説明

狂犬病ウイルス中和抗体価判定具および狂犬病ウイルス中和抗体価の測定方法

【課題】ヒトや動物の体液、特に血清に含まれる狂犬病ウイルスに対する中和抗体を検出するための判定具、および当該中和抗体を検出するための方法を提供する。
【解決手段】上記判定具として、毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた狂犬病ウイルス中和抗体判定具であって、当該吸液片が(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2) 狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部、好ましくは更にコントロール表示部を、間隔をおいて備えた判定部、
(a) 狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を固定したテスト結果表示部、
(b) 標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識−抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部、及び
(4) 上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部、を備えた判定具を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトや動物の体液、特に血清に含まれる狂犬病ウイルスに対する中和抗体価を判定するための材料(判定具および判定キット)、および当該中和抗体価を測定し判断するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、ヒトまたは動物の血清中の上記中和抗体の存在を、感染性ウイルスや細胞培養施設を用いることなく、迅速にかつ簡便に定性的に検出し判定するための方法、ならびに当該方法に好適に使用される材料(判定具)に関する。
【背景技術】
【0003】
狂犬病は、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae family)、リッサウイルス属(Lyssavirus)の一種である狂犬病ウイルスによって引き起こされる神経疾患(脳炎)であり、狂犬病感染動物に咬まれたり、傷口が狂犬病感染動物の唾液で汚染されたりすることにより感染する。一度臨床的症状が現れたらほぼ100%の割合で死に至る臨床的特徴を有している。
【0004】
このため、ワクチンの普及、狂犬病免疫グロブリンの使用にも関わらず、世界中で年間約55000人が死亡している。狂犬病感染予防の点では、狂犬病に対する中和抗体価が唯一狂犬病に対する免疫獲得の目安となるが、年間10億人以上いると言われているワクチン接種者の多くに対して十分な中和抗体価を獲得しているかどうか、確認されていないのが現状である。
【0005】
狂犬病ウイルスは、特徴として、弾丸型の、平均で75×180ナノメートルの、エンベロープのある粒子である。ビリオンは、一本鎖ネガティブセンスRNAゲノム及び5種類の構造タンパク質(核タンパク質(N)分子、リンタンパク質(NS)、ポリメラーゼ(L)、マトリクスタンパク質(M)及びウイルス性糖タンパク質(G))で構成される。なかでも糖タンパク質(G)(以下、「Gタンパク質」という)は、ウイルスを中和する抗体のために重要な結合部位である(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
狂犬病ウイルスによる感染は、特異的な臨床症状が現れるまでの潜伏期間が約1〜3ヶ月と長いため、暴露後ワクチン注射が可能である。ひとたび発症した後は有効な治療法がないため、狂犬病感染動物に咬まれた後、定められた間隔で繰り返し狂犬病ワクチンを接種する暴露後発症予防が狂犬病死を免れるための唯一有効な手段である。また、狂犬病ウイルスを取り扱う者、獣医師および狂犬病侵襲地への旅行者に対しては事前に予防接種が行われている(暴露前接種)。こうした受動免疫法は、通常、狂犬病免疫個体(ヒト狂犬病−免疫グロブリン;HRIG)又は超免疫化ウマ(ウマ(equine)狂犬病−免疫グロブリン;ERIG)のプール血清から得られたプレフォームド(予備形成)狂犬病ウイルス中和抗体を投与することによって行われる。
【0007】
このように中和抗体は、狂犬病の発症や感染、ひいては狂犬病ウイルスの伝染を防ぐ重要な役割を果たしている。WHOおよび国際獣疫事務局(Office International des Epizooties: OIE)によると、狂犬病ウイルスの感染を防ぐために必要な中和抗体価は0.5IU/ml以上であるとされている(非特許文献2および3参照)。
【0008】
血清中の狂犬病ウイルスに対する中和抗体の測定、例えばヒトや動物における狂犬病ワクチン接種後の中和抗体レベルの測定には、一般に、迅速蛍光フォーカス抑制試験(Rapid Fluorescent Focus Inhibition Test: RFFIT)が使用される(非特許文献4)。しかし当該方法は、蛍光標識−抗狂犬病ウイルス抗体に加えて、生きた狂犬病ウイルス、および感受性細胞(BHK細胞など)を用いることから、細胞培養の設備、蛍光顕微鏡の設備、およびバイオセーフティーキャビネットなどの感染防御のための設備が必要であり、またかかる設備が整った施設で熟練した検査技師が行う必要がある。さらに結果がでるのに約2日間を要する。また、一部の発展途上国では、in vivoの感染評価系としてマウス脳内接種試験が行われているが、マウスを使用し、また結果が出るまで2週間を要するなど簡便性に欠く方法である。
【0009】
このように、従来の検査方法は、実施できる施設が限られており、また結果がでるまでに時間がかかる等の問題があり、これらのことが狂犬病ワクチン接種後の中和抗体獲得の評価を困難にしている原因の一つと考えられる。このため、迅速かつ簡便に中和抗体保有の有無ならびにそのレベルが測定できる検査系の出現が望まれている。
【非特許文献1】D. L. Lodmell, J.Virol.,61,10: 3314-3318, 1987
【非特許文献2】World Health Organization. Expert consultation on rabies, 1st report W.H.O. technical series 931. Geneva; 2005,88 pp.
【非特許文献3】Office International des Epizooties. OIE manual of standards of diagnostic tests and vaccines. 4th ed. Paris: Office International des Epizooties: 2000, p.15-23, 276-291
【非特許文献4】Smith, et al., Bull WHO 1973;48;535-541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決することを目的とする。すなわち本発明の目的は、ヒトまたは動物の体液、特に血清中の、狂犬病ウイルスに対する中和抗体の有無またはその量(中和抗体価)を迅速かつ簡便に測定し判定するための方法、ならびに当該方法に好適に使用される材料(判定具)を提供することである。
【0011】
さらに本発明は、当該方法および判定具に好適に使用される狂犬病ウイルスのG蛋白を特異的に認識するモノクローナル抗体およびその調製に使用される材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題の解決を目的に鋭意検討を重ねた結果、あらかじめ規定量の不活化狂犬病ウイルスと被験者の体液とを反応させ、次いでこの反応液を狂犬病ウイルスのG蛋白を認識するモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト検出に供することにより、被験者体液中の狂犬病ウイルスに対する中和抗体価を特異的に検出し判定することができることを見出し、さらに当該方法によれば、感染性ウイルスや細胞培養設備を使用することなく、上記課題である狂犬病ウイルスに対する中和抗体の量(中和抗体価)を迅速かつ簡便に測定し判定することができることを確認して本発明を完成するにいたった。
【0013】
すなわち、本発明は下記の態様を有する。
(I)狂犬病ウイルス中和抗体価判定具
(I-1)毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた、狂犬病ウイルス中和抗体価判定具であって、当該吸液片が
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を固定したテスト結果表示部、
(4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【0014】
(I-2)上記(3)判定部が、(a) テスト結果表示部と間隔をおいて、さらに下記に示すコントロール表示部を備えていることを特徴とする、(I-1)記載の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具:
(b)標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識-抗体を固定したコントロール表示部。
【0015】
