説明

犯罪リスク評価装置、犯罪リスク評価方法及び犯罪リスク評価プログラム

【課題】実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる犯罪リスク評価装置、犯罪リスク評価方法及び犯罪リスク評価プログラムを得る。
【解決手段】CPU22は、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、前記建物の内部に侵入した不審者が各種センサ等により検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報をディスプレイ18により表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犯罪リスク評価装置、犯罪リスク評価方法及び犯罪リスク評価プログラムに係り、より詳しくは、建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを評価する犯罪リスク評価装置、犯罪リスク評価方法及び犯罪リスク評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物におけるリスクの高さを簡易に評価するための技術として、特許文献1には、対象となる施設(建物)に関する情報及び当該施設の周辺地域に関する情報を取得し、これらの情報に基づいて、当該施設で発生し得るリスクについて、発生した場合の実質的な損害額を算出する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、評価対象とする建物の建設位置を示す位置情報を入力し、入力した前記位置情報によって示される前記建設位置における犯罪発生確率を所定領域内における過去の犯罪発生状況を示す犯罪状況情報に基づいて導出すると共に、前記建物に関する予め定められた条件に基づいて前記建物の犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を導出し、前記犯罪発生確率及び前記脆弱レベル値に基づいて前記建物の犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を導出し、前記犯罪リスク評価値に関する情報を提示する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−99601号公報
【特許文献2】特開2006−92311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、不特定多数の人による犯罪については考慮されておらず、建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを評価することができない、という問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献2に開示されている技術では、建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを評価することはできるものの、建物の周辺の犯罪種類別の発生頻度を過去の犯罪データにより統計的に求めて適用しており、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合については想定されていないため、この場合における犯罪に対するリスクの高さを評価することができない、という問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる犯罪リスク評価装置、犯罪リスク評価方法及び犯罪リスク評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の犯罪リスク評価装置は、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得する取得手段と、前記建物の内部に侵入した不審者を検出する検出手段と、前記検出手段によって前記不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、前記取得手段によって取得された前記脆弱レベル値に基づいて導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示する表示手段と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の犯罪リスク評価装置によれば、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値が取得手段によって取得される。なお、上記資産には、犯罪の発生によって被害を被る、個人情報、顧客情報等の情報資産や、人、物、財物等の財産としての価値を有する全てのものが含まれる。また、上記取得手段による脆弱レベル値の取得は、キーボード、ポインティング・デバイス、タッチ・パネル、タブレット等の入力装置を介した取得の他、ローカル・エリア・ネットワーク、インターネット、イントラネット等の通信回線を介した外部装置からの取得が含まれる。
【0009】
ここで、本発明では、前記建物の内部に侵入した不審者を検出する検出手段によって前記不審者が検出された場合に、導出手段により、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値が、前記取得手段によって取得された前記脆弱レベル値に基づいて導出される。なお、上記犯罪リスク評価値には、前記資産に対する脆弱レベル値の最大値が含まれる。
【0010】
そして、本発明では、前記導出手段によって導出された前記犯罪リスク評価値に関する情報が表示手段によって表示される。なお、上記表示手段による表示には、ディスプレイ装置等による可視表示、画像形成装置等による永久可視表示、音声合成装置等による可聴表示が含まれる。
【0011】
このように、請求項1記載の犯罪リスク評価装置によれば、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示しているので、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる。
