説明

特有の青−紫カットオフおよび青色光透過特徴を備えた眼内レンズ

改良された光透過特徴を有する眼科デバイス材料が開示される。この材料は、特定のUV吸収剤および青色光吸収発色段の組み合わせを含む。具体的には、重合可能な黄色色素と組み合わせて特定のベンゾトリアゾールUV吸収剤を用いることにより、IOLの光吸収特徴は、青−紫カットオフを提供するように改変され得(400nm〜430nm範囲において〜1%T)、そして500nm〜400nmの青色光を減衰する透過性を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、改良された眼科デバイス材料に関する。特に、本発明は、改良された光透過特徴を有する移植可能な眼科レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
過去においては、oMTP(化合物1)のような、ベンゾトリアゾールUV吸収剤が、環境中のUV照射からの保護を提供するために眼内レンズ(IOL)に添加されていた。代表的には、UV吸収剤は、重合の間のIOL材料中への共有結合性組み込みのために、それらの化学的構造中にビニル、アクリレートまたはメタクリレート官能基のような重合可能な部分を所有している。これらベンゾトリアゾールUV吸収剤の大部分は、濃度に依存して390nm〜410nmの範囲において1%〜10%の間のUV透過カットオフを提供する。
【0003】
【化1】

より最近、重合可能な黄色の色素がまた、有害な青色光照射を吸収するためにIOLに添加されている。例えば、特許文献1および2を参照のこと。大部分の黄色色素は、青色光を広い波長範囲にわたって吸収し、そして用いられる黄色色素の濃度に依存して通常500〜400nmの青色光の段階的減衰をもたらす。青−紫領域における透過スペクトルのより鋭いカットオフが所望される場合、従来の黄色色素は、その領域において鋭いカットオフを提供できなかった。また、450nmより上の波長をほとんど吸収しないか、または吸収せず、約400nm〜約450nmの間の波長を選択的にフィルターする高度に選択的な紫色光透過フィルターを有する眼科デバイスを開示する特許文献3を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,470,932号明細書
【特許文献2】米国特許第5,543,504号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0243272号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
IOLとしての使用のために特に適するが、コンタクトレンズ、隔膜補綴具、または隔膜リングまたは隔膜インレーのようなその他の眼科デバイスとしてもまた有用である眼科デバイス材料が発見された。これらの材料は、特定のUV吸収剤および重合可能な黄色色素の組み合わせを含む。これら材料は、天然のヒト結晶レンズと比較して、特に短波長青色光領域において改良された光透過特徴を有する。
【0006】
重合可能な黄色色素と組み合わせて特定のベンゾトリアゾールUV吸収剤を用いることにより、IOLの光吸収特徴は、青−紫カットオフを提供するように改変され得(400nm〜430nm範囲において〜1%T)、そして500nm〜400nmの青色光を減衰する透過性を提供し得る。本発明の材料は、(厚みが約0.8mm〜1mmの矩形フィルムまたは「スラブ」材料サンプルに基づく)以下の光透過特徴を有する。それらは、UV−可視スペクトルの青−紫領域(400nm〜440nm)内に透過カットオフを有する。この青−紫カットオフは、1%および10%透過値について達成された波長によって特徴付けられる。従って、好ましい青−紫カットオフ波長は、1%Tカットオフについて410nm〜430nmであり、そして10%Tカットオフについて420nm〜440nmである。好ましい青−紫カットオフのこれらの範囲はまた、表1に提供される。
【0007】
中央青色光領域(440nm〜460nm)を通る透過特徴は、高レベルの透過光(>70%)と吸収光との間の大部分の遷移をともなう。440nm、450nmおよび460nmの透過の範囲は表1に列挙される。この領域における柔軟性は、若いヒト水晶体への接近を許容することを可能にするか、または損なわれた網膜機能をもつ患者の利益のために最大保護を提供することを可能にする。
【0008】
最後に、高透過部分(470nm〜500nm)は、大部分の光が、可能な光の最大透過まで眼内レンズを通って透過することを可能にする、青色光領域の区域である。青色スペクトルのこの部分は、短波長青−紫色光より網膜により有害でなく、そしてより高い透過が許される。高透過青色光領域のための好ましい特徴の範囲がまた、表1に提供される。
【0009】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の眼科デバイス材料の透過率を示す。
【図2】図2は、実施例2の眼科デバイス材料の透過率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
そうでないことが示されなければ、すべての成分量は、%(w/w)基準(「wt.%」)で呈示される。
【0012】
その他であることが特定されなければ、「カットオフ」は、光透過が1%を超えない波長を意味する。「1%カットオフ」は、光透過が1%を超えない波長を意味する。「10%カットオフ」は、光透過が10%を超えない波長を意味する。
【0013】
代表的なベンゾトリアゾールUV吸収剤またはベンゾフェノンUV吸収剤は、UV吸収剤濃度に依存して、IOL材料について400nmより小さい波長で鋭いカットオフを提供する。しかし、特定の置換された2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールUV吸収剤は、スペクトルの短波長可視領域(410nm〜430nm)における透過カットオフを提供し得、そしてまたUV照射(<400nm)からの保護を提供する。本発明の眼科デバイス材料における使用のために適切なUV/短波長可視光吸収剤は、式(I)によって表される。
【0014】
【化2】

