説明

特殊発光を利用した真偽判別印刷物

【課題】 無機又は有機蛍光材料が含有されていなくとも所定の条件で蛍光発光する樹脂組成物を含有するインキ組成物を用いて、所定の観察条件下では略等色に見えるが、他の観察条件下では異なる色として確認できる印刷物を提供する。
【解決手段】 基材上の第1の印刷領域は、第1の励起波長域λ1の照射により励起物質を形成し、第1の励起波長域λ1を照射後、第2の励起波長域λ2を照射することで、励起物質が励起する二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物を含有した第1のインキにより印刷され、第2の印刷領域は、二光子励起により発光する樹脂組成物を含まない第2のインキにより印刷され、第1のインキと第2のインキは略等色であり、可視光下では同一色として観察され、第1の励起波長域λ1の照射後、更に第2の励起波長域λ2を照射することで、第1の印刷領域のみが所定の色に蛍光発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品に対して偽造防止が必要とされ、所定の条件で蛍光発光を有する印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品は、その価値を保証及び維持するために、偽造防止技術が施されている。そのため、このような貴重品には、無機又は有機蛍光材料を含有したインキを用いて印刷物を形成し、通常、可視光下では蛍光発光せず、紫外線を照射した場合に蛍光発光することで真偽判別が行われている。
【0003】
例えば、300〜400nmに蛍光発光のための吸収ピーク波長を有し、かつ、可視領域の蛍光を発する蛍光色素Aと、300〜400の紫外領域の蛍光を発するp−クオータフェニル、p−テルフェニル、2,5−ジフェニルオキザゾール、2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキザゾール、2−フェニル−5−(4−ビフェニル)−、1,3,4−オキザジアゾールの蛍光色素から選ばれた少なくとも1種とを必須構成材料とするインクジェット用蛍光性インク組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、紫外線照射により蛍光を発光する蛍光体とインキビヒクルを含有する蛍光発光インキとそのインキで印刷された形成物であって、第1の波長の紫外線照射により第1の可視光領域の波長の蛍光を発光し、可視光に対して実質的に透明である第1の蛍光体と、第2の波長の紫外線照射により第1の可視光領域の波長と異なる第2の可視光領域の波長の蛍光を発光し、可視光に対して実質的に透明である第2の蛍光体とを含有する蛍光発光インキ及び蛍光画像形成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、可視光下では同色に見えるが、所定の分光エネルギー分布を有する光源下では異なった色相、明度及び彩度に見えるメタリックな色料のそれぞれから成るパターンによるパターン群を形成することで、所定の分光エネルギー分布を有する光源からの光を照射して、又は所定の分光透過率を有するフィルターを介して観察すると、メタリックな色料から成るパターンを出現又は消去させることができるという、所謂ペア印刷と呼ばれる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平04−062871号公報(第1−5頁)
【特許文献2】特開平10−251570号公報(第1−11頁、第4、5図)
【特許文献3】特公昭61−037636号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2の蛍光発光インキは、無機又は有機蛍光材料を含有したインキを用いて印刷物を形成するものであった。無機又は有機蛍光材料は、一般的に特殊蛍光インキが高価なものであるため、結果としてそのインキで印刷された印刷物も高コストとなる。また、近年、蛍光発光インキが容易に入手可能となり、偽造、変造、改ざん等の分野での効力が低下しており、さらに、近年のプリンタの普及発展に伴い、プリンタによる偽造が増加する傾向にあった。また、無機又は有機蛍光材料を含有したインキを用いた印刷物は、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線照射装置によって発光するため、その印刷物のどこのエリアに蛍光発光インキが用いられているか容易に判断がされ、偽造されるおそれがあった。
【0008】
特許文献3のメタメリペア印刷は、2種類の異なる分光エネルギー分布を有する色料によってパターンが形成されていることを知らなければ、可視光下で確認された色の1色で偽造及び改ざんを試みてしまい、所定の分光エネルギー分布を有する光を照射することで、容易に真偽判別が行えるものであった。しかし、現在では、このメタメリペア印刷技術については、一般的な偽造防止技術となってきており、分析技術も高度化されてきていることから、比較的容易にメタメリペア印刷が行われていることが判明してしまい、偽造抵抗力も低くなってきているという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、無機又は有機蛍光材料が含有されていなくとも所定の条件で蛍光発光する樹脂組成物を含有するインキ組成物を用いて、所定の観察条件下では略等色に見えるが、他の観察条件下では異なる色として確認できる印刷物であり、特に一般的な365nmのハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で紫外線を照射しても蛍光発光することなく、メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で中波紫外線を照射した後、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で照射した場合において、蛍光発光を得ることができるという特徴を持った印刷物を提案することを目的とする。
