狭路走行支援装置
【課題】自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる狭路走行支援装置を提供する。
【解決手段】自車両前方の領域を表示する第一の表示画像10を作成する第一の表示画像作成部と、自車両の左右側面17,16の領域を表示する第二の表示画像15を作成する第二の表示画像作成部と、第一の表示画像10の下方または車両進行方向後方に第二の表示画像15を並べて配置すると共に、第二の表示画像15に表示される自車両の左右側面17,16の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる左右自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する画像合成部と、を備えた。
【解決手段】自車両前方の領域を表示する第一の表示画像10を作成する第一の表示画像作成部と、自車両の左右側面17,16の領域を表示する第二の表示画像15を作成する第二の表示画像作成部と、第一の表示画像10の下方または車両進行方向後方に第二の表示画像15を並べて配置すると共に、第二の表示画像15に表示される自車両の左右側面17,16の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる左右自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する画像合成部と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭路走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行支援装置では、助手席側に設けられたカメラで運転席と反対側の車両前端周囲の状況を撮影し、ドアミラー先端位置での自車両の前後方向延長線と共に車室内に接地されたモニタへ表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、運転者は助手席側をモニタ、運転席側を目視というように左右の幅間隔を異なる方法で把握しなければならないため、自車両と障害物との相対位置関係を即座に把握できない。
また、カメラ映像から助手席側の自車両前方に存在する障害物を回避することは可能であるが、自車両の左右前側端付近を通過した後の障害物については、モニタに映らないため、運転者の走行を支援できない。
【0005】
本発明の目的は、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる狭路走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、自車両の左右前側端と自車両前方の障害物とを表示する第一の表示画像と、第一の表示画像の自車両の左右前側端に連続させた自車両の左右側面と自車両の側方に存在する障害物とを表示する第二の表示画像とを、車両の上下または前後方向に並べて配置し、第二の表示画像に表示される自車両の左右側面の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる車幅相当延長線を第一の表示画像と第二の表示画像とに連続して表示する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、自車両前方の領域を表示する第一の表示画面と自車両の左右側面の領域を表示する第二の表示画面とを並べて配置し、かつ、自車幅相当延長線を第一および第二の表示画像に連続して配置したため、自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cの設置位置を示す車両の平面図および左側面図である。
【図3】実施例1の狭路走行支援装置の支援画像を実現する仮想カメラ位置を示す車両の左側面図である。
【図4】実施例1の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像である。
【図5】第一の表示画像10および第二の表示画像15に対する各アイコンの重畳表示方法を示す図である。
【図6】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図7】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図8】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図9】狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を示す図である。
【図10】狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を示す図である。
【図11】実施例2の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施例2の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像である。
【図13】実施例3の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の狭路走行支援装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0010】
〔実施例1〕
[全体構成]
図1は、実施例1の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
カメラ1a,1bは、自車両の左右両側前端付近にそれぞれ設置され、自車両前端の一部を含む周囲画像を撮影し、コントロールユニット100へ出力する。
カメラ2a,2b,2cは、自車両の左右側面および後部にそれぞれ設置され、自車両の一部を含む周囲画像を撮影し、コントロールユニット100へ出力する。
モニタ3は、車室内インストルメントパネル付近に設置され、コントロールユニット100から出力される支援表示画像を運転者へ表示する。
起動スイッチ4は、ステアリングまたはインストルメントパネル付近に設置され、コントロールユニット100へ本装置による支援表示の開始指令を出力する。
【0011】
コントロールユニット100は、カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cで撮像した画像を運転者の狭路走行を支援するための支援表示画像に加工してモニタ3へ出力するもので、第一の表示画像作成部(第一の表示画像作成手段)110と、第二の表示画像作成部(第二の表示画像作成手段)120と、重畳表示記憶部130と、画像合成部(車幅相当延長線作成)140とから構成される。
第一の表示画像作成部110は、障害物が遠方から自車両前端付近に接近するまでの支援画像を作成するもので、俯角視点変換部111と、俯角画像作成部112とを有する。
俯角視点変換部111は、カメラ1a,1bで撮影した複数の画像を、運転者の目線付近の高さから、自車両の左側面および左側面付近から進行方向で、かつ、自車両のフード(ボンネット)先端付近へ向かう俯角の画像に視点変換する。
俯角画像作成部112は、俯角視点変換部111で視点変換された左右の俯角画像を自車両の左右方向に合成して、遠方の障害物から自車両前端の一部が含まれる第一の表示画像を作成し、画像合成部140へ出力する。
【0012】
第二の表示画像作成部120は、障害物が第一の表示画像から外れて、自車両の左右側面付近にあるときの支援画像を作成するもので、俯瞰視点変換部121と、俯瞰画像作成部122とを有する。
俯瞰視点変換部121は、カメラ2a,2b,2cで撮影した複数の画像を、自車を真上から見下ろした俯瞰画像に視点変換する。
俯瞰画像作成部122は、俯瞰視点変換部121で視点変換された自車両の左、右、後方の俯瞰画像を合成して、自車両の左右側面と後方の障害物との位置関係が確認しやすい第二の表示画像を作成し、画像合成部140へ出力する。
【0013】
重畳表示記憶部130は、第一の表示画像作成部110および第二の表示画像作成部120に重畳表示する支援表示アイコンを記憶するもので、自車アイコン記憶部131と、内側後輪(旋回時に内側となる後輪)の最小旋回軌跡記憶部132と、自車幅相当延長線記憶部133と、外側前端の最小旋回軌跡記憶部134とを有する。
自車アイコン記憶部131は、第一の表示画像における俯角からの視点に変換された自車両のアイコンと、第二の表示画像における視点に変換された自車両のアイコンとを記憶する。
内側後輪の最小旋回軌跡記憶部132は、フル転舵状態での左折時の左後輪の軌跡線と、フル転舵状態での右折時の右後輪の軌跡線とのアイコンを記憶する。
自車幅相当延長線記憶部133は、左右のドアミラー先端位置(自車両の左右側面の車幅方向端部)での自車両の前後方向延長線のアイコンを記憶する。
外側前端の最小旋回軌跡記憶部134は、フル転舵状態で前進旋回したときの旋回外側における自車両の側前端の旋回半径を記憶する。
【0014】
画像合成部140は、第一の表示画像作成部110で作成された第一の表示画像と、第二の表示画像作成部120で作成された第二の表示画像とを、道路の路面を基準にした位置(Z=0面)で合成し、さらに重畳表示記憶部130で記憶されている支援表示アイコンを重畳してモニタ3へ出力する。
【0015】
[各カメラの設置位置]
図2は、カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cの設置位置を示す車両の平面図および左側面図である。
カメラ1aは、例えば自車両の右側Aピラー付近に、自車両の右前側端に向けて設置されたカメラで、自車両の右前側端を含む右前周辺の画像を撮影する。カメラ1aの光軸中心6は、右前側端部に向けられていて、画像中の最も歪みの少ない部位で自車両の右前側端部と、そこに接近する障害物との位置関係の変化を撮影できるように設置される。
カメラ1bは、例えば自車両の左側Aピラー付近に、自車両の左前側端に向けて設置されたカメラで、自車両の左前側端を含む左前周辺の画像を撮影する。カメラ1bの光軸中心7は、左前側端部に向けられていて、画像中の最も歪みの少ない部位で自車両の左前側端部と、そこに接近する障害物との位置関係の変化を撮影できるように設置される。
【0016】
カメラ2aは、自車両の右ドアミラー付近に、略下方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の右側側面を含む右側面の周辺画像を撮影する。
カメラ2bは、自車両の左ドアミラー付近に、略下方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の左側側面を含む左側面の周辺画像を撮影する。
カメラ2cは、自車両の後端部付近に、略後方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の後端を含む後方の周辺画像を撮影する。
なお、各カメラの設置位置、向きや画角等は、図2に示したものに限定されるものではなく、視点変換等の既存技術を用いて上記説明箇所の画像を作成できればよい。
【0017】
[仮想カメラ位置]
図3は、実施例1の狭路走行支援装置の支援画像を実現する仮想カメラ位置を示す車両の左側面図である。
仮想カメラ位置8は、第一の表示画像を実現する仮想カメラの位置で、自車両の左右前側端と、進行方向遠方の障害物とを含む撮影範囲の画像で、特に、自車両の左右前側端付近でのレンズ歪みが少なくなるように設定される。また、仮想カメラ位置8は運転者のアイポイント付近の上方に設置されて、自車両の左右前側端がレンズの歪みが少ない撮影範囲に含まれる俯角がなされている。
仮想カメラ位置9は、第二の表示画像を実現する仮想カメラの位置で、自車両の左右側面と、その付近の障害物、具体的には、左右前側端で回避した電柱が自車両の側面に到達した状態での撮影範囲の画像で、実施例1では上方からの俯瞰画像で説明する。
【0018】
[モニタ3の表示画像]
図4は、実施例1の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像であり、モニタ3には、第一の表示画像10と第二の表示画像15とが同時に表示される。第二の表示画像15は、第一の表示画像10の下方または自車両の進行方向後方に表示される。
