説明

独楽玩具

【課題】
フライホイールの回転を独楽本体に伝達して、フライホイールと独楽本体の回転を一体化することができる興趣ある独楽玩具を提供する。
【解決手段】
独楽玩具1は、独楽本体10と、独楽本体10の略中心に回動可能に設けられた回転軸2と、独楽本体10内に設けられ、回転軸2に固定されたフライホイール31と、回転軸2に取り付けられたピニオン45とからなる。フライホイール31には、独楽本体10の内面に形成された係合部20に係脱する係合部材40が設けられている。係合部材40は、独楽本体10の係合部20に係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能であって、フライホイール31の回転時に係合部20と係合してフライホイール31の回転を独楽本体10に伝達するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールを内蔵した独楽玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、独楽玩具は、独楽本体と、独楽本体の略中心に回動可能に設けられた回転軸と、独楽本体内に設けられ、回転軸に固定されたフライホイールと、回転軸に取り付けられたピニオンとからなる(例えば、特許文献1、2)。この従来の独楽玩具は、回転軸に設けられたピニオンにラックを噛み合わせ、ラックを引っ張ることにより、フライホイールが高速回転し、その回転慣性力により、独楽本体が連動して回転してもその回転を止めても回転軸を立たせた状態で維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭47−9596号公報
【特許文献2】実用新案登録第3025017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した独楽玩具は、フライホイールの回転によって独楽本体も連動して回転してしまうものの、フライホイールの回転が独楽本体に能動的に伝達されていないため、外力によって独楽本体の回転が簡単に止まるという問題点があった。従って、上記した独楽玩具は、複数の独楽同士を接触させて戦わせても回転による瞬発的衝突力を伴う迫力が得られないという問題点があった。また、従来のフライホイールを内蔵した独楽玩具において、回転しているフライホイールを積極的に止めることを案出したものはなく、さらに従来の独楽玩具は、フライホイールの回転によって独楽本体も連動して回転してしまうので、独楽本体に取り付けた装飾体も回転してしまうという問題点があった。
【0005】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、フライホイールの回転を独楽本体に能動的に伝達して、独楽本体とフライホイールを一体化して回転させることができる一方、回転している独楽本体を制動するとフライホイールの回転を停止させることができる、興趣ある独楽玩具を提供することを第1の目的とする。また、前記効果を有する独楽本体に枠部材を回動可能に取り付けた興趣ある独楽玩具を提供することを第2の目的とする。枠部材に設けられた回動部材において、回転時の独楽本体に外力による衝撃により回動して当接し、この回転を停止させるブレーキ片を備えた興趣ある独楽玩具を提供することを第3の目的とする。枠部材に走行面の案内溝に案内される回動可能なガイド片を備え、枠部材及び装飾体の向きを安定させることができる興趣ある独楽玩具を提供することを第4の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1記載の独楽玩具は、上記第1の目的を達成するため、独楽本体と、独楽本体の略中心に回動可能に設けられた回転軸と、独楽本体内に設けられ、回転軸に固定されたフライホイールと、回転軸に取り付けられたピニオンとからなる独楽玩具において、フライホイールには、独楽本体の内面に断続的に形成された係合部に係脱する係合部材が設けられており、係合部材は、独楽本体の係合部に係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能であって、フライホイールの回転時に係合部材が係合部に係止され、略係合部に圧接されてフライホイールの回転を独楽本体に伝達するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本願請求項2記載の独楽玩具は、上記第1の目的を達成するため、係合部材は、フライホイールに形成された凹部に設けられた球体であり、フライホイールと独楽本体の回転時に独楽本体を制動すると、係合部を係脱しながら回転速度が減速され、この抵抗力で係止しながらフライホイールの回転を停止させるように構成されていることを特徴とする。また、前記係合部は突出部位を形成してなるもので、この突出量が回転もしくは制動の伝達速度ならびに伝達強度を調整ならしむものである。