【0012】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記表示手段が、前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示するものとしてもよい。これにより、犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を容易に把握することができる。
【0013】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記導出手段が、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出するものとしてもよい。
【0014】
【数1】

これにより、犯罪リスク評価値を的確に導出することができる。
【0015】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記取得手段が、前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件に応じた値として前記脆弱レベル値を取得するものとしてもよい。これにより、簡易に脆弱レベル値を取得することができる。
【0016】
特に、請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記取得手段が、前記資産の保管位置を中心位置とした複数段階の警戒線を想定し、各警戒線毎に前記脆弱レベル値を取得するものとしてもよい。これにより、複数段階の警戒線毎に犯罪リスク評価値に関する情報を簡易に表示することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記警戒線が、前記建物の敷地内に至る境界線である第1警戒線と、前記建物の内部に至る境界線である第2警戒線と、前記資産が存在する部屋の室内に至る境界線である第3警戒線と、前記資産自身に至る境界線である第4警戒線と、の4つの警戒線の少なくとも1つを含むものとしてもよい。これにより、含めた警戒線毎に犯罪リスク評価値に関する情報を簡易に表示することができる。
【0018】
更に、請求項5又は請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件が、各警戒線毎に構成されるものであり、前記取得手段が、各警戒線毎の前記脆弱レベル値を、対応する警戒線に対応して構成される条件において、何れか1つが成立するのみで犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルのうちの最高値を適用し、全てが成立した場合のみ犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルを乗算して得られた値を適用したものとして取得するものであるものとしてもよい。これにより、各警戒線毎の脆弱レベル値を、より的確に導出することができる。
【0019】
一方、上記目的を達成するために、請求項8記載の犯罪リスク評価方法は、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示するものである。
【0020】
従って、請求項8記載の犯罪リスク評価方法によれば、請求項1記載の発明と同様に作用するので、請求項1記載の発明と同様に、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる。
【0021】
なお、請求項8記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示するものとしてもよい。これにより、犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を容易に把握することができる。
【0022】
更に、請求項8又は請求項9に記載の発明は、請求項10に記載の発明のように、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出するものとしてもよい。
【0023】
【数2】

これにより、犯罪リスク評価値を的確に導出することができる。
【0024】
一方、上記目的を達成するために、請求項11記載の犯罪リスク評価プログラムは、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得する取得ステップと、前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、前記取得ステップによって取得された前記脆弱レベル値に基づいて導出する導出ステップと、前記導出ステップによって導出された前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示する表示ステップと、をコンピュータに実行させるものである。
【0025】
従って、請求項11記載の犯罪リスク評価プログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる。
【0026】
なお、請求項11記載の発明は、請求項12に記載の発明のように、前記表示ステップが、前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示するものとしてもよい。これにより、犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を容易に把握することができる。
【0027】
更に、請求項11又は請求項12に記載の発明は、請求項13に記載の発明のように、前記導出ステップが、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出するものとしてもよい。
【0028】
【数3】

これにより、犯罪リスク評価値を的確に導出することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示しているので、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0031】