【0010】
なお、前述した一般的な365nmのハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で照射する紫外線強度は、本明細書中では、例として1.5mW/cm程度、また、メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で照射する中波紫外線の照射量は50mJ/cm程度として説明していくが、これに限定されるものではなく、特にメタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置については、装置自体についてもこれに限定するものではなく、あくまでも中波の紫外線を照射可能な装置であればよく、更には、中波の紫外線の照射量についても、仮に紫外線強度が低い場合には、長時間照射することで同じ効果を奏するもので、中波の紫外線を照射することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材上に形成された印刷模様の少なくとも一部に、第1の印刷領域及び第2の印刷領域を有する特殊発光を利用した真偽判別印刷物であって、第1の印刷領域は、第1の波長域λ1の紫外線を照射により励起物質を形成し、第1の波長域λ1の紫外線を照射後、第2の波長域λ2の紫外線を照射することで、励起物質が励起する二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物を含有した第1のインキにより印刷され、第2の印刷領域は、二光子励起により発光する樹脂組成物を含まない第2のインキにより印刷され、第1のインキと第2のインキは略等色であり、第1の印刷領域と第2の印刷領域が可視光下では略等色として観察され、第1の波長域λ1の紫外線を照射後、更に第2の波長域λ2の紫外線を照射することで、第1の印刷領域のみが所定の色に蛍光発光することを特徴とする特殊発光を利用した真偽判別印刷物であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の特殊発光を利用した真偽判別印刷物は、第1のインキが所定の色材を含んで成り、第2のインキが前述の所定の色材と同じ色材を含んで成るか、又は第1のインキに含まれている複数の色材の混合色と、第2のインキに含まれている複数の色材の混合色が略等色であることにより、第1のインキと第2のインキが略等色であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の特殊発光を利用した真偽判別印刷物は、第1のインキ及び第2のインキが略等色の機能性材料を含んでいることにより、第1のインキと第2のインキが略等色であることを特徴する。
【0014】
また、本発明に用いる第1のインキ及び第2のインキに含まれる機能性材料は、光輝性材料(特にパール顔料)、磁性材料、導電性材料及び/又はクロミック材料であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の特殊発光を利用した真偽判別印刷物は、第1のインキに含有した二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物が、多官能アクリレートを含んで成る樹脂と、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するラジカル光重合開始剤とを含んで成り、多官能アクリレートを含んで成る樹脂は、アクリロイル基の官能基密度を0.5mmol/g以上を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の特殊発光を利用した真偽判別印刷物は、第1のインキに含有した二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物が、多官能アクリレートを含んで成る樹脂と、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するラジカル光重合開始剤とを含んで成り、多官能アクリレートを含んで成る樹脂は、分子内にエチレン性不飽和基とビスフェノール骨格を有していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の特殊発光を利用した真偽判別印刷物は、第1の印刷領域を形成する第1のインキが、第1の波長域λ1の紫外線の照射により励起物質を形成し、第1の波長域λ1の紫外線を照射後、第2の波長域λ2の紫外線を照射することで、励起物質が励起する二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物を含有しており、第1の波長域λ1が260nm以上330nm未満であり、第2の波長域λ2が330nm以上410nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特殊発光を利用した印刷物は、肉眼により一見しただけでは、1色のインキで印刷された模様としか認識できないが、メタルハライドランプ、水銀灯等で50mJ/cm程度の紫外線照射装置で中波紫外線を照射した後、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線照射装置で紫外線を照射すると、模様の一部のみが蛍光発光することを確認できるという、高度な偽造防止及び複写防止の効果を奏することが可能である。