【0008】
本願請求項3記載の独楽玩具は、上記第2の目的を達成するため、前記独楽本体に回動可能に取り付ける枠部材を有し、枠部材には、持ち手部と前記回転軸のピニオンと噛み合うラックを案内する案内部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本願請求項4記載の独楽玩具は、上記第3の目的を達成するため、前記枠部材には、独楽本体に接離可能なブレーキ片を備えた回動部材が設けられており、回動部材は、ブレーキ片が独楽本体から離間する非当接位置と、ブレーキ片が独楽本体に当接する当接位置に回動可能であり、衝撃時に非当接位置から当接位置に回動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項5記載の独楽玩具は、上記第4の目的を達成するため、前記枠部材には、自重により走行面に当接する回動可能なガイド片を有し、走行面に形成された案内溝にガイド片が案内されると、独楽本体が案内溝に沿って進行可能となると共に枠部材の向きが保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明に係る独楽玩具は、枠部材の持ち手部を把持し、ラック案内部を経てピニオンにラックを噛み合わせ、ラックを引っ張ることにより、回転軸を介してフライホイールが回転し、フライホイールに設けられた係合部材が遠心力により非係合位置から係合位置に移動し、断続的に係合部に係脱しながら係止され、略係合部を圧接して独楽本体に回転力を伝達する。枠部材の持ち手部が把持され固定された状態で、この内部でフライホイールは回動自由な独楽本体と一体化して回転慣性力を維持する。さらに、本願発明に係る独楽玩具は、枠部材の露出部から独楽本体そのものを把持もしくは外部衝撃等によりその回転を制動させると、圧接されていた係合部材が独楽本体の係合部を係脱し、内部衝撃を伴って逆にフライホイールの回転を弱め、フライホイールの回転を停止させることができるという効果がある。また、高速回転するフライホイールに直接触れることがなく、安全性が高い効果も伴う。
【0012】
本願発明に係る独楽玩具は、係合部材が球体であると、独楽本体の係合部に対する係脱がスムーズに行われ、フライホイール及び独楽本体の損傷を少なくし、寿命を大幅に向上させることができるという効果がある。また、係合部は独楽本体内面に突出部位を形成してなるもので、この突出量を調整することによって独楽本体を回転させる伝達速度、ならびに独楽本体を制動させたときの衝撃力を調整することができる。
【0013】
本願発明に係る独楽玩具は、前記独楽本体に回動可能に取り付ける枠部材を有し、枠部材には、前記回転軸のピニオンと噛み合うラックを案内する案内部が形成されており、枠部材の持ち手部を把持してラックを引くことによってフライホイールを回転させることができ、係合部材を経てほぼ同時に独楽本体にも回転力を伝達してこれを回転させ、回転エネルギーの損失を最小限にすることができるという効果がある。
【0014】
本願発明に係る独楽玩具は、衝撃時に枠部材に設けられた回動部材が回動してブレーキ片が独楽本体の当接位置に移動し、独楽本体の回転を阻止し、フライホイールの回転により遠心力で係合位置に移動している係合部材が独楽本体の係合部に係脱してフライホイールの回転を弱め、フライホイールの回転を積極的に停止させることができるという効果がある。
【0015】
本願発明に係る独楽玩具は、枠部材に走行面の案内溝に案内される回動可能なガイド片を備えているので、走行面に形成された案内溝にガイド片が案内されると、独楽本体が案内溝に沿って進行可能となると共に、枠部材とこの回動部材に取り付けた装飾体の向きを一定方向に安定させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に係る独楽玩具の全体斜視図である。
【図2】図1の独楽玩具の説明図であって、(a)が上面図、(b)が下面図である。
【図3】図1の独楽玩具の説明図であって、(a)が正面図、(b)が図2のA−A断面図である。
【図4】図1の独楽玩具の説明図であって、(a)が側面図、(b)が図2のB−B断面図、(c)が図2のC−C断面図である。
