説明

状態検出システムおよび状態検出装置

【課題】 相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間の接近、静止および離反を、送受信装置の姿勢、位置関係、周囲環境などに左右されることなく確実に検出できる状態検出システム、状態検出装置を提供する。
【解決手段】 相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間における、接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を検出する状態検出システムであって、第一の移動体に設けられ、所要の電波を送信する第一の電波通信手段1と、第二の移動体に設けられ、前記第一の電波通信手段の送信電波を受信する第二の電波通信手段2と、第二の電波通信手段で受信した電波の強度を時系列的に検出し記憶する電波強度記憶手段と、前記電波強度記憶手段に記憶された電波の強度を時系列的に複数回比較して前記第一の移動体と第二の移動体の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態判定手段と、を備えた状態検出システムにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を利用して、相対的に移動する2以上の移動体における接近、静止および離反の少なくとも1つの状態を検出する状態検出システム、状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2点間の距離を測定する手法としては、レーザーや超音波を発射し、発射から反射波が戻るまでの時間を計測して距離を算出する手法がある。また、特にレーザー光やLED光を使用する場合には、三角測量の原理を応用して、反射波の戻る角度から距離を算出する手法もある。LED光による測距手法はカメラのピント合わせに使用されている。
【0003】
別の距離計測の手法として、超音波と、電波や光を併用し、送信側装置から信号発信後、受信側装置で信号を受信するまでの、超音波と、電波や光の到達時間差から距離を算出する手法もある。
【0004】
無線通信装置間の距離を検出する手法を応用する提案は多数なされている。特に、電波を利用し、置忘れの防止、迷子の防止、認知障害者の徘徊防止、万引き,スリ等の盗難の防止のために、電波の届く一定の範囲内に検出対象物が存在することを検出し、電波到達範囲から離れた場合に警報を出す手法がある。
【0005】
たとえば、特許文献1の「警報装置」では、親機と子機との間でIDコードを認証することで、電波で最も問題となる混信を防止している。また、特許文献2の「接近検出装置」では、子機が発信する一定の強度の電波を受信する親機側で、受信感度を変化させることで、すなわち、一度受信した後に受信感度を低下させその電波を受信できた場合には、子機が親機に接近しているとして、この動作を繰り返すことで、接近を検出する。親機と子機が離れつつあることは、この逆の操作で認識できるとしている。
【特許文献1】実用新案登録第3104799号公報
【特許文献2】特開平9−90021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来の手法では、下記のようないくつかの問題が知られている。
【0007】
a レーザーや超音波を利用する手法では、装置と距離を計測する対象物の間に障害物がある場合、距離の計測はできなくなるため、装置を鞄や財布の中入れたままでは計測ができない。
【0008】
b 超音波と、電波または光を併用して距離を検出する手法では、発信源を2種類装備しなければならないため、装置の外形寸法が大きくなるばかりではなく、消費電力も大きくなる。また、超音波は送受信機間に障害物があると信号が伝わりにくくなるということから、装置の位置関係に制限が生じることはレーザーや超音波を単独で使用する手法と同様である。
【0009】
c 電波を利用する手法では、特許文献1のように子機(送信機)と親機(受信機)を1組とし送信機が受信機の受信可能領域にあるかないかにより距離を検出するが、周囲環境や、送信機と受信機のアンテナの位置、すなわち装置の姿勢、位置関係などにより受信機の受信可能領域が変化するため、接近、静止および離反を確実に検出することが難しい。
【0010】
特許文献2の「接近検出装置」においては、まず子機の送信機は常に信号を発信しており、送信機側の電力消費の問題がある。また、仮に電力消費の問題を差し置くとしても、親機の受信機の感度を変化させた場合には、親機側が子機を探しながら移動しないと接近なのか離反なのかの判定はできない。しかし、実際には子機が移動したのか、親機が移動したのかを特定することはできないし、片方が他方を探す動作を期待することはできない。
【0011】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間の接近、静止および離反を、送受信装置の姿勢、位置関係、周囲環境などに左右されることなく確実に検出できる状態検出システム、状態検出装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明では、状態検出システムを次の(1)ないし(7)のとおりに構成し、状態検出装置を次の(8)のとおりに構成する。
【0013】
(1)相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間における、接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を検出する状態検出システムであって、