(I-3)標識−抗狂犬病ウイルス抗体および非標識−抗狂犬病ウイルス抗体で用いる抗狂犬病ウイルス抗体が、配列番号1に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である、(I-1)または(I-2)に記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【0016】
(I-4)標識−抗狂犬病ウイルス抗体および非標識−抗狂犬病ウイルス抗体で用いる抗狂犬病ウイルス抗体が、配列番号2に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖領域、および配列番号4に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である、(I-1)または(I-2)に記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【0017】
(II)狂犬病ウイルス中和抗体価の測定方法
(II-1)不活化した狂犬病ウイルスと被験者体液との混合物を被験試料として、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の試料採取部に供する工程、および当該判定具の判定部内のテスト結果表示部の発色を検出する工程を有する、被験者体液における狂犬病ウイルス中和抗体価を測定する方法。
【0018】
(II-2)不活化した狂犬病ウイルスの量として、中和抗体価0.5IU/mlの中和抗体で中和され、且つ中和抗体価1.0IU/mlの中和抗体で中和されない量を用いることを特徴とする(II-1)に記載する方法。
【0019】
(II-3)被験者血清として狂犬病ワクチン接種者および狂犬病ワクチン接種後のヒトを除く動物の血清を用いる、(II-1)または(II-2)に記載する方法。
【0020】
(III)狂犬病ウイルスのG蛋白を認識するモノクローナル抗体およびその遺伝子
(III-1)配列番号1に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【0021】
(III-2)配列番号2に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖領域、および配列番号4に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とする、(III-1)に記載するモノクローナル抗体。
【0022】
(III-3)(III-2)に記載するモノクローナル抗体をコードする遺伝子であって、配列番号5に記載する塩基配列および配列番号6に記載する塩基配列を、それぞれ当該モノクローナル抗体の重鎖領域をコードする塩基配列および軽鎖領域をコードする塩基配列として含むことを特徴とする、上記遺伝子。
【発明の効果】
【0023】
本発明の判定具および方法によれば、狂犬病ワクチン接種後のヒトまたは動物(ヒトを除く。以下、同じ)の体液、特に血清中の狂犬病ウイルス中和抗体の有無ならびにそのレベル(中和抗体価)を、感染性ウイルスや細胞培養設備を用いることなく、簡便に測定することができる。
【0024】
また本発明の判定具および方法によれば、2時間程度の短時間で結果が得られるため、従来2日間かかっていたRFFIT法と比べて迅速な狂犬病ウイルス中和抗体価の測定方法として有用である。
【0025】
さらに、イヌを対象として血清中の狂犬病ウイルス中和抗体を測定する場合、従来法であるRFFIT法を使用すると培養細胞に毒性を示し、正確な中和抗体価が得られないことがある。本発明の方法は、かかるRFFIT法の代替法として有用である。
【0026】
さらに本発明で提供するモノクローナル抗体は、狂犬病ウイルスのG蛋白を特異的に認識して結合する性質を有しており、上記本発明の判定具および方法に有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(I)狂犬病ウイルス中和抗体価判定具
本発明が対象とする狂犬病ウイルス中和抗体価判定具(単に「判定具」ともいう)は、ヒトや動物の体液の狂犬病ウイルス中和抗体価を判定するための道具であって、毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えている。
【0028】
該吸液片は、
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を固定したテスト結果表示部、および
(4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部を備えている。
【0029】
なお、上記(3)判定部は、(a)テスト結果表示部に加えて、それと間隔をおいて下記に示すコントロール表示部を備えていてもよい:
(b)標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識−抗体を固定したコントロール表示部。
【0030】
当該判定具によれば、(a)テスト結果表示部の発色の有無で、被験試料中に狂犬病ウイルス中和抗体価の程度を判定することができる。すなわち、当該判定具によれば、(a)テスト結果表示部の発色の有無を指標とすることにより、被験試料の狂犬病ウイルス中和抗体価が、一定値以上であるか否か、好ましくはWHOとOIEが十分な中和抗体価と判断している0.5IU/ml以上であるか否かを判断することができる。
【0031】
ここで「狂犬病ウイルス中和抗体」とは、狂犬病ウイルス表面に存在する糖タンパク(G蛋白)に特異的に結合し、ウイルスの感染性を無くすような抗体を指す。ワクチン接種後に体内でこの抗体が誘導されることで、末梢から侵入したウイルスの感染性が無くなり、発病を予防できることが知られている。
【0032】
本発明の判定具は、毛細管作用またはクロマトグラフィー作用(本発明ではこれらを総じて「毛細管現象」という)によって、被験試料を移送できる材料からなる吸液片を備える。該吸液片は、シート状の細片(以下、「シート状細片」という)とすることができ、該シート状細片は、1枚のシートにより、或いは複数枚のシートを重ね合わせるかまたは連結して、形成することができる。或いは、吸液片は、細長い棒状の細片とする等、液の吸収及び毛細管現象による移送が可能な種々の形態とすることができる。なお、本発明の判定具は、さらに上記の吸液片を支持する支持体を備えるものであってもよい。
【0033】
この吸液片のための材料としては、溶媒(水、血清、尿その他の体液等)、被験成分(狂犬病ウイルス、狂犬病ウイルス中和抗体)、及び被験成分を含む複合体(例えば、標識された標識−抗狂犬病ウイルス抗体と狂犬病ウイルスとの複合体)が浸透可能な多孔構造又は毛細管構造を有し、被験成分を含む被験試料を(1)試料採取部に適用(採取、滴下、添加)した場合に、被験試料が、途中で上記抗体や複合体を含みながらも、多孔構造又は毛細管構造内を移動(展開)し得る材料であればよく、特に制限されない。例えば、各種濾紙、クロマトグラフィー用紙などのシート、各種のフェルト、織布や不織布などの布、ガラス繊維などが挙げられる。これらのうち、より好ましくは有機多孔質体である。なお、有機多孔質体の例としては、セルロースなどの天然繊維、セルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維などで形成された繊維集合体、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリスチレン、多孔質ポリメタクリル酸メチル、多孔質ナイロン、多孔質ポリスルフォン、多孔質フッ素樹脂、親水性基が導入されたフッ化ポリビニリデン等の多孔質合成樹脂などを挙げることができる。好ましくはセルロースなどの天然繊維、またはセルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体である。
【0034】
吸液片の大きさは、特に制限されない。幅(短辺の長さ)が2〜20mm程度、好ましくは4〜10mm程度の範囲にあり、長さ(長辺の長さ)が20〜200mm、好ましくは30〜150mmの範囲にある大きさであることが好ましい。
【0035】
以下、本発明の実施形態に係る判定具を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1(A)および(B)に本発明の判定具の一態様を示す。当該図1(A)および(B)は、本発明の判定具を横からみた図である。かかる判定具において、吸液片は、被験試料を採取(添加)する試料採取部(1)、標識抗体部(2)、及びテスト結果表示部(a)を備えた判定部(3)、並びにこれらの試料採取部、標識抗体部、及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部(4)を備える。また図1(B)は、上記判定部(3)において、テスト結果表示部(a)に加えてコントロール表示部(b)を備える判定具を示す。
【0037】
図1に示す例では、吸液片は、複数のシート片により形成されたシート状細片とされているが、シート状細片は同一材料からなる一枚のシートからなるものであってもよいし、また同一または異なる材質からなる複数枚のシート片で全体として一つのシートを形成してなるものであってもよい。なお、シート全体が複数枚のシートからなるものであってもよいし、部分的に複数枚のシートから形成される部分を有するものであってもよい。
【0038】
