説明

独活葛根湯エキス配合剤

【課題】本発明は、独活葛根湯エキス配合剤を提供することを目的とする。
【解決手段】グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンが0.5重量部以上を含有する独活葛根湯エキス配合剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独活葛根湯エキス配合剤に関する。本発明は、特に、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対してペオニフロリンを一定以上の割合で含有する独活葛根湯エキス配合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活の中でしばしば経験する症状に、肩こり、寝違え、四十肩、五十肩等がある。例えば、近年の高度情報化社会では、コンピュータを使用する業務が増加している。このような職場環境では、長時間VDT(Visual Display Terminal)に向う仕事などによって肩に負担がかかりやすく、従って、肩こりなどの愁訴が問題となっている。また、寝違えは、ひどい痛みを伴う場合があり、早急に痛みを軽減乃至解消することが求められている。このように、肩こり、寝違え、四十肩、五十肩等の症状は、患者に痛み、不快感、倦怠感などの肉体的苦痛及び精神的苦痛を与え、従って、生活の質(Quality of Life)を低下させることから、これらの症状の効果的な改善方法が強く求められている。
【0003】
これらの症状の改善方法の一つとして、症状に応じた薬物が用いられている。例えば、いわゆる「こり感」を伴う場合には非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋の緊張が高い場合や硬結が触知される場合には筋弛緩剤、漢方薬では独活葛根湯などが使用されている。
【0004】
独活葛根湯は、抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用、血行促進作用のある漢方薬であり(例えば特許文献1、非特許文献1及び2)、肩こりをはじめとする肩背の症状に広く適用されている。しかしながら、独活葛根湯の従来の適用対象は症状が軽いものに限られ、すなわち、独活葛根湯の効果が不十分であるとの問題点があった。
【0005】
また、漢方の分野においては、原料となる生薬の配合割合については規定があるものの、最終的に得られる漢方製剤に含有される各有効成分の量については明確な規定がない。従って、産地や収穫時期等によって原料となる生薬自体の品質にバラツキがあり、このため調製される漢方製剤中の有効成分の量も一定に保持されていないことが多い。また、抽出条件等によっても抽出される有効成分の量は大きく変動し、また、抽出条件等は調合者の裁量に委ねられていることから、漢方製剤の品質が調合者によって異なることも問題となっている(例えば非特許文献3及び4参照)。
【0006】
また、独活葛根湯などの甘草を含有する漢方薬において、その有効性を高めるために、甘草中の成分であるグリチルリチン酸の抽出効率を上げる試みがしばしば行われている。しかしながら、漢方製剤中のグリチルリチン酸の含有量を高めると、グリチルリチン酸の過剰摂取による偽アルドステロン症の発症といった副作用を引き起こすことも問題となっている(例えば非特許文献5及び6参照)。
【0007】
これらの背景から、抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が高く、且つ安全性が高い漢方製剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−288101
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】月刊漢方療法Vol.12, No 1(2008) 31-43頁
【非特許文献2】和漢医薬学雑誌Vol.13, No 2(1996) 185-189頁
【非特許文献3】月刊薬事Vol.27, No.6, (1985) 1927−1933頁
【非特許文献4】臨床薬理Vol.21, No.1, (1990) 305−310頁
【非特許文献5】日本病院薬剤師会雑誌Vol.43, No.9, (2007) 1171−1173頁
【非特許文献6】漢方調剤研究Vol.13, No.1, (2005) 14−17頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が高く、且つ安全性が高い独活葛根湯エキス配合剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、独活葛根湯エキスに含まれるグリチルリチン酸とペオニフロリンを一定の比率に調整することにより、驚くべきことに、グリチルリチン酸の抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が顕著に増強することを見出した。本願発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、次の実施態様を包含するものである。
項1.グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5重量部以上含有する独活葛根湯エキス配合剤。