【0019】
また、本発明の特殊発光を利用した印刷物は、メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で中波紫外線を照射することで、励起中間体(励起状態)が形成され、次に、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で紫外線を照射して蛍光発光を得ることができるが、励起中間体(励起状態)は、時間経過とともに熱輻射代謝により基底状態に戻るため、又は加熱(85℃程度)することによって基底状態に戻るため、蛍光発光強度は減衰し、最終的には一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で紫外線を照射しても蛍光発光することがなくなる。この場合は、再度、メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で中波紫外線を照射することで励起中間体(励起状態)が形成され、再度、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で紫外線を照射することで、蛍光発光を得ることができる。よって、これらの状態が可逆的であることに特徴がある樹脂組成物を得ることができるため発光時間を利用した証明書等に有効である。
【0020】
本発明の特殊発光を利用した印刷物は、高価な無機又は有機蛍光材料が含有されていなくとも所定の条件で蛍光発光するため、低コストで蛍光発光する印刷物を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範疇であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0022】
本発明の特殊発光を利用した印刷物は、図2に示すように、基材1の少なくとも一部に所定の模様2が形成され、その模様2の少なくとも一部の領域に第1の印刷領域2aと第2の印刷領域2bを有している印刷物である。この第1の印刷領域と第2の印刷領域は、少なくとも一方が後述する機能性を有するインキにより印刷されており、印刷物に対して、メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で中波紫外線を、例えば50mJ/cm程度照射した後、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線照射装置で、例えば、紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線を照射すると、機能性を有するインキにより印刷された模様の一部のみが蛍光発光し、可視光下において印刷物を視認した状態と異なる状態となって視認される。
【0023】
本発明の特殊発光を利用した印刷物において、前述した機能性を有するインキについて以下に説明する。
【0024】
(インキ1)
本発明における印刷物の第1の印刷領域又は第2の印刷領域のどちらか一方を印刷するためのインキ1は、多官能アクリレートを含有する樹脂とラジカル光重合開始剤とを含んで成る樹脂組成物1を少なくとも配合したインキであり、このラジカル光重合開始剤は、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するものである。また、多官能アクリレートを含有する樹脂は、アクリロイル基の官能基密度を0.5mmol/g以上有する必要がある。
【0025】
多官能アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーから成り、アクリロイル基の官能基密度が0.5mmol/g以上から成る樹脂は、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0026】
さらに、多官能アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーから成る樹脂のアクリロイル基の官能基密度は、好ましくは3.0mmol/g以上である。なお、アクリロイル基の官能基密度の官能基密度が0.5mmol/g未満であった場合には、発光しにくい状態となる。
【0027】
また、ラジカル光重合開始剤は、α−ヒドロキシケトン類、式(1)で表される化合物及び/又は、α−アミノケトン類、式(2)で表される化合物を含んで成る。
【0028】
【化1】

(ただし、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。)
【0029】
【化2】

