説明

犯罪防止装置およびプログラム

【課題】より効果的に防犯することができる犯罪防止装置およびプログラムを得る。
【解決手段】監視対象領域60を撮影することにより当該領域60の画像情報をリアルタイムで取得するカメラ40によって取得された画像情報に基づいて、領域60に存在する人の位置を所定時間間隔で検出し、検出した人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かをICタグ90およびアンテナを利用して特定し、不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を上記画像情報に基づいて推定し、当該特性情報に基づいて、上記不定者が上記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出し、導出した犯罪実行率に基づいて、被守備者に対する不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算し、演算した犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犯罪防止装置およびプログラムに係り、より詳しくは、予め定められた領域内における不特定の人による犯罪を防止する犯罪防止装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
公開空地、公園等の不特定の人が出入りする領域において、所定の人に対する犯罪の発生を未然に防止するために適用できる技術として、特許文献1には、個人に適合化された危険警報システムを提供することを目的として、所定の個人別の危険エリアを記憶する記憶手段と、人の位置を検知する人位置検知手段と、前記所定の個人を識別する個人識別手段と、警報を発する発報手段と、前記個人識別手段で識別された所定の個人と前記人位置検知手段で位置を検知された人を同定し、該同定された所定の個人が前記記憶手段に記憶された該同定された所定の個人に対応する危険エリアに侵入したとき、前記発報手段によって警報を発する制御手段と、を有する技術が開示されている。
【0003】
この技術を、前記危険エリアを前述した不特定の人が出入りする領域内において犯罪が発生しやすい危険エリアとして適用することにより、所定の人に対する犯罪の発生を未然に防止することができる。
【0004】
また、特許文献2には、人が発報装置を携帯・操作することなく防犯サービスを享受でき、監視者が広い監視区域を少ない労力で監視でき、かつ警察の初動捜査にも貢献し得る装置を提供することを目的として、監視区域内から発せられた物理信号およびその発信位置を検知する検知部と、前記監視区域内の画像を時系列的に撮影する画像撮影部と、前記画像撮影部において撮影された画像情報を、その撮影時刻に対応付けて記憶する画像記憶部と、前記検知部が検知した前記物理信号が所定の設定条件を満たした場合に、その物理信号の発信位置(対象地点)および検知時刻を抽出する検知結果解析部と、抽出期間内に前記画像撮影部が撮影した画像情報を、前記画像記憶部から抽出する画像抽出手段と、前記画像抽出部が抽出した前記画像情報を解析し、前記対象地点に接近する物体の画像を抽出する被疑物体画像抽出部と、を有する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−234061号公報
【特許文献2】特開2005−346545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、公開空地、公園等の不特定の人が出入りする領域においては、犯罪から守りたい人(以下、「被守備者」という。)に対する犯罪の発生を防止するための人(以下、「守備者」という。)が、被守備者の周辺に存在する場合が多い。例えば、被守備者が子供である場合は、その保護者や学校の先生等であり、被守備者が大人であれば、警備員や上記領域の管理者等である。
【0007】
ここで、上記不特定の人が出入りする領域に存在する人のうち、上記守備者および被守備者を除く人(以下、「不定者」という。)が必ずしも被守備者に対して犯罪を行うわけではなく、むしろ犯罪を行う人は極めて稀である。
【0008】
従って、上記不定者が、どのくらいの確率で上記被守備者に対して犯罪を行うかを考慮することは、効果的な防犯体制を構築する上で極めて重要である。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に開示されている技術では、上記不定者が犯罪を行うか否かについては勿論のこと、不定者が存在するか否かについても何ら考慮されていないため、必ずしも効果的に防犯することができるとは限らない、という問題点があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、より効果的に防犯することができる犯罪防止装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
まず、本発明の原理について説明する。
【0012】
図16〜図20は、警察庁が公表している日本国内の平成12年から平成18年までにおける、人に対して行われる犯罪種別で、かつ犯人の年代、性別、一緒に行動している人数の各々別の年間の犯罪発生件数である。なお、図16は「暴行」に関し、図17は「傷害」に関し、図18は「強制わいせつ」に関し、図19は「公然わいせつ」に関し、図20は「略取誘拐」に関する。
【0013】
同図に示されるように、人に対して行われる犯罪は、年齢に大きく依存する。例えば、「強制わいせつ」、「公然わいせつ」、「略取誘拐」に関しては、20代、30代をピークとして年齢が上がるほど徐々に件数が減る傾向にあり、「傷害」に関しては、20歳未満が大きな割合を示している。
【0014】
このように、不定者が人に対する犯罪を実行する確率は、その年齢によって大きく左右されるが、当該犯罪が実行される可能性は、図16〜図20からも明らかなように、不定者が生存している期間にわたって存在し得るものであり、この期間内における確率を考慮する必要がある。
【0015】
以上の原理に基づき、上記目的を達成するために、請求項1記載の犯罪防止装置は、対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段と、前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定する特定手段と、前記特定手段によって不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定する推定手段と、前記推定手段により推定された特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行する処理実行手段と、を備えている。
【0016】
請求項1記載の犯罪防止装置によれば、撮影手段により、対象領域を撮影することによって当該対象領域の画像情報がリアルタイム(実時間)で取得され、検出手段により、前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置が所定時間間隔で検出される。このように、上記撮影手段は、画像情報をリアルタイムで取得するが、当該取得には、動画像の撮影による連続的な取得の他、上記検出手段により人の位置が検出される上記所定時間間隔に対応するタイミングでの間欠的な取得が含まれる。また、上記撮影手段には、動画像および静止画像の少なくとも一方の撮影を行うことのできるモノクロカメラ、カラーカメラ、赤外線カメラ等の各種カメラが含まれる。
【0017】
ここで、本発明では、特定手段により、前記検出手段によって検出された人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かが特定され、推定手段により、前記特定手段によって不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報が前記画像情報に基づいて推定され、導出手段により、前記推定手段により推定された特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率が導出され、さらに、演算手段により、前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値が演算される。
【0018】
そして、本発明では、処理実行手段により、前記演算手段によって演算された犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理が実行される。
【0019】
このように、請求項1記載の犯罪防止装置によれば、対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出し、検出した人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定し、不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定し、推定した特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出し、導出した犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算し、演算した犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、高精度に導出された不定者による犯罪実行率に基づいて犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より効果的に防犯することができる。
【0020】
ところで、図16〜図20に示されるように、人に対して行われる犯罪は性別に大きく依存する。例えば、各犯罪種とも、男性の方が女性より圧倒的に件数が多く、その割合は犯罪種毎に異なっている。
【0021】
従って、不定者が人に対する犯罪を実行する確率は、年齢に加えて、性別によっても大きく左右される。
【0022】
そこで、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記特性情報が、前記特定手段によって不定者と特定された人の性別を含んでもよい。これにより、より効果的に防犯することができる。
【0023】
ところで、守備者が被守備者の周辺に存在する場合、守備者を有効に利用して被守備者を守ることが、効率的な防犯体制を構築する上で非常に重要である。
【0024】
これに対し、上記特許文献1および特許文献2に開示されている技術では、上記守備者に関しては何ら考慮されておらず、必ずしも効率的に防犯することができるとは限らなかった。
【0025】
そこで、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記特定手段が、前記検出手段によって検出された人が前記守備者、前記被守備者、および前記不定者の何れであるかを特定し、前記検出手段によって検出された人の位置と前記特定手段による特定結果に基づいて、前記守備者と前記被守備者の距離である第1の距離、および前記不定者と前記被守備者の距離である第2の距離を導出する距離導出手段をさらに備え、前記演算手段が、前記距離導出手段によって導出された第1の距離と第2の距離の比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算してもよい。これにより、守備者を有効に活用することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より効率的に防犯することができる。
【0026】