項2.グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5〜50重量部含有する、項1に記載の独活葛根湯エキス配合剤。
項3.グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5〜10重量部含有する、項1又は2に記載の独活葛根湯エキス配合剤。
項4.グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを3〜5重量部含有する、項1〜3のいずれかに記載の独活葛根湯エキス配合剤。
項5.1日投与単位あたりグリチルリチン酸及びその塩の総量を5〜15mg含有する、項1〜4のいずれかに記載の独活葛根湯エキス配合剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対してペオニフロリンが一定以上の割合で含有されていることから、グリチルリチン酸に由来する抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が顕著に高められている。
【0013】
従来、グリチルリチン酸における抗酸化作用等は知られているが、本発明の独活葛根湯エキス配合剤では、ペオニフロリンによって、グリチルリチン酸及びその塩の抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が相乗的に高められている。
【0014】
このため、本発明の独活葛根湯エキス配合剤を摂取又は服用することにより、肩こり、四十肩、五十肩等の疾患を、従来と比較して迅速且つ効率よく軽減乃至解消することが可能である。また、寝違えは、肩こりよりも炎症の程度が高いが、本発明の独活葛根湯エキス配合剤によれば、このように炎症の程度の高い寝違えなどに対しても、これまでにない顕著に優れた軽減乃至解消効果を発揮でき且つ即効性を備えている。
【0015】
また、本発明の独活葛根湯エキス配合剤では、グリチルリチン酸及びその塩の抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が相乗的に高められていることから、グリチルリチン酸の過剰摂取による偽アルドステロン症の発症等の副作用を効果的に防止しながら、グリチルリチン酸に由来する抗酸化作用等を有意に発揮させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対してペオニフロリンが一定以上の割合で含有されていることを特徴とする。以下、本発明について更に詳細に説明する。
(1)独活葛根湯エキス
独活葛根湯は従来知られた漢方薬である。本発明において独活葛根湯は、従来知られたものを使用できる。
【0017】
独活葛根湯は、原料の生薬として具体的には、通常、カッコン(Pueraria lobata Ohwi)、ケイヒ(Cinnamomum cassia Blume)、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)、マオウ(Ephedra sinica Stapf,Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer,Ephedra equisetina Bunge)、ドクカツ(Aralia Rhizome)、ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)、ジオウ(Rehmannnia glutinosa Liboschitz var,purpurea Makino,Rehmannia glutinosa Liboschitz)、タイソウ(Zizypus jujube Miller var. inermis Rehder)、カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer,Glycyrrhiza glabra Linne)からなる。これらの原料は、日本薬局方に準じて使用部位が規定されており、本発明においてはこれに従う。
【0018】
独活葛根湯の調製は、「改訂 一般用漢方処方の手引き」(日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、薬業時報社発行)や「漢方製剤の基本的取扱い方針」等に記載されている規定に従い行えばよい。書簡によっては、成分比等が多少異なるものもあるが、これらの差異は特に制限されず、いずれも上記独活葛根湯として包含される。
【0019】
制限されないが、例えば、独活葛根湯は、原料となる生薬の乾燥重量に換算して、カッコン2.5、ケイヒ1.5、シャクヤク1.5、マオウ1、ドクカツ1、ショウキョウ0.5、ジオウ2.0、タイソウ0.5、カンゾウ0.5とすることができる。
【0020】
本発明において独活葛根湯エキスは、独活葛根湯の前記原料生薬の混合物から得られる抽出エキスである。独活葛根湯エキスは、例えば、前記生薬の混合物に対して、約10〜20倍量の水を加え、80〜100℃程度で1〜3時間程度撹拌抽出し、遠心分離又はろ過して抽出液を得ることにより取得できる。得られた独活葛根湯エキスは、液状であってもよく、濃縮又は希釈してもよく、スプレードライ処理や凍結乾燥処理など公知の方法により乾燥してもよく、また、必要に応じて乾燥後粉砕することにより粉状としてもよく、その形態は使用態様に応じて適宜決定すればよく、制限されない。