まず、図1及び図2を参照して、本発明が適用された犯罪リスク評価装置10の構成を説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10は、本装置の全体的な動作を制御する制御部12と、ユーザからの各種情報等の入力に使用するキーボード14及びマウス16と、本装置による処理結果や各種メニュー画面、メッセージ等を表示するディスプレイ18と、を含んで構成されている。すなわち、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10は、汎用のパーソナル・コンピュータにより構成されている。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10の電気系の要部構成を説明する。
【0034】
同図に示すように、犯罪リスク評価装置10は、犯罪リスク評価装置10全体の動作を司るCPU(中央処理装置)22と、CPU22による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM24と、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM26と、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段として機能するハードディスク28と、前述のキーボード14、マウス16、及びディスプレイ18と、外部に接続された装置等との間の各種情報の授受を司る外部インタフェース(I/F)30と、を備えており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。なお、外部インタフェース30には後述する各種センサ等が接続されている。
【0035】
従って、CPU22は、RAM24、ROM26、及びハードディスク28に対するアクセス、キーボード14及びマウス16を介した各種情報の取得、ディスプレイ18に対する各種情報の表示、及び外部インタフェース30を介した各種センサによるセンシング状態の把握等を各々行うことができる。
【0036】
図3には、犯罪リスク評価装置10に備えられたハードディスク28の主な記憶内容が模式的に示されている。同図に示すように、ハードディスク28には、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DTと、各種処理を行うためのプログラムを記憶するためのプログラム領域PGとが設けられている。
【0037】
また、データベース領域DTには、後述する侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムや犯罪リスク評価処理プログラムの実行時に用いられる不審者レベル値データベースDT1、フォールトツリーデータベースDT2、及び脆弱レベル値データベースDT3が予め記憶されている。
【0038】
本実施の形態に係る不審者レベル値データベースDT1は、図4に示すように、評価対象とする建物に侵入する不審者に関して想定される予め定められた複数種類の侵入状況が記憶されると共に、対応する侵入状況にて侵入した不審者を評価対象とする資産に対する犯罪者として特定する確率を示す不審者レベル値が侵入状況毎に記憶されたものとして構成されている。なお、本実施の形態に係る不審者レベル値データベースDT1では、不審者レベル値として、0以上1以下の範囲内の値で、かつ上記確率が高くなるほど大きくなる値を適用している。同図に示す例では、例えば、フェンスを強制的に通過して侵入した不審者の不審者レベル値として比較的小さな値である‘0.2’が適用され、ガラス窓を破壊して侵入した不審者の不審者レベル値として最大値である‘1.0’が適用されている。
【0039】
ところで、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10では、フォールトツリー分析(Fault Tree Analysis)の手法を利用して評価対象とする建物の評価対象とする資産が保管された位置における脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を導出し、これを適用して当該資産に対する犯罪リスクの評価を行っている。
【0040】
フォールトツリーデータベースDT2は、この際の脆弱レベル値を導出する際に用いるものであり、一例として図5に模式的に示すように、建築物に対する犯罪に関係する予め定められた条件が、全てが成立した場合のみ犯罪が成立する複数の条件についてはAND結合子で結合し、何れか1つが成立するのみで犯罪が成立する複数の条件についてはOR結合子で結合した状態で、ツリー状の構造となるものとして構成されている。
【0041】
なお、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10では、評価対象とする資産の保管位置を中心位置とした複数段階の警戒線を想定し、各警戒線毎に前記脆弱レベル値を導出することができるものとされている。ここで、犯罪リスク評価装置10では、一例として図6に示すように、当該警戒線として、評価対象とする建物の敷地内に至る境界線である第1警戒線と、評価対象とする建物の建物内に至る境界線である第2警戒線と、犯罪の対象物(資産)が存在する部屋の室内に至る境界線である第3警戒線と、当該対象物自身に至る境界線である第4警戒線と、の4種類の警戒線を適用している。従って、本実施の形態に係るフォールトツリーデータベースDT2は、上記建築物に対する犯罪に関係する予め定められた条件が上記4種類の警戒線の各段階別にツリー状となるものとして構成されている。
【0042】
図5に示したフォールトツリーデータベースDT2は、評価対象とする建物が図6に示したものである場合に対応するものであるが、このデータベースでは、例えば、第1警戒線内に不審者が侵入することのできる侵入可能部位として門M01、扉T01、及び柵S01の3箇所があり、これら3箇所に対応する犯罪に関する条件として、「門M01を通過」、「扉T01を通過」、及び「柵S01を通過」の3つの条件が存在し、これらの条件のうちの何れか1つの条件でも成立すれば不審者が第1警戒線内に侵入することができるので、これら3つの条件はOR結合子で結合されている。また、図6に示す建物の場合、第1警戒線内に不審者が侵入する、という条件と、扉T02を通過する、という条件の全てが成立した場合に第2警戒線内に不審者が侵入できるので、これら2つの条件はAND結合子で結合されている。更に、図6に示す建物の場合、第2警戒線内に不審者が侵入する、という条件と、扉T03を通過する、という条件(以下、「第1条件群」という。)の全てが成立した場合に第3警戒線内に不審者が侵入できるので、これら2つの条件もまたAND結合子で結合されている。