【図5】図1の独楽玩具の内部構造図であって、(a)が全体正面断面図、(b)が独楽本体の正面断面図である。
【図6】図1の独楽玩具の独楽本体を構成する下ケースの説明図である。
【図7】図1の独楽玩具の独楽本体を構成する上ケースの説明図である。
【図8】図1の独楽玩具のフライホイールの説明図である。
【図9】図1の独楽玩具のピニオン部材の説明図である。
【図10】図1の独楽玩具の下枠体の説明図である。
【図11】図1の独楽玩具のガイド片の説明図である。
【図12】図1の独楽玩具の上枠体の説明図である。
【図13】図1の独楽玩具の回動部材の説明図である。
【図14】図1の独楽玩具のラック部材の説明図である。
【図15】図1の独楽玩具を走行させる走行盤の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の一つの実施の形態の概要を図1乃至図5に基づいて説明する。独楽玩具1は、独楽本体10と、独楽本体10の略中心に回動可能に設けられた回転軸2と、独楽本体10内に設けられ、回転軸2に固定されたフライホイール31と、回転軸2に取り付けられたピニオン45とからなる。フライホイール31には、独楽本体10の内面に断続的に形成された係合部20に係脱する係合部材40が設けられている。係合部材40は、独楽本体10の係合部20に係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能であって、フライホイール31の回転時に係合部20に係止され、略係合部に係合してフライホイール31の回転を独楽本体10に伝達するように構成されている。
【0018】
独楽玩具1の係合部材40は、フライホイール31に形成された凹部39に設けられた球体であり、フライホイール31と独楽本体10の回転時に独楽本体10を制動すると、係合部20に係脱しながらその抵抗力でフライホイール31を係止し、この回転を停止させるように構成されている。また、係合部20は独楽本体内面に突出部位を形成してなるもので、この突出量を調整することによってフライホイール31の回転を独楽本体10に伝達するときの伝達速度、ならびに独楽本体10を制動させたときに発生する衝撃力の強度を調整することができる。これは、素手で回転する独楽本体に触れてしまった場合でも衝撃力が緩和され、フライホイールには直接触れることがなく、安全性が高い効果を伴う。独楽玩具1は、前記独楽本体10に回動可能に取り付ける枠部材50を有する。枠部材50には、持ち手部90と前記回転軸2のピニオン45と噛み合うラック5を案内する案内部71,72が形成されている。
【0019】
独楽玩具1の前記枠部材50には、独楽本体10に接離可能なブレーキ片95を備えた回動部材91が設けられている。回動部材91は、ブレーキ片95が独楽本体10から離間する非当接位置と、ブレーキ片95が独楽本体10に当接する当接位置に回動可能であり、衝撃時に非当接位置から当接位置に回動するように構成されている。また、独楽玩具1の前記枠部材50には、自重により回動して走行面101に当接するガイド片81を有し、走行面101に形成された案内溝102にガイド片81が案内されると、独楽本体10が案内溝102に沿って進行可能となると共に枠部材50の向きが保持される。
【0020】
独楽玩具1は、枠部材50の持ち手部90を把持し、ピニオン45にラック5を噛み合わせ、ラック5を引っ張ることにより、回転軸2を介してフライホイール31が回転をし、フライホイール31の回転慣性力により独楽本体10の回転軸2を立たせた状態で維持することができる。回転を与えられたフライホイール31に設けられた係合部材40は、遠心力により係合位置に移動し、係合部20に係脱しながら静止状態にある独楽本体10に回転力伝達を開始する。
【0021】
独楽本体10が回転を始め、係合位置に移動した係合部材40が係脱を経て係合部20に係止され、略係合部に係合して圧接すると、独楽本体10はフライホイール31と一体化して回転するようになる。この一連の動作は瞬時にして行われ、フライホイール31と独楽本体10は枠部材50に対して回動自由であり、かつ枠部材50は把持により固定されているので、回転エネルギーの損失を最小限に留めてフライホイール31と独楽本体10とをほぼ同時に一体化して回転させることができる。また、独楽玩具1は、枠部材50の露出部から回転中の独楽本体10そのものを把持もしくは外部衝撃等によりその回転を停止させると、圧接されていた係合部材40が独楽本体10の係合部20に係脱し、内部衝撃を伴って逆にフライホイール31の回転を弱め、フライホイール31の回転を停止させることができる。これは、高速回転するフライホイールに直接触れることがなく、安全性が高い効果も伴う。