(ただし、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。)
【0030】
前述の式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であることが好ましい。中でも、下記式(3)で表される化合物であることがより好ましい。式(3)で表される化合物は、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オンであり、市販品としてはIrgacure127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。
【0031】
【化3】

【0032】
前述の式(2)中、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であることが好ましい。中でも、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。式(4)で表される化合物は、2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンであり、Irgacure907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)がある。
【0033】
【化4】

【0034】
ラジカル光重合開始剤は、多官能アクリレートモノマー及び/又は多官能アクリレートオリゴマーを含んで成る樹脂100重量%に対して、0.1〜10重量%含まれて成る樹脂であることが好ましい。
【0035】
(インキ2)
また、本発明における印刷物の第1の印刷領域又は第2の印刷領域のどちらか一方を印刷するための別のインキ2は、多官能アクリレートと、ラジカル光重合開始剤とを含んで成る樹脂組成物2を少なくとも配合したインキであり、この多官能アクリレートは、分子内にエチレン性不飽和基とビスフェノール骨格を有するものであり、ラジカル光重合開始剤は、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するものである。
【0036】
多官能アクリレートは、式(5)、式(6)又は式(7)で表される化合物の少なくとも一つを含んで成る樹脂組成物:
【0037】
【化5】

(ただし、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、m及びnは、0〜30の繰り返しの数を示す。)
【0038】
【化6】

(ただし、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はアシル基、(メタ)アクリロイル基を示し、xは、0〜30の繰り返しの数を示す。)
【0039】
【化7】

(ただし、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、R15、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子又はアシル基、(メタ)アクリロイル基を示し、yは、0〜30の繰り返しの数を示す。)
【0040】
本発明で使用する分子内にエチレン性不飽和基とビスフェノール骨格を有する多官能アクリレートとしては、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、酸変性ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、酸変性フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、酸変性クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ラジカル光重合開始剤は、多官能アクリレートを含んで成る樹脂100重量%に対して、0.1〜10重量%含まれて成る樹脂組成物であることが好ましい。
【0042】
前述した二つのインキに配合されている樹脂組成物1及び2は、第1の波長域λ1の紫外線の照射により励起物質を形成し、第1の波長域λ1の紫外線を照射後に、第2の波長域λ2の紫外線を照射することで励起物質が励起する二光子励起により発光する。第1の波長域λ1と第2の波長域λ2の関係は、λ1<λ2であることを特徴とし、第1の波長域λ1は、260nm以上330nm未満、第2の波長域λ2は、330nm以上410nm以下であり、この範囲外であると発光しにくい状態となる。
【0043】
図1は、前述した樹脂組成物1及び2の二光子励起蛍光発光の模式図である。基底状態(SO)の樹脂組成物は、第1の波長域λ1の光を吸収し、第1の励起一重項状態(S1)となり、項間交差で第1の励起三重項状態(T1)になる。次いで、第2の波長域λ2の光を吸収し、上のレベルの第2の励起一重項状態(S2)となり、項間交差で第2の励起三重項状態(T2)になる。第2の励起三重項状態(T2)は、光を放射して第1の励起三重項状態(T1)にもどる。第1の励起三重項状態(T1)は、無輻射失活により基底状態(SO)にもどる。第1の励起三重項状態(T1)は、分子内にエチレン性不飽和基とビスフェノール骨格を有する多官能アクリレートのビスフェノール骨格のメチレン基の水素原子、若しくは、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オンのビスフェノール骨格のメチレン基の水素原子及び/又は2−メチル−1[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンのアルキルチオ基のα位の水素原子を、Norrishの2型反応により引抜きが起こり、ベンゼン環とのπ電子共役により安定化が図られたある程度の寿命を有する励起状態(中間体)であると考えられる。
