特異的な細胞に誘導することができるモジュールと透過性遷移孔複合体(PTPC)のアポトーシス誘発機能を制御するモジュールとを含有するキメラ分子
【課題】透過性遷移孔複合体(PTPC)に作用する治療用の細胞死制御分子を提供する。
【解決手段】式:pTox−pTargを有するキメラポリペプチド(ここで、pToxは、HIV−1のVprペプチド等のウイルスアポトーシスペプチド、又細胞のミトコンドリア内膜、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)タンパク質と相互作用するアミノ酸モチーフH(F/S)RIGを含有するHIV−1のVprペプチドの断片であり、pTargは、抗体又は細胞の外膜に結合する抗体断片である)、キメラポリペプチドをコードするベクター、該ベクターを備えた組換え宿主細胞。前記キメラペプチドが結合することにより、細胞のアポトーシスが生じる。また前記キメラペプチドは、癌細胞等の細胞にpToxを誘導するのに有用である。
【解決手段】式:pTox−pTargを有するキメラポリペプチド(ここで、pToxは、HIV−1のVprペプチド等のウイルスアポトーシスペプチド、又細胞のミトコンドリア内膜、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)タンパク質と相互作用するアミノ酸モチーフH(F/S)RIGを含有するHIV−1のVprペプチドの断片であり、pTargは、抗体又は細胞の外膜に結合する抗体断片である)、キメラポリペプチドをコードするベクター、該ベクターを備えた組換え宿主細胞。前記キメラペプチドが結合することにより、細胞のアポトーシスが生じる。また前記キメラペプチドは、癌細胞等の細胞にpToxを誘導するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2001年2月2日に出願された米国仮出願第60/265,594号の利益を主張する。この出願の開示内容全体を基礎とし、参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的には、治療用の細胞死制御分子に関する。より具体的には、本発明は、透過性遷移孔複合体(PTPC)に作用するペプチド又は偽ペプチド部分が抗体、組換え抗体断片、又はホーミングペプチド等の細胞標的誘導分子に共有結合された分子に関する。その結果得られるキメラ分子は、PTPC及び/又はその主要成分であるアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)を標的として、細胞死(アポトーシス)を誘発又は阻害させるポリペプチド又はペプチド類似分子である。本発明は、PTPC相互作用部分がアポトーシス誘発性のHIV−1 Vpr由来ペプチド(若しくは偽ペプチド)又はANT由来ペプチド(若しくは偽ペプチド)であるこのようなキメラ分子にも関する。本発明は、このようなキメラ分子をコードする核酸配列構築物又はこれらのキメラ分子の一部をコードする核酸配列構築物にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
現在、ミトコンドリアが細胞の生死を制御する上で重要な役割を果たしていることには一致が見られている(apoptosis;Kroemer and Reed 2000,Nature Medicine)。増大しているシグナル伝達関連分子のみならず、多くの代謝物やある種のウイルスエフェクターもミトコンドリアに作用し、ミトコンドリアの膜の透過化に影響を与えているようである。ミトコンドリア特異的なアポトーシス誘発性因子の使用が、癌の治療における新たな概念として出現しているものと思われる(Costantini et al 2000, Journal of the National Cancer Institute)。同様に、ミトコンドリア膜の安定化能を活用して、過剰なアポトーシスが存在する疾病(神経変性疾患、虚血、AIDS、劇症肝炎等)の治療に細胞保護作用を有する分子を使用することが可能であるかもしれない。
【0004】
ミトコンドリア膜の透過化(MMP、mitochondrial membrane permeabilisation)は、膜間腔からのカスパーゼ活性化因子及びカスパーゼ非依存性デスエフェクターの放出、内部膜間電圧(ΔΨm)の散逸、並びに酸化的リン酸化の擾乱を伴うアポトーシス性細胞死の中心を成す現象である(Green and Reed,1998;Gross et al.,1999;Kroemer and Reed,2000;Kroemer et al.,1997;Lemasters et al.,1998;Vander Heiden and Thompson,1999;Wallace,1999)。Bcl−2ファミリーの構成要素の中でアポトーシスを誘発又は抑制するものは、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT(adenine nucleotide translocation);内膜(IM)中)との相互作用、電圧依存性陰イオンチャネル(VDAC;外膜(OM)中)を通じて、及び/又は自律性のチャネル形成活性を通じて、内部及び外部MMPを調節する(Desagher et al.,1999;Gross et al.,1999;Kroemer and Reed,2000;Marzo et al.,1998;Shimizu et al.,1999;Vander Heiden and Thompson,1999)。ANTとVDACは、ミトコンドリアの二つの膜が並んだ部位に組織化されたポリタンパク質構造である透過性遷移孔複合体(PTPC、permeability transition pore complex)の主成分である(Crompton,1999;Kroemer and Reed,2000)。
【0005】
ミトコンドリアのフェーズは、50%を超える癌に関わっているBcl−2ファミリーの発癌遺伝子及び癌抑制遺伝子(総説として、5;28)の制御下にある(29)。Bcl−2ファミリーの構成要素は全て、アポトーシスの制御に積極的な役割を果たしており、アポトーシス誘発性のもの(Bax、Bak、Bcl−Xs、Bad等)とアポトーシス抑制性のもの(Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−w、Mcl−l等)がある(G.Kroemer,Nat Med 3,614−20(1997))。
【0006】
ミトコンドリアのメガチャネルは、ミトコンドリア膜の透過性の調節に関与しているミトコンドリア内膜とミトコンドリア外膜の間に位置する接触部位に形成されるポリタンパク質複合体である。ミトコンドリアのメガチャネルは、ミトコンドアリア関連ヘキソキナーゼ(HK)、ポリン(電圧依存性陰イオンチャネル、すなわちVDAC)、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)、クレアチンキナーゼ(CK)、及びサイクロフィリンD、並びにBcl−2ファミリーの構成因子を含む一群のタンパク質から構成されている。生理的な条件では、PTPCは、ミトコンドリアのpH、ΔΨm、NAD/NAD(P)Hレドックス平衡、及びマトリックスタンパク質のチオール酸化によるカルシウムのコンダクタンスの調節を介して、ミトコンドリアのカルシウムホメオスタシスを制御している(M.Zoratti, I.Szabo,Biochim,Biophys Acta 1241,139−76(1995). S.Shimizu, M.Narita, Y.Tsujimoto, Nature 399,483−487(1999). M.Crompton, Biochem J 341,233−249 (1999). K.Woodfield, A.Ruck, D.Brdiczka, A.P.Halestrap, Biochem J 336,287−90(1998). P.Bernardi, K.M.Broekemeier, D.R.Pfeiffer, J Bioenerg Biomembr 26,509−17(1994). F.Ichas, L.Jouaville, J.Mazat, Cell 89,1145−53(1997))。
【0007】
アポトーシス及びこれに関連する形態の制御された細胞死は、数多くの病気に関わっている。細胞死プロセスの過剰又は不足は、自己免疫疾患及び神経変性疾患、癌、虚血、並びにウイルス及び細菌性感染症等の病的な感染症又は疾病に関与している。本明細書には、細胞死の制御異常に伴う疾病にミトコンドリアがほとんど随所で関わっていることを示すほんの数例が挙げられている。
【0008】
虚血の様々なモデル(心臓、肝臓、腎臓、又は脳)では、例えばCsA(又は免疫を抑制しないその類縁体−Me−Val4−CsA)等のミトコンドリア膜を安定化することができる分子を用いることによって、塊状アポトーシス(massive apoptosis)及びそれによって生じる臓器レベルでの急性症状を弱めることが可能である。さらに、VDACは低酸素再灌流後におけるラット海馬の神経細胞の破壊に必須である。神経変性疾患の分野では、極めて多くの観察から、ミトコンドリアによるアポトーシスの制御が密接に関わっていることが示唆されている(Kroemer and Reed 2000, Nature Medicine参照)。神経毒であるメチル−4−フェニルピリジニウムは、ミトコンドリアの透過性遷移とチトクロムcの排出をもたらす。ニトロプロピオン酸又はロテノン等のミトコンドリア毒による中毒は、霊長類とげっ歯類にハンチントン病型の病気を誘発する。
【0009】
PTPCは、二つのミトコンドリア膜間の接触部位に位置する動的なタンパク質複合体であり、PTPCの開放によって、1500Da未満の溶質が内膜上に自由拡散することが可能となる。PTPCの形成には、様々なコンパートメントに由来するタンパク質(ヘキソキナーゼ(サイトゾル)、ポリン(電圧依存性陰イオンチャネルとも称される(VDAC、外膜)、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR、外膜)、ANT(内膜)、及びサイクロフィリンD(マトリックス))の会合を伴う。複数のアポトーシス誘発性シグナル伝達経路を統合することができ、Bcl−2/Baxファミリー由来のタンパク質によって調節されるので、PTPCは、アポトーシスの多くの実例に関わっていると考えられている。Bcl−2ファミリーには、それぞれ、PTPCの開放を抑制又は促進する死亡抑制性の(Bcl−2様)構成因子と死亡誘導性の(Bax様)構成因子が含まれる。報告によれば、BaxとBcl−2は、PTPC内のVDAC及びANTと相互作用する。生理的な条件では、ANTは、ADP及びATPの特異的な対向輸送体(antiporter)である。しかしながら、ANTは、Ca2+、アトラクチロシド、HIV−1のVpr由来ペプチド、及び様々な酸化促進剤を含む様々なアポトーシス誘発因子と相互作用することにより、致死孔(lethal pore)を形成することもできる。ミトコンドリア膜の透過化は、外膜中のBcl−2/Bax−様タンパク質によって調節される非特異的なVDAC孔によって(12;16)、及び/又はミトコンドリアマトリックスと細胞質間の代謝性ATP/ADP勾配の変化によって(17)も制御され得る。
【0010】
本分野では、虚血、神経変性疾患、劇症肝炎、及びウイルス感染症における細胞保護分子(cytoprotective molecule)が必要とされている。
【0011】
本発明に係るキメラ分子のその他の用途としては、化粧品の調製又は植物若しくは野菜若しくは花の早期死滅の予防(とりわけPTPCの開放を抑えるための)を想定することができる。
【0012】
従来の化学療法剤は、腫瘍に対する選択性の低さに起因する重篤な副作用により治療の有効性に限界がある。特異的な腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体(及びScFv)の開発と腫瘍血管新生に対して特異的なホーミングペプチドの同定によって、送達を誘導するアプローチによる抗癌剤の選択性の増強を検討することが可能となった。しかしながら、モノクローナル抗体と抗癌剤(ドキソルビシン(Trai. P.A., et al 1993 Science 261:212)、メトトレキセート(Kanellos J. et al.,1985 J Natl Cancer Inst 75:319)、及びビンカアルカロイド(Starling J.J. et al.,1991 Cancer Res 41:2965))とを用いたこのような試みで公表されているものの大部分は不成功に終わっている。これらの抗体−薬物抱合体の効力は穏やかなものにすぎず、対応する非抱合薬物に比べて細胞毒性が低いのが通常である。実際に、培養腫瘍細胞に対する抗原特異的な細胞毒性が実証されることは稀であった。一般に、腫瘍が十分に定着する前に治療を開始するか、又は極めて大用量(最大90mg/kg、薬物等価用量(drug equivalent dse))を使用しなければ、腫瘍異種移植動物モデル内でのこれらの抱合体のインビボ治療効果は観察されない。従って、これらの薬剤を用いたときに、ヒトの臨床検査で有意な抗腫瘍効果が観察されなくても(Elias D.J. et al.,1994 Am Respir Crit Care Med 150:1114)(Schneck D. et al.,1990)驚くには当たらない。現に、抱合体の最高循環血清濃度は、それらのインビトロIC50値と同じ範囲でしかなく、せいぜい腫瘍細胞の僅か約50%を消滅させ得るにすぎない。
【0013】
これらの観察結果から、モノクローナル抗体を介して治療用量の細胞毒性薬物を送達する従前の試みは、薬物の選択が不適切であったために、臨床試験において殆ど成功を見ていないと結論付けられた。考えられる(部分的な)解決策の一つとしては、患者の腫瘍部位に治療レベルの抱合体を与えるのであれば、臨床的に用いられている抗癌剤よりずっと高い効力を保有する薬物から免疫抱合体を構成しなければならないとの結論であった。メイタンシノイド、エンジイン、又はインターカレート物質CC1065を含むこのような毒素は、正式に、化学療法剤であるドキソルビシン、メトトレキセート、及びビンカアルカロイドより100乃至1000倍細胞毒性が強いことが示された(Chari RVJ et al.,1995 Cancer Res 55:7049)(Chari RVJ et al.,1992, Cancer Res 52:127)。
【0014】
その他、「Adept」と名付けられたアプローチも設計された。この抗体誘導式酵素プロドラッグ療法(Adept、antibody−directed enzyme prodrug therapy)は、腫瘍細胞表面に酵素を誘導するためにモノクローナル抗体を使用することに基礎を置いており、最終的には、酵素が適切な非活性プロドラッグから抗癌剤を選択的に送達することが予定されている。何れのケースでも、臨床試験が進行中であるが、現在まで、癌の化学療法に導入されたものは存在せず、標的腫瘍細胞を死滅させるための新しいツールが必要とされている。Bagshawe KD,1990. Antibody−directed− enzyme/prodrug therapy(ADEPT) Biochem Soc Trans.18(5):750−2.Melton RG,Sherwood RF.1996 Antibody−enzyme conjugates for cancer therapy. J Natl Cancer Inst,88(3−4):153−65. Rihova B.1997; Targeting of drugs to cell surface receptors. Crit Rev Biotechnol.17(2):149−169. Hudson PJ.2000. Recombinant antibodies: a novel approach to cancer diagnosis and therapy. Expert Opin Investig Drgus 9(6):1231−42。
【0015】
最近、化学療法によって誘導されるアポトーシスの新しい有望な標的としてミトコンドリアが挙げられている(1−7)。レジノイド(resinoid)酸誘導体CD437、ロニダミン、ベトゥリニック酸、及び亜ヒ酸塩を含む4つの異なる抗癌剤が、ミトコンドリアに対する直接作用によって癌細胞のアポトーシスを誘導することが示されている。これらの抗癌剤とミトコンドリアの相互作用は、少なくとも一部が透過性遷移孔複合体(PTPC)の開放に起因するミトコンドリア内膜の透過性の増大をもたらす。PTPCの開放は、ミトコンドリアマトリックスの膨張、内部膜間電位(ΔΨm)の散逸、反応性酸素種(ROS)の生成の増大、及び膜間腔から細胞質へのアポトーシス誘発性タンパク質の放出をもたらす。このようなミトコンドリアのアポトーシス誘発性エフェクターには、カスパーゼ活性化因子チトクロムc、アポトーシス誘導因子(AIF)、及びプロカスパーゼが含まれる(2−6)。CD437、ロニダミン、ベトゥリニック酸、及び亜ヒ酸塩によって誘導されたアポトーシスの徴候は全て、特定のPTPCタンパク質(すなわち、サイクロスポリンA(CsA、サイクロフィリンDのリガンド)とボンクレキン酸(BA、アデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)のリガンド))に作用する二つの物質によって抑えられる。このため、PTPCの開放は、これらの物質によって引き起こされるアポトーシスにとって決定的な現象であるものと思われる。
【0016】
ハチ毒から単離されたペプチドであるマストパランは、CsA阻害可能な機序を介してミトコンドリア膜の透過化を誘導し、無処置の細胞に加えるとミトコンドリア効果を介してアポトーシスを誘導することが知られた最初のペプチドである。このペプチドは、α−ヘリックス構造を有しており、ヘリックスの一方の側に分布した正電荷を幾つか有している。類似のペプチド(KLAKLAKKLAKLAK又は(KLAKLAK)2(K=リジン、L=アラニン、A=ロイシン))を精製されたミトコンドリアに加えたときに、ミトコンドリアの膜を崩壊させることが最近見出されたが、この効果の機序は明らかにされていない。
【0017】
各組織の脈管構造は高度に特殊化されている。リンパ組織中の内皮は、リンパ球ホーミングのための組織特異的受容体を発現しており、ファージホーミングを用いた最近の研究により、他の正常な組織の脈管構造中に前例のない程度の分化が明らかとされた。表面にランダムなペプチド配列が置き換えられたファージのライブラリをインビボでスクリーニングすることによって、多数の正常組織に対する特異的なホーミングペプチドが得られた。ファージペプチドがホーミングした組織特異的内皮性分子は、転移性悪性細胞の受容体として働く可能性がある。腫瘍脈管構造の探索によって、血管新生性の新生脈管構造中に選択的に発現された内皮性受容体にホーミングするペプチドが得られた。これらの受容体、及び各個の正常組織の脈管構造に対して特異的な受容体は、特定の部位に治療法を誘導する上で有用である可能性が存在する。Ruoslahti E, Rajotte D.2000;An address system in the vasculature of normal tissues and tumors. Annu Rev Immunol.18:813−27.
Ellerbyらは、最近、ミトコンドリア毒性を有する(KLAKLAK)2モチーフを、内皮細胞と相互作用する標的誘導ペプチドに融合させた。このような融合ペプチドは内部移行され、新生血管由来の内皮細胞中にミトコンドリア膜の透過化を誘導し、ヌードマウスに移植されたMDA−MD−435乳癌異種移植を死滅させる。同様に、Baxに融合されたインターロイキン−2(IL−2)タンパク質を含有する組換えキメラタンパク質は、IL−2受容体を有する細胞にインビトロで選択的に結合し、該細胞を死滅させる。このように、細胞表面に誘導し、細胞質内に移動させ、ミトコンドリア膜の透過化を介してアポトーシスを誘導する特異的細胞毒性物質は、癌の治療において有用な可能性がある。
【0018】
形質転換細胞を選択的に根絶させることが本分野において必要とされている。一つの戦略は、選択した細胞種に毒性物質を誘導することである。より具体的には、ミトコンドリアの透過化とアポトーシスを制御する方法と試薬が本分野で必要とされている。
【発明の開示】
【0019】
発明の要約
少なくとも従来技術に存する幾つかの制約を克服するために、本発明は、細胞誘導部分(TARGと名付ける)と、PTPC相互作用部分(TOX/SAVEと名付ける)と、任意的なミトコンドリア局在化配列(MLS)とを含有する多機能性分子のペプチド又は偽ペプチドファミリーを提供する。本発明の好ましい態様では、前記多機能性分子のTOX/SAVE部分は、PTPCの中心的成分であるアデニンヌクレオチド輸送体(ANT、Adenine Nucleotide Translocator)と直接相互作用するペプチド又はペプチド類似分子である。
【0020】
したがって、本発明は、二つのカテゴリーの標的とされた細胞死制御分子を含む。
【0021】
・TARG−(MLS)−TOXは、PTPC依存性ミトコンドリア膜の透過化とこれに続く細胞死を誘導する多機能性分子である。
【0022】
・TARG−(MLS)−SAVEは、PTPC及び/又はANTとの相互作用を通じて、ミトコンドリア膜の透過化から細胞を保護し、その結果、細胞を細胞死から保護する多機能性分子である。
【0023】
本発明は、さらに、本発明のキメラポリペプチドをコードするベクターを提供する。また、本発明は、本発明のベクターを備えた組換え宿主細胞を提供する。さらに、本発明は、その表面上に腫瘍関連抗原を有する癌細胞であって、前記キメラポリペプチドの抗体又は抗体断片を介して、本発明のキメラペプチドが結合された癌細胞を提供する。本発明は、癌細胞を検出する方法も提供する。
【0024】
本発明は、本発明のポリペプチドを用いてアポトーシスを誘導又は抑制する方法も提供する。本発明は、腫瘍細胞中にアポトーシスを誘導する方法を提供する。本発明は、ウイルス感染細胞中にアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを産生するハイブリドーマを提供する。本発明は、これらのハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体も提供する。
【0026】
本発明は、PTPCと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法も提供する。本発明は、ANTペプチドと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法も提供する。本発明は、ミトコンドリアの抗原を同定する方法も提供する。
【0027】
本発明は、本発明のポリペプチドを患者に投与することにより、病的な感染症又は疾病を治療又は予防する方法も提供する。本発明は、本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
ミトコンドリアの内膜タンパク質ANT(adenine nucleotide translocation、ADP/ATPキャリアとも称される)との物理的及び機能的な相互作用を介して、HIV−1にコードされたアポトーシス誘発性タンパク質Vprがミトコンドリア膜の透過化を誘導することが最近発見された。これは、様々な異なる技術、すなわち表面プラズモン共鳴、電気生理学、合成プロテオリポソーム、精製ミトコンドリアに関する研究(呼吸測定、電子顕微鏡、細胞小器官蛍光光度法)、及び無処置細胞のマイクロインジェクションを用いて示された。これらの発見は、2000年9月11日に出願された米国仮出願第60/231,539号(開示内容全体を基礎とし、参考文献として本明細書に援用する)に詳しく記載されている。
【0029】
本発明は、ミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用するペプチド分子(pToxと名付ける)と細胞を標的として誘導することができる分子(pTargと名付ける)との会合(association)に基づいた新規細胞毒性抱合体に関する。本発明は、ミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用するペプチド分子(pSAVEと名付ける)と救出のために細胞を標的として誘導することができる分子(pTargと名付ける)との会合に基づいた新規細胞保護抱合体にも関する。本発明の具体的な態様では、本発明の細胞毒性抱合体は、ウイルス由来のアポトーシス誘発性ペプチドを含む。
【0030】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、腫瘍細胞又は特定の哺乳動物細胞種と選択的に相互作用する腫瘍特異的分子であり、前記多機能性分子は前記哺乳動物又は腫瘍細胞種によって選択的に内部移行し、前記多機能性分子はPTPC及び/又はANTと相互作用して、アポトーシス又は何らかの細胞死プロセスを引き起こす強力なミトコンドリア毒性を発揮する。
【0031】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、血管新生内皮細胞に対して選択毒性を表す。本発明の別の態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、腫瘍細胞に対して選択毒性を表す。
【0032】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、抗体又は組換え抗体断片である。本発明の別の態様では、多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、腫瘍ホーミング(horning)ペプチド(たとえば、CNGRCペプチド、肺ホーミングペプチドCGFECVRQCPERC)である。
【0033】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、HIV−1 Vprタンパク質のC末端部分(アミノ酸52−96)に由来するペプチド又はペプチド類似体である。
【0034】
本発明の1つの態様では、前記多機能性TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、BaxもしくはBidタンパク質等のアポトーシス誘発性のBcl−2ファミリー構成因子、又はそれらの断片である。
【0035】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、表1に記載されているペプチド配列群の中から選択されるD−ペプチド、Ψ−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表1】
【0036】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−SAVEのSAVE部分は、表2に記載されているペプチド配列群の中から選択されるL−ペプチド、D−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表2】
【0037】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−SAVEのTARG部分は、表3に記載されているペプチド配列群の中から選択されるL−ペプチド、D−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表3】
【0038】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTarg部分は、デカン酸CH3(CH2)8CO−である。
【0039】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、抗体、組換え抗体、組換え抗体断片、又はScFv(single chain fragment variable)である。
【0040】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、以下のベクターpACgp67−ScFv461(図1)によってコードされている。
【0041】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、以下のベクターpACgp67−ScFv350(図2)によってコードされている。
【0042】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、EllerbyらによってPCT/US00/01602に定義されている腫瘍ホーミングペプチドである。
【0043】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOX/SAVEのTARG部分は、Pasqualini R, Ruoslahtiによって定義されている脳又は腎臓ホーミングペプチドである(Nature 1996 Mar 28:380(6572):364−6. Organ targeting in vivo using phage display peptide libraries)。
【0044】
本発明の1つの態様では、pToxは、HIV−1のVprペプチド又はその断片である。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のタンパク質R(Vpr)は、96アミノ酸の平均長と約15kDの分子量を有する、ビリオン随伴性ウイルス遺伝子産物である。Vprは、HIV、サル免疫不全ウイルス(SIV)の間で高度に保存されたウイルスタンパク質である。「Yuqi Zhao and Robert T.Elder、“Yeast Perspectives on HIV−1 VPR,” Frontiers in Bioscience 5,d905−916,December 1,2000」を参照。
【0045】
Vprはオリゴマーとして特定されており、その構造的な特徴に基づいて3つのドメイン(両親媒性αヘリックスを形成すると予測されている負に荷電したアミノ末端領域(アミノ酸17−34)、中央の疎水性ドメイン(アミノ酸35−75)、及び正に帯電したカルボキシ末端ドメイン(アミノ酸80−96))に分けられると考えられている。Vprの変異分析により、核内移行、ビリオン組み入れ、及びVprの細胞周期抑止は、異なる機能ドメインによって媒介されていることが示唆されている。アミノ末端のヘリックス内の構造モチーフは、Vprをビリオンにパッケージングし、タンパク質の安定性を維持するのに重要なようである。中央の疎水性領域、特にロイシン−イソロイシン(LR)ドメインは、Vprの核移行に関わっていると報告されている。Vprの細胞周期抑止機能の多くは、カルボキシ末端内の正に荷電した領域内に位置づけられることが明らかとされた。「Tomoyuki Yamaguchi, Nobumoto Watanabe, Hiromitsu Nakauchi, and Atsushi Koito,“Human Immunodeficiency virus type 1 Vpr Modifies Cell Proliferation via Multiple Pathways,” Microbiol,Immunol.,43(5),437−447,1999」を参照。
【0046】
ヒト免疫不全ウイルス1型のウイルスタンパク質R(Vpr)のアミノ酸配列を以下に示す。
【0047】
MEQAPEDQGPQREPYNEWTLELLEELKSEAVRHFPRIWLHNLGQHIYE
TYGDTWAGVEAIIRILQQLLFIHFRIGCRHSRIGVTRQRRARNGASRS
Vpr及び保存されたH(F/S)RIG反復モチーフを含有するペプチドは、ヒトCD4細胞を素早く貫通し、アポトーシスによるミトコンドリアの機能不全と死を引き起こすことができる。より具体的には、組換えVpr及び保存された配列HFRIGCRHSRIGを含有するVprのC末端ペプチドは、CD4+ Tリンパ球の透過化、ミトコンドリア膜電位の劇的な減少を引き起こし、最終的には細胞死を招来させ得る。Vpr及び保存された配列を含有するVprペプチドは素早く細胞を貫通して、DNAと共存し、顆粒密度(granularity)の増加と密集したアポトーシス小体(dense apoptotic body)の形成とを引き起こす。Vpr処理した細胞はアポトーシスを起こし、これはDNAの断片化の実証によって確認された。「C.Arunagiri, I.Macreadie, D.Hewish and A.Azad,“A C−terminal domain of HIV−1 accessory protein Vpr is involved in penetration, mitochondrial dysfunction and apoptosis of human CD4+ lymphocytes,” Apoptosis 1997;2:69−76.」を参照。
