説明

状態検出装置

【課題】被測定対象物のレーザスペックル画像を得る装置において、被測定対象物の材質などに起因するスペックル画像の画質低下を可及的に抑制する。
【解決手段】被測定対象物(20)表面の観察領域(21)に向けてコヒーレント光を投光する投光部(10)と、被測定対象物表面の観察領域で拡散反射した上記コヒーレント光を受光する受光部(30)と、被測定対象物表面から受光部以外の方向に伝播するコヒーレント光を被測定対象物表面の観察領域に戻す反射部(41)と、受光部における受光状態に基づいて被測定対象物の状態を検出する検知部(50)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象物の表面にコヒーレント光を照射して対象物の状態を検出する状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの光を被測定対象物に向けて照射し、対象物の表面あるいは内部構造において拡散反射された拡散反射光を受光(撮像)し、受光画像に基づいて当該表面あるいは内部構造の情報を得る物体の状態検査装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の異物検査装置は、被測定対象物表面にコヒーレント光を投光し、当該被測定対象物表面からの拡散反射波によるフーリエ変換パターン(干渉縞模様)をCCDカメラによって画像信号に変換する。そして、被測定対象物表面の異物の有無によって、フーリエ変換パターンに変化が生じることを利用して異常を検出する。
また、特許文献2に記載の変位検出装置は、ワーク面に対して略垂直にレーザ光を照射する同軸落射照明によってスペックル画像(干渉縞模様)を得ることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−45862号公報
【特許文献2】特開2006−300763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、被測定対象物の表面にコヒーレント光を照射し、当該表面からの拡散反射光によるスペックル画像をCCDカメラによって観察することにより対象物の状態を検出することができる。これは、被測定対象物表面の凹凸パターン等と干渉縞模様との間に一定の関係があることによる。
【0006】
しかしながら、被測定対象物の状態によってCCDカメラに拡散反射光量が十分に得られない場合が生じ得る。例えば、被測定対象物が透明体のような場合には透過光量が大きいため拡散反射光量は減少する。このような場合にはCCDカメラに形成されるスペックル画像の明瞭さ(画像信号のS/N)は低下する。また、被測定対象物表面が鏡面加工されて投光の大部分を正反射する場合にも拡散反射光量は減少する。
【0007】
このような場合、コヒーレント光の光源(レーザ光源)を増設したり、コヒーレント光の光源自体の光量を増大することによってCCDカメラの受光光量を増加させることが考えられる。また、CCDカメラの露光時間を増やしてカメラの感度(蓄積光量)を上げることも考えられる。
しかしながら、コヒーレント光の光源の増設は設置スペースを要し、装置構成が複雑化して運用を煩雑にする。また、コヒーレント光の光源をよりパワーの大きいものに変更することは装置(レーザ装置)の大型化、レーザ出力のクラスによる法的規制、コストの増大等を招来する。また、CCDカメラの露光時間を増加した場合には、被測定対象物に対する計測速度が低下して状態検出装置の応用範囲(被測定対象物の移動速度検出計、被測定対象物の移動量・移動方向検出器など)が狭くなる。
【0008】
よって、本発明は被測定対象物の材質などに起因するスペックル画像の画質の低下を可及的に抑制し得るようにした状態検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の状態検出装置の一態様は、被測定対象物表面の観察領域に向けてコヒーレント光を投光する投光部と、上記被測定対象物表面の観察領域で拡散反射した上記コヒーレント光を受光する受光部と、上記被測定対象物表面から上記受光部以外の方向に伝播する上記コヒーレント光を上記被測定対象物表面の観察領域に戻す反射部と、上記受光部における受光状態に基づいて上記被測定対象物の状態を検出する検知部と、を備える。
【0010】
かかる構成によれば、反射部によって被測定対象物表面から受光部以外の方向に伝播するコヒーレント光を再び観察領域に集めて投光光量を増大させるので受光部における拡散反射光の受光光量が増大する。それにより、被測定対象物が透明体であるような反射光量の少ないものであっても受光部において所要の画像を形成可能となる。また、被測定対象物の表面が研磨加工などによって鏡面体に近いものとなっている場合にも受光部における画像のコントラストが低下するが、観察領域から受光部に到達する拡散反射光の光量を増大させることによって所要の画像を形成することが可能となる。