【0021】
独活葛根湯エキスは、より詳細には、限定されないが、例えば、前記生薬の混合物に対して、約10倍量の水を加え、95〜100℃程度で1時間程度撹拌抽出し、抽出物について100〜200メッシュに相当するろ過(遠心分離又は自然ろ過)をしたのち、ろ液を60〜70℃以下で減圧濃縮後、スプレードライすることにより得ることができる。
【0022】
独活葛根湯の原料となる各生薬は、生薬の産地や収穫時期等によって品質にバラツキがある。また、独活葛根湯の原料となる各生薬の配合比率によっても、エキスに含まれる有効成分量は変化する。このため、前記独活葛根湯エキスの取得は、使用される生薬の品質や各生薬の配合比率に応じて適宜微調整して実施される。該微調整は、当業者であれば当然に行い得る。また、例えば、グリチルリチン酸はカンゾウなどに含まれており、ペオニフロリンはシャクヤクなどに含まれているため、具体的には、カンゾウ及びシャクヤクの剪断方法を調整する(細かく又は粗く刻む)、カンゾウ及びシャクヤクの産地や収穫時期を選別する、抽出溶媒を調整する、抽出温度を調整する、抽出時間を調整する、抽出回数を増減させる、濃縮方法、乾燥方法を選択する等の方法が例示される。これらの方法によって、グリチルリチン酸、その塩及びペオニフロリンの収率や含有量が調整され、得られた独活葛根湯エキス中のこれらの成分の含有量を確認して、本発明の配合剤を調製することができる。
【0023】
このようにして独活葛根湯エキスを得ることにより、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対してペオニフロリンを次の割合で含有する独活葛根湯エキスを得ることができる。
【0024】
すなわち、得られた独活葛根湯エキスには、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対して、ペオニフロリンが一定以上の割合で含有されていることが重要である。具体的には、該独活葛根湯エキスは、グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5重量部以上で含有する。また、該独活葛根湯エキスは、グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを、好ましくは0.5〜50重量部で含有し、更に好ましくは0.5〜10重量部で含有し、特に好ましくは3〜5重量部で含有する。この範囲内であれば、独活葛根湯エキスの抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が相乗的に高められるとともに、副作用の原因となるグリチルリチン酸及びその塩の含有量を低くすることができる。
【0025】
ここで、グリチルリチン酸の塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属との塩;アンモニウム塩等が挙げられる。具体的にはグリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸三カリウム等のアルカリ金属との塩;グリチルリチン酸モノアンモニウム等のアンモニウム塩等が例示される。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属との塩であり、より好ましくはグリチルリチン酸二カリウムが例示される。これらのグリチルリチン酸の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0026】
独活葛根湯エキス中のグリチルリチン酸及びその塩、ならびにペオニフロリンの含有量は、以下の方法により測定される。
<グリチルリチン酸及びその塩の定量方法>
【0027】
独活葛根湯エキス0.6gをメタノールで十分に抽出したのち、第十五改正日本薬局方解説書(生薬等)D−142−D−151頁「カンゾウ」の定量法に従い定量する。カラムはCOSMOSIL「5C18−MS−II」(内径4.6×150mm)を使用する。カラム温度20℃にて、移動相に、蒸留水とアセトニトリルとリン酸が850:150:1となる混合液を用い、紫外吸光光度計により232nmにおける吸光度を測定する。
<ペオニフロリンの定量方法>
【0028】
独活葛根湯エキス0.6gをメタノールで十分に抽出したのち、第十五改正日本薬局方解説書(生薬等)D−324−D−329頁「シャクヤク」の定量法に従い定量する。カラムはCOSMOSIL「5C18−MS−II」(内径4.6×150mm)を使用する。カラム温度20℃にて、移動相に、蒸留水で15倍に希釈した酢酸とアセトニトリルが3:2となる混合液を用い、紫外吸光光度計により254nmにおける吸光度を測定する。
【0029】
該測定により、得られた独活葛根湯エキス中のグリチルリチン酸及びその塩の量、ならびにペオニフロリンの量を定量することができる。
(2)独活葛根湯エキス配合剤
本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、独活葛根湯エキスを含有するものであって、グリチルリチン酸及びその塩の総量に対してペオニフロリンが一定以上の割合で含有されていることを特徴とする。
【0030】