図1で示す例では、支持体10の上に、シート状細片20が接着されている。このシート状細片20は、長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(1)を形成するシート21、標識抗体部(2)を形成するシート22、判定部(3)を形成するシート23、液吸収部(4)を形成するシート24を備えている。また、図2に示すように、シート21の端部がシート22の端部と重なるように、またシート22の端部がシート23の端部と重なるように、さらにシート23の端部がシート24の端部と重なるように構成することもできる。かかる構成をとることで液の移動をよりスムーズにすることができる。
【0039】
試料採取部(1)は、測定対象とする被験試料を吸収採取する部分(被験試料供給部)である。被験試料としては、不活化狂犬病ウイルスと本発明が測定対象とする被験者の体液との混合物を挙げることができる。ここで体液は、狂犬病ウイルスに対する中和抗体を含むものであれば特に制限されず、例えば尿、血液(血清、血漿)、汗、唾液等を挙げることができる。好ましくは血清である。
【0040】
不活化狂犬病ウイルスは、狂犬病ウイルスをホルマリン、ベータプロピオラクトン(BPL)、または紫外線などを用いて処理することにより調製することができる。中でも狂犬病ウイルスをホルマリン処理して不活性化する方法が好ましい。当該ホルマリン処理は、後述する実施例2の記載を参考にして実施することができる(文献:H. Singh Laboratory technique of rabies,1996, 4th ed.WHO, Chapter 20, p234-242)。
【0041】
当該試料採取部(1)は、図1および図2に例示するように、シート状細片の端部(始端部)に位置することができる。
【0042】
試料採取部(1)は、シート状細片に採用される材料の中でも、被験試料を速やかに吸収できるように親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ガラス繊維からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0043】
標識抗体部(2)は、前述するように試料採取部(1)の終端部と接触するか(図1)、または当該試料採取部(1)と一部を重なった状態で形成される(図2)。当該標識抗体部(2)は、被験試料に含まれる狂犬病ウイルスと特異的に反応し結合する抗体を脱離可能な状態で含む。
【0044】
具体的には、本発明の判定具は、標識抗体部(2)を構成するシート22に、狂犬病ウイルスのG蛋白と抗原−抗体反応により特異的に結合する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を脱離可能な状態で含む。
【0045】
ここで標識−抗狂犬病ウイルス抗体は、狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に結合し、他の蛋白質と交差性のない、標識されたモノクローナル抗体であることが望ましい。
【0046】
かかるモノクローナル抗体として、好ましくは、配列番号1に記載するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合するモノクローナル抗体を挙げることができる。なお、狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、上記重鎖可変領域は、配列番号1に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよく、また上記軽鎖可変領域は、配列番号3に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0047】
これらの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はいずれも、3つのフレームワーク領域(FWR1〜FWR3)と2つの相補性決定領域(CDR1とCDR2)を有している。具体的には、配列番号1に記載するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域は、当該配列番号1において、N末端側から順にFWR1(1-30番目のアミノ酸領域)、CDR1(31-35番目のアミノ酸領域)、FWR2(36-49番目のアミノ酸領域)、CDR2(50-66番目のアミノ酸領域)、およびFWR3(67-98番目のアミノ酸領域)から構成されている。また、配列番号3に記載するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域は、当該配列番号3において、N末端側から順にFWR1(1-7番目のアミノ酸領域)、CDR1(8-18番目のアミノ酸領域)、FWR2(19-33番目のアミノ酸領域)、CDR2(34-40番目のアミノ酸領域)、およびFWR3(41-72番目のアミノ酸領域)から構成されている。
【0048】
上記モノクローナル抗体は、重鎖領域として上記重鎖可変領域を含む重鎖領域と、軽鎖領域として上記軽鎖可変領域を含む軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合する抗体であることが好ましい。ここで、重鎖領域として好ましくは配列番号2に記載するアミノ酸配列からなる領域を、また軽鎖領域として好ましくは配列番号4に記載するアミノ酸配列からなる領域を挙げることができる。また、なお、狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、上記モノクローナル抗体の重鎖領域は、配列番号2に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。上記軽鎖領域もまた、モノクローナル抗体が狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、配列番号4に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0049】
なお、狂犬病ウイルスのG蛋白への結合性は、上記モノクローナル抗体に結合したウイルスが、感受性細胞への感染性をなくすことで評価できる。具体的には、モノクローナル抗体と狂犬病ウイルスを適当な割合で混合し、これをウイルスが感染して増殖しうる感受性細胞(例えばBaby Hamster Kidney細胞、神経芽細胞腫NA細胞)に接種し、2日後に感染細胞のフォーカスが形成されていないことを、抗狂犬病ウイルスN蛋白に対するモノクローナル抗体で染色することによって判断することができる。
【0050】
これらのモノクローナル抗体、すなわち抗狂犬病ウイルス抗体は、任意の標識剤で標識された状態で、すなわち標識−抗狂犬病ウイルス抗体として使用される。ここで使用される標識剤としては、金や銀、或いはセレンのような金属又は無機粒子;フルオレセインやローダミンのような蛍光標識剤;赤血球、ラテックス粒子、着色又は有色ラテックス粒子のような色素標識剤;βーガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼのような酵素標識剤;或いはそれらの混合体を挙げることができる。好ましくは、金からなる無機粒子である。標識剤での標識方法は周知であり、使用する標識剤の種類に応じて定法に従って行うことができる。
【0051】
標識抗体部(2)は、シート状細片に採用される材料の中でも、標識−抗狂犬病ウイルス抗体を脱離可能な状態で含み、試料採取部(1)から移動してきた被験試料中の被験成分(狂犬病ウイルス)と反応して形成される抗原-抗体複合体(狂犬病ウイルスと標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体)を、被験試料の判定部(3)への移動に伴って、図1中、矢印Pで示す方向に移動させることができる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
【0052】
かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ガラス繊維からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0053】
なお、標識抗体部(2)に、標識−抗狂犬病ウイルス抗体を脱離可能な状態で担持させる方法としては、制限されないが、標識−抗狂犬病ウイルス抗体を含む溶液を標識抗体部(2)に含浸または付着させる方法を例示することができる。また、標識抗体部(2)に被験試料中に含まれる被験成分(狂犬病ウイルス)を漏れなく結合させるために、当該標識抗体部(2)には上記の標識−抗狂犬病ウイルス抗体を過量に担持させておくことが好ましい。
【0054】
判定部(3)は、上記試料採取部(1)から標識抗体部(2)を通って移動してきた被験試料をさらに液吸収部(4)まで移送する部分であって、その移送領域上に、移送する被験試料中に含まれる特定成分(狂犬病ウイルスと標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体)を捕捉して、その捕捉結果を表示する部分〔テスト結果表示部(a)〕を含む。このテスト結果表示部(a)に示される結果に基づいて、被験試料の狂犬病ウイルス中和抗体価の程度が判定可能になることから、当該表示部(a)を含む領域を「判定部(3)」と称する。
【0055】
本発明の判定具は、かかる判定部(3)において、テスト結果表示部(a)に加えて、コントロール表示部(b)を備えていてもよい。なお、かかるテスト結果表示部(a)、及びコントロール表示部(b)は、それぞれ順次間隔をおいて配置される。