ここで、式(I)について
は、ハロゲン、OH、C〜C12アルキルオキシ、必要に応じて置換されたフェノキシ、または必要に応じて置換されたナフチルオキシであり、ここで、必要に応じた置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、OH、−(CHCHO)−、または−(CHCH(CH)O)−であり;
は、C〜C12アルキル、(CHCHO)、(CHCH(CH)O)、またはCHCHCH(Si(CHO)Si(CHCHCHCHであり;
Xは、Rが(CHCHO)または(CHCH(CH)O)であるときはなく、そうでなければXは、O、NRまたはSであり;
は、ないか、C(=O)、C(=O)C2j、C〜Cアルキル、フェニル、またはC〜Cアルキルフェニルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、H、C〜Cアルキル、またはフェニルであり;
は、HまたはC〜C12アルキルであり;
mは、1〜9であり;
nは、2〜10であり;そして
jは、1〜6である。
【0015】
好ましくは、式(I)において、
は、Cl、Br、C〜Cアルコキシ、またはフェノキシであり;
は、C〜Cアルキルであり;
Xは、OまたはNRであり;
は、C(=O)またはC〜Cアルキルフェニルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hであり;そして
は、C〜C12t−アルキルである。
【0016】
最も好ましくは、式(I)において、
は、メトキシであり;
は、C〜Cアルキルであり;
Xは、Oであり;
は、C(=O)であり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hであり;そして
は、t−ブチルである。
【0017】
式(I)の化合物は、当該技術分野で公知の方法を用いて作製され得る。式(I)の2つの好ましい化合物は、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’[3’’−(4’’’−ビニルベンジルオキシ)プロポキシ]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール;
【0018】
【化3】

および2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’’−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール;
【0019】
【化4】

である。
【0020】
本発明のデバイス材料は、中波長〜長波長(430nm〜500nm)青色光を減衰する重合可能な黄色色素を含む。多くのこのような黄色色素は公知であり、そして、例えば、この色素は以下の構造を有し
【0021】
【化5】

そして米国特許第7,098,283号;同第6,878,792号;同第6,320,008号;および同第6,310,215号に記載のようなものである。本発明のデバイス材料における使用のために適切な好ましい重合可能な黄色色素は式(II)のようなものである:
【0022】
【化6】