【0011】
好ましくは、上記反射部の位置は、上記被測定対象物表面の観察領域で正反射した上記コヒーレント光が伝播する方向及び上記被測定対象物表面の観察領域から上記コヒーレント光が当該被測定対象物を透過して伝播する方向のうち少なくともいずれかの方向に存在する。それにより、比較的に光量の大きい正反射光及び透過光を観察領域の投光に再度利用することができる。
【0012】
好ましくは、上記投光部はレーザ光源であり、上記受光部は撮像装置であり、上記検出部は上記撮像装置で撮影されたスペックル像を読み取るものである。それにより、被測定対象物の観察領域の表面状体に対応したレーザスペックル像が得られる。このレーザスペックル画像を追跡すると、被測定対象物の移動方向、移動量などを判別することができる。また、観察領域における標準状態のレーザスペックル像と現在のレーザスペックル像とを比べることによって異物の存在などを判別することができる。
【0013】
また、本発明の状態検出装置の一態様は、被測定対象物表面の観察領域に対して略垂直にコヒーレント光を投光する投光部と、上記被測定対象物表面の観察領域で拡散反射した上記コヒーレント光を受光する受光部と、上記投光部が投射するコヒーレント光の光軸上に存在し、上記被測定対象物表面の観察領域で正反射した上記コヒーレント光を当該観察領域に戻す反射部と、上記受光部における受光状態に基づいて上記被測定対象物の状態を検出する検知部と、を備える。
【0014】
かかる構成とすることによって、投光の光学系あるいは拡散反射光の光学系の光軸と同軸上に反射部を配置することが可能となり、装置構成を小型化することが可能となる。
【0015】
好ましくは、上記反射部はミラーであり、当該ミラーの幅は上記観察領域から拡散反射されるコヒーレント光の幅よりも狭く、上記観察領域から正反射するコヒーレント光の幅よりも大きい、それにより、正反射光による投光量を増大しつつ拡散反射項の減少を可及的に回避することが可能となる。
【0016】
好ましくは、上記ミラーはミラー凸レンズ又はミラー凹レンズである。それにより、平面反射ミラーの場合に比べて光束の乱れ(拡散)を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の状態検出装置によれば、受光部以外の部分に拡散する光(画像形成に使用されない光)を投光として活用するのでコヒーレント光の光源自体のパワーを増大させることなく受光部における受光光量を増加させることが可能となる。これは、被測定対象物が透明である場合に好都合である。また、非透明体である場合には、投光部の投光の光量を下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例を説明する説明図である。
【図2】本発明の第2の実施例を説明する説明図である。
【図3】本発明の第3の実施例を説明する説明図である。
【図4】本発明の第4の実施例を説明する説明図である。
【図5】本発明の第5の実施例を説明する説明図である。
【図6】本発明の第6の実施例を説明する説明図である。
【図7】本発明の第7の実施例を説明する説明図である。
【図8】基本構成例を説明する説明図である。
【図9】本発明の第1の実施例をより具体的な構成で説明する説明図である。
【図10】本発明の第8の実施例を説明する説明図である。
【図11】本発明の第9の実施例を説明する説明図である。
【図12】本発明の第10の実施例を説明する説明図である。
【図13】本発明の第11の実施例を説明する説明図である。
【図14】本発明の第12の実施例を説明する説明図である。
【図15】本発明の第13の実施例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。各図において対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
本発明においては、被測定対象物表面の観察領域に向けてコヒーレント光であるレーザ光を投光する投光部と、被測定対象物表面の観察領域で拡散反射したレーザ光によるレーザスペックル画像(干渉縞模様)を受光する受光部と、被測定対象物表面から受光部以外の方向に伝播するレーザ光を被測定対象物表面に戻す反射部と、を備える。そして、レーザスペックル画像の形成に寄与しない観察領域からの正反射光や透過光を観察領域の照明として利用し、受光部への拡散反射光量を増大させ、スペックル画像の画質を向上させる。