【0056】
テスト結果表示部(a)には、狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識の抗体〔非標識−抗狂犬病ウイルス抗体〕が過量に固定されている。このため、上記標識抗体部(2)での抗原−抗体反応によって標識−抗狂犬病ウイルス抗体と結合した狂犬病ウイルスは、標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体の状態で、このテスト結果表示部(a)に捕捉され、その捕捉量に応じた強さで、標識剤に起因する発色を呈する。
【0057】
なお、ここで非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を構成する抗狂犬病ウイルス抗体としては、狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に結合する前述のモノクローナル抗体を同様に使用することができる。
【0058】
テスト結果表示部(a)に固定する非標識-抗狂犬病ウイルス抗体の量は、制限されないが、例えば血清を被験試料とする判定具の場合、おおよそ3x103 フォーカス形成単位(101.75 50%感染単位/50ml 相当)以上の狂犬病ウイルスと結合できる量を挙げることができる。
【0059】
コントロール表示部(b)には、上記標識抗体部(2)に含有させた標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識-抗体(第二抗体)が所定量、固定されている。当該コントロール表示部(b)は、被験試料の移動方向(図1中、pの方向)に、テスト結果表示部(a)と間隔をおいて、テスト結果表示部(a)およびコントロール表示部(b)の順で配置することができる。コントロール表示部(b)には、先行するシート片から移動してくる被験試料中に含まれる標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識-抗体(第二抗体)が過剰量固定されている。
【0060】
このため、かかるコントロール表示部(b)には、標識抗体部(2)から脱離して被験試料中に放出された標識−抗狂犬病ウイルス抗体が捕捉され、コントロール表示部(b)に固定された上記第二抗体の量に応じた強さで、標識−抗狂犬病ウイルス抗体の標識剤に起因する発色を呈する。
【0061】
ここで非標識-抗体(第二抗体)は、標識−抗狂犬病ウイルス抗体と結合するものであればよい。かかる非標識-抗体(第二抗体)は、制限されないが、例えば標識−抗狂犬病ウイルス抗体としてマウス由来のモノクローナル抗体を使用する場合、当該第二抗体としては、非標識の抗マウスIgGヤギ抗体(例えば、DAKO社入手)、または抗マウスIgGマウス抗体などを用いることができる。
【0062】
本発明の判定具を用いた狂犬病ウイルス中和抗体価の判別は、判定部(3)におけるテスト結果表示部(a)における発色の有無を指標として行われる。この際、必要に応じて、判定部(3)におけるコントロール表示部(b)における発色の有無も判断に使用することができる。テスト結果表示部(a)における発色が認められない場合でも、上記コントロール表示部(b)で発色が認められる場合は、測定は正常に行われており、測定結果を陰性(狂犬病ウイルス中和抗体価が所定以上)と判断することができる。しかし、上記コントロール表示部(b)で発色が認められない場合は、測定が正常に行われていないことを示し、テスト結果表示部(a)の結果をもって陰性と判断することはできない。
【0063】
判定部(3)は、シート状細片に採用される材料の中でも、種々の成分を含む被験試料を、液吸収部(4)に毛細管現象によって移動させることができ、テスト結果表示部(a)に上記の非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を、またコントロール表示部(b)に上記の非標識-抗体(第二抗体)を安定に固定化できる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
【0064】
かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはセルロースやニトロセルロース等からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0065】
液吸収部(4)は、上記試料採取部(1)から標識抗体部(2)、及び判定部(3)(テスト結果表示部(a)、またはテスト結果表示部(a)とコントロール表示部(b))を通って、矢印Pの方向に移動してきた被験試料の残液を吸収する部分である。
【0066】
液吸収部(4)は、シート状細片に採用される材料の中でも、親水性及び吸収性に優れていることが好ましいが、より好適には、吸収した液を離水しない性質を備えた材料または弾力性のある材料から構成されることが望ましい。かかる材料として、具体的には、濾紙や親水性繊維の不織布などを挙げることができ、濾紙と不織布との積層体も使用することができる。
【0067】
本発明の判定具は、基本的に上記構成を備えたシート状細片からなるが、上記シート状細片に加えて、さらに支持体10を備えることもできる。かかる支持体10は、上記シート状細片を保持し得る材質及び形態を備えるものであれば特に制限されない。例えば、シート状細片の裏面(下層面)に積層して用いられるシート状の支持体であっても、またシート状細片を収納するハウジング形態の支持体であってもよい。
【0068】
シート状の支持体としては、例えば各種プラスチック製のシート(プラスチックシート)、硬質紙、アルミ製等の金属(合金を含む)製シート、例えば異質又は同質の複数の紙を張り合わせた(貼り合わせた)複層紙、プラスチックシートと紙とを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、プラスチックシートと紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙に防水用等のコーティングを施したものなどを挙げることができる。好ましくは防水機能を有するものである。
【0069】
ハウジング形態の支持体は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル酸ポリマーなど、不透湿性の材料からなるものが好ましいが、紙製であっても撥水加工がされていれば用いることができる。ハウジングには、少なくとも、内部に収納される上記シート状細片の試料採取部(1)に対応して「採液窓」、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に対応して「判定表示窓」、及びコントロール表示部(b)に対応して「コントロール表示窓」が形成されていることが望ましい。なお、「判定表示窓」と「コントロール表示窓」は、個々に形成されていてもよいが、一つの窓として形成されていてもよい。
【0070】
前述するシート状細片を備える本発明の判定具は、その使用に際して、まず試料採取部(1)に被験試料を含浸させる。そうすると、試料採取部(1)に吸収された被験試料がシート状細片中を毛細管現象により浸透し、まず標識−抗狂犬病ウイルス抗体が脱離可能なように担持されている標識抗体部(2)に至る。ここで、被験試料中の被験成分(狂犬病ウイルス)が上記標識−抗狂犬病ウイルス抗体と抗原−抗体反応により特異的に結合する。次いで、被験試料は、「狂犬病ウイルスと標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体」と、「狂犬病ウイルスと結合しなかった余剰の標識−抗狂犬病ウイルス抗体」を伴いながら、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に至る。テスト結果表示部(a)には狂犬病ウイルスと特異的に結合する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体が安定に固定されているので、ここに被験試料中の「狂犬病ウイルスと特異的に結合した標識−抗狂犬病ウイルス抗体」が捕捉され集積される。その結果、テスト結果表示部(a)は、捕捉された標識−抗狂犬病ウイルス抗体の標識剤に基づいて被験試料中に含まれる狂犬病ウイルスの量に応じた強度で発色する。これにより、被験試料中の狂犬病ウイルス(正確にいえば、中和抗体で中和されていない狂犬病ウイルス)の有無や量的割合が検知できる。
【0071】
次に被験試料は、「狂犬病ウイルスと結合しなかった余剰の標識−抗狂犬病ウイルス抗体」を伴いながら、判定部(3)のコントロール表示部(b)に至る。コントロール表示部(b)には標識−抗狂犬病ウイルス抗体と結合する第二抗体〔非標識-抗体〕が一定の量で安定に固定されているので、ここに被験試料中の上記の余剰の標識−抗狂犬病ウイルス抗体が捕捉され集積される。その結果、コントロール表示部(b)は、コントロール表示部(b)に固定化された第二抗体の量(または、第二抗体と結合した標識-抗体の量)に応じた強度で発色する。
【0072】
これらの他、本発明の判定具は、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形態様が可能である。
【0073】
上記の本発明の判定具には、他に当該判定具の使用方法や判定方法について説明した仕様書を添付することができ、本発明はかかる判定具と仕様書がセットとなった判定キットを提供するものである。