前記第一の移動体に設けられ、所要の電波を送信する第一の電波通信手段と、
前記第二の移動体に設けられ、前記第一の電波通信手段の送信電波を受信する第二の電波通信手段と、
前記第二の電波通信手段で受信した電波の強度を時系列的に検出し記憶する電波強度記憶手段と、
前記電波強度記憶手段に記憶された電波の強度を時系列的に複数回比較して前記第一の移動体と第二の移動体の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態判定手段と、
を備えた状態検出システム。
【0014】
(2)前記(1)に記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の移動体が複数あり、前記判定手段は、各第一の移動体と前記第二の移動体の間の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態検出システム。
【0015】
(3)前記(1)または(2)に記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の通信手段は、全パルス数がN個の、所定周期のパルスを有する変調信号によりASK変調した被変調波の強度が次第に大きくなる電波を間欠的に送信し、
前記電波強度記憶手段は、前記第二の電波通信手段で受信できた期間を計時する、あるいは受信できたパルス数をカウントすることにより、受信信号強度を検出する状態検出システム。
【0016】
(4)前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記状態判定手段は、時系列的なタイミングt1,t2,t3における受信信号強度をS1,S2,S3として、
信号強度が S1>S2>S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、離反と判定し、
信号強度が S1<S2<S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、接近と判定し、
信号強度S1、S2、S3の大小にかかわらず、|S1-S2|<所定のしきい値、|S2-S3|<所定のしきい値
の場合は、静止と判定する状態検出システム。
【0017】
(5)前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記状態判定手段で判定された状態が予め定めた状態になった場合に、前記第二の電波通信手段の利用者に対し通報する通報手段を備えた状態検出システム。
【0018】
(6)前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の電波通信手段と第二の電波通信手段との間の交信に際し、交信時の個体を識別するための認証コードを取り交わす状態検出システム。
【0019】
(7)前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
それぞれの電波通信手段に認証コードを付与し、同一グループ内の電波通信手段に同一グループ内の他の電波通信手段の認証コードを記憶させることにより、同一グループであることを識別させ、同種の状態検出システムが近接した位置で使用された場合の誤動作を防止する状態検出システム。
【0020】
(8)外部機器からの所定の電波を受信する電波通信手段と、
前記電波通信手段で受信した電波の強度を時系列的に検出し記憶する電波強度記憶手段と、
前記電波強度記憶手段に記憶された電波の強度を時系列的に複数回比較して前記外部機器との間の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態判定手段と、
を備えた状態検出装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間の接近、静止および離反を、送受信装置の姿勢、位置関係、周囲環境などに左右されることなく、確実に検出することができる。
【0022】
詳しくは、子機(第一の電波通信手段)を人間が所持し、子機出力をドアの自動ロック装置(第二の電波通信手段)と連動させれば、認証されたコードを有する子機を所持した人だけが自動でドアのロックの開閉ができ、セキュリティゲートにも利用することができる。子機をIDカードにすれば、現在IDカードをドアロック解除装置にかざす等の手間が省け、利便性が向上する。特に、認証コードをキーボードから打ち込むシステムを採用している場合には、認証コードを盗み見される恐れもなくなりセキュリティ性も著しく向上する。更にどの認証コードがいつ入退出したかを記録できることは言うまでもない。
【0023】
また、認知症老人が施設から勝手に出るのを防止するために、ドアに近づくとドアをロックし、ドアから離れるとロックを解除する使い方もできる。外出して欲しくない小さな子供に対しても同様な使い方が出来る。
【0024】
また、車、オートバイや自転車のロック機構に連動させ、所有者の接近によりロックを解除しかつ離反すればロックする設定にすれば、鍵のかけ忘れ等の防止になり盗難防止にも使用できる。
【0025】
また、自動ドアや自動ロック開閉装置などにおいて、本発明にかかるシステムと同種のシステムグループが近隣にない場合、待機により消費電力を低減させ人の接近により待機状態から復旧させることに利用することで、消費電力の低減に使用できる。
【0026】
また、視覚障害者に装置を携帯させ、道標、交差点、信号、障害物等への接近を警告または告知する装置にも利用できる。