【0043】
一方、図6に示す建物の場合、第1警戒線内に存在する不審者が第3警戒線内に侵入するためには、第1警戒線内に不審者が侵入する、という条件と、扉T04を通過する、という条件(以下、「第2条件群」という。)の全てが成立した場合や、第1警戒線内に不審者が侵入する、という条件と、窓W01を通過する、という条件(以下、「第3条件群」という。)の全てが成立した場合にも、第2警戒線内を通過することなく第3警戒線内に不審者が侵入できるので、これらの各々2つずつの条件もまた各々AND結合子で結合されている。
【0044】
ここで、以上の第1条件群、第2条件群、及び第3条件群の何れかの条件群が1つでも成立した場合には不審者が第3警戒線内に侵入することができるため、これらの3つの条件群はOR結合子で結合されている。
【0045】
一方、第3警戒線に侵入した不審者は、扉T05を通過することにより第4警戒線内に侵入することができるため、第3警戒線内に侵入する、という条件と、扉T05を通過する、という条件は、AND結合子で結合されている。
【0046】
一方、本実施の形態に係る脆弱レベル値データベースDT3は、図7に示すように、上記4種類の警戒線の各々毎で、かつ対応する警戒線上に設けられている扉、門、柵等といった侵入可能部位毎に、対応する部位の脆弱性の高さ(通過しやすさ)を特定することのできる項目と、当該項目が成立した場合の当該部位の脆弱性の高さを示す脆弱レベル値とが記憶されたものとして構成されている。例えば、第3警戒線上に設けられた扉に関して、「常駐の警備員がいない」という項目が成立する場合には当該項目に関する脆弱レベル値として‘1.0’が適用されることになる。なお、本実施の形態に係る脆弱レベル値データベースDT3では、各項目の脆弱レベル値として、0以上1以下の範囲内の値で、かつ上記脆弱性の高さが高くなるほど大きくなる値を適用している。
【0047】
ところで、本実施の形態に係る評価対象とする建物には、評価対象とする資産に至る経路上に存在する所定の侵入可能部位に対して各種センサが設けられている。また、本実施の形態では、当該建物に対する予め定められた正規の入場者に対して所定のID(Identification)情報が記憶されたICタグが発行されると共に、所定の侵入可能部位の近傍に対して当該ICタグの記憶情報を読み取るためのタグリーダ及び人の存在を検出する人感センサを有する入場検出装置が設けられる。
【0048】
図6には、以上の各種センサ、入場検出装置の評価対象とする建物への設置状態の一例が示されている。同図に示す例では、正規の入場者に対してICタグ60が発行され、門M01の近傍に入場検出装置62が設置されている。また、各扉に対して当該扉をこじ開けたことを検出する扉用こじ開けセンサ64が設けられ、窓W01に対して当該窓を破壊したことを検出する窓破壊センサ68が設けられ、更に、柵S01に対して当該柵を強制的に通過したことを検出する振動センサ80が設けられている。
【0049】
そして、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10には、これらのセンサ及び入場検出装置が外部インタフェース30を介して電気的に接続されており、犯罪リスク評価装置10は、各センサ及び入場検出装置による検出結果を示す情報を取得することができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10は、接続されている各センサ及び入場検出装置の設置位置を認識することができるものとされており、各センサ及び入場検出装置の位置から不審者の位置を特定することができる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る犯罪リスク評価装置10の作用を説明する。
【0052】
まず、図8を参照して、評価対象とする建物の評価対象とする資産に至る通過可能部位毎の脆弱レベル値を導出する侵入位置脆弱レベル導出処理を実行する際の犯罪リスク評価装置10の作用を説明する。なお、図8は、ユーザによりキーボード14、マウス16の操作によって当該侵入位置脆弱レベル導出処理の実行指示が入力された際にCPU22により実行される侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはハードディスク28のプログラム領域PGに予め記憶されている。
【0053】
まず、同図のステップ100では、ハードディスク28から脆弱レベル値データベースDT3を読み出し、当該データベースの記憶内容に基づいて、予め定められたフォーマットとされた対応項目入力画面を構成してディスプレイ18により表示し、次のステップ102にて所定情報の入力待ちを行う。
【0054】
図9には、本実施の形態に係る対応項目入力画面の表示状態が示されている。同図に示すように、当該画面では、警戒線の種類毎で、かつ対応する警戒線上に設けられている扉、門、柵等といった侵入可能部位毎に、対応する部位の脆弱性の高さ(通過しやすさ)を特定することのできる項目が、ユーザによって指定された際にチェック・マークが付される矩形枠と共に表示される。同図に示すような対応項目入力画面がディスプレイ18に表示されると、ユーザは、評価対象とする建物に該当する項目の表示領域か、又は当該項目に対応する矩形枠をマウス16にてポインティング指定した後、当該画面の最下部に表示されている「終了」ボタンをマウス16にてポインティング指定する。これに応じて、上記ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。
【0055】
ステップ104では、対応項目入力画面上でユーザによって指定された項目に基づいて、評価対象とする建物の脆弱レベル値を演算する。なお、ここでは、当該演算を次のように行う。
【0056】
まず、ユーザによって指定された全ての項目に対応する脆弱レベル値を、読み出した脆弱レベル値データベースDT3から特定する。
【0057】
次に、ハードディスク28からフォールトツリーデータベースDT2を読み出し、特定した各項目に対応する脆弱レベル値を、対応する門、扉等の通過可能部位に割り当て、割り当てた脆弱レベル値の合計値を通過可能部位毎に演算する。
【0058】