なお、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、現時点で前記距離導出手段によって導出された第1の距離と前記所定時間前の時点で前記距離導出手段によって導出された第1の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者と前記被守備者の距離を予測すると共に、現時点で前記距離導出手段によって導出された第2の距離と前記所定時間前の時点で前記距離導出手段によって導出された第2の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者と前記被守備者の距離を予測する距離予測手段をさらに備え、前記演算手段が、前記距離予測手段によって予測された前記守備者と前記被守備者の距離と、前記不定者と前記被守備者の距離との比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算してもよい。これにより、上記所定時間後の犯罪リスク値を予測することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より即時的に防犯することができる。
【0027】
また、請求項3に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記第1の距離に基づいて前記守備者が前記被守備者に到達する時間である第1の到達時間を導出すると共に、前記第2の距離に基づいて前記不定者が前記被守備者に到達する時間である第2の到達時間を導出する到達時間導出手段をさらに備え、前記演算手段が、前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間と第2の到達時間の比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0028】
特に、請求項5に記載の発明は、前記検出手段によって検出された人の年齢、性別、および身長の少なくとも1つを前記画像情報に基づいて推定する第2推定手段をさらに備え、前記到達時間導出手段が、前記第2推定手段によって推定された年齢、性別、および身長の少なくとも1つに応じて前記第1の到達時間および前記第2の到達時間を調整してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、現時点で前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間と前記所定時間前の時点で前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者が前記被守備者に到達する時間を予測すると共に、現時点で前記到達時間導出手段によって導出された第2の到達時間と前記所定時間前の時点で前記到達時間導出手段によって導出された第2の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者が前記被守備者に到達する時間を予測する到達時間予測手段をさらに備え、前記演算手段が、前記到達時間予測手段によって予測された前記守備者が前記被守備者に到達する時間と、前記不定者が前記被守備者に到達する時間との比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算してもよい。これにより、上記所定時間後の犯罪リスク値を予測することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より即時的に防犯することができる。
【0030】
また、請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記被守備者の進行方向と前記不定者の進行方向を導出する進行方向導出手段をさらに備え、前記演算手段が、前記進行方向導出手段によって導出された前記被守備者の進行方向に前記不定者の進行方向が近いほど値が大きくなるように前記犯罪リスク値を演算してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0031】
また、請求項3〜請求項7の何れか1項に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記対象領域における人の歩行の妨げとなる障害物の領域を示す領域情報を予め記憶した領域情報記憶手段をさらに備え、前記距離導出手段が、前記守備者と前記被守備者の間に前記領域情報により示される障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして前記第1の距離を導出すると共に、前記不定者と前記被守備者との間に前記障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして前記第2の距離を導出してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より高精度に犯罪を防止することができる。なお、上記領域情報記憶手段には、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュEEPROM(Flash EEPROM)等の半導体記憶素子、フレキシブル・ディスク等の可搬記録媒体やハードディスク等の固定記録媒体、或いはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置が含まれる。
【0032】
ところで、図16〜図20に示されるように、人に対して行われる犯罪は、一緒に行動している人数にも大きく依存する。すなわち、各犯罪種とも、単独で行動している人の方が複数人で行動している人より圧倒的に件数が多く、その割合は犯罪種毎に異なっている。
【0033】
従って、不定者が人に対する犯罪を実行する確率は、年齢に加えて、一緒に行動している人数によっても大きく左右される。
【0034】
そこで、本発明は、請求項9に記載の発明のように、前記特定手段によって不定者と特定された人の一緒に行動している人数を前記画像情報に基づいて推定する人数推定手段と、前記人数推定手段によって推定された前記一緒に行動している人数に基づいて、前記犯罪リスク値を補正するための補正係数を導出する補正係数導出手段と、をさらに備え、前記演算手段が、前記犯罪リスク値を前記補正係数によって補正した値として演算してもよい。これにより、より効果的に防犯することができる。
【0035】
また、本発明は、請求項10に記載の発明のように、前記守備者に対して予め付与された当該守備者を識別するための情報である守備者識別情報、および前記被守備者に対して予め付与された当該被守備者を識別するための情報である被守備者識別情報を予め記憶した識別情報記憶手段と、前記検出手段によって検出された人から前記守備者識別情報および前記被守備者識別情報の何れかの識別情報を取得する取得手段と、をさらに備え、前記特定手段が、前記取得手段によって取得された識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が守備者であるものと特定し、前記取得手段によって取得された識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている被守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が被守備者であるものと特定し、他の人が不定者であるものと特定してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より確実に守備者、被守備者、および不定者を特定することができ、この結果として、より高精度に犯罪を防止することができる。なお、上記識別情報記憶手段には、上記半導体記憶素子、上記可搬記録媒体、上記固定記録媒体、上記外部記憶装置が含まれる。
【0036】
また、本発明は、請求項11に記載の発明のように、前記処理実行手段が、前記予め定められた処理として、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方を記憶する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方を表示する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方が所定閾値以上である場合に警告を発する処理、対象となる前記被守備者に最も近い前記守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する処理、前記犯罪実行率が前記所定閾値以上である不定者に最も近い前記守備者に対して当該犯罪実行率が高い不定者が近くに存在することを報知する処理の少なくとも1つの処理を実行してもよい。これにより、適用した処理に応じた効果を得ることができる。
【0037】
なお、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方の表示には、ディスプレイ装置等による可視表示の他、画像形成装置等による永久可視表示、音声生成装置等による可聴表示が含まれる。
【0038】
また、本発明は、前記検出手段が、ICタグ又はGPS(Global Positioning Systems)を利用して、前記対象領域に存在する前記守備者および前記被守備者の位置を前記所定時間間隔で検出するものとしてもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より容易に本発明を実現することができると共に、より高精度に犯罪を防止することができる。なお、上記ICタグは、RFIDタグ、無線タグ、IDタグ、電磁誘導タグ等と呼ばれることもあるが、本明細書では、これらを総称してICタグという。
【0039】
また、本発明は、請求項12に記載の発明のように、前記推定手段により推定される特性情報に対応する人により犯罪が実際に行われた割合に基づいて予め定められた年代別に導出された年代別犯罪実行率が、対応する前記特性情報に関連付けられて予め記憶された年代別犯罪実行率記憶手段をさらに備え、前記導出手段が、前記推定手段により推定された前記不定者の年齢以降に対応する年代別犯罪実行率を前記年代別犯罪実行率記憶手段から読み出し、読み出した年代別犯罪実行率に基づいて前記犯罪実行率を導出してもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易かつ短時間で犯罪実行率を導出することができる。なお、上記年代別犯罪実行率記憶手段には、上記半導体記憶素子、上記可搬記録媒体、上記固定記録媒体、上記外部記憶装置が含まれる。
【0040】
また、本発明は、前記年代別犯罪実行率が、過去の犯罪発生数の統計値からベイズ理論に基づいて予め導出されたものとしてもよい。これにより、本発明を適用しない場合に比較して、より簡易かつ高精度に犯罪実行率を導出することができる。なお、本発明の過去の犯罪発生数の統計値としては、図16〜図20に示される値を例示することができる。ここで、当該統計値として図16〜図20に示されるような複数年の値がある場合には、現時点に最も近い年の値を適用する形態、犯罪発生数が最も多い年の値を適用する形態、複数年の平均値を適用する形態等を適用することができる。
【0041】
なお、ベイズ理論は、1763年に発表された確率論の定理であり、P(B)を事象Bが発生する確率(事前確率、prior probability)とし、P(B|A)を事象Aが発生した後での事象Bが発生する確率(事後確率、posterior probability)としたとき、P(A)>0ならば、次の(1)式が成立する、というものである。
【0042】
【数1】