【0048】
酵母モデル系を用いて、VprのC末端部分、特に配列HFRIGCRHSRIGに関連した細胞破壊活性が存在することが確認されている。Vpr及び配列HFRIGCRHSRIGを含有するVprの一部は、ヒトリンパ球を含む広範な哺乳類細胞を死滅させることができる。「I.G.Macreadie, A,Kirkpatrick, P.M. Strike, and A.A. Azad,“Cytocidal Activities of HIV−1 VPR and Saclp peptides Bioassayed in Yeast,” Protein and Peptide Letters, Vol.4, No.3, pp.181−186,1997」を参照。
【0049】
12アミノ酸のαヘリックスモチーフ(Vpr71−82)内のC末端部分(Vpr52−96)は、重要な意味を持つアルギニン(R)残基を幾つか含有しており(R73、R77、R80)、種々の病原性HIV−1分離株の間で強固に保存されている(L.G. Macreadie, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 2770−2774(1995). I.G.Macreadie, et al., FEBS Lett. 410, 145−149(1997). E.Jacotot, et al., J.Exp.Med.191,33−45(2000))。このため、本発明のキメラポリペプチドのアポトーシス誘発性部分(pTox)は、例えば、配列HFRIGCRHSRIG(HIV−1 Vpr71−82)、HFKIGCKHSKIG、Vpr71−96、Vpr52−96、又はD[HFRIGCRHSRIG]のような偽ペプチド変種を含有し得る。
【0050】
Vprペプチドの他の変種を本発明に利用することもできる。一対のH(F/S)RIG配列モチーフ(HIV−1 Vprの残基71−75及び78−82)を包含するVprのペプチド断片は、細胞膜の透過化と死を酵母及び哺乳類細胞に引き起こすことが示されている。ペプチドVpr59−86(Vprの残基59−86)は、残基60−77を包含し、残基62の近傍にねじれ(kink)を有するαヘリックスを形成する。反復配列モチーフ(HFRIG)のうち第一のモチーフは明瞭なαヘリックスドメインの中に関与しているのに対して、第二のモチーフ(HSRIG)はヘリックスドメインの外側に位置し、規則性が減少した領域が後置されたリバースターンを形成していることが示されている。一方、ペプチドVpr71−82とVpr71−96(配列モチーフはN末端に位置している)は、C2Hの化学シフトによって判断したところによると、同様の条件下で大部分が構造化されていなかった。このように、ヘリックス構造が先行しているときには、HFRIGとHSRIGモチーフは、それぞれα−ヘリックス構造とターン構造を採っているが、単独では大部分が構造を形成していないことが示されている。これらの知見には、これらのモチーフを含有する合成ペプチドの構造−機能の相関を解釈するための示唆が存在する。例えば、HFRIGとHSRIG配列モチーフは、ヘリックス構造が先行しているときには、それぞれヘリックス構造とターン構造を採っているが、完全長のVprにおけるように、単独では大部分が構造を形成していないので、本発明のキメラポリペプチドのpTox成分として使用する場合、それらが完全長のタンパク質におけると同一の構造を確実に採ることができるようにするために、ヘリックスの少なくとも1乃至2ターンを支えるのに十分な7乃至8残基をVprのN末端に含めるべきである。「Shenggen Yao, Allan M. Torres,Ahmed A. Azad, Ian G. Macreadie and Raymond S. Norton,“Solution Structure of Peptides from HIV−1 Vpr Protein that Cause Membrane Permeabilization and Growth Arrest,” J.Peptide Sci.4:426−435(1998).」を参照。Vpr遺伝子は96アミノ酸のタンパク質をコードしているが、異型が観察されている(例えば、HIV−1HXB2由来のVprsは、それぞれ、97及び90個のアミノ酸残基を有する。)。これらの変種も、本発明に利用できることが理解されるであろう。
【0051】
最も効果的な毒性を与えるためには、天然の配列から得た約8つのアミノ酸で、HFRIGCRHSRIGの両側を囲むべきである。Vpr結合、ミトコンドリア膜の透過化、又はアポトーシスを阻害又は増強する9アミノ酸超のVprポリペプチド及びペプチド、並びにサイズが少なくとも10−20、20−30、30−50、50−100、及び100−365アミノ酸のペプチドを本発明に用いることもできる。これらのポリペプチド及びペプチドをコードするDNA断片も本発明に包含される。隣接する残基は、上述したヘリックス構造を崩壊させるものにするべきではない。
【0052】
Vpr変種及び他のウイルスのアポトーシスペプチドのアポトーシス媒介能を評価することが可能であり、これによって、それらを本発明でpToxとして使用することが適切かどうかを評価することができる。Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、多くの技法を使用し得ること、及びこれらの態様が本発明の範囲を限定するものでは決してないことが理解される。例えば、1つの態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、表面プラズモン共鳴を使用する。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、電気生理学を使用する。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、精製されたミトコンドリアが使用される。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、合成プロテオリポソームが使用される。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、生きた細胞のマイクロインジェクションが使用される。これらの技術は、米国仮出願弟60/231,539号に記載されている。
【0053】
別の態様では、Vpr−ANTの相互作用をスクリーニングするために、以下のように、SUNYで開発された酵母ツーハイブリッド系(Fieldsらの米国特許5,282,173号;J.Luban and S.Goff., Curr Opin. Biotechnol.6:59−64,1995;R.Brachmann and J.Boeke,Curr Opin.Biotechnol.8:561−568,1997;R.Brent and R.Finley,Ann.Rev.Genet.31:663−704,1997;P.Bartel and S.Fields,Methods Enzymol.254:241−263,1995に記載されている)を使用することもできる。相互作用に不可欠なVpr若しくはその一部、又はその他のウイルスアポトーシスペプチドをGal4 DNA結合ドメインに融合して、Gal 4転写活性化ドメインに融合されたANT分子とともに、ヒスチジン欠損プレート上で増殖するためにGAl4活性に依存する株に導入することができる。Vprポリペプチド又はその他のウイルスアポトーシスペプチドがANT分子と相互作用することにより、両分子を含有する酵母の増殖が可能となり、この相互作用を阻害又は変化させる分子(すなわち、増殖を阻害又は増強することによって)をスクリーニングすることができる。別の態様では、酵母ツーハイブリッドアッセイにおける結合を測定するために、検出可能なマーカー(例えば、β−ガラクトシダーゼ)を使用することができる。
【0054】
あるいは、Vprペプチド断片又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドの結合特性は、Vprペプチド断片又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANT発現細胞への結合をFACS分析で分析することによって測定することができる。これにより、ペプチドの結合の性質を決定し、ペプチドがANTに結合する相対的能力を識別することが可能となる。同様に、ANT結合活性を特定するためには、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドを用いたインビトロ結合アッセイを使用することができる。
【0055】
別の具体的な態様では、本発明の細胞毒性抱合体には、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)由来のアポトーシス誘発性ペプチドが含まれる。前記抱合体のアポトーシス誘発部分(pTox)は、例えば、配列DKRTQFWRYFPGN(hANT2104−116[A114P])又は[DKRTQFWRYFPGN]等の偽ペプチド変種を含有することができる。
【0056】
別の具体的な態様では、本発明の細胞保護抱合体には、ANT由来の抗アポトーシスペプチドが含まれる。前記抱合体の抗アポトーシス部分(pSave)は、例えば、配列DKRTQFWRYFAGN(hANT2104−116)、配列LASGGAAGATSLCFVYPL(ANT117−134)、又はD[DKRTQFWRYFPGN]等の偽ペプチド変種を含有することができる。
【0057】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分は、抗体又は抗体断片であり得る。抗体又は抗体断片は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の全部又は一部であり得る。「抗体」という語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの断片、並びに組換えによって作製された任意の結合パートナー(binding partners)を含むものとする。約107M−1以上のKaで結合すれば、抗体が特異的に結合すると定義する。結合パートナー又は抗体の親和性は、伝統的な技術、例えば、「Scatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci.,51:660(1949)」に記載されている技術を用いて容易に測定することができる。
【0058】
本明細書で使用する「抗体断片」という語には、以下のものが含まれる。
【表4】
モノクローナル抗体の断片は、小さな抗原誘導分子として特に興味深い。抗体断片は、他のpTox因子を有するようにデザインされた本発明のキメラポリペプチド(治療用抱合体等)を組み立てるのにも有用である。インビボで使用する場合、抗体の断片は薬物動態学的な挙動が変化しているので細胞毒性物質を用いた癌の治療に有用であるとともに、身体の組織中に素早く浸透させるのに有用であり、治療技術に優れた効果を発揮するため有益である。
【0059】
本発明に使用するのに特に適した抗体断片は、抗原結合活性を有する最小のFv断片である。Fv断片の二つの鎖は、共有結合を持たず、非共有結合的相互作用も小さく、Fd及びFab断片の軽鎖よりも会合の安定性が低いが、機能的なFv断片が数多くの様々な抗体に対して発現されている。本発明に使用されるFv断片を安定させるには、二つの方策を利用することができる。第一に、二つのドメイン間でジスルフィド結合を形成できるようにするためにVHとVLの各鎖上の選択した残基をシステインに変異させる。第二に、一本鎖Fvとして知られる単一のポリペプチド鎖としてFvが得られるように、あるドメインのC末端と別のドメインのN末端との間にペプチドリンカーを導入する。
【0060】
このように、一本鎖Fvs(ScFvs)(ポリペプチドリンクによって互いに共有結合で係留され、一つのポリペプチド鎖を形成する組換えVL及びVH断片)は、本発明において有用である。Fv遺伝子を発現させるためには、骨髄腫細胞、昆虫、酵母、及び大腸菌(Escherichia coli)細胞を含む幾つかの系を効果的に使用することができる。大腸菌(E.Coli)中での発現は、頻繁に使用されている製造法であって、細胞内発現と分泌の両者によって、ScFvを高収率で作製することが可能となる。
【0061】
ScFv分子の作製には、あるドメインのC末端と別のドメインのN末端の間の35乃至40Åという距離を架橋して、Fv構造が正しくフォールディングし組み立てられるようにするための適切なペプチドリンカーを同定することが必要である。数種の異なるリンカーが用いられており、機能的なScFvを与えることが示されている。通常、3−18アミノ酸の平均長を有するポリペプチドがリンクとして使用される。それらは、セリン及び/又はグリシン残基に富んでいてもよく(これにより柔軟性が得られる)、あるいは、帯電したグルタミン酸及び/又はリジン残基に富んでいてもよい(これにより溶解度が向上する)。リンカーは、適切な長さとコンフォメーションのタンパク質断片を既存のタンパク質構造から検索して選択することもできるし、15アミノ酸の配列(Gly4Ser)3等の簡易で柔軟な構造を基礎として新規に(de novo)設計することによって選択することもできる。
【0062】
可能な二つの方向性の活性な一本鎖Fv分子(VH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VH)は何れも本発明に使用できるが、本来のコンフォメーションを維持して完全な抗原結合を保つには、一方のドメインのN末端又は他方のドメインのC末端が遊離状態にあることが必要な可能性があるので、抗体の中には、一方の方向性が好適なものがあるかもしれない。
【0063】
ScFvには、凝集し易く、二量体、三量体、及び多量体を形成するものが存在するかもしれない。安定なpTarg構造を作製するためには、極めて短いリンカーを用いるか、又はリンカーを全く用いない場合に二量体又はその他の多量体が形成される可能性を調べることができる。ある特異性を有する抗体のVHを別の特異性を有するVLに融合させることによって(この逆も同様)、二つの異なる結合特異性を有するpTarg分子を作出するために、このようなアプローチを使用することも可能である。
【0064】
ジスルフィド結合によって安定化されたFv’sは、本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分として用いることもできる。VHドメインとVLドメインの間にジスルフィド結合を導入してジスルフィドで連結されたFvを形成させるには、システインに変異させたときに、結合部位のコンフォメーションに直接影響を与える可能性が少なく且つFvの構造に緊張を与えずにジスルフィド結合を形成することができる、各鎖上の近接した残基を同定する必要がある。このようなジスルフィド結合の形成をもたらし、抗原結合特性を保持している安定化されたFv断片を産生させ得ると思われる部位が、CDR領域とフレームワーク領域の両方に見出されている。
【0065】
サイズが小さく、インビボでのクリアランスが迅速で、安定であり、加工もし易いので、本発明において用いられるScFvsは、疾病(特に癌)の治療において様々な用途を有している。ScFvsは、抗原に対して、モノクローナル抗体と同じ親和性と特異性を表すことができる。異なる特異性を有する多数のScFvが構築されている。それらは、強力な毒素(pTox)に遺伝的に融合するのに有用である。ScFvが一価であることが不利益ならば、結合効率が増大した二価又は多価の構築物を利用することもできる。
【0066】
本発明の好ましい態様では、細胞毒性抱合体の標的誘導部分(pTarg)は、腫瘍特異的抗体の組換え部分(ScFv)(M350及びV461モノクローナル抗体のScFv形式等)である。このハイブリドーマは、2001年1月24日に、受託番号I−2617でCNCMに寄託した。
【0067】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分は、好ましくは、モノクローナル抗体又はその断片である。ヒト細胞抗原に対するモノクローナル抗体が好ましい。現在、数多くの腫瘍関連抗原が公知であり、性質も特定されているが、これらに対する抗体により、様々な種類の腫瘍に誘導することが可能となる。有用な腫瘍関連抗原は、正常組織には存在せずに、腫瘍細胞上に高レベルで存在しているもの、好ましくは、腫瘍の全細胞上に均一に存在しているものである。また、抗原は、腫瘍から血液へと流出すべきではない。
【0068】
一般的に使用されている腫瘍関連抗原とそれらに対する抗体の例を下表に記す。
【表5】
【0069】
重要な検討事項は、腫瘍部位に局在する抗体の絶対量である。したがって、腫瘍に大量に局在して、大用量のpToxを輸送するが、循環及び身体の他の部分からは素早く除去され、非特異的な毒性を最小限に抑える分子が理想的な分子となろう。無処置の完全な抗体は、通例、長期間にわたって循環し、腫瘍部位に高レベルの活性を蓄積させるのに対して、抗体の断片はこれより急速に除去され、正常組織への投薬量が節約される。
【0070】
抗体断片は、ファージディスプレイ技術によって調製することもできる。ファージディスプレイは選択の技術であり、この技術では、抗体断片(ScFv)を線状ファージfdの表面上に発現される。このために、抗体可変遺伝子のコード配列を、ファージ粒子の末端に位置するマイナーコートファージタンパク質III(g3p)をコードする遺伝子と融合させる。融合された抗体断片をビリオン表面上にディスプレイし、不溶化抗原上への吸着により、断片を有する粒子を選択することができる(パニング)。細菌細胞を再感染させるために、溶出後、選択した粒子を使用する。吸着と感染を繰り返すことにより、濃縮が達成される。細菌のプロテアーゼはg3pタンパク質と抗体断片との結合を切断することができ、感染細菌細胞によって可溶性抗体断片が産生されることになる。可溶性ScFvを放出するためには、g3p遺伝子の切除を行うか、抗体遺伝子とg3p遺伝子間にアンバー停止コドンを設ける。
【0071】
免疫グロブリン及びその変異種は公知であり、組換え細胞培養中で数多く調製されている。例えば、米国特許第4,745,055号、欧州特許第256,654号、Faulknerら、Nature 298:286(1982)、欧州特許第120,694号、欧州特許125,023号、Morrison,J.Immun.123:739(1979)、Kohlerら、P.N.A.S.USA 77:2197(1980)、Rasoら、Cancer Res.41:2073(1981)、Morrisonら、Ann.Rev.Immunol.2:239(1984)、Morrison、Science 229:1202(1985)、Morrisonら、P.N.A.S. USA 81:6851(1984)、欧州特許第255,694号、欧州特許第266,663号、及びWO 88/03559を参照。再集合された免疫グロブリン鎖も公知である。例えば、米国特許第4,444,878号、WO 88/03565、欧州特許第68,763号、及びこれらに引用されている参考文献を参照。免疫グロブリン軽鎖又は重鎖定常領域をコードしているDNAが公知であり、又はcDNAライブラリーから容易に手に入れることができ、若しくは合成される。例えば、Adamsら、Biochemistry 19:2711−2719(1980)、Goughら、Biochemistry 19:2702−2710(1980)、Dolbyら、P.N.A.S. USA 77:6027−6031(1980)、Riceら、P.N.A.S. USA 79:7862−7865(1982)、Falknerら、Nature 298:286−288(1982)、及びMorrisonら、Ann.Rev.Immunol.2:239−256(1984)を参照。これらの素材及び技術は、本発明のキメラポリペプチドのpTargを合成するために用いることができる。
【0072】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分として用いられるポリクローナル抗体は、本分野において周知である手法を用いて、様々な採取源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、又はラットから容易に作製することができる。一般的には、精製された細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質又は細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質のアミノ酸配列に基づく適宜にコンジュゲートされたペプチドを、通例非経口的注入によって宿主動物に投与する。細胞表面タンパク質又は糖タンパク質の免疫原性は、アジュバント(例えば、フロイントの完全又は不完全アジュバント)の使用によって増強することができる。強化免疫の後、少数の血清サンプルを集め、細胞表面タンパク質又は糖タンパク質に対する反応性を調べる。このような測定に有用である様々なアッセイの例には、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、及びサンドイッチアッセイの他に、「Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane(eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988」に記載されているアッセイが含まれる。米国特許第4,376,110号及び第4,486,530号を参照。
【0073】
pTarg成分として用いられるモノクローナル抗体は、周知の手法を用いて容易に調製することができる。例えば、米国特許第RE32,011号、4,902,614号、4,543,439号、及び4,411,993号、「Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKearn, and Bechtol(eds.),1980.」に記載されている手法を参照。簡潔に述べると、必要に応じてアジュバントの存在下で、単離精製された細胞表面タンパク質又は糖タンパク質、複合細胞表面タンパク質又は糖タンパク質を、約3週の間隔で少なくとも一回、好ましくは少なくとも二回、マウス等の宿主動物の腹腔内に注射する。次いで、従来のドットブロット技術又は抗体捕捉(ABC、antibody capture)によってマウスの血清をアッセイし、何れの動物が融合に最良であるかを決定する。約2乃至3週間後に、マウスの静脈内に、細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質又は複合細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質を追加免疫する。その後、マウスを屠殺し、確立されたプロトコールに従って、脾臓細胞をAg8.653(ATCC)等の市販の骨髄腫細胞と融合させる。簡潔に述べると、骨髄腫細胞を培地中で数回洗浄し、骨髄腫細胞1に対して脾臓細胞約3の比率で、マウスの脾臓細胞に融合させる。融合剤は、本分野で使用されている任意の適切な物質、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。融合細胞を選択的に増殖させる培地を含有するプレート中に融合細胞を蒔く。次いで、約8日間、この融合細胞を増殖させることができる。得られたハイブリドーマからの上清を集め、まず、ヤギ抗マウスIgでコートしたプレートに加える。洗浄の後、125I標識細胞表面タンパク質又は糖タンパク質等の標識を各ウェルに加えた後、インキュベートする。続いて、オートラジオグラフィーによって、陽性ウェルを検出することができる。陽性クローンは大量培養で増殖させることができ、引き続き、プロテインAカラム(Pharmacia)を通して上清を精製する。
【0074】
pTarg成分に対するモノクローナル抗体は、「Alting−Mees et al.,“Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas”, Strategies in Molecular Biology 3:1−9(1990)」(参考文献として本明細書に援用する)に記載されている技法等の別の技法を用いて作製することもできる。同様に、結合パートナーは、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を取り込むための組換えDNA技術を用いて構築することができる。このような技術は、「Larrick et al.,Biotechnology,7:394(1989)」に記載されている。
【0075】
pTarg成分として用いられるモノクローナル抗体及びその断片には、キメラ抗体、例えば、マウスモノクローナル抗体をヒト化したものが含まれる。このようなヒト化抗体は、公知の技術によって調製することができ、抗体をヒトに投与したときの免疫原性を減らせるという利点がある。1つの態様では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体(又はその抗原結合部位のみ)の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とを備える。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位とヒト抗体由来の(抗原結合部位を欠く)可変領域断片とを備えてもよい。キメラ抗体及びさらに加工したモノクローナル抗体を作製する操作には、「Riechmann et al.,(Nature 332:323,1988)」、「Liu et al.(PNAS 84:3439,1987)」、「Larrick et al.(Bio/Technology 7:934,1989)」、及び「Winter and Harris (TIPS 14:139,May 1993)」に記載されている操作が含まれる。遺伝子組換えで抗体を作製する操作は、英国特許第2,272,440号、米国特許第5,569,825号、及び5,545,806号、並びにこれらの優先権主張の基礎となっている関連出願(参考文献として、全て本明細書に援用する)に見ることができる。
【0076】
本発明のさらなる態様では、細胞毒性キメラポリペプチドの標的誘導部分(pTarg)は、腫瘍ホーミングペプチド(tumor homing peptide)である。このような腫瘍ホーミングペプチドには、Ellerらによって、PCT/US00/01602(開示内容全体を基礎とし、本明細書に参照文献として援用する。)の実施例V、VI、VII、VIIIに記載された全てのホーミング配列が含まれる。
【0077】
本発明の好ましい態様では、前記キメラポリペプチドは、配列CNGRCGG−HFRIGCRHSRIG、又はCNGRCGG−D[HFRIGCRHSRIG]、又はCNGRCGG−Vpr52−96、又はCNGRCGG−DKRTQFWYFPGN、又はCNGRCGG−D[DKRTQFWYFPGN]、又はACDCRGDCFCGG−HFRIGCRHSRIG、又はACDCRGDCFCGG−D[HFRIGCRHSRIG]、又はACDCRGDCFCGG−Vpr52−96、又はACDCRGDCFCGG−DKRTQFWYFPGN、又はACDCRGDCFCGG−[DKRTQFWYFPGN]、又はM350/ScFv−HFRIGCRHSRIG、又はM350/ScFv−D[HFRIGCRHSRIG]、又はM350/ScFv−Vpr52−96、又はM350/ScFv−DKRTQFWYFPGN、又はM350/ScFv−D[DKRTQFWYFPGN]を有する。
【0078】
本発明のキメラポリペプチドは、様々な慣用技術によって作製することができる。このような技術には、「B.Merrifield, Methods Enzymol,289:3−13,1997」、「H.Ball and P.Mascagni,Int.J.Pept.Protein Res.48:31−47,1996」、「F.Molina et al.,Pept.Res.9:151−155,1996」、「J.Fox, Mol.Biotechnol.3:249−258,1995」、及び「P.Lepage et al.,Anal.Biochem.213:40−48,1993」に記載されている技術が含まれる。
【0079】
ペプチドは、古典的なFmocをベースとした合成及び偽ペプチド合成を用いて、マルチチャネルのペプチド合成機で合成することができる。本発明の1つの態様では、Vpr52−96、Vpr71−96、Vpr71−82、並びに表I、II、IIIに記載されている全てのTox、Save、及びTARGペプチドは、固相ペプチド化学合成によって合成される。樹脂から切断した後、逆相HPLCによって、ペプチドを精製し、分析する。HPLC鑑定によれば、ペプチドの純度は、通例、98%以上である。各ペプチドの完全性は、マトリックス支援レーザー脱離飛行時間型分析法によって調節することができる。生体液中でペプチドが急速に崩壊するのを避けるために、有利には、一又は数個のアミド結合を、レトロ−インベルソ(NH−CO)、メチレンアミノ(CH2−NH)、カルバ(CH2−CH2)、又はカルバザ(CH2−CH2−N(R))結合のようなペプチド結合イソステアによって置き換えることができる。
【0080】
あるいは、所望のペプチドを産生するための発現ベクター中に所望のペプチド配列をコードするDNA配列をサブクローニングすることによって、本発明のキメラポリペプチドを調製することもできる。有利には、ペプチドをコードするDNA配列は、適切なリーダーペプチド又はシグナルペプチドをコードする配列に融合される。あるいは、従来の技法を用いて、DNA断片を化学的に合成してもよい。DNA断片は、公知の制限酵素(New England Biolabs 1997 Catalog, Stratagene 1997 Catalog,Promega 1997 Catalog)を用いて、DNA、例えばHIV−1のクローンを制限エンドヌクレアーゼ消化し、アガロースゲル電気泳動等の慣用手段で単離することによって作製することもできる。
【0081】
別の態様では、所望のタンパク質又はペプチド断片をコードするDNA配列を単離し、増幅するために、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法を用いることができる。DNA断片の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドが、5’及び3’プライマーとして用いられる。オリゴヌクレオチドは、増幅されたDNA断片の発現ベクター中への挿入を容易にするために、制限エンドヌクレアーゼのための制限部位を含有することができる。PCR技術は、「Saiki et al.,Science 239:487(1988)」、「Recombinant DNA Methology, Wu et al.,eds.,Academic Press, Inc., San Diego(1989),p.189−196」、及び「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds,Academic Press,(1990)」に記載されている。もちろん、ポリペプチド及びDNA断片を調製するためには多くの技術を使用することができ、この態様は本発明の範囲を限定するものでは決してないことは理解されるであろう。
【0082】
TARGをTOXに連結し、またTARGをSAVEに連結するためには、分子の化学特性に応じて、幾つかの方法を使用することができる。例えば、応用免疫学の分野で日常的に使用されている、ハプテンをキャリアタンパク質に連結する方法がある。1つの態様では、例えば、カルボジイミド結合を用いて、予め作製されたPTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体断片(pTarg)として抗体に抱合させることができる。カルボジイミドには、一般式R−N+C=N−R(R及びRは、脂肪族又は芳香族である)を有する一群の化合物が含まれ、ペプチド結合を合成するために使用される。調製操作は簡易で、比較的早く、温和な条件下で行われる。カルボジイミド化合物はカルボキシル基を攻撃して、それらを遊離アミノ基の反応部位へと変化させる。カルボジイミド結合は、抗体産生用の様々な化合物を抱合させるために使用されている。
【0083】
水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体又は抗体断片分子に抱合させるのに有用であり得る。このような抱合には、アミノ基(例えば、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)によって与えられ得る)とカルボキシル基(抗体又は抗体断片によって与えられ得る)の存在が必要である。