第一の表示画像10は、仮想カメラ位置8からの画像で、自車両の左右前側端12,11と、進行方向遠方の障害物とを含む画像で構成される。
自車両の右前側端11は、運転者のアイポイント付近の上方に設置された視点から、レンズの歪みが少ない箇所に撮影されるような俯角がなされて表示される。
自車両の左前側端12も同様に、運転者のアイポイント付近の上方に設置された視点から、レンズの歪みが少ない箇所に撮影されるような俯角がなされて表示される。
【0019】
右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線13は、自車両の右ドアミラー先端位置での前後方向の延長線で、後述する長さ以上の距離を自車右前側端11に沿って、前方に向けて表示されると共に、右ドアミラー先端まで、第一の表示画像10と、第二の表示画像とを連続して表示される。
左ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14も同様に、自車両の左ドアミラー先端位置での前後方向の延長線で、後述する長さ以上の距離を自車左前側端12に沿って、前方に向けて表示されると共に、左ドアミラー先端まで、第一の表示画像10と、第二の表示画像とを連続して表示される。
【0020】
第二の表示画像15は、仮想カメラ位置9からの画像で、自車両の左右側面17,16と、その付近の障害物とを含む画像で構成される。
自車両の右側面16は、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像で表示される。
自車両の左側面17も同様に、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像で表示される。
自車両の右後輪18は、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像内の自車両アイコン内で右後輪の位置に表示される。
自車両の左後輪19も同様に、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像内の自車両アイコン内で左後輪19の位置に表示される。
【0021】
右側後輪の右旋回における最小旋回軌跡の右ドアミラー先端位置までの軌跡20は、俯瞰画像内の右後輪18の位置を始点として、右にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該右後輪18が車両前後方向で、右ドアミラーの位置付近までの長さで、Z=0面に表示される。
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡の左ドアミラー先端位置までの軌跡21も同様に、俯瞰画像内の左後輪19の位置を始点として、左にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該左後輪19が車両前後方向で、左ドアミラーの位置付近までの長さで、Z=0面に表示される。
【0022】
第一の表示画像10では、遠方の障害物と、自車両の左右前側端12,11との位置関係が1画面で確認できるように支援を行う。具体的には、画面内に自車両の一部(左右前側端12,11)が表示されているため、障害物(図中の電柱や壁)との距離感が掴みやすくなっている。
障害物が遠方にあるような場合、俯瞰画像では表示範囲の制限が厳しく、モニタ3内に障害物が表示されない。このため、モニタ3で障害物を確認できるようになったときには、既に自車両の直近に障害物が迫った状態であるため、回避のための操作が間に合わない、または急激な操舵を迫られることになる。
【0023】
これに対して、実施例1の第一の表示画像10の場合は、遠方の障害物と、左右前側端12,11との両方が事前にモニタ3で確認できるため、モニタ画像のみからでも、障害物回避の操舵に備えることができると共に、障害物に接近したときでも、自車前方の障害物と、目視不可能な自車両の左右前側端12,11との位置関係をモニタ3で確認することができる。
したがって、遠方の障害物を知覚しやすいと共に、該障害物が自車両の先端部に接近してきた場合でも、それらの位置関係(接触するいないの判断)を把握しやすい。さらに、該障害物が遠方に在るときから、自車両の直近に来るまでの間も、ずっとモニタ表示され続けているので、回避操舵開始のタイミングなどを予測しやすいし、実環境との位置関係も対応を付けやすいと言った効果がある。
【0024】
さらに、第一の表示画像10には、左右の自車幅相当延長線14,13も表示される。この線は、自車アイコン固定表示となっているため、自車アイコン同様に、操舵にかかわらず、モニタ3内では固定された位置に表示されることなる。このため、自車両が現在位置でハンドルを中立に固定した状態で前進したときの、将来軌跡位置を表現している。
左右の自車幅相当延長線14,13はモニタ3内で遠方に存在する左右の障害物の間を、自車両が通り抜けられるか否かを、障害物に接近する手前で確認することができる。具体的には、遠方の電柱や壁等の障害物の間に、左右の自車幅相当延長線14,13が収まっていれば、その箇所は通過可能であることが事前に判断できるし、自車幅相当延長線14,13が障害物と交差している場合には、そのまま前進しても障害物に接触してしまうことが事前に判断できるので、操舵によって、左右の自車幅相当延長線14,13を障害物の間に入れるような操舵を行うか、または操舵によっても、左右の自車幅相当延長線14,13が障害物と交差しているようであれば、その障害物の間は、自車両では通り抜けることができない幅であることが事前に判断できる。
【0025】
上記に加えて、モニタ3内で、左右の道路稜線(壁と地面との境界部)と、左右の自車幅相当延長線14,13とのギャップと平行度合を比較することで、自車両の現在の状態が、左右の道路端のどちらの方向に寄っているのか、該道路に対して自車両は平行であるか否か、左右のいずれかの方向に傾いているのか(このままハンドル中立状態で前進して、壁、または電柱への接触はしないか否か)についても同時、かつ、感覚的に判断することができる。
【0026】
第二の表示画像15では、第一の表示画像10を利用して、自車両の左右前側端12,11で回避した障害物が、自車両の前進に伴って、左右側面17,16付近に到達した場合のそれらの位置関係が、第一の表示画像10に、道路面(Z=0面)で連続して、かつ、1画面で確認できるように支援を行う。
すなわち、Z=0面で二つの画像を接続して居るため、壁や電柱などの障害物の付根部分では、第一の表示画像10と第二の表示画像15とが連続しているため、画像情報が途切れることはない。具体的には、画面内に自車両の一部(左右側面17,16)が、真上から見下ろした俯瞰画像で表示されているため、障害物(図中の電柱や壁)との距離や角度が掴みやすくなっている。
さらに、第二の表示画像15には、左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21も表示される。この線も、自車アイコンへ固定表示となっているため、自車アイコン同様に、操舵にかかわらず、モニタ3内では固定された位置に表示されることなる。
したがって、自車両が現在位置でハンドルを左右いずれかの方向へフル転舵した状態で前進したときの内輪差、すなわち、左右後輪19,18の将来軌跡を表現している。
【0027】
左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21はモニタ3内で左右側面17,16付近に存在する障害物と自車両の内輪差により接触しないための転舵タイミングを教示するものである。具体的には、図中の左右側面17,16付近に存在する電柱や壁等の障害物が、最小旋回軌跡20,21の前方、すなわち、円弧の外側に存在している状態で転舵を開始した場合は、その操舵角にもよるが、少なくともフル転舵した場合には、最小旋回軌跡20,21の自車両側に障害物があるため、内輪差による接触の可能性がある。
このとき、運転者は、第二の表示画像15内で、左右側面17,16と障害物との位置関係を確認しながら操舵を行なうようにすることで、障害物を回避しなければならない。
【0028】
これに対して、最小旋回軌跡20,21の後方、すなわち、円弧の内側に存在している状態で転舵を開始した場合は、どのような操舵角であっても、該障害物に内輪差軌跡、すなわち、最小旋回軌跡20,21が届かないため、内輪差による接触の可能性はない。
このように、モニタ3内で左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21と、障害物との位置関係を確認しながら、転舵タイミングを測ることで、内輪差に注意しなければいけない転舵操作か否かを、容易に、かつ、感覚的に判断することができる。
【0029】
[各アイコンの重畳表示方法]
図5は、第一の表示画像10および第二の表示画像15に対する各アイコンの重畳表示方法を示す図である。
(外側前端の最小旋回軌跡)
自車両の右前側端11の左旋回における最小旋回軌跡22は、俯瞰画像内の右前側端11位置の、左にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該右前側端11が車両前後方向で、最も前方となる位置(後述する25)を求めるための軌跡線である。
自車両の左前側端12の右旋回における最小旋回軌跡23も同様に、俯瞰画像内の左前側端12位置の、右にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該左前側端12が車両前後方向で、最も前方となる位置(後述する25)を求めるための軌跡線である。
自車両の前端24は、自車両前方で障害物に最も近い位置を示す線である。
自車両の左右前側端12,11の最小旋回軌跡22,23における自車両前後方向の最大距離25は、最低でも本距離よりも前方に障害物が位置していれば、左右どちら方向のフル転舵操作でも前方障害物との接触を回避することができる距離であり、左右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14,13の長さは、少なくとも、この長さ以上であることとする。
【0030】
右側後輪の右旋回における最小旋回軌跡26は、自車両の右側面16付近にある障害物が、最低でも本軌跡線の後方(円弧の内側方向)に位置していれば、右方向にフル転舵操作したとしても障害物との接触を回避することができる位置であることを容易に判断できる。
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡27も同様に、自車両の左側面17付近にある障害物が、最低でも本軌跡線の後方(円弧の内側方向)に位置していれば、左方向にフル転舵操作したとしても障害物との接触を回避することができる位置であることを容易に判断できる。
【0031】
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡の運転者位置付近までの軌跡28は、左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡27の運転席付近までの長さのもので、狭路においては本アイコンの幅方向の距離が大きいため、俯瞰画像の表示範囲も広さが必要となってしまう。よって、これを防止すること、そもそも狭路でのフル転舵操作は非常に可能性が低いことを考慮し、略自車幅付近までの長さとした。
【0032】
(自車幅相当延長線)
左右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14,13について説明する。
始点はドアミラーの最も外側部、またはここに一定距離のマージンを設けてもよい。
自車幅相当延長線14,13の角度は、自車両の前後方向を示すY軸と平行とする。すなわち、ハンドル中立状態で前進したときに、上記左右ドアミラーの最も外側部が描く軌跡と同一である。なお、Z軸方向の角度はモニタ3で表現されないので、特に規定の必要はない。
長さについては、最低限以下に説明する長さ以上を、モニタ3内の第一の画像表示内で表示することとする。その長さ(最大距離25)は、自車両の左右前側端12,11が確実に前方の障害物を回避することのできる距離とするため、自車両の左右前側端12,11のフル転舵軌跡(最小旋回半径での旋回時に於ける前記前側端箇所の旋回軌跡)の旋回半径を求める。