【0044】
また、二光子励起により発光する樹脂組成物1の発光ピーク波長は、580〜680nmの範囲内となり、樹脂組成物2の発光ピーク波長は、540〜610nmの範囲内となる。
【0045】
これらの樹脂組成物1又は2を、ガラス板上に塗付し、それぞれの樹脂組成物に対して一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線を照射しても蛍光発光しない。しかしながら、メタルハライドランプ、水銀灯等で中波紫外線を50mJ/cm程度の紫外線照射装置で紫外線を照射すると、励起ピーク波長が330〜410nmの励起中間体(励起状態)を形成して、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線照射装置で紫外線を照射すると、樹脂組成物1は、発光ピーク波長が580〜680nm付近のオレンジ色又は赤色に蛍光発光し、樹脂組成物2は、発光ピーク波長が540〜610nm付近のレモン色又は黄色に蛍光発光する。
【0046】
前述した二つの樹脂組成物1又は2を含んで成るインキ組成物は、OPニス、透明インキ等として利用可能である。また、樹脂組成物1又は2に色材を含んで成るインキ組成物としても利用可能である。この本発明における色材とは、着色染料、着色顔料、蛍光染料、蛍光顔料及び磁性材料、導電性材料、クロミック材料、パール顔料等の光輝性材料である機能性材料から成る群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することができる。また、粘度調整用に配合される体質顔料の種類によっても、若干の着色効果(例えば、白色)を奏するものもあり、この着色効果も本発明の色調整として利用可能である。さらに、重合促進剤、重合禁止剤、消泡剤等を適宜混合することもできる。
【0047】
本発明の特殊発光を利用した印刷物について、具体的な実施形態を以下に説明する。
図2は、紙基材1の一部に太陽の模様2が形成され、その太陽の模様2の中央部に第1の印刷領域2aと、中央部を囲むように外側に第2の印刷領域2bを有している印刷物である。この第1の印刷領域と第2の印刷領域は、少なくとも一方に前述した機能性を有するインキ1又は2により印刷されている。本第1の実施形態では、太陽の模様2の中央部である第1の印刷領域2aが、樹脂組成物1を配合した機能性を有するインキにより印刷されていることとして説明する。
【0048】
第1の印刷領域2aを形成するためのインキには、前述した樹脂組成物1と着色顔料が少なくとも配合されている。なお、インキ中に占める樹脂組成物の割合は、50〜99重量である。また、本実施の形態では、赤色の着色顔料が配合されていることとして、以下、説明する。第2の印刷領域2bを形成するためのインキには、第1の印刷領域2aを形成したインキと同じ赤色系の着色顔料が配合されており、樹脂組成物1又は2は配合されていない。この太陽の模様2の中央部である第1の印刷領域2aと、中央部を囲むように外側に配置された第2の印刷領域2b用の2版の版面を用意して、前述した二つのインキにより紙基材に所定の印刷方式により印刷する。
【0049】
本実施の形態の印刷物を可視光下において観察すると、第1の印刷領域2a及び第2の印刷領域2bは、赤色の太陽の模様2として観察され、1色のインキで印刷されているように見える。この印刷物に対して、図3(a)に示すような一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線照射装置3aを用いて紫外線照射した場合でも、特に太陽の模様2において変化はない。
【0050】
しかし、図3(b)に示すようなメタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置3bで50mJ/cm程度の紫外線を照射し、再度、一般的なハンディータイプ等で用いられている紫外線強度が1.5mW/cm程度の紫外線照射装置3aを用いて紫外線を照射した場合は、図3(c)に示すように、太陽の模様2の中央部である第1の印刷領域2aのみがオレンジ色又は赤色に蛍光発光し、中央部を囲むように外側に配置された第2の印刷領域2bとの間に色彩として差が生じる。
【0051】
なお、前述した実施の形態については、基材の種類は特に限定されるものではなく、紙、プラスチック、布等を用いることができる。また、本発明の印刷物について肉眼において発光を確認するためには、2〜150μm程度のインキ膜厚を有していることが好ましいが、オフセット印刷方式を用いる場合には、1μm程度の膜厚でも良い。
【0052】
さらに、本発明の印刷物に用いる印刷方法は特に限定されないが、インキ膜厚が形成可能な凹版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等で印刷する方法が好ましい。
【0053】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0054】