【0074】
(II)狂犬病ウイルス中和抗体価の測定方法
本発明は、被験者の体液を対称として狂犬病ウイルス中和抗体価を測定する方法に関する。当該方法は、前述する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具を用いることを特徴とする。
【0075】
具体的には、本発明の方法は、まず被験者の体液を不活化した狂犬病ウイルス(不活化狂犬病ウイルス)と混合し、これを被験試料として、前述する本発明の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の試料採取部(1)に供する工程、および当該判定具の判定部(3)内のテスト結果表示部(a)の発色を検出する工程を行うことによって実施することができる。
【0076】
試料採取部(1)に被験試料を含浸させると、試料採取部(1)に吸収された被験試料がシート状細片中を毛細管現象により浸透し、まず標識−抗狂犬病ウイルス抗体が脱離可能なように担持されている標識抗体部(2)に至る。
【0077】
ここで、被験試料中に狂犬病ウイルスが含まれている場合(不活化狂犬病ウイルスが中和されないで存在している場合)は、抗原−抗体反応により上記標識−抗狂犬病ウイルス抗体と特異的に結合する。ここで形成された「狂犬病ウイルスと標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体」は、「狂犬病ウイルスと結合しなかった余剰の標識−抗狂犬病ウイルス抗体」を伴いながら、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に至る。テスト結果表示部(a)には狂犬病ウイルスと特異的に結合する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体が安定に固定されているので、ここに「狂犬病ウイルスと標識−抗狂犬病ウイルス抗体との複合体」が捕捉され集積される。その結果、テスト結果表示部(a)は、捕捉された標識−抗狂犬病ウイルス抗体の標識剤に基づいて被験試料中に含まれる狂犬病ウイルスの量に応じた強度で発色する。一方、被験試料中に狂犬病ウイルスが含まれていない場合(不活化狂犬病ウイルスが完全に中和された場合)は、標識抗体部(2)に担持されている標識−抗狂犬病ウイルス抗体と抗原−抗体反応を生じないので、テスト結果表示部(a)は発色しない。従って、本発明の方法により、被験試料中の狂犬病ウイルス(正確にいえば、中和抗体で中和されていない狂犬病ウイルス)の有無や量的割合を検知することができる。
【0078】
狂犬病ウイルス中和抗体価判定具としては、判定部(3)にテスト結果表示部(a)だけを有するものも使用することができるが、テスト結果表示部(a)に加えて、標識−抗狂犬病ウイルス抗体と結合する第二抗体〔非標識-抗体〕を固定したコントロール表示部(b)を備えた判定具を用いることもできる。この場合は、テスト結果表示部(a)が発色しない場合であっても、コントロール表示部(b)の発色により、被験試料が正常に液吸収部まで流液し、本発明の試験が正常に行われたかどうかを判断することができる。
【0079】
本発明の方法で用いられる被験者の体液は、狂犬病ウイルスに対する中和抗体を含むものであれば特に制限されず、例えば尿、血液(血清、血漿)、汗、唾液等を挙げることができる。好ましくは血清である。
【0080】
また、不活化狂犬病ウイルスは、前述するように、狂犬病ウイルスをホルマリン、ベータプロピオラクトン(BPL)、または紫外線などを用いて処理することにより調製することができるが、中でも狂犬病ウイルスをホルマリン処理して不活性化する方法が好ましい(文献:H. Singh Laboratory technique of rabies,1996, 4th ed.WHO, Chapter 20, p234-242)。
【0081】
WHOやOIEによると、狂犬病ウイルスの感染を防ぐために必要な中和抗体価は0.5IU/ml以上とされている。このため、被験者の体液と混合する不活化狂犬病ウイルスの量として、中和抗体価0.5IU/mlの中和抗体で完全に中和され、且つ中和抗体価1.0IU/mlの中和抗体で中和されない量を用いることが好ましい。かかる量の不活化狂犬病ウイルスと混合した体液を被験試料として用いた場合、本発明の方法によれば、判定部(3)内のテスト結果表示部(a)の発色の有無で、体液中に狂犬病ウイルスの感染を防ぐために必要な中和抗体(中和抗体価0.5IU/ml以上)が存在するか否かを判断することができる。すなわち、テスト結果表示部(a)が発色すれば、中和抗体価0.5IU/ml以上を満たさず、狂犬病ウイルス感染の危険性がある(狂犬病ワクチン接種の必要性がある)と判断することができ、一方、テスト結果表示部(a)が発色しなければ、中和抗体価が0.5IU/ml以上であり、狂犬病ウイルス感染の危険性がないか若しくは低い(狂犬病ワクチン接種の必要性がない)と判断することができる。従って、本発明の方法は、狂犬病ワクチンを接種したヒトや動物を対象として、中和抗体価が狂犬病ウイルス感染を予防できる所定(0.5IU/ml以上)の値になったかどうかを確認する試験としても有効に利用することができる。
【0082】
(III)狂犬病ウイルスのG蛋白に対するモノクローナル抗体
本発明のモノクローナル抗体は、好ましくは、配列番号1に記載するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である。また本発明のモノクローナル抗体は、狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、上記重鎖可変領域が、配列番号1に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよく、また上記軽鎖可変領域が、配列番号3に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0083】
これらの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、前述するようにいずれも、3つのフレームワーク領域(FWR1〜FWR3)と2つの相補性決定領域(CDR1とCDR2)を有している。
【0084】
また本発明のモノクローナル抗体は、重鎖領域として上記重鎖可変領域を含む重鎖領域と、軽鎖領域として上記軽鎖可変領域を含む軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合する抗体であることが好ましい。ここで、重鎖領域として好ましくは配列番号2に記載するアミノ酸配列からなる領域を、また軽鎖領域として好ましくは配列番号4に記載するアミノ酸配列からなる領域を挙げることができる。また、狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、上記モノクローナル抗体の重鎖領域は、配列番号2に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。上記軽鎖領域もまた、モノクローナル抗体が狂犬病ウイルスのG蛋白への特異的な結合性を損なわない限り、配列番号4に記載するアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0085】
なお、狂犬病ウイルスのG蛋白への結合性は、上記モノクローナル抗体に結合したウイルスが、感受性細胞への感染性をなくすことで評価できる。具体的には、モノクローナル抗体と狂犬病ウイルスを適当な割合で混合し、これをウイルスが感染して増殖しうる感受性細胞(例えばBaby Hamster Kidney細胞、神経芽細胞腫NA細胞)に接種し、2日後に感染細胞のフォーカスが形成されていないことを、抗狂犬病ウイルスN蛋白に対するモノクローナル抗体で染色することによって判断することができる。
【0086】
かかるモノクローナル抗体の調製方法は、具体的には実施例1に記載する方法を例示することができるが、その他、上記モノクローナル抗体のアミノ酸配列を参考にしてアミノ酸合成により調製する方法、並びにモノクローナル抗体をコードする遺伝子の塩基配列を参考にして遺伝子工学的手法により調製する方法によっても調製することができる。
【0087】
本発明のモノクローナル抗体の重鎖領域(配列番号2)をコードする塩基配列を配列番号5に、軽鎖領域(配列番号4)をコードする塩基配列を配列番号6に、それぞれ示す。本発明のモノクローナル抗体の重鎖領域をコードする塩基配列は、配列番号5の塩基配列と85%以上の相同性を有し、ストリンジェントな条件で当該塩基配列と相補的な塩基配列に結合する塩基配列を有するものであってもよい。また本発明のモノクローナル抗体の軽鎖領域をコードする塩基配列は、配列番号6の塩基配列と85%以上の相同性を有し、ストリンジェントな条件で当該塩基配列と相補的な塩基配列に結合する塩基配列を有するものであってもよい。ここでストリンジャントな条件としては、例えば42℃での50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSを含む緩衝液中でのハイブリダーゼーション、または65℃での5×SSC、および1%SDSを含む緩衝液中でのハイブリダーゼーション(いずれも65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDSの洗浄を伴う)を挙げることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はかかる実施例に制限されるものではない。