【0033】
図5に示すように、自車両の現在位置から、前方に障害物である電柱が存在したとする場合に、電柱が図中の左右方向のどの位置であっても、少なくとも現在位置から左右のどちらの方向にハンドルをフル転舵した場合であっても、電柱と接触することはない。
すなわち、自車両の前側端部の最小旋回半径における軌跡の半径の長さがあれば、左右どの位置に前方障害物が存在していたとしても、それを回避することができる距離となる。
ここで、最大距離25の手前であっても、最小旋回半径で回避することが可能ではあるが、この場合は自車両と電柱との左右方向の位置関係も確認する必要も出てきて、より複雑なロジックとなってしまう。実施例1では、運転者へ「最低限、接触しない距離」として、より単純化するために、上記の考え方に基づいた最大距離25を設定した。
【0034】
該旋回半径の長さは、自車両の後輪アクスルからの長さであるため、自車両の後輪アクスルから、ドアミラー先端部までの長さを引けば、ドアミラー先端部からの最低限の距離が求まる。
上記で説明した長さ以上であれば、第一の表示画像10内で、例えば、画面縦方向の長さの2/3程度の長さでもよいし、遠方で左右の自車幅相当延長線14,13が接触する長さでもよい。なお、左右が交差するまでは問題ないが、交差したさらにその先を延長して画面内でX字状になることは避ける。
【0035】
(内側後輪の最小旋回軌跡)
左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21について説明する。
始点は後輪の接地位置の最も外側部、またはここに一定距離のマージンを設けてもよい。
左右後輪19,18の最小旋回軌跡は、自車両が旋回したときの内側後輪の最小旋回軌跡とする。すなわち、ハンドルを右、又は、左へフル転舵した状態で前進したときに、上記後輪接地位置の最も外側部が描く軌跡と同一である。
長さについては、図5の最小旋回軌跡27のように、1/4の円弧としてもよいが、支援対象を狭路としているために、該支援表示線が左右の壁を突き破っているように見えてしまう。例えば、最小旋回軌跡21に示すような、自車両前後方向でドアミラー先端部までの長さとしてもよい。
【0036】
運転者は前方からドアミラー付近までの位置については、通常の運転時から目視で意識しているので、目視では確認しづらいドアミラー後方以降の距離を支援する第二の表示画像15では充分な距離と言える。さらに、そもそも狭路なので、左右に壁などが存在する環境でのフル転舵操作は考えにくい、したがって、より左右方向への出っ張りを小さくする意味で、運転席および助手席付近までの長さとして、内輪差を強く意識する後輪付近のみとしてもよい。
さらに、上記の説明では、最小旋回軌跡20,21,26,27,28を、操舵に連動しない固定表示として説明したが、ハンドルの角度に応じた後輪接地位置の旋回軌跡を表示してもよい。この場合、図4で説明した、転舵の開始タイミングを教示するものではなく、現状の操舵角で前進した場合の内輪差接触の可能性を表示しているのであって、狭路に於ける内輪差接触を事前に回避することはできる(現在行っている操作の将来予測ができる)が、どのようなタイミングで転舵を開始すれば、内輪差接触を回避できるのか(内輪差接触を回避するための転舵開始タイミング)を教示するものではなくなる。
第二の表示画像15においては、自車両の前部が通過した後の範囲を表示しているため、障害物を回避するための転舵開始タイミング教示に加えて、どの程度ハンドルを切れば内輪差接触を回避できるのか(操舵連動軌跡)を教示する調整操舵の支援も必要となってくる。
実施例1では、後輪軌跡線の固定表示と操舵連動表示とについて、個別に説明したが、第二の表示画像15へ固定と操舵連動の両方を同時に表示してもよい。これについては後述する。
【0037】
次に、作用を説明する。
[第一の表示画像による狭路走行支援作用]
図6〜8を用いて狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を説明する。
自車両進行方向の左側壁29は、狭路における自車両の左方向に存在する高さを持った壁である。
自車両進行方向の右側壁30も同様に、狭路における自車両の右方向に存在する高さを持った壁である。
左側に存在する奥側の電柱31は、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の自車両から最も遠い前方位置に存在し、左側壁29に寄って立っている。
右側に存在する32も同様に、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の電柱31と、後述する電柱33との間で、かつ、右側壁30に寄って立っている。
左側に存在する手前側の電柱33も同様に、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の自車両から最も近い前方位置に存在し、左側壁29に寄って立っている。
【0038】
図6は、自車両が道路に対して図中左側に傾いた状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、図中左方向に向いているため、図6(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図6(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の自車幅相当延長線14,13は電柱33と電柱32には交わっていないため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、電柱33と電柱32とは接触が回避できることが事前に確認できる。
ただし、左の自車幅相当延長線14が電柱31と交わっているため、電柱32を自車両前端で回避した後に、右方向へ転舵して、電柱31を回避する操舵が必要であることも事前に確認できる。
【0039】
図7は、自車両が道路に対して平行であるものの、図中左側に寄っている状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、平行で、かつ、左側に寄っているため、図7(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図7(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の右側の自車幅相当延長線13は電柱32には交わっていないものの、左側の自車幅相当延長線14は電柱33に交わっている。
このため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、電柱33と接触してしまうことが事前に確認できる。よって、図中右へ操舵して、右側の自車幅相当延長線13と電柱32とが接触しないで、かつ、左側の自車幅相当延長線14と電柱33とが接触しない位置に操舵して前進すれば、接触を回避することができる。
【0040】
図8は、自車両が道路に対して図中右側に傾いた状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、図中右方向に向いているため、図8(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図8(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の自車幅相当延長線14,13は電柱33、電柱32、電柱31とは交わっていないため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、全ての電柱との接触を回避できることが事前に確認できる。ただし、右の自車幅相当延長線13が右壁30と遠方で交わりそうになっているため、電柱32を自車両前端で回避した後に、左方向へ転舵して、電柱31を回避する操舵が必要であることも事前に確認できる。
【0041】
以上のように、第一の表示画像10は、自車両の前部(左右前側端12,11)と、左右の自車幅相当延長線14,13と、障害物との位置関係から、ハンドルを中立状態で前進したときの接触が、事前に確認できると共に、その後、直近の電柱を回避した後の操作(行動)についても、イメージすることができる。
このため、狭い障害物間の箇所を通過可能であるか否かを、通過前に判断できることに加えて、以降の操舵方法も事前にプランニングしやすいという効果を奏する。
【0042】
また、上記説明では電柱を配置した道で説明したが、電柱の存在しない道路であっても、該道路の稜線(壁と地面との境界部)と、左右の自車幅相当延長線14,13とのギャップと平行度合を確認することができるため、自車両が、左右の道路端のいずれの方向に寄っているのか、該道路に対して自車両は平行であるか否かについても同時、かつ、感覚的に判断することができ、安心して意図的に自車両を道路の右端または左端に寄せることができて狭路を通り抜けることができる。
【0043】
[第二の表示画像による狭路走行支援作用]
次に、図9,10を用いて狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を説明する。
図9の状態から、自車両が前進して図10の状態になる、すなわち、図9では第一の表示画像10に電柱31,32が映り、第二の表示画像15に電柱33が映っているが、図10では第一の表示画像10に電柱31のみが映り、第二の表示画像15に電柱32,33が映っている。
特に電柱33に着目して説明すると、図9の時点では、左側後輪の最小旋回軌跡21の前側(円弧の外側)であるため、例えば、この時点から左フル転舵で前進した場合、(左壁は無視したとしても)自車両の左側面17が、電柱33に接触してしまう。
しかしながら、図10のように、電柱33の位置が、左側後輪の最小旋回軌跡21の後側(円弧の内側)であれば、左フル転舵前進したとしても、左後輪19は最小旋回軌跡21に沿って進むだけなので、電柱33と接触することはない。
よって、運転者は、自車両の左右側面17,16付近の電柱が、最小旋回軌跡20,21の後側(円弧の内側)になるのを待って転舵を開始するようにすれば、内輪差による接触を防ぐことができる。
【0044】
以上説明したように、実施例1の狭路走行支援装置では、自車両の左右前側端12,11と自車両前方の障害物とを表示する第一の表示画像10と、第一の表示画像10の自車両の左右前側端12,11に連続させた自車両の左右側面17,16と自車両の側方に存在する障害物とを表示する第二の表示画像15とを、上下に合成してモニタ3に表示し、第二の表示画像15に表示される自車両の左右のドアミラー先端位置から自車両の進行方向前方に延びる自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する。
第一の表示画像10では、遠方から自車両の前側端までの障害物との位置関係を把握でき、自車幅相当延長線14,13で障害物との接触を事前に回避できる。また、第二の表示画像15では、第一の表示画像10で回避した障害物が自車両の側面に来たときの障害物と自車両の左右側面17,16との位置関係を把握でき、障害物との接触を回避できる。
【0045】
ここで、第一の表示画像10と第二の表示画像15とは、路面(Z=0面)基準で連続しているため、運転者は、障害物が遠方→前側端→側面の順で連続的に自車両の側方を通過していくのを視線移動することなく1つのモニタ3で確認でき、感覚的にも障害物位置の状況が把握しやすい。
さらに、第一の表示画像10内の障害物が自車両の前進によって第二の表示画像15内へ移る場合に、その位置の予測が容易である。
つまり、実施例1の狭路走行支援装置では、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。また、運転操作は運転者自身に判断によってなされるため、狭路走行時における運転スキルの向上にも寄与できる。
【0046】