【0084】
ペプチド結合の直接形成のためにカルボジイミドを用いることに加え、EDCを用いてN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルのような活性エステルを調製することもできる。次いで、アミノ基のみに結合するNHSエステルは、オキソルビシンの単一のアミノ基とアミド結合を形成させるために使用することができる。抱合体の形成収率を増加させるために、抱合にはEDCとNHSを併用するのが一般的である。
【0085】
PTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体又は抗体断片に抱合させるための他の方法を使用することも可能である。例えば、過ヨウ素酸ナトリウム酸化に引き続き適切な反応剤の還元的アルキル化を使用することができるし、グルタルアルデヒド架橋を使用することもできる。しかしながら、本発明のキメラポリペプチドを作製する方法として何れの方法を選択したかにかかわらず、抗体又は抗体断片が標的誘導能を保持し、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)がその活性を維持していることを測定しなければならないことを認識すべきである。
【0086】
本発明のキメラポリペプチドには、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)(pTarg)と抗体又は抗体断片(pTox)との間に機能的に介在された特異的に切断不能又は切断可能なリンカーペプチドをさらに取り込ませてもよい。このようなリンカーペプチドをキメラ構築物中に導入することによって、無傷の抗体又は抗体断片から無傷のPTPC制御分子(TOX又はSAVE)を分離するように切断され得る部位が、得られたキメラポリペプチドの中に与えられる。このようなリンカーペプチドは、例えば、トロンビン切断、第X因子切断、又は他のペプチダーゼ切断に対して感受性のあるペプチドであり得る。あるいは、キメラポリペプチドがメチオニンを欠いている場合には、臭化シアン処理に対して感受性のあるペプチドによって、抗体又は抗体断片を分離させてもよい。一般的には、このようなリンカーペプチドは、リンカーペプチド内にのみ見出され、キメラポリペプチドを構成するTARG、TOX,又はSAVE断片中の何れの位置にも見出されない部位を描くであろう。
【0087】
本明細書には、生理的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤等の他の成分とともに、有効量の本発明のキメラポリペプチドを含む組成物が記載されている。前記キメラペプチドは、薬学的に有用な組成物を調製するために使用されている公知の方法に従って調合することができる。それらは、唯一の活性物質として、又は所定の適応症に適した他の公知の物質とともに、薬学的に許容される希釈剤(例えば、生理食塩水、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸緩衝溶液)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバント、及び/又は担体とともに、混合物として混ぜ合わせることができる。薬学的組成物用の適切な剤形には、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.1980,Mack Publishing Company,Easton,PA」に記載されているものが含まれる。
【0088】
さらに、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと錯体を形成させるか、又はポリ酢酸、ポリグリコール酸、ハイドロゲル、デキストラン等のポリマー化合物中に取り込ませるか、又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層又は多層小胞、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト中に取り込ませることができる。このような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出の速度、及びインビボクリアランスの速度に影響を与えるものと思われ、意図する用途に応じて選択される。
【0089】
キメラポリペプチドを含む本発明の組成物は、任意の適切な態様(例えば、局所的に、非経口的に、又は吸入によって)で投与することができる。「非経口」という用語には、例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内経路による注入が含まれるが、(例えば、疾病又は傷害部位への)局所的な投与も含まれる。インプラントからの徐放も想定される。当業者であれば、治療すべき疾患の性質、患者の体重、年齢、及び一般的な状態、並びに投与経路のような要素に応じて、適切な投与量が変動し得ることを認識することができるであろう。動物試験によって予備的な用量を決定してもよく、本分野で受容されている慣行に従って、ヒトに投与するために投与量の増減を行う。
【0090】
生理的に許容される剤形で核酸を含む組成物も想定されている。例えば、注入用にDNAを調合してもよい。
【0091】
最も一般的な応用の一つでは、本発明は、本発明のキメラポリペプチドをコードする配列を有するDNAセグメントを取り込んだ組換えベクターに関する。本発明において、「キメラポリペプチド」という用語は、ウイルスのアポトーシスペプチドの少なくとも一部が抗体又は抗体断片の少なくとも一部に結合(couple)されている任意のポリペプチドを含むものとして定義される。それぞれ、DNAセグメントとDNAセグメント由来のメッセンジャーの転写と翻訳が機能的になされるように結合を行うことが可能である。
【0092】
本発明のベクターは、キメラポリペプチドをコードする配列が、有効なプロモーターに隣接し、プロモーターの制御下に配置されるように構築されるのが一般的であろう。一定のケースでは、前記プロモーターは原核生物のプロモーターを備え、前記ベクターは原核生物宿主内での発現に適合されているであろう。別のケースでは、前記プロモーターは真核生物のプロモーターを備え、前記ベクターは真核生物宿主での発現に適合されているであろう。後者のケースでは、前記ベクターは、通例、カルボキシ末端アミノ酸の3’の位置であり、且つ前記コードされているキメラポリペプチドの転写ユニットの中にポリアデニル化シグナルをさらに含んでいるであろう。本発明のベクターにおいて特に実用性が高いプロモーターは、発現に使用する細胞に応じて、サイトメガロウイルスプロモーター及びバキュロウイルスプロモーターである。ベクターのプロモーターの正確な性質に関わりなく、本発明の組換えベクターは、以下に記されているDNAセグメントを取り込むであろう。
【0093】
本明細書では、本発明のベクターを取り込んだ組換え宿主細胞の権利も請求されている。組換え宿主細胞は、真核細胞又は原核宿主細胞の何れであってもよい。真核細胞を使用する場合には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が実用的であろう。別の態様では、バキュロウイルスプロモーターと組み合わせて使用する場合には、昆虫細胞株であるSF9又はSF21を使用することができる。
【0094】
以下の実施例で、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0095】
実施例1
マウスモノクローナル抗体(Ac M350)の取得
免疫化の原料としてヒト胎児細胞を選択した。腫瘍細胞上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体を産生させるための免疫化の原料として本発明者らが胎児細胞を使用したのは、胎児と腫瘍の抗原が似ていることが周知であったからである。癌胎児性抗原は、子宮内で成育している間に存在する糖タンパク質であり、出生時には消滅し、病的な状態、特に悪性腫瘍中に再発現することがある。この抗原群の例は多数存在し、最もよく知られたモデルは、70%の肝臓腫瘍に伴うフェトプロテインと、ヒトの臨床治療に頻繁に用いられ、消化管の癌に罹患した患者をモニターするパラメータである<<胎児性腫瘍抗原>>である。
【0096】
A. M350クローンの作製
これらの胎児細胞は、25週齢の女の胎児の乳腺芽を無菌採取して取得した。機械的に乳腺芽を0.5mm3の断片に分離してから、コラーゲナーゼとヒアルロジナーゼで改変した37℃のダルベッコ培地に細胞を再懸濁し、顕微鏡下で観察した後、30分乃至4時間振盪させた。オルガノイドが出現したらすぐに、細胞をFicollの上に載せ、洗浄し、次いで、hepes、インシュリン、コレラ毒素(cholerci toxin)、コルチゾール中、無カルシウムDMEM−F12培地の中で培養した。一週間に一度、細胞を継代培養した。この技法を用いて、細胞を10−20倍に分裂させて、免疫化するのに十分な細胞を得た。
【0097】
Balb/cマウスの腹腔内に4回免疫した。融合は、古典的なKohlerとMilsteinの技術に従って行った。スクリーニングは、胎児の乳腺細胞、成人の乳腺細胞、及び乳癌を用いて行った。数個のクローンが現れ、そのうちの一つ(M350クローン)を乳癌及び正常な乳房組織に対して特に検査した。150の腫瘍切片、すなわち、浸潤性管内(intra−canalar)及び小葉内腺癌、浸潤性小葉腺癌を検査した。検査は、アルカリホスファターゼを用いた免疫酵素技術を用いて行った。検査した腫瘍は全て陽性であったが、乳房試料から採取し、平行して検査した正常な組織は陰性か弱い陽性であった。正常組織の各スライドには、パレアル組織(paleal tissue)内の小葉型上皮構造と空洞が含まれていた。
【0098】
B.その他のハイブリドーマ
関連乳癌抗原に対する新しいマウスモノクローナル抗体の取得。
【0099】
この技術では、3つの異なる乳癌細胞株(MCF7、MDA、ZR75−1)の混合物を、C57/B16マウスの腹腔内に4回免疫した。融合とスクリーニングの後、正常な乳房組織と悪性腫瘍、その他の腫瘍試料、及び末梢血細胞に対して特異性を調べた。表面腫瘍標識を示すモノクローナル抗体を選択した。
【実施例2】
【0100】
実施例2
A. 細胞株とウイルス
5% ウシ胎児血清を補充したTC100の中に、Spodopter frugiperda(Sf9昆虫細胞、Vaughn et coll.,1977)の卵巣組織に由来する挿入細胞(insert cell)とTrichoplusia ni(High Five昆虫細胞)由来の昆虫細胞とを28℃で維持し、組換えバキュロウイルスの増殖と組換えタンパク質の作製に使用した。バキュロウイルスのウイルスDNA(Baculogold,Pharmingen)と組換え導入ベクターDNAを昆虫細胞に同時トランスフェクションした後に、組換えバキュロウイルスを得る。
【0101】
B. 組換え導入ベクター:pVL−PS−gp671
組換えウイルスを作製するための導入ベクターとして、導入ベクターpVL1392(Invitrogen)由来の組換え導入ベクターpVL−PSgp671を使用する。これは、5’から3’方向に、gp67バキュロウイルス糖タンパク質のペプチドシグナル配列と、His(6)−Tagをコードする配列と、第Xa因子の認識配列と、scFv配列をサブクローニングするためのポリリンカー領域と、リンク配列(細胞毒性ペプチドとScFvとの共有結合に必要なGGC)とを含んでいる。
【0102】
gp67由来の前記シグナルペプチド配列は、pVL1392プラスミドのBg/II部位に、gp67のPCR産物(PSgp67−BackとPSgp67−Forをプライマーとし、市販のpcGP67−BプラスミドをテンプレートとしたPCRによって得た)を挿入して付加した。次いで、gp67配列の3’末端へのオリゴヌクレオチドの挿入を使用して、His(6)−Tag配列及び第Xa因子の認識配列をコードする配列を付加した。同様にして、細胞毒性ペプチドとScFvとの共有結合に必要なペプチドモチーフ(−Gly−Gly−Cys)の配列を、ポリリンカーの3’部分に付加した(最初のGは、Xmal部位の最後のヌクレオチドによってコードされている)。
【0103】
重複プライマー:
Th1:GAT CCC ATC ATC ACC ACC ACC AC (BamHI−His(6))
Th2:ATT GAA GGA AGA GAATTC CCATG(第Xa因子の切断−EcoRI−NcoI)
Th3:GCT GCA GCC CGG GGG ATG TTA AA(Pst1−XmaI−GGS−STOP−BamHI)
Th4:CTT CCT TCA ATG TGG TGG TGG TGA TGA TGG(Th1 Th2のリンク)
Th5:GGG CTG CAG CCA TGG GAA TTC T(Th2とTh3のリンク)
Th6:GAT CTT TAA CAT CCC CC
(Th3とpVL、−pg67のリンク)
をBamH1及びBglIに挿入
C. ScFv DNA断片の合成
M350のVH及びVL領域:
M350ハイブリドーマから単離された総RNAを、オリゴ(dT)をプライマーとして用いる逆転写用のテンプレートとして使用した(Reverse Transcription IBI Fermentas)。これらのcDNAと特異的プライマー(マウスIg−Prime−Kit、Novagen)を用いて実施したPCRによって、VHとVL鎖が選択的に増幅された。次いで、pST−Blue 1プラスミド中に、これらの領域を「平滑末端」としてクローニングし、配列を決定した。
【0104】
他のハイブリドーマのVH及びVI領域:
選択したハイブリドーマから単離された総RNAを、オリゴ(dT)をプライマーとして用いる逆転写用のテンプレートとして使用した(Reverse Transcription IBI Fermentas)。特異的プライマー(マウスIg−Prime−Kit、Novagen)を用いたPCRによって、VHとVL鎖が選択的に増幅された。次いで、これらの産物をpGEMT(TA cloning System front PROMEGA)ベクター中にクローニングし、配列を決定した。クローンtherap.99B3(図3)、クローンtherap.88E10(図4)、及びtherap.152C3(図5)から、新しい3つのVH及びVL配列が確定された。
【0105】
ScFv−導入ベクターの獲得:
二段階の融合PCRによって、VH−リンク−VLキメラDNAを得た(図12)。第一段階では、それぞれ、VH鎖の3’とVL鎖の5’末端にリンク配列(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)を付加した。第二段階は、キメラDNA(VH−リンク−VL)を与えるPCR融合物であった。この第二段階で用いたプライマーの群によって、VHとVLには、それぞれ、最終産物をpVL−PSp671ベクター中にサブクローニングするために使用できる5’−EcoRI部位と3’−XmaI部位が導入される(図13)。
【0106】
D. 組換えバキュロウイルスの同時トランスフェクションと精製
リポフェクション法(Feloner and Ringold,1989)(DOTAP;Roche)により、ウイルスDNA(BaculoGold;Pharmingen)及び組換え導入ベクターDNA(pVL−PSgp671−ScFv)をSf9細胞に同時トランスフェクトした。組換えウイルスのスクリーニングと精製は、SummersとSmith(Summers and Smith,1987)によって記載された一般的な操作によって実施した。組換えウイルスはBAC−PSgp671−scFvと名付けられ、増幅して108のMOIを有するウイルス原液とした。
【0107】
E. 組換えタンパク質の分析
感染細胞を集め、冷たいリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、試料還元緩衝液中に再懸濁した(Laemmli,1970)。煮沸(100℃、5分)後、変性条件下での12.5%のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(Laemmli,1970)によって、タンパク質試料を分離した。クマシーブルー染色によりタンパク質の見かけの分子量をチェックするか、又は半乾燥ブロッター装置(Ancos)を用いて、タンパク質をニトロセルロースフィルター(Schleicher and Schuell;BAS 85、0.45μm)に転写した。次いで、Ponceau Red(Sigma)で、ニトロセルロース膜を染色した後、0.05% Tween 20と5%の無脂肪乳(TS−sat)を含有するTris−生理食塩水緩衝液(0.05M Tris−HClph7.4、0.2M NaCl)の溶液でブロッキングした。His(6)−Tag(SIGMA)に対するマウスモノクローナル抗体を一次抗体、ヒツジ抗マウス免疫グロブリンG(IgG)−西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合体を二次抗体として(1;3000 Amersham)用いて、ScFvを検出した。メーカー(Amersham)の記載に従って、ECL試薬を用いることにより免疫反応性のあるバンドを可視化した。
【0108】
F. タンパク質の産生と精製
ウイルス原液を得るために、IPL41培地と5% FCS中で培養したSf9昆虫細胞に、対数期にあるMOI1の組換えバキュロウイルスを感染させる。5% FCSを加えたIPL41培地中、28℃で7日間インキュベートした後に、8000RPM、15分の遠心により、上清を採取する。Xpress培地(Biowhitaker)中で培養したHigh−five昆虫細胞に、MOI10の対数期にある組換えバキュロウイルスを感染させ、感染から1時間半後に、High Five細胞を遠心により採集し、無血清のXpress培地中に再懸濁した。28℃で4日間インキュベートした後、8000RPM、15分の遠心により、上清を採取する。次いで、2回の硫安沈殿によってこれらの上清を濃縮する。沈降により得られた沈殿を12時間透析し、メーカー(Qiagen)の記載に従って、Ni−NTAアガロースビーズのバッチを用いて精製した。透析(2日、PBS、4℃)とクマシー染色による分析の後、細胞毒性ペプチドと共有結合させるために、精製タンパク質を使用した。
【実施例3】
【0109】
実施例3
ScFvをpToxに連結させる方法
Fmoc固相ペプチド合成を用いてペプチドを組み立て、最後のFmoc脱保護後に、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、プロピオニルオキシスクシンイミドエステルを前記ペプチドのαアミノ基と反応させた。反応(30分)の最後に、ペプチド樹脂を塩化メチレンで洗浄し、酸性条件下で、ペプチドを古典的な方法で切断し、脱保護した。次いで、活性化されたペプチドをHPLCで精製し、その完全性を質量分析によって確認した。続いて、活性されたペプチドを10:1のモル比でScFvと反応させた(pH7、PBS、ガラス管を室温で3時間攪拌)。次いで、4℃、PBSに対して、48時間透析を行った。
【0110】
この方法を用いて、4つのToxペプチドをScFvに連結させた。
【0111】
Tox11
ScFv−M350−Jac5(Vpr71−96[C761])
Ctr1 Tox11I
ScFv−M350−Jac5M(Vpr71−96[C76S;R73,80A])
Tox 12
ScFv−Vpr52−96[C76S]
Ctr1 Tox12
ScFv−Vpr52−96[C76S;R73A;R80A]
【実施例4】
【0112】
実施例4
Targ−Tox又はTarg−Save構造の例
全てのToxペプチドは、任意にN末端ビオチンとC末端アミド官能基(amide fonction)を有することができる。Tox0は、Targとの会合を必ずしも必要としないToxペプチドである。Tox1、Tox2、Tox5、Tox6、Save1、Save2、及びそれらの各コントロールは、TargとTox/Saveモチーフの間にgly−gly(−GG−)リンカーを任意に有することができる。
【表6】
【実施例5】
【0113】
実施例5
細胞(細胞株)及び無細胞系におけるミトコンドリア及び核のアポトーシスパラメータの評価
A.細胞
MCF−7、MDA−MB231、COS、及びHeLa細胞を完全培地(2mM グルタミン、10% FCS、1mM ピルビン酸塩、10mM Hepes、及び100U/ml ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM)中で培養する。CD4を発現し、ヒトBcl−2遺伝子又はネオマイシン(Neo)耐性ベクター(Aillet, et al.,1998 J.Virol.72:9698−9705)のみを安定にトランスフェクトしたジャーカット細胞は、N.Israel(Pasteur Institute,Paris)から頂いた。Neo及びBcl−2 U937細胞(Zamzami et al.,1995 J.Exp.Med)、及びCEM−C7細胞は、10% FCS、抗生物質、及び0.8μg/mL G418を補充したRPMI 1640グルタマックス培地中で培養する。
【0114】
実施した細胞検査は、候補物の経路(細胞内への浸透、次いで細胞内の所在)、及び標的細胞のアポトーシス状態(ΔΨm、細胞死エフェクターの活性化と再配置、核DNA中の含量)を決定する。これらのパラメータを決定するためには、細胞及び/又は候補分子を標識するために蛍光プローブを使用すること、及び以下の二つの分析手法、すなわち、マルチパラメータの細胞蛍光測定法と蛍光顕微鏡を実施することが必要である。神経保護作用に関する限り、マウスの胎仔から得た皮質神経細胞の初代培養に対して検査を行った。心臓保護作用に関しては、マウスの胎仔から得た心筋細胞の初代培養に対して検査を行った。
【0115】
−細胞内経路の検査:ビオチン(ストレプトアビジンに抱合した蛍光色素を用いて、又は細胞成分の分画後のリガンドブロットによって検出)又はFITC(生きた細胞の直接的な観察、ビデオ顕微鏡、及び画像解析によって検出)のうち何れかを連結したTARG−TOX又はTARG−SAVEペプチドを細胞に加える。ミトコンドリア配送シグナル(mitochondrial addressing signal)(例えば、アポトーシス誘導因子又はオルニチントランスカルバミラーゼ)を挿入することによって、TOX又はSAVEがミトコンドリアへ配送されやすくすることが可能である。同様に、配列及び一定の側鎖(リン酸化、メチル化)を修飾し、続いてペプチドをペプチド類似物に置き換えた後に、ミトコンドリア経路への配送が調べられる。
【0116】
−腫瘍及び内皮細胞株、並びに一次神経細胞に対するアポトーシスのマルチパラメータ分析。ミトコンドリアの膜電位の状態(JCI、DioC6、mitoTrackers)と核の凝縮(Hoescht)を測定するために、蛍光プローブが使用されるであろう。同様に、アポトーシスのポストミトコンドリアパラメータは、古典的な低倍数性試験とアネキシンV−FITCによる細胞表面標識を用いて調べる。
【0117】
この種の試験では、TARG−TOXの細胞毒性能(すなわち、(ミトコンドリアに対する影響により)腫瘍又は内皮細胞株を死滅させる能力(最良のTARG−TOXは、過剰発現しているBel−2細胞株も死滅させなければならない))、又は神経細胞を様々なアポトーシス発生処理に供したときのTARG−SAVEの細胞保護能のうち何れかが検討される。
【0118】
B.アポトーシスの調節
サイクロスポリン A(CsA;1μM)、ボンクレキン酸(BA;50μM)、及び/又はカスパーゼ阻害剤N−ベンジルオキシカルボニル−Val−Ala−Aspフルオロメチルケトン(Z−VAD.fmk;50μM;Bachem Bioscience,Inc.)、Boc−Asp−フルオロメチルケトン(Boc−D.fmk)、又はN−ベンジルオキシカルボニル−Phe−Ala−フルオロメチルケトン(Z−FA.fmk;全て100μMで使用し、24時間毎に添加、Enzyme Systems)を補充した又は補充していない完全培地中で、(1乃至5μM)のpTarg−pToxとともに、PBS洗浄した細胞(1−5×105/ml)をインキュベートする。pTarg−pToxに曝露させている間、健康なドナーから採取し、Lymphoprep(Pharmacia)を用いて精製したヒト初代PBLを、血清を全く加えていないRPMI 1640グルタマックス培地中で培養する。これに対して、PHA幼弱化細胞(24時間の1μg/ml PHA−P[Wellcome Industries];100U/mlのヒト組換えIL−2[Boehringer Mannheim]とともに48時間)は、10% FCSとともに培養する。
【0119】
C.無処置細胞におけるアポトーシスに伴う変化の細胞蛍光測定法による測定
細胞蛍光測定法に関しては、以下の蛍光色素:ミトコンドリアの膜間電位(ΔΨm)の定量には3,3’−ジヘキシルオキサカルボシアニンヨウ化物(DiOC(6)3;40nM)、スーパーオキサイド陰イオンの発生測定にはハイドロエチジン(4μM)、生存性の測定にはヨウ化プロピジウム(PI;5μM)を用いる(Zamzami,N. et al.,1995.J.Exp.Med.182:367−377)。二倍体に満たない細胞(subdiploid cell)の頻度は、5mM グルコースを補充したPBS、pH 7.4中の500μg/mlのRNaseで処置した(Sigma Chemical Co.;30分、室温)エタノール透過処理細胞のPI(50μg/ml)染色によって測定する(Nicoletti,I et al.,1991.J.Immunol.Methods.139:271−280)。
【0120】
D.生きた細胞の蛍光染色と免疫蛍光
アポトーシスのミトコンドリア及び核の特徴を評価するために、カバーグラス上で培養した細胞を、ΔΨm感受性色素クロロメチル−X−ローザミン(CMXRos;50nM;Molecular Probes,Inc.)又は5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨウ化物(JC−1、2μM、Molecular Probes)、ΔΨm非感受性色素Mitotracker green(1μM;Molecular Probes,Inc.)、及びHoechst 33342(2μM,Sigma)とともに、完全培地中において、37℃で30分間インキュベートする(Marzo,I et al.1998.Science.281:2027−2031)。
【0121】
E.pTarg−pToxの内部移行のインサイチュ測定
TARG−(MLS)−TOX/SAVEの内部移行をインサイチュ測定する場合、TARG−(MLS)−TOX/SAVEとともに細胞を様々な時間インキュベートした後、PBS(pH7.4)中、4% パラホルムアルデヒドと0.19% ピクリン酸を用いて、室温で1時間細胞を固定する。PBS中、室温で(5分間)、固定した細胞を0.1% SDSで透過状態にし、10% FCSでブロッキングして、ヤギ抗マウスPE抱合体[Southern Biotechnology Associates,Inc.]によって明らかにされるヘキサ−ヒスチジンタグ(クローンHIS−1、IgG2a、SIGMA)に対して特異的なmAb、ヤギ抗マウスIgG1 FITC抱合体によって検出されるHSp60に対して特異的なmAb(mAb H4149[Sigma Chemical Co.])、ヤギ抗マウスIgG2a FITC抱合体によって検出されるチトクロムcオキシダーゼに対して特異的なmAb(COX;mAb 20E8−C12[Molecular Probes,Inc.])で染色するか、あるいは、Targがビオチン化されたペプチドのときには、ストレプトアビジン−PE試薬を30分加えた後に、蛍光(及び/又は共焦点)顕微鏡により蛍光強度を検出する。
【0122】
F.ミトコンドリアのパラメータのインビトロでの評価
記載に従って(Costantini et al.,1996)、ラットの肝臓からミトコンドリアを精製し、250mM スクロース+0.1mM EGTA + 10mM −tris[ヒドロキシメチル]メチル−2−アミノエタンスルホン酸、pH=7.4中に再懸濁する。PTを誘導するために、PT緩衝液(200mM スクロース、10mM Tris−MOPS(pH7.4)、5mM Tris−サクシネート、1mM Tris−ホスフェート、2μM ロテノン、及び10μM EGTA−Tris)中に、ミトコンドリア(0.5mgタンパク質/ml)を再懸濁し、光(545nm)の90℃散乱光をF4500蛍光分光計(Hitachi、Tokyo、Japan)でモニターして、2mM アトラクチロシド(Atr)、1μM サイクロスポリンA(CsA;Novartis,Basel,Switzerland)、5μM CaCl2、及び/又は0.5乃至20μMのpTarg−pTox又はpTarg−pSave添加後の大規模な膨潤を測定した。ΔΨmを測定する場合、1μM ローダミン123(Molecular Probes,Eugene,OR)を補充した緩衝液中で、ミトコンドリア(0.5mgタンパク質/ml)をインキュベートし、ローダミン蛍光(励起505nm、発光525nm)の消光を記載に従って測定する(Shimizu et al.,1998)。単離された核に対するアポトーシス発生活性、DEVD−afc切断活性、並びにチトクロムc及びAIFの免疫検出を測定するまで、ミトコンドリアから得られた上清(6800g、15分;次いで、20,000g、1時間;4℃)をー80℃で凍結させる。チトクロムcとAIFは、それぞれ、モノクローナル抗体(クローン7H8.2C12,Pharmingen)とポリクローナルウサギ抗血清(Susin et al.1999)によって検出する。
【表7】
【0123】
G.ANTの精製とリポソーム中への再構成
以前の記載に従って(8)、ラットの心臓のミトコンドリアからANTを精製した。機械的剪断後、220mM マニトール、70mM スクロース6、10mM Hepes、200μM EDTA、100mM DTT、0.5mg/ml ズブチリシン、pH7.4の中にミトコンドリアを懸濁し、氷上に8分間放置し、分画遠心(5分、500×g、及び10分、10,000×g)により二回沈降させた。6%[v:v]のTriton X−100(Boehringer Mannheim)により、室温で6分間、40mM K2HPO4、40mM KCl、2mM EDTA、pH6.0中にミトコンドリアタンパク質を可溶化し、可溶化したタンパク質を超遠心(30分、24,000×g、4℃)によって回収した。続いて、このTriton X−100抽出液2mlを、1gのヒドロキシアパタイト(BioGel HTP、BioRad)を充填したカラムにかけて、前記緩衝液で溶出し、20mM MES、200μM EDTA、0.5% Triton X−100、pH6.0で溶出した[v:v]。続いて、FPLCシステム(Pharmacia)と線形NaClグラジエント(0−1M)を用いたHitrap SPカラムでサンプルを分離した。タンパク質濃度は、ミクロBCAアッセイ(Pierce,Rockfoll,Illinois)を用いて測定した。精製したANT及び/又は組換えBcl−2をPC/カルジオリピンのリポソーム中に再構成した。簡潔に述べると、リポソームを調製するために、1mlのクロロホルム中に45mgのPCと1mgのカルジオリピンを混合し、窒素下で溶媒を蒸発させた。0.3% n−オクチル−β−D−ピラノシドを含有する1mlのリポソーム緩衝液(125mM スクロース+10mM 2−ヒドロキシエチルピペラジンーN’−2エタンスルホン酸;Hepes,pH7.4)の中に、乾燥した脂質を再懸濁し、室温で40分間継続的にボルテックスすることにより混合した。次いで、ANT(0.1mg/ml)又は組換えBcl−2(0.1mg/ml)をリポソーム[v:v]と混合し、室温で20分間インキュベートした。最後に、4℃で一晩、プロテオリポソームを透析した。
【0124】
H.孔開放アッセイ
1mM 4−UMPと10mM KClの存在下で、ANT−プロテオリポソームを既述のとおりに氷上で音波処理(50W、22秒、Branson sonifier 250)した(28)。次いで、Sepadex G−25カラム(PD−10、Pharmacia)上で、リポソームを非封入産物から分離した。3mlになるように、10mM Hepes、125mM サッカロース、pH7.4の中に25μl分量のリポソームを希釈し、様々な濃度のアポトーシス誘発物質と混合し、室温で1時間インキュベートした。処置の30分前に、BA、ATP、及びADP等のミトコンドリア膜透過化阻害剤となり得る物質をリポソームに加えた。リポソーム緩衝液+0.5mM MgCl2の中に希釈した10μlのアルカリホスファターゼ(5U/ml、Boehringer Mannheim)を加えた後、攪拌しながら、試料を37℃で15分間インキュベートし、150μlのストップ緩衝液(10mM Hepes−NaOH、200mM EDTA、pH10)を加えて、4−MUPの4MUへの酵素的転換を停止させた。続いて、Perkin Elmerの蛍光分光光度計を用いて、4−MU依存性の蛍光(360/450nm)を定量した(28)。100%の応答を求めるために、各実験で、アトラクチロシド(アポトーシス誘発性の透過性遷移誘発物質)を標準物質として使用した。Vpr由来のペプチド又はpTarg−ptoxによって誘導された4−MUP放出のパーセントを以下のように算出した。