前記年代別犯罪実行率を(1)式を用いて導出する場合、P(A)を、本発明により推定対象とする特性情報の条件に当てはまる人の確率とし、P(B)を実際に犯罪が発生した確率とし、P(A|B)を本発明により推定対象とする特性情報の条件に当てはまる犯罪者の確率として、各々を(1)式に代入することにより算出する。
【0043】
なお、上記P(A)は、所定領域において所定期間内に存在した人の総数に対する上記条件に当てはまる人の数の割合を、観察や過去の統計値等によって導出すればよい。ここで、上記所定領域としては、何れの領域でも適用できるが、本発明の対象領域に環境が類似する領域を適用することが好ましく、さらに、本発明の対象領域を適用することが、より好ましい。また、上記所定期間としては、朝、昼、夕方、夜といった各時間帯や、1日を3時間、6時間等の予め定められた時間間隔で区分した各区分時間帯等の、本発明の演算手段によって犯罪リスク値を演算する時間帯と同一の時間帯を適用することが好ましい。
【0044】
また、上記P(B)は、上記統計値の対象とされている領域に存在する人の総数(図16〜図20に示した統計値を適用する場合は日本の人口)に対する、対象とする犯罪の発生件数の割合を当該統計値から導出すればよい。
【0045】
実務的には、地域別の統計値に基づいて導出するか、あるいは上記所定領域において人の数および犯罪の発生件数を曜日別や、上記時間帯別などで実測し、当該所定領域に存在する人の当該曜日別、時間帯別などの総数に対する、対象とする犯罪の発生件数の割合を導出するのが好ましい。
【0046】
さらに、上記P(A|B)は、対象とする犯罪を実行した人の総数に対する、上記条件に当てはまる人の数の割合を、上記統計値から導出すればよい。
【0047】
なお、ベイズ理論については従来既知であるので、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0048】
ところで、犯罪が発生する傾向は、犯罪種によって大きく異なる。例えば、「傷害」(図17参照。)は、20歳未満をピークとして年齢が上がるほど件数が低下する傾向にある一方、「公然わいせつ」(図19参照。)は20歳未満の件数が著しく低い。
【0049】
そこで、本発明は、前記導出手段が、前記犯罪実行率を犯罪種毎に導出してもよい。これにより、犯罪種毎に防犯することができる。
【0050】
一方、上記目的を達成するために、請求項13記載のプログラムは、コンピュータを、対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定する特定手段と、前記特定手段によって不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定する推定手段と、前記推定手段により推定された特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出する導出手段と、前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行する処理実行手段と、として機能させるためのものである。
【0051】
従って、請求項13に記載のプログラムによれば、コンピュータに対して請求項1記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1記載の発明と同様に、本発明を適用しない場合に比較して、より効果的に防犯することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出し、検出した人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定し、不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定し、推定した特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出し、導出した犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算し、演算した犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、高精度に導出された不定者による犯罪実行率に基づいて犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より効果的に防犯することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態に係る犯罪防止システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係る犯罪防止システムを構成する各部の配置関係等を示す模式図である。
【図3】実施の形態に係る犯罪防止装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態に係る犯罪防止装置に備えられた二次記憶部の主な記憶内容を示す模式図である。
【図5】実施の形態に係る識別情報データベースの構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態に係る属性情報データベースの構成を示す模式図である。
【図7】実施の形態に係る障害物情報データベースの構成を示す模式図である。
【図8】実施の形態に係る位置情報データベースの構成を示す模式図である。
【図9】実施の形態に係る年代別犯罪実行率データベースの構成を示す模式図である。
【図10】実施の形態に係る補正係数データベースの構成を示す模式図である。
【図11】実施の形態に係る犯罪リスク値データベースの構成を示す模式図である。
【図12】第1の実施の形態に係る犯罪防止プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】第1の実施の形態に係る犯罪防止プログラムによる処理の説明に供する模式図である。
【図14】第2の実施の形態に係る犯罪防止プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】第2の実施の形態に係る犯罪防止プログラムによる処理の説明に供する模式図である。
【図16】警察庁が公表している日本国内の暴行の犯罪発生件数を示すグラフである。
【図17】警察庁が公表している日本国内の傷害の犯罪発生件数を示すグラフである。
【図18】警察庁が公表している日本国内の強制わいせつの犯罪発生件数を示すグラフである。
【図19】警察庁が公表している日本国内の公然わいせつの犯罪発生件数を示すグラフである。
【図20】警察庁が公表している日本国内の略取誘拐の犯罪発生件数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、公園における犯罪の発生を防止するべく当該公園を監視する犯罪防止システムに適用した場合について説明する。
【0055】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明が適用された犯罪防止システム10の全体構成を説明する。
【0056】
同図に示すように、本形態に係る犯罪防止システム10は、当該システム10の中心的な役割を担う犯罪防止装置20と、予め定められた守備者および被守備者によって個別に所持される複数のICタグ90と、各ICタグ90から送信された情報を取得するための複数のアンテナ30と、当該システム10において監視対象としている領域(ここでは公園であり、以下、「監視対象領域」という。)内を撮影する複数のカメラ40と、を有しており、アンテナ30およびカメラ40は犯罪防止装置20に電気的に接続されている。
【0057】
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、ICタグ90として、アクティブ型のICタグを適用しており、アンテナ30によって比較的長距離(ここでは、20m)離れた位置に存在するICタグ90から送信されている情報を受信することができる。
【0058】
ここで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、図2に示されるように、監視対象領域60の全域が所定寸法(ここでは、平面視の縦、横ともに10m)の矩形領域で区分されており、各区分領域の境界線の交差している位置の各々にアンテナ30が設けられている。
【0059】
そして、犯罪防止装置20は、ICタグ90から同一の情報を受信している3つのアンテナ30を特定し、特定したアンテナ30により受信されている電波の受信強度に基づいて、三角測量の技術により発信元のICタグ90の位置、すなわち当該ICタグ90を所持している人の位置を特定することができる。
【0060】
一方、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、図2に示されるように、カメラ40が、監視対象領域60の周囲における複数の位置(本実施の形態では、4箇所)に、当該監視対象領域60を撮影可能な位置および状態で設けられている。なお、カメラ40は監視対象領域60を監視するためのものであるため、監視対象領域60の全域に対して死角を生じない状態で設けることが好ましく、監視対象領域の形状、監視対象領域内の障害物の配設状態、用途等に応じて設置数や設置位置を決定する。また、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、カメラ40として、カラーで動画像の撮影を行うことのできるデジタルカメラを適用しており、当該カメラ40にて、監視対象領域60の画像を示す画像情報を取得することができる。
【0061】
次に、図3を参照して、犯罪防止システム10において特に重要な役割を有する犯罪防止装置20の電気系の要部構成を説明する。
【0062】
同図に示すように、本実施の形態に係る犯罪防止装置20は、犯罪防止装置20全体の動作を司るCPU(中央処理装置)20Aと、CPU20Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM20Bと、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM20Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段としての二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)20Dと、各種情報を入力するために用いられるキーボード20Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ20Fと、外部装置等との間の各種信号の授受を司る外部I/F(インタフェース)20Gと、が備えられており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。
【0063】
従って、CPU20Aは、RAM20B、ROM20C、および二次記憶部20Dに対するアクセス、キーボード20Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ20Fに対する各種情報の表示、および外部I/F20Gを介した外部装置等との間の各種信号の授受を各々行うことができる。なお、前述したアンテナ30およびカメラ40は、外部I/F20Gを介して犯罪防止装置20に電気的に接続されている。
【0064】
一方、図4には、犯罪防止装置20に備えられた二次記憶部20Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
【0065】
同図に示すように、二次記憶部20Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、犯罪防止装置20を制御するための制御プログラムや各種処理を行うためのプログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
【0066】
また、データベース領域DBには、識別情報データベースDB1、属性情報データベースDB2、障害物情報データベースDB3、位置情報データベースDB4、年代別犯罪実行率データベースDB5、補正係数データベースDB6、および犯罪リスク値データベースDB7が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
【0067】
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、予め定められた守備者および被守備者の各々に対してICタグ90を配布する。このとき配布するICタグ90は、配布先の人を個別に特定することができるように、各々唯一無二の識別情報を送信するものとされている。
【0068】
上記識別情報データベースDB1は、主として、この識別情報を記憶するためのものであり、一例として図5に示すように、識別情報および種別の各情報が犯罪防止装置20において対象としている被守備者および守備者の各々毎に記憶されるように構成されている。
【0069】
なお、上記種別は、対応する識別情報を送信するICタグ90を所持している人が被守備者であるのか、守備者であるのかを示す情報である。図5に示される例では、例えば、‘10001’との識別情報を送信するICタグ90を所持している人は‘被守備者’であり、‘20003’との識別情報を送信するICタグ90を所持している人は‘守備者’であることが示されている。
【0070】
なお、ICタグには、自身に個別に割り振られた製造番号を送信するものが多く存在するので、この場合は、上記識別番号として当該製造番号を適用する形態としてもよい。
【0071】