本発明において、第1の印刷領域と第2の印刷領域が略等色とは、L表色系において、式差がΔEab=0〜2までの範囲のことをいい、お互いの印刷領域が隣接されていない状態では、色の差がわかりにくい状態である。
【実施例1】
【0055】
ジペンタエリスルトールペンタ(ヘキサ)アクリレート(東亜合成株式会社製 アロニックスM-400)70wt%、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R-604)10wt%、ウレタンアクリレート(荒川工業株式会社製 ビームセット505A-6)20wt%の割合で調整した樹脂組成物98wt%に対し、赤色顔料ノボパームカーミンHF4C 2wt%、光重合開始剤2−ヒドロキシー1−{4−[4−(2−ヒドロキシ2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]―フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ Irgacure127)外割2wt%、消泡剤(ビッグケミー社製BYK-1790)0.5wt%の割合で調整し、二光子励起により発光するインキ組成物4を得た。なお、このインキ組成物4に配合した樹脂組成物の官能基密度は、7.77mmol/gである。
【0056】
ジペンタエリスルトールペンタ(ヘキサ)アクリレート(東亜合成株式会社製 アロニックスM-400)70wt%、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R-604)10wt%、ウレタンアクリレート(荒川工業株式会社製 ビームセット505A-6)20wt%の割合で調整した樹脂組成物98wt%に対し、赤色顔料ノボパームカーミンHF4C 2wt%、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ Irgacure184)外割2wt%,消泡剤(ビッグケミー社製BYK-1790)外割0.5wt%の割合で調整し、二光子励起により発光しないインキ組成物5を得た。
【0057】
上質紙に、作成した二光子励起では発光しないインキ組成物5を用いて、図4(a)に示す「家」の模様6を、作成した二光子励起により発光するインキ組成物4を用いて、図4(b)に示す「もみの木」の模様7を、200メッシュのテトロンバイアス版面を使用してスクリーン印刷を行い、図4(c)に示すように重なる配置で印刷し、実施例1の印刷物を得た。
【0058】
実施例1の印刷物の「家」の模様6及び「もみの木」の模様7は、共に可視光下では混合した着色顔料の色である赤色に認識できるため、図4(d)に示すように、「もみの木」の模様7は観察できず、「家」の模様6のみが印刷されているように観察された。なお、「家」の模様6及び「もみの木」の模様7は略等色であることから、可視光下では、「もみの木」の模様7を認識できないと前述したが、重ね刷りを行っていることから、若干濃淡に差異が生じるため、完全に識別ができないということではなく、一見しては識別が困難であるという程度であり、それぞれの領域を異なる箇所に形成又は毛抜き合わせにより形成することが好ましい。
【0059】
この偽造防止印刷物に、ハリソン東芝ライティング株式会社製の紫外線照射装置において、3.6kwの水銀ランプで紫外線を照射し、UVP Inc.製のUVハンドランプ 3UVシリーズの紫外線ランプ3aを用いて365nmの紫外線を照射して観察すると、「家」の模様6は発光することなく、「もみの木」の模様7のみが橙色に蛍光発光して観察することができた。
【0060】
なお、本実施例1の印刷物において、前述のようにメタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置で50mJ/cm程度の紫外線を照射し、UVP Inc.製のUVハンドランプ 3UVシリーズの紫外線ランプ3aを用いて365nmの紫外線を照射し、「もみの木」の模様7のみが橙色に蛍光発光した後、乾燥機によって急激に加熱(約85℃)し、再度、UVP Inc.製のUVハンドランプ 3UVシリーズの紫外線ランプ3aを用いて365nmの紫外線を照射しても、「もみの木」の模様7は蛍光発光しなかった。
【実施例2】
【0061】
トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社アロニックスM-220)15wt%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社カヤラッド DPHA)30wt%、EO変性ビスフェノールF型ジアクリレート(日本化薬株式会社カヤラドR-712)40wt%、エポキシアクリレート(日本化薬株式会社ZFA-265H)15wt%の割合で調整した樹脂組成物80wt%に対し、干渉色が緑色である光彩色パール顔料(メルク株式会社Iriodin231)を20wt%配合し、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ Darocure1173)外割4wt%、消泡剤(ビッグケミー社製BYK-1790)0.5wt%の割合で調整し、二光子励起により発光するインキ組成物8を得た。
【0062】