この演算により、評価対象とする建物が図6に示されるものであり、フォールトツリーデータベースDT2が図5に示されるものである場合には、一例として図10に模式的に示すように通過可能部位毎の脆弱レベル値が導出される。図10に示す例では、例えば、第1警戒線上に存在する扉T01の脆弱レベル値として‘0.5’が、第2警戒線上に存在する扉T02の脆弱レベル値として‘1.0’が、各々導出されたことが示されている。
【0059】
次のステップ106では、上記ステップ104の処理によって導出された通過可能部位毎の脆弱レベル値をハードディスク28の所定領域に記憶し、その後に本侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムを終了する。
【0060】
次に、図11を参照して、犯罪リスクの評価を行う犯罪リスク評価処理を実行する際の犯罪リスク評価装置10の作用を説明する。なお、図11は、ユーザによりキーボード14、マウス16の操作によって犯罪リスク評価処理の実行指示が入力された際にCPU22により実行される犯罪リスク評価処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムもハードディスク28のプログラム領域PGに予め記憶されている。
【0061】
まず、同図のステップ200では、不審者の侵入を検出するために評価対象とする建物に設けられた何れかのセンサ及び入場検出装置による不審者の侵入の検出待ちを行い、次のステップ202では、不審者を検出したセンサ又は入場検出装置の位置に応じて特定される不審者の位置から、評価対象とする資産の保管位置に至る全ての警戒線内の脆弱レベル値の最大値を次に示すように導出する。
【0062】
まず、ハードディスク28からフォールトツリーデータベースDT2と、上記侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムによって記憶された通過可能部位毎の脆弱レベル値を読み出す。
【0063】
次に、読み出した通過可能部位毎の脆弱レベル値を用いて、不審者の位置から評価対象とする資産の保管位置に至る全ての警戒線における脆弱レベル値を、OR結合子で結合された複数の条件については、各条件に対応する脆弱レベル値の最大値を適用すると共に、AND結合子で結合された複数の条件については、各条件に対応する脆弱レベル値を乗算して適用することにより導出する。すなわち、何れか1つが成立するのみで犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルのうちの最高値を適用し、全てが成立した場合のみ犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルを乗算して得られた値を適用している。
【0064】
この処理では、一例として図12に示されるように、検出された不審者の位置に対応する警戒線(同図に示す例では、第2警戒線)と、評価対象とする資産の保管位置を基準として当該警戒線より外側に位置する警戒線(同図に示す例では、第1警戒線)を基準位置(同図に示す例では、‘★’が付された位置)として、当該基準位置における脆弱レベル値として最大値である‘1.0’を適用し、当該基準位置から評価対象とする資産の保管位置に至る全ての警戒線における脆弱レベル値を導出する。このため、一例として図12に示される‘×’が付された部分の脆弱レベル値や結合子は、この処理において用いられることはない。
【0065】
なお、図12に示されるフォールトツリーにおいて、第2警戒線の下流側(外側)に接続された第1警戒線が処理の対象外とされているのは、当該第2警戒線の脆弱レベル値を最大値である‘1.0’とするために、それより下流側に接続された警戒線については、脆弱レベル値を導出する上で意味を持たないためである。
【0066】
この処理により、一例として図13に示されるように、各警戒線内の脆弱レベル値の最大値が導出される。同図に示す例では、第3警戒線内における脆弱レベル値として‘0.5’が、第4警戒線内における脆弱レベル値として‘0.25’が各々導出されたことが示されている。
【0067】
そして、以上の各通過可能部位と各警戒線内の脆弱レベル値の最大値の導出により、一例として図13に示されるように、第4警戒線内に至る最も弱い侵入経路(最も脆弱レベル値が高い経路であり、以下、「最弱経路」という。)を特定することができる。
【0068】
次のステップ204では、以上の処理によって得られた脆弱レベル値に基づいて、次の(1)式により犯罪リスク評価値Lmaxを演算する。
【0069】
【数4】

ここで、iは不審者毎に付与された番号を、jは資産の保管位置毎に付与された番号を、Uijは不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す不審者レベル値を、Fijは不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値を、Ajは保管位置jに位置された資産の価値を、各々表す。ここで、不審者レベル値Uijは、不審者iを検出したセンサや入場検出装置による不審者の侵入状況に対応する不審者レベル値を不審者レベル値データベースDT1から読み出すことにより得ることができる。例えば、振動センサ80により不審者が検出された場合は「フェンス強制通過」に対応する「0.2」が読み出され、入場検出装置62により不審者が検出された場合は「入退システムの無許可通過」に対応する「0.5」が読み出され、扉用こじ開けセンサ64により不審者が検出された場合は「門・扉・窓こじ開け」に対応する「1.0」が読み出される。なお、(1)式により算出される犯罪リスク評価値Lmaxは、評価対象とする資産に対する損害期待値の最大値を示すものである。
【0070】
なお、(1)式は、複数の不審者が同時に建物内に存在し、かつ各々異なる保管位置に保管された複数の資産を評価する場合にも対応するものであり、複数の不審者が同時に存在し、かつ各々異なる保管位置に保管された複数の資産を評価する場合には、上記ステップ202による脆弱レベル値の導出を、不審者の存在位置毎で、かつ資産毎に実行し、これによって得られた値を適用する。
【0071】
次のステップ206では、以上の処理によって得られた最弱経路及び犯罪リスク評価値Lmaxに基づいて、予め定められたフォーマットとされた評価結果画面を構成してディスプレイ18により表示する。