具体的には、本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5重量部以上で含有することを特徴とする。また、本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを、好ましくは0.5〜50重量部含有し、より好ましくは0.5〜10重量部含有し、更に好ましくは3〜5重量部含有することを特徴とする。
【0031】
グリチルリチン酸の塩としては、前述のものが挙げられる。また、独活葛根湯エキス配合剤中のグリチルリチン酸及びその塩の定量、ならびにペオニフロリンの定量は、前述の定量方法に従い、同様に実施される。
【0032】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤に含まれるグリチルリチン酸及びその塩、ならびにペオニフロリンは、独活葛根湯エキスに含まれるもののみから構成されていてもよく、独活葛根湯エキスだけではグリチルリチン酸及びその塩、ならびにペオニフロリンの含有量が前述の一定以上の比率を充足していない場合、グリチルリチン酸及びその塩ならびにペオニフロリンを外添する等して、所定の配合比率となるように適宜調整すればよい。例えば、外添可能なものとして、グリチルリチン酸(和光純薬工業株式会社製)、グリチルチリン酸二カリウム(丸善製薬株式会社製)、ペオニフロリン(和光純薬工業株式会社製)などが商業的に入手可能である。
【0033】
好ましくは、本発明の独活葛根湯エキス配合剤におけるグリチルリチン酸やペオニフロリンは、独活葛根湯エキスに含まれるもののみで構成されており、より好ましくは、前記「(1)独活葛根湯エキス」に記載の独活葛根湯エキスに含まれるもののみで構成されている。
【0034】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤における独活葛根湯エキスの配合量は、グリチルリチン酸及びその塩の総量ならびにペオニフロリンの量が、前記比率を充足することを限度として制限されない。
【0035】
例えば、本発明の独活葛根湯エキス配合剤におけるグリチルリチン酸及びその塩の総量ならびにペオニフロリンが、前記「(1)独活葛根湯エキス」に記載の独活葛根湯エキスに含まれるもののみで構成される場合、該独活葛根湯エキスの配合割合は、本発明の効果が発揮されることを限度として制限されないが、例えば、配合剤中に、エキスの乾燥重量総量で10〜90重量%程度、好ましくは30〜80重量%程度、より好ましくは50〜70重量%程度が挙げられる。
【0036】
また、例えば、独活葛根湯エキス配合剤中に、グリチルリチン酸及びその塩の乾燥重量総量で0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%程度、より好ましくは0.1〜0.5重量%程度が挙げられる。
【0037】
また、本発明の独活葛根湯エキス配合剤におけるグリチルリチン酸及びその塩は、前述と同様に制限されないが、例えば大人一人(体重60kg)に対する投与量は、1日投与単位あたり、通常、乾燥重量換算で、例えば5〜15mg、好ましくは5〜10mg、より好ましくは7〜10mgが挙げられる。本発明によれば、この程度にまでグリチルリチン酸及びその塩の含有量を抑えることができるため、優れた抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用を有するだけでなく、グリチルリチン酸及びその塩に起因する副作用の少ない独活葛根湯エキス配合剤とすることができる。
【0038】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤の投与方法も前述と同様に制限されないが、通常一日2〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻も特に制限されないが、食前または食間が好ましい。
【0039】
当然のことながら、本発明の独活葛根湯エキス配合剤における独活葛根湯エキスやグリチルリチン酸等の配合割合、投与量等は、後述する配合剤の投与形態、対象者への投与時間、個体差等に応じて、更に適宜設定することが可能である。
【0040】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤におけるグリチルリチン酸等が、前記「(1)独活葛根湯エキス」に記載の独活葛根湯エキス以外のものにも由来する場合、該配合剤は、前述の説明に基づき調製すればよい。該調製は、当業者であれば前述の説明に基づき当然に行い得る。
【0041】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、その形態は特に制限されず、経口投与可能な形態であれば制限されない。経口投与可能な形態としては、慣用の形態がいずれも含まれ、特に制限されない。このような形態として、例えば、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)等の固形製剤;液剤(シロップ等を含む)等の液状製剤(懸濁剤含む)が例示される。好ましくは、本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、摂取又は服用のしやすさの点から、固形製剤である。各種形態にある独活葛根湯エキス配合剤は、通常の方法に従い、製造される。