【0022】
独楽玩具1は、係合部材40が球体であると、独楽本体10の係合部20に対する係脱がスムーズに行われ、フライホイール31及び独楽本体10の損傷を少なくし、寿命を大幅に向上させることができる。この係合部20は突出部位を形成してなるもので、この突出量を調整することによってフライホイール31の回転を独楽本体10に伝達するときの伝達速度、ならびに独楽本体10を制動させたときにフライホイール31との間に発生する衝撃力ひいては制動力の強度を調整することができる。これは、素手で回転する独楽本体に触れてしまった場合でも衝撃力が緩和され、安全性が高い効果を伴う。また、独楽玩具1は、前記独楽本体10に回動可能に取り付けた枠部材50を有し、枠部材50には、前記回転軸2のピニオン45と噛み合うラック5を案内する案内部71,72が形成されている。さらに、枠部材50は持ち手部90を有しているので、これを把持してラック5を引くとフライホイール31を楽に回転させることができる。
【0023】
独楽玩具1は、衝撃時に回動部材91が回動してブレーキ片95が独楽本体10の当接位置に移動し、独楽本体10の回転を阻止し、フライホイール31の回転により遠心力で係合位置に移動している係合部材40が独楽本体10の係合部20に係脱してフライホイール31の回転を弱め、フライホイール31の回転を停止させることができる。独楽玩具1は、枠部材50に走行面101の案内溝102に案内される回動可能なガイド片81を備えているので、走行面101に形成された案内溝102にガイド片81が案内されると、独楽本体10が案内溝102に沿って進行可能となると共に枠部材50とこれに取り付けられる装飾体99の向きを一定方向に安定させることができる。
【0024】
さらに、独楽玩具1について詳細に説明する。図1に示すように、独楽本体10は、下ケース11と上ケース21とからなり、円盤状に形成されている。図6に示すように、下ケース11は、円板状の底壁12と、底壁12の周囲に形成された下周壁13とからなる。底壁12の内側面略中央には、円形の嵌合凸部14が形成され、底壁12の外側面略中央には、円形の凹部15が形成されている。さらに、嵌合凸部14の略中心には、底壁12を貫通する軸受け孔16が形成されている。下周壁13の内側面には、略90度間隔でボス17が突設されている。各ボス17には、雌ネジ孔18が形成され、内側端に係合板19が設けられている。係合板19の内面略中央には、係合凸部(係合部)20が形成されている。
【0025】
図7に示すように、上ケース21は、円板状の上壁22と、上壁22の周囲に形成された上周壁23とからなる。上壁22の略中央には、上壁22を貫通する軸受け孔26が形成されている。上周壁23には、略90度間隔で前記下ケース11の係合板19を嵌め込む切り欠き27が形成されている。この切り欠き27の略中心には、前記下ケース11のボス17を嵌合する嵌合凹部29が形成されている。嵌合凹部29の略中心には、前記ボス17の雌ネジ孔18と略同一軸心となる通し孔28が設けられている。
【0026】
図5に示すように、独楽本体10は、下ケース11と上ケース21を重ね合わせることによって形成され、下ケース11の下周壁13の内側に上ケース21の上周壁23が位置する。さらに、下ケース11の係合板19が上ケース21の切り欠き27に嵌め込まれ、下ケース11のボス17の先端が上ケース21の嵌合凹部29に嵌合する。上ケース21の通し孔28にネジを通し、このネジを下ケース11の雌ネジ孔18に螺合することにより、上ケース21と下ケース11が一体化して独楽本体10を構成する。独楽本体10は、上壁22と底壁12と上周壁23と係合板19とによって空間が形成されることになる。この空間の周壁は、上周壁23と等間隔で設けられた係合板19とによって構成され、略90度間隔で係合凸部(係合部)20が配置された構成となる。
【0027】
図8に示すように、フライホイール31は、慣性質量の大きい金属などによって円盤状に形成されている。フライホイール31は、略中心に回転軸2を固定する中心孔32が形成され、上面33に前記中心孔32を中心とする円形の取付凹部35が設けられ、下面36に前記中心孔32を中心とする円形のガイド凹部37が設けられている。また、フライホイール31は、周面38の対向する位置に収納凹部39,39が形成されている。図5に示すように、当該収納凹部39内には、金属製の球体40が収納される。
【0028】