【0020】
(基本構成例)
まず、本発明の理解を容易にするために基本構成例について説明する。図8は、スペックル画像を得る装置を説明する説明図である。
同図に示すように、投光部10から投光11が被測定対象物20の表面に設定された観察領域21に照射される。被測定対象物20の観察領域21の上方であって当該観察領域21の平面に対して略垂直な方向に受光部30としてのCCDカメラ(30)が配置されている。
【0021】
投光部10は、例えば各種のレーザ光源であり、投光11はレーザ光(コヒーレント光)である。投光11の一部は観察領域で正反射して正反射光12となる。ここで、正反射は観察領域21の法線に対する入射光の入射角度と反射光の反射角度が等しい反射を意味する。また、投光11の一部は観察領域で拡散し反射する。この拡散反射光の一部は拡散反射光14としてCCDカメラ30に入射する。拡散反射光14は観察領域21の表面の微小な凹凸からの反射成分の合成によってレーザスペックル画像(干渉縞模様)を形成する。拡散反射光14は観察領域21の表面の微小な凹凸パターンによって変調されたものとなる。CCDカメラ30は光学的なレーザスペックル画像を画像信号に変換して後述の画像処理装置50(図7参照)に供給する。
【0022】
画像処理装置50は、例えば、ある時点で読み取った観察領域21のスペックル画像を目印として追跡することにより被測定対象物20の相対的な移動を検出する。
【0023】
(基本構成における不具合)
このように構成される基本構成例では、被測定対象物20が透明フィルムなどの透明体である場合、投光11の多くが被測定対象物20を突き抜ける透過光13となって被測定対象物20の下方に伝播し、CCDカメラ30に入射する拡散光成14の光量が大きく減少する。このため、CCDカメラ30で撮像されるスペックル画像が不鮮明になったり、スペックル画像が形成されなくなるなどの不具合が生じ得る。
【0024】
(実施例1)
図1は本発明の第一の実施例を示している。この実施例では透過光を投光として再度利用することによってCCDカメラにおける入射光量(スペックル画像の光量)を増加させている。
実施例1においても図8の基本構成を備えている。すなわち、投光部10から投光11が透明体である被測定対象物20の表面に設定された観察領域21に照射される。ここで「透明体である被測定対象物20」とは被測定対象物20が投光11の一部を通過させるものであることを意味する。この被測定対象物20の観察領域21の上方であって観察領域21の平面に対して略垂直な方向にCCDカメラ(後述)などが受光部30として配置されている。受光部30としてはリニアセンサなどであっても良い。この場合には、投光11のスポットに対して被測定対象物20が相対的に移動するように構成されて2次元画像が形成される。
【0025】
既述のように投光部10は、例えばレーザ光源である。投光11はレーザ光(コヒーレント光)である。被測定対象物20が透明体である場合、投光11の多くが被測定対象物20を通過する透過光13aとなる。投光11の一部は観察領域21で正反射して正反射光12となる。また、投光11の一部は観察領域21で拡散し反射する。この拡散反射光の一部は拡散反射光14としてCCDカメラ30に入射する。CCDカメラ30はスペックル画像を画像信号に変換する。
【0026】
本実施例では、図8の構成において、「投光部10の投光11の光量>透過光13の光量>正反射光12の光量>拡散光14の光量」になっていることに着目する。実施例1では、このうち透過光13を再利用(活用)する。このため被測定対象物20の裏面側に透過光13aを被測定対象物20の表面の観察領域21に戻す反射部41が設けられている。
【0027】
反射部41は、後述のように、例えば、透過光の反射ミラー41によって構成される。ミラー41は入射する透過光13aの伝播方向に対応して設けられる。ミラー41は透過光13aの伝播方向が鏡面の法線方向となるように設置され、透過光13aを反射して反射透過光13bを形成する。ミラー41は複数のミラーによって透過光13aを回帰(再帰)反射させるもの(回帰あるいは再帰回帰反射ミラー)であっても良い。以下に述べる他の実施例においても同様である。
【0028】
このように実施例1では、反射透過光13bは被測定対象物20の裏面側から表面の観察領域21を照射する投光として作用する。この反射透過光13bが加わることによって拡散反射光14の光量が増大し、より明瞭なスペックル画像が形成される。なお、反射透過光13bが加わることによって光の干渉が変化してスペックル画像が変わるが、新たなスペックル画像を対象とする画像処理を行うことで被測定対象物20の移動速度や相対的位置変化などを検出することができる。
