビトロ転写で形成されたことを示している。この反応液は、dsRNAの存在下でインキュベーションされた転写反応液と比較するために使用される。レーン3〜6は、配列非特異的なdsRNA YFPの添加は形成された転写物の量に何ら影響しなかったことを示している。レーン9〜12は、1.5μg〜3μgの間の量の配列特異的なdsRNA CMV5の添加は形成された転写物の量を減少させていることを示している。認められた影響が、dsRNAではなく、dsRNAの調製時に偶発に持ち込まれたと考えられる何らかの混入物に基づいているということを除外するために、さらなる対照実験を行った。一本鎖RNAを上記のように転写し、続いてRNase処理に付した。ssRNAが完全に分解されたことが、未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって明らかにされた。この反応液を、ハイブリダイゼーション反応液のように、フェノール抽出およびエタノール沈殿に付し、続いてPE緩衝液に溶解した。これにより、RNAを含有しないが、dsRNAと同じ酵素および緩衝液で処理されたサンプルが得られた。レーン8は、このサンプルの添加は転写に対する影響を何ら有していないことを示している。従って、配列特異的なdsRNAを添加したときの転写物の減少は、明らかにdsRNA自体の結果であり得る。ヒトの転写システムにおけるdsRNAの存在下での遺伝子転写量の減少は、問題とした遺伝子の発現が抑制されたことを示している。この作用は、dsRNAによってもたらされる新規な機構によるものであり得る。
【0047】
使用例2:
これらのインビボ実験に使用される試験システムはマウスの繊維芽細胞株NIH3T3(ATCC CRL−1658)であった。YFP遺伝子をマイクロインジェクションによって核内に導入した。YFPの発現を、配列相同性を有する同時にコトランスフェクションされたdsRNAの影響のもとで調べた。このdsRNA YFPは、315bpの長さにわたってYFP遺伝子の5’領域との相同性を示す。dsRNA YFPの鎖のヌクレオチド配列は配列番号5に示される。蛍光顕微鏡による評価を、形成されたYFPの緑黄色蛍光に関して、インジェクションの3時間後に行った。
【0048】
テンプレートプラスミドの構築、およびdsRNAの調製:
プラスミドを、T7およびSP6のインビトロ転写によってYFP dsRNAを産生するためのテンプレートとして作用するように、使用例1に記載されるのと同じ原理に従って構築した。配列番号6に示されるプライマーEco_T7_YFPおよび配列番号7に示されるプライマーBam_SP6_YFPを使用して、所望する遺伝子フラグメントをPCRにより増幅し、上記記載と同様に使用して、dsRNAを調製した。得られたdsRNA YFPは、配列非特異的なコントロールとして使用例1で使用されたdsRNAと同一である。
【0049】
配列番号8に示されているRNAの3’末端において、C18リンカー基を介して相補的なRNAの5’末端に化学的に連結されたdsRNAを調製した(L−dsRNA)。この目的のために、ジスルフィド架橋で修飾されたシントンを使用した。3’末端シントンは、ジスルフィド架橋を介して脂肪族リンカー基により3’炭素を介して固体支持体に結合される。1つのオリゴリボヌクレオチド3’末端シントンに対して相補的である相補的なオリゴリボヌクレオチドの5’末端シントンにおいては、5’−トリチル保護基がさらなる脂肪族リンカーおよびジスルフィド架橋を介して結合される。2つの一本鎖の合成、保護基の除去および相補的なオリゴリボヌクレオチドのハイブリダイゼーションを行った後、形成されたチオール基を空間的に接近させる。一本鎖は、その脂肪族リンカーおよびジスルフィド架橋を介して酸化によって互いに結合される。この後、HPLCの助けによって精製が行われる。
【0050】
細胞培養物の調製:
細胞を、7.5%CO2雰囲気のもと、37℃で、培養皿において、4.5g/lのグルコース、10%のウシ胎児血清を補充したDMEMでインキュベーションし、コンフルエンスに達する前に継代した。細胞をトリプシン/EDTAによって剥がした。マイクロインジェクション用に調製するために、細胞をペトリ皿に移し、微小コロニーが形成されるまでさらにインキュベーションした。
【0051】
マイクロインジェクション:
マイクロインジェクションのために、培養皿をインキュベーターから約10分間取り出した。約50個の核を、Carl Zeiss(Gottingen、ドイツ)から得られるAISマイクロインジェクションシステムを使用して、印を付けられた領域内に反応あたり1個づつ注入した。続いて、細胞をさらに3時間インキュベーションした。マイクロインジェクションのために、先端の直径が0.5μm未満であるHilgenberg GmbH(Malsfeld、ドイツ)から得られるホウケイ酸塩ガラスキャピラリーを準備した。マイクロインジェクションを、ナリシゲ科学機械(東京、日本)から得られるマイクロマニピュレーターを使用して行った。注入時間は0.8秒であり、圧力は約100hPaであった。トランスフェクションを、ベクターpcDNA3内にYFP遺伝子とともに約800bpのBamHI/EcoRIフラグメントを含有するプラスミドpCDNA−YFPを使用して行った。核に注入されたサンプルには、0.01μg/μlのpCDNA−YFPと、デキストラン−7000に結合させたテキサスレッドとが、14mMのNaCl、3mMのKCl、10mMのKPO4[sic](pH7.5)に含まれた。約100plのRNAを、1μMの濃度で、あるいはL−dsRNAの場合には375μMの濃度でさらに加えた。
【0052】
細胞を、568nmのテキサスレッドの励起波長または488nmのYFPの励起波長の光で励起される蛍光顕微鏡で調べた。個々の細胞をデジタルカメラにより記録した。図4a〜4eにはNIH3T3細胞の結果が示されている。図4aに示される細胞にはセンス−YFP−ssRNAが注入され、図4bではアンチセンス−YFP−ssRNAが注入され、図4cではdsRNA−YFPが注入され、図4dではRNAは注入されず、図4eではL−dsRNAが注入された。
【0053】