ここで、式(II)について
R’およびR’’は、独立にHまたはCHであり;
およびRは、独立にH、C〜C20アルキル、OCH、OC、OC、またはOCであり;
iおよびjは、独立に1または2であり;
、R、R10およびR11は、独立に、単独または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素かな成る10原子までのアクリル有機スペーシング基であり;
kおよびmは、独立に1〜6であり;
lおよびnは、独立に0〜6であり;
Xは、0、NH、NRであり;そして
は、C〜C10アルキルである。
【0023】
式(II)の最も好ましい化合物は、N,N−ビス−(2−メタクロイルオキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリン:
【0024】
【化7】

である。
【0025】
なおより好ましいのは、式(III)の重合可能な黄色色素であり:
【0026】
【化8】

ここで、式(III)について
Rは、HまたはCHであり;
は、H、C〜C20アルキル、OCH、OC、OCまたはOCであり;
aおよびbは、独立に1または2であり;
は、R、OH、NH、NHR、N(R、SH、SR、OR、OSi(R、またはSi(Rであり;
は、上記色素部分に直接結合され、そして6炭素原子までのアルキル基からなり;
は、単独または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素を含む10原子までのアクリル有機スペーシング基であり;
Xは、O、NH、NRであり;
は、C〜C10アルキルであり;
d、e、g、およびhは、独立に0〜4の整数であり;そして
cおよびfは、独立に1〜4の整数である。
【0027】
式(III)の最も好ましい化合物は、N−2−[3−(2’−メチルフェニルアゾ)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリルアミド:
【0028】
【化9】

である。
【0029】
式(II)および(III)の重合可能な黄色色素は公知であり、そして米国特許第5,470,932号に記載され、その全体の内容は、本明細書によって参考として援用される。
【0030】
本発明の眼科デバイス材料は、この材料が上記で規定されたような必要な透過特徴を有するようにする所定量の式(I)のUV吸収剤および所定量の重合可能な黄色色素を含む。一般に、これら材料は、0.5%〜4%、好ましくは1%〜3%、そして最も好ましくは1.5%〜2.5%の量の式(I)のUV/短波長可視光吸収剤を含む。上記材料は、一般に、0.001%〜0.5%、好ましくは0.01%〜0.1%、そして最も好ましくは0.01%〜0.05%の量の重合可能な黄色色素を含む。
【0031】
多くのデバイス形成モノマーは当該技術分野で公知であり、そして、とりわけ、アクリル含有モノマーおよびシリコーン含有モノマーの両方を含む。例えば、米国特許第7,101,949号;同第7,067,602号;同第7,037,954号;同第6,872,793号;同第6,852,793号;同第6,846,897号;同第6,806,337号;同第6,528,602号;および同第5,693,095号を参照のこと。IOLの場合には、任意の公知のIOLデバイス材料が、本発明の組成物における使用に適切である。好ましくは、この眼科デバイス材料は、アクリルデバイス形成モノマーまたはメタクリルデバイス形成モノマーを含む。より好ましくは、このデバイス形成モノマーは、式(IV)のモノマーを含む:
【0032】
【化10】