【0027】
同じ装置を複数台準備(このときすべての装置がひとつのグループとなるように設定する)し、この中の1台を親機と、他の装置を子機と決め、親機を常時携帯し、置き忘れを防止したい携帯品、迷子を防止したい子供、徘徊を防止したい成人、盗難を防止したい物品等離反して欲しくない物品,人に子機を取り付けることで、これらの事態を防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例1である“接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を検出する状態検出システム”(以下「状態検出システム」という)について説明する。
【0030】
(動作原理)
図1,図2により、本実施例の動作原理を説明する。
図1、図2において、1は不図示の第一の属性を有する移動体(以下第一の移動体という)に設けられ、所定の電波を送信する送信機、2は不図示の第二の属性を有する移動体(以下第二の移動体という)に設けられ、前記所定の電波を受信する受信機である。ここで、第一の移動体と第二の移動体は、相対的に移動する物または人であり、属性とは、管理側、被管理側といった性質である。
【0031】
図1に示すように、送信機1または受信機2が移動する、あるいは送信機1および受信機2が移動し、送信機1と受信機2の距離が離れると、受信機2で受信する電波の強度が低下する。しかし、この状態では、送信機1、受信機2の姿勢の変化(アンテナの指向性、電波の偏波による変化)、環境変化(送信機1と受信機2間の電波障害物の出入りなど)による電波の強度の変化と区別し難い。
【0032】
そこで、図2に示すように、所定の時間を置いて3回送信機1からの電波を受信機2で受信し、不図示の回路でその受信信号強度を検出し、時系列的に記憶する。
【0033】
不図示のCPUにより、時系列的なタイミングt1,t2,t3における受信信号強度をS1,S2,S3として、
信号強度が S1>S2>S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、第一の移動体と第二の移動体の間隔が相対的に大きくなっている蓋然性が大きいので、“離反”と判定する。
【0034】
逆に、<信号強度が S1<S2<S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、第一の移動体と第二の移動体の間隔が相対的に小さくなっている蓋然性が大きいので、“接近”と判定する。
【0035】
S1、S2、S3の大小にかかわらず、|S1-S2|<所定のしきい値、|S2-S3|<所定のしきい値の場合は、第一の移動体と第二の移動体の間隔が相対的に変化していない蓋然性が大きいので、“静止”と判定する。この場合は、相対的な静止であり、第一の移動体と第二の移動体とが同じ方向に同じ速度で移動しているときも含まれる。
【0036】
これ以外の場合は、判定不能とする。なお、しきい値は、用途などに応じて適宜の値に設定する。
【0037】
受信強度の検出は、4回以上であってもよい。この場合、蓋然性がより大きくなるが、判定に時間がかかる。
【0038】
(システム構成)
前述の動作原理による親機と子機形式の“状態検出システム”のシステム構成を説明する。
【0039】
図4に示すように、不図示の複数の第一移動体のそれぞれに予め子機41ないし45…を設け、不図示の第二の移動体に親機40を設ける。この場合、親機、子機とも送受信機形式とし、両者の間で定期的な交信を行う。
【0040】
送受信機の回路構成としては、子機側は通常の、FSK変調(周波数偏移変調)またはPSK変調(位相偏移変調)の送受信機とし、親機側は、通常のFSK変調またはPSK変調の送信機と、受信信号強度の検出回路、記憶回路、受信強度比較回路を有するFSK変調またはPSK変調の受信機とする。
【0041】
受信信号強度の検出回路の構成を図5に示す。
図5に示すように、通常の受信信号を復調する回路と並列に、整流平滑回路51とAD変換回路52から構成される受信強度検出回路を設ける。整流平滑回路51のアナログ電圧値をAD変換回路52でデジタル値に変換しCPU53内のメモリに記憶させることで定期的交信時の信号強度を検出,記憶する。この場合、送信するデータの有無にかかわらず搬送波の信号強度(振幅)が一定となる送信形式が望ましいため、FSK変調またはPSK変調を用いると良い。
【0042】
以上の構成で、たとえば、子機41からの定期的送信信号を親機40で受信し、その信号強度Sを複数回検出,記憶し、CPU53により記憶した信号強度データを系時的に比較演算することで、アンテナの指向性、電波の偏波による信号強度の強弱にかかわらず距離(親機40と子機41の間隔)の変化だけを検出することができ、接近、静止および離反を判定できる。
【0043】
また、親機と子機のアンテナの位置関係が変化したとき、当然信号強度は変化する。この場合にはもう一回判定する信号強度データが入力されれば判定できる。2回連続して信号強度が減少すれば親機と子機が離れつつあるとすればよい。子機をぐるぐる回している場合には同じ現象が起きる可能性はあるが、そのような場面は想定していない。したがって、誤報もやむをえないケースである。また、この誤報は定期的な通信の間隔を調整することで回避できる可能性もある。
【0044】
親機で子機の接近、静止および離反が検出された場合には、その親機は利用者に検出結果を音あるいは振動、その他の何らかの手法により報知する。また、親機子機間の定期的な交信が、1回あるいは複数回できなかった場合、図3に示すように、電波妨害、電波障害の可能性があるので、親機では使用者に何らかの発報を行う。