【0029】
図9は、上述した実施例1の構成(図1)をより具体的に示したものである。後述の図2乃至図6の実施例も同様に表現することができる。
投光部10は、レーザ光光源102、レーザ光を所定幅の平行光の光束とするレンズ104を含んで構成されている。平行光光束は投光11として透明体である被測定対象物20の表面に設定された観察領域21に照射される。投光11の照射範囲(光スポット)を観察領域21とすることができる。また、図示しないアパーチャ(開口部)を設けて投光11を通過させ、投光11の光スポットの幅(外形)を制限しても良い。受光部30は、例えば、CCDカメラによって構成され、撮像素子(CCD)302と拡大(投影)レンズ304を備えている。レンズ304は、その光軸304aが被測定対象物20の観察領域21に対して略垂直となるように配置されている。
【0030】
投光11の一部は透明な被測定対象物20を通過して透過光13となり、反射ミラー41で反射されて被測定対象物20の観察領域21に戻る。既述のように、透過光13はミラー41に入射する透過光13aとミラー41で反射される反射透過光13bとで構成される。また、投光11の一部は観察領域21で正反射して正反射光12となる。また、投光11の一部は観察領域21で拡散し反射する。この拡散反射光の一部はレンズ304を通過し拡散反射光14として撮像素子302に入射する。撮像素子302は拡散反射光14により形成されるレーザスペックル画像を画像信号に変換し、画像処理回路50(図4参照)に供給する。
【0031】
(実施例2)
図2は、本発明の第二の実施例を示している。同図において、図1と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
この実施例においては、「投光部10の投光11の光量>透過光13の光量>正反射光12の光量>拡散光14の光量」に着目し、実施例1の透過光13に加えて正反射光12も投光として利用する。このため、図2に示すように投光部10及び受光部30の構成に加えて、透明体である被測定対象物20の裏面側に透過光13aを反射させる反射部(41)としての透過光の反射ミラー41が配置される。また、被測定対象物20の表側に正反射光12aを反射させる反射部(42)としての正反射光の反射ミラー42が配置される。ミラー42はその鏡面の法線が正反射光12aの伝播方向となるように配置される。
【0032】
ミラー41は透過光13aを反射させて反射透過光13bを形成し、これを観察領域21の投光として戻す。また、ミラー42は正反射光12aを反射させて逆反射光13bを形成し、これを観察領域21の投光として戻す。ミラー42は既述回帰反射ミラーで構成しても良い。以下に述べる他の実施例においても同様である。実施例2の他の構成は実施例1と同様である。
【0033】
この実施例2の構成によれば、ロスとなっていた透過光の光量及び正反射光の光量の2つが観察領域21の投光として利用される。この結果、被測定対象物20の観察領域21を照射する投光の光量が増大し、CCDカメラ30に入射する拡散反射光14の光量が増大し、より鮮明なスペックル画像を得ることが可能となる。
【0034】
(実施例3)
図3は、本発明の第三の実施例を示している。この実施例3では、実施例1における投光部10と反射部41の位置を入れ替えている。すなわち、投光部10を透明体である被測定対象物20の裏面側に配置し、反射部41を被測定対象物20の表面側に配置している。他の構成は実施例1と同様である。
このような被測定対象物20の裏面側から投光11を付与する構成としたものにおいて、透過光13aを拡散反射光14の光量増大に利用することができる。
【0035】
(実施例4)
図4は、本発明の第四の実施例を示している。この実施例4では、実施例2における投光部10と反射部41の位置を入れ替えている。また、投光部10の透明な被測定対象物20の裏面側への配置に対応して正反射光を反射する反射ミラー42を裏面側に配置している。他の構成は実施例2と同様である。
このような被測定対象物20の裏面側から投光11を付与する構成としたものにおいて、透過光13a及び反射光12aを拡散反射光14の光量増大に利用することができる。
【0036】
(実施例5)
図5は、本発明の第五の実施例を示している。この実施例5では、透明体である被測定対象物20の裏面側に投光部30とミラー42とを配置している。投光部10による投光11と正反射光12aによって観察領域21を照射し、観察領域21で形成される拡散反射光14によるスペックル画像をCCDカメラ30によって画像信号に変換している。