図5に示すように、フライホイール31の取付凹部35には、ピニオン部材41が固定される。図9に示すように、ピニオン部材41は、円板状のフランジ42と、フランジ42の略中心に形成された円軸部43と、円軸部43の先端に設けられたピニオン45とからなる。ピニオン部材41は、フランジ42がフライホイール31の取付凹部35に嵌合し、ネジ等の固定手段によってフライホイール31に固定されている。ピニオン部材41は、中心に軸孔46が貫通して形成され、前記回転軸2が軸孔46に挿通固定される。
【0029】
フライホイール31は、前記独楽本体10内に回動可能に取り付けられる。フライホイール31に取り付けられたピニオン部材41の円軸部43は、上ケース21の軸受け孔26に軸受けされ、ピニオン45が上ケース21の上壁22から外側に突出している。また、回転軸2は、下部が下ケース11の底壁12に形成された軸受け孔16に軸受けされ、底壁12から下側に突出している。下ケース11の嵌合凸部14は、フライホイール31のガイド凹部37に嵌合する。フライホイール31の収納凹部39内に設けられた球体40は、収納凹部39内を出没することができ、収納凹部39内に没入すると、上周壁23及び係合板19と接触しない非接触位置(非係合位置)に移動し、収納凹部39内から突出すると、上周壁23及び係合板19と接触する接触位置(係合位置)に移動する。
【0030】
図1に示すように、枠部材50は、下枠体51と、上枠体61とからなる。図10に示すように、下枠体51は、略コ字状に形成され、下壁52と、下壁52の両側に形成された下部連結脚53,53とからなる。下壁52の内側面略中央には、円形の嵌合突起54が形成され、下壁52の内側面略中央には、円形の凹部55が形成されている。さらに、嵌合突起54の略中心には、下壁52を貫通する軸受け孔56が形成されている。下壁52の外側面には、一対の軸受け片57,57が突設されている。軸受け片57には、軸受け穴58が形成されている。一対の軸受け片57,57の略中心と軸受け孔56の略中心を結ぶ延長線が、枠部材50の略中心線となる。
【0031】
図4に示すように、下枠体51の軸受け片57,57間には、ガイド片81が設けられている。図11に示すように、ガイド片81は、略L字状のガイドアーム82と、ガイドアーム82の一端に取り付けられた取付ボス83とからなる。取付ボス83の略中心には、軸孔85が形成されている。ガイド片81は、取付ボス83が下枠体51の軸受け片57,57間に配設され、支軸86を軸受け片57,57の軸受け穴58,58と取付ボス83の軸孔85に挿通することによって、軸受け片57,57に回動可能に取り付けられ、ガイドアーム82が揺動するようになっている。
【0032】
図12に示すように、上枠体61は、略コ字状に形成され、上壁62と、上壁62の両側に形成された上部連結脚63,63とからなる。上壁62の略中央には、前記ピニオン45を突出させる開口64が形成されている。上壁62の上面には、開口64を覆う矩形状のカバー体65が設けられている。カバー体65は、上壁66と、前壁67と、後壁68と、左壁69と、右壁70とからなる。前壁67及び後壁68には、ラック部材3を案内してピニオン45にラック5を噛み合わせる左案内口71と右案内口72が形成されている。上壁62の後縁近傍には、半円状に形成された摺接突起75,75が一対設けられている。また、左壁69及び右壁70の後縁近傍には、逆U字状の軸受け凹部76,76が設けられている。また、上壁66の内面には、回転軸2の軸受け穴78が形成されている。なお、ラック部材3は、図14に示すように、ラック5と、ラック5の一端に設けられた摘み部6とからなり、摘み部6には指掛け穴7が形成されている。
【0033】
上枠体61には、回動部材91が回動可能に取り付けられている。図13に示すように、回動部材91は、作動板92と、作動板92の両側に設けられた脚片93,93と、脚片93,93の後端に形成されたブレーキ片95,95とからなる。作動板92は、前記上枠体61の軸受け凹部76,76に脚片93,93が支軸94,94によって回動可能に連結され、上枠体61の前記摺接突起75,75に摺接する半円状の摺接凸部96,96が形成されている。
【0034】
摺接凸部96,96は、U字状の切り欠き97,97によって弾性を備えており、上枠体61の前記摺接突起75,75に圧接する。前記ブレーキ片95,95は、回動部材91が回動すると、上枠体61,61に形成された開口77,77から上枠体61,61の内側に突出し、独楽本体10の上ケース21の上壁22に当接し、独楽本体10の回転にブレーキをかけることができる。回動部材91は、摺接凸部96,96と摺接突起75,75との摺接により、ブレーキ片95,95の当接位置と非当接位置に位置決めされる。図4に示すように、回動部材91の作動板92には、人形玩具の胴部、頭部等の装飾体99を装着することができる係止爪98,98が形成されている。