一方、上記属性情報データベースDB2は、一例として図6に示されるように、属性が上記識別情報毎に記憶されるように構成されている。
【0072】
なお、上記属性は、対応する識別情報を送信するICタグ90を所持する人の特徴を示す情報であり、本実施の形態に係る属性情報データベースDB2では、図6に示されるように、年齢、性別、身長、および身分の各情報により構成されている。図6に示される例では、例えば、‘10001’との識別情報を送信するICタグ90を所持している人は、7歳の男で、身長が110cmである子供であり、‘20003’との識別情報を送信するICタグ90を所持している人は、50歳の男で、身長が173cmである警備員であることが示されている。
【0073】
一方、上記障害物情報データベースDB3は、一例として図7に示されるように、障害物ID(Identification)、領域、および種別の各情報が、監視対象領域60に存在する、人の歩行の妨げとなる障害物の各々毎に記憶されるように構成されている。
【0074】
なお、上記障害物IDは、監視対象領域60に存在する障害物(一例として図2に示される植え込みとされた障害物62)を識別するために、犯罪防止装置20により障害物毎に異なる情報(本実施の形態では、アルファベットと数字を組み合わせた情報)として予め付与されたものである。
【0075】
また、上記領域は、対応する障害物が存在する領域(位置)を示す情報である。同図に示されるように、本実施の形態に係る障害物情報データベースDB3では、上記領域を、監視対象領域60を平面視した場合の予め定められた基点位置を原点としたX−Y座標系により、対応する障害物の外接矩形枠の一対の対角の座標値で表しているが、これに限るものではなく、例えば、対応する障害物の輪郭位置の上記X−Y座標系による座標値で表す形態等、他の形態とすることができることは言うまでもない。
【0076】
また、上記種別は、対応する障害物の、植え込み、噴水、塀といった種別を示す情報である。
【0077】
一方、上記位置情報データベースDB4は、一例として図8に示されるように、カメラID、画素位置、および位置座標の各情報が、カメラ40の各々毎に記憶されるように構成されている。
【0078】
なお、上記カメラIDは、カメラ40を識別するために、犯罪防止装置20によりカメラ毎に異なる情報(本実施の形態では、アルファベットと数字を組み合わせた情報)として予め付与されたものである。
【0079】
ところで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、各カメラ40を、撮影方向および拡大率を固定とすることにより、撮影範囲(画角)を予め定められた範囲で固定としておき、その状態で各カメラ40に内蔵された固体撮像素子による画素位置と、これに対応する上記X−Y座標系における位置座標とを関連付けて記憶しておき、この情報に基づいて、カメラ40から得られた画像情報により示される監視対象領域60の画像に存在する人の位置を特定するようにしている。
【0080】
位置情報データベースDB4における画素位置および位置座標は、上記固体撮像素子による画素位置および上記X−Y座標系における位置座標に相当するものであり、これらの情報を参照することによって、各カメラ40により撮影された画像内に存在する人の位置を特定することができる。
【0081】
なお、本実施の形態に係る位置情報データベースDB4では、図8に示されるように、上記画素位置として、上記固体撮像素子における矩形状とされた画素領域(撮像領域)の一対の対角の座標値を適用し、撮影画像内に存在する人の領域が最も多く含まれる上記画素領域に対応する位置座標を参照することによって当該人の上記X−Y座標系における位置を特定している。このように、本実施の形態では、上記画素位置として、予め定められた範囲を有する情報を適用しているが、これに限らず、例えば、画素位置として上記固体撮像素子における画素領域の1点の座標値を適用し、撮影画像内の人の所定位置(例えば、体全体の重心位置や、頭部の中心位置等)が最も近い画素位置に対応する位置座標を当該人の上記X−Y座標系における位置であるものとして特定する形態等とすることができることも言うまでもない。
【0082】
一方、上記年代別犯罪実行率データベースDB5は、一例として図9に示されるように、性別および年齢の組み合わせが犯罪種毎に記憶されると共に、年代別犯罪実行率が対応する各条件の組み合わせ毎に記憶されるように構成されている。
【0083】
なお、上記犯罪種は、本実施の形態に係る犯罪防止システム10が対象としている犯罪の種類を示す情報である。なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記犯罪種として、暴行、傷害、強制わいせつ、公然わいせつ、および略取誘拐の5種類の犯罪を対象としているが、これに限らず、人に対して行われる他の犯罪の種類を対象としてもよく、上記5種類のうちの何れかを対象から外してもよいことは言うまでもない。
【0084】
また、上記条件における性別は男性なのか、女性なのかを示す条件であり、年齢は予め段階的に区分された各区分別の年齢を示す条件である。なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記年齢の各区分を、20歳未満、20代、30代、40代、・・・としているが、これに限るものではなく、例えば、1歳刻み,5歳刻み,10歳刻み等の規則的な区分や、20歳未満および20歳以上の2つの区分、20歳未満,20歳から40歳未満,40歳代,50歳以上等といった不規則な区分等、他の区分としてもよいことは言うまでもない。
【0085】
さらに、上記年代別犯罪実行率は、各々対応する条件の組み合わせに合致する人が対応する犯罪を行う確率を示す情報である。
【0086】
なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、対応する条件の組み合わせ毎に確率P(B)および確率P(A|B)を、一例として図16〜図20に示される統計値等に基づいて導出する。また、犯罪防止システム10は、確率P(A)を、監視対象領域60において監視対象とする時間帯に存在した人の総数に対する、対応する条件の組み合わせに当てはまる人の数の割合を、観察や過去の統計値等によって導出する。そして、導出した確率P(B)、確率P(A|B)、および確率P(A)を上記(1)式に代入することによって得られた値が上記年代別犯罪実行率として登録される。
【0087】
なお、図16〜図20に示される統計値では複数年の値が示されており、この場合、現時点に最も近い年の値を適用する形態、犯罪の発生件数が最も多い年の値を適用する形態、複数年の平均値を適用する形態等を適用することができるが、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、件数が最も多い年の値を適用して上記確率P(B)および確率P(A|B)を導出している。
【0088】
一方、上記補正係数データベースDB6は、一例として図10に示されるように、年齢および単複の各条件の組み合わせが犯罪種毎に記憶されると共に、補正係数が対応する各条件の組み合わせ毎に記憶されるように構成されている。
【0089】
なお、上記犯罪種および上記年齢は、上記年代別犯罪実行率データベースDB5の犯罪種および年齢と同一の情報であり、上記単複は単独で行動しているか、複数で行動しているかを示す条件である。
【0090】
また、上記補正係数は、後述する犯罪リスク値を補正するための係数であり、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、当該補正係数として、各々対応する条件の組み合わせに合致する人が対応する犯罪を行う確率の高さを示す情報を適用している。
【0091】
なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記年代別犯罪実行率と同様に、対応する条件の組み合わせ毎に確率P(B)および確率P(A|B)を、一例として図16〜図20に示される統計値等に基づいて導出する。また、犯罪防止システム10は、確率P(A)を、監視対象領域60において監視対象とする時間帯に存在した人の総数に対する、対応する条件の組み合わせに当てはまる人の数の割合を、観察や過去の統計値等によって導出する。そして、導出した確率P(B)、確率P(A|B)、および確率P(A)を上記(1)式に代入することによって得られた値が上記補正係数として登録される。
【0092】
なお、図16〜図20に示される統計値では複数年の値が示されており、この場合も、現時点に最も近い年の値を適用する形態、犯罪の発生件数が最も多い年の値を適用する形態、複数年の平均値を適用する形態等を適用することができるが、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、件数が最も多い年の値を適用して上記確率P(B)および確率P(A|B)を導出している。
【0093】
一方、上記犯罪リスク値データベースDB7は、一例として図11に示されるように、各被守備者に対する各不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値が、時系列順に記憶されるように構成されている。なお、同図において、tは現在時刻を表し、t−δtは現在からδt秒前の時刻を表し、t+δtは現在からδt秒後の時刻を表している。また、S,S,・・・は各々異なる不定者を表し、V,V,・・・は各々異なる被守備者を表す。
【0094】
ところで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、防犯の対象とする犯罪種(以下、「防犯対象犯罪種」という。)を、犯罪防止装置20のキーボード20E等を介して指定することができるものとされており、犯罪防止システム10では、指定された防犯対象犯罪種に関して防犯を行うものとされている。
【0095】
次に、図12を参照して、本実施の形態に係る犯罪防止システム10の作用を説明する。なお、図12は、犯罪防止装置20のキーボード20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される犯罪防止プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、ここでは、錯綜を回避するために、識別情報データベースDB1、属性情報データベースDB2、障害物情報データベースDB3、位置情報データベースDB4、年代別犯罪実行率データベースDB5、および補正係数データベースDB6が予め構築されており、防犯対象犯罪種が既に指定されている場合について説明する。
【0096】
同図のステップ100では、識別情報データベースDB1、属性情報データベースDB2、および位置情報データベースDB4から処理対象とする監視対象領域60に関する全ての情報を読み出すと共に、年代別犯罪実行率データベースDB5および補正係数データベースDB6から予め指定されている防犯対象犯罪種に関する全ての情報を読み出し、次のステップ102では、全てのカメラ40から撮影画像を示す画像情報を取得し、次のステップ104では、各アンテナ30により受信されている全ての識別情報を取得する。
【0097】
次のステップ106では、上記ステップ102の処理によって取得した画像情報により示される画像から当該画像に存在する全ての人を検出し、検出した人の位置を、上記ステップ100の処理によって位置情報データベースDB4から読み出した情報を用いた前述した方法により検出する。なお、上記画像からの当該画像に存在する人の検出は、一例として、FieldAnalyst(登録商標)(NECソフト株式会社)、IMS(Intelligent Monitoring System、エクジット株式会社)等で用いられている技術等の従来既知の技術によって行うことができる。
【0098】
次のステップ108では、上記ステップ104の処理によって取得した識別情報に基づいて、上記ステップ106の処理によって検出した全ての人の種別を次のように特定する。
【0099】
まず、上記ステップ104の処理によって取得した識別情報を送信したICタグ90を所持している人(以下、「ICタグ所持者」という。)の位置を前述した三角測量の技術により特定すると共に、上記ステップ100の処理によって識別情報データベースDB1から読み出した情報から、取得した識別情報に対応する種別を参照することにより、全てのICタグ所持者の種別を特定する。
【0100】
次に、上記ステップ106の処理により検出した全ての人(以下、「領域存在者」という。)の位置と、特定した全てのICタグ所持者の位置とを比較し、ICタグ所持者の位置に最も近い位置の領域存在者が当該ICタグ所持者と同一人物であるものとして同定することにより、領域存在者の中のICタグ所持者の種別を特定する。
【0101】
最後に、ICタグ所持者を除く領域存在者が不定者であるものと特定する。
【0102】
次のステップ110では、上記ステップ108の処理により特定した守備者と被守備者との距離を次の(2)式により守備者と被守備者の全ての組み合わせについて算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。なお、(2)式において、tは現在時刻であり、XViはi番目の被守備者Vの位置の上記X−Y座標系におけるX座標であり、YViはi番目の被守備者Vの位置の上記X−Y座標系におけるY座標であり、XGkはk番目の守備者Gの位置の上記X−Y座標系におけるX座標であり、YGkはk番目の守備者Gの位置の上記X−Y座標系におけるY座標であり、DViGk(t)は現時点における被守備者Vと守備者Gとの距離である。
【0103】
【数2】