このような構成においても、投光11に正反射光12aが加わるので拡散反射光14の光量が増大する。
【0037】
(実施例6)
図6は、本発明の第六の実施例を示している。この実施例6では、被測定対象物20は透明体又は表面が鏡面に近いものである。鏡面に近いものとは、例えば、表面が研磨加工された金属材料や表面に金属が蒸着された樹脂フィルムなどである。
この実施例では、被測定対象物20の表面側に投光部10とミラー42とを配置している。投光部10による投光11と正反射光12aによって観察領域21を照射し、観察領域21で形成される拡散反射光14によるスペックル画像をCCDカメラ30によって画像信号に変換している。
このような構成においても、投光11に正反射光12aが加わるので拡散反射光14の光量を増大させ、より鮮明なスペックル画像を得ることが可能である。
【0038】
(実施例7)
図7は、上述した各実施例のCCDカメラ30の画像信号を信号処理して種々の判断を行う検出部として機能する画像処理装置50を説明する説明図である。画像処理装置50は専用に作成された制御回路や、市販されているマイクロコンピュータシステム(またはこれに対し、適宜必要なキャプチャ機能などを付加したシステム)などによって構成される。画像処理装置50は、例えば、ある時点で読み取った被測定対象物20の観察領域21のスペックル画像を参照スペックル画像として記憶する。被測定対象物20が微小移動するときに現在のスペックル画像を読み取り、参照スペックル画像と現在のスペックル画像とを比較してマッチングするパターンの変位に基づいて被測定対象物20の移動量や移動方向を検出する。
【0039】
(同軸落射照明)
次に、状態検出装置の投光部を同軸落射照明により構成する場合について説明する。上述した実施例1乃至6では、被測定対象物20の観察領域21に対して斜めに投光11を照射している。この場合、被測定対象物20が移動などに伴って上下方向に変位すると、投光11の光スポットによって照射される観察領域21の外縁が水平方向に移動し、スペックル画像が変化することが考えられる。これは画像処理において誤検出の原因となり得る。そこで、上述した特開2006−300763号公報に記載の発明は、被測定対象物を観察するCCDカメラの光軸方向から投光を観察領域に略垂直に付与する同軸落射照明による照明光学系を提案している。このような同軸落射照明を採用した状態検出装置にも本発明を適用することができる。
【0040】
(実施例8)
図10は、本発明の第8の実施例を示している。この実施例8では、状態検出装置の照明光学系に同軸落射照明を採用し、この同軸落射照明の光学系に反射部を配置してスペックル画像を形成している。
図10(A)において、投光部10は被測定対象物20の表面の観察領域21に対して略垂直に投光(レーザ光)11を投光する。受光部30は観察領域21に対して略垂直な方向に配置され、観察領域21で拡散反射したレーザ光を受光する。受光部30は所定の画像処理を行う検知部(図7参照)に接続され、被測定対象物の状態の判別が行われる。
【0041】
投光部10は、レーザ光を下方に出射するレーザ光源102と、出射されたレーザ光を平行光線束の投光11にするコリメートレンズ104と、投光11の向きを横方向に変える反射ミラー106と、横方向の投光11の向きを下方に変えて観察領域21を略垂直方向から照射させるハーフミラー108と、を含む。
【0042】
受光部30は、例えば、CCDカメラによって構成され、スペックル画像を画像信号に変換する撮像素子(CCD)302と、撮像素子302に光学像を形成するレンズ304を含む。投光11は被測定対象物20の観察領域21の表面の微小凹凸で拡散反射する。拡散反射光の一部はハーフミラー108、レンズ304を通過して撮像素子302に入射し、レーザスペックル画像を形成する。
【0043】
撮像素子302の光軸上であってレンズ304と撮像素子302の間に反射部としてのミラー凸レンズ402が配置されている。ミラー凸レンズ402は観察領域21で正反射されてハーフミラー108及びレンズ304を通過した正反射光12を観察領域21に戻す。正反射光12は平行光線束であるので回折画像(スペックル画像)の形成には寄与しない。ここで、ミラーレンズ402の幅は、例えば、ミラーレンズ402の表面を照射する正反射光12のスポット幅よりも大きく、観察領域21を照射する平行光線束11の幅よりも狭く設定される。それにより、ミラーレンズ402の存在がスペックル画像の形成に可及的に影響しないようにする。
【0044】
なお、図10(B)に示すように、反射部402を平面ミラーではなくミラー凸レンズ(又は後述のようにミラー凹レンズ)とするのは、レンズ304を通過した正反射の光束は平坦なミラー面に対して斜めに入射するので元の方向に戻らなくなるからである。