【0125】
[(pTar−pToxによって処理したリポソームの蛍光−未処理のリポソームの蛍光)/(アトラクチロシドによって処理したリポソームの蛍光−未処理のリポソームの蛍光)]×100
【表8】
【0126】
I.結合アッセイとウェスタンブロット
記載のとおりに(zamzami et al.,2000)、マウス肝臓のミトコンドリアを単離した。チトクロムCの放出を測定するために、pTarg−pTox処理したミトコンドリアから得られた上清(6800gで15分間、次いで、20,0000gで1時間、4℃)を、チトクロムcの免疫検出(マウスモノクローナル抗体クローン7H8.2CI2、Pharmingen)まで−80℃で凍結させた。結合アッセイのために、室温で30分間、5μM(結合アッセイ)のpTarg−pTox又はビオチン−pTarg−pToxとともに、精製ミトコンドリアをインキュベートした(100μlの膨潤緩衝液中に250μgのタンパク質)。ビオチン化Vpr52−96とのインキュベーション後(上段)又は前(下段)の何れかに、20mM Tris/HCl、pH7.6、400mM NaCl、50mM KCl、1mM EDTA、0.2mM PMSF、アプロチニン(100U/ml)、1% Triton X−100、及び20%グリセロールを含有する150μlの緩衝液を用いてミトコンドリアを溶解させた。そのミトコンドリアリガンドと複合体を形成したビオチン標識Vpr52−96を捕捉するために、150μlのアビジン−アガロース(ImmunoPure、Pierceから入手)を加える前に、1mMのEDTAを加えた2倍容量のPBSでこのような抽出液を希釈した(ローラードラム中、4℃で2時間)。前記アビジン−アガロースをPBSでバッチ式に洗浄し(5×5ml;1000g、5分、4℃)、4% SDSと5mM β−メルカプトエタノールを含有する2倍濃縮されたLaemmli緩衝液100μl中に再懸濁して、室温で10分間インキュベートし、遠心した(1000g、10分、4℃)。最後に、95℃で上清を5分間加熱し、SDS−PAGE(12%)により分析した後、ウェスタンブロット及びヒトANTに対するウサギのポリクローナル抗血清(ミネソタ州、ミネソタ大学、Hormel研究所のHeide H.Schmid博士から頂いた;Ref)を用いて免疫検出した。
【0127】
J.精製ミトコンドリアのフローサイトメトリー分析
記載どおりに(zamzami et al.,2000)、マウス肝臓のミトコンドリアを単離する。PT緩衝液(200mM スクロース、10mM Tris−MOPS(pH7.4)、5mM Tris−サクシネート、1mM Tris−ホスフェート、2μM ロテノン、及び10μM EGTA)中に、精製ミトコンドリアを再懸濁する。FSC/SSCパラメータ上のゲーティングとFSC−Wパラメータの主ピーク上のゲーティングによって、サイトフローメトリー(FACSVantage,Beckton Dickinson)による検出をミトコンドリアに限定する。これらの二重ゲーティングが適切であることは、ΔΨm非感受性ミトコンドリア色素であるMitoTracker(R) Green(75nM;Molecular Probes;緑色蛍光)を用いたミトコンドリアの標識によって事後的に確認する。低いΔΨmを有するミトコンドリアのパーセントを決定するために、CCCP又はpTarg−pTox分子の10分前に、ΔΨm感受性蛍光色素JC−1(200nM;570−595nm)を加える。低いΔΨmを有するミトコンドリアのパーセントは、ドットプロットFSC/FL−2(赤色蛍光)ウインドウにおいて測定する。
【0128】
K.アポトーシスの無細胞系
ミトコンドリアの上清中のAIF活性は、記載に従い(Susin et al.,1997b)、HeLa細胞の核に対して検査する。簡潔に述べれば、ヨウ化プロピジウム(PI;10μg/ml;Sigma Chemical Co.)を用いて染色された精製HelLa核に、AIFを含有するミトコンドリアの上清を加え(90分、37℃)、Elite IIサイトフルオロメータ(Coulter)で分析して、低倍数性の核の頻度を測定する。幾つかの実験では、単離されたミトコンドリア、ジャーカット又はCEM細胞から得たサイトゾル(記載(Susin et al.,1997a)に従って調製)、及び/又はpTarg−pToxを核に加える。ミトコンドリア上清中のカスパーゼ活性は、蛍光発生基質としてAc−DEVD−アミド−4−トリフルオロメチルクマリン(Bachem Bioscience,Inc.)を用いて測定した。
【0129】
L.PTPCの精製とリポソームへの再構成
公表されているプロトコール(Brenner et al.,1998;Marzo et al,1998b)に従って、Wistarラットの脳からPTPCを精製し、リポソーム中に再構成する。要約すれば、ホモゲナイズした脳をtriton可溶性タンパク質の抽出に供し、タンパク質をDE52樹脂の陰イオン交換カラムに吸着させ、KClグラジエントで溶出し、一晩透析して、ヘキソキナーゼ活性が最大の画分をホスファチジルコリン/コレステロール(5:1,w:w)小胞中に取り込ませる。透析工程の間には、記載に従って(Schendel et al.,1997)作製・精製された疎水性膜貫通ドメインを欠く(Δ219−239)組換えヒトBcl−2(1−218)を、総PTPCタンパク質の5%に相当する用量になるように加える(約10ng Bcl−2/mg脂質)。5mM リンゴ酸塩と10mM KClの中で、透析から回収されたリポソームを7秒間超音波処理し(120W)、Sephadex G50カラム(Pharmacia)に加え、125mM スクロース+10mM HEPES(pH7.4)で溶出する。125mM スクロース+10mM HEPES(pH7.4)の中で、pTarg−pTox、[52−96]Vpr、又はアトラクチロシドの存在下又は非存在下において室温で60分間、一定分量のリポソーム(約107)をインキュベートする。次いで、リポソームを3,3’ジヘキシロカルボシアニンヨウ化物(DiOC6(3)、80nM、室温で20−30分、Molecular Probes)と平衡化させ、記載に従って(Brenner et al.,1998; Marzo et al.,1998b)、DiOC6(3)の保持をFACS−Vantageサイトフルオロメータ(Becton Dickinson, San Jose, CA, USA)で分析する。
【0130】
3組の5×104のリポソームを分析し、PTPCリポソームにおいて0.25% SDS(15分、室温)で得られた減少を100%と考えて、結果をDiOC6(3)蛍光の減少の%として表す。
【0131】
TARGとTOX又はTARGとSAVEペプチド又はペプチド類似物の組み合わせである全てのキメラ分子の他、先述の技術を実施する際に利用することができる本発明に係るペプチド及び構築物の具体例が、表I、II、及びIIIに示されている。
【実施例6】
【0132】
実施例6
表面プラズモン共鳴は、Tox0、Tox1、Tox5、Tox6、Save1が精製ANTを結合するが、精製VDACを結合しないことを示している。
【0133】
方法論
様々なペプチドを固定化するために、Sensor Chips SA(ストレプトアビジンをコートしたセンサーチップ)を使用した。Tox1は0.7ng/mm2の密度で、Tox0は3.7ng/mm2の密度で、Ctr1 Tox0は1.4ng/mm2の密度で、Tox5は1ng/mm2の密度で、Tox6は1ng/mm2の密度で、Save1は1.3ng/mm2の密度で、対照ペプチドは0.8ng/mm2の密度で固定化した。10μL/分の速度で10分間(会合5分、解離5分)、ANTとVDAC相互作用の会合と解離の速度を経過観察した。KSCN 3Mを1分間流して、リガンドを再生させた。得られたセンサーグラムは、二重参照法を用いて、BlAeval3.1ソフトウェアにより解析した(Myszka D.G.2000.Kinetic,equilirium and thermodynamic analysis of macromolecular interactions with BIACORE. Methods Enzymol.323:325−340)。まず、リガンドを用いたセンサーグラムから、対応する検体溶媒で得られたセンサーグラムを差し引く。次に、対照ペプチドリガンドで得られたセンサーグラムによる差し引きを行った。Tox及びSaveペプチドに対する対照ペプチドは、β2−アドレナリン作動性受容体の配列に対応するbiot−H19Cであった。(Lebesgue D., Wallukat G., Mijares A., Granier C., Argibay J., and Hoebeke J.(1998) An agonist−like monoclonal antibody to the human β 2−adrenergic receptor. Eur.J.Pharmacol.348:123−133)。Tox0に対する対照ペプチドがCtr1Tox0であった。
【0134】
結果
図6は、4つのANT濃度(6.25−50nM)に対するANTとVprとの相互作用を示している。ドリフティングベースラインありの単純ラングミュアモデルを用いたセンサーグラムの分析が最良であり、160のRmaxで、0.15nMのKdが得られた(x2=7.24)。ANTとTox1との相互作用を示すセンサーグラムに対しても同じ分析を行った(図7)。10倍高いVDAC濃度で、Tox0及びTox1の両者とのVDAC相互作用を調べると(図8及び9)、センサーグラムは、ペプチドリガンドとの極めて低い会合しか示さず、得られた曲線は、様々なラングミュアの結合モデルによって分析することができなかった。
【0135】
他の3つのペプチドは、50nMの濃度で、ANTとの相互作用を検査した(図10)。精製ANTは、それぞれ、0.1、0.7、及び0.01nMの相対親和性でTox5、Tox6、及びSave1を認識した。唯一つのANT濃度で得られたこれらの値は、3つのペプチドに対するANTの相対親和性を与えるにすぎない。同じく、同じペプチドと相互作用させるために50nMのVDACを使用しても、図11に示されているように、いかなる特異的な結合も得られなかった。
【0136】
本明細書には、以下の参考文献を引用した。本明細書に引用されている各参考文献の開示内容全体を基礎として、本明細書に参考文献として援用する。
【参考文献】
【0137】
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1A】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1B】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1C】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1D】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1E】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1F】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1G】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1H】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1I】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図2A】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2B】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2C】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2D】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2E】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2F】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2G】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2H】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2I】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2J】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2K】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2L】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2M】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2N】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2O】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図3】クローンtherap 99B3から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図4】クローンtherap.88E10から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図5】クローンtherap.152C3から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図6】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図7】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図8】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図9】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図10】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図11】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図12】ScFv−transfertベクターを得るための手法を示す。
【図13】ScFv−transfertベクターを得るための手法を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2001年2月2日に出願された米国仮出願第60/265,594号の利益を主張する。この出願の開示内容全体を基礎とし、参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的には、治療用の細胞死制御分子に関する。より具体的には、本発明は、透過性遷移孔複合体(PTPC)に作用するペプチド又は偽ペプチド部分が抗体、組換え抗体断片、又はホーミングペプチド等の細胞標的誘導分子に共有結合された分子に関する。その結果得られるキメラ分子は、PTPC及び/又はその主要成分であるアデニンヌクレオチド輸送体(ANT)を標的として、細胞死(アポトーシス)を誘発又は阻害させるポリペプチド又はペプチド類似分子である。本発明は、PTPC相互作用部分がアポトーシス誘発性のHIV−1 Vpr由来ペプチド(若しくは偽ペプチド)又はANT由来ペプチド(若しくは偽ペプチド)であるこのようなキメラ分子にも関する。本発明は、このようなキメラ分子をコードする核酸配列構築物又はこれらのキメラ分子の一部をコードする核酸配列構築物にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
現在、ミトコンドリアが細胞の生死を制御する上で重要な役割を果たしていることには一致が見られている(apoptosis;Kroemer and Reed 2000,Nature Medicine)。増大しているシグナル伝達関連分子のみならず、多くの代謝物やある種のウイルスエフェクターもミトコンドリアに作用し、ミトコンドリアの膜の透過化に影響を与えているようである。ミトコンドリア特異的なアポトーシス誘発性因子の使用が、癌の治療における新たな概念として出現しているものと思われる(Costantini et al 2000, Journal of the National Cancer Institute)。同様に、ミトコンドリア膜の安定化能を活用して、過剰なアポトーシスが存在する疾病(神経変性疾患、虚血、AIDS、劇症肝炎等)の治療に細胞保護作用を有する分子を使用することが可能であるかもしれない。
【0004】
ミトコンドリア膜の透過化(MMP、mitochondrial membrane permeabilisation)は、膜間腔からのカスパーゼ活性化因子及びカスパーゼ非依存性デスエフェクターの放出、内部膜間電圧(ΔΨm)の散逸、並びに酸化的リン酸化の擾乱を伴うアポトーシス性細胞死の中心を成す現象である(Green and Reed,1998;Gross et al.,1999;Kroemer and Reed,2000;Kroemer et al.,1997;Lemasters et al.,1998;Vander Heiden and Thompson,1999;Wallace,1999)。Bcl−2ファミリーの構成要素の中でアポトーシスを誘発又は抑制するものは、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT(adenine nucleotide translocation);内膜(IM)中)との相互作用、電圧依存性陰イオンチャネル(VDAC;外膜(OM)中)を通じて、及び/又は自律性のチャネル形成活性を通じて、内部及び外部MMPを調節する(Desagher et al.,1999;Gross et al.,1999;Kroemer and Reed,2000;Marzo et al.,1998;Shimizu et al.,1999;Vander Heiden and Thompson,1999)。ANTとVDACは、ミトコンドリアの二つの膜が並んだ部位に組織化されたポリタンパク質構造である透過性遷移孔複合体(PTPC、permeability transition pore complex)の主成分である(Crompton,1999;Kroemer and Reed,2000)。
【0005】
ミトコンドリアのフェーズは、50%を超える癌に関わっているBcl−2ファミリーの発癌遺伝子及び癌抑制遺伝子(総説として、5;28)の制御下にある(29)。Bcl−2ファミリーの構成要素は全て、アポトーシスの制御に積極的な役割を果たしており、アポトーシス誘発性のもの(Bax、Bak、Bcl−Xs、Bad等)とアポトーシス抑制性のもの(Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−w、Mcl−l等)がある(G.Kroemer,Nat Med 3,614−20(1997))。
【0006】
ミトコンドリアのメガチャネルは、ミトコンドリア膜の透過性の調節に関与しているミトコンドリア内膜とミトコンドリア外膜の間に位置する接触部位に形成されるポリタンパク質複合体である。ミトコンドリアのメガチャネルは、ミトコンドアリア関連ヘキソキナーゼ(HK)、ポリン(電圧依存性陰イオンチャネル、すなわちVDAC)、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)、クレアチンキナーゼ(CK)、及びサイクロフィリンD、並びにBcl−2ファミリーの構成因子を含む一群のタンパク質から構成されている。生理的な条件では、PTPCは、ミトコンドリアのpH、ΔΨm、NAD/NAD(P)Hレドックス平衡、及びマトリックスタンパク質のチオール酸化によるカルシウムのコンダクタンスの調節を介して、ミトコンドリアのカルシウムホメオスタシスを制御している(M.Zoratti, I.Szabo,Biochim,Biophys Acta 1241,139−76(1995). S.Shimizu, M.Narita, Y.Tsujimoto, Nature 399,483−487(1999). M.Crompton, Biochem J 341,233−249 (1999). K.Woodfield, A.Ruck, D.Brdiczka, A.P.Halestrap, Biochem J 336,287−90(1998). P.Bernardi, K.M.Broekemeier, D.R.Pfeiffer, J Bioenerg Biomembr 26,509−17(1994). F.Ichas, L.Jouaville, J.Mazat, Cell 89,1145−53(1997))。
【0007】
アポトーシス及びこれに関連する形態の制御された細胞死は、数多くの病気に関わっている。細胞死プロセスの過剰又は不足は、自己免疫疾患及び神経変性疾患、癌、虚血、並びにウイルス及び細菌性感染症等の病的な感染症又は疾病に関与している。本明細書には、細胞死の制御異常に伴う疾病にミトコンドリアがほとんど随所で関わっていることを示すほんの数例が挙げられている。
【0008】
虚血の様々なモデル(心臓、肝臓、腎臓、又は脳)では、例えばCsA(又は免疫を抑制しないその類縁体−Me−Val4−CsA)等のミトコンドリア膜を安定化することができる分子を用いることによって、塊状アポトーシス(massive apoptosis)及びそれによって生じる臓器レベルでの急性症状を弱めることが可能である。さらに、VDACは低酸素再灌流後におけるラット海馬の神経細胞の破壊に必須である。神経変性疾患の分野では、極めて多くの観察から、ミトコンドリアによるアポトーシスの制御が密接に関わっていることが示唆されている(Kroemer and Reed 2000, Nature Medicine参照)。神経毒であるメチル−4−フェニルピリジニウムは、ミトコンドリアの透過性遷移とチトクロムcの排出をもたらす。ニトロプロピオン酸又はロテノン等のミトコンドリア毒による中毒は、霊長類とげっ歯類にハンチントン病型の病気を誘発する。
【0009】
PTPCは、二つのミトコンドリア膜間の接触部位に位置する動的なタンパク質複合体であり、PTPCの開放によって、1500Da未満の溶質が内膜上に自由拡散することが可能となる。PTPCの形成には、様々なコンパートメントに由来するタンパク質(ヘキソキナーゼ(サイトゾル)、ポリン(電圧依存性陰イオンチャネルとも称される(VDAC、外膜)、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR、外膜)、ANT(内膜)、及びサイクロフィリンD(マトリックス))の会合を伴う。複数のアポトーシス誘発性シグナル伝達経路を統合することができ、Bcl−2/Baxファミリー由来のタンパク質によって調節されるので、PTPCは、アポトーシスの多くの実例に関わっていると考えられている。Bcl−2ファミリーには、それぞれ、PTPCの開放を抑制又は促進する死亡抑制性の(Bcl−2様)構成因子と死亡誘導性の(Bax様)構成因子が含まれる。報告によれば、BaxとBcl−2は、PTPC内のVDAC及びANTと相互作用する。生理的な条件では、ANTは、ADP及びATPの特異的な対向輸送体(antiporter)である。しかしながら、ANTは、Ca2+、アトラクチロシド、HIV−1のVpr由来ペプチド、及び様々な酸化促進剤を含む様々なアポトーシス誘発因子と相互作用することにより、致死孔(lethal pore)を形成することもできる。ミトコンドリア膜の透過化は、外膜中のBcl−2/Bax−様タンパク質によって調節される非特異的なVDAC孔によって(12;16)、及び/又はミトコンドリアマトリックスと細胞質間の代謝性ATP/ADP勾配の変化によって(17)も制御され得る。
【0010】
本分野では、虚血、神経変性疾患、劇症肝炎、及びウイルス感染症における細胞保護分子(cytoprotective molecule)が必要とされている。
【0011】
本発明に係るキメラ分子のその他の用途としては、化粧品の調製又は植物若しくは野菜若しくは花の早期死滅の予防(とりわけPTPCの開放を抑えるための)を想定することができる。
【0012】
従来の化学療法剤は、腫瘍に対する選択性の低さに起因する重篤な副作用により治療の有効性に限界がある。特異的な腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体(及びScFv)の開発と腫瘍血管新生に対して特異的なホーミングペプチドの同定によって、送達を誘導するアプローチによる抗癌剤の選択性の増強を検討することが可能となった。しかしながら、モノクローナル抗体と抗癌剤(ドキソルビシン(Trai. P.A., et al 1993 Science 261:212)、メトトレキセート(Kanellos J. et al.,1985 J Natl Cancer Inst 75:319)、及びビンカアルカロイド(Starling J.J. et al.,1991 Cancer Res 41:2965))とを用いたこのような試みで公表されているものの大部分は不成功に終わっている。これらの抗体−薬物抱合体の効力は穏やかなものにすぎず、対応する非抱合薬物に比べて細胞毒性が低いのが通常である。実際に、培養腫瘍細胞に対する抗原特異的な細胞毒性が実証されることは稀であった。一般に、腫瘍が十分に定着する前に治療を開始するか、又は極めて大用量(最大90mg/kg、薬物等価用量(drug equivalent dse))を使用しなければ、腫瘍異種移植動物モデル内でのこれらの抱合体のインビボ治療効果は観察されない。従って、これらの薬剤を用いたときに、ヒトの臨床検査で有意な抗腫瘍効果が観察されなくても(Elias D.J. et al.,1994 Am Respir Crit Care Med 150:1114)(Schneck D. et al.,1990)驚くには当たらない。現に、抱合体の最高循環血清濃度は、それらのインビトロIC50値と同じ範囲でしかなく、せいぜい腫瘍細胞の僅か約50%を消滅させ得るにすぎない。
【0013】
これらの観察結果から、モノクローナル抗体を介して治療用量の細胞毒性薬物を送達する従前の試みは、薬物の選択が不適切であったために、臨床試験において殆ど成功を見ていないと結論付けられた。考えられる(部分的な)解決策の一つとしては、患者の腫瘍部位に治療レベルの抱合体を与えるのであれば、臨床的に用いられている抗癌剤よりずっと高い効力を保有する薬物から免疫抱合体を構成しなければならないとの結論であった。メイタンシノイド、エンジイン、又はインターカレート物質CC1065を含むこのような毒素は、正式に、化学療法剤であるドキソルビシン、メトトレキセート、及びビンカアルカロイドより100乃至1000倍細胞毒性が強いことが示された(Chari RVJ et al.,1995 Cancer Res 55:7049)(Chari RVJ et al.,1992, Cancer Res 52:127)。
【0014】
その他、「Adept」と名付けられたアプローチも設計された。この抗体誘導式酵素プロドラッグ療法(Adept、antibody−directed enzyme prodrug therapy)は、腫瘍細胞表面に酵素を誘導するためにモノクローナル抗体を使用することに基礎を置いており、最終的には、酵素が適切な非活性プロドラッグから抗癌剤を選択的に送達することが予定されている。何れのケースでも、臨床試験が進行中であるが、現在まで、癌の化学療法に導入されたものは存在せず、標的腫瘍細胞を死滅させるための新しいツールが必要とされている。Bagshawe KD,1990. Antibody−directed− enzyme/prodrug therapy(ADEPT) Biochem Soc Trans.18(5):750−2.Melton RG,Sherwood RF.1996 Antibody−enzyme conjugates for cancer therapy. J Natl Cancer Inst,88(3−4):153−65. Rihova B.1997; Targeting of drugs to cell surface receptors. Crit Rev Biotechnol.17(2):149−169. Hudson PJ.2000. Recombinant antibodies: a novel approach to cancer diagnosis and therapy. Expert Opin Investig Drgus 9(6):1231−42。
【0015】
最近、化学療法によって誘導されるアポトーシスの新しい有望な標的としてミトコンドリアが挙げられている(1−7)。レジノイド(resinoid)酸誘導体CD437、ロニダミン、ベトゥリニック酸、及び亜ヒ酸塩を含む4つの異なる抗癌剤が、ミトコンドリアに対する直接作用によって癌細胞のアポトーシスを誘導することが示されている。これらの抗癌剤とミトコンドリアの相互作用は、少なくとも一部が透過性遷移孔複合体(PTPC)の開放に起因するミトコンドリア内膜の透過性の増大をもたらす。PTPCの開放は、ミトコンドリアマトリックスの膨張、内部膜間電位(ΔΨm)の散逸、反応性酸素種(ROS)の生成の増大、及び膜間腔から細胞質へのアポトーシス誘発性タンパク質の放出をもたらす。このようなミトコンドリアのアポトーシス誘発性エフェクターには、カスパーゼ活性化因子チトクロムc、アポトーシス誘導因子(AIF)、及びプロカスパーゼが含まれる(2−6)。CD437、ロニダミン、ベトゥリニック酸、及び亜ヒ酸塩によって誘導されたアポトーシスの徴候は全て、特定のPTPCタンパク質(すなわち、サイクロスポリンA(CsA、サイクロフィリンDのリガンド)とボンクレキン酸(BA、アデニンヌクレオチドトランスロカーゼ(ANT)のリガンド))に作用する二つの物質によって抑えられる。このため、PTPCの開放は、これらの物質によって引き起こされるアポトーシスにとって決定的な現象であるものと思われる。
【0016】
ハチ毒から単離されたペプチドであるマストパランは、CsA阻害可能な機序を介してミトコンドリア膜の透過化を誘導し、無処置の細胞に加えるとミトコンドリア効果を介してアポトーシスを誘導することが知られた最初のペプチドである。このペプチドは、α−ヘリックス構造を有しており、ヘリックスの一方の側に分布した正電荷を幾つか有している。類似のペプチド(KLAKLAKKLAKLAK又は(KLAKLAK)2(K=リジン、L=アラニン、A=ロイシン))を精製されたミトコンドリアに加えたときに、ミトコンドリアの膜を崩壊させることが最近見出されたが、この効果の機序は明らかにされていない。
【0017】
各組織の脈管構造は高度に特殊化されている。リンパ組織中の内皮は、リンパ球ホーミングのための組織特異的受容体を発現しており、ファージホーミングを用いた最近の研究により、他の正常な組織の脈管構造中に前例のない程度の分化が明らかとされた。表面にランダムなペプチド配列が置き換えられたファージのライブラリをインビボでスクリーニングすることによって、多数の正常組織に対する特異的なホーミングペプチドが得られた。ファージペプチドがホーミングした組織特異的内皮性分子は、転移性悪性細胞の受容体として働く可能性がある。腫瘍脈管構造の探索によって、血管新生性の新生脈管構造中に選択的に発現された内皮性受容体にホーミングするペプチドが得られた。これらの受容体、及び各個の正常組織の脈管構造に対して特異的な受容体は、特定の部位に治療法を誘導する上で有用である可能性が存在する。Ruoslahti E, Rajotte D.2000;An address system in the vasculature of normal tissues and tumors. Annu Rev Immunol.18:813−27.
