説明

猟銃の銃床用バランサー、および猟銃の銃床用バランサーの取付方法

【課題】猟銃の銃床用バランサー、および猟銃の銃床用バランサーの取付方法に関し、例えば猟銃、または標的射撃競技用銃は、射手が狙った獲物や標的に対する瞬時の弾による命中度を向上させるのに、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整できる構成を提供する。
【解決手段】一端に鍔部1aを、他端にはネジ部1bが設けられて銃床2の被着孔3内に挿入されるスピンドル1と、弾性材により略筒形に形成されてスピンドル1が内挿され、左右の両端に挿設される拡張部材4,4と、略筒形をなして拡張部材4,4間に挟持可能にスピンドル1が内挿されて異なる質量の複数種のウェイト部材W;W,W・・・と、スピンドル1のネジ部に螺合可能に設けられるナット5と、を備え、ネジ部にナット5を螺進して拡張部材4,4を半径方向に拡張させて被着孔3の内周に圧接、固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は猟銃の銃床用バランサー、および猟銃の銃床用バランサーの取付方法に関し、例えば猟銃、または標的射撃競技用銃は、射手が狙った獲物や標的に対する瞬時の弾による命中度を向上させるのに、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整するものである。
【背景技術】
【0002】
狩猟用の猟銃、または標的射撃競技用銃は、獲物や標的に対する瞬時の弾による命中度を向上させるために、銃の重量、および重量バランスが適正であることが要求される。そして、銃は、重量の大部分が、銃身、機関部、銃床によって構成され、これらの重量配分によって銃全体の重量バランスが決定される。このうち、銃は、一般的には、銃身が占める重量の割合が大きく、銃前方(銃口側)が重くなり、前重のバランスとなりがちであった。
【0003】
従来、元折形単銃身散弾銃として、銃床と、前記銃床に固定されるレシーバと、前記レシーバに作動的接続する引鉄装置と、長銃身とこの銃身の一端が固定される空洞を有し上記レシーバ部分内の動作位置に回動的に出入りする遊底をもつ銃身組立体と、銃身の一部に沿って固定される前部銃床と、上記銃身に沿って伸び且つそれに沿った複数の間隔をもった位置で固定される長いリブと、上記リブに沿った予定位置に装着する厚板状乃至はブロック状の内部錘、または側部錘と、上記内部錘、または側部錘を前記リブに前後方向にスライドさせて上記予定位置に径方向から固定するための、ねじよりなる固着手段と、を備えたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−103498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載された上記従来の散弾銃では、銃全体に対して本来的に大きな重量を占める銃身に沿ったリブの予定位置に、厚板状の内部錘、またはアングル状の側部錘をねじよりなる固着手段により固着するものなので、一層銃身部分が重くなり、銃全体としては、銃前方(銃口側)が重くなり、前重のバランスとなりがちであった。このため、動きのある標的、例えば狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われず、失中してしまうという欠点があった。適正な優れたバランスが得られている銃であれば、狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率も向上する。従って、適正なバランスを得るために、銃の適所に、適正なバランスウェイトを付加する方法が求められていた。
【0006】
また、特許文献1に記載された上記従来の散弾銃では、銃身に沿ったリブに、例えばアングル状の側部錘をねじよりなる固着手段により径方向から固着するものなので、側部錘が外部に露出して外観的に不体裁であり、銃身の側部錘の取付個所の厚みが厚くなり、銃の取扱操作に不便を感じていた。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決するとともに、異なる質量を有する複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択し、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整し、狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率を向上させ、外観的にもスマートであり、銃の取扱い操作も簡便に行える猟銃の銃床用バランサー、および猟銃の銃床用バランサーの取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされ請求項1に記載の発明は、一端に鍔部を、他端にはネジ部を有して銃床に設けられた被着孔内に抜差可能に挿入されるスピンドルと、
ゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成されて前記スピンドルが内挿されることにより、該スピンドルの少なくとも左右の両端に挿設される拡張部材と、
略筒形をなして前記拡張部材間に挟持可能に前記スピンドルが内挿されて異なる質量を有する複数種のウェイト部材と、
前記スピンドルの前記ネジ部に螺合可能に設けられ、後端には割溝を有するナットと、を備え、
銃床に長手方向に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材、前記ナットが挿入され、前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定される
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において前記被着孔が、銃床内に長手方向に設けられ、後端には前記ナットが臨まれる開口を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3記載の発明は、請求項1または2において、前記ウェイト部材が、一定長さの第1ウェイト部材と、該第1ウェイト部材の略1/2の長さの第2ウェイト部材および第3ウェイト部材と、前記第1ウェイト部材に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材、および第5ウェイト部材、第6ウェイト部材とにより構成され、
前記第1ウェイト部材、および前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材が、鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる何れかの金属により形成され、
前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材は、組合わせて使い分けがされる
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4記載の発明は、一端に鍔部を、他端にはネジ部を有したスピンドルをゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材に内挿することにより、該拡張部材を前記スピンドルの少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材に前記スピンドルを前記拡張部材にて挟持可能に内挿し、
銃床に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材を組み込んで挿入し、