ミラーレンズ402はスペックル画像の形成に寄与しない正反射成分12を観察領域21に戻して同領域の照明光として利用することによりスペックル画像の光量が増加する。それにより、透明体や鏡面体の被測定対象物のスペックル画像をより鮮明にすることが可能となる。
【0045】
(実施例9)
図11は、本発明の第九の実施例を示している。図11において図10(実施例8)と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
実施例9では、投光部10のレーザ光源102をハーフミラー108の側方に配置している。ハーフミラー108の側方からレーザ光を照射する構成とすることによってミラー106を省略している。他の構成は実施例8(図10)と同様であるので説明を省略する。
【0046】
かかる構成においてもミラーレンズ402がスペックル画像の形成に寄与しない正反射光12を観察領域21に戻して同領域の照明光とする。それによりスペックル画像の光量が増加し、透明体や鏡面体の被測定対象物20のスペックル画像をより鮮明にすることが可能となる。
【0047】
(実施例10)
図12は、本発明の実施例10を示している。図12において図10(実施例8)と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
この実施例では、ハーフミラー108をレンズ304の上方に配置している。このため、全反射ミラー106とハーフミラー108との間にリレーレンズ110を設けてレンズ304から被測定対象物20の観察領域21に対して略垂直に投光11が入射するようになされている。また、反射部としてミラー凹レンズ404を使用している。ミラー凹レンズ404はレンズ304の光軸上であってハーフミラー108と撮像素子302の間に配置されている。他の構成は図9と同様である。
【0048】
この構成では、投光11は観察領域21の表面の微小凹凸で拡散反射する。拡散反射光14の一部はレンズ304、ハーフミラー108を通過して撮像素子304に入射し、レーザスペックル画像を形成する。また、投光11の一部は観察領域21の表面で正反射してレンズ304の光軸に沿って直進し、レンズ304、ハーフミラー108を通過しミラー凹レンズ404に入射する(0次光)。この0次光成分は1次光、2次光などと比べて比較的に光量が大きい。ミラー凹レンズ404はこの光軸に沿った成分(0次光)を観察領域21に戻して照明光として利用する。0次光成分は回折画像の形成には寄与しないのでミラー凹レンズ404を光軸上に配置したことによるスペックル画像への影響は少ない。ここで、ミラー凹レンズ404の幅は、例えば、ミラー凹レンズ404の表面を照射する正反射光12のスポット幅よりも大きく、観察領域21を照射する平行光線束11の幅よりも狭く設定される。それにより、ミラー凹レンズ404の存在がスペックル画像の形成に可及的に影響しないようにする。
【0049】
かかる構成においてもミラーレンズ404がスペックル画像の形成に寄与しない正反射光12を観察領域21に戻して同領域の照明光とする。それによりスペックル画像の光量が増加し、透明体や鏡面体の被測定対象物20のスペックル画像をより鮮明にすることが可能となる。
【0050】
(実施例11)
図13は、本発明の実施例11を示している。図13において図12(実施例10)と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
実施例11では、投光部10のレーザ光源102をハーフミラー108の側方に配置している。レーザ光源102から出射したレーザ光はリレーレンズ112によってハーフミラーに108に導出され、レンズ304を通過して投光11として観察領域21に入射する。ハーフミラー108の側方からレーザ光を照射する構成とすることによってミラー106を省略している。他の構成は実施例10(図12)と同様であるので説明を省略する。
【0051】
かかる構成においてもミラーレンズ402がスペックル画像の形成に寄与しない正反射光12(0次光)を観察領域21に戻して同領域の照明光とする。それによりスペックル画像の光量が増加し、透明体や鏡面体の被測定対象物20のスペックル画像をより鮮明にすることが可能となる。
【0052】
(実施例12)
図14は、本発明の実施例12を示している。図14において図12(実施例10)と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