Ellerbyらは、最近、ミトコンドリア毒性を有する(KLAKLAK)2モチーフを、内皮細胞と相互作用する標的誘導ペプチドに融合させた。このような融合ペプチドは内部移行され、新生血管由来の内皮細胞中にミトコンドリア膜の透過化を誘導し、ヌードマウスに移植されたMDA−MD−435乳癌異種移植を死滅させる。同様に、Baxに融合されたインターロイキン−2(IL−2)タンパク質を含有する組換えキメラタンパク質は、IL−2受容体を有する細胞にインビトロで選択的に結合し、該細胞を死滅させる。このように、細胞表面に誘導し、細胞質内に移動させ、ミトコンドリア膜の透過化を介してアポトーシスを誘導する特異的細胞毒性物質は、癌の治療において有用な可能性がある。
【0018】
形質転換細胞を選択的に根絶させることが本分野において必要とされている。一つの戦略は、選択した細胞種に毒性物質を誘導することである。より具体的には、ミトコンドリアの透過化とアポトーシスを制御する方法と試薬が本分野で必要とされている。
【発明の開示】
【0019】
発明の要約
少なくとも従来技術に存する幾つかの制約を克服するために、本発明は、細胞誘導部分(TARGと名付ける)と、PTPC相互作用部分(TOX/SAVEと名付ける)と、任意的なミトコンドリア局在化配列(MLS)とを含有する多機能性分子のペプチド又は偽ペプチドファミリーを提供する。本発明の好ましい態様では、前記多機能性分子のTOX/SAVE部分は、PTPCの中心的成分であるアデニンヌクレオチド輸送体(ANT、Adenine Nucleotide Translocator)と直接相互作用するペプチド又はペプチド類似分子である。
【0020】
したがって、本発明は、二つのカテゴリーの標的とされた細胞死制御分子を含む。
【0021】
・TARG−(MLS)−TOXは、PTPC依存性ミトコンドリア膜の透過化とこれに続く細胞死を誘導する多機能性分子である。
【0022】
・TARG−(MLS)−SAVEは、PTPC及び/又はANTとの相互作用を通じて、ミトコンドリア膜の透過化から細胞を保護し、その結果、細胞を細胞死から保護する多機能性分子である。
【0023】
本発明は、さらに、本発明のキメラポリペプチドをコードするベクターを提供する。また、本発明は、本発明のベクターを備えた組換え宿主細胞を提供する。さらに、本発明は、その表面上に腫瘍関連抗原を有する癌細胞であって、前記キメラポリペプチドの抗体又は抗体断片を介して、本発明のキメラペプチドが結合された癌細胞を提供する。本発明は、癌細胞を検出する方法も提供する。
【0024】
本発明は、本発明のポリペプチドを用いてアポトーシスを誘導又は抑制する方法も提供する。本発明は、腫瘍細胞中にアポトーシスを誘導する方法を提供する。本発明は、ウイルス感染細胞中にアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを産生するハイブリドーマを提供する。本発明は、これらのハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体も提供する。
【0026】
本発明は、PTPCと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法も提供する。本発明は、ANTペプチドと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法も提供する。本発明は、ミトコンドリアの抗原を同定する方法も提供する。
【0027】
本発明は、本発明のポリペプチドを患者に投与することにより、病的な感染症又は疾病を治療又は予防する方法も提供する。本発明は、本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
ミトコンドリアの内膜タンパク質ANT(adenine nucleotide translocation、ADP/ATPキャリアとも称される)との物理的及び機能的な相互作用を介して、HIV−1にコードされたアポトーシス誘発性タンパク質Vprがミトコンドリア膜の透過化を誘導することが最近発見された。これは、様々な異なる技術、すなわち表面プラズモン共鳴、電気生理学、合成プロテオリポソーム、精製ミトコンドリアに関する研究(呼吸測定、電子顕微鏡、細胞小器官蛍光光度法)、及び無処置細胞のマイクロインジェクションを用いて示された。これらの発見は、2000年9月11日に出願された米国仮出願第60/231,539号(開示内容全体を基礎とし、参考文献として本明細書に援用する)に詳しく記載されている。
【0029】
本発明は、ミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用するペプチド分子(pToxと名付ける)と細胞を標的として誘導することができる分子(pTargと名付ける)との会合(association)に基づいた新規細胞毒性抱合体に関する。本発明は、ミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用するペプチド分子(pSAVEと名付ける)と救出のために細胞を標的として誘導することができる分子(pTargと名付ける)との会合に基づいた新規細胞保護抱合体にも関する。本発明の具体的な態様では、本発明の細胞毒性抱合体は、ウイルス由来のアポトーシス誘発性ペプチドを含む。
【0030】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、腫瘍細胞又は特定の哺乳動物細胞種と選択的に相互作用する腫瘍特異的分子であり、前記多機能性分子は前記哺乳動物又は腫瘍細胞種によって選択的に内部移行し、前記多機能性分子はPTPC及び/又はANTと相互作用して、アポトーシス又は何らかの細胞死プロセスを引き起こす強力なミトコンドリア毒性を発揮する。
【0031】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、血管新生内皮細胞に対して選択毒性を表す。本発明の別の態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXは、腫瘍細胞に対して選択毒性を表す。
【0032】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、抗体又は組換え抗体断片である。本発明の別の態様では、多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、腫瘍ホーミング(horning)ペプチド(たとえば、CNGRCペプチド、肺ホーミングペプチドCGFECVRQCPERC)である。
【0033】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、HIV−1 Vprタンパク質のC末端部分(アミノ酸52−96)に由来するペプチド又はペプチド類似体である。
【0034】
本発明の1つの態様では、前記多機能性TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、BaxもしくはBidタンパク質等のアポトーシス誘発性のBcl−2ファミリー構成因子、又はそれらの断片である。
【0035】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTOX部分は、表1に記載されているペプチド配列群の中から選択されるD−ペプチド、Ψ−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表1】
【0036】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−SAVEのSAVE部分は、表2に記載されているペプチド配列群の中から選択されるL−ペプチド、D−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表2】
【0037】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−SAVEのTARG部分は、表3に記載されているペプチド配列群の中から選択されるL−ペプチド、D−ペプチド、又はレトロ−インベルソペプチドである。
【表3】
【0038】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTarg部分は、デカン酸CH3(CH2)8CO−である。
【0039】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、抗体、組換え抗体、組換え抗体断片、又はScFv(single chain fragment variable)である。
【0040】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、以下のベクターpACgp67−ScFv461(図1)によってコードされている。
【0041】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、以下のベクターpACgp67−ScFv350(図2)によってコードされている。
【0042】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOXのTARG部分は、EllerbyらによってPCT/US00/01602に定義されている腫瘍ホーミングペプチドである。
【0043】
本発明の1つの態様では、前記多機能性分子TARG−(MLS)−TOX/SAVEのTARG部分は、Pasqualini R, Ruoslahtiによって定義されている脳又は腎臓ホーミングペプチドである(Nature 1996 Mar 28:380(6572):364−6. Organ targeting in vivo using phage display peptide libraries)。
【0044】
本発明の1つの態様では、pToxは、HIV−1のVprペプチド又はその断片である。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のタンパク質R(Vpr)は、96アミノ酸の平均長と約15kDの分子量を有する、ビリオン随伴性ウイルス遺伝子産物である。Vprは、HIV、サル免疫不全ウイルス(SIV)の間で高度に保存されたウイルスタンパク質である。「Yuqi Zhao and Robert T.Elder、“Yeast Perspectives on HIV−1 VPR,” Frontiers in Bioscience 5,d905−916,December 1,2000」を参照。
【0045】
Vprはオリゴマーとして特定されており、その構造的な特徴に基づいて3つのドメイン(両親媒性αヘリックスを形成すると予測されている負に荷電したアミノ末端領域(アミノ酸17−34)、中央の疎水性ドメイン(アミノ酸35−75)、及び正に帯電したカルボキシ末端ドメイン(アミノ酸80−96))に分けられると考えられている。Vprの変異分析により、核内移行、ビリオン組み入れ、及びVprの細胞周期抑止は、異なる機能ドメインによって媒介されていることが示唆されている。アミノ末端のヘリックス内の構造モチーフは、Vprをビリオンにパッケージングし、タンパク質の安定性を維持するのに重要なようである。中央の疎水性領域、特にロイシン−イソロイシン(LR)ドメインは、Vprの核移行に関わっていると報告されている。Vprの細胞周期抑止機能の多くは、カルボキシ末端内の正に荷電した領域内に位置づけられることが明らかとされた。「Tomoyuki Yamaguchi, Nobumoto Watanabe, Hiromitsu Nakauchi, and Atsushi Koito,“Human Immunodeficiency virus type 1 Vpr Modifies Cell Proliferation via Multiple Pathways,” Microbiol,Immunol.,43(5),437−447,1999」を参照。
【0046】
ヒト免疫不全ウイルス1型のウイルスタンパク質R(Vpr)のアミノ酸配列を以下に示す。
【0047】
MEQAPEDQGPQREPYNEWTLELLEELKSEAVRHFPRIWLHNLGQHIYE
TYGDTWAGVEAIIRILQQLLFIHFRIGCRHSRIGVTRQRRARNGASRS
Vpr及び保存されたH(F/S)RIG反復モチーフを含有するペプチドは、ヒトCD4細胞を素早く貫通し、アポトーシスによるミトコンドリアの機能不全と死を引き起こすことができる。より具体的には、組換えVpr及び保存された配列HFRIGCRHSRIGを含有するVprのC末端ペプチドは、CD4+ Tリンパ球の透過化、ミトコンドリア膜電位の劇的な減少を引き起こし、最終的には細胞死を招来させ得る。Vpr及び保存された配列を含有するVprペプチドは素早く細胞を貫通して、DNAと共存し、顆粒密度(granularity)の増加と密集したアポトーシス小体(dense apoptotic body)の形成とを引き起こす。Vpr処理した細胞はアポトーシスを起こし、これはDNAの断片化の実証によって確認された。「C.Arunagiri, I.Macreadie, D.Hewish and A.Azad,“A C−terminal domain of HIV−1 accessory protein Vpr is involved in penetration, mitochondrial dysfunction and apoptosis of human CD4+ lymphocytes,” Apoptosis 1997;2:69−76.」を参照。
【0048】
酵母モデル系を用いて、VprのC末端部分、特に配列HFRIGCRHSRIGに関連した細胞破壊活性が存在することが確認されている。Vpr及び配列HFRIGCRHSRIGを含有するVprの一部は、ヒトリンパ球を含む広範な哺乳類細胞を死滅させることができる。「I.G.Macreadie, A,Kirkpatrick, P.M. Strike, and A.A. Azad,“Cytocidal Activities of HIV−1 VPR and Saclp peptides Bioassayed in Yeast,” Protein and Peptide Letters, Vol.4, No.3, pp.181−186,1997」を参照。
【0049】
12アミノ酸のαヘリックスモチーフ(Vpr71−82)内のC末端部分(Vpr52−96)は、重要な意味を持つアルギニン(R)残基を幾つか含有しており(R73、R77、R80)、種々の病原性HIV−1分離株の間で強固に保存されている(L.G. Macreadie, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92, 2770−2774(1995). I.G.Macreadie, et al., FEBS Lett. 410, 145−149(1997). E.Jacotot, et al., J.Exp.Med.191,33−45(2000))。このため、本発明のキメラポリペプチドのアポトーシス誘発性部分(pTox)は、例えば、配列HFRIGCRHSRIG(HIV−1 Vpr71−82)、HFKIGCKHSKIG、Vpr71−96、Vpr52−96、又はD[HFRIGCRHSRIG]のような偽ペプチド変種を含有し得る。
【0050】
Vprペプチドの他の変種を本発明に利用することもできる。一対のH(F/S)RIG配列モチーフ(HIV−1 Vprの残基71−75及び78−82)を包含するVprのペプチド断片は、細胞膜の透過化と死を酵母及び哺乳類細胞に引き起こすことが示されている。ペプチドVpr59−86(Vprの残基59−86)は、残基60−77を包含し、残基62の近傍にねじれ(kink)を有するαヘリックスを形成する。反復配列モチーフ(HFRIG)のうち第一のモチーフは明瞭なαヘリックスドメインの中に関与しているのに対して、第二のモチーフ(HSRIG)はヘリックスドメインの外側に位置し、規則性が減少した領域が後置されたリバースターンを形成していることが示されている。一方、ペプチドVpr71−82とVpr71−96(配列モチーフはN末端に位置している)は、C2Hの化学シフトによって判断したところによると、同様の条件下で大部分が構造化されていなかった。このように、ヘリックス構造が先行しているときには、HFRIGとHSRIGモチーフは、それぞれα−ヘリックス構造とターン構造を採っているが、単独では大部分が構造を形成していないことが示されている。これらの知見には、これらのモチーフを含有する合成ペプチドの構造−機能の相関を解釈するための示唆が存在する。例えば、HFRIGとHSRIG配列モチーフは、ヘリックス構造が先行しているときには、それぞれヘリックス構造とターン構造を採っているが、完全長のVprにおけるように、単独では大部分が構造を形成していないので、本発明のキメラポリペプチドのpTox成分として使用する場合、それらが完全長のタンパク質におけると同一の構造を確実に採ることができるようにするために、ヘリックスの少なくとも1乃至2ターンを支えるのに十分な7乃至8残基をVprのN末端に含めるべきである。「Shenggen Yao, Allan M. Torres,Ahmed A. Azad, Ian G. Macreadie and Raymond S. Norton,“Solution Structure of Peptides from HIV−1 Vpr Protein that Cause Membrane Permeabilization and Growth Arrest,” J.Peptide Sci.4:426−435(1998).」を参照。Vpr遺伝子は96アミノ酸のタンパク質をコードしているが、異型が観察されている(例えば、HIV−1HXB2由来のVprsは、それぞれ、97及び90個のアミノ酸残基を有する。)。これらの変種も、本発明に利用できることが理解されるであろう。
【0051】
最も効果的な毒性を与えるためには、天然の配列から得た約8つのアミノ酸で、HFRIGCRHSRIGの両側を囲むべきである。Vpr結合、ミトコンドリア膜の透過化、又はアポトーシスを阻害又は増強する9アミノ酸超のVprポリペプチド及びペプチド、並びにサイズが少なくとも10−20、20−30、30−50、50−100、及び100−365アミノ酸のペプチドを本発明に用いることもできる。これらのポリペプチド及びペプチドをコードするDNA断片も本発明に包含される。隣接する残基は、上述したヘリックス構造を崩壊させるものにするべきではない。
【0052】
Vpr変種及び他のウイルスのアポトーシスペプチドのアポトーシス媒介能を評価することが可能であり、これによって、それらを本発明でpToxとして使用することが適切かどうかを評価することができる。Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、多くの技法を使用し得ること、及びこれらの態様が本発明の範囲を限定するものでは決してないことが理解される。例えば、1つの態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、表面プラズモン共鳴を使用する。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、電気生理学を使用する。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、精製されたミトコンドリアが使用される。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、合成プロテオリポソームが使用される。別の態様では、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANTへの結合を評価するために、生きた細胞のマイクロインジェクションが使用される。これらの技術は、米国仮出願弟60/231,539号に記載されている。
【0053】
別の態様では、Vpr−ANTの相互作用をスクリーニングするために、以下のように、SUNYで開発された酵母ツーハイブリッド系(Fieldsらの米国特許5,282,173号;J.Luban and S.Goff., Curr Opin. Biotechnol.6:59−64,1995;R.Brachmann and J.Boeke,Curr Opin.Biotechnol.8:561−568,1997;R.Brent and R.Finley,Ann.Rev.Genet.31:663−704,1997;P.Bartel and S.Fields,Methods Enzymol.254:241−263,1995に記載されている)を使用することもできる。相互作用に不可欠なVpr若しくはその一部、又はその他のウイルスアポトーシスペプチドをGal4 DNA結合ドメインに融合して、Gal 4転写活性化ドメインに融合されたANT分子とともに、ヒスチジン欠損プレート上で増殖するためにGAl4活性に依存する株に導入することができる。Vprポリペプチド又はその他のウイルスアポトーシスペプチドがANT分子と相互作用することにより、両分子を含有する酵母の増殖が可能となり、この相互作用を阻害又は変化させる分子(すなわち、増殖を阻害又は増強することによって)をスクリーニングすることができる。別の態様では、酵母ツーハイブリッドアッセイにおける結合を測定するために、検出可能なマーカー(例えば、β−ガラクトシダーゼ)を使用することができる。
【0054】
あるいは、Vprペプチド断片又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドの結合特性は、Vprペプチド断片又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドのANT発現細胞への結合をFACS分析で分析することによって測定することができる。これにより、ペプチドの結合の性質を決定し、ペプチドがANTに結合する相対的能力を識別することが可能となる。同様に、ANT結合活性を特定するためには、Vpr又はその他のウイルスのアポトーシスペプチドを用いたインビトロ結合アッセイを使用することができる。
【0055】
別の具体的な態様では、本発明の細胞毒性抱合体には、アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)由来のアポトーシス誘発性ペプチドが含まれる。前記抱合体のアポトーシス誘発部分(pTox)は、例えば、配列DKRTQFWRYFPGN(hANT2104−116[A114P])又は[DKRTQFWRYFPGN]等の偽ペプチド変種を含有することができる。
【0056】
別の具体的な態様では、本発明の細胞保護抱合体には、ANT由来の抗アポトーシスペプチドが含まれる。前記抱合体の抗アポトーシス部分(pSave)は、例えば、配列DKRTQFWRYFAGN(hANT2104−116)、配列LASGGAAGATSLCFVYPL(ANT117−134)、又はD[DKRTQFWRYFPGN]等の偽ペプチド変種を含有することができる。
【0057】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分は、抗体又は抗体断片であり得る。抗体又は抗体断片は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の全部又は一部であり得る。「抗体」という語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらの断片、並びに組換えによって作製された任意の結合パートナー(binding partners)を含むものとする。約107M−1以上のKaで結合すれば、抗体が特異的に結合すると定義する。結合パートナー又は抗体の親和性は、伝統的な技術、例えば、「Scatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci.,51:660(1949)」に記載されている技術を用いて容易に測定することができる。
【0058】
本明細書で使用する「抗体断片」という語には、以下のものが含まれる。
【表4】
モノクローナル抗体の断片は、小さな抗原誘導分子として特に興味深い。抗体断片は、他のpTox因子を有するようにデザインされた本発明のキメラポリペプチド(治療用抱合体等)を組み立てるのにも有用である。インビボで使用する場合、抗体の断片は薬物動態学的な挙動が変化しているので細胞毒性物質を用いた癌の治療に有用であるとともに、身体の組織中に素早く浸透させるのに有用であり、治療技術に優れた効果を発揮するため有益である。
【0059】
本発明に使用するのに特に適した抗体断片は、抗原結合活性を有する最小のFv断片である。Fv断片の二つの鎖は、共有結合を持たず、非共有結合的相互作用も小さく、Fd及びFab断片の軽鎖よりも会合の安定性が低いが、機能的なFv断片が数多くの様々な抗体に対して発現されている。本発明に使用されるFv断片を安定させるには、二つの方策を利用することができる。第一に、二つのドメイン間でジスルフィド結合を形成できるようにするためにVHとVLの各鎖上の選択した残基をシステインに変異させる。第二に、一本鎖Fvとして知られる単一のポリペプチド鎖としてFvが得られるように、あるドメインのC末端と別のドメインのN末端との間にペプチドリンカーを導入する。
【0060】
このように、一本鎖Fvs(ScFvs)(ポリペプチドリンクによって互いに共有結合で係留され、一つのポリペプチド鎖を形成する組換えVL及びVH断片)は、本発明において有用である。Fv遺伝子を発現させるためには、骨髄腫細胞、昆虫、酵母、及び大腸菌(Escherichia coli)細胞を含む幾つかの系を効果的に使用することができる。大腸菌(E.Coli)中での発現は、頻繁に使用されている製造法であって、細胞内発現と分泌の両者によって、ScFvを高収率で作製することが可能となる。
【0061】
ScFv分子の作製には、あるドメインのC末端と別のドメインのN末端の間の35乃至40Åという距離を架橋して、Fv構造が正しくフォールディングし組み立てられるようにするための適切なペプチドリンカーを同定することが必要である。数種の異なるリンカーが用いられており、機能的なScFvを与えることが示されている。通常、3−18アミノ酸の平均長を有するポリペプチドがリンクとして使用される。それらは、セリン及び/又はグリシン残基に富んでいてもよく(これにより柔軟性が得られる)、あるいは、帯電したグルタミン酸及び/又はリジン残基に富んでいてもよい(これにより溶解度が向上する)。リンカーは、適切な長さとコンフォメーションのタンパク質断片を既存のタンパク質構造から検索して選択することもできるし、15アミノ酸の配列(Gly4Ser)3等の簡易で柔軟な構造を基礎として新規に(de novo)設計することによって選択することもできる。
【0062】
可能な二つの方向性の活性な一本鎖Fv分子(VH−リンカー−VL又はVL−リンカー−VH)は何れも本発明に使用できるが、本来のコンフォメーションを維持して完全な抗原結合を保つには、一方のドメインのN末端又は他方のドメインのC末端が遊離状態にあることが必要な可能性があるので、抗体の中には、一方の方向性が好適なものがあるかもしれない。
【0063】
ScFvには、凝集し易く、二量体、三量体、及び多量体を形成するものが存在するかもしれない。安定なpTarg構造を作製するためには、極めて短いリンカーを用いるか、又はリンカーを全く用いない場合に二量体又はその他の多量体が形成される可能性を調べることができる。ある特異性を有する抗体のVHを別の特異性を有するVLに融合させることによって(この逆も同様)、二つの異なる結合特異性を有するpTarg分子を作出するために、このようなアプローチを使用することも可能である。
【0064】
ジスルフィド結合によって安定化されたFv’sは、本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分として用いることもできる。VHドメインとVLドメインの間にジスルフィド結合を導入してジスルフィドで連結されたFvを形成させるには、システインに変異させたときに、結合部位のコンフォメーションに直接影響を与える可能性が少なく且つFvの構造に緊張を与えずにジスルフィド結合を形成することができる、各鎖上の近接した残基を同定する必要がある。このようなジスルフィド結合の形成をもたらし、抗原結合特性を保持している安定化されたFv断片を産生させ得ると思われる部位が、CDR領域とフレームワーク領域の両方に見出されている。
【0065】
サイズが小さく、インビボでのクリアランスが迅速で、安定であり、加工もし易いので、本発明において用いられるScFvsは、疾病(特に癌)の治療において様々な用途を有している。ScFvsは、抗原に対して、モノクローナル抗体と同じ親和性と特異性を表すことができる。異なる特異性を有する多数のScFvが構築されている。それらは、強力な毒素(pTox)に遺伝的に融合するのに有用である。ScFvが一価であることが不利益ならば、結合効率が増大した二価又は多価の構築物を利用することもできる。
【0066】
本発明の好ましい態様では、細胞毒性抱合体の標的誘導部分(pTarg)は、腫瘍特異的抗体の組換え部分(ScFv)(M350及びV461モノクローナル抗体のScFv形式等)である。このハイブリドーマは、2001年1月24日に、受託番号I−2617でCNCMに寄託した。