【0042】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤が錠剤である場合、前述の独活葛根湯エキスとともに、薬学的に許容される担体として当該分野で従来公知のものを広く使用することができる。このような担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸、含水二酸化ケイ素等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースカルシウム、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。
【0043】
さらに錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0044】
また、本発明の独活葛根湯エキス配合剤を丸剤とする場合も、薬学的に許容される担体として当該分野で従来公知のものを広く使用できる。このような担体としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0045】
また、上記以外に、添加剤として、例えば、薬学的に許容される界面活性剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を、調製する形態に応じて適宜選択し使用することができる。
【0046】
また、前述の独活葛根湯エキスと前述の薬学的に許容される担体を、さらにゼラチン、プルラン、デンプン、アラビアガム、ヒプロメロース等を原料とする従来公知のカプセルに充填して、カプセル剤とすることができる。
【0047】
更に、本発明の独活葛根湯エキス配合剤には、上記以外にアミノ酸、ビタミン類、無機塩類等の他の活性成分を含有させることができる。他の活性成分としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等のアミノ酸;ビタミンA1、ビタミンA2、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン等のビタミン類;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の無機塩類が例示される。
【0048】
本発明の独活葛根湯エキス配合剤においては、グリチルリチン酸及びその塩が有する抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が相乗的に高められている。このため、本発明の独活葛根湯エキス配合剤を投与(摂取)することにより、顕著に効率よく、肩こり、寝違え、四十肩、五十肩等の疾患を迅速且つ効果的に軽減乃至解消することができる。特に、寝違えは、通常の肩こり等に比べて炎症の程度が高いが、本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、このような高度な炎症の軽減乃至解消に対しても十分に有効であり、更に即効性を備えている。
【0049】
従って、本発明の独活葛根湯エキス配合剤は、肩こり、寝違え、四十肩、五十肩等の疾患を患っている患者に好適に適用でき、従来公知の製剤等より有効である。
【0050】
また、本発明の独活葛根湯エキス配合剤では、グリチルリチン酸及びその塩の抗酸化作用、抗炎症作用、鎮痛作用が相乗的に高められていることから、グリチルリチン酸の過剰摂取による副作用を効果的に防止することができ、すなわち安全性が高い。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例:独活葛根湯エキス配合剤
本実施例において使用する独活葛根湯エキス配合剤を以下のようにして製造した。
【0052】
1.独活葛根湯エキス
本実施例において、原料乾燥重量に換算して、カッコン2.5(重量部、以下同じ)、ケイヒ1.5、シャクヤク1.5、マオウ1.0、ドクカツ1.0、ショウキョウ0.5、ジオウ2.0、タイソウ0.5、カンゾウ0.5を、水10倍量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。得られた抽出液をろ過(150メッシュ)した後、65℃の減圧下で濃縮後、スプレードライを用いて乾燥し、「独活葛根湯エキス」を取得した。
【0053】
2.独活葛根湯エキス中のグリチルリチン酸及びペオニフロリンの含有量
得られた独活葛根湯エキスに含まれるグリチルリチン酸及びその塩とペオニフロリンの量を以下の方法に従い測定した。
<グリチルリチン酸及びその塩の定量方法>
【0054】
得られた独活葛根湯エキス0.6gをメタノールで十分に抽出したのち、第十五改正日本薬局方解説書(生薬等)D−142−D−151頁「カンゾウ」の定量法に従い定量した。
【0055】
カラムはCOSMOSIL「5C18−MS−II」(内径4.6×150mm)(ナカライテスク株式会社製)を使用した。
【0056】
カラム温度20℃にて、移動相に、蒸留水とアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)とリン酸(和光純薬工業株式会社製)が850:150:1となる混合液を用い、紫外吸光光度計(株式会社島津製作所製)により232nmにおける吸光度を測定した。
<ペオニフロリンの定量方法>
得られた独活葛根湯エキス0.6gをメタノールで十分に抽出したのち、第十五改正日本薬局方解説書(生薬等)D−324−D−329頁「シャクヤク」の定量法に従い定量した。