【0089】
実施例1 狂犬病ウイルスのG蛋白に対するモノクローナル抗体の調製
(1-1) マウスの免疫と脾細胞の分離
細胞融合に用いた脾臓細胞(B細胞)は、ホルマリン不活化した(後述 実施例2の1-2参照) 狂犬病ウイルスCVS-11株をBalb/cマウス(雌6週齢)の腹腔内に2週間おき計3回投与後の3日後に犠死させ、摘出した脾臓から調製した。細胞融合のパートナーとして用いるマウスミエローマ細胞としてNS1/1-Ag 4.1細胞(理研細胞バンク(和光市、埼玉県))を用いた。
【0090】
(1-2) 狂犬病ウイルス
種々の狂犬病ウイルス株に対する中和能力を評価するために、抗原的に異なる固定(馴養)株(イブリン‐ロキトニキ‐アベルセス(ERA)株、CVS-11株、西ヶ原株、HEP-Flury株)、および街上狂犬病ウイルス(1088野外株)を用いた。上記各固定株と1088野外株は、大分大学医学部微生物学で保管されていたものである。
【0091】
(1-3) 細胞融合と培養方法
脾細胞とミエローマ細胞は5:1の割合で試験管内で混合し、試験管を37℃の水浴中で1分間温め、次いで0.5mlの温かい(37℃)50%(wt/vol)ポリエチレングリコール(シグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号:P-7181)1 mlを、45秒間にわたり試験管を穏やかに振とうしながら滴下して加えた。その後、保温した無血清培地を30秒にわたり3mlゆっくりと加え、次いで30秒にわたり計3回に分け計9ml加えることによって、融合反応を停止させた。この試験管を室温にて8分間静置させ、次いで2分間37℃の水浴中でインキュベートした。その後、得られた融合細胞を500gで3分間遠心分離し、10%FBS並びにHATを含有するイスコフ改変ダルベッコ(ギブコ(Gibco))培地30mlに、細胞ペレットを穏やかに再懸濁させ、96ウェル平底マイクロタイタープレート中に、3.5×105細胞/ウェルの濃度にて蒔き、上述と同様にしてインキュベートした。(途中で1回HAT培地を交換)。その後培養液をHT培地に交換しハイブリダイズされた細胞を直視下で確認し、集落が形成されたウェルから分泌される上清を、その後のアッセイに回した。
【0092】
融合細胞を約4週間培養した後、上清を採集し、ELISAにて狂犬病ウイルス特異的抗体の存在について試験した。陽性のウェルを先ず1ml、次いで2mlの培養(48及び24ウェルプレート、ヌンク(Nunc))に移し、その後、その上清をRFFIT法(例えば、後述する実施例3の(2-1)参照)により狂犬病ウイルス中和抗体の有無についてアッセイした。中和抗体を生産する細胞系(細胞#4-12)を、コロニーが樹立された際に(約6週間の培養)、ELISA及びRFFIT法にて、上清中の狂犬病ウイルス特異的抗体の生産を確認した。この抗体生産細胞(細胞#4-12)を、マイクロタイタープレート中での限界希釈によって、少なくとも3回クローン化した。細胞を、96ウェル丸底プレート中に、2倍希釈にて、4細胞/ウェルから始めて滴定した。平均0.25細胞若しくはそれ以下の細胞を含むウェルから採取した細胞を増殖させて、上清を採集した(培養上清サンプル)。
【0093】
(1-4) ELISAでの狂犬病ウイルス特異的抗体の分析
上記で得られた細胞(細胞#4-12)から産生される抗体の抗体特異性及びイソタイプを、固相ELISAにて評価した。まず、プレート(ポリソーブ(PolySorb)(商標)、ヌンク社製(Nunc))を、加湿チャンバー中で室温にて一晩中、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に希釈した5mg/ml狂犬病ERAウイルス、糖タンパク質もしくは核タンパク質でコートした。次いで、このプレートをPBS中5%粉乳でブロックし、0.05%トゥイーン20(Tween20)含有PBS(PBS-Tween)にて洗浄した後、上記抗体生産細胞の培養上清サンプルを添加した。
【0094】
(1-5) 抗体のアイソタイプの決定
上記で調製した上清を、室温で2時間インキュベーションした後、このプレートをPBS-Tweenで洗浄して未結合の抗体を除去し、次いで、種々のマウス重鎖イソタイプに対し特異的な抗体であって、種々の酵素を結合した二次抗体またはビデオチン化した二次抗体を添加し、1時間室温にて反応させた。反応後、二次抗体に結合させた酵素に応じた基質(リン酸-クエン酸緩衝液中3, 3’, 5, 5’ -テトラメチルベンジジン(TMB)、又は0.1Mグリシン緩衝液中p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、シグマ(Sigma)を添加するか、またはビデオチン化二次抗体の場合はアビジン-アルカリ性ホスフェート(室温(RT)にて30分)及びPNPP基質を添加し、二次抗体を検出した。その結果、細胞#4-12が産生するモノクローナル抗体のイソタイプはIgG2であることが判明した。
【0095】
(1-6) アフィニティークロマトグラフィーによる抗体の精製
IgG2抗体産生細胞#4-12が産生するモノクローナル抗体を、プロテインAカラム(rプロテインAセファロース(rProtein A Sepharose)(商標)ファストフロー(Fast Flow)、アマシャム・ファルマシア・バイオテク)を用いて精製した。具体的には、まず各細胞の培養上清を0.45μmメンブランを通して濾過することによって浄化し、pHを1N NaOHで8.0に調整した。次いで、これをカラムに約100cm/時の線形流速にて通液し、PBS(pH8)で洗浄した後、抗体を0.1Mクエン酸溶液を用いてカラムから溶出させ、その後PBSで透析した。
【0096】
(1-7) 狂犬病ウイルスのG蛋白への結合性
上記で得られたモノクローナル抗体を狂犬病ウイルスに適当な割合で混合し、これを感受性細胞(Baby Hamster Kidney細胞)に接種し、2日後に抗狂犬病ウイルスN蛋白に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞のフォーカスが形成されていないことを確認した。このことから、得られたモノクローナル抗体は、感受性細胞への感染性をなくすこと、すなわち当該モノクローナル抗体は、狂犬病ウイルス表面のG蛋白に結合性を有していると判断された。
【0097】
(1-8)モノクローナル抗体のアミノ酸分析
斯くして調製した細胞#4-12が産生するモノクローナル抗体(抗体#4-12)について、定法に従ってアミノ酸分析を行った。
【0098】
その結果、抗体#4-12は、配列番号2に示す137のアミノ酸の配列からなる重鎖領域と、配列番号4に示す98のアミノ酸の配列からなる軽鎖領域を有することが判明した。かかる重鎖領域のうち11〜108のアミノ酸領域が重鎖可変領域である。当該重鎖可変領域は、3つのフレームワーク領域(FWR1〜FWR3)と2つの相補性決定領域(CDR1とCDR2)から構成されている。具体的には、重鎖可変領域は、N側から順にFWR1(11-40のアミノ酸領域)、CDR1(31-45番目のアミノ酸領域)、FWR2(46-59番目のアミノ酸領域)、CDR2(60-76番目のアミノ酸領域)、およびFWR3(77-108番目のアミノ酸領域)から構成されている。
【0099】
また軽鎖領域のうち1〜72のアミノ酸領域が軽鎖可変領域である。当該軽鎖可変領域は、重鎖可変領域と同様に、3つのフレームワーク領域(FWR1〜FWR3)と2つの相補性決定領域(CDR1とCDR2)から構成されており、具体的には、N側から順にFWR1(1-7のアミノ酸領域)、CDR1(8-18番目のアミノ酸領域)、FWR2(19-33番目のアミノ酸領域)、CDR2(34-40番目のアミノ酸領域)、およびFWR3(41-72番目のアミノ酸領域)から構成されている。
【0100】
かかる重鎖領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号5に、また軽鎖領域のアミノ酸配列をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号6に、それぞれ示す。
【0101】
実施例2 判定具の作成
(1)金コロイド標識−抗狂犬病ウイルス抗体の調製
上記で調製したモノクローナル抗体(抗体#4-12)を用いて、金コロイド標識−抗狂犬病ウイルス抗体を調製した。具体的には、まず金コロイド液500mL中に、炭酸カリウム緩衝液中で0.1mg/mLに希釈した抗狂犬病モノクローナル抗体(抗体#4-12)25.0mLを加え、室温で30分間反応させた。次いで10g/dL濃度の牛血清アルブミン水溶液5mLを加えて、20分間反応させた。これを遠心分離した後、回収した沈渣を上記と同じ緩衝液で全量を100mLとし、これを金コロイド標識−抗狂犬病ウイルス抗体液とした。
(2)狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の作成
図1(B)に示すように、支持体10の上に、試料採取部(1)(シート21)、標識抗体部(2)(シート22)、判定部(3)(シート23)、および液吸収部(4)(シート24)の各吸液片が連続して積層されてなる判定具(幅6×長さ69mm)を用意した。なお、ここで支持体10はユポシート(ユポコーポレーション製)、試料採取部(1)(シート21)および標識抗体部(2)(シート22)はガラス繊維濾紙、判定部(3)(シート23)はニトロセルロース、および液吸収部(4)(シート24)はガラス繊維濾紙から構成されている。