【0067】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分は、好ましくは、モノクローナル抗体又はその断片である。ヒト細胞抗原に対するモノクローナル抗体が好ましい。現在、数多くの腫瘍関連抗原が公知であり、性質も特定されているが、これらに対する抗体により、様々な種類の腫瘍に誘導することが可能となる。有用な腫瘍関連抗原は、正常組織には存在せずに、腫瘍細胞上に高レベルで存在しているもの、好ましくは、腫瘍の全細胞上に均一に存在しているものである。また、抗原は、腫瘍から血液へと流出すべきではない。
【0068】
一般的に使用されている腫瘍関連抗原とそれらに対する抗体の例を下表に記す。
【表5】
【0069】
重要な検討事項は、腫瘍部位に局在する抗体の絶対量である。したがって、腫瘍に大量に局在して、大用量のpToxを輸送するが、循環及び身体の他の部分からは素早く除去され、非特異的な毒性を最小限に抑える分子が理想的な分子となろう。無処置の完全な抗体は、通例、長期間にわたって循環し、腫瘍部位に高レベルの活性を蓄積させるのに対して、抗体の断片はこれより急速に除去され、正常組織への投薬量が節約される。
【0070】
抗体断片は、ファージディスプレイ技術によって調製することもできる。ファージディスプレイは選択の技術であり、この技術では、抗体断片(ScFv)を線状ファージfdの表面上に発現される。このために、抗体可変遺伝子のコード配列を、ファージ粒子の末端に位置するマイナーコートファージタンパク質III(g3p)をコードする遺伝子と融合させる。融合された抗体断片をビリオン表面上にディスプレイし、不溶化抗原上への吸着により、断片を有する粒子を選択することができる(パニング)。細菌細胞を再感染させるために、溶出後、選択した粒子を使用する。吸着と感染を繰り返すことにより、濃縮が達成される。細菌のプロテアーゼはg3pタンパク質と抗体断片との結合を切断することができ、感染細菌細胞によって可溶性抗体断片が産生されることになる。可溶性ScFvを放出するためには、g3p遺伝子の切除を行うか、抗体遺伝子とg3p遺伝子間にアンバー停止コドンを設ける。
【0071】
免疫グロブリン及びその変異種は公知であり、組換え細胞培養中で数多く調製されている。例えば、米国特許第4,745,055号、欧州特許第256,654号、Faulknerら、Nature 298:286(1982)、欧州特許第120,694号、欧州特許125,023号、Morrison,J.Immun.123:739(1979)、Kohlerら、P.N.A.S.USA 77:2197(1980)、Rasoら、Cancer Res.41:2073(1981)、Morrisonら、Ann.Rev.Immunol.2:239(1984)、Morrison、Science 229:1202(1985)、Morrisonら、P.N.A.S. USA 81:6851(1984)、欧州特許第255,694号、欧州特許第266,663号、及びWO 88/03559を参照。再集合された免疫グロブリン鎖も公知である。例えば、米国特許第4,444,878号、WO 88/03565、欧州特許第68,763号、及びこれらに引用されている参考文献を参照。免疫グロブリン軽鎖又は重鎖定常領域をコードしているDNAが公知であり、又はcDNAライブラリーから容易に手に入れることができ、若しくは合成される。例えば、Adamsら、Biochemistry 19:2711−2719(1980)、Goughら、Biochemistry 19:2702−2710(1980)、Dolbyら、P.N.A.S. USA 77:6027−6031(1980)、Riceら、P.N.A.S. USA 79:7862−7865(1982)、Falknerら、Nature 298:286−288(1982)、及びMorrisonら、Ann.Rev.Immunol.2:239−256(1984)を参照。これらの素材及び技術は、本発明のキメラポリペプチドのpTargを合成するために用いることができる。
【0072】
本発明のキメラポリペプチドのpTarg成分として用いられるポリクローナル抗体は、本分野において周知である手法を用いて、様々な採取源、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、又はラットから容易に作製することができる。一般的には、精製された細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質又は細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質のアミノ酸配列に基づく適宜にコンジュゲートされたペプチドを、通例非経口的注入によって宿主動物に投与する。細胞表面タンパク質又は糖タンパク質の免疫原性は、アジュバント(例えば、フロイントの完全又は不完全アジュバント)の使用によって増強することができる。強化免疫の後、少数の血清サンプルを集め、細胞表面タンパク質又は糖タンパク質に対する反応性を調べる。このような測定に有用である様々なアッセイの例には、向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、及びサンドイッチアッセイの他に、「Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane(eds), Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988」に記載されているアッセイが含まれる。米国特許第4,376,110号及び第4,486,530号を参照。
【0073】
pTarg成分として用いられるモノクローナル抗体は、周知の手法を用いて容易に調製することができる。例えば、米国特許第RE32,011号、4,902,614号、4,543,439号、及び4,411,993号、「Monoclonal Antibodies,Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,Kennett,McKearn, and Bechtol(eds.),1980.」に記載されている手法を参照。簡潔に述べると、必要に応じてアジュバントの存在下で、単離精製された細胞表面タンパク質又は糖タンパク質、複合細胞表面タンパク質又は糖タンパク質を、約3週の間隔で少なくとも一回、好ましくは少なくとも二回、マウス等の宿主動物の腹腔内に注射する。次いで、従来のドットブロット技術又は抗体捕捉(ABC、antibody capture)によってマウスの血清をアッセイし、何れの動物が融合に最良であるかを決定する。約2乃至3週間後に、マウスの静脈内に、細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質又は複合細胞表面タンパク質若しくは糖タンパク質を追加免疫する。その後、マウスを屠殺し、確立されたプロトコールに従って、脾臓細胞をAg8.653(ATCC)等の市販の骨髄腫細胞と融合させる。簡潔に述べると、骨髄腫細胞を培地中で数回洗浄し、骨髄腫細胞1に対して脾臓細胞約3の比率で、マウスの脾臓細胞に融合させる。融合剤は、本分野で使用されている任意の適切な物質、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。融合細胞を選択的に増殖させる培地を含有するプレート中に融合細胞を蒔く。次いで、約8日間、この融合細胞を増殖させることができる。得られたハイブリドーマからの上清を集め、まず、ヤギ抗マウスIgでコートしたプレートに加える。洗浄の後、125I標識細胞表面タンパク質又は糖タンパク質等の標識を各ウェルに加えた後、インキュベートする。続いて、オートラジオグラフィーによって、陽性ウェルを検出することができる。陽性クローンは大量培養で増殖させることができ、引き続き、プロテインAカラム(Pharmacia)を通して上清を精製する。
【0074】
pTarg成分に対するモノクローナル抗体は、「Alting−Mees et al.,“Monoclonal Antibody Expression Libraries: A Rapid Alternative to Hybridomas”, Strategies in Molecular Biology 3:1−9(1990)」(参考文献として本明細書に援用する)に記載されている技法等の別の技法を用いて作製することもできる。同様に、結合パートナーは、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を取り込むための組換えDNA技術を用いて構築することができる。このような技術は、「Larrick et al.,Biotechnology,7:394(1989)」に記載されている。
【0075】
pTarg成分として用いられるモノクローナル抗体及びその断片には、キメラ抗体、例えば、マウスモノクローナル抗体をヒト化したものが含まれる。このようなヒト化抗体は、公知の技術によって調製することができ、抗体をヒトに投与したときの免疫原性を減らせるという利点がある。1つの態様では、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス抗体(又はその抗原結合部位のみ)の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とを備える。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウスモノクローナル抗体の抗原結合部位とヒト抗体由来の(抗原結合部位を欠く)可変領域断片とを備えてもよい。キメラ抗体及びさらに加工したモノクローナル抗体を作製する操作には、「Riechmann et al.,(Nature 332:323,1988)」、「Liu et al.(PNAS 84:3439,1987)」、「Larrick et al.(Bio/Technology 7:934,1989)」、及び「Winter and Harris (TIPS 14:139,May 1993)」に記載されている操作が含まれる。遺伝子組換えで抗体を作製する操作は、英国特許第2,272,440号、米国特許第5,569,825号、及び5,545,806号、並びにこれらの優先権主張の基礎となっている関連出願(参考文献として、全て本明細書に援用する)に見ることができる。
【0076】
本発明のさらなる態様では、細胞毒性キメラポリペプチドの標的誘導部分(pTarg)は、腫瘍ホーミングペプチド(tumor homing peptide)である。このような腫瘍ホーミングペプチドには、Ellerらによって、PCT/US00/01602(開示内容全体を基礎とし、本明細書に参照文献として援用する。)の実施例V、VI、VII、VIIIに記載された全てのホーミング配列が含まれる。
【0077】
本発明の好ましい態様では、前記キメラポリペプチドは、配列CNGRCGG−HFRIGCRHSRIG、又はCNGRCGG−D[HFRIGCRHSRIG]、又はCNGRCGG−Vpr52−96、又はCNGRCGG−DKRTQFWYFPGN、又はCNGRCGG−D[DKRTQFWYFPGN]、又はACDCRGDCFCGG−HFRIGCRHSRIG、又はACDCRGDCFCGG−D[HFRIGCRHSRIG]、又はACDCRGDCFCGG−Vpr52−96、又はACDCRGDCFCGG−DKRTQFWYFPGN、又はACDCRGDCFCGG−[DKRTQFWYFPGN]、又はM350/ScFv−HFRIGCRHSRIG、又はM350/ScFv−D[HFRIGCRHSRIG]、又はM350/ScFv−Vpr52−96、又はM350/ScFv−DKRTQFWYFPGN、又はM350/ScFv−D[DKRTQFWYFPGN]を有する。
【0078】
本発明のキメラポリペプチドは、様々な慣用技術によって作製することができる。このような技術には、「B.Merrifield, Methods Enzymol,289:3−13,1997」、「H.Ball and P.Mascagni,Int.J.Pept.Protein Res.48:31−47,1996」、「F.Molina et al.,Pept.Res.9:151−155,1996」、「J.Fox, Mol.Biotechnol.3:249−258,1995」、及び「P.Lepage et al.,Anal.Biochem.213:40−48,1993」に記載されている技術が含まれる。
【0079】
ペプチドは、古典的なFmocをベースとした合成及び偽ペプチド合成を用いて、マルチチャネルのペプチド合成機で合成することができる。本発明の1つの態様では、Vpr52−96、Vpr71−96、Vpr71−82、並びに表I、II、IIIに記載されている全てのTox、Save、及びTARGペプチドは、固相ペプチド化学合成によって合成される。樹脂から切断した後、逆相HPLCによって、ペプチドを精製し、分析する。HPLC鑑定によれば、ペプチドの純度は、通例、98%以上である。各ペプチドの完全性は、マトリックス支援レーザー脱離飛行時間型分析法によって調節することができる。生体液中でペプチドが急速に崩壊するのを避けるために、有利には、一又は数個のアミド結合を、レトロ−インベルソ(NH−CO)、メチレンアミノ(CH2−NH)、カルバ(CH2−CH2)、又はカルバザ(CH2−CH2−N(R))結合のようなペプチド結合イソステアによって置き換えることができる。
【0080】
あるいは、所望のペプチドを産生するための発現ベクター中に所望のペプチド配列をコードするDNA配列をサブクローニングすることによって、本発明のキメラポリペプチドを調製することもできる。有利には、ペプチドをコードするDNA配列は、適切なリーダーペプチド又はシグナルペプチドをコードする配列に融合される。あるいは、従来の技法を用いて、DNA断片を化学的に合成してもよい。DNA断片は、公知の制限酵素(New England Biolabs 1997 Catalog, Stratagene 1997 Catalog,Promega 1997 Catalog)を用いて、DNA、例えばHIV−1のクローンを制限エンドヌクレアーゼ消化し、アガロースゲル電気泳動等の慣用手段で単離することによって作製することもできる。
【0081】
別の態様では、所望のタンパク質又はペプチド断片をコードするDNA配列を単離し、増幅するために、周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法を用いることができる。DNA断片の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドが、5’及び3’プライマーとして用いられる。オリゴヌクレオチドは、増幅されたDNA断片の発現ベクター中への挿入を容易にするために、制限エンドヌクレアーゼのための制限部位を含有することができる。PCR技術は、「Saiki et al.,Science 239:487(1988)」、「Recombinant DNA Methology, Wu et al.,eds.,Academic Press, Inc., San Diego(1989),p.189−196」、及び「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds,Academic Press,(1990)」に記載されている。もちろん、ポリペプチド及びDNA断片を調製するためには多くの技術を使用することができ、この態様は本発明の範囲を限定するものでは決してないことは理解されるであろう。
【0082】
TARGをTOXに連結し、またTARGをSAVEに連結するためには、分子の化学特性に応じて、幾つかの方法を使用することができる。例えば、応用免疫学の分野で日常的に使用されている、ハプテンをキャリアタンパク質に連結する方法がある。1つの態様では、例えば、カルボジイミド結合を用いて、予め作製されたPTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体断片(pTarg)として抗体に抱合させることができる。カルボジイミドには、一般式R−N+C=N−R(R及びRは、脂肪族又は芳香族である)を有する一群の化合物が含まれ、ペプチド結合を合成するために使用される。調製操作は簡易で、比較的早く、温和な条件下で行われる。カルボジイミド化合物はカルボキシル基を攻撃して、それらを遊離アミノ基の反応部位へと変化させる。カルボジイミド結合は、抗体産生用の様々な化合物を抱合させるために使用されている。
【0083】
水溶性カルボジイミドである1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体又は抗体断片分子に抱合させるのに有用であり得る。このような抱合には、アミノ基(例えば、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)によって与えられ得る)とカルボキシル基(抗体又は抗体断片によって与えられ得る)の存在が必要である。
【0084】
ペプチド結合の直接形成のためにカルボジイミドを用いることに加え、EDCを用いてN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルのような活性エステルを調製することもできる。次いで、アミノ基のみに結合するNHSエステルは、オキソルビシンの単一のアミノ基とアミド結合を形成させるために使用することができる。抱合体の形成収率を増加させるために、抱合にはEDCとNHSを併用するのが一般的である。
【0085】
PTPC制御分子(TOX又はSAVE)を抗体又は抗体断片に抱合させるための他の方法を使用することも可能である。例えば、過ヨウ素酸ナトリウム酸化に引き続き適切な反応剤の還元的アルキル化を使用することができるし、グルタルアルデヒド架橋を使用することもできる。しかしながら、本発明のキメラポリペプチドを作製する方法として何れの方法を選択したかにかかわらず、抗体又は抗体断片が標的誘導能を保持し、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)がその活性を維持していることを測定しなければならないことを認識すべきである。
【0086】
本発明のキメラポリペプチドには、PTPC制御分子(TOX又はSAVE)(pTarg)と抗体又は抗体断片(pTox)との間に機能的に介在された特異的に切断不能又は切断可能なリンカーペプチドをさらに取り込ませてもよい。このようなリンカーペプチドをキメラ構築物中に導入することによって、無傷の抗体又は抗体断片から無傷のPTPC制御分子(TOX又はSAVE)を分離するように切断され得る部位が、得られたキメラポリペプチドの中に与えられる。このようなリンカーペプチドは、例えば、トロンビン切断、第X因子切断、又は他のペプチダーゼ切断に対して感受性のあるペプチドであり得る。あるいは、キメラポリペプチドがメチオニンを欠いている場合には、臭化シアン処理に対して感受性のあるペプチドによって、抗体又は抗体断片を分離させてもよい。一般的には、このようなリンカーペプチドは、リンカーペプチド内にのみ見出され、キメラポリペプチドを構成するTARG、TOX,又はSAVE断片中の何れの位置にも見出されない部位を描くであろう。
【0087】
本明細書には、生理的に許容される希釈剤、担体、又は賦形剤等の他の成分とともに、有効量の本発明のキメラポリペプチドを含む組成物が記載されている。前記キメラペプチドは、薬学的に有用な組成物を調製するために使用されている公知の方法に従って調合することができる。それらは、唯一の活性物質として、又は所定の適応症に適した他の公知の物質とともに、薬学的に許容される希釈剤(例えば、生理食塩水、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸緩衝溶液)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバント、及び/又は担体とともに、混合物として混ぜ合わせることができる。薬学的組成物用の適切な剤形には、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.1980,Mack Publishing Company,Easton,PA」に記載されているものが含まれる。
【0088】
さらに、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと錯体を形成させるか、又はポリ酢酸、ポリグリコール酸、ハイドロゲル、デキストラン等のポリマー化合物中に取り込ませるか、又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層又は多層小胞、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト中に取り込ませることができる。このような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボ放出の速度、及びインビボクリアランスの速度に影響を与えるものと思われ、意図する用途に応じて選択される。
【0089】
キメラポリペプチドを含む本発明の組成物は、任意の適切な態様(例えば、局所的に、非経口的に、又は吸入によって)で投与することができる。「非経口」という用語には、例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内経路による注入が含まれるが、(例えば、疾病又は傷害部位への)局所的な投与も含まれる。インプラントからの徐放も想定される。当業者であれば、治療すべき疾患の性質、患者の体重、年齢、及び一般的な状態、並びに投与経路のような要素に応じて、適切な投与量が変動し得ることを認識することができるであろう。動物試験によって予備的な用量を決定してもよく、本分野で受容されている慣行に従って、ヒトに投与するために投与量の増減を行う。
【0090】
生理的に許容される剤形で核酸を含む組成物も想定されている。例えば、注入用にDNAを調合してもよい。
【0091】
最も一般的な応用の一つでは、本発明は、本発明のキメラポリペプチドをコードする配列を有するDNAセグメントを取り込んだ組換えベクターに関する。本発明において、「キメラポリペプチド」という用語は、ウイルスのアポトーシスペプチドの少なくとも一部が抗体又は抗体断片の少なくとも一部に結合(couple)されている任意のポリペプチドを含むものとして定義される。それぞれ、DNAセグメントとDNAセグメント由来のメッセンジャーの転写と翻訳が機能的になされるように結合を行うことが可能である。
【0092】
本発明のベクターは、キメラポリペプチドをコードする配列が、有効なプロモーターに隣接し、プロモーターの制御下に配置されるように構築されるのが一般的であろう。一定のケースでは、前記プロモーターは原核生物のプロモーターを備え、前記ベクターは原核生物宿主内での発現に適合されているであろう。別のケースでは、前記プロモーターは真核生物のプロモーターを備え、前記ベクターは真核生物宿主での発現に適合されているであろう。後者のケースでは、前記ベクターは、通例、カルボキシ末端アミノ酸の3’の位置であり、且つ前記コードされているキメラポリペプチドの転写ユニットの中にポリアデニル化シグナルをさらに含んでいるであろう。本発明のベクターにおいて特に実用性が高いプロモーターは、発現に使用する細胞に応じて、サイトメガロウイルスプロモーター及びバキュロウイルスプロモーターである。ベクターのプロモーターの正確な性質に関わりなく、本発明の組換えベクターは、以下に記されているDNAセグメントを取り込むであろう。
【0093】
本明細書では、本発明のベクターを取り込んだ組換え宿主細胞の権利も請求されている。組換え宿主細胞は、真核細胞又は原核宿主細胞の何れであってもよい。真核細胞を使用する場合には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が実用的であろう。別の態様では、バキュロウイルスプロモーターと組み合わせて使用する場合には、昆虫細胞株であるSF9又はSF21を使用することができる。
【0094】
以下の実施例で、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0095】
実施例1
マウスモノクローナル抗体(Ac M350)の取得
免疫化の原料としてヒト胎児細胞を選択した。腫瘍細胞上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体を産生させるための免疫化の原料として本発明者らが胎児細胞を使用したのは、胎児と腫瘍の抗原が似ていることが周知であったからである。癌胎児性抗原は、子宮内で成育している間に存在する糖タンパク質であり、出生時には消滅し、病的な状態、特に悪性腫瘍中に再発現することがある。この抗原群の例は多数存在し、最もよく知られたモデルは、70%の肝臓腫瘍に伴うフェトプロテインと、ヒトの臨床治療に頻繁に用いられ、消化管の癌に罹患した患者をモニターするパラメータである<<胎児性腫瘍抗原>>である。
【0096】
A. M350クローンの作製
これらの胎児細胞は、25週齢の女の胎児の乳腺芽を無菌採取して取得した。機械的に乳腺芽を0.5mm3の断片に分離してから、コラーゲナーゼとヒアルロジナーゼで改変した37℃のダルベッコ培地に細胞を再懸濁し、顕微鏡下で観察した後、30分乃至4時間振盪させた。オルガノイドが出現したらすぐに、細胞をFicollの上に載せ、洗浄し、次いで、hepes、インシュリン、コレラ毒素(cholerci toxin)、コルチゾール中、無カルシウムDMEM−F12培地の中で培養した。一週間に一度、細胞を継代培養した。この技法を用いて、細胞を10−20倍に分裂させて、免疫化するのに十分な細胞を得た。
【0097】
Balb/cマウスの腹腔内に4回免疫した。融合は、古典的なKohlerとMilsteinの技術に従って行った。スクリーニングは、胎児の乳腺細胞、成人の乳腺細胞、及び乳癌を用いて行った。数個のクローンが現れ、そのうちの一つ(M350クローン)を乳癌及び正常な乳房組織に対して特に検査した。150の腫瘍切片、すなわち、浸潤性管内(intra−canalar)及び小葉内腺癌、浸潤性小葉腺癌を検査した。検査は、アルカリホスファターゼを用いた免疫酵素技術を用いて行った。検査した腫瘍は全て陽性であったが、乳房試料から採取し、平行して検査した正常な組織は陰性か弱い陽性であった。正常組織の各スライドには、パレアル組織(paleal tissue)内の小葉型上皮構造と空洞が含まれていた。
【0098】
B.その他のハイブリドーマ
関連乳癌抗原に対する新しいマウスモノクローナル抗体の取得。
【0099】
この技術では、3つの異なる乳癌細胞株(MCF7、MDA、ZR75−1)の混合物を、C57/B16マウスの腹腔内に4回免疫した。融合とスクリーニングの後、正常な乳房組織と悪性腫瘍、その他の腫瘍試料、及び末梢血細胞に対して特異性を調べた。表面腫瘍標識を示すモノクローナル抗体を選択した。
【実施例2】
【0100】
実施例2
A. 細胞株とウイルス
5% ウシ胎児血清を補充したTC100の中に、Spodopter frugiperda(Sf9昆虫細胞、Vaughn et coll.,1977)の卵巣組織に由来する挿入細胞(insert cell)とTrichoplusia ni(High Five昆虫細胞)由来の昆虫細胞とを28℃で維持し、組換えバキュロウイルスの増殖と組換えタンパク質の作製に使用した。バキュロウイルスのウイルスDNA(Baculogold,Pharmingen)と組換え導入ベクターDNAを昆虫細胞に同時トランスフェクションした後に、組換えバキュロウイルスを得る。
【0101】
B. 組換え導入ベクター:pVL−PS−gp671
組換えウイルスを作製するための導入ベクターとして、導入ベクターpVL1392(Invitrogen)由来の組換え導入ベクターpVL−PSgp671を使用する。これは、5’から3’方向に、gp67バキュロウイルス糖タンパク質のペプチドシグナル配列と、His(6)−Tagをコードする配列と、第Xa因子の認識配列と、scFv配列をサブクローニングするためのポリリンカー領域と、リンク配列(細胞毒性ペプチドとScFvとの共有結合に必要なGGC)とを含んでいる。
【0102】
gp67由来の前記シグナルペプチド配列は、pVL1392プラスミドのBg/II部位に、gp67のPCR産物(PSgp67−BackとPSgp67−Forをプライマーとし、市販のpcGP67−BプラスミドをテンプレートとしたPCRによって得た)を挿入して付加した。次いで、gp67配列の3’末端へのオリゴヌクレオチドの挿入を使用して、His(6)−Tag配列及び第Xa因子の認識配列をコードする配列を付加した。同様にして、細胞毒性ペプチドとScFvとの共有結合に必要なペプチドモチーフ(−Gly−Gly−Cys)の配列を、ポリリンカーの3’部分に付加した(最初のGは、Xmal部位の最後のヌクレオチドによってコードされている)。
【0103】
重複プライマー:
Th1:GAT CCC ATC ATC ACC ACC ACC AC (BamHI−His(6))
Th2:ATT GAA GGA AGA GAATTC CCATG(第Xa因子の切断−EcoRI−NcoI)
Th3:GCT GCA GCC CGG GGG ATG TTA AA(Pst1−XmaI−GGS−STOP−BamHI)
Th4:CTT CCT TCA ATG TGG TGG TGG TGA TGA TGG(Th1 Th2のリンク)
Th5:GGG CTG CAG CCA TGG GAA TTC T(Th2とTh3のリンク)
Th6:GAT CTT TAA CAT CCC CC