【0057】
カラムはCOSMOSIL「5C18−MS−II」(内径4.6×150mm)(ナカライテスク株式会社製)を使用した。
【0058】
カラム温度20℃にて、移動相に、蒸留水で15倍に希釈した酢酸(和光純薬工業株式会社製)とアセトニトリル(和光純薬工業株式会社製)が3:2となる混合液を用い、紫外吸光光度計(株式会社島津製作所製)により254nmにおける吸光度を測定した。
<グリチルリチン酸及びその塩及びペオニフロリンの含有量の調整>
【0059】
得られた独活葛根湯エキス中のグリチルリチン酸及びその塩並びにペオニフロリンを上述の方法で定量したうえで、抽出量が少ない場合には細かく刻み、また抽出量が多い場合には粗く刻むなどして目的とする含有量を得た。
3.独活葛根湯エキス配合剤
ここでは、錠剤の形態の独活葛根湯エキス配合剤を製造した。
【0060】
具体的には、前述のようにして得た独活葛根湯エキス、含水二酸化ケイ素(カープレックス、DSL.ジャパン株式会社製)、カルメロースカルシウム(E.C.G-505、父リン化学工業株式会社製)、タルク(タルク原末「マルイシ」、丸石製薬(株))、ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム、太平化学産業株式会社製)、結晶セルロース(セオラス、旭化成ケミカルズ株式会社製)を混合することにより、混合物を得た。このようにして得た混合物を油圧打錠機を用いて打錠して、錠剤の形態の独活葛根湯エキス配合剤を得た。
試験例1:抗酸化能測定試験
本試験例では、グリチルリチン酸及びペオニフロリンの抗酸化効果を評価した。
【0061】
グリチルリチン酸及びペオニフロリンとして、それぞれ日本薬局方標準品であるグルチルリチン酸標準品とペオニフロリン標準品を使用した。また、抗酸化の測定には、抗酸化測定TAS(Total Antioxidant Status)キット(Randox Laboratories Ltd製)を用いた。測定は、当該キットに含まれるマニュアルに従い行った。
【0062】
具体的には、下記の表1に示す量のグリチルリチン酸及びペロニフロリンを含有するように調製した20μlの水溶液(サンプル)をクロモゲン1mlに混合し、37℃でインキュベートし、初期吸光度A1を測定した。その後、当該キットに含まれる基質溶液200μLを添加し、よく混合し、3分後に吸光度A2を測定した。
【0063】
ブランク及びスタンダードにおける測定は、それぞれ、サンプルに代えて、キットに含まれるブランク試薬又はスタンダードを使用する以外は、前述と同様の手順で行った。
【0064】
抗酸化能は以下の式に従って算出した。
A2−A1=△A (ブランク/スタンダード/サンプル)
【0065】
【数1】

【0066】
mmol/l=Factor×(△Aブランク−△Aサンプル)
また、「抗酸化効果」は以下の式に従って算出した。
【0067】
【数2】

【0068】
また、「ペオニフロリンの配合量当たりの抗酸化効果」を、以下の式に従って算出した。
【0069】
【数3】

【0070】
結果を以下の表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
この結果から明らかなように、抗酸化作用を備えているグリチルリチン酸に(比較例1)、抗酸化作用を殆ど備えていないペオニフロリン(比較例2)を組み合わせることにより、驚くべきことに、その抗酸化効果が相乗的に高まった。
【0073】
具体的には、グリチルリチン酸とペオニフロリンとの配合比率が重量換算で1:0.5以上において抗酸化効果が効率よく増強されており、1:50であっても効率よく増強されていることがわかった(実施例1〜9)。
【0074】
また、抗酸化効果を一層効率よく相乗的に増強できる点で、グリチルリチン酸とペオニフロリンの配合比率は、好ましくは1:0.5〜1:10であり(実施例1〜7)、より好ましくは1:3〜1:5であることがわかった(実施例4〜6)。
試験例2:鎮痛試験(酢酸ライジング試験:炎症性疼痛モデル)
本試験例では、鎮痛試験(酢酸ライジング試験)を行った。
【0075】
モデルとして、5週齢の雄性ddyマウス(日本エスエルシー株式会社より購入)を使用した。試験には、18時間絶食させたマウス(6週齢)を1群6匹として用いた。
【0076】
具体的には、グリチルリチン酸とペオニフロリンとが、下記表2における実施例又は比較例に示す比率(1:0.48、1:2.1及び1:4.3)になるように調製した独活葛根湯エキス配合剤を前述の通りにして得た。得られた配合剤(サンプル)をすり潰し、蒸留水1mlに混合し、前記マウスに胃ゾンデを用いて経口投与した(投与量は表2に記載のとおりであり、マウスの体重に基づいて算出した)。経口投与の45分後に、0.7%の酢酸水溶液を腹腔内投与し、5分間放置した。その後、15分間中に観察されたライジングの数を測定した。サンプルに代えて蒸留水のみを与えたマウスを無処理(参考例1)とした。
【0077】
鎮痛効果は以下の式に従って算出した。
【0078】
【数4】

【0079】
結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
本試験例では、前記試験例1における実施例1〜9のグリチルリチン酸とペオニフロリンとの配合比率の代表例として、グリチルリチン酸とペオニフロリンとの配合比率が実施例10及び11になるように調製した独活葛根湯エキス配合剤のサンプルを使用した。