【0102】
上記で調製したモノクローナル抗体#4-12を、上記判定具の判定部(3)の(a)テスト結果表示部(test line)に0.75μg/stripの割合で固定した。また(b)コントロール表示部(control line)に、標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識−抗体(第二抗体)として抗マウスIgGヤギ抗体(DAKO社から入手)を、0.70μg/stripの割合で固定した。なお、各部材への抗体の固定は、Bio-Dot社(米国)の塗布機を用いて、室温で当該抗体液を吹き付けて塗布し、次いで風乾することにより行った。
【0103】
また金コロイド標識−モノクローナル抗体は、上記判定具の(2)標識抗体部(シート22)に、1μg/stripの割合で吸着させた。具体的には、上記で調製した抗体液を、ガラス繊維濾紙からなるシート22に吸着させ、室温で乾燥させた。
【0104】
斯くして
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部(1)、
(2)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を担持した標識抗体部(2)
(3)下記のテスト結果表示部(a)及びコントロール表示部(b)を間隔をおいて備えた判定部(3)、
(a) 狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を固定したテスト結果表示部、
(b) 標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識−抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部、及び
(4) 上記試料採取部(1)、標識抗体部(2)及び判定部(3)を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えた狂犬病ウイルス中和抗体判定具を作成した。
【0105】
実施例3 狂犬病ウイルス中和抗体価の測定
以下の研究はすべて大分大学医学部の倫理委員会(IRB)の承認に基づいて行った。
(1)試料の調製
(1-1)被験試料の調製
被験試料としてヒトの血清を用いた。具体的には、血清は、過去に狂犬病ワクチンの接種を受けたことがある被験者(接種既往者)(n=27)、および一度もワクチン接種を受けていない被験者(接種非既往者)(n=10)から集めた。なお、上記接種に使用された狂犬病ワクチンは、その殆どが化血研製のヒト用組織培養狂犬病ワクチン(PCEC)であった。また接種既往者のうち5名に対してはさらに狂犬病ワクチン(PCEC)を接種し、当該被験者から再び血清を採取した。結果として、後述する測定には合計42検体の血清を用いた。
【0106】
上記各被験者から採取した血液から、遠心分離によって血清を分離し、56℃で30分間処理して不活性化(補体の非働化)させた後、使用するまで-20℃で保存した。
【0107】
(1-2)狂犬病ウイルスとその不活性化
狂犬病ウイルスとして、Challenge virus standard (CVS-11)株を用いた。本CVS-11ウイルスは2% FBSを含むEagle’s MEM 培地でbaby hamster kidney epithelial cell line (BHK-21) にて増殖させて、回収した。
【0108】
不活化CVS-11ウイルス(不活化ウイルス)は、以下のように調製した。BHK細胞にCVS-11をm.o.i. 0.1(細胞1個あたりウイルスを0.1感染単位)で感染させ、CO2存在下で37℃の条件で4日間培養した。4日後に培養上清を回収し、次いで、これを4℃で 2,800回転, 10分間の遠心することにより細胞を沈殿させ、上清を回収した。得られた上清に、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)を最終濃度0.05%となるように加え、37℃で48時間攪拌した。その後、ホルマリン処理した培養上清を16,000gで24時間高速遠心し、上清を除去した後、沈殿物を当初の液量の1/10のPBSに懸濁した。その後、4℃ で24時間PBSにて透析し、得られた透析物を最終標品(不活化狂犬病ウイルス)とした。
【0109】
4バッチ作成した最終標品(不活化狂犬病ウイルス)の蛋白濃度(Lowry法にて測定)はいずれも1.5−1.8mg/mlであり、ほぼ一定であった。また最終標品(不活化狂犬病ウイルス)をマウス神経芽細胞腫NA-C1300細胞またはBHK-21細胞に添加し、24時間後に、FITC-標識−抗狂犬病ウイルス抗体(Fujirebio Diagnostics, Inc., Malvern, PA, USA)を反応させ、蛍光顕微鏡下にて観察し、感染能力が残存していないこと、すなわち不活化されていることを確認した。
【0110】
(2)狂犬病ウイルス中和抗体価の測定
被験者から採取した血清について、狂犬病ウイルス中和抗体価の測定を、(a)従来法である迅速蛍光フォーカス抑制試験法(RFFIT)と、(b)本発明の迅速中和抗体価試験法(Rapid neutralizing antibody test:RAPINA test)の両方で行った。
【0111】
(2-1)迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)法
RFFIT法は、Smith et al.,(Bull WHO 1973;48;535-541)に記載された方法に従って行った。なおすべての血清サンプルの狂犬病ウイルス中和抗体価は二重測定した。
【0112】
具体的には、まず各血清サンプルを、96 穴プレートにて、2% FBS を含むEagle’s MEM 培地を用いて2倍段階希釈した。各well内の段階希釈血清に、30〜100 TCID50 (50% tissue culture infectious dose)のCVS-11ウイルスを接種し、5% CO2存在下にて37℃で90分間インキュベートした。その後、BHK-21細胞(1.0×106 cells/ml)をそれぞれのwellに加え、再度37℃にて24時間インキュベートした。その後、プレートを90%アセトンで固定し、FITC-標識−抗狂犬病ウイルス抗体(Fujirebio Diagnostics, Inc., Malvern, PA, USA)と37℃で45分間反応させた。
【0113】
次いで50% 蛍光フォーカス抑制濃度を、Speerman-Karber法にて計算した。中和抗体価は、WHO 標準血清との比較によりinternational units (IU/ml)で示された。
【0114】
(2-2)迅速中和抗体価試験法(RAPINA test)
本発明のRAPINA testは、実施例1で作成した狂犬病ウイルス中和抗体判定具を用いて実施した。当該判定具の試料採取部(1)(シート21)に被験試料(サンプル)を滴下すると、当該試料は吸液片上を、標識抗体部(2)(シート22)、判定部(3)(シート23)、および液吸収部(4)(シート24)へと進み、この際、被験試料中に狂犬病ウイルスのG蛋白が含まれていれば、標識抗体部(2)に吸着させた標識−抗狂犬病ウイルス抗体と結合し抗原−抗体複合体が形成される。この複合体は、被験試料とともに吸液片上をさらに進み、判定部(3)のテスト結果表示部(a)に固定された標識−抗狂犬病ウイルス抗体でトラップされ、この部位で発色し赤色のバンドとして確認できる(Nishizono A. et al. Microbiology and Immunology 2008, 52: 243-249)。
【0115】
図3は、狂犬病ウイルスのG蛋白を含む被験試料を判定具の試料採取部(1)に供した場合の反応模式図を示す。それに対して、図4は、被験試料中のG蛋白が狂犬病ウイルスの中和抗体で中和されている場合の反応模式図を示す。
【0116】
この判定具を用いて、狂犬病ウイルス中和抗体価の定性的測定系を構築した。具体的には、まず、WHOの国際標準である、狂犬病ウイルス中和抗体価が0.5 IU/mlおよび1.0 IU/mlのヒト血清を使用し、これを上記(1-2)で調製した不活化VS-11ウイルス(不活化ウイルス)と混合してCO2存在下、37℃で90分間インキュベートした。
【0117】
次いで、これを上記の判定具に試料採取部(1)に添加し、30分間経過後に判定部(3)のテスト結果表示部(a)の発色バンドの有無を観察した。その結果、狂犬病ウイルス中和抗体価が0.5 IU/mlの標準血清で処理した不活化ウイルスの場合、発色バンドが確認された。これは、中和抗体価0.5 IU/mlの血清では不活化ウイルス中のG蛋白を完全に中和することができないことを意味する。一方、狂犬病ウイルス中和抗体価が1.0 IU/mlの標準血清で処理した不活化ウイルスの場合、発色バンドが確認できなかった。これは、中和抗体価1.0 IU/mlの血清では不活化ウイルス中のG蛋白を完全に中和することができることを意味する。このことから、上記(1-2)で調製した不活化ウイルス(1.5mg/ml)は中和抗体価0.5〜1.0 IU/mlの中和抗体で中和することができることが判明した。すなわち、上記上記(1-2)で調製した不活化ウイルス(1.5mg/ml)と血清を混合して、これを被験試料として本発明の判定具に供したとき、(a)テスト結果表示部に赤色バンドが表出した場合は、対象とする血清中の中和抗体価は0.5 IU/ml以下であると判断することができ、また赤色バンドが表出しない場合は、対象とする血清中の中和抗体価は0.5 IU/ml以上であると判断することができる。