(Th3とpVL、−pg67のリンク)
をBamH1及びBglIに挿入
C. ScFv DNA断片の合成
M350のVH及びVL領域:
M350ハイブリドーマから単離された総RNAを、オリゴ(dT)をプライマーとして用いる逆転写用のテンプレートとして使用した(Reverse Transcription IBI Fermentas)。これらのcDNAと特異的プライマー(マウスIg−Prime−Kit、Novagen)を用いて実施したPCRによって、VHとVL鎖が選択的に増幅された。次いで、pST−Blue 1プラスミド中に、これらの領域を「平滑末端」としてクローニングし、配列を決定した。
【0104】
他のハイブリドーマのVH及びVI領域:
選択したハイブリドーマから単離された総RNAを、オリゴ(dT)をプライマーとして用いる逆転写用のテンプレートとして使用した(Reverse Transcription IBI Fermentas)。特異的プライマー(マウスIg−Prime−Kit、Novagen)を用いたPCRによって、VHとVL鎖が選択的に増幅された。次いで、これらの産物をpGEMT(TA cloning System front PROMEGA)ベクター中にクローニングし、配列を決定した。クローンtherap.99B3(図3)、クローンtherap.88E10(図4)、及びtherap.152C3(図5)から、新しい3つのVH及びVL配列が確定された。
【0105】
ScFv−導入ベクターの獲得:
二段階の融合PCRによって、VH−リンク−VLキメラDNAを得た(図12)。第一段階では、それぞれ、VH鎖の3’とVL鎖の5’末端にリンク配列(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)を付加した。第二段階は、キメラDNA(VH−リンク−VL)を与えるPCR融合物であった。この第二段階で用いたプライマーの群によって、VHとVLには、それぞれ、最終産物をpVL−PSp671ベクター中にサブクローニングするために使用できる5’−EcoRI部位と3’−XmaI部位が導入される(図13)。
【0106】
D. 組換えバキュロウイルスの同時トランスフェクションと精製
リポフェクション法(Feloner and Ringold,1989)(DOTAP;Roche)により、ウイルスDNA(BaculoGold;Pharmingen)及び組換え導入ベクターDNA(pVL−PSgp671−ScFv)をSf9細胞に同時トランスフェクトした。組換えウイルスのスクリーニングと精製は、SummersとSmith(Summers and Smith,1987)によって記載された一般的な操作によって実施した。組換えウイルスはBAC−PSgp671−scFvと名付けられ、増幅して108のMOIを有するウイルス原液とした。
【0107】
E. 組換えタンパク質の分析
感染細胞を集め、冷たいリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、試料還元緩衝液中に再懸濁した(Laemmli,1970)。煮沸(100℃、5分)後、変性条件下での12.5%のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(Laemmli,1970)によって、タンパク質試料を分離した。クマシーブルー染色によりタンパク質の見かけの分子量をチェックするか、又は半乾燥ブロッター装置(Ancos)を用いて、タンパク質をニトロセルロースフィルター(Schleicher and Schuell;BAS 85、0.45μm)に転写した。次いで、Ponceau Red(Sigma)で、ニトロセルロース膜を染色した後、0.05% Tween 20と5%の無脂肪乳(TS−sat)を含有するTris−生理食塩水緩衝液(0.05M Tris−HClph7.4、0.2M NaCl)の溶液でブロッキングした。His(6)−Tag(SIGMA)に対するマウスモノクローナル抗体を一次抗体、ヒツジ抗マウス免疫グロブリンG(IgG)−西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合体を二次抗体として(1;3000 Amersham)用いて、ScFvを検出した。メーカー(Amersham)の記載に従って、ECL試薬を用いることにより免疫反応性のあるバンドを可視化した。
【0108】
F. タンパク質の産生と精製
ウイルス原液を得るために、IPL41培地と5% FCS中で培養したSf9昆虫細胞に、対数期にあるMOI1の組換えバキュロウイルスを感染させる。5% FCSを加えたIPL41培地中、28℃で7日間インキュベートした後に、8000RPM、15分の遠心により、上清を採取する。Xpress培地(Biowhitaker)中で培養したHigh−five昆虫細胞に、MOI10の対数期にある組換えバキュロウイルスを感染させ、感染から1時間半後に、High Five細胞を遠心により採集し、無血清のXpress培地中に再懸濁した。28℃で4日間インキュベートした後、8000RPM、15分の遠心により、上清を採取する。次いで、2回の硫安沈殿によってこれらの上清を濃縮する。沈降により得られた沈殿を12時間透析し、メーカー(Qiagen)の記載に従って、Ni−NTAアガロースビーズのバッチを用いて精製した。透析(2日、PBS、4℃)とクマシー染色による分析の後、細胞毒性ペプチドと共有結合させるために、精製タンパク質を使用した。
【実施例3】
【0109】
実施例3
ScFvをpToxに連結させる方法
Fmoc固相ペプチド合成を用いてペプチドを組み立て、最後のFmoc脱保護後に、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で、プロピオニルオキシスクシンイミドエステルを前記ペプチドのαアミノ基と反応させた。反応(30分)の最後に、ペプチド樹脂を塩化メチレンで洗浄し、酸性条件下で、ペプチドを古典的な方法で切断し、脱保護した。次いで、活性化されたペプチドをHPLCで精製し、その完全性を質量分析によって確認した。続いて、活性されたペプチドを10:1のモル比でScFvと反応させた(pH7、PBS、ガラス管を室温で3時間攪拌)。次いで、4℃、PBSに対して、48時間透析を行った。
【0110】
この方法を用いて、4つのToxペプチドをScFvに連結させた。
【0111】
Tox11
ScFv−M350−Jac5(Vpr71−96[C761])
Ctr1 Tox11I
ScFv−M350−Jac5M(Vpr71−96[C76S;R73,80A])
Tox 12
ScFv−Vpr52−96[C76S]
Ctr1 Tox12
ScFv−Vpr52−96[C76S;R73A;R80A]
【実施例4】
【0112】
実施例4
Targ−Tox又はTarg−Save構造の例
全てのToxペプチドは、任意にN末端ビオチンとC末端アミド官能基(amide fonction)を有することができる。Tox0は、Targとの会合を必ずしも必要としないToxペプチドである。Tox1、Tox2、Tox5、Tox6、Save1、Save2、及びそれらの各コントロールは、TargとTox/Saveモチーフの間にgly−gly(−GG−)リンカーを任意に有することができる。
【表6】
【実施例5】
【0113】
実施例5
細胞(細胞株)及び無細胞系におけるミトコンドリア及び核のアポトーシスパラメータの評価
A.細胞
MCF−7、MDA−MB231、COS、及びHeLa細胞を完全培地(2mM グルタミン、10% FCS、1mM ピルビン酸塩、10mM Hepes、及び100U/ml ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM)中で培養する。CD4を発現し、ヒトBcl−2遺伝子又はネオマイシン(Neo)耐性ベクター(Aillet, et al.,1998 J.Virol.72:9698−9705)のみを安定にトランスフェクトしたジャーカット細胞は、N.Israel(Pasteur Institute,Paris)から頂いた。Neo及びBcl−2 U937細胞(Zamzami et al.,1995 J.Exp.Med)、及びCEM−C7細胞は、10% FCS、抗生物質、及び0.8μg/mL G418を補充したRPMI 1640グルタマックス培地中で培養する。
【0114】
実施した細胞検査は、候補物の経路(細胞内への浸透、次いで細胞内の所在)、及び標的細胞のアポトーシス状態(ΔΨm、細胞死エフェクターの活性化と再配置、核DNA中の含量)を決定する。これらのパラメータを決定するためには、細胞及び/又は候補分子を標識するために蛍光プローブを使用すること、及び以下の二つの分析手法、すなわち、マルチパラメータの細胞蛍光測定法と蛍光顕微鏡を実施することが必要である。神経保護作用に関する限り、マウスの胎仔から得た皮質神経細胞の初代培養に対して検査を行った。心臓保護作用に関しては、マウスの胎仔から得た心筋細胞の初代培養に対して検査を行った。
【0115】
−細胞内経路の検査:ビオチン(ストレプトアビジンに抱合した蛍光色素を用いて、又は細胞成分の分画後のリガンドブロットによって検出)又はFITC(生きた細胞の直接的な観察、ビデオ顕微鏡、及び画像解析によって検出)のうち何れかを連結したTARG−TOX又はTARG−SAVEペプチドを細胞に加える。ミトコンドリア配送シグナル(mitochondrial addressing signal)(例えば、アポトーシス誘導因子又はオルニチントランスカルバミラーゼ)を挿入することによって、TOX又はSAVEがミトコンドリアへ配送されやすくすることが可能である。同様に、配列及び一定の側鎖(リン酸化、メチル化)を修飾し、続いてペプチドをペプチド類似物に置き換えた後に、ミトコンドリア経路への配送が調べられる。
【0116】
−腫瘍及び内皮細胞株、並びに一次神経細胞に対するアポトーシスのマルチパラメータ分析。ミトコンドリアの膜電位の状態(JCI、DioC6、mitoTrackers)と核の凝縮(Hoescht)を測定するために、蛍光プローブが使用されるであろう。同様に、アポトーシスのポストミトコンドリアパラメータは、古典的な低倍数性試験とアネキシンV−FITCによる細胞表面標識を用いて調べる。
【0117】
この種の試験では、TARG−TOXの細胞毒性能(すなわち、(ミトコンドリアに対する影響により)腫瘍又は内皮細胞株を死滅させる能力(最良のTARG−TOXは、過剰発現しているBel−2細胞株も死滅させなければならない))、又は神経細胞を様々なアポトーシス発生処理に供したときのTARG−SAVEの細胞保護能のうち何れかが検討される。
【0118】
B.アポトーシスの調節
サイクロスポリン A(CsA;1μM)、ボンクレキン酸(BA;50μM)、及び/又はカスパーゼ阻害剤N−ベンジルオキシカルボニル−Val−Ala−Aspフルオロメチルケトン(Z−VAD.fmk;50μM;Bachem Bioscience,Inc.)、Boc−Asp−フルオロメチルケトン(Boc−D.fmk)、又はN−ベンジルオキシカルボニル−Phe−Ala−フルオロメチルケトン(Z−FA.fmk;全て100μMで使用し、24時間毎に添加、Enzyme Systems)を補充した又は補充していない完全培地中で、(1乃至5μM)のpTarg−pToxとともに、PBS洗浄した細胞(1−5×105/ml)をインキュベートする。pTarg−pToxに曝露させている間、健康なドナーから採取し、Lymphoprep(Pharmacia)を用いて精製したヒト初代PBLを、血清を全く加えていないRPMI 1640グルタマックス培地中で培養する。これに対して、PHA幼弱化細胞(24時間の1μg/ml PHA−P[Wellcome Industries];100U/mlのヒト組換えIL−2[Boehringer Mannheim]とともに48時間)は、10% FCSとともに培養する。
【0119】
C.無処置細胞におけるアポトーシスに伴う変化の細胞蛍光測定法による測定
細胞蛍光測定法に関しては、以下の蛍光色素:ミトコンドリアの膜間電位(ΔΨm)の定量には3,3’−ジヘキシルオキサカルボシアニンヨウ化物(DiOC(6)3;40nM)、スーパーオキサイド陰イオンの発生測定にはハイドロエチジン(4μM)、生存性の測定にはヨウ化プロピジウム(PI;5μM)を用いる(Zamzami,N. et al.,1995.J.Exp.Med.182:367−377)。二倍体に満たない細胞(subdiploid cell)の頻度は、5mM グルコースを補充したPBS、pH 7.4中の500μg/mlのRNaseで処置した(Sigma Chemical Co.;30分、室温)エタノール透過処理細胞のPI(50μg/ml)染色によって測定する(Nicoletti,I et al.,1991.J.Immunol.Methods.139:271−280)。
【0120】
D.生きた細胞の蛍光染色と免疫蛍光
アポトーシスのミトコンドリア及び核の特徴を評価するために、カバーグラス上で培養した細胞を、ΔΨm感受性色素クロロメチル−X−ローザミン(CMXRos;50nM;Molecular Probes,Inc.)又は5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨウ化物(JC−1、2μM、Molecular Probes)、ΔΨm非感受性色素Mitotracker green(1μM;Molecular Probes,Inc.)、及びHoechst 33342(2μM,Sigma)とともに、完全培地中において、37℃で30分間インキュベートする(Marzo,I et al.1998.Science.281:2027−2031)。
【0121】
E.pTarg−pToxの内部移行のインサイチュ測定
TARG−(MLS)−TOX/SAVEの内部移行をインサイチュ測定する場合、TARG−(MLS)−TOX/SAVEとともに細胞を様々な時間インキュベートした後、PBS(pH7.4)中、4% パラホルムアルデヒドと0.19% ピクリン酸を用いて、室温で1時間細胞を固定する。PBS中、室温で(5分間)、固定した細胞を0.1% SDSで透過状態にし、10% FCSでブロッキングして、ヤギ抗マウスPE抱合体[Southern Biotechnology Associates,Inc.]によって明らかにされるヘキサ−ヒスチジンタグ(クローンHIS−1、IgG2a、SIGMA)に対して特異的なmAb、ヤギ抗マウスIgG1 FITC抱合体によって検出されるHSp60に対して特異的なmAb(mAb H4149[Sigma Chemical Co.])、ヤギ抗マウスIgG2a FITC抱合体によって検出されるチトクロムcオキシダーゼに対して特異的なmAb(COX;mAb 20E8−C12[Molecular Probes,Inc.])で染色するか、あるいは、Targがビオチン化されたペプチドのときには、ストレプトアビジン−PE試薬を30分加えた後に、蛍光(及び/又は共焦点)顕微鏡により蛍光強度を検出する。
【0122】
F.ミトコンドリアのパラメータのインビトロでの評価
記載に従って(Costantini et al.,1996)、ラットの肝臓からミトコンドリアを精製し、250mM スクロース+0.1mM EGTA + 10mM −tris[ヒドロキシメチル]メチル−2−アミノエタンスルホン酸、pH=7.4中に再懸濁する。PTを誘導するために、PT緩衝液(200mM スクロース、10mM Tris−MOPS(pH7.4)、5mM Tris−サクシネート、1mM Tris−ホスフェート、2μM ロテノン、及び10μM EGTA−Tris)中に、ミトコンドリア(0.5mgタンパク質/ml)を再懸濁し、光(545nm)の90℃散乱光をF4500蛍光分光計(Hitachi、Tokyo、Japan)でモニターして、2mM アトラクチロシド(Atr)、1μM サイクロスポリンA(CsA;Novartis,Basel,Switzerland)、5μM CaCl2、及び/又は0.5乃至20μMのpTarg−pTox又はpTarg−pSave添加後の大規模な膨潤を測定した。ΔΨmを測定する場合、1μM ローダミン123(Molecular Probes,Eugene,OR)を補充した緩衝液中で、ミトコンドリア(0.5mgタンパク質/ml)をインキュベートし、ローダミン蛍光(励起505nm、発光525nm)の消光を記載に従って測定する(Shimizu et al.,1998)。単離された核に対するアポトーシス発生活性、DEVD−afc切断活性、並びにチトクロムc及びAIFの免疫検出を測定するまで、ミトコンドリアから得られた上清(6800g、15分;次いで、20,000g、1時間;4℃)をー80℃で凍結させる。チトクロムcとAIFは、それぞれ、モノクローナル抗体(クローン7H8.2C12,Pharmingen)とポリクローナルウサギ抗血清(Susin et al.1999)によって検出する。
【表7】
【0123】
G.ANTの精製とリポソーム中への再構成
以前の記載に従って(8)、ラットの心臓のミトコンドリアからANTを精製した。機械的剪断後、220mM マニトール、70mM スクロース6、10mM Hepes、200μM EDTA、100mM DTT、0.5mg/ml ズブチリシン、pH7.4の中にミトコンドリアを懸濁し、氷上に8分間放置し、分画遠心(5分、500×g、及び10分、10,000×g)により二回沈降させた。6%[v:v]のTriton X−100(Boehringer Mannheim)により、室温で6分間、40mM K2HPO4、40mM KCl、2mM EDTA、pH6.0中にミトコンドリアタンパク質を可溶化し、可溶化したタンパク質を超遠心(30分、24,000×g、4℃)によって回収した。続いて、このTriton X−100抽出液2mlを、1gのヒドロキシアパタイト(BioGel HTP、BioRad)を充填したカラムにかけて、前記緩衝液で溶出し、20mM MES、200μM EDTA、0.5% Triton X−100、pH6.0で溶出した[v:v]。続いて、FPLCシステム(Pharmacia)と線形NaClグラジエント(0−1M)を用いたHitrap SPカラムでサンプルを分離した。タンパク質濃度は、ミクロBCAアッセイ(Pierce,Rockfoll,Illinois)を用いて測定した。精製したANT及び/又は組換えBcl−2をPC/カルジオリピンのリポソーム中に再構成した。簡潔に述べると、リポソームを調製するために、1mlのクロロホルム中に45mgのPCと1mgのカルジオリピンを混合し、窒素下で溶媒を蒸発させた。0.3% n−オクチル−β−D−ピラノシドを含有する1mlのリポソーム緩衝液(125mM スクロース+10mM 2−ヒドロキシエチルピペラジンーN’−2エタンスルホン酸;Hepes,pH7.4)の中に、乾燥した脂質を再懸濁し、室温で40分間継続的にボルテックスすることにより混合した。次いで、ANT(0.1mg/ml)又は組換えBcl−2(0.1mg/ml)をリポソーム[v:v]と混合し、室温で20分間インキュベートした。最後に、4℃で一晩、プロテオリポソームを透析した。
【0124】
H.孔開放アッセイ
1mM 4−UMPと10mM KClの存在下で、ANT−プロテオリポソームを既述のとおりに氷上で音波処理(50W、22秒、Branson sonifier 250)した(28)。次いで、Sepadex G−25カラム(PD−10、Pharmacia)上で、リポソームを非封入産物から分離した。3mlになるように、10mM Hepes、125mM サッカロース、pH7.4の中に25μl分量のリポソームを希釈し、様々な濃度のアポトーシス誘発物質と混合し、室温で1時間インキュベートした。処置の30分前に、BA、ATP、及びADP等のミトコンドリア膜透過化阻害剤となり得る物質をリポソームに加えた。リポソーム緩衝液+0.5mM MgCl2の中に希釈した10μlのアルカリホスファターゼ(5U/ml、Boehringer Mannheim)を加えた後、攪拌しながら、試料を37℃で15分間インキュベートし、150μlのストップ緩衝液(10mM Hepes−NaOH、200mM EDTA、pH10)を加えて、4−MUPの4MUへの酵素的転換を停止させた。続いて、Perkin Elmerの蛍光分光光度計を用いて、4−MU依存性の蛍光(360/450nm)を定量した(28)。100%の応答を求めるために、各実験で、アトラクチロシド(アポトーシス誘発性の透過性遷移誘発物質)を標準物質として使用した。Vpr由来のペプチド又はpTarg−ptoxによって誘導された4−MUP放出のパーセントを以下のように算出した。
【0125】
[(pTar−pToxによって処理したリポソームの蛍光−未処理のリポソームの蛍光)/(アトラクチロシドによって処理したリポソームの蛍光−未処理のリポソームの蛍光)]×100
【表8】
【0126】
I.結合アッセイとウェスタンブロット
記載のとおりに(zamzami et al.,2000)、マウス肝臓のミトコンドリアを単離した。チトクロムCの放出を測定するために、pTarg−pTox処理したミトコンドリアから得られた上清(6800gで15分間、次いで、20,0000gで1時間、4℃)を、チトクロムcの免疫検出(マウスモノクローナル抗体クローン7H8.2CI2、Pharmingen)まで−80℃で凍結させた。結合アッセイのために、室温で30分間、5μM(結合アッセイ)のpTarg−pTox又はビオチン−pTarg−pToxとともに、精製ミトコンドリアをインキュベートした(100μlの膨潤緩衝液中に250μgのタンパク質)。ビオチン化Vpr52−96とのインキュベーション後(上段)又は前(下段)の何れかに、20mM Tris/HCl、pH7.6、400mM NaCl、50mM KCl、1mM EDTA、0.2mM PMSF、アプロチニン(100U/ml)、1% Triton X−100、及び20%グリセロールを含有する150μlの緩衝液を用いてミトコンドリアを溶解させた。そのミトコンドリアリガンドと複合体を形成したビオチン標識Vpr52−96を捕捉するために、150μlのアビジン−アガロース(ImmunoPure、Pierceから入手)を加える前に、1mMのEDTAを加えた2倍容量のPBSでこのような抽出液を希釈した(ローラードラム中、4℃で2時間)。前記アビジン−アガロースをPBSでバッチ式に洗浄し(5×5ml;1000g、5分、4℃)、4% SDSと5mM β−メルカプトエタノールを含有する2倍濃縮されたLaemmli緩衝液100μl中に再懸濁して、室温で10分間インキュベートし、遠心した(1000g、10分、4℃)。最後に、95℃で上清を5分間加熱し、SDS−PAGE(12%)により分析した後、ウェスタンブロット及びヒトANTに対するウサギのポリクローナル抗血清(ミネソタ州、ミネソタ大学、Hormel研究所のHeide H.Schmid博士から頂いた;Ref)を用いて免疫検出した。
【0127】
J.精製ミトコンドリアのフローサイトメトリー分析
記載どおりに(zamzami et al.,2000)、マウス肝臓のミトコンドリアを単離する。PT緩衝液(200mM スクロース、10mM Tris−MOPS(pH7.4)、5mM Tris−サクシネート、1mM Tris−ホスフェート、2μM ロテノン、及び10μM EGTA)中に、精製ミトコンドリアを再懸濁する。FSC/SSCパラメータ上のゲーティングとFSC−Wパラメータの主ピーク上のゲーティングによって、サイトフローメトリー(FACSVantage,Beckton Dickinson)による検出をミトコンドリアに限定する。これらの二重ゲーティングが適切であることは、ΔΨm非感受性ミトコンドリア色素であるMitoTracker(R) Green(75nM;Molecular Probes;緑色蛍光)を用いたミトコンドリアの標識によって事後的に確認する。低いΔΨmを有するミトコンドリアのパーセントを決定するために、CCCP又はpTarg−pTox分子の10分前に、ΔΨm感受性蛍光色素JC−1(200nM;570−595nm)を加える。低いΔΨmを有するミトコンドリアのパーセントは、ドットプロットFSC/FL−2(赤色蛍光)ウインドウにおいて測定する。
【0128】
K.アポトーシスの無細胞系
ミトコンドリアの上清中のAIF活性は、記載に従い(Susin et al.,1997b)、HeLa細胞の核に対して検査する。簡潔に述べれば、ヨウ化プロピジウム(PI;10μg/ml;Sigma Chemical Co.)を用いて染色された精製HelLa核に、AIFを含有するミトコンドリアの上清を加え(90分、37℃)、Elite IIサイトフルオロメータ(Coulter)で分析して、低倍数性の核の頻度を測定する。幾つかの実験では、単離されたミトコンドリア、ジャーカット又はCEM細胞から得たサイトゾル(記載(Susin et al.,1997a)に従って調製)、及び/又はpTarg−pToxを核に加える。ミトコンドリア上清中のカスパーゼ活性は、蛍光発生基質としてAc−DEVD−アミド−4−トリフルオロメチルクマリン(Bachem Bioscience,Inc.)を用いて測定した。
【0129】
L.PTPCの精製とリポソームへの再構成
公表されているプロトコール(Brenner et al.,1998;Marzo et al,1998b)に従って、Wistarラットの脳からPTPCを精製し、リポソーム中に再構成する。要約すれば、ホモゲナイズした脳をtriton可溶性タンパク質の抽出に供し、タンパク質をDE52樹脂の陰イオン交換カラムに吸着させ、KClグラジエントで溶出し、一晩透析して、ヘキソキナーゼ活性が最大の画分をホスファチジルコリン/コレステロール(5:1,w:w)小胞中に取り込ませる。透析工程の間には、記載に従って(Schendel et al.,1997)作製・精製された疎水性膜貫通ドメインを欠く(Δ219−239)組換えヒトBcl−2(1−218)を、総PTPCタンパク質の5%に相当する用量になるように加える(約10ng Bcl−2/mg脂質)。5mM リンゴ酸塩と10mM KClの中で、透析から回収されたリポソームを7秒間超音波処理し(120W)、Sephadex G50カラム(Pharmacia)に加え、125mM スクロース+10mM HEPES(pH7.4)で溶出する。125mM スクロース+10mM HEPES(pH7.4)の中で、pTarg−pTox、[52−96]Vpr、又はアトラクチロシドの存在下又は非存在下において室温で60分間、一定分量のリポソーム(約107)をインキュベートする。次いで、リポソームを3,3’ジヘキシロカルボシアニンヨウ化物(DiOC6(3)、80nM、室温で20−30分、Molecular Probes)と平衡化させ、記載に従って(Brenner et al.,1998; Marzo et al.,1998b)、DiOC6(3)の保持をFACS−Vantageサイトフルオロメータ(Becton Dickinson, San Jose, CA, USA)で分析する。
【0130】
3組の5×104のリポソームを分析し、PTPCリポソームにおいて0.25% SDS(15分、室温)で得られた減少を100%と考えて、結果をDiOC6(3)蛍光の減少の%として表す。
【0131】
TARGとTOX又はTARGとSAVEペプチド又はペプチド類似物の組み合わせである全てのキメラ分子の他、先述の技術を実施する際に利用することができる本発明に係るペプチド及び構築物の具体例が、表I、II、及びIIIに示されている。
【実施例6】
【0132】
実施例6
表面プラズモン共鳴は、Tox0、Tox1、Tox5、Tox6、Save1が精製ANTを結合するが、精製VDACを結合しないことを示している。
【0133】
方法論
様々なペプチドを固定化するために、Sensor Chips SA(ストレプトアビジンをコートしたセンサーチップ)を使用した。Tox1は0.7ng/mm2の密度で、Tox0は3.7ng/mm2の密度で、Ctr1 Tox0は1.4ng/mm2の密度で、Tox5は1ng/mm2の密度で、Tox6は1ng/mm2の密度で、Save1は1.3ng/mm2の密度で、対照ペプチドは0.8ng/mm2の密度で固定化した。10μL/分の速度で10分間(会合5分、解離5分)、ANTとVDAC相互作用の会合と解離の速度を経過観察した。KSCN 3Mを1分間流して、リガンドを再生させた。得られたセンサーグラムは、二重参照法を用いて、BlAeval3.1ソフトウェアにより解析した(Myszka D.G.2000.Kinetic,equilirium and thermodynamic analysis of macromolecular interactions with BIACORE. Methods Enzymol.323:325−340)。まず、リガンドを用いたセンサーグラムから、対応する検体溶媒で得られたセンサーグラムを差し引く。次に、対照ペプチドリガンドで得られたセンサーグラムによる差し引きを行った。Tox及びSaveペプチドに対する対照ペプチドは、β2−アドレナリン作動性受容体の配列に対応するbiot−H19Cであった。(Lebesgue D., Wallukat G., Mijares A., Granier C., Argibay J., and Hoebeke J.(1998) An agonist−like monoclonal antibody to the human β 2−adrenergic receptor. Eur.J.Pharmacol.348:123−133)。Tox0に対する対照ペプチドがCtr1Tox0であった。