次のステップ112では、上記ステップ108の処理により特定した不定者と被守備者との距離を次の(3)式により不定者と被守備者の全ての組み合わせについて算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。なお、(3)式において、XSjはj番目の不定者Sの位置の上記X−Y座標系におけるX座標であり、YSjはj番目の不定者Sの位置の上記X−Y座標系におけるY座標であり、DViSj(t)は現時点における被守備者Vと不定者Sとの距離である。
【0104】
【数3】

次のステップ114では、上記ステップ102〜ステップ112の処理の実行が本犯罪防止プログラムの実行を開始してから1回目の実行であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は後述するステップ126に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ116に移行する。
【0105】
ステップ116では、次の(4)式および(5)式により、所定時間δt(ここでは1秒)後の守備者Gと被守備者Vとの距離DViGk(t+δt)と、不定者Sと被守備者Vとの距離DViSj(t+δt)とを算出(予測)する。ここで、(4)式におけるDViGk(t−δt)は、現時点から所定時間δt前の守備者Gと被守備者Vとの距離で、(5)式におけるDViSj(t−δt)は、現時点から所定時間δt前の不定者Sと被守備者Vとの距離であり、前回の上記ステップ110およびステップ112の処理によって得られて記憶された値を適用する。
【0106】
【数4】

【0107】
【数5】

なお、本ステップ116の演算では、守備者、被守備者、および不定者の各々について、同一人物に関する前回の上記ステップ110およびステップ112の処理によって得られた値を適用する必要があるが、守備者および被守備者については、上記ステップ104の処理によって前回得られた識別情報と今回得られた識別情報が一致する人を同一人物として適用すればよく、不定者については、上記ステップ102の処理によって前回得られた画像情報と今回得られた画像情報を用いた従来既知のパターン・マッチング技術等の画像認識技術により、同一人物を特定すればよい。
【0108】
本ステップ116の演算により、一例として図13に示されるように、守備者G、被守備者V、および不定者Sの各々の動線に応じたものとして、距離DViGk(t+δt)および距離DViSj(t+δt)を高精度に予測することができる。
【0109】
次のステップ118では、不定者Sに関する年代別犯罪実行率データベースDB5および補正係数データベースDB6における条件を推定する。なお、不定者Sの性別および年齢の推定は、一例として上記IMS等で用いられている技術等の従来既知の技術によって行うことができる。また、不定者Sが単独で行動しているか否かの推定は、上記ステップ106の処理によって検出した不定者Sの位置からの距離が所定閾値(本実施の形態では、2m)以内となっている他の不定者が存在しない場合に単独で行動しているものと推定し、当該他の不定者が存在する場合に複数で行動しているものと推定することにより行うことができる。
【0110】
次のステップ120では、上記ステップ118の処理により推定した不定者Sの年齢および単複の組み合わせに対応する補正係数Rj_cを、上記ステップ100の処理によって補正係数データベースDB6から読み出した情報から取得することにより導出する。
【0111】
また、ステップ120では、不定者Sの性別に対応し、かつ不定者Sの年齢が含まれる年代以降の年代に対応する年代別犯罪実行率を、上記ステップ100の処理によって年代別犯罪実行率データベースDB5から読み出した情報から取得し、取得した年代別犯罪実行率を次の(6)式に代入することにより、不定者Sの犯罪実行率Rj_pを導出する。ここで、(6)式におけるALは対応する男性または女性の平均寿命であり、NAは推定した不定者Sの年齢であり、pはn歳に対応する年代別犯罪実行率である。
【0112】
【数6】

このように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、犯罪実行率Rj_pを対応する性別の平均寿命を用いて算出しているため、ROM20C、二次記憶部20D等の記憶手段の所定領域には性別毎の平均寿命が予め記憶されているが、これに限らず、当該平均寿命をキーボード20E等の入力手段を介してユーザに入力させる形態等としてもよい。
【0113】
次のステップ122では、上記ステップ116の処理によって得られた距離DViGk(t+δt)および距離DViSj(t+δt)と、上記ステップ120の処理によって得られた補正係数Rj_cおよび犯罪実行率Rj_pとを次の(7)式に代入することにより、所定時間δt後の不定者Sによる被守備者Vに対する犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値Rij(t+δt)を算出し、犯罪リスク値データベースDB7に記憶(登録)する。ここで、(7)式におけるmin()は、括弧内の演算結果の全てのkについての最小値を適用することを示す関数である。
【0114】
【数7】