【0045】
親機と子機双方で発報する設定としてもよい。たとえば、忘れ物防止に使用する場合に、子機を財布に、親機を携帯電話に装着すれば、子機が装着された財布を摺られたときに、親機と子機双方で発報して摺られたことを知らせることができる。
【0046】
図4に示すように、親機の他に子機を複数設定し無線通信装置群として動作させ、それぞれの子機の接近、静止および離反を検出する場合、すべての装置にグループまたは個別コードを設定し、認証を取り交わすようにするが、子機内で順番を設定し、前述の検出動作を子機の順番に従って逐次動作させ、子機同士の信号が親機で重複受信することによる誤動作を防ぐようにすることもできる。
【0047】
無線LANのように回線(無線周波数)を他の子機に占有されている場合には、待機し占有が解除されたのを確認して通信を行わせても良い。
【0048】
同一周波数または周波数帯に装置グループの交信に使う信号強度以上の強い信号が存在することにより、装置間の円滑な交信が妨げられる状況にある場合、親機は送信後、子機からの返信信号の受信ができなくなる。親機が送信しても子機からの返信が無い場合には、親機は子機が交信できないと判断し、警告を発するか、予め定められた処置を行わせても良い。
【0049】
近隣に同じタイプの装置の別グループがあり、親機,子機交信のタイミングと同一タイミングで別グループからの交信信号が同グループからの信号を妨害した場合には、登録してあるグループコードまたは子機個別コードが異なることより、親機は子機からの交信が無かったものと判断し、警告を発するか予め定められた処置を行わせてもよい。
【0050】
無線通信装置群のそれぞれの無線通信装置には、装置ごとに認証用のコードを設定し全部の装置で同一装置群のそれぞれの装置に設定されたコードすべてを記憶させておくことで、グループを分け、ある装置群近辺に同じ種類の装置群が接近しても誤動作が生じないようにしておいても良い。
【0051】
定期的交信において認証コードを含む信号を親機から送信し、これを受信した子機は待機状態から復帰するとともに、親機で受信信号強度の計測を行い、この信号強度を記憶する。そして、次の交信タイミングで同様の動作を繰り返すことで消費電力を減少させてもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施例によれば、相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との接近、静止および離反を、送受信装置の姿勢、位置関係、周囲環境などに左右されることなく、確実に検出することができる。
【実施例2】
【0053】
実施例2である“状態検出システム”について説明する。
本実施例は、実施例1とは異なる手法で受信信号強度を検出する例である。受信信号強度の検出に係る構成以外は、実施例1と同じなので、その説明を援用する。
【0054】
図6は、本実施例における受信信号強度の検出手法を示す図である。(a)に示すような、全パルス数がN個の、所定周期のパルスを有する変調信号により搬送波をASK変調(振幅偏移変調)する。そして、(b)に示すように、送信機の送信信号である被変調の強度が、所定の判定期間T中、次第に大きくなるように制御する。このように変調した、期間Tの被変調信号を子機から間欠的に送信する。親機の受信信号は、主として親機と子機の間隔により変化する。よって、受信信号の強度に応じて、(c)に示すように、親機の受信期間がTからT’と短くなり、復調後のパルス数は(d)に示すように、n個(n<N)に減る。
【0055】
そこで、受信できた期間T’を計時する、あるいは受信パルス数をカウントすることにより、受信信号強度を間接的に検出することができる。受信信号の強度が大きすぎて受信信号強度が検出困難な場合は、適宜の手法で受信感度を低減する、あるいは送信信号強度を低減し、受信パルス数の増減が正確に検出できるようにする。
【0056】
詳しくは、図6に示す被変調波を得るため、子機側の送信機を図7のように構成する。すなわち、送信機の変調回路の終段増幅回路を、CPU等によりゲインがコントロールできるように構成する。また定期的交信中に、信号強度検出を行う期間Tを設け、この期間Tにおいて、送信する搬送波の強度をゼロから最大まで連続的に変化させる。さらにこの期間Tに、変調信号としてN個のパルスを入力し、送信強度の変調をかけ送信を行う。この期間Tに送信された信号は、親機の受信機側では距離あるいはアンテナの指向性等の問題で、受信機の最小受信強度になった時点からの期間T’(T>T’)で受信が可能となる。従って復調後の信号にはN個のパルスよりも少ないn個(N>n)のパルスしか復調されない。
【0057】
すなわち、信号強度が強ければカウントできるパルス数は多くなり、弱ければカウントできるパルス数が少なくなる。このパルス数により、距離変化検出のための演算を行う。また、N個のパルス数を増やすことで、距離変化の精度向上も可能となる。さらに、距離に対応した信号変化がある一定の関数(たとえば二次関数)で変化していれば、ゲインコントロールをこの関数に対応させることで、距離変化の精度を増すことも可能である。この例は、主に送信データにより信号強度が変化するASK変調に用いると良いが、送受信の時間が別途必要となるため消費電力の増大が問題となる。
【0058】
そこで、実施例1の受信信号強度検出手法と実施例2の受信信号強度検出手法を供給電力の環境に適宜合致させて使用すると良い。
【0059】