実施例1では、第二の表示画像15に自車両の左右の後輪接地位置を表示するため、第一の表示画像10で回避した障害物が、左右側面17,16に来たときに障害物と後輪接地位置を含む左右側面17,16との位置関係を把握でき、左右側面17,16後方位置に存在する障害物との内輪差接触の可能性を予測できる。また、第二の表示画像15に最小旋回時における左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示するため、左右側面17,16付近の障害物との内輪差接触を事前に予測できる。つまり、後輪の最小旋回軌跡線を表示することで、運転者は確実に内輪差接触が発生しない転舵タイミングを判断できるため、運転スキルの向上が期待できる。
【0047】
次に、効果を説明する。
実施例1の狭路走行支援装置では、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 自車両前方の走行路と、自車両の左右前側端12,11と、走行路の左右両側に存在する障害物とが表示された第一の表示画像10を作成する第一の表示画像作成部110と、第一の表示画像10に表示される自車両の左右前側端12,11に連続させた自車両の左右側面17,16と、自車両の側方に存在する障害物とが表示された第二の表示画像15を作成する第二の表示画像作成部120と、第一の表示画像10と第二の表示画像15とを車両の上下または前後方向に並べて配置し、第一の表示画像10の下方または車両進行方向後方に第二の表示画像15を並べて配置すると共に、第二の表示画像15に表示される自車両の左右側面17,16の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる左右自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する画像合成部140と、を備えた。これにより、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。
【0048】
(2) 画像合成部140は、左右自車幅相当延長線14,13の長さを、少なくとも最小旋回時における左右前側端12,11の描く半径を画像表示したときの長さ以上とするため、左右自車幅相当延長線14,13の先端が障害物の根本と交差した時点でフル転舵を行うことで、操舵方向にかかわらず、確実に前方障害物を回避できる。
(3) 第一の表示画像作成部110および第二の表示画像作成部120は、第一の表示画像10に表示される走行路の左右両側に存在する障害物と、第二の表示画像15に表示される自車両の側方に存在する障害物とを連続して表示するため、違和感のない認識しやすい画面で操作が可能になる。
【0049】
(4) 第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に自車両の左右の後輪接地位置を表示するため、左右側面17,16後方付近に存在する障害物との内輪差接触の可能性を予測できる。
(5) 第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に最小旋回時における左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示するため、左右側面17,16付近の障害物との内輪差接触を事前に予測できる。
(6) 第一の表示画像作成部110は、第一の表示画像10を車両前方の斜め俯瞰表示とし、第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15を、路面(Z=0面)を基準とする俯瞰表示とするため、障害物が左右側面17,16を通過する際の画面変化の違和感を低減できると共に、左右自車幅相当延長線14,13と障害物との交わりを障害物の根本で確認できる。
【0050】
〔実施例2〕
実施例2において、実施例1と同一の構成については、同一名称、同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、実施例2の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図であり、実施例2では、図1に示した実施例1の構成に加え、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ(操舵角検出手段)5を設け、操舵角センサ5により検出された操舵角に基づいて、旋回内側後輪の旋回軌跡を演算し表示する。
よって、実施例2では、図12に示すように、後輪最小旋回半径(固定表示)に加えて、現在の操舵角に応じた旋回内側後輪の軌跡線(操舵連動軌跡)を表示する。
【0051】
次に、作用を説明する。
図12の状態で、左へ転舵する場合、最小旋回軌跡では電柱と接触してしまうことが表示から読み取れるが、操舵連動軌跡において34の位置までの操舵であれば、電柱への接触はないことが把握できる。ちなみに、35の位置までの操舵だと、電柱と接触してしまう。
実際の狭路においては、道自体が狭く、フル転舵操作をする可能性は極めて低いので、操舵連動軌跡を表示することによって、より詳細な転舵行動についても、許容して判断することができるという効果が得られる。
【0052】
次に、効果を説明する。
実施例2の狭路走行支援装置では、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(7) ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ5を備え、第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に、操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡である操舵連動軌跡を表示するため、現在の操舵角における内輪差接触の可能性を、より正確に予測できる。
【0053】
〔実施例3〕
実施例3において、実施例1と同一の構成については、同一名称、同一の符号を付して説明を省略する。
図13は、実施例3の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示例であり、実施例3では、第一の表示画像10を左右に分割した点のみ実施例1と異なる。
図2で説明したように、各カメラの設置位置には制限もあり、必ずしも、自車両直近の周囲画像が全て撮影できるとは限らない。特に、自車両の一部を含むように撮影しているために、直近の画素については、撮影されていない状態も多々ある。
これを視点変換したとしても、元来の画素データが存在しないために、補完することすらできない。特に、広角レンズを使用しないで、光軸中心付近の歪みの少ない箇所を利用しているフロントの2つのカメラ1a,1bについては、この傾向が顕著である。
【0054】
そこで、実施例3では、図13に示すように、第一の表示画像10をマスキングによってカメラ毎に画像を分割した。
図13(a)では、運転者正面の画像をマスキング36によって、非表示にした例である。そもそも、正面遠方は運転者が目視できる範囲であり、この部位での情報をモニタ3に頼ることは少ない。同様に、運転者正面の直近(自車の書面前端)は目視できない状態ではあるが、その場所へ至る前の段階、すなわち、直近が未だ遠方で目視できていた時点での記憶に頼ることができる。通常の狭路走行においては、自車両の正面に壁や電柱などの障害物が存在するケースが少なく、一般的には、自車の左右前側端12,11付近に注力されることが多い。
【0055】
図13(b)では、自車両の正面画像の直近部をマスキング37によって非表示にした例である。これは、図2で示したように、フロントへ向けたカメラ1a,1bを、運転席側と助手席側とのAピラー上に設置した場合、遠方画像は個々のカメラ1a,1bで撮影できるものの、直近、特に自車両のフードによって、ケラレが発生している箇所については撮影ができない。この箇所においても、図13(a)で説明した通りに、特に運転での重要性は少ないため、マスキングによって、隠しても問題にはならない。自車両のフード上については、自車をアイコンで記述する場合もあるので、特にマスキングによって隠さなくとも、この位置の情報は取得できないようになっている。
【0056】
図13(c)では、特にマスキングを施している訳ではないが、フロントへ向けられた2つのカメラ1a,1bの各画像の境界線を明確に分けた例である。複数カメラの画像を合成するときの一般的な手法として、各画像の画素を交互に採用するブレンディングや、カメラからの距離の近い方の画素を採用する手法等が多々ある。ところが、上述したように、この部位の運転行動に及ぼす影響は非常に小さいものと考えられるため、映像の右半分については右カメラ1aの画像、左半分については左カメラ1bの画像を使い単純化を図るようにしてもよい。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例1の狭路走行支援装置では、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(8) 第一の表示画像作成部110は、第一の表示画像10を、右の前側端と走行路の右側に存在する障害物とを表示する右画像10aと、左の前側端と走行路の左側に存在する障害物とを表示する左画像10bとに分割表示するため、撮影されていない運転行動への影響が少ない画像を非表示にすることができ、運転者に着目させたい画像のみに集中させることができる。
【0058】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、第一の表示画面と第二の表示画面とを1つのモニタに表示する例を示したが、車両上下方向または車両前後方向に並んだ2つのモニタの上側または前方側のモニタに第一の表示画面を表示し、下側または後方側のモニタに第二の表示画面を表示してもよい。
実施例2と実施例3の構成を組み合わせた構成、すなわち、ハンドルの操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡を第二の表示画像に表示する構成と、第一の表示画像を左右に分割した構成とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
5 操舵角センサ(操舵角検出手段)
10 第一の表示画像
12,11 左右前側端
14,13 左右自車幅相当延長線
15 第二の表示画像
17,16 左右側面
19,18 左右後輪
20,21 左右最小旋回軌跡
110 第一の表示画像作成部(第一の表示画像作成手段)
120 第二の表示画像作成部(第二の表示画像作成手段)
140 画像合成部(車幅相当延長線作成)
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭路走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行支援装置では、助手席側に設けられたカメラで運転席と反対側の車両前端周囲の状況を撮影し、ドアミラー先端位置での自車両の前後方向延長線と共に車室内に接地されたモニタへ表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、運転者は助手席側をモニタ、運転席側を目視というように左右の幅間隔を異なる方法で把握しなければならないため、自車両と障害物との相対位置関係を即座に把握できない。
また、カメラ映像から助手席側の自車両前方に存在する障害物を回避することは可能であるが、自車両の左右前側端付近を通過した後の障害物については、モニタに映らないため、運転者の走行を支援できない。
【0005】
本発明の目的は、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる狭路走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、自車両の左右前側端と自車両前方の障害物とを表示する第一の表示画像と、第一の表示画像の自車両の左右前側端に連続させた自車両の左右側面と自車両の側方に存在する障害物とを表示する第二の表示画像とを、車両の上下または前後方向に並べて配置し、第二の表示画像に表示される自車両の左右側面の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる車幅相当延長線を第一の表示画像と第二の表示画像とに連続して表示する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、自車両前方の領域を表示する第一の表示画面と自車両の左右側面の領域を表示する第二の表示画面とを並べて配置し、かつ、自車幅相当延長線を第一および第二の表示画像に連続して配置したため、自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cの設置位置を示す車両の平面図および左側面図である。