次のステップ124では、上記ステップ122の処理によって得られた犯罪リスク値Rij(t+δt)を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行し、その後にステップ126に移行する。
【0115】
なお、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記ステップ124における予め定められた処理として次の5種類の処理を適用している。
処理1.犯罪リスク値Rij(t+δt)および犯罪実行率Rj_pをディスプレイ20Fにより表示する処理。
処理2.犯罪リスク値Rij(t+δt)が所定閾値以上である場合に警告を発する処理。
処理3.犯罪リスク値Rij(t+δt)が所定閾値以上である場合に、対象となる被守備者に最も近い守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する処理。
処理4.犯罪実行率Rj_pが所定第2閾値以上である場合に警告を発する処理。
処理5.犯罪実行率Rj_pが所定第2閾値以上である場合に、対象となる不定者に最も近い守備者に対して犯罪実行率が高い不定者が近くに存在することを報知する処理。
【0116】
なお、上記処理2および処理4の処理を適用する場合は、監視対象領域60にスピーカを設けておき、当該スピーカにより警告を発する形態、監視対象領域60の監視者や警備員に対し、PDA(Personal Digital Assistant,携帯情報端末)等の端末装置を介して警告を発する形態等、様々な形態を適用することができる。
【0117】
また、上記処理3の処理を適用する場合は、監視対象領域60にスピーカを設けておき、当該スピーカにより、上記対象となる被守備者に最も近い守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する形態、当該守備者に対し、PDA等の端末装置を介して犯罪リスクが高いことを報知する形態等、様々な形態を適用することができる。
【0118】
さらに、上記処理5の処理を適用する場合にも、監視対象領域60にスピーカを設けておき、当該スピーカにより、上記対象となる不定者に最も近い守備者に対して犯罪実行率が高い不定者が近くにいることを報知する形態、当該守備者に対し、PDA等の端末装置を介して犯罪実行率が高い不定者が近くにいることを報知する形態等、様々な形態を適用することができる。
【0119】
ここで、上記処理2〜処理5の各処理を適用する場合の上記所定閾値および所定第2閾値は、要求される安全性の高さ、用途等に応じて自動的に設定する形態の他、犯罪防止システム10のユーザによってキーボード20E等を介して入力させる形態とすることもできる。
【0120】
このように、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記予め定められた処理として上記処理1〜処理5の5種類の処理を適用しているが、これに限らず、例えば、これらの処理の何れか1つや、4つまでの組み合わせを適用する形態とすることもできる。
【0121】
ステップ126では、予め定められた終了条件を満足したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ128に移行して所定時間の経過待ちを行い、その後に上記ステップ102に戻る一方、上記ステップ126において肯定判定となった場合には、本犯罪防止プログラムを終了する。なお、上記ステップ128において適用する所定時間は、上記ステップ102〜ステップ128の繰り返し処理が、できるだけ所定時間δtの間隔で実行されるように予め調整された時間が適用されている。また、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記ステップ126の処理において適用する終了条件として、監視対象領域60の監視を終了する時刻として予め定められた時刻に達した、との条件を適用しているが、これに限らず、例えば、キーボード20E等を介して本犯罪防止プログラムの終了を指示する指示入力が行われた、との条件、二次記憶部20Dの残記憶容量が所定量以下となった、との条件等、他の条件を適用することもできることは言うまでもない。
【0122】
上記犯罪防止プログラムのステップ106の処理が本発明の検出手段に、ステップ108の処理が本発明の特定手段に、ステップ110およびステップ112の処理が本発明の距離導出手段に、ステップ116の処理が本発明の距離予測手段に、ステップ118の処理が本発明の推定手段および人数推定手段に、ステップ120の処理が本発明の導出手段および補正係数導出手段に、ステップ122の処理が本発明の演算手段に、ステップ124の処理が本発明の処理実行手段に、各々相当する。
【0123】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段(ここでは、カメラ40)によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔(ここでは、所定時間δt間隔)で検出し、検出した人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定し、不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定し、推定した特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出し、導出した犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算し、演算した犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、高精度に導出された不定者による犯罪実行率に基づいて犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行することができる結果、本発明を適用しない場合に比較して、より効果的に防犯することができる。
【0124】
また、本実施の形態では、前記特性情報が、不定者と特定された人の性別を含んでいるので、より効果的に防犯することができる。
【0125】
また、本実施の形態では、検出した人が前記守備者、前記被守備者、および前記不定者の何れであるかを特定し、検出した人の位置と当該特定結果に基づいて、前記守備者と前記被守備者の距離である第1の距離(ここでは、距離DViGk(t))、および前記不定者と前記被守備者の距離である第2の距離(ここでは、距離DViSj(t))を導出し、当該第1の距離と第2の距離の比、および導出した犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算しているので、守備者を有効に活用することができる結果、より効率的に防犯することができる。
【0126】
また、本実施の形態では、現時点で導出された前記第1の距離と前記所定時間前の時点で導出された前記第1の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者と前記被守備者の距離(ここでは、距離DViGk(t+δt))を予測すると共に、現時点で導出された前記第2の距離と前記所定時間前の時点で導出された前記第2の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者と前記被守備者の距離(ここでは、距離DViSj(t+δt))を予測し、予測した前記守備者と前記被守備者の距離と、前記不定者と前記被守備者の距離との比、および導出した犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算しているので、上記所定時間後の犯罪リスク値を予測することができる結果、より即時的に防犯することができる。
【0127】
また、本実施の形態では、不定者と特定された人の一緒に行動している人数を前記画像情報に基づいて推定し、推定した人数に基づいて、前記犯罪リスク値を補正するための補正係数(ここでは、補正係数Rj_c)を導出し、前記犯罪リスク値を前記補正係数によって補正した値として演算しているので、より効果的に防犯することができる。
【0128】
また、本実施の形態では、前記守備者に対して予め付与された当該守備者を識別するための情報である守備者識別情報、および前記被守備者に対して予め付与された当該被守備者を識別するための情報である被守備者識別情報を予め識別情報記憶手段(ここでは、二次記憶部20D)により記憶しておき、前記検出された人から前記守備者識別情報および前記被守備者識別情報の何れかの識別情報を取得し、取得した識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が守備者であるものと特定し、取得した識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている被守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が被守備者であるものと特定し、他の人が不定者であるものと特定しているので、より確実に守備者、被守備者、および不定者を特定することができ、この結果として、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0129】
また、本実施の形態では、本発明の予め定められた処理として、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率を記憶する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率を表示する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率が所定閾値以上である場合に警告を発する処理、対象となる前記被守備者に最も近い前記守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する処理、前記犯罪実行率が前記所定閾値以上である不定者に最も近い前記守備者に対して犯罪実行率が高い不定者が近くに存在することを報知する処理を実行しているので、これらの処理に応じた効果を得ることができる。
【0130】
また、本実施の形態では、ICタグを利用して、前記対象領域に存在する前記守備者および前記被守備者の位置を前記所定時間間隔で検出しているので、より容易に本発明を実現することができると共に、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0131】
また、本実施の形態では、推定される特性情報(ここでは、年齢および性別)に対応する人により犯罪が実際に行われた割合に基づいて予め定められた年代別に導出された年代別犯罪実行率(ここでは、年代別犯罪実行率データベースDB5に登録された年代別犯罪実行率)を対応する前記特性情報に関連付けて年代別犯罪実行率記憶手段(ここでは、二次記憶部20D)により予め記憶しておき、上記推定した前記不定者の年齢以降に対応する年代別犯罪実行率を前記年代別犯罪実行率記憶手段から読み出し、読み出した年代別犯罪実行率に基づいて前記犯罪実行率を導出しているので、より簡易かつ短時間で犯罪実行率を導出することができる。
【0132】
特に、本実施の形態では、前記年代別犯罪実行率を、過去の犯罪発生数の統計値からベイズ理論に基づいて予め導出しているので、より簡易かつ高精度に犯罪実行率を導出することができる。
【0133】
さらに、本実施の形態では、前記犯罪実行率を犯罪種毎に導出しているので、犯罪種毎に防犯することができる。
【0134】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、守備者と被守備者の距離、不定者と被守備者の距離、および不定者の犯罪実行率に基づいて犯罪リスク値を求める場合の形態例について説明したが、本第2の実施の形態では、守備者が被守備者に到達する時間、不定者が被守備者に到達する時間、および不定者の犯罪実行率に基づいて犯罪リスク値を求める場合の形態例について説明する。
【0135】
なお、本第2の実施の形態に係る犯罪防止システム10の構成は、上記第1の実施の形態に係る犯罪防止システム10(図1〜図4参照。)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0136】
次に、図14を参照して、本第2の実施の形態に係る犯罪防止システム10の作用を説明する。なお、図14は、犯罪防止装置20のキーボード20E等を介して実行指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される、本第2の実施の形態に係る犯罪防止プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。また、図14における図12と同一の処理を実行するステップについては図12と同一のステップ番号を付し、ここでの説明を省略する。
【0137】
同図のステップ111では、上記ステップ110の処理によって得られた距離DViGk(t)を次の(8)式に代入することにより、各守備者が各被守備者に到達する時間PViGk(t)を算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。ここで、(8)式におけるFは、平均的な大人の歩行速度(一例として、1.3m/s)であり、Wは歩行速度Fに対する重み付け値である。
【0138】
【数8】

なお、本実施の形態では、重み付け値Wとして、上記ステップ100の処理により属性情報データベースDB2から読み出した情報から、対応する守備者が所持しているICタグ90から取得された識別情報に対応する属性の年齢、性別、身長の各情報を抽出し、これらの情報に応じた値を適用している。
【0139】
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、年齢が、歩行速度が最大となる年齢として予め定められた年齢(例えば、30歳)に近いほど大きくなり、性別が男である場合に女である場合に比較して大きくなり、身長が高くなるほど大きくなるように重み付け値Wを算出している。
【0140】
このように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、重み付け値Wとして、対応する守備者の年齢、性別、および身長の全てを適用して導出しているが、これに限らず、例えば、これら年齢、性別、身長の何れか1つ、又は2つの組み合わせを適用して導出する形態としてもよく、さらに、他の走行速度に影響を与えるパラメータを適用して導出する形態とすることもできる。
【0141】
一方、ステップ113では、上記ステップ112の処理によって得られた距離DViSj(t)を次の(9)式に代入することにより、各不定者が各被守備者に到達する時間PViSj(t)を算出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。ここで、(9)式におけるWは歩行速度Fに対する重み付け値である。
【0142】
【数9】

本実施の形態では、重み付け値Wとして、対応する不定者の年齢、性別、身長を推定し、これらの情報に応じた値を適用している。なお、上記不定者の年齢、性別、身長の推定は、一例として上記IMS等で用いられている技術等の従来既知の技術によって行うことができる。
【0143】
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、年齢が、上記歩行速度が最大となる年齢として予め定められた年齢に近いほど大きくなり、性別が男である場合に女である場合に比較して大きくなり、身長が高くなるほど大きくなるように重み付け値Wを算出している。
【0144】
このように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、重み付け値Wとしても、重み付け値Wと同様に、対応する守備者の年齢、性別、および身長の全てを適用して導出しているが、これに限らず、例えば、これら年齢、性別、身長の何れか1つ、又は2つの組み合わせを適用して導出する形態としてもよく、さらに、他の走行速度に影響を与えるパラメータを適用して導出する形態とすることもできる。
【0145】
一方、ステップ116’では、次の(10)式および(11)式により、所定時間δt(ここでは1秒)後の守備者Gが被守備者Vに到達する時間PViGk(t+δt)と、不定者Sが被守備者Vに到達する時間PViSj(t+δt)とを算出(予測)する。ここで、(10)式におけるPViGk(t−δt)は、現時点から所定時間δt前の守備者Gが被守備者Vに到達する時間で、(11)式におけるPViSj(t−δt)は、現時点から所定時間δt前の不定者Sが被守備者Vに到達する時間であり、前回の上記ステップ111およびステップ113の処理によって得られて記憶された値を適用する。
【0146】
【数10】