前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、一端に鍔部を、他端にはネジ部を有して銃床に設けられた被着孔内に抜差可能に挿入されるスピンドルと、ゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成されて前記スピンドルが内挿されることにより、該スピンドルの少なくとも左右の両端に挿設される拡張部材と、略筒形をなして前記拡張部材間に挟持可能に前記スピンドルが内挿されて異なる質量を有する複数種のウェイト部材と、前記スピンドルの前記ネジ部に螺合可能に設けられ、後端には割溝を有するナットと、を備え、銃床に長手方向に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材、前記ナットが挿入され、前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定されるので、異なる質量を有する複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択し、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整し、狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率を向上させ、外観的にもスマートであり、銃の取扱い操作も簡便に行える。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば請求項1において前記被着孔が、銃床内に長手方向に設けられ、後端には前記ナットが臨まれる開口を設けたので、異なる質量を有する複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択し、一端に鍔部を有し、他端にはネジ部が設けられたスピンドルをゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材に内挿することにより、該拡張部材を前記スピンドルの少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材に前記スピンドルを前記拡張部材にて挟持可能に内挿し、その後、銃床に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材を組み込んで挿入し、ナットの後面に設けた割溝内に外部からドライバー、またはコインを挿入して回動操作することにより、前記ネジ部に前記ナットを螺進すると、前記拡張部材は半径方向に拡張されて前記被着孔の内周に圧接、固定され、ウェイト部材を前記被着孔内に固定する。
【0014】
また、本発明の請求項3記載の発明によれば、請求項1または2において、前記ウェイト部材が、一定長さの第1ウェイト部材と、該第1ウェイト部材の略1/2の長さの第2ウェイト部材および第3ウェイト部材と、前記第1ウェイト部材に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材、および第5ウェイト部材、第6ウェイト部材とにより構成され、前記第1ウェイト部材、および前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材が、鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる何れかの金属により形成され、前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材は、組合わせて使い分けがされるので、鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる金属により形成されて異なる質量を有する一定長さの第1ウェイト部材と、該第1ウェイト部材の略1/2の長さの第2ウェイト部材および第3ウェイト部材と、前記第1ウェイト部材に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材、および第5ウェイト部材、第6ウェイト部材との複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択する。そして、一端に鍔部を有し、他端にはネジ部が設けられたスピンドルをゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材に内挿することにより、該拡張部材を前記スピンドルの少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材に前記スピンドルを前記拡張部材にて挟持可能に内挿し、その後、銃床に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材を組み込んで挿入し、ナットの後面に設けた割溝内に外部からドライバー、またはコインを挿入してナットを回動操作することにより、前記ネジ部に前記ナットを螺進すると、前記拡張部材は半径方向に拡張されて前記被着孔の内周に圧接、固定され、ウェイト部材を前記被着孔内に固定する。
【0015】
また、本発明の請求項4記載の発明によれば、一端に鍔部を、他端にはネジ部を有したスピンドルをゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材に内挿することにより、該拡張部材を前記スピンドルの少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材に前記スピンドルを前記拡張部材にて挟持可能に内挿し、銃床に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材を組み込んで挿入し、前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定するので、異なる質量を有する複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択し、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整し、狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率を向上させ、外観的にもスマートであり、銃の取扱い操作も簡便に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の猟銃の銃床用バランサーの実施形態を示し、取付状態を示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は同じく本実施形態の銃床用バランサーの分解斜視図である。
【図3】図3は同じく第1ウェイト部材を示す拡大断面図である。
【図4】図4は同じく第2ウェイト部材、および第3ウェイト部材を示す拡大断面図である。
【図5】図5は同じく第4ウェイト部材、第5ウェイト部材、および第6ウェイト部材を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に従って本発明を実施するための最良の形態につき、詳細に説明する。
【0018】
図1乃至図5は本発明の実施形態1を示し、一端に鍔部1aを、他端にはネジ部1bを有して銃床2に設けられた被着孔3内に抜差可能に挿入されるスピンドル1と、ゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成されて前記スピンドル1が内挿されることにより、該スピンドル1の少なくとも左右の両端に挿設される拡張部材4,4と、略筒形をなして前記拡張部材4,4間に挟持可能に前記スピンドル1が内挿されて異なる質量を有する複数種のウェイト部材W;W,W・・・と、前記スピンドル1の前記ネジ部1bに螺合可能に設けられ、後端には割溝5aを有するナット5と、を備え、銃床2