【図3】実施例1の狭路走行支援装置の支援画像を実現する仮想カメラ位置を示す車両の左側面図である。
【図4】実施例1の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像である。
【図5】第一の表示画像10および第二の表示画像15に対する各アイコンの重畳表示方法を示す図である。
【図6】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図7】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図8】狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を示す図である。
【図9】狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を示す図である。
【図10】狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を示す図である。
【図11】実施例2の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施例2の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像である。
【図13】実施例3の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の狭路走行支援装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0010】
〔実施例1〕
[全体構成]
図1は、実施例1の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図である。
カメラ1a,1bは、自車両の左右両側前端付近にそれぞれ設置され、自車両前端の一部を含む周囲画像を撮影し、コントロールユニット100へ出力する。
カメラ2a,2b,2cは、自車両の左右側面および後部にそれぞれ設置され、自車両の一部を含む周囲画像を撮影し、コントロールユニット100へ出力する。
モニタ3は、車室内インストルメントパネル付近に設置され、コントロールユニット100から出力される支援表示画像を運転者へ表示する。
起動スイッチ4は、ステアリングまたはインストルメントパネル付近に設置され、コントロールユニット100へ本装置による支援表示の開始指令を出力する。
【0011】
コントロールユニット100は、カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cで撮像した画像を運転者の狭路走行を支援するための支援表示画像に加工してモニタ3へ出力するもので、第一の表示画像作成部(第一の表示画像作成手段)110と、第二の表示画像作成部(第二の表示画像作成手段)120と、重畳表示記憶部130と、画像合成部(車幅相当延長線作成)140とから構成される。
第一の表示画像作成部110は、障害物が遠方から自車両前端付近に接近するまでの支援画像を作成するもので、俯角視点変換部111と、俯角画像作成部112とを有する。
俯角視点変換部111は、カメラ1a,1bで撮影した複数の画像を、運転者の目線付近の高さから、自車両の左側面および左側面付近から進行方向で、かつ、自車両のフード(ボンネット)先端付近へ向かう俯角の画像に視点変換する。
俯角画像作成部112は、俯角視点変換部111で視点変換された左右の俯角画像を自車両の左右方向に合成して、遠方の障害物から自車両前端の一部が含まれる第一の表示画像を作成し、画像合成部140へ出力する。
【0012】
第二の表示画像作成部120は、障害物が第一の表示画像から外れて、自車両の左右側面付近にあるときの支援画像を作成するもので、俯瞰視点変換部121と、俯瞰画像作成部122とを有する。
俯瞰視点変換部121は、カメラ2a,2b,2cで撮影した複数の画像を、自車を真上から見下ろした俯瞰画像に視点変換する。
俯瞰画像作成部122は、俯瞰視点変換部121で視点変換された自車両の左、右、後方の俯瞰画像を合成して、自車両の左右側面と後方の障害物との位置関係が確認しやすい第二の表示画像を作成し、画像合成部140へ出力する。
【0013】
重畳表示記憶部130は、第一の表示画像作成部110および第二の表示画像作成部120に重畳表示する支援表示アイコンを記憶するもので、自車アイコン記憶部131と、内側後輪(旋回時に内側となる後輪)の最小旋回軌跡記憶部132と、自車幅相当延長線記憶部133と、外側前端の最小旋回軌跡記憶部134とを有する。
自車アイコン記憶部131は、第一の表示画像における俯角からの視点に変換された自車両のアイコンと、第二の表示画像における視点に変換された自車両のアイコンとを記憶する。
内側後輪の最小旋回軌跡記憶部132は、フル転舵状態での左折時の左後輪の軌跡線と、フル転舵状態での右折時の右後輪の軌跡線とのアイコンを記憶する。
自車幅相当延長線記憶部133は、左右のドアミラー先端位置(自車両の左右側面の車幅方向端部)での自車両の前後方向延長線のアイコンを記憶する。
外側前端の最小旋回軌跡記憶部134は、フル転舵状態で前進旋回したときの旋回外側における自車両の側前端の旋回半径を記憶する。
【0014】
画像合成部140は、第一の表示画像作成部110で作成された第一の表示画像と、第二の表示画像作成部120で作成された第二の表示画像とを、道路の路面を基準にした位置(Z=0面)で合成し、さらに重畳表示記憶部130で記憶されている支援表示アイコンを重畳してモニタ3へ出力する。
【0015】
[各カメラの設置位置]
図2は、カメラ1a,1bおよび2a,2b,2cの設置位置を示す車両の平面図および左側面図である。
カメラ1aは、例えば自車両の右側Aピラー付近に、自車両の右前側端に向けて設置されたカメラで、自車両の右前側端を含む右前周辺の画像を撮影する。カメラ1aの光軸中心6は、右前側端部に向けられていて、画像中の最も歪みの少ない部位で自車両の右前側端部と、そこに接近する障害物との位置関係の変化を撮影できるように設置される。
カメラ1bは、例えば自車両の左側Aピラー付近に、自車両の左前側端に向けて設置されたカメラで、自車両の左前側端を含む左前周辺の画像を撮影する。カメラ1bの光軸中心7は、左前側端部に向けられていて、画像中の最も歪みの少ない部位で自車両の左前側端部と、そこに接近する障害物との位置関係の変化を撮影できるように設置される。
【0016】
カメラ2aは、自車両の右ドアミラー付近に、略下方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の右側側面を含む右側面の周辺画像を撮影する。
カメラ2bは、自車両の左ドアミラー付近に、略下方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の左側側面を含む左側面の周辺画像を撮影する。
カメラ2cは、自車両の後端部付近に、略後方を向けて設置された広角(例えば180°)カメラで、自車両の後端を含む後方の周辺画像を撮影する。
なお、各カメラの設置位置、向きや画角等は、図2に示したものに限定されるものではなく、視点変換等の既存技術を用いて上記説明箇所の画像を作成できればよい。
【0017】
[仮想カメラ位置]
図3は、実施例1の狭路走行支援装置の支援画像を実現する仮想カメラ位置を示す車両の左側面図である。
仮想カメラ位置8は、第一の表示画像を実現する仮想カメラの位置で、自車両の左右前側端と、進行方向遠方の障害物とを含む撮影範囲の画像で、特に、自車両の左右前側端付近でのレンズ歪みが少なくなるように設定される。また、仮想カメラ位置8は運転者のアイポイント付近の上方に設置されて、自車両の左右前側端がレンズの歪みが少ない撮影範囲に含まれる俯角がなされている。
仮想カメラ位置9は、第二の表示画像を実現する仮想カメラの位置で、自車両の左右側面と、その付近の障害物、具体的には、左右前側端で回避した電柱が自車両の側面に到達した状態での撮影範囲の画像で、実施例1では上方からの俯瞰画像で説明する。
【0018】
[モニタ3の表示画像]
図4は、実施例1の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示画像であり、モニタ3には、第一の表示画像10と第二の表示画像15とが同時に表示される。第二の表示画像15は、第一の表示画像10の下方または自車両の進行方向後方に表示される。
第一の表示画像10は、仮想カメラ位置8からの画像で、自車両の左右前側端12,11と、進行方向遠方の障害物とを含む画像で構成される。
自車両の右前側端11は、運転者のアイポイント付近の上方に設置された視点から、レンズの歪みが少ない箇所に撮影されるような俯角がなされて表示される。
自車両の左前側端12も同様に、運転者のアイポイント付近の上方に設置された視点から、レンズの歪みが少ない箇所に撮影されるような俯角がなされて表示される。
【0019】
右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線13は、自車両の右ドアミラー先端位置での前後方向の延長線で、後述する長さ以上の距離を自車右前側端11に沿って、前方に向けて表示されると共に、右ドアミラー先端まで、第一の表示画像10と、第二の表示画像とを連続して表示される。
左ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14も同様に、自車両の左ドアミラー先端位置での前後方向の延長線で、後述する長さ以上の距離を自車左前側端12に沿って、前方に向けて表示されると共に、左ドアミラー先端まで、第一の表示画像10と、第二の表示画像とを連続して表示される。
【0020】
第二の表示画像15は、仮想カメラ位置9からの画像で、自車両の左右側面17,16と、その付近の障害物とを含む画像で構成される。
自車両の右側面16は、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像で表示される。
自車両の左側面17も同様に、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像で表示される。
自車両の右後輪18は、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像内の自車両アイコン内で右後輪の位置に表示される。
自車両の左後輪19も同様に、自車両の真上に設置された視点からの俯瞰画像内の自車両アイコン内で左後輪19の位置に表示される。
【0021】
右側後輪の右旋回における最小旋回軌跡の右ドアミラー先端位置までの軌跡20は、俯瞰画像内の右後輪18の位置を始点として、右にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該右後輪18が車両前後方向で、右ドアミラーの位置付近までの長さで、Z=0面に表示される。
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡の左ドアミラー先端位置までの軌跡21も同様に、俯瞰画像内の左後輪19の位置を始点として、左にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該左後輪19が車両前後方向で、左ドアミラーの位置付近までの長さで、Z=0面に表示される。
【0022】
第一の表示画像10では、遠方の障害物と、自車両の左右前側端12,11との位置関係が1画面で確認できるように支援を行う。具体的には、画面内に自車両の一部(左右前側端12,11)が表示されているため、障害物(図中の電柱や壁)との距離感が掴みやすくなっている。