【0035】
図3に示すように、枠部材50は、上枠体61の軸受け穴78に回転軸2の上部を回動可能に差し込み、下枠体51の軸受け孔56に回転軸2の下部を回動可能に差し込み、上枠体61の上部連結脚63,63と下枠体51の下部連結脚53,53をネジ等により固定して形成される。回転軸2のピニオン45は、上枠体61のカバー体65内に位置する。下枠体51の嵌合突起54は、下ケース11の凹部15に嵌合する。回転軸2は、下部が下枠体51の凹部55内に突出し、この突出した回転軸2の下部に回転軸カバー8が固定して装着されている。なお、枠部材50は、これの把持を容易にするため持ち手部90を形成することが望ましい。持ち手部90は、上枠体61の上部連結脚63,63と、下枠体51の下部連結脚53,53の接合によって取り付けられる構成にすることが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0036】
独楽玩具1は、上記構成を有し、走行盤に載せて以下のように使用することができる。なお、走行盤100は、一段低くなった走行面101と、同じく一段低くなった案内溝102を有し、走行面101と案内溝102は連続している。
【0037】
独楽玩具1は、回動部材91のブレーキ片95が独楽本体10から離間している非当接位置に位置している状態の時が初期状態であって、摺接凸部96と摺接突起75とによって位置決めされている。枠部材50の持ち手部90を把持し、枠部材50の左案内口71(又は右案内口72)からラック部材3を差し込むと、ラック5が回転軸2のピニオン45と噛み合う。ラック部材3を引っ張ると、ラック5がピニオン45を回転させ、回転軸2を介してフライホイール31が高速回転する。フライホイール31が高速回転するので、遠心力により球体40が係合位置に移動して独楽本体10の係合凸部20に係止され略係合部に係合し、独楽本体10も回転する。
【0038】
独楽玩具1は、フライホイール31を回転させた状態で走行盤100の走行面101に載せると、このフライホイール31の回転慣性力により、回転軸カバー8が接地した状態で回転軸2を中心にして立つことになる。独楽玩具1が走行面101に位置している時には、回転軸2及びガイド片81が何等規制されていないので、回転軸2の回転に伴って枠部材50も回転を行う。枠部材50の回動部材91の係止爪98,98に取り付けられた装飾体99も回転を行う。
【0039】
独楽玩具1が案内溝102に移動すると、回転軸2及びガイド片81が案内溝102に案内されることになり、枠部材50及び装飾体99が所定方向を向いて移動する。即ち、独楽玩具1は、走行面101の時には、何等規制されず自由に移動し、枠部材50及び装飾体99が回転するが、案内溝102に移動すると、回転軸2及びガイド片81が案内溝102に案内され、枠部材50及び装飾体99が所定方向を向いて移動する。
【0040】
複数の独楽玩具1を走行盤100に載せると、複数の独楽玩具1は、装飾体99同士が衝突することになる。装飾体99の衝突によって、一方又は両方の回動部材91が回転し、ブレーキ片95,95が上枠体61の開口77,77から下方に突出して独楽本体10に当接する。独楽本体10は、ブレーキ片95,95によって回転が阻止され、回転速度を徐々に落として停止する。独楽本体10が回転を停止するので、フライホイール31の球体40が独楽本体10の係合凸部20に係脱しながら回転を減速し、フライホイール31も回転を停止して、独楽玩具1は倒れる。このように、独楽玩具1は、格闘ゲームとしても利用することができ、装飾体99が衝撃を受けて回動すると、フライホイール31の回転が停止して倒れ、戦いに負けた事になる。
【0041】
上記実施の形態では、独楽本体10の係合部を係合凸部20で説明したが、係合部を係合凹部で構成しても構わない。このように構成しても、フライホイール31の回転による遠心力により付勢された球体40が独楽本体10の係合凹部に係合して、フライホイール31の回転を独楽本体10に伝達することができる。このように、独楽本体10の係合部は、球体40が係脱可能に係合する構成であれば良いので、設計技術上多種多様な構成が考えられる。また、フライホイール31の係合部材は、球体40で説明したが、フライホイール31の回転による遠心力によりフライホイール31から突出して独楽本体10の係合部に係合する構成であれば良いので、球体に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本願発明は、フライホイールを内蔵した独楽玩具に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 独楽玩具