左側の視野には、それぞれの場合、568nmでの励起による細胞の蛍光が示されている。488nmの励起における同じ細胞の蛍光が右側に示されている。示された細胞のすべてのテキサスレッドの蛍光は、注入液が核内に問題なく加えられたこと、および注入が成功した細胞は3時間後も依然として生存していたことを明らかにしている。死細胞はテキサスレッドの蛍光をもはや示さなかった。
【0054】
図4aおよび図4bのそれぞれの右側視野は、一本鎖RNAが核内に注入されたとき、YFPの発現が認められるほど抑制されなかったことを示している。図4cの右側視野は、dsRNA−YFPを注入した後、YFPの蛍光がもはや検出できなかった細胞を示している。図4dは、コントロールとして、RNAが注入されなかった細胞を示している。図4eに示される細胞は、YFP遺伝子に対して配列相同性を有する領域を示すL−dsRNAが注入されたためにもはや検出できないYFPの蛍光を示している。この結果は、より短いdsRNAでさえ、一本鎖を化学的に結合することによって二本鎖が安定化された場合、哺乳動物における遺伝子発現を特異的に抑制するために使用できることを明らかにしている。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
[参考文献]




【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中の所定の標的遺伝子の発現を阻害する方法であって、15から49の塩基対を有する二本鎖構造のオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)が当該細胞へ導入され、当該dsRNAの一方の鎖は、少なくとも一部が当該標的遺伝子に相補的な、49以下の連続的ヌクレオチド対を有する領域Iを有しており、二本鎖構造内部の相補的領域IIが、二つの分離したRNA一本鎖により形成されるものである方法であり、手術、治療又は診断目的でヒトの身体で実施しない方法。
【請求項2】
前記のdsRNAが、ミセル構造、好ましくはリポソームにより封入されているものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のdsRNAが、天然のウイルスキャプシド、又は化学的若しくは酵素学的に産生された人工のキャプシド、又はそれに由来する構造により封入されているものである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の標的遺伝子が、真核細胞内で発現されるものである請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記の標的遺伝子が、以下の群:
癌遺伝子、サイトカイン遺伝子、Id-蛋白質遺伝子、 発生遺伝子、プリオン遺伝子
から選択されるものである請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の標的遺伝子が、病原性の生物、好ましくはプラスモディウムにおいて発現されるものである請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の標的遺伝子が、ウイルス又はウイロイドの一部であるものである請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記のウイルス又はウイロイドが、ヒトに対して病原性であるウイルス又はウイロイドであるものである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記のウイルス又はウイロイドが、動物に対して病原性であるか又は植物病原性であるウイルス又はウイロイドであるものである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記のdsRNAの一部が、二本鎖の形態をとるものである請求項1乃至9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記のdsRNAの末端が修飾されて、細胞内での分解又は一本鎖への分離が生じないようになっているものである請求項1乃至10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
ヌクレオチド対により形成される、前記の相補的領域IIの結合が、少なくとも1の、好ましくは2の更なる化学結合により増大しているものである請求項1乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記の化学結合が、共有若しくはイオン結合、水素結合、 疎水性相互作用、好ましくはファンデルワールス若しくはスタッキング相互作用、又は金属イオン配位により形成されるものである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記の化学結合が、前記の相補的領域IIの少なくとも一方、好ましくは両方の末端において生じているものである請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記の化学結合が、一以上の化合物群、好ましくは:
ポリ (オキシホスフィニコオキシ-1,3-プロパンジオール)鎖及び/又はポリエチレングリコール鎖により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記の化学結合が、プリンの代わりに、前記の相補的領域IIにおいて使用されるプリン類縁体により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記の化学結合が、前記の相補的領域IIに導入されたアザベンゼン単位により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記の化学結合が、ヌクレオチドの代わりに、前記の相補的領域IIにおいて使用される分枝したヌクレオチド類縁体により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
以下の群:
メチレンブルー;二官能性基、好ましくはビス(2-クロロエチル)アミン;N-アセチル-N’-(p-グリオキシル-ベンゾイル) シスタミン;4-チオウラシル;ソラレン