【0072】
図14には、上記ステップ206の処理によりディスプレイ18に表示される評価結果画面の表示状態が示されている。同図に示すように、当該画面では、評価対象とする建物の平面図に対し、不審者の位置と、当該不審者による評価対象とする資産の保管位置に至る最弱経路が表示されると共に、評価対象とする資産に対する損害期待値の最大値を示す犯罪リスク評価値Lmaxが表示される。
【0073】
従って、当該画面を参照することにより、ユーザは、不審者の位置及び当該不審者による評価対象とする資産に対する最弱経路を容易に把握することができると共に、評価対象とする資産に対する損害期待値の最大値を把握することができる。
【0074】
次のステップ208では、本犯罪リスク評価処理プログラムを終了するタイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合は上記ステップ200に戻る一方、肯定判定となった時点で本犯罪リスク評価処理プログラムを終了する。なお、本実施の形態に係る犯罪リスク評価処理プログラムでは、上記犯罪リスク評価処理プログラムを終了するタイミングとして、ユーザにより当該終了を指示する指示入力が行われたタイミングを適用しているが、これに限らず、例えば、予め定められた時刻となったタイミング等、他のタイミングを適用することができることは言うまでもない。
【0075】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示しているので、実際に建物の内部に不審者が侵入した場合の当該建物の内部に保管された資産における犯罪に対するリスクの高さを簡易に評価することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示しているので、犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を容易に把握することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、(1)式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出しているので、犯罪リスク評価値を的確に導出することができる。
【0078】
また、本実施の形態では、前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件(ここでは、フォールトツリーデータベースDT2及び脆弱レベル値データベースDT3に登録されている条件)に対する充足レベルに応じた値として前記脆弱レベル値を取得しているので、簡易に脆弱レベル値を取得することができる。
【0079】
特に、本実施の形態では、前記資産の保管位置を中心位置とした複数段階の警戒線を想定し、各警戒線毎に前記脆弱レベル値を取得しているので、複数段階の警戒線毎に犯罪リスク評価値に関する情報を簡易に表示することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、前記警戒線に、前記建物の敷地内に至る境界線である第1警戒線と、前記建物の内部に至る境界線である第2警戒線と、前記資産が存在する部屋の室内に至る境界線である第3警戒線と、前記資産自身に至る境界線である第4警戒線と、の4つの警戒線を含めているので、これらの各警戒線毎に犯罪リスク評価値に関する情報を簡易に表示することができる。
【0081】
更に、本実施の形態では、前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件を、各警戒線毎に構成されるものとし、各警戒線毎の前記脆弱レベル値を、対応する警戒線に対応して構成される条件において、何れか1つが成立するのみで犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルのうちの最高値を適用し、全てが成立した場合のみ犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルを乗算して得られた値を適用したものとして取得するものとしているので、各警戒線毎の脆弱レベル値を、より的確に導出することができる。
【0082】
なお、上記実施の形態では、各種データベースDT1〜DT3が予め記憶されたハードディスク28を内蔵した単体のパーソナル・コンピュータによって本発明を実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該ハードディスク28を内蔵しないパーソナル・コンピュータに、各データベースDT1〜DT3が予め記憶された記憶媒体又は記憶装置が設けられた外部装置を、通信回線を介してネットワーク接続することにより、パーソナル・コンピュータと外部装置とによって本発明を実現する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0083】
また、上記実施の形態では、不審者レベル値データベースDT1として図4に示されるものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として図15に示される不審者レベル値データベースDT1’を適用する形態とすることもできる。
【0084】
なお、この場合、予め正規の入場者を複数段階のレベル(図15に示す例では、派遣社員、一般社員、管理社員の3段階のレベル)に区分し、各正規入場者が所持するICタグに対して当該正規入場者が属するレベルを特定することのできるID情報を記憶させておく一方、当該複数段階のレベル毎に入場可能なエリアを予め定めておくと共に、各エリアにおける入場者を検出可能な位置に上記入場検出装置を設けておく。そして、何れかの入場検出装置によって人の入場が検出された場合に、当該入場者が正規のID情報(図15に示す例では、派遣社員、一般社員、管理社員の何れかに対応するID情報)が記憶されたICタグを所持しているか否か、及び所持している場合の当該ICタグに記憶されているID情報に応じて、不審者レベル値データベースDT1’から不審者レベル値を得るようにする。
【0085】