本実施例の信号強度検出手法を用いることで、精密なレベル調整の必要が無くなり、出荷時におけるレベル調整の工数を省くことが可能となる。
【0060】
また、無線LAN等において、検出した信号強度データをもとに送信機の出力を制御して消費電力を抑えることにも応用できる。
【0061】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な構成で、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1の動作原理を説明する図
【図2】実施例1の動作原理を説明する図
【図3】子機から親機への交信がある時間以上できなかった場合の、親機の発報動作の説明図
【図4】子機が複数の場合の説明図
【図5】受信信号強度の検出回路の構成を示すブロック図
【図6】実施例2における受信強度検出の手法を示す図
【図7】実施例2における送信機と受信機の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0063】
1 送信機
2 受信機
51 整流平滑回路
53 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動する第一の移動体と第二の移動体との間における、接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を検出する状態検出システムであって、
前記第一の移動体に設けられ、所要の電波を送信する第一の電波通信手段と、
前記第二の移動体に設けられ、前記第一の電波通信手段の送信電波を受信する第二の電波通信手段と、
前記第二の電波通信手段で受信した電波の強度を時系列的に検出し記憶する電波強度記憶手段と、
前記電波強度記憶手段に記憶された電波の強度を時系列的に複数回比較して前記第一の移動体と第二の移動体の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態判定手段と、
を備えたことを特徴とする状態検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の移動体が複数あり、前記判定手段は、各第一の移動体と前記第二の移動体の間の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定することを特徴とする状態検出システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の通信手段は、全パルス数がN個の、所定周期のパルスを有する変調信号によりASK変調した被変調波の強度が次第に大きくなる電波を間欠的に送信し、
前記電波強度記憶手段は、前記第二の電波通信手段で受信できた期間を計時する、あるいは受信できたパルス数をカウントすることにより、受信信号強度を検出することを特徴とする状態検出システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記状態判定手段は、時系列的なタイミングt1,t2,t3における受信信号強度をS1,S2,S3として、
信号強度が S1>S2>S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、離反と判定し、
信号強度が S1<S2<S3、|S1-S2|>所定のしきい値、|S2-S3|>所定のしきい値
の場合は、接近と判定し、
信号強度S1、S2、S3の大小にかかわらず、|S1-S2|<所定のしきい値、|S2-S3|<所定のしきい値
の場合は、静止と判定することを特徴とする状態検出システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記状態判定手段で判定された状態が予め定めた状態になった場合に、前記第二の電波通信手段の利用者に対し通報する通報手段を備えたことを特徴とする状態検出システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
前記第一の電波通信手段と第二の電波通信手段との間の交信に際し、交信時の個体を識別するための認証コードを取り交わすことを特徴とする状態検出システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の状態検出システムにおいて、
それぞれの電波通信手段に認証コードを付与し、同一グループ内の電波通信手段に同一グループ内の他の電波通信手段の認証コードを記憶させることにより、同一グループであることを識別させ、同種の状態検出システムが近接した位置で使用された場合の誤動作を防止することを特徴とする状態検出システム。
【請求項8】
外部機器からの所定の電波を受信する電波通信手段と、
前記電波通信手段で受信した電波の強度を時系列的に検出し記憶する電波強度記憶手段と、
前記電波強度記憶手段に記憶された電波の強度を時系列的に複数回比較して前記外部機器との間の接近、静止、離反の少なくとも1つの状態を判定する状態判定手段と、
を備えたことを特徴とする状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−47064(P2007−47064A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233080(P2005−233080)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504417641)マイクロプレシジョン株式会社 (18)
【Fターム(参考)】