イソボルニルアクリレート(大阪有機化学IBXA)10wt%、トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成 アロニックスM-220)30wt%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬 カヤラッド DPHA)30wt%、ウレタンアクリレート(日本化薬 UX-8101)15wt%、EO変性ビスフェノールA型ジアクリレート(東亞合成 アロニックスM-210)15wt%の割合で調整した樹脂組成物80wt%に対し、干渉色が緑色である光彩色パール顔料(メルク株式会社Iriodin231)を20wt%配合し、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ Darocure1173)外割4wt%,消泡剤(ビッグケミー社製BYK-1790)0.5wt%の割合で調整し、二光子励起により発光しないインキ組成物9を得た。
【0063】
上質紙に、作成した二光子励起では発光しないインキ組成物9を用いて、図4(a)に示す「家」の模様6を、作成した二光子励起により発光するインキ組成物8を用いて、図4(b)に示す「もみの木」の模様7を、200線/inchのアニロックスロールを使用してフレキソ印刷を行い、図4(c)に示すように重なる配置で印刷し、実施例2の印刷物を得た。
【0064】
実施例2の印刷物の「家」の模様6及び「もみの木」の模様7は、可視光下及び正反射角度領域で観察したときは緑色のパール顔料の色として、また、拡散角度領域で観察すると「家」の模様6及び「もみの木」の模様7は、無色に近い略等色として観察されるため、図4(d)に示すように、「もみの木」の模様7は観察できず、「家」の模様6のみが印刷されているように観察された。
【0065】
この印刷物に対して、UVP Inc.製のUVハンドランプ 3UVシリーズの紫外線ランプ3aを用いて365nmの紫外線を照射観察した場合、いずれの模様に対しても発光は確認できなかった。
【0066】
この偽造防止印刷物に、ハリソン東芝ライティング株式会社製の紫外線照射装置において、3.6kwのメタルハライドランプで紫外線を照射し、再度UVハンドランプ3aで365nmの紫外線を照射し観察すると、図4(e)のように「家」の模様6は発光することなく、「もみの木」の模様7のみが黄色に蛍光発光して観察することができた。
【実施例3】
【0067】
トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックスM-220)15wt%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 カヤラッド DPHA)30wt%、EO変性ビスフェノールF型ジアクリレート(日本化薬株式会社製 カヤラドR-712)40wt%、エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製 ZFA-265H)15wt%の割合で調整した樹脂組成物98wt%に対し、着色顔料フタロシアニングリーン2Y1.95wt%及びシムラファストオレンジK0.05%、光重合開始剤2―ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 Darocure1173)外割4wt%の割合で調整し、二光子励起により発光する緑色のインキ組成物10を得た。
【0068】
イソボルニルアクリレート(大阪有機化学製 IBXA)10wt%、トリプロピレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックスM-220)30wt%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製 カヤラッド DPHA)30wt%、ウレタンアクリレート(日本化薬株式会社製 UX-8101)15wt%、EO変性ビスフェノールA型ジアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックスM-210)15wt%割合で調整した樹脂組成物98wt%に対し、着色顔料フタロシアニンブルーH0.5wt%及びアゾイエローFG1.5wt%、光重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 Darocure1173)外割4wt%、消泡剤(ビッグケミー社製BYK-1790)0.5wt%の割合で調整し、二光子励起により発光しない緑色のインキ組成物11を得た。
【0069】
本実施例3の印刷物について図5を用いて説明する。本実施例3の印刷物には、基材(上質紙)上の一部に図5(a)の「花」の模様12が印刷されている。この「花」の模様12は、「花びら」12a及び「茎」12bが、前述のインキ組成物10を用いて、また「花びら」12cは、前述のインキ組成物11を用いて、300線/inchのアニロックスロールを使用してフレキソ印刷により印刷した。
【0070】
この印刷物に印刷されている「花」の模様12を可視光下で観察したときは、緑色1色で印刷された花の模様として観察される。
【0071】
実施例3の印刷物に、アイグラフィックス株式会社製のアイキュアーライトスポットUP150Mの紫外線照射装置で紫外線を照射し、UVP Inc.製のUVハンドランプ、3UVシリーズを用いて365nmの紫外線を照射して観察すると、「花びら」12cは発光することなく、「花びら」12a及び「茎」12bのみが黄色に蛍光発光した。