ここで:
Aは、H、CH、CHCH、CHOHであり;
Bは、(CHまたは[O(CHであり;
Cは、(CHであり;
mは、2〜6であり;
zは、1〜10であり;
Yは、ないか、O、S、またはNR’であり、但しYがO、S、またはNR’であるとき、そのときはBは(CHであり;
R’は、H、CH、Cn’2n’+1(n’=1〜10)、イソ−OC、C、またはCHであり;
wは、0〜6であり、但しm+w≦8であり;そして
Dは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C、CHまたはハロゲンである。
【0033】
式(IV)の好ましいモノマーは、AがHまたはCHであり、Bが(CHであり、mが2〜5であり、YがないかまたはOであり、wが0〜1であり、そしてDがHである。最も好ましいのは、2−フェニルエチルメタクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;5−フェニルペンチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;および3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;およびそれらの対応するアクリレートである。
【0034】
式(IV)のモノマーは公知であり、そして公知の方法によって作製され得る。例えば、所望のモノマーの共役アルコールは、反応ベッセル中で、メチルメタクリレート、テトラブチルチタネート(触媒)、および4−ベンジルオキシフェノールのような重合阻害剤と合わせられ得る。この容器は、次いで、加熱されて反応を容易にし、そして反応を完了に駆動するために反応副産物を蒸留して除去し得る。代替の合成スキームは、メタクリル酸を共役アルコールに添加すること、およびカルボジイミドで触媒すること、または上記共役アルコールを、メタクリロイルクロライドおよびピリジンまたはトリエチルアミンのような塩基と混合することを含む。
【0035】
本発明の材料は、一般に、合計、少なくとも約75%の、好ましくは少なくとも約80%のデバイス形成モノマーを含む。
【0036】
デバイス形成モノマー、式(I)のUV吸収剤、および重合可能な黄色色素に加え、本発明のデバイス材料は、架橋剤を含む。本発明のデバイス材料で用いられる架橋剤は、1つ以上の不飽和基を有する任意の末端がエチレン性の不飽和化合物であり得る。適切な架橋剤は、例えば:エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CHここでp=1〜50;およびCH=C(CH)C(=O)O(CHO−C(=O)C(CH)=CHここでtは3〜20;およびそれらの対応するアクリレートを含む。好ましい架橋モノマーは、CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CHであり、ここでpは、数平均分子量が約400、約600、または約1000であるような値である。
【0037】
一般に、架橋成分の合計量は、少なくとも0.1重量%であり、そして残りの成分の個性および濃度ならびに所望の物理的性質に依存して、約20重量%までの範囲であり得る。架橋成分の好ましい濃度範囲は0.1%〜17%(w/w)である。
【0038】
本発明のデバイス材料のための適切な重合開始剤は、熱開始剤および光開始剤を含む。好ましい熱開始剤は、t−ブチル(ペルオキシ−2−エチル)ヘキサノエートおよびジ−(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Akzo Chemicals Inc.、Chicago、IllinoisからPerkadox(登録商標)16として市販さている)のようなペルオキシフリーラジカル開始剤を含む。開始剤は、代表的には、約5%(w/w)以下の量で存在する。フリーラジカル開始剤は、化学的に形成されるポリマーの一部にならないので、開始剤の合計量は、通例、その他の成分の量を決定するとき含まれない。
【0039】
好ましくは、上記成分およびそれらの比率は、本発明のデバイス材料が、本発明の材料を4mm以下の切開を通って挿入されるべきIOLにおける使用に特に適するようにさせる以下の性質を所有するように選択される。簡便のために、このデバイス材料は、レンズ材料と称され得る。
【0040】
このレンズ材料は、好ましくは、乾燥状態において、Abbe屈折計によって589nm(Na光源)で測定されるとき少なくとも約1.50の屈折率を有する。所定の光学部の直径について、1.50未満の屈折率を有する材料から作製された光学部(optics)は、より高い屈折率を有する材料から作製される同じ屈折力の光学部より必然的により厚い。従って、約1.50より低い屈折率を有する材料から作製されたIOL光学部は、一般に、IOL移植のために相対的により大きい切開を必要とする。
【0041】
レンズ材料の褶曲(folding)および非褶曲(unfolding)特徴に影響するレンズ材料のガラス転移温度(「Tg」)は、好ましくは約25℃未満であり、そしてより好ましくは約15℃未満である。Tgは、示差走査熱量計によって10℃/分で測定され、そして熱容量増加の半分高さとして決定される。
【0042】
上記レンズ材料は、少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも100%の伸長(破壊におけるひずみ)を有する。この性質は、褶曲されるとき、レンズが一般に割れ、裂けまたは分割しないことを示す。ポリマーサンプルの伸長は、20mmの全長、11mmのグリップ領域中の長さ、2.49mmの全幅、0.833mmの狭いセクションの幅、8.83mmのフィレット半径、および0.9mmの厚みをもつ、ダンベル形状張力試験片に対して決定される。試験は、23±2℃および50±5%相対湿度の標準実験室条件で張力テスターを用いてサンプルに対して実施される。グリップ距離は11mmにセットされ、そしてクロスヘッド速度は500mm/分でセットされ、そしてサンプルは破損するまで引かれる。破壊におけるひずみは、当初のグリップ距離に対して破損における位置ずれの割合として報告される。破壊における応力は、サンプルに対する最大負荷で算出され、代表的には、初期領域が一定のままであると仮定して、サンプルが破壊されるときの負荷である。ヤング率は、直線状弾性領域にある応力−ひずみ曲線の瞬時傾斜から算出される。25%割線率は、0%ひずみと25%ひずみとの間の応力−ひずみ曲線上に引かれる直線の傾きとして算出される。100%の割線率は、0%ひずみと100%ひずみとの間の応力−ひずみ曲線上に引かれる直線の傾きとして算出される。
【0043】
本発明の材料から構築されるIOLは、相対的により小さな切開を通って適合し得る小断面に巻かれるか、または褶曲され得る任意の設計であり得る。例えば、IOLは、1つの片または複数片の設計として知られるものであり得、そして光学部および支持部を備える。この光学部は、レンズとして供されるその部分である。上記支持部は上記光学部に取り付けられ、そしてこの光学部を目の中の適正な場所に保持する。この光学部および支持部は、同じまたは異なる材料からであり得る。複数片のレンズは、光学部および支持部が別個に作製され、そして次にこれら支持部が光学部に取り付けられるのでそのように呼ばれる。単一片のレンズでは、この光学部および支持部は、1片の材料から形成される。材料に依存して、上記支持部は次いでこの材料から切断されるか、または旋盤加工され、IOLを生成する。
【0044】
IOLに加え、本発明の材料はまた、コンタクトレンズ、角膜補綴具、および角膜インレーまたは角膜リングのようなその他の眼科デバイスとしての使用に適する。
【0045】
本発明は以下の実施例によりさらに説明され、これらは、限定的ではなく、例示であることが意図される。
【実施例】
【0046】
(実施例1:2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’’−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール(「UV13」)をN−2−[3−(2’−メチルフェニルアゾ)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリルアミド(「AL8739」)と組み合わせて含むアクリルデバイス材料)
2−フェニルエチルアクリレート(PEA)、2−フェニルエチルメタクリレート(PEMA)、および1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)からなる60グラムのモノマー希釈処方物を、65:30:3.2重量部の比率でこれら3つのモノマーを一緒に混合することにより調製した。2.5%のUV吸収剤ストック処方物を、0.5グラムのUV13を19.5グラムのPEA/PEMA/BDDA処方物中に溶解することにより調製した。最後に、0.25%のAL8739を含む第2のストック処方物を、0.25グラムのAL8739を9.75グラムのPEA/PEMA/BDDA処方物中に溶解することにより調製した。
【0047】
0.2%〜2%のUV13を0.01%〜0.04%のAL8739とともに含む17つのPEA/PEMA/BDDA処方物、およびAL8739を含まない1つのコントロール(17)を、2つのストック処方物を、PEA/PEMA/BDDA希釈処方物で、表2に提供される比率で混合することにより調製した。
【0048】
表2.AL8739と組み合わせたUV13のPEA/PEMA処方物の調製スキーム
【0049】
【表2】