2 回転軸
3 ラック部材
5 ラック
6 摘み部
7 指掛け穴
8 回転軸カバー
10 独楽本体
11 下ケース
12 底壁
13 下周壁
14 嵌合凸部
15 凹部
16 軸受け孔
17 ボス
18 雌ネジ孔
19 係合板
20 係合凸部(係合部)
21 上ケース
22 上壁
23 上周壁
26 軸受け孔
27 切り欠き
28 通し孔
29 嵌合凹部
31 フライホイール
32 中心孔
33 上面
35 取付凹部
36 下面
37 ガイド凹部
38 周面
39 収納凹部
40 球体(係合部材)
41 ピニオン部材
42 フランジ
43 円軸部
45 ピニオン
46 軸孔
50 枠部材
51 下枠体
52 下壁
53 下部連結脚
54 嵌合突起
55 凹部
56 軸受け孔
57 軸受け片
58 軸受け穴
61 上枠体
62 上壁
63 上部連結脚
64 開口
65 カバー体
66 上壁
67 前壁
68 後壁
69 左壁
70 右壁
71 左案内口
72 右案内口
75 摺接突起
76 軸受け凹部
77 開口
78 軸受け穴
81 ガイド片
82 ガイドアーム
83 取付ボス
85 軸孔
86 支軸
90 持ち手部
91 回動部材
92 作動板
93 脚片
94 支軸
95 ブレーキ片
96 摺接凸部
97 切り欠き
98 係止爪
99 装飾体
100 走行盤
101 走行面
102 案内溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
独楽本体と、
独楽本体の略中心に回動可能に設けられた回転軸と、
独楽本体内に設けられ、回転軸に固定されたフライホイールと、
回転軸に取り付けられたピニオンとからなる独楽玩具において、
フライホイールには、独楽本体の内面に形成された係合部に係脱する係合部材が設けられており、
係合部材は、独楽本体の係合部に係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能であって、フライホイールの回転時に略係合部と係合してフライホイールの回転を独楽本体に伝達するように構成されていることを特徴とする独楽玩具。
【請求項2】
係合部材は、フライホイールに形成された凹部に設けられた球体であり、フライホイールと独楽本体の回転時に独楽本体が制動されると、係合部を係脱しながらフライホイールの回転を停止させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の独楽玩具。
【請求項3】
前記独楽本体に回動可能に取り付ける枠部材を有し、
枠部材には、持ち手部と前記回転軸のピニオンと噛み合うラックを案内する案内部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の独楽玩具
【請求項4】
前記枠部材には、独楽本体に接離可能なブレーキ片を備えた回動部材が設けられており、
回動部材は、ブレーキ片が独楽本体から離間する非当接位置と、ブレーキ片が独楽本体に当接する当接位置に回動可能であり、衝撃時に非当接位置から当接位置に回動するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の独楽玩具。
【請求項5】
前記枠部材には、自重により走行面に当接する回動可能なガイド片を有し、
走行面に形成された案内溝にガイド片が案内されると、独楽本体が案内溝に沿って進行可能となると共に枠部材の向きが保持されることを特徴とする請求項3又は4記載の独楽玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−201015(P2010−201015A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50578(P2009−50578)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(592184418)株式会社エムエスシ− (4)
【出願人】(593152454)有限会社ジェノイド・プロトデザイン (8)
【Fターム(参考)】