【0072】
また、本実施例3においては、メタメリック材料を含有していることから、図5(d)のように、実施例3の印刷物に赤フィルター13を載せて観察すると、図5(e)のように、「花びら」12a及び「茎」12bは明るく、「花びら」12cは、「花びら」12a及び「茎」12bと比較して暗く観察され、条件等色効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の波長域λ1の紫外線を照射後に第2の波長域λ2の紫外線を照射した場合の励起状態を示す模式図である。
【図2】本発明の秘匿情報を有する印刷物の一例を示す図である。
【図3】本発明の秘匿情報を有する印刷物の実施の形態1を説明する図である。
【図4】本発明の秘匿情報を有する印刷物の実施例1及び実施例2を説明する図である。
【図5】本発明の秘匿情報を有する印刷物の実施例3を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
1 基材
2、12 印刷模様
2a、7、12a、12b 第1の印刷領域
2b、6、12c 第2の印刷領域
3a ハンディータイプの紫外線照射装置
3b メタルハライドランプ、水銀灯等の紫外線照射装置
4、8、10 樹脂組成物を含んだインキ組成物
5、9、11 樹脂組成物を含まないインキ組成物
13 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された印刷模様の少なくとも一部に、第1の印刷領域及び第2の印刷領域を有する特殊発光を利用した真偽判別印刷物であって、
前記第1の印刷領域は、第1の波長域λ1の紫外線の照射により励起物質を形成し、前記第1の波長域λ1の紫外線を照射後、第2の波長域λ2の紫外線を照射することで、前記励起物質が励起する二光子励起により第1の発光色に発光する樹脂組成物を含有した第1のインキにより印刷され、
前記第2の印刷領域は、前記二光子励起により発光する樹脂組成物を含まない第2のインキにより印刷され、
前記第1のインキと前記第2のインキは略等色であり、
前記第1の印刷領域と前記第2の印刷領域が可視光下では略等色として観察され、前記第1の波長域λ1の紫外線を照射後、更に第2の波長域λ2の紫外線を照射することで、前記第1の印刷領域のみが前記所定の色に蛍光発光することを特徴とする特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項2】
前記略等色の前記第1のインキと前記第2のインキは、前記第1のインキが所定の色材を含んで成り、前記第2のインキが前記所定の色材と同じ色材を含んで成るか、又は前記第1のインキに含まれている複数の色材の混合色と、前記第2のインキに含まれている複数の色材の混合色が同じであることを特徴とする請求項1記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項3】
前記略等色の前記第1のインキと前記第2のインキは、前記第1のインキ及び前記第2のインキが同じ色の機能性材料を含んでいることを特徴する請求項1記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項4】
前記機能性材料が光輝性材料、磁性材料、導電性材料及び/又はクロミック材料であることを特徴とする請求項3記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項5】
前記第1のインキに含有した二光子励起により前記第1の発光色に発光する樹脂組成物は、多官能アクリレートを含んで成る樹脂と、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するラジカル光重合開始剤とを含んで成る樹脂組物であって、
前記多官能アクリレートを含んで成る樹脂は、アクリロイル基の官能基密度を0.5mmol/g以上を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項6】
前記第1のインキに含有した二光子励起により前記第1の発光色に発光する樹脂組成物は、多官能アクリレートを含んで成る樹脂と、光吸収により分子内開裂してラジカルを発生するラジカル光重合開始剤とを含んで成る樹脂組物であって、
前記多官能アクリレートを含んで成る樹脂は、分子内にエチレン性不飽和基とビスフェノール骨格を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。
【請求項7】
前記第1の波長域λ1は、260nm以上330nm未満であり、前記第2の波長域λ2は、330nm以上410nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の特殊発光を利用した真偽判別印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76271(P2010−76271A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247398(P2008−247398)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】