例えば、入場検出装置によって検出された入場者が正規のID情報が記憶されたICタグを所持していない場合は、当該入場検出装置により特定される入場者の位置がID情報のチェックを行わなくても入場できるエリアに位置する場合に限り不審者レベル値が‘0’となり、他のエリアに位置する場合には不審者レベル値が‘1.0’となる。また、入場検出装置によって検出された入場者が正規のID情報が記憶されたICタグを所持しており、かつ当該ID情報が派遣社員の属するレベルを示すものである場合、当該入場検出装置により特定される入場者の位置がID情報のチェックを行わなくても入場できるエリア、又は派遣社員が入場することのできるエリアに位置する場合に限り不審者レベル値が‘0’となり、一般社員及び管理社員のみが入場することのできるエリアに位置する場合には不審者レベル値が‘0.5’となり、管理社員のみが入場することのできるエリアに位置する場合には不審者レベル値が‘1.0’となる。
【0086】
この場合、不審者レベル値データベースDT1及び不審者レベル値データベースDT1’を双方とも適用して、各々のデータベースにより得られる不審者レベル値の大きい方の値を適用するようにしてもよい。
【0087】
また、不審者レベル値として資産の保管位置jに応じた値を適用してもよいし、不審者i及び保管位置jの双方に応じた値を適用してもよい。
【0088】
これらの場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0089】
また、上記実施の形態では、不審者の建物への侵入が検出された場合のみに特化して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として本発明の発明者らによる特願2006−286878において記載されているような、建物に不審者が侵入していない場合に適用される犯罪リスク評価装置を併用して、平常時には当該犯罪リスク評価装置を適用し、不審者が検出された場合に限り、上記実施の形態に係る犯罪リスク評価装置を選択的に切り替えて適用する形態とすることもできる。
【0090】
また、上記実施の形態では、犯罪リスク評価処理プログラムによる導出結果等を、ディスプレイ18を用いた表示によって提示する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図示しないプリンタを用いた印刷等によって提示する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0091】
また、上記実施の形態では、扉、窓等の各侵入可能部位における脆弱レベル値の導出を脆弱レベル値データベースDT3の登録情報に基づいて行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として、本出願人による特開2006−92311号公報に記載の技術と同様に、これらの脆弱レベル値についても各警戒線内の脆弱レベル値の最大値と同様にフォールトツリー分析を利用して導出する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
また、上記実施の形態では、(1)式により犯罪リスク評価値を算出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該(1)式を変形したもの等、他の演算式を適用して犯罪リスク評価値を算出する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
また、上記実施の形態では、評価対象とする資産の保管位置が固定されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該資産に対して、当該資産の位置を検知することのできる位置検知手段(一例として、GPS(Global Positioning System)信号を受信して解析することにより現在位置を検出するGPS受信機等)を設けておき、当該位置検知手段によって検知された位置が評価対象とする資産が保管されている位置であるものとすることにより、評価対象とする資産の位置を動的に適用する形態とすることもできる。この場合、当該資産の位置を自動的に設定することができるので、利便性を向上させることができる。
【0094】
その他、上記実施の形態で説明した犯罪リスク評価装置10の構成(図1〜図3参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0095】
また、上記実施の形態で示した侵入位置脆弱レベル導出処理プログラム及び犯罪リスク評価処理プログラムの処理の流れ(図8,図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0096】
また、上記実施の形態で示した対応項目入力画面及び評価結果画面の構成(図9、図14参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。例えば、図14に示される評価結果画面に代えて、図13に示される画像そのものを表示する形態とすることもできる。
【0097】
更に、上記実施の形態で示した各種データベースの構成(図4、図5、図7参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施の形態に係る犯罪リスク評価装置の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態に係る犯罪リスク評価装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る犯罪リスク評価装置に備えられたハードディスクの主な記憶内容を示す模式図である。
【図4】実施の形態に係る不審者レベル値データベースの構成を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係るフォールトツリーデータベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る警戒線及び建物の説明に供する平面図である。
【図7】実施の形態に係る脆弱レベル値データベースの構成を示す模式図である。
【図8】実施の形態に係る侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る対応項目入力画面の表示状態例を示す概略図である。
【図10】実施の形態に係る侵入位置脆弱レベル導出処理プログラムによる処理の説明に供する模式図である。