各処方物は、Perkin−Elmer Lambda 35機器を用い、IOLの中央厚みに相応な相関関係を提供する、1mmの経路長の石英セル中のUV−可視透過分光学によって分析した。PEA/PEMA/BDDA処方物でのバックグラウンド補正を実施した後、16つの処方物の各々を300nm〜800nmで分析した。得られた透過スペクトルを図1に示す。
【0050】
各処方物に、ボルテックス混合によって溶解された、0.5%のビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシルペルオキシ)ジカーボネート(Perkadox−16、Akzo Corp.)開始剤を添加した。混合後、各処方物を、0.2μm膜フィルターに通され、そして窒素でパージした。最後に、各処方物を、ポリプロピレン鋳型中にキャストし、80℃で1時間、90℃で1時間および100℃で1時間、プログラム可能な温度オーブン中で硬化することにより1cm×2cm×約1mmの矩形フィルム(「スラブ」)を形成した。
【0051】
硬化後、これらフィルムを鋳型から出し、そしてさらなる処理のための標識されたポリプロピレン組織カプセル中に置いた。これらフィルムサンプルを、アセトンでSoxhlet抽出し、空気中で乾燥し、そして60℃で減圧下(0.1インチHg未満)で乾燥し残存アセトンを除去した。
【0052】
(実施例2:変動するレベルのAL8739発色団を有する2%UV13および2%oMTPの比較実施例)
この実施例は、従来のベンゾトリアゾールUV吸収剤、oMTP(オルト−メタアリルTinuvin P)の、本発明の材料について特定されたタイプのUV/短波長可視光吸収剤との比較を提供する。別のストックの2.56%oMTP溶液を、0.250グラムのoMTPを、9.752グラムの実施例1で上記に記載されたPEA/PEMA/BDDAモノマー希釈物中に溶解することにより調製した。0.25%のAL8739重合可能な黄色色素を含むストック処方物溶液をまた、以下に記載のような比較処方物を調製することで採用した。
【0053】
5つのoMTP処方物を、表3に提供されるスキームに従って、ストック処方物溶液を組み合わせることにより、0%、0.01%、0.02%、0.03%および0.04%のAL8739重合可能な黄色色素とともに2%のoMTPを含んで調製した。
【0054】
【表3】