実施例12では、図12に示される撮像素子302の位置に反射ミラー306を配置し、撮像素子302をハーフミラー108の右側方に配置している。反射ミラー306を設けて拡散反射光の光路14を折り返し、拡散反射光をハーフミラー108、撮像素子302と伝播させることによって拡散反射光の光学的距離を短くし、装置構成の小型化を図っている。
【0053】
(実施例13)
図15は、本発明の実施例13を示している。図15において図13(実施例11)と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
実施例14では、投光部10のレーザ光源102をハーフミラー108の側方に配置している。また、実施例12と同様に、図13に示される撮像素子302の位置に反射ミラー306を配置し、撮像素子302をハーフミラー108の右側方に配置している。反射ミラー306を設けて拡散反射光の光路14を折り返し、拡散反射光をハーフミラー108、撮像素子302へと伝播させることによって拡散反射光の光学的距離を実質的に短くし、装置構成の小型化を図っている。
【0054】
(実施例の効果)
上述した本発明の各実施例は、投光11に加えて透過光13や正反射光12をも被測定対象物20の観察領域21の照明に活用するので、被測定対象物20が透明な材料であって投光11が突き抜けてしまい、撮像素子302に入射する拡散反射光14の光量が減少する場合や、被測定対象物20が鏡面に近い状態であって反射光量が大きくて撮像素子302に入射する拡散反射光14の光量が減少する場合などにも照明光不足を回避してレーザスペックル画像を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、レーザスペックル画像の検出部や状態検出装置として用いて好適であり、被測定対象物の移動距離、移動方向、移動速度、パターンの検出などに使用して好都合である。
【符号の説明】
【0056】
10 投光部(レーザ光源)、11 投光、12,12a,12b 正反射光、13,13a,13b 透過光、14 拡散反射光、20 被測定対象物、21 観察領域、30 受光器、302 撮像素子(CCDカメラ)、41,42 反射部(反射ミラー)、50 画像処理装置、102 撮像素子、104 コリメートレンズ、110,112 リレーレンズ、304 拡大レンズ、106,108,306 ミラー、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象物表面の観察領域に向けてコヒーレント光を投光する投光部と、
前記被測定対象物表面の観察領域で拡散反射した前記コヒーレント光を受光する受光部と、
前記被測定対象物表面から前記受光部以外の方向に伝播する前記コヒーレント光を前記被測定対象物表面の観察領域に戻す反射部と、
前記受光部における受光状態に基づいて前記被測定対象物の状態を検出する検知部と、
を備える状態検出装置。
【請求項2】
前記反射部の位置は、前記被測定対象物表面の観察領域で正反射した前記コヒーレント光が伝播する方向及び前記被測定対象物表面の観察領域から前記コヒーレント光が当該被測定対象物を透過して伝播する方向のうち少なくともいずれかの方向に存在する、請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項3】
前記投光部はレーザ光源であり、前記受光部は撮像装置であり、前記検出部は前記撮像装置で撮影されたスペックル像を読み取るものである、請求項1又は2に記載の状態検出装置。
【請求項4】
被測定対象物表面の観察領域に対して略垂直にコヒーレント光を投光する投光部と、
前記被測定対象物表面の観察領域で拡散反射した前記コヒーレント光を受光する受光部と、
前記投光部が投射するコヒーレント光の光軸上に存在し、前記被測定対象物表面の観察領域で正反射した前記コヒーレント光を当該観察領域に戻す反射部と、
前記受光部における受光状態に基づいて前記被測定対象物の状態を検出する検知部と、
を備える状態検出装置。
【請求項5】
前記反射部はミラーであり、当該ミラーの幅は前記観察領域から拡散反射されるコヒーレント光の幅よりも狭く、前記観察領域から正反射するコヒーレント光の幅よりも大きい、請求項4に記載の状態検出装置。
【請求項6】
前記ミラーは、ミラー凸レンズ又はミラー凹レンズである、請求項5に記載の状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−83482(P2013−83482A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222113(P2011−222113)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】