【図11】実施の形態に係る犯罪リスク評価処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】実施の形態に係る犯罪リスク評価処理プログラムによる処理の説明に供する模式図である。
【図13】実施の形態に係る犯罪リスク評価処理プログラムによる処理の説明に供する他の模式図である。
【図14】実施の形態に係る評価結果画面の表示状態例を示す概略図である。
【図15】実施の形態に係る不審者レベル値データベースの変形例の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
10 犯罪リスク評価装置
14 キーボード
16 マウス
18 ディスプレイ(表示手段)
22 CPU(導出手段)
28 ハードディスク
60 ICタグ
62 入場検出装置(検出手段)
64 扉用こじ開けセンサ(検出手段)
68 窓破壊センサ(検出手段)
80 振動センサ(検出手段)
DT1,DT1’ 不審者レベル値データベース
DT2 フォールトツリーデータベース
DT3 脆弱レベル値データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得する取得手段と、
前記建物の内部に侵入した不審者を検出する検出手段と、
前記検出手段によって前記不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、前記取得手段によって取得された前記脆弱レベル値に基づいて導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示する表示手段と、
を備えた犯罪リスク評価装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示する
請求項1記載の犯罪リスク評価装置。
【請求項3】
前記導出手段は、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出する
請求項1又は請求項2記載の犯罪リスク評価装置。
【数1】

【請求項4】
前記取得手段は、前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件に応じた値として前記脆弱レベル値を取得する
請求項1〜請求項3の何れか1項記載の犯罪リスク評価装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記資産の保管位置を中心位置とした複数段階の警戒線を想定し、各警戒線毎に前記脆弱レベル値を取得する
請求項4記載の犯罪リスク評価装置。
【請求項6】
前記警戒線は、前記建物の敷地内に至る境界線である第1警戒線と、前記建物の内部に至る境界線である第2警戒線と、前記資産が存在する部屋の室内に至る境界線である第3警戒線と、前記資産自身に至る境界線である第4警戒線と、の4つの警戒線の少なくとも1つを含む
請求項5記載の犯罪リスク評価装置。
【請求項7】
前記侵入位置の犯罪に関する予め定められた条件は、各警戒線毎に構成されるものであり、
前記取得手段は、各警戒線毎の前記脆弱レベル値を、対応する警戒線に対応して構成される条件において、何れか1つが成立するのみで犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルのうちの最高値を適用し、全てが成立した場合のみ犯罪が成立する複数の条件については当該複数の条件に対する各充足レベルを乗算して得られた値を適用したものとして取得する
請求項5又は請求項6記載の犯罪リスク評価装置。
【請求項8】
建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得し、
前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、取得した前記脆弱レベル値に基づいて導出し、
導出した前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示する
犯罪リスク評価方法。
【請求項9】
前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示する
請求項8記載の犯罪リスク評価方法。
【請求項10】
iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出する
請求項8又は請求項9記載の犯罪リスク評価方法。
【数2】

【請求項11】
建物の内部に保管された資産に至る予め定められた複数の侵入位置における犯罪に対する脆弱性の高さを示す脆弱レベル値を取得する取得ステップと、
前記建物の内部に侵入した不審者が検出された場合に、当該不審者の位置から前記資産の保管位置に至る全ての侵入経路についての前記資産における前記不審者による犯罪に対するリスクの高さを示す犯罪リスク評価値を、前記取得ステップによって取得された前記脆弱レベル値に基づいて導出する導出ステップと、
前記導出ステップによって導出された前記犯罪リスク評価値に関する情報を表示する表示ステップと、
をコンピュータに実行させる犯罪リスク評価プログラム。
【請求項12】
前記表示ステップは、前記侵入経路が複数存在する場合に、前記犯罪リスク評価値が最も高い侵入経路を示す情報を前記犯罪リスク評価値に関する情報として表示する
請求項11記載の犯罪リスク評価プログラム。
【請求項13】
前記導出ステップは、iを不審者毎に付与された番号とし、jを資産の保管位置毎に付与された番号とし、Uijを不審者iを保管位置jに位置された資産に対する犯罪者として特定する確率を示す値とし、Fijを不審者iの位置から保管位置jに位置された資産に至る脆弱レベル値の最大値とし、Ajを保管位置jに位置された資産の価値としたとき、次の演算式によって損害期待値の最大値Lmaxを前記犯罪リスク評価値として導出する
請求項11又は請求項12記載の犯罪リスク評価プログラム。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−282355(P2008−282355A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128430(P2007−128430)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)