各処方物に、ボルテックス混合によって溶解された、0.5%のビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシルペルオキシ)ジカーボネート(Perkadox−16、Akzo Corp.)開始剤を添加した。混合後、各処方物を、0.2μm膜フィルターを通し、そして窒素でパージした。最後に、各処方物を、ポリプロピレン鋳型中にキャストし、80℃で1時間、90℃で1時間および100℃で1時間、プログラム可能な温度オーブン中で硬化することにより1cm×2cm×約1mmの矩形フィルム(「スラブ」)を形成した。
【0055】
硬化後、これらフィルムを鋳型から出し、そしてさらなる処理のための標識されたポリプロピレン組織カプセル中に置いた。これらフィルムサンプルを、アセトンでSoxhlet抽出し、空気中で乾燥し、60℃で減圧下(0.1インチ未満Hg)で乾燥し、残存アセトンを除去した。抽出および減圧乾燥の後、フィルムサンプルを、Lab Sphere RSA−PE−20一体化スフェアを装備したPerkin−Elmer Lambda 35機器を用い、300nm〜800nmのUV−可視透過分光学によって分析した。同様に、実施例1からのフィルム1〜4および17もまた、比較のためにUV−可視透過分光器学によって分析した。
【0056】
結果は図2に示され、これは、実施例1の処方物1〜4および17、ならびに実施例2の1〜5のスペクトル比較を提供する。表4は、図2中の透過データからの1%UVカットオフおよび10%UVカットオフに対する波長を提供する。oMTPのような従来のベンゾトリアゾールUV吸収剤は、UV13のような式(I)のUV/短波長可視光吸収剤と比較したとき、短波長可視領域(410nm〜430nm)における顕著なカットオフを提供しない。400nm〜500nmの青色光の全体の減衰は、AL8739重合可能黄色色素の添加によって維持され、そして450nmで提供される%T値によって示される。
【0057】
実施例1(UV13およびAL8739)処方物1〜4のすべてについて1%カットオフは421nm〜423nmの間にあり、そして10%カットオフは426.5nm〜432nmの範囲にある。対照的に、実施例2(oMTPおよびAL8739)処方物1〜4では、1%カットオフは396.5〜399nmの範囲にあり、そして10%カットオフは401.5nm〜413nmの範囲にある。この比較は、oMTP処方物(実施例2)に対してUV13処方物(実施例1)による短波長可視光領域(410〜430)における改良されたカットオフを示す。450nmの透過は、青色光減衰の指標であり、そしてUV13処方物とoMTP処方物との間の差異は、各異なるAL8739濃度について約6%Tである。
【0058】
【表4】