【0118】
これを基準として、中和抗体価0.5 IU/mlの中和抗体で中和されるように不活化ウイルスを調製した。かかる不活化ウイルスを各血清サンプル(n=42)と混合し、90分間、37℃でインキュベートし、これを上記と同様にして判定具の試料採取部(1)に添加し、30分間経過後に判定部(3)のテスト結果表示部(a)の発色バンドの有無を観察した。判定は各血清サンプルについてRFFIT法で測定した結果を知らない3名によりblindで行った。
【0119】
結果を表1および図5に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
図5中、横軸の「+」はRAPINA testにおける陽性反応(すなわち、血清の中和抗体価が0.5 IU/ml未満である場合)を、また「−」はRAPINA testにおける陰性反応(すなわち、血清の中和抗体価が0.5 IU/ml以上である場合)を示す。また縦軸は、RFFIT法で測定した血清中の中和抗体価(IU/ml)を意味する。
【0122】
この結果からわかるように、RAPINA testで赤色バンドが確認されたもの(陽性)の中にはRFFIT法にて中和抗体価0.5 IU/ml以上を示すものはいなかったが、RAPINA testで赤色バンド(陽性)が確認されなかったもの(陰性)の中にはRFFITでの中和抗体価が0.5 IU/ml未満のものも一部(1/18例)認められた。RFFITでの中和抗体価が1.0 IU/ml以上のものはすべてRAPINA testでも陰性として判断された(図5)。
【0123】
この結果から、RFFIT法での中和抗体価をGolden standardとして、本発明のRAPINA testによる狂犬病ウイルス中和抗体価の検出精度を評価した。結果を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表に示すように、sensitivity(中和抗体価0.5 IU/ml以上有する血清が本発明の判定具で陰性として判定される確率)89.5%、specificity(中和抗体価0.5 IU/ml未満の血清が本発明の判定具で陽性として判定される確率)95.7%、accuracy(RFFIT法との一致率)92.9%、陽性反応的中率(本発明の判定具で陽性と判定された血清が中和抗体価0.5 IU/ml未満である確率)91.7%、および陰性反応的中率(本発明の判定具で陰性と判定された血清が中和抗体価0.5 IU/ml以上である確率)94.4%であった。偽陰性は、陰性者18名のうち1名で確認されたが、これはワクチン接種既往者でRFFIT法における中和抗体価は0.4 IU/ml付近と、0.5 IU/mlと近似した中和抗体価を有していた例であった。ワクチン未接種者(接種非既往者)では1例も偽陰性は確認されず、sensitivityとspecificity はいずれも100%であった。これらの被験者は他のウイルスに対するワクチンを過去に接種していることから、本発明の方法は狂犬病ウイルス以外のウイルスに対しcross-reactivityはないと考えられる。
【0126】
偽陽性は陽性者24名のうち2名で確認された。1.0 IU/ml以上の中和抗体価を有する血清については、本発明の判定具の感度は100%であった。狂犬病ワクチン接種をスケジュール通り行うと、多くは1.0 IU/ml以上の中和抗体価を有することから、狂犬病ワクチン接種者において本発明のRAPINA testは有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】(A)および(B)とも本発明の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の一態様を示す図(横から見た図)である。図(A)は、判定部(3)にテスト結果表示部(a)だけを有する態様、図(B)は、判定部(3)にテスト結果表示部(a)とコントロール表示部(b)の両方を含む態様である。
【図2】本発明の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の一態様を示す図(斜視図)である。
【図3】本発明の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具に、狂犬病ウイルスを含む被験試料を供した場合の反応を示す模式図である。
【図4】本発明の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具に、中和抗体で中和された狂犬病ウイルスを含む被験試料を供した場合の反応を示す模式図である。
【図5】実施例2で行った狂犬病ウイルス中和抗体価の測定結果を、従来法である迅速蛍光フォーカス抑制試験(RFFIT)法と、本発明の迅速中和抗体価試験法(RAPINA test)とで比較した図である。
【符号の説明】
【0128】
10:支持体
21:試料採取部(1)を構成するシート
22:標識抗体部(2)を構成するシート
23:判定部(3) を構成するシート
24:液吸収部(4)を構成するシート
(a):テスト結果表示部
(b):コントロール表示部
(1):試料採取部
(2):標識抗体部
(3):判定部
(4):液吸収部
P:被験試料の流れる方法を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた、狂犬病ウイルス中和抗体価判定具であって、当該吸液片が
(1)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する標識−抗狂犬病ウイルス抗体を担持した標識抗体部、
(3)下記に示す、テスト結果表示部を備えた判定部、
(a)狂犬病ウイルスのG蛋白と特異的に反応する非標識−抗狂犬病ウイルス抗体を固定したテスト結果表示部、
(4)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【請求項2】
上記(3)判定部が、(a) テスト結果表示部と間隔をおいて、さらに下記に示すコントロール表示部を備えていることを特徴とする、請求項1記載の狂犬病ウイルス中和抗体価判定具:
(b)標識−抗狂犬病ウイルス抗体と反応する非標識−抗体を固定したコントロール表示部。
【請求項3】
標識−抗狂犬病ウイルス抗体および非標識−抗狂犬病ウイルス抗体で用いる抗狂犬病ウイルス抗体が、配列番号1に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【請求項4】
標識−抗狂犬病ウイルス抗体および非標識−抗狂犬病ウイルス抗体で用いる抗狂犬病ウイルス抗体が、配列番号2に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖領域、および配列番号4に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具。
【請求項5】
不活化した狂犬病ウイルスと被験者体液との混合物を被験試料として、請求項1乃至4のいずれかに記載する狂犬病ウイルス中和抗体価判定具の試料採取部に供する工程、および当該判定具の判定部内のテスト結果表示部の発色を検出する工程を有する、被験者体液における狂犬病ウイルス中和抗体価を測定する方法。
【請求項6】
不活化した狂犬病ウイルスの量として、中和抗体価0.5IU/mlの中和抗体で中和され、且つ中和抗体価1.0IU/mlの中和抗体で中和されない量を用いることを特徴とする請求項5に記載する方法。
【請求項7】
被験者血清として狂犬病ワクチン接種者および狂犬病ワクチン接種後のヒトを除く動物の血清を用いる、請求項5または6に記載する方法。
【請求項8】
配列番号1に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号3に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項9】
配列番号2に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖領域、および配列番号4に記載するアミノ酸配列またはそれと95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖領域を含み、且つ狂犬病ウイルスのG蛋白に特異的に結合することを特徴とする、請求項8に記載するモノクローナル抗体。
【請求項10】
請求項9に記載するモノクローナル抗体をコードする遺伝子であって、配列番号5に記載する塩基配列および配列番号6に記載する塩基配列を、それぞれ当該モノクローナル抗体の重鎖領域をコードする塩基配列および軽鎖領域をコードする塩基配列として含むことを特徴とする、上記遺伝子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85126(P2010−85126A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251787(P2008−251787)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(595008711)アドテック株式会社 (5)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】