障害物が遠方にあるような場合、俯瞰画像では表示範囲の制限が厳しく、モニタ3内に障害物が表示されない。このため、モニタ3で障害物を確認できるようになったときには、既に自車両の直近に障害物が迫った状態であるため、回避のための操作が間に合わない、または急激な操舵を迫られることになる。
【0023】
これに対して、実施例1の第一の表示画像10の場合は、遠方の障害物と、左右前側端12,11との両方が事前にモニタ3で確認できるため、モニタ画像のみからでも、障害物回避の操舵に備えることができると共に、障害物に接近したときでも、自車前方の障害物と、目視不可能な自車両の左右前側端12,11との位置関係をモニタ3で確認することができる。
したがって、遠方の障害物を知覚しやすいと共に、該障害物が自車両の先端部に接近してきた場合でも、それらの位置関係(接触するいないの判断)を把握しやすい。さらに、該障害物が遠方に在るときから、自車両の直近に来るまでの間も、ずっとモニタ表示され続けているので、回避操舵開始のタイミングなどを予測しやすいし、実環境との位置関係も対応を付けやすいと言った効果がある。
【0024】
さらに、第一の表示画像10には、左右の自車幅相当延長線14,13も表示される。この線は、自車アイコン固定表示となっているため、自車アイコン同様に、操舵にかかわらず、モニタ3内では固定された位置に表示されることなる。このため、自車両が現在位置でハンドルを中立に固定した状態で前進したときの、将来軌跡位置を表現している。
左右の自車幅相当延長線14,13はモニタ3内で遠方に存在する左右の障害物の間を、自車両が通り抜けられるか否かを、障害物に接近する手前で確認することができる。具体的には、遠方の電柱や壁等の障害物の間に、左右の自車幅相当延長線14,13が収まっていれば、その箇所は通過可能であることが事前に判断できるし、自車幅相当延長線14,13が障害物と交差している場合には、そのまま前進しても障害物に接触してしまうことが事前に判断できるので、操舵によって、左右の自車幅相当延長線14,13を障害物の間に入れるような操舵を行うか、または操舵によっても、左右の自車幅相当延長線14,13が障害物と交差しているようであれば、その障害物の間は、自車両では通り抜けることができない幅であることが事前に判断できる。
【0025】
上記に加えて、モニタ3内で、左右の道路稜線(壁と地面との境界部)と、左右の自車幅相当延長線14,13とのギャップと平行度合を比較することで、自車両の現在の状態が、左右の道路端のどちらの方向に寄っているのか、該道路に対して自車両は平行であるか否か、左右のいずれかの方向に傾いているのか(このままハンドル中立状態で前進して、壁、または電柱への接触はしないか否か)についても同時、かつ、感覚的に判断することができる。
【0026】
第二の表示画像15では、第一の表示画像10を利用して、自車両の左右前側端12,11で回避した障害物が、自車両の前進に伴って、左右側面17,16付近に到達した場合のそれらの位置関係が、第一の表示画像10に、道路面(Z=0面)で連続して、かつ、1画面で確認できるように支援を行う。
すなわち、Z=0面で二つの画像を接続して居るため、壁や電柱などの障害物の付根部分では、第一の表示画像10と第二の表示画像15とが連続しているため、画像情報が途切れることはない。具体的には、画面内に自車両の一部(左右側面17,16)が、真上から見下ろした俯瞰画像で表示されているため、障害物(図中の電柱や壁)との距離や角度が掴みやすくなっている。
さらに、第二の表示画像15には、左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21も表示される。この線も、自車アイコンへ固定表示となっているため、自車アイコン同様に、操舵にかかわらず、モニタ3内では固定された位置に表示されることなる。
したがって、自車両が現在位置でハンドルを左右いずれかの方向へフル転舵した状態で前進したときの内輪差、すなわち、左右後輪19,18の将来軌跡を表現している。
【0027】
左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21はモニタ3内で左右側面17,16付近に存在する障害物と自車両の内輪差により接触しないための転舵タイミングを教示するものである。具体的には、図中の左右側面17,16付近に存在する電柱や壁等の障害物が、最小旋回軌跡20,21の前方、すなわち、円弧の外側に存在している状態で転舵を開始した場合は、その操舵角にもよるが、少なくともフル転舵した場合には、最小旋回軌跡20,21の自車両側に障害物があるため、内輪差による接触の可能性がある。
このとき、運転者は、第二の表示画像15内で、左右側面17,16と障害物との位置関係を確認しながら操舵を行なうようにすることで、障害物を回避しなければならない。
【0028】
これに対して、最小旋回軌跡20,21の後方、すなわち、円弧の内側に存在している状態で転舵を開始した場合は、どのような操舵角であっても、該障害物に内輪差軌跡、すなわち、最小旋回軌跡20,21が届かないため、内輪差による接触の可能性はない。
このように、モニタ3内で左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21と、障害物との位置関係を確認しながら、転舵タイミングを測ることで、内輪差に注意しなければいけない転舵操作か否かを、容易に、かつ、感覚的に判断することができる。
【0029】
[各アイコンの重畳表示方法]
図5は、第一の表示画像10および第二の表示画像15に対する各アイコンの重畳表示方法を示す図である。
(外側前端の最小旋回軌跡)
自車両の右前側端11の左旋回における最小旋回軌跡22は、俯瞰画像内の右前側端11位置の、左にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該右前側端11が車両前後方向で、最も前方となる位置(後述する25)を求めるための軌跡線である。
自車両の左前側端12の右旋回における最小旋回軌跡23も同様に、俯瞰画像内の左前側端12位置の、右にフル転舵した状態で旋回したときの軌跡で、該左前側端12が車両前後方向で、最も前方となる位置(後述する25)を求めるための軌跡線である。
自車両の前端24は、自車両前方で障害物に最も近い位置を示す線である。
自車両の左右前側端12,11の最小旋回軌跡22,23における自車両前後方向の最大距離25は、最低でも本距離よりも前方に障害物が位置していれば、左右どちら方向のフル転舵操作でも前方障害物との接触を回避することができる距離であり、左右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14,13の長さは、少なくとも、この長さ以上であることとする。
【0030】
右側後輪の右旋回における最小旋回軌跡26は、自車両の右側面16付近にある障害物が、最低でも本軌跡線の後方(円弧の内側方向)に位置していれば、右方向にフル転舵操作したとしても障害物との接触を回避することができる位置であることを容易に判断できる。
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡27も同様に、自車両の左側面17付近にある障害物が、最低でも本軌跡線の後方(円弧の内側方向)に位置していれば、左方向にフル転舵操作したとしても障害物との接触を回避することができる位置であることを容易に判断できる。
【0031】
左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡の運転者位置付近までの軌跡28は、左側後輪の左旋回における最小旋回軌跡27の運転席付近までの長さのもので、狭路においては本アイコンの幅方向の距離が大きいため、俯瞰画像の表示範囲も広さが必要となってしまう。よって、これを防止すること、そもそも狭路でのフル転舵操作は非常に可能性が低いことを考慮し、略自車幅付近までの長さとした。
【0032】
(自車幅相当延長線)
左右ドアミラー先端位置での自車幅相当延長線14,13について説明する。
始点はドアミラーの最も外側部、またはここに一定距離のマージンを設けてもよい。
自車幅相当延長線14,13の角度は、自車両の前後方向を示すY軸と平行とする。すなわち、ハンドル中立状態で前進したときに、上記左右ドアミラーの最も外側部が描く軌跡と同一である。なお、Z軸方向の角度はモニタ3で表現されないので、特に規定の必要はない。
長さについては、最低限以下に説明する長さ以上を、モニタ3内の第一の画像表示内で表示することとする。その長さ(最大距離25)は、自車両の左右前側端12,11が確実に前方の障害物を回避することのできる距離とするため、自車両の左右前側端12,11のフル転舵軌跡(最小旋回半径での旋回時に於ける前記前側端箇所の旋回軌跡)の旋回半径を求める。
【0033】
図5に示すように、自車両の現在位置から、前方に障害物である電柱が存在したとする場合に、電柱が図中の左右方向のどの位置であっても、少なくとも現在位置から左右のどちらの方向にハンドルをフル転舵した場合であっても、電柱と接触することはない。
すなわち、自車両の前側端部の最小旋回半径における軌跡の半径の長さがあれば、左右どの位置に前方障害物が存在していたとしても、それを回避することができる距離となる。
ここで、最大距離25の手前であっても、最小旋回半径で回避することが可能ではあるが、この場合は自車両と電柱との左右方向の位置関係も確認する必要も出てきて、より複雑なロジックとなってしまう。実施例1では、運転者へ「最低限、接触しない距離」として、より単純化するために、上記の考え方に基づいた最大距離25を設定した。
【0034】
該旋回半径の長さは、自車両の後輪アクスルからの長さであるため、自車両の後輪アクスルから、ドアミラー先端部までの長さを引けば、ドアミラー先端部からの最低限の距離が求まる。
上記で説明した長さ以上であれば、第一の表示画像10内で、例えば、画面縦方向の長さの2/3程度の長さでもよいし、遠方で左右の自車幅相当延長線14,13が接触する長さでもよい。なお、左右が交差するまでは問題ないが、交差したさらにその先を延長して画面内でX字状になることは避ける。
【0035】
(内側後輪の最小旋回軌跡)
左右後輪19,18の最小旋回軌跡20,21について説明する。
始点は後輪の接地位置の最も外側部、またはここに一定距離のマージンを設けてもよい。
左右後輪19,18の最小旋回軌跡は、自車両が旋回したときの内側後輪の最小旋回軌跡とする。すなわち、ハンドルを右、又は、左へフル転舵した状態で前進したときに、上記後輪接地位置の最も外側部が描く軌跡と同一である。
長さについては、図5の最小旋回軌跡27のように、1/4の円弧としてもよいが、支援対象を狭路としているために、該支援表示線が左右の壁を突き破っているように見えてしまう。例えば、最小旋回軌跡21に示すような、自車両前後方向でドアミラー先端部までの長さとしてもよい。
【0036】
運転者は前方からドアミラー付近までの位置については、通常の運転時から目視で意識しているので、目視では確認しづらいドアミラー後方以降の距離を支援する第二の表示画像15では充分な距離と言える。さらに、そもそも狭路なので、左右に壁などが存在する環境でのフル転舵操作は考えにくい、したがって、より左右方向への出っ張りを小さくする意味で、運転席および助手席付近までの長さとして、内輪差を強く意識する後輪付近のみとしてもよい。
さらに、上記の説明では、最小旋回軌跡20,21,26,27,28を、操舵に連動しない固定表示として説明したが、ハンドルの角度に応じた後輪接地位置の旋回軌跡を表示してもよい。この場合、図4で説明した、転舵の開始タイミングを教示するものではなく、現状の操舵角で前進した場合の内輪差接触の可能性を表示しているのであって、狭路に於ける内輪差接触を事前に回避することはできる(現在行っている操作の将来予測ができる)が、どのようなタイミングで転舵を開始すれば、内輪差接触を回避できるのか(内輪差接触を回避するための転舵開始タイミング)を教示するものではなくなる。
第二の表示画像15においては、自車両の前部が通過した後の範囲を表示しているため、障害物を回避するための転舵開始タイミング教示に加えて、どの程度ハンドルを切れば内輪差接触を回避できるのか(操舵連動軌跡)を教示する調整操舵の支援も必要となってくる。