本発明を、特定の好ましい実施形態を参照して説明される;しかし、その特有または本質的特徴から逸脱することなくその他の特有の形態またはその改変物で具現化され得ることが理解されるべきである。上記に記載の実施形態は、従って、すべての点で例示であると考えられ、そして限定的ではなく、本発明の範囲は、先行する説明によってよりもむしろ添付の請求項によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科デバイス材料であって
a)式(I)のUV/短波長可視光吸収剤であって、
【化11】

ここで、式(I)について
は、ハロゲン、OH、C〜C12アルキルオキシ、必要に応じて置換されたフェノキシ、または必要に応じて置換されたナフチルオキシであり、ここで、必要に応じた置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、OH、−(CHCHO)−、または−(CHCH(CH)O)−であり;
は、C〜C12アルキル、(CHCHO)、(CHCH(CH)O)、またはCHCHCH(Si(CHO)Si(CHCHCHCHであり;
Xは、Rが(CHCHO)または(CHCH(CH)O)であるときはなく、そうでなければXは、O、NRまたはSであり;
は、ないか、C(=O)、C(=O)C2j、C〜Cアルキル、フェニル、またはC〜Cアルキルフェニルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、H、C〜Cアルキル、またはフェニルであり;
は、HまたはC〜C12アルキルであり;
nは、2〜10である;そして
jは、1〜6である、UV/短波長可視光吸収剤;
b)430nm〜500nmの範囲における波長を有する光を減衰する重合可能な黄色色素;
c)75%(wt.)以上の量のデバイス形成モノマー;および
d)架橋剤、を含み、ここで、該UV/短波長可視光吸収剤の量、および該重合可能黄色色素の量が、該眼科デバイス材料が以下の光透過特徴
【表5】

を有させるに十分である、眼科デバイス材料。
【請求項2】
式(I)において、
は、Cl、Br、C〜Cアルコキシ、またはフェノキシであり;
は、C〜Cアルキルであり;
Xは、OまたはNRであり;
は、C(=O)またはC〜Cアルキルフェニルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hであり;そして
は、C〜C12t−アルキルである、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項3】
式(I)において、
は、メトキシであり;
は、C〜Cアルキルであり;
Xは、Oであり;
は、C(=O)であり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hであり;そして
は、t−ブチルである、請求項2に記載の眼科デバイス材料。
【請求項4】
前記式(I)のUV/短波長可視光吸収剤が、2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’[3’’−(4’’’−ビニルベンジルオキシ)プロポキシル]フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾールおよび2−{2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(3’’−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル}−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾールからなる群から選択される、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項5】
前記重合可能な黄色色素が、以下の式(II)の色素;以下の式(III)の色素;および
【化12】

;からなる群から選択され、
【化13】

ここで、式(II)について、
R’およびR’’は、独立にHまたはCHであり;
およびRは、独立にH、C〜C20アルキル、OCH、OC、OC、またはOCであり;
iおよびjは、独立に1または2であり;
、R、R10およびR11は、独立に、単独または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素を含む10原子までのアクリル有機スペーシング基であり;
kおよびmは、独立に1〜6であり;
lおよびnは、独立に0〜6であり;
Xは、O、NH、NRであり;そして
は、C〜C10アルキルであり、
【化14】