【0147】
【数11】

なお、本ステップ116’の演算では、守備者、被守備者、および不定者の各々について、同一人物に関する前回の上記ステップ111およびステップ113の処理によって得られた値を適用する必要があるが、守備者および被守備者については、上記ステップ104の処理によって前回得られた識別情報と今回得られた識別情報が一致する人を同一人物として適用すればよく、不定者については、上記ステップ102の処理によって前回得られた画像情報と今回得られた画像情報を用いた従来既知のパターン・マッチング技術等の画像認識技術により、同一人物を特定すればよい。
【0148】
本ステップ116’の演算により、一例として図15に示されるように、守備者G、被守備者V、および不定者Sの各々の動線に応じたものとして、到達時間PViGk(t+δt)および到達時間PViSj(t+δt)を高精度に予測することができる。
【0149】
次のステップ117では、被守備者Vの進行方向と不定者Sの進行方向を導出する。なお、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、当該進行方向の導出を、前回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置と、今回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置とを同一人物間で結んだ線分の方向を導出することにより行っているが、これに限らず、例えば、前々回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置と、前回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置との差分(以下、「第1差分」という。)と、前回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置と、今回のステップ106の処理によって得られた被守備者Vおよび不定者Sの位置との差分(以下、「第2差分」という。)を導出し、第1差分と第2差分の変化量および変化の方向を上記線分の方向に反映させる形態等、他の形態とすることもできる。
【0150】
その後、ステップ122’では、上記ステップ116’の処理によって得られた到達時間PViGk(t+δt)および到達時間PViSj(t+δt)と、上記ステップ120の処理によって得られた補正係数Rj_cおよび犯罪実行率Rj_pとを次の(12)式に代入することにより、所定時間δt後の不定者Sによる被守備者Vに対する犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値Rij(t+δt)’を算出し、犯罪リスク値データベースDB7に記憶(登録)する。ここで、(12)式におけるWVSは、上記ステップ117の処理によって得られた不定者Sの進行方向が被守備者Vの進行方向に近いほど値が大きくなる1以上の重み付け値であり、min()は、括弧内の演算結果の全てのkについての最小値を適用することを示す関数である。
【0151】
【数12】

上記犯罪防止プログラムのステップ111およびステップ113の処理が本発明の到達時間導出手段および第2推定手段に、ステップ116’の処理が本発明の到達時間予測手段に、ステップ117の処理が本発明の進行方向導出手段に、ステップ122’の処理が本発明の演算手段に、各々相当する。
【0152】
以上詳細に説明したように、本第2の実施の形態では、上記第1の実施の形態と略同様の効果を奏することができると共に、前記第1の距離に基づいて前記守備者が前記被守備者に到達する時間である第1の到達時間(ここでは、到達時間PViGk(t))を導出すると共に、前記第2の距離に基づいて前記不定者が前記被守備者に到達する時間である第2の到達時間(ここでは、到達時間PViSj(t))を導出し、導出した第1の到達時間と第2の到達時間の比、および導出した犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算しているので、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0153】
特に、本第2の実施の形態では、人の年齢、性別、および身長を前記画像情報に基づいて推定し、推定した年齢、性別、および身長に応じて前記第1の到達時間および前記第2の到達時間を調整しているので、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0154】
また、本第2の実施の形態では、現時点で導出された第1の到達時間と前記所定時間前の時点で導出された第1の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者が前記被守備者に到達する時間(ここでは、到達時間PViGk(t+δt))を予測すると共に、現時点で導出された第2の到達時間と前記所定時間前の時点で導出された第2の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者が前記被守備者に到達する時間(ここでは、到達時間PViSj(t+δt))を予測し、予測した前記守備者が前記被守備者に到達する時間と、前記不定者が前記被守備者に到達する時間との比、および導出した犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算しているので、上記所定時間後の犯罪リスク値を予測することができる結果、より即時的に防犯することができる。
【0155】
さらに、本第2の実施の形態では、前記被守備者の進行方向と前記不定者の進行方向を導出し、導出した前記被守備者の進行方向に前記不定者の進行方向が近いほど値が大きくなるように前記犯罪リスク値を演算しているので、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0156】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0157】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0158】
例えば、上記第1の実施の形態では、守備者と被守備者の距離および不定者と被守備者の距離として(4)式および(5)式によって得られる予測値を適用し、上記第2の実施の形態では、守備者が被守備者に到達する時間および不定者が被守備者に到達する時間として(10)式および(11)式によって得られる予測値を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの予測値に代えて、その時点における実際の距離や到達時間を適用する形態とすることもできる。
【0159】
上記第1の実施の形態に対して上記実際の距離を適用する場合は、上記第1の実施の形態に係る犯罪防止プログラム(図12参照。)のステップ116を削除すると共に、ステップ122により犯罪リスク値を算出するために適用する演算式を、次の(13)式とする。
【0160】
【数13】

また、上記第2の実施の形態に対して上記実際の到達距離を適用する場合は、上記第2の実施の形態に係る犯罪防止プログラム(図14参照。)のステップ116’を削除すると共に、ステップ122’により犯罪リスク値を算出するために適用する演算式を、次の(14)式とする。
【0161】
【数14】