【0082】
この結果から、グリチルリチン酸に対してペオニフロリンを一定以上の比率で含有する実施例10及び実施例11では、無処理群(参考例1)及び該比率を充足しない比較例3と比較して、ライジング回数が顕著に低減されたことがわかった。すなわち、グリチルリチン酸に対してペオニフロリンを一定以上の割合で組み合わせて使用することにより、その鎮痛効果が相乗的に増強されていることがわかった。また、その効果の即効性も確認された。
【0083】
通常、炎症の増幅は、細胞内の転写因子が、過剰の活性酸素種によるシグナルで活性化され、炎症性サイトカインのmRNAの発現が増大することにより生じる。本試験例では、グリチルリチン酸に対してペオニフロリンを一定以上の割合で含有させることに起因する、グリチルリチン酸及びペオニフロリンによる抗酸化作用の相乗的な増強により、抗炎症作用及び鎮痛作用が顕著に増強されていることが確認できた。
試験例3:自覚症状試験
本試験例では、自覚症状の改善について評価した。
【0084】
本試験例では、寝違えによる痛みを有する患者12名を被験者とした。該被験者を6名ずつの2群に分け、一方の群を独活葛根湯エキス配合剤(サンプル)を投与する「サンプル投与群」、他方の群をサンプルを投与しない「サンプル非投与群」とした。
【0085】
サンプルとして、グリチルリチン酸とペオニフロリンとが下記表3の実施例12に示す比率(1:4.3)になるように調製した独活葛根湯エキス配合剤を前述の通りにして得た。
【0086】
サンプルにおけるグリチルリチン酸及びペオニフロリンの1日投与量は、表3の実施例12に示す通りであり、具体的には、1日分のサンプル12錠を3回に分けて、食間に服用させる方法で行った(1回4錠投与した)。
【0087】
サンプル投与群では、疼痛の程度を、サンプル服用前及び服用開始から24時間後に検査した。サンプル非投与群では、疼痛の程度を、サンプル投与群の測定時にあわせて検査した。
【0088】
疼痛の程度は、服用前の疼痛を10として、VisualAnalogueScale(以下VASと記載する)アンケートに記入させることにより検査した。
【0089】
結果を以下の表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
本試験例においても、前記試験例1における実施例1〜9のグリチルリチン酸とペオニフロリンとの配合比率の代表例として、グリチルリチン酸とペオニフロリンとの配合比率が実施例12になるように調製した独活葛根湯エキス配合剤のサンプルを使用した。
【0092】
この結果から、実施例12に記載のサンプルを服用させることにより、顕著に優れた疼痛軽減効果が確認された。また、その効果の即効性も確認された。
【0093】
このように、肩こりよりも炎症の程度が高い寝違えにおいても疼痛の軽減が確認できたことから、グリチルリチン酸に対してペオニフロリンを一定以上の割合で組み合わせた場合には、これまでにない顕著に優れた抗炎症作用及び鎮痛効果が発揮されることが分かった。
処方例
下記表4〜7に処方例1〜28を示す。各処方例における独活葛根湯エキス配合剤の製造は以下の通りである。
【0094】
グリチルリチン酸及びペオニフロリンが以下の含有量である独活葛根湯エキスを前述の通りにして得た。得られたエキス(a)〜(g)を用いて、常法により、処方例1〜14で錠剤、処方例15〜28で顆粒剤を製した。これらの製剤についても試験例3と同様の試験を実施したところ、優れた疼痛軽減効果が確認された。また、その効果の即効性も確認された。
【0095】
エキス(a) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン :5.0mg/g
エキス(b) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:10.0mg/g
エキス(c) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:15.0mg/g
エキス(d) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:20.0mg/g
エキス(e) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:25.0mg/g
エキス(f) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:35.0mg/g
エキス(g) グリチルリチン酸:5.0mg/g
ペオニフロリン:50.0mg/g
【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチン酸及びその塩の総量1重量部に対して、ペオニフロリンを0.5重量部以上含有する独活葛根湯エキス配合剤。
【請求項2】
1日投与単位あたりグリチルリチン酸及びその塩の総量を5〜15mg含有する、請求項1に記載の独活葛根湯エキス配合剤。

【公開番号】特開2012−77003(P2012−77003A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220551(P2010−220551)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】