ここで、式(III)について
Rは、HまたはCHであり;
は、H、C〜C20アルキル、OCH、OC、OC、またはOCであり;
aおよびbは、独立に1または2であり;
は、R、OH、NH、NHR、N(R、SH、SR、OR、OSi(R、またはSi(Rであり;
は、上記色素部分に直接結合され、そして6炭素原子までのアルキル基からなり;
は、単独または任意の組み合わせの、炭素、水素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、塩素、臭素、またはフッ素を含む10原子までのアクリル有機スペーシング基であり;
Xは、O、NH、NRであり;
は、C〜C10アルキルであり;
d、e、g、およびhは、独立に0〜4の整数であり;そして
cおよびfは、独立に1〜4の整数である、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項6】
前記重合可能な黄色色素が、N,N−ビス−(2−メタクロイルオキシエチル)−(4−フェニルアゾ)アニリンおよびN−2−[3−(2’−メチルフェニルアゾ)−4−ヒドロキシフェニル]エチルメタクリルアミドからなる群から選択される、請求項5に記載の眼科デバイス材料。
【請求項7】
前記UV/短波長可視光吸収剤の量が、0.5%(wt.)〜4%(wt.)である、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項8】
前記UV/短波長可視光吸収剤の量が、1%(wt.)〜3%(wt.)である、請求項7に記載の眼科デバイス材料。
【請求項9】
前記UV/短波長可視光吸収剤の量が、1.5%(wt.)〜2.5%(wt.)である、請求項7に記載の眼科デバイス材料。
【請求項10】
前記重合可能な黄色色素の量が、0.001%(wt.)〜0.5%(wt.)である、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項11】
前記重合可能な黄色色素の量が、0.01%(wt.)〜0.1%(wt.)である、請求項10に記載の眼科デバイス材料。
【請求項12】
前記重合可能な黄色色素の量が、0.01%(wt.)〜0.05%(wt.)である、請求項10に記載の眼科デバイス材料。
【請求項13】
前記デバイス形成モノマーが、アクリル含有モノマーおよびシリコーン含有モノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項14】
前記デバイス形成モノマーが、式(IV)
【化15】

のモノマーであって、
ここで式(IV)について
Aは、H、CH、CHCH、CHOHであり;
Bは、(CHまたは[O(CHであり;
Cは、(CHであり;
mは、2〜6であり;
zは、1〜10であり;
Yは、ないか、O、S、またはNR’であり、但しYがO、S、またはNR’であるとき、そのときはBは(CHであり;
R’は、H、CH、Cn’2n’+1(n’=1〜10)、イソ−OC、C、またはCHであり;
wは、0〜6であり、但しm+w≦8であり;そして
Dは、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C、CHまたはハロゲンであるモノマーである、請求項13に記載の眼科デバイス材料。
【請求項15】
式(IV)について、AがHまたはCHであり、Bが(CHであり、mが2〜5であり、YがないかまたはOであり、wが0〜1であり、そしてDがHである、請求項14に記載の眼科デバイス材料。
【請求項16】
前記デバイス形成モノマーが、2−フェニルエチルメタクリレート;4−フェニルブチルメタクリレート;5−フェニルペンチルメタクリレート;2−ベンジルオキシエチルメタクリレート;および3−ベンジルオキシプロピルメタクリレート;ならびにそれらの対応するアクリレートからなる群から選択される、請求項15に記載の眼科デバイス材料。
【請求項17】
前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH=C(CH)C(=O)O−(CHCHO)−C(=O)C(CH)=CHここでp=1〜50;およびCH=C(CH)C(=O)O(CHO−C(=O)C(CH)=CH、ここでtは3〜20;ならびにそれらの対応するアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項18】
前記架橋剤の量が、0.1%(wt.)〜20%(wt.)である、請求項1に記載の眼科デバイス材料。
【請求項19】
前記眼科デバイスが、眼内レンズ;コンタクトレンズ;隔膜補綴具;または隔膜リングもしくはインレーからなる群から選択される、請求項1に記載の材料を含む眼科デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−507108(P2010−507108A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532596(P2009−532596)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081204
【国際公開番号】WO2008/048880
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】