これらの場合も、上記各実施の形態と、略同様の効果を奏することができる。
【0162】
また、上記各実施の形態では、監視対象領域60に存在する障害物については何ら考慮することなく、犯罪リスク値を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該障害物を考慮して、犯罪リスク値を導出する形態とすることもできる。
【0163】
この場合の形態例としては、犯罪防止プログラムのステップ110およびステップ112において守備者と被守備者の距離(以下、「第1の距離」という。)および不定者と被守備者の距離(以下、「第2の距離」という。)を導出する際に、守備者と被守備者の間に、障害物情報データベースDB3に登録されている領域情報により示される障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして第1の距離を導出し、不定者と被守備者との間に上記障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして第2の距離を導出する形態を例示することができる。この場合、二次記憶部20Dが本発明の領域情報記憶手段に相当することになる。
【0164】
これにより、より高精度に犯罪を防止することができる。
【0165】
また、上記各実施の形態では、ICタグ90を利用して守備者および被守備者の位置を検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、GPSを利用して守備者および被守備者の位置を検出する形態とすることもできる。
【0166】
この場合の形態例としては、守備者および被守備者に、GPSにより自身の位置を特定することのできるデバイスと無線送信装置を所持させると共に、当該デバイスにより特定された位置を示す情報と、予め自身に割り振られた識別情報とを、上記無線送信装置にて上記所定時間δt毎に犯罪防止装置20に送信する形態を例示することができる。
【0167】
この場合、監視対象領域にアンテナ30を設ける必要がなくなるので、上記各実施の形態に比較して、より容易に本発明を実現することができる。
【0168】
また、上記各実施の形態では、アンテナ30およびカメラ40と、犯罪防止装置20とを有線にて電気的に接続する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの各機器間を無線にて電気的に接続する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0169】
また、上記各実施の形態では、カメラ40を4台設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ40は1台のみ設けてもよく、4台以外の複数台設けてもよいことは言うまでもない。これらの場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0170】
また、上記各実施の形態では、本発明の距離としてユークリッド距離を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、マンハッタン距離等の他の距離を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0171】
また、上記各実施の形態では、属性情報を属性情報データベースDB2により予め登録しておく場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ICタグ90に当該ICタグ90を所持する人に関する属性情報を予め記憶しておき、当該属性情報をアンテナ30を介して取得する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0172】
また、上記各実施の形態では、本発明の撮影手段としてカラーで動画像の撮影を行うことのできるカメラを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、モノクロで動画像の撮影を行うことのできるカメラ、赤外線カメラ等の他のカメラを適用する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0173】
また、上記各実施の形態では、本発明の対象領域として公園を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、公開空地等の他の領域を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0174】
また、上記各実施の形態で説明した属性の適用対象も一例であり、例えば、被守備者の属性における身分が子供である場合には、他の場合に比較して、犯罪リスク値を大きくする形態等とすることもできる。
【0175】
また、上記各実施の形態では、犯罪実行率、守備者と被守備者の距離と不定者と被守備者の距離との比または守備者が被守備者に到達する時間と不定者が被守備者に到達する時間との比、および補正係数の全てに基づいて犯罪リスク値を演算する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記犯罪実行率のみに基づいて犯罪リスク値を演算する形態や、上記犯罪実行率および上記比のみに基づいて犯罪リスク値を演算する形態としてもよい。
【0176】
なお、上記犯罪実行率のみに基づいて犯罪リスク値を演算する形態としては、当該犯罪実行率そのものを犯罪リスク値として適用する形態や、当該犯罪実行率に対して予め定められた係数(一例として、上記第2の実施の形態に係る重み付け値Wvs等)を乗算することにより得られた値を犯罪リスク値として適用する形態等を例示することができる。
【0177】
また、上記犯罪実行率および上記比のみに基づいて犯罪リスク値を演算する形態としては、(7)式や(12)式から補正係数Rj_cを削除した演算式を適用する形態等を例示することができる。
【0178】
これらの場合も、上記各実施の形態と略同様の効果を奏することができる。
【0179】
また、上記各実施の形態では、年代別犯罪実行率を性別毎に導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、男性および女性の別なく年代別犯罪実行率を導出する形態としてもよい。この場合も、上記各実施の形態と略同様の効果を奏することができる。
【0180】
また、上記各実施の形態では、不定者の犯罪実行率を導出する際に適用する不定者の条件として、年齢および性別の双方を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、年齢のみを適用する形態とすることもできる。また、これら2種類の条件に対し、不定者の服装(「サングラスをかけている」など)、容姿(「外国人」など)、所持品(「刃物を持っている」など)、行動パターン(「酔っ払い風」など)などの条件を含め、これらの条件の1つ、または複数の組み合わせを適用する形態とすることもできる。これらの場合、年代別犯罪実行率データベースDB5には、適用した条件に応じた年代別犯罪実行率を登録して適用することになる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0181】
また、上記各実施の形態では、一緒に行動している人数の条件を、「単独」および「複数」の2段階に区分した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、単独、2人〜3人、4人〜5人、・・・といったように3段階以上に区分する形態としてもよい。この場合、補正係数データベースDB6には、適用した区分と同一区分とされた条件に応じた補正係数を登録して適用することになる。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0182】
また、上記各実施の形態では、年代別犯罪実行率や補正係数を、ベイズ理論を用いて導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、実際に過去に行われた犯罪の統計情報を用いて、他の従来既知の確率導出手法によって、これらの値を導出する形態としてもよい。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0183】
また、上記各実施の形態では、犯罪種毎に犯罪実行率、補正係数、および犯罪リスク値を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、複数の犯罪種の組み合わせ毎に、これらの値を導出する形態としてもよい。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0184】
また、上記各実施の形態では、適用対象とする不定者の年齢や身体的な障害による制限については特に言及しなかったが、被守備者と不定者の年齢の相対関係(一例として、被守備者が大人で不定者が幼稚園児の場合)や、不定者が自力で動けない幼児、老人、身体障害者などにより、不定者が犯罪を犯すリスク値がゼロとみなせる場合は、補正係数をゼロとしてもよい。この場合も、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0185】
その他、上記各実施の形態で説明した犯罪防止システム10の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0186】
また、上記各実施の形態で示した犯罪防止プログラムの処理の流れ(図12,図14参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【0187】
また、上記各実施の形態で示した各種データベースの構成(図5〜図11参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【0188】
さらに、上記各実施の形態で示した各種演算式((1)式〜(14)式参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なパラメータを削除したり、新たなパラメータを追加したり、演算の順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0189】
10 犯罪防止システム
20 犯罪防止装置
20A CPU
20D 二次記憶部(識別情報記憶手段,領域情報記憶手段,年代別犯罪実行率記憶手段)
20F ディスプレイ
30 アンテナ(取得手段)
40 カメラ(撮影手段)
90 ICタグ
DB1 識別情報データベース
DB2 属性情報データベース
DB3 障害物情報データベース
DB4 位置情報データベース
DB5 年代別犯罪実行率データベース
DB6 補正係数データベース
DB7 犯罪リスク値データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段と、
前記撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定する特定手段と、
前記特定手段によって不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行する処理実行手段と、
を備えた犯罪防止装置。
【請求項2】
前記特性情報は、前記特定手段によって不定者と特定された人の性別を含む
請求項1記載の犯罪防止装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記検出手段によって検出された人が前記守備者、前記被守備者、および前記不定者の何れであるかを特定し、
前記検出手段によって検出された人の位置と前記特定手段による特定結果に基づいて、前記守備者と前記被守備者の距離である第1の距離、および前記不定者と前記被守備者の距離である第2の距離を導出する距離導出手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記距離導出手段によって導出された第1の距離と第2の距離の比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算する
請求項1または請求項2記載の犯罪防止装置。
【請求項4】
現時点で前記距離導出手段によって導出された第1の距離と前記所定時間前の時点で前記距離導出手段によって導出された第1の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者と前記被守備者の距離を予測すると共に、現時点で前記距離導出手段によって導出された第2の距離と前記所定時間前の時点で前記距離導出手段によって導出された第2の距離との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者と前記被守備者の距離を予測する距離予測手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記距離予測手段によって予測された前記守備者と前記被守備者の距離と、前記不定者と前記被守備者の距離との比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算する
請求項3記載の犯罪防止装置。
【請求項5】
前記第1の距離に基づいて前記守備者が前記被守備者に到達する時間である第1の到達時間を導出すると共に、前記第2の距離に基づいて前記不定者が前記被守備者に到達する時間である第2の到達時間を導出する到達時間導出手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間と第2の到達時間の比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算する
請求項3記載の犯罪防止装置。
【請求項6】
現時点で前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間と前記所定時間前の時点で前記到達時間導出手段によって導出された第1の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記守備者が前記被守備者に到達する時間を予測すると共に、現時点で前記到達時間導出手段によって導出された第2の到達時間と前記所定時間前の時点で前記到達時間導出手段によって導出された第2の到達時間との変化量に基づいて前記所定時間後の前記不定者が前記被守備者に到達する時間を予測する到達時間予測手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記到達時間予測手段によって予測された前記守備者が前記被守備者に到達する時間と、前記不定者が前記被守備者に到達する時間との比、および前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて前記犯罪リスク値を演算する
請求項5記載の犯罪防止装置。
【請求項7】
前記被守備者の進行方向と前記不定者の進行方向を導出する進行方向導出手段をさらに備え、
前記演算手段は、前記進行方向導出手段によって導出された前記被守備者の進行方向に前記不定者の進行方向が近いほど値が大きくなるように前記犯罪リスク値を演算する
請求項3〜請求項6の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項8】
前記対象領域における人の歩行の妨げとなる障害物の領域を示す領域情報を予め記憶した領域情報記憶手段をさらに備え、
前記距離導出手段は、前記守備者と前記被守備者の間に前記領域情報により示される障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして前記第1の距離を導出すると共に、前記不定者と前記被守備者との間に前記障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして前記第2の距離を導出する
請求項3〜請求項7の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項9】
前記特定手段によって不定者と特定された人の一緒に行動している人数を前記画像情報に基づいて推定する人数推定手段と、
前記人数推定手段によって推定された前記一緒に行動している人数に基づいて、前記犯罪リスク値を補正するための補正係数を導出する補正係数導出手段と、
をさらに備え、
前記演算手段は、前記犯罪リスク値を前記補正係数によって補正した値として演算する
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項10】
前記守備者に対して予め付与された当該守備者を識別するための情報である守備者識別情報、および前記被守備者に対して予め付与された当該被守備者を識別するための情報である被守備者識別情報を予め記憶した識別情報記憶手段と、
前記検出手段によって検出された人から前記守備者識別情報および前記被守備者識別情報の何れかの識別情報を取得する取得手段と、
をさらに備え、
前記特定手段は、前記取得手段によって取得された識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が守備者であるものと特定し、前記取得手段によって取得された識別情報が前記識別情報記憶手段によって記憶されている被守備者識別情報に一致する場合に当該識別情報の取得元の人が被守備者であるものと特定し、他の人が不定者であるものと特定する
請求項1〜請求項9の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項11】
前記処理実行手段は、前記予め定められた処理として、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方を記憶する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方を表示する処理、前記犯罪リスク値および前記犯罪実行率の少なくとも一方が所定閾値以上である場合に警告を発する処理、対象となる前記被守備者に最も近い前記守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する処理、前記犯罪実行率が前記所定閾値以上である不定者に最も近い前記守備者に対して当該犯罪実行率が高い不定者が近くに存在することを報知する処理の少なくとも1つの処理を実行する
請求項1〜請求項10の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項12】
前記推定手段により推定される特性情報に対応する人により犯罪が実際に行われた割合に基づいて予め定められた年代別に導出された年代別犯罪実行率が、対応する前記特性情報に関連付けられて予め記憶された年代別犯罪実行率記憶手段をさらに備え、
前記導出手段は、前記推定手段により推定された前記不定者の年齢以降に対応する年代別犯罪実行率を前記年代別犯罪実行率記憶手段から読み出し、読み出した年代別犯罪実行率に基づいて前記犯罪実行率を導出する
請求項1〜請求項11の何れか1項記載の犯罪防止装置。
【請求項13】
コンピュータを、
対象領域を撮影することにより当該対象領域の画像情報をリアルタイムで取得する撮影手段によって取得された画像情報に基づいて、前記対象領域に存在する人の位置を所定時間間隔で検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された人が予め定められた守備者および被守備者を除く不定者であるか否かを特定する特定手段と、
前記特定手段によって不定者と特定された人の少なくとも年齢を含む個人的な特性を示す特性情報を前記画像情報に基づいて推定する推定手段と、
前記推定手段により推定された特性情報に基づいて、前記不定者が前記特性情報に含まれる年齢以降の生存期間内に犯罪を実行する確率である犯罪実行率を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出された犯罪実行率に基づいて、前記被守備者に対する前記不定者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行する処理実行手段と、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−250775(P2010−250775A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102462(P2009−102462)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】