の少なくとも1を使用して前記の化学結合を生成するものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記の化学結合が、前記の二本鎖領域の末端にあるチオホスホリル基により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記の化学結合が、前記の二本鎖領域の末端にある三重らせん結合により形成されるものである請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記の相補的領域II内の前記のdsRNAのヌクレオチドの2’-ヒドロキシル基の少なくとも1つが、化学基、好ましくは2’-アミノ基又は2’-メチル基により置換されているものである請求項1乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記の相補的領域IIの少なくとも1の鎖中の少なくとも 1のヌクレオチドが、好ましくは2’-O、4’-C-メチレン架橋により、化学的に修飾された糖環を有する、「ロックされたヌクレオチド」であるものである請求項1乃至22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記のdsRNAが、少なくとも1のウイルス外殻蛋白質であって、ウイルス起源のもの、それに由来するもの、又は合成されたものに、結合しているか、会合しているか、又は囲まれているものである請求項1乃至23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記の外殻蛋白質が、ポリオーマウイルス由来であるものである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記の外殻蛋白質が、ポリオーマウイルスのウイルス蛋白質1(VP1)及び/又はウイルス蛋白質2(VP2)を含むものである請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
キャプシド又はキャプシドタイプの構造が、外殻蛋白質より形成される場合に、1の側面が当該キャプシド又はキャプシドタイプの構造の内部に面しているものである請求項24乃至26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記のdsRNA鎖が、前記の標的遺伝子の第一次RNA転写産物又はプロセッシングされたRNA転写産物に相補的であるものである請求項1乃至27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記の細胞が、脊椎動物の細胞、又はヒトの細胞であるものである請求項1乃至28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
互いに異なる少なくとも2つのdsRNAを、前記の細胞内に導入し、それぞれのdsRNAの1の鎖の少なくとも一部が、それぞれの場合に、少なくとも2つの異なる標的遺伝子のうちの一つに相補的であるものである請求項1乃至29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記の標的遺伝子の1つが、PKR遺伝子であるものである請求項1乃至30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記のdsRNAが、15から21の塩基対からなる請求項1乃至31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記の二本鎖構造が、一本鎖の化学結合によって安定化されているものである請求項1乃至32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
15から49の塩基対を有する二本鎖構造を有するオリゴリボヌクレオチド(dsRNA)の、哺乳類細胞中の所定の標的遺伝子の発現を阻害するための薬剤の製造のための使用であって、当該dsRNAの1の鎖は、少なくとも一部が当該標的遺伝子に相補的な、49以下の連続的ヌクレオチド対を有する領域Iを有しており、二本鎖構造内部の相補的領域IIが、二つの分離したRNA一本鎖により形成されるものである使用。
【請求項35】
前記のdsRNAが、ミセル構造、好ましくはリポソームにより封入されているものである請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記のdsRNAが、天然のウイルスキャプシド、又は化学的若しくは酵素学的に産生された人工のキャプシド、又はそれに由来する構造により封入されているものである請求項34又は35に記載の使用。
【請求項37】
前記の標的遺伝子が、真核細胞内で発現できるものである請求項34乃至36の何れか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記の標的遺伝子が、以下の群:
癌遺伝子、サイトカイン遺伝子、Id-蛋白質遺伝子、発生遺伝子、プリオン遺伝子
から選択されるものである請求項34乃至38の何れか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記の標的遺伝子が、病原性の生物、好ましくはプラスモディウムにおいて発現できるものである請求項34乃至38の何れか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記の標的遺伝子が、ウイルス又はウイロイドの一部であるものである請求項34乃至39の何れか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記のウイルス又はウイロイドが、ヒトに病原性であるウイルス又はウイロイドであるものである請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記のウイルス又はウイロイドが、動物に対して病原性であるか又は植物病原性であるウイルス又はウイロイドであるものである請求項40に記載の使用。
【請求項43】
前記のdsRNAの一部が、二本鎖の形態をとるものである請求項34乃至42の何れか一項に記載の使用。