実施例1では、後輪軌跡線の固定表示と操舵連動表示とについて、個別に説明したが、第二の表示画像15へ固定と操舵連動の両方を同時に表示してもよい。これについては後述する。
【0037】
次に、作用を説明する。
[第一の表示画像による狭路走行支援作用]
図6〜8を用いて狭路走行時における第一の表示画像10の表示動作を説明する。
自車両進行方向の左側壁29は、狭路における自車両の左方向に存在する高さを持った壁である。
自車両進行方向の右側壁30も同様に、狭路における自車両の右方向に存在する高さを持った壁である。
左側に存在する奥側の電柱31は、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の自車両から最も遠い前方位置に存在し、左側壁29に寄って立っている。
右側に存在する32も同様に、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の電柱31と、後述する電柱33との間で、かつ、右側壁30に寄って立っている。
左側に存在する手前側の電柱33も同様に、左右側壁29,30との間に存在する電柱で、図中の自車両から最も近い前方位置に存在し、左側壁29に寄って立っている。
【0038】
図6は、自車両が道路に対して図中左側に傾いた状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、図中左方向に向いているため、図6(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図6(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の自車幅相当延長線14,13は電柱33と電柱32には交わっていないため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、電柱33と電柱32とは接触が回避できることが事前に確認できる。
ただし、左の自車幅相当延長線14が電柱31と交わっているため、電柱32を自車両前端で回避した後に、右方向へ転舵して、電柱31を回避する操舵が必要であることも事前に確認できる。
【0039】
図7は、自車両が道路に対して平行であるものの、図中左側に寄っている状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、平行で、かつ、左側に寄っているため、図7(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図7(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の右側の自車幅相当延長線13は電柱32には交わっていないものの、左側の自車幅相当延長線14は電柱33に交わっている。
このため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、電柱33と接触してしまうことが事前に確認できる。よって、図中右へ操舵して、右側の自車幅相当延長線13と電柱32とが接触しないで、かつ、左側の自車幅相当延長線14と電柱33とが接触しない位置に操舵して前進すれば、接触を回避することができる。
【0040】
図8は、自車両が道路に対して図中右側に傾いた状態である場合の表示動作を示す図である。
自車両が道路に対して、図中右方向に向いているため、図8(a)に示す位置関係になっている。このときの第一の表示画像10および第二の表示画像15は図8(b)に示すような映像となる。
第一の表示画像10で、自車両の自車幅相当延長線14,13は電柱33、電柱32、電柱31とは交わっていないため、現在の位置からハンドルを中立に保った状態で前進すれば、全ての電柱との接触を回避できることが事前に確認できる。ただし、右の自車幅相当延長線13が右壁30と遠方で交わりそうになっているため、電柱32を自車両前端で回避した後に、左方向へ転舵して、電柱31を回避する操舵が必要であることも事前に確認できる。
【0041】
以上のように、第一の表示画像10は、自車両の前部(左右前側端12,11)と、左右の自車幅相当延長線14,13と、障害物との位置関係から、ハンドルを中立状態で前進したときの接触が、事前に確認できると共に、その後、直近の電柱を回避した後の操作(行動)についても、イメージすることができる。
このため、狭い障害物間の箇所を通過可能であるか否かを、通過前に判断できることに加えて、以降の操舵方法も事前にプランニングしやすいという効果を奏する。
【0042】
また、上記説明では電柱を配置した道で説明したが、電柱の存在しない道路であっても、該道路の稜線(壁と地面との境界部)と、左右の自車幅相当延長線14,13とのギャップと平行度合を確認することができるため、自車両が、左右の道路端のいずれの方向に寄っているのか、該道路に対して自車両は平行であるか否かについても同時、かつ、感覚的に判断することができ、安心して意図的に自車両を道路の右端または左端に寄せることができて狭路を通り抜けることができる。
【0043】
[第二の表示画像による狭路走行支援作用]
次に、図9,10を用いて狭路走行時における第二の表示画像15の表示動作を説明する。
図9の状態から、自車両が前進して図10の状態になる、すなわち、図9では第一の表示画像10に電柱31,32が映り、第二の表示画像15に電柱33が映っているが、図10では第一の表示画像10に電柱31のみが映り、第二の表示画像15に電柱32,33が映っている。
特に電柱33に着目して説明すると、図9の時点では、左側後輪の最小旋回軌跡21の前側(円弧の外側)であるため、例えば、この時点から左フル転舵で前進した場合、(左壁は無視したとしても)自車両の左側面17が、電柱33に接触してしまう。
しかしながら、図10のように、電柱33の位置が、左側後輪の最小旋回軌跡21の後側(円弧の内側)であれば、左フル転舵前進したとしても、左後輪19は最小旋回軌跡21に沿って進むだけなので、電柱33と接触することはない。
よって、運転者は、自車両の左右側面17,16付近の電柱が、最小旋回軌跡20,21の後側(円弧の内側)になるのを待って転舵を開始するようにすれば、内輪差による接触を防ぐことができる。
【0044】
以上説明したように、実施例1の狭路走行支援装置では、自車両の左右前側端12,11と自車両前方の障害物とを表示する第一の表示画像10と、第一の表示画像10の自車両の左右前側端12,11に連続させた自車両の左右側面17,16と自車両の側方に存在する障害物とを表示する第二の表示画像15とを、上下に合成してモニタ3に表示し、第二の表示画像15に表示される自車両の左右のドアミラー先端位置から自車両の進行方向前方に延びる自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する。
第一の表示画像10では、遠方から自車両の前側端までの障害物との位置関係を把握でき、自車幅相当延長線14,13で障害物との接触を事前に回避できる。また、第二の表示画像15では、第一の表示画像10で回避した障害物が自車両の側面に来たときの障害物と自車両の左右側面17,16との位置関係を把握でき、障害物との接触を回避できる。
【0045】
ここで、第一の表示画像10と第二の表示画像15とは、路面(Z=0面)基準で連続しているため、運転者は、障害物が遠方→前側端→側面の順で連続的に自車両の側方を通過していくのを視線移動することなく1つのモニタ3で確認でき、感覚的にも障害物位置の状況が把握しやすい。
さらに、第一の表示画像10内の障害物が自車両の前進によって第二の表示画像15内へ移る場合に、その位置の予測が容易である。
つまり、実施例1の狭路走行支援装置では、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。また、運転操作は運転者自身に判断によってなされるため、狭路走行時における運転スキルの向上にも寄与できる。
【0046】
実施例1では、第二の表示画像15に自車両の左右の後輪接地位置を表示するため、第一の表示画像10で回避した障害物が、左右側面17,16に来たときに障害物と後輪接地位置を含む左右側面17,16との位置関係を把握でき、左右側面17,16後方位置に存在する障害物との内輪差接触の可能性を予測できる。また、第二の表示画像15に最小旋回時における左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示するため、左右側面17,16付近の障害物との内輪差接触を事前に予測できる。つまり、後輪の最小旋回軌跡線を表示することで、運転者は確実に内輪差接触が発生しない転舵タイミングを判断できるため、運転スキルの向上が期待できる。
【0047】
次に、効果を説明する。
実施例1の狭路走行支援装置では、以下に列挙する効果を奏する。
(1) 自車両前方の走行路と、自車両の左右前側端12,11と、走行路の左右両側に存在する障害物とが表示された第一の表示画像10を作成する第一の表示画像作成部110と、第一の表示画像10に表示される自車両の左右前側端12,11に連続させた自車両の左右側面17,16と、自車両の側方に存在する障害物とが表示された第二の表示画像15を作成する第二の表示画像作成部120と、第一の表示画像10と第二の表示画像15とを車両の上下または前後方向に並べて配置し、第一の表示画像10の下方または車両進行方向後方に第二の表示画像15を並べて配置すると共に、第二の表示画像15に表示される自車両の左右側面17,16の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる左右自車幅相当延長線14,13を第一の表示画像10と第二の表示画像15とに連続して表示する画像合成部140と、を備えた。これにより、自車両前方の障害物が自車両側方付近に移動する際の自車両と障害物との連続的な相対位置関係を、運転者に容易かつ即座に把握させることができる。
【0048】
(2) 画像合成部140は、左右自車幅相当延長線14,13の長さを、少なくとも最小旋回時における左右前側端12,11の描く半径を画像表示したときの長さ以上とするため、左右自車幅相当延長線14,13の先端が障害物の根本と交差した時点でフル転舵を行うことで、操舵方向にかかわらず、確実に前方障害物を回避できる。
(3) 第一の表示画像作成部110および第二の表示画像作成部120は、第一の表示画像10に表示される走行路の左右両側に存在する障害物と、第二の表示画像15に表示される自車両の側方に存在する障害物とを連続して表示するため、違和感のない認識しやすい画面で操作が可能になる。
【0049】
(4) 第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に自車両の左右の後輪接地位置を表示するため、左右側面17,16後方付近に存在する障害物との内輪差接触の可能性を予測できる。
(5) 第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に最小旋回時における左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示するため、左右側面17,16付近の障害物との内輪差接触を事前に予測できる。
(6) 第一の表示画像作成部110は、第一の表示画像10を車両前方の斜め俯瞰表示とし、第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15を、路面(Z=0面)を基準とする俯瞰表示とするため、障害物が左右側面17,16を通過する際の画面変化の違和感を低減できると共に、左右自車幅相当延長線14,13と障害物との交わりを障害物の根本で確認できる。
【0050】
〔実施例2〕
実施例2において、実施例1と同一の構成については、同一名称、同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、実施例2の狭路走行支援装置の構成を示すブロック図であり、実施例2では、図1に示した実施例1の構成に加え、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ(操舵角検出手段)5を設け、操舵角センサ5により検出された操舵角に基づいて、旋回内側後輪の旋回軌跡を演算し表示する。