【0134】
結果
図6は、4つのANT濃度(6.25−50nM)に対するANTとVprとの相互作用を示している。ドリフティングベースラインありの単純ラングミュアモデルを用いたセンサーグラムの分析が最良であり、160のRmaxで、0.15nMのKdが得られた(x2=7.24)。ANTとTox1との相互作用を示すセンサーグラムに対しても同じ分析を行った(図7)。10倍高いVDAC濃度で、Tox0及びTox1の両者とのVDAC相互作用を調べると(図8及び9)、センサーグラムは、ペプチドリガンドとの極めて低い会合しか示さず、得られた曲線は、様々なラングミュアの結合モデルによって分析することができなかった。
【0135】
他の3つのペプチドは、50nMの濃度で、ANTとの相互作用を検査した(図10)。精製ANTは、それぞれ、0.1、0.7、及び0.01nMの相対親和性でTox5、Tox6、及びSave1を認識した。唯一つのANT濃度で得られたこれらの値は、3つのペプチドに対するANTの相対親和性を与えるにすぎない。同じく、同じペプチドと相互作用させるために50nMのVDACを使用しても、図11に示されているように、いかなる特異的な結合も得られなかった。
【0136】
本明細書には、以下の参考文献を引用した。本明細書に引用されている各参考文献の開示内容全体を基礎として、本明細書に参考文献として援用する。
【参考文献】
【0137】
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1A】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1B】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1C】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1D】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1E】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1F】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1G】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1H】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図1I】ベクターpACgp67−ScFv461のヌクレオチド配列を示す。
【図2A】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2B】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2C】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2D】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2E】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2F】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2G】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2H】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2I】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2J】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2K】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2L】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2M】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2N】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図2O】ベクターpACgp67−ScFv350のヌクレオチド配列を示す。
【図3】クローンtherap 99B3から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図4】クローンtherap.88E10から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図5】クローンtherap.152C3から得られたVh及びVLのヌクレオチド配列を示す。
【図6】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図7】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図8】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図9】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図10】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図11】表面プラズモン共鳴曲線を示す。
【図12】ScFv−transfertベクターを得るための手法を示す。
【図13】ScFv−transfertベクターを得るための手法を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞のアポトーシスを誘導又は抑制する方法であって、透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性を調節することができる二元機能性キメラ分子を特定の組織細胞集団にホーミングすることを備えた方法。
【請求項2】
前記孔の開放又は閉鎖を制御することにより、前記キメラ分子が特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性を調節する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が組織細胞集団へ特異的に誘導する機能を有し、前記第二の機能性分子が前記特定の細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)に連関したアポトーシス活性を調節する機能を有する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が前記特定の細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)に連関したアポトーシス活性を調節する機能を有する方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が対象組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が特異的に誘導する機能とミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)又はその断片の開放又は閉鎖の制御により前記細胞のアポトーシスによる死亡を誘導又は抑制する機能とを有する方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、前記キメラ分子が、式:Targ−Toxを有し(ここで、Toxはウイルス又はレトロウイルスのアポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを引き起こすタンパク質の断片であり、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
V461/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合し、細胞中に入る、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記キメラ分子が式:Targ−Saveを有し(ここで、Saveはウイルス若しくはレトロウイルス若しくは細胞の抗アポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを抑制するタンパク質の断片であり(但し、Saveペプチドがウイルスペプチドである場合には、SaveはサイトメガロウイルスのvMIAタンパク質ではない)、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法であって、前記キメラ分子が、前記第二の機能性分子をミトコンドリア又はミトコンドリアの膜間腔へ特異的に配送する機能を有するミトコンドリア局在化配列(MLS)を含む方法。
【請求項9】
Toxが、表Iのペプチド群から選択される請求項1、2、3、4、5、6、及び8に記載の方法。
【請求項10】
Saveが、表IIのペプチド群から選択される請求項1、2、3、4、5、及び7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法であって、前記キメラ分子の前記第二の機能性分子が、ミトコンドリアのPTPCのANT(アデニンヌクレオチド輸送体アイソフォーム1、2、又は3とも称される)と特異的に相互作用する機能を有する方法。
【請求項12】
組織細胞集団中に特異的に入ることができる、アポトーシスによる前記細胞の死亡を誘導又は抑制するためのキメラ二機能性分子であり、第二の機能性分子に共有結合された第一の機能性分子を少なくとも備え、該第一の機能性分子が対象組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が特異的に誘導する機能とミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)又はその断片の開放又は閉鎖の制御により前記細胞のアポトーシスによる死亡を誘導又は抑制する機能とを有する分子。
【請求項13】
請求項12に記載のキメラ分子であって、式:Targ−Toxを有し(ここで、Toxはウイルス又はレトロウイルスのアポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを引き起こすタンパク質の断片であり、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
V461/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、キメラ分子。
【請求項14】
請求項12に記載のキメラ分子であって、式:Targ−Saveを有し(ここで、Saveはウイルス若しくはレトロウイルス若しくは細胞の抗アポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを抑制するタンパク質の断片であり(但し、Saveペプチドがウイルスペプチドである場合には、SaveはサイトメガロウイルスのvMIAタンパク質ではない)、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、キメラ分子。
【請求項15】
請求項12乃至14に記載のキメラ分子であって、前記第二の機能性分子をミトコンドリア膜又は膜間腔へ特異的に配送する機能を有するミトコンドリア局在化配列(MLS)を含むキメラ分子。
【請求項16】
Toxが表Iのペプチド群から選択される請求項13又は15に記載されたキメラ分子。
【請求項17】
Saveが表IIのペプチド群から選択される請求項14及び15に記載のキメラ分子。
【請求項18】
前記TargとToxペプチドが、3乃至18アミノ酸を有するペプチドリンカーを介して共有結合されている請求項13、15、及び16に記載のキメラ分子。
【請求項19】
前記TargとSaveペプチドが、3乃至18アミノ酸を有するペプチドリンカーを介して共有結合されている請求項14、15、及び17に記載のキメラ分子。
【請求項20】
請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子をコードするベクター。
【請求項21】
請求項13又は14に記載のTargを分泌し、2001年1月24日に、n°I2617の受託番号で、国立微生物培養収集所(C.N.C.M.)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項22】
請求項21のハイブリドーマによってコードされる精製モノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項20に記載のベクターを備えた組換え宿主細胞。
【請求項24】
表面に腫瘍関連抗原を有する癌細胞であって、請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子が結合されている癌細胞。
【請求項25】
表面に腫瘍関連抗原を有する癌細胞が生体試料中に存在するか測定する方法であって、
a)対象生体試料を、請求項12乃至19に記載のキメラペプチド分子と、本発明の前記キメラ分子と前記癌細胞の表面上に存在する前記抗原との結合が可能な条件下で接触させることと、
b)一般的な技術によって結合を検出することと、
c)工程b)で検出された結合を必要に応じて定量することと、
を備えた方法。
【請求項26】
表面に腫瘍関連抗原を有する生体試料中の腫瘍又はウイルス感染細胞にアポトーシスによる死を誘導する方法であって、対象生体試料を、請求項16又は17に記載のキメラペプチド分子に、本発明の前記キメラ分子と前記癌細胞の表面上に存在する前記抗原との結合が可能な条件下で且つ細胞内に侵入してアポトーシス又はウイルス感染細胞により細胞を死滅させるのに十分な時間にわたって、接触させることを備えた方法。
【請求項27】
ミトコンドリアのアポトーシスによる細胞死を抑制する方法であって、対象生体試料を、請求項17又は19に記載のキメラ分子に、本発明の前記キメラ分子と対象細胞との結合が可能な条件下で且つ対象細胞内に侵入してアポトーシスによる細胞死を抑制させるのに十分な時間にわたって、接触させることを備えた方法。
【請求項28】
請求項27に記載の細胞死を抑制する方法であって、前記対象細胞が、以下の細胞集団:神経細胞、心筋細胞、及び肝細胞から選択される方法。
【請求項29】
透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性に影響を及ぼす興味の対象である活性物質を同定する方法であって、
a)透過性遷移孔複合体(PTPC)を有する細胞を含有する生体試料を、候補物質の存在下で、請求項12乃至19に記載のキメラペプチドに接触させることと、
b)前記物質の非存在下において、キメラペプチドの前記透過性遷移孔複合体(PTPC)との結合を比較することと、
c)透過性遷移孔複合体(PTPC)を有する細胞成分を含んだ細胞抽出物の調製物に対する、前記選択した物質の活性を必要に応じて調べることと、
を備えた方法。
【請求項30】
透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法であって、
d)透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドを有する細胞を含有する生体試料を、候補物質の存在下で、請求項12乃至19に記載のキメラペプチドと接触させることと、
e)前記物質の非存在下において、キメラペプチドの前記透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドとの結合を比較することと、
c)透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドを有する細胞成分を含んだ細胞抽出物の調製物に対する、前記選択した物質の活性を必要に応じて調べることと、
を備えた方法。
【請求項31】
ミトコンドリア抗原を同定する方法であって、前記抗原が請求項13又は16に記載のToxの特質を有する高分子又は分子又はペプチドと相互作用する能力を有する方法。
【請求項32】
ミトコンドリア抗原を同定する方法であって、前記抗原が請求項14又は17に記載のsaveの特質を有する高分子又は分子又はペプチドと相互作用する能力を有する方法。
【請求項33】
病的な感染症又は疾病を治療又は予防する方法であって、請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子を少なくとも含有する薬学的組成物を患者に投与することを備えた方法。
【請求項34】
請求項12乃至19の何れかに記載のキメラ分子を少なくとも含有する薬学的組成物。
【請求項1】
真核細胞のアポトーシスを誘導又は抑制する方法であって、透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性を調節することができる二元機能性キメラ分子を特定の組織細胞集団にホーミングすることを備えた方法。
【請求項2】
前記孔の開放又は閉鎖を制御することにより、前記キメラ分子が特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性を調節する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が組織細胞集団へ特異的に誘導する機能を有し、前記第二の機能性分子が前記特定の細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)に連関したアポトーシス活性を調節する機能を有する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が前記特定の細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)に連関したアポトーシス活性を調節する機能を有する方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記キメラ分子が少なくとも第一の機能性分子と第二の機能性分子とを備え、前記第一の機能性分子が対象組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が特異的に誘導する機能とミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)又はその断片の開放又は閉鎖の制御により前記細胞のアポトーシスによる死亡を誘導又は抑制する機能とを有する方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、前記キメラ分子が、式:Targ−Toxを有し(ここで、Toxはウイルス又はレトロウイルスのアポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを引き起こすタンパク質の断片であり、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
V461/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合し、細胞中に入る、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記キメラ分子が式:Targ−Saveを有し(ここで、Saveはウイルス若しくはレトロウイルス若しくは細胞の抗アポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを抑制するタンパク質の断片であり(但し、Saveペプチドがウイルスペプチドである場合には、SaveはサイトメガロウイルスのvMIAタンパク質ではない)、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法であって、前記キメラ分子が、前記第二の機能性分子をミトコンドリア又はミトコンドリアの膜間腔へ特異的に配送する機能を有するミトコンドリア局在化配列(MLS)を含む方法。
【請求項9】
Toxが、表Iのペプチド群から選択される請求項1、2、3、4、5、6、及び8に記載の方法。
【請求項10】
Saveが、表IIのペプチド群から選択される請求項1、2、3、4、5、及び7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法であって、前記キメラ分子の前記第二の機能性分子が、ミトコンドリアのPTPCのANT(アデニンヌクレオチド輸送体アイソフォーム1、2、又は3とも称される)と特異的に相互作用する機能を有する方法。
【請求項12】
組織細胞集団中に特異的に入ることができる、アポトーシスによる前記細胞の死亡を誘導又は抑制するためのキメラ二機能性分子であり、第二の機能性分子に共有結合された第一の機能性分子を少なくとも備え、該第一の機能性分子が対象組織細胞集団へ特異的に誘導し且つ侵入させる機能を有し、前記第二の機能性分子が特異的に誘導する機能とミトコンドリアの透過性遷移孔複合体(PTPC)又はその断片の開放又は閉鎖の制御により前記細胞のアポトーシスによる死亡を誘導又は抑制する機能とを有する分子。
【請求項13】
請求項12に記載のキメラ分子であって、式:Targ−Toxを有し(ここで、Toxはウイルス又はレトロウイルスのアポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを引き起こすタンパク質の断片であり、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
V461/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、キメラ分子。
【請求項14】
請求項12に記載のキメラ分子であって、式:Targ−Saveを有し(ここで、Saveはウイルス若しくはレトロウイルス若しくは細胞の抗アポトーシスペプチド若しくはペプチド類似物又は又は特定の真核細胞の透過性遷移孔複合体(PTPC)と相互作用して前記細胞のアポトーシスを抑制するタンパク質の断片であり(但し、Saveペプチドがウイルスペプチドである場合には、SaveはサイトメガロウイルスのvMIAタンパク質ではない)、Targは、
抗体、
抗体断片、
組換え抗体断片、
M350/ScFv、
ホーミングペプチド、及び
表IIIから選択される任意のペプチド、
から選択される)、
前記分子が前記細胞を特異的に結合して細胞中に入る、キメラ分子。
【請求項15】
請求項12乃至14に記載のキメラ分子であって、前記第二の機能性分子をミトコンドリア膜又は膜間腔へ特異的に配送する機能を有するミトコンドリア局在化配列(MLS)を含むキメラ分子。
【請求項16】
Toxが表Iのペプチド群から選択される請求項13又は15に記載されたキメラ分子。
【請求項17】
Saveが表IIのペプチド群から選択される請求項14及び15に記載のキメラ分子。
【請求項18】
前記TargとToxペプチドが、3乃至18アミノ酸を有するペプチドリンカーを介して共有結合されている請求項13、15、及び16に記載のキメラ分子。
【請求項19】
前記TargとSaveペプチドが、3乃至18アミノ酸を有するペプチドリンカーを介して共有結合されている請求項14、15、及び17に記載のキメラ分子。
【請求項20】
請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子をコードするベクター。
【請求項21】
請求項13又は14に記載のTargを分泌し、2001年1月24日に、n°I2617の受託番号で、国立微生物培養収集所(C.N.C.M.)に寄託されたハイブリドーマ。
【請求項22】
請求項21のハイブリドーマによってコードされる精製モノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項20に記載のベクターを備えた組換え宿主細胞。
【請求項24】
表面に腫瘍関連抗原を有する癌細胞であって、請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子が結合されている癌細胞。
【請求項25】
表面に腫瘍関連抗原を有する癌細胞が生体試料中に存在するか測定する方法であって、
a)対象生体試料を、請求項12乃至19に記載のキメラペプチド分子と、本発明の前記キメラ分子と前記癌細胞の表面上に存在する前記抗原との結合が可能な条件下で接触させることと、
b)一般的な技術によって結合を検出することと、
c)工程b)で検出された結合を必要に応じて定量することと、
を備えた方法。
【請求項26】
表面に腫瘍関連抗原を有する生体試料中の腫瘍又はウイルス感染細胞にアポトーシスによる死を誘導する方法であって、対象生体試料を、請求項16又は17に記載のキメラペプチド分子に、本発明の前記キメラ分子と前記癌細胞の表面上に存在する前記抗原との結合が可能な条件下で且つ細胞内に侵入してアポトーシス又はウイルス感染細胞により細胞を死滅させるのに十分な時間にわたって、接触させることを備えた方法。
【請求項27】
ミトコンドリアのアポトーシスによる細胞死を抑制する方法であって、対象生体試料を、請求項17又は19に記載のキメラ分子に、本発明の前記キメラ分子と対象細胞との結合が可能な条件下で且つ対象細胞内に侵入してアポトーシスによる細胞死を抑制させるのに十分な時間にわたって、接触させることを備えた方法。
【請求項28】
請求項27に記載の細胞死を抑制する方法であって、前記対象細胞が、以下の細胞集団:神経細胞、心筋細胞、及び肝細胞から選択される方法。
【請求項29】
透過性遷移孔複合体(PTPC)の活性に影響を及ぼす興味の対象である活性物質を同定する方法であって、
a)透過性遷移孔複合体(PTPC)を有する細胞を含有する生体試料を、候補物質の存在下で、請求項12乃至19に記載のキメラペプチドに接触させることと、
b)前記物質の非存在下において、キメラペプチドの前記透過性遷移孔複合体(PTPC)との結合を比較することと、
c)透過性遷移孔複合体(PTPC)を有する細胞成分を含んだ細胞抽出物の調製物に対する、前記選択した物質の活性を必要に応じて調べることと、
を備えた方法。
【請求項30】
透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドと相互作用する興味の対象である活性物質を同定する方法であって、
d)透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドを有する細胞を含有する生体試料を、候補物質の存在下で、請求項12乃至19に記載のキメラペプチドと接触させることと、
e)前記物質の非存在下において、キメラペプチドの前記透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドとの結合を比較することと、
c)透過性遷移孔複合体(PTPC)のANTペプチドを有する細胞成分を含んだ細胞抽出物の調製物に対する、前記選択した物質の活性を必要に応じて調べることと、
を備えた方法。
【請求項31】
ミトコンドリア抗原を同定する方法であって、前記抗原が請求項13又は16に記載のToxの特質を有する高分子又は分子又はペプチドと相互作用する能力を有する方法。
【請求項32】
ミトコンドリア抗原を同定する方法であって、前記抗原が請求項14又は17に記載のsaveの特質を有する高分子又は分子又はペプチドと相互作用する能力を有する方法。
【請求項33】
病的な感染症又は疾病を治療又は予防する方法であって、請求項12乃至19の何れか1項に記載のキメラ分子を少なくとも含有する薬学的組成物を患者に投与することを備えた方法。
【請求項34】
請求項12乃至19の何れかに記載のキメラ分子を少なくとも含有する薬学的組成物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2N】
【図2O】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−60891(P2009−60891A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−195199(P2008−195199)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【分割の表示】特願2002−561659(P2002−561659)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(596009674)アンスティテュ・パストゥール (23)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195199(P2008−195199)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【分割の表示】特願2002−561659(P2002−561659)の分割
【原出願日】平成14年2月1日(2002.2.1)
【出願人】(596009674)アンスティテュ・パストゥール (23)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】
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