【請求項44】
前記のdsRNAの末端が修飾されて、細胞内での分解又は一本鎖への分離が生じないようになっているものである請求項34乃至43の何れか一項に記載の使用。
【請求項45】
ヌクレオチド対により形成される、前記の相補的領域IIの結合が、少なくとも1の、好ましくは2の更なる化学結合により増大しているものである請求項34乃至44の何れか一項に記載の使用。
【請求項46】
前記の化学結合が、共有若しくはイオン結合、水素結合、 疎水性相互作用、好ましくはファンデルワールス若しくはスタッキング相互作用、又は金属イオン配位により形成されるものである請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記の化学結合が、前記の相補的領域IIの少なくとも一方、好ましくは両方の末端において生じているものである請求項45又は46に記載の使用。
【請求項48】
前記の化学結合が、一以上の化合物群、好ましくは:
ポリ (オキシホスフィニコオキシ-1,3-プロパンジオール)鎖及び/又はポリエチレングリコール鎖により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記の化学結合が、プリンの代わりに、前記の相補的領域IIにおいて使用されるプリン類似体により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項50】
前記の化学結合が、前記の相補的領域IIに導入されたアザベンゼン単位により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記の化学結合が、ヌクレオチドの代わりに、前記の相補的領域IIにおいて使用される分枝したヌクレオチド類縁体により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項52】
以下の群:
メチレンブルー;二官能性基、好ましくはビス(2-クロロエチル)アミン;N-アセチル-N’-(p-グリオキシル-ベンゾイル) シスタミン;4-チオウラシル;ソラレン
の少なくとも1を使用して前記の化学結合を生成するものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記の化学結合が、前記の二本鎖領域の末端にあるチオホスホリル基により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記の化学結合が、前記の二本鎖領域の末端にある三重らせん結合により形成されるものである請求項45乃至47の何れか一項に記載の使用。
【請求項55】
前記の二本鎖構造内の前記のdsRNAのヌクレオチドの2’-ヒドロキシル基の少なくとも1つが、化学基、好ましくは2’-アミノ基又は2’-メチル基により置換されているものである請求項34乃至54の何れか一項に記載の使用。
【請求項56】
前記の相補的領域IIの少なくとも1の鎖中の少なくとも 1のヌクレオチドが、好ましくは2’-O、4’-Cメチレン架橋により、化学的に修飾された糖環を有する、「ロックされたヌクレオチド」であるものである請求項34乃至55の何れか一項に記載の使用。
【請求項57】
前記のdsRNAが、少なくとも1のウイルス外殻蛋白質であって、ウイルス起源のもの、それに由来するもの、又は合成されたものに、結合しているか、会合しているか、又は囲まれているものである請求項34乃至56の何れか一項に記載の使用。
【請求項58】
前記の外殻蛋白質が、ポリオーマウイルス由来であるものである請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記の外殻蛋白質が、ポリオーマウイルスのウイルス蛋白質1(VP1)及び/又はウイルス蛋白質2(VP2)を含むものである請求項57又は58に記載の使用。
【請求項60】
キャプシド又はキャプシドタイプの構造が、外殻蛋白質より形成される場合に、1の側面が当該キャプシド又はキャプシドタイプの構造の内部に面しているものである請求項57乃至59の何れか一項に記載の使用。
【請求項61】
前記のdsRNAの1の鎖が、前記の標的遺伝子の第一次RNA転写産物又はプロセッシングされたRNA転写産物に相補的であるものである請求項34乃至60の何れか一項に記載の使用。
【請求項62】
前記の細胞が、脊椎動物の細胞、又はヒトの細胞であるものである請求項34乃至61の何れか一項に記載の使用。
【請求項63】
互いに異なる少なくとも2つのdsRNAを使用し、それぞれのdsRNAの1の鎖の少なくとも一部が、それぞれの場合に、少なくとも2つの異なる標的遺伝子の一つに相補的であるものである請求項34乃至62の何れか一項に記載の使用。
【請求項64】
前記の標的遺伝子の1つが、PKR遺伝子であるものである請求項34乃至63の何れか一項に記載の使用。
【請求項65】
前記の薬剤を、生物の間質内又は血流内に注射して治療を行うものである請求項34乃至64の何れか一項に記載の使用。
【請求項66】
前記の二本鎖RNAが、細菌又は微生物内へ取り込まれるものである請求項34乃至65の何れか一項に記載の使用。
【請求項67】
前記のdsRNAが、15から21の塩基対からなる請求項34乃至66の何れか一項に記載の使用。
【請求項68】
前記の二本鎖構造が、一本鎖の化学結合によって安定化されているものである請求項34乃至67の何れか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図4e】
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【公開番号】特開2013−74901(P2013−74901A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6076(P2013−6076)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−285705(P2009−285705)の分割
【原出願日】平成12年1月29日(2000.1.29)
【出願人】(506025316)アルニラム・ヨーロップ・アーゲー (11)
【Fターム(参考)】