よって、実施例2では、図12に示すように、後輪最小旋回半径(固定表示)に加えて、現在の操舵角に応じた旋回内側後輪の軌跡線(操舵連動軌跡)を表示する。
【0051】
次に、作用を説明する。
図12の状態で、左へ転舵する場合、最小旋回軌跡では電柱と接触してしまうことが表示から読み取れるが、操舵連動軌跡において34の位置までの操舵であれば、電柱への接触はないことが把握できる。ちなみに、35の位置までの操舵だと、電柱と接触してしまう。
実際の狭路においては、道自体が狭く、フル転舵操作をする可能性は極めて低いので、操舵連動軌跡を表示することによって、より詳細な転舵行動についても、許容して判断することができるという効果が得られる。
【0052】
次に、効果を説明する。
実施例2の狭路走行支援装置では、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(7) ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ5を備え、第二の表示画像作成部120は、第二の表示画像15に、操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡である操舵連動軌跡を表示するため、現在の操舵角における内輪差接触の可能性を、より正確に予測できる。
【0053】
〔実施例3〕
実施例3において、実施例1と同一の構成については、同一名称、同一の符号を付して説明を省略する。
図13は、実施例3の狭路走行支援装置におけるモニタ3の表示例であり、実施例3では、第一の表示画像10を左右に分割した点のみ実施例1と異なる。
図2で説明したように、各カメラの設置位置には制限もあり、必ずしも、自車両直近の周囲画像が全て撮影できるとは限らない。特に、自車両の一部を含むように撮影しているために、直近の画素については、撮影されていない状態も多々ある。
これを視点変換したとしても、元来の画素データが存在しないために、補完することすらできない。特に、広角レンズを使用しないで、光軸中心付近の歪みの少ない箇所を利用しているフロントの2つのカメラ1a,1bについては、この傾向が顕著である。
【0054】
そこで、実施例3では、図13に示すように、第一の表示画像10をマスキングによってカメラ毎に画像を分割した。
図13(a)では、運転者正面の画像をマスキング36によって、非表示にした例である。そもそも、正面遠方は運転者が目視できる範囲であり、この部位での情報をモニタ3に頼ることは少ない。同様に、運転者正面の直近(自車の書面前端)は目視できない状態ではあるが、その場所へ至る前の段階、すなわち、直近が未だ遠方で目視できていた時点での記憶に頼ることができる。通常の狭路走行においては、自車両の正面に壁や電柱などの障害物が存在するケースが少なく、一般的には、自車の左右前側端12,11付近に注力されることが多い。
【0055】
図13(b)では、自車両の正面画像の直近部をマスキング37によって非表示にした例である。これは、図2で示したように、フロントへ向けたカメラ1a,1bを、運転席側と助手席側とのAピラー上に設置した場合、遠方画像は個々のカメラ1a,1bで撮影できるものの、直近、特に自車両のフードによって、ケラレが発生している箇所については撮影ができない。この箇所においても、図13(a)で説明した通りに、特に運転での重要性は少ないため、マスキングによって、隠しても問題にはならない。自車両のフード上については、自車をアイコンで記述する場合もあるので、特にマスキングによって隠さなくとも、この位置の情報は取得できないようになっている。
【0056】
図13(c)では、特にマスキングを施している訳ではないが、フロントへ向けられた2つのカメラ1a,1bの各画像の境界線を明確に分けた例である。複数カメラの画像を合成するときの一般的な手法として、各画像の画素を交互に採用するブレンディングや、カメラからの距離の近い方の画素を採用する手法等が多々ある。ところが、上述したように、この部位の運転行動に及ぼす影響は非常に小さいものと考えられるため、映像の右半分については右カメラ1aの画像、左半分については左カメラ1bの画像を使い単純化を図るようにしてもよい。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例1の狭路走行支援装置では、実施例1の効果(1)〜(6)に加え、以下の効果を奏する。
(8) 第一の表示画像作成部110は、第一の表示画像10を、右の前側端と走行路の右側に存在する障害物とを表示する右画像10aと、左の前側端と走行路の左側に存在する障害物とを表示する左画像10bとに分割表示するため、撮影されていない運転行動への影響が少ない画像を非表示にすることができ、運転者に着目させたい画像のみに集中させることができる。
【0058】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、第一の表示画面と第二の表示画面とを1つのモニタに表示する例を示したが、車両上下方向または車両前後方向に並んだ2つのモニタの上側または前方側のモニタに第一の表示画面を表示し、下側または後方側のモニタに第二の表示画面を表示してもよい。
実施例2と実施例3の構成を組み合わせた構成、すなわち、ハンドルの操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡を第二の表示画像に表示する構成と、第一の表示画像を左右に分割した構成とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
5 操舵角センサ(操舵角検出手段)
10 第一の表示画像
12,11 左右前側端
14,13 左右自車幅相当延長線
15 第二の表示画像
17,16 左右側面
19,18 左右後輪
20,21 左右最小旋回軌跡
110 第一の表示画像作成部(第一の表示画像作成手段)
120 第二の表示画像作成部(第二の表示画像作成手段)
140 画像合成部(車幅相当延長線作成)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の走行路と、自車両の左右前側端と、前記走行路の左右両側に存在する障害物とが表示された第一の表示画像を作成する第一の表示画像作成手段と、
前記第一の表示画像に表示される自車両の左右前側端に連続させた自車両の左右側面と、自車両の側方に存在する障害物とが表示された第二の表示画像を作成する第二の表示画像作成手段と、
前記第一の表示画像の下方または車両進行方向後方に前記第二の表示画像を並べて配置すると共に、前記第二の表示画像に表示される前記自車両の左右側面の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる車幅相当延長線を前記第一の表示画像と前記第二の表示画像とに連続して表示する車幅相当延長線作成手段と、
を備えたことを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の狭路走行支援装置において、
前記車幅相当延長線作成手段は、前記車幅相当延長線の長さを、少なくとも最小旋回時における前記左右前側端の描く半径を画像表示したときの長さ以上とすることを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段および前記第二の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像に表示される前記走行路の左右両側に存在する障害物と、前記第二の表示画像に表示される前記自車両の側方に存在する障害物とを連続して表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に自車両の左右の後輪接地位置を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の狭路走行支援装置において、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に最小旋回時における前記左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に、前記操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像を車両前方の斜め俯瞰表示とし、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像を、路面を基準とする俯瞰表示とすることを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像を、右の前側端と走行路の右側に存在する障害物とを表示する右画像と、左の前側端と走行路の左側に存在する障害物とを表示する左画像とに分割表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項1】
自車両前方の走行路と、自車両の左右前側端と、前記走行路の左右両側に存在する障害物とが表示された第一の表示画像を作成する第一の表示画像作成手段と、
前記第一の表示画像に表示される自車両の左右前側端に連続させた自車両の左右側面と、自車両の側方に存在する障害物とが表示された第二の表示画像を作成する第二の表示画像作成手段と、
前記第一の表示画像の下方または車両進行方向後方に前記第二の表示画像を並べて配置すると共に、前記第二の表示画像に表示される前記自車両の左右側面の車幅方向端部から自車両の進行方向前方に延びる車幅相当延長線を前記第一の表示画像と前記第二の表示画像とに連続して表示する車幅相当延長線作成手段と、
を備えたことを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の狭路走行支援装置において、
前記車幅相当延長線作成手段は、前記車幅相当延長線の長さを、少なくとも最小旋回時における前記左右前側端の描く半径を画像表示したときの長さ以上とすることを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段および前記第二の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像に表示される前記走行路の左右両側に存在する障害物と、前記第二の表示画像に表示される前記自車両の側方に存在する障害物とを連続して表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に自車両の左右の後輪接地位置を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の狭路走行支援装置において、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に最小旋回時における前記左右の後輪接地位置の描く軌跡を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像に、前記操舵角に基づいて旋回内側の後輪の描く軌跡を表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像を車両前方の斜め俯瞰表示とし、
前記第二の表示画像作成手段は、前記第二の表示画像を、路面を基準とする俯瞰表示とすることを特徴とする狭路走行支援装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の狭路走行支援装置において、
前記第一の表示画像作成手段は、前記第一の表示画像を、右の前側端と走行路の右側に存在する障害物とを表示する右画像と、左の前側端と走行路の左側に存在する障害物とを表示する左画像とに分割表示することを特徴とする狭路走行支援装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【公開番号】特開2011−230563(P2011−230563A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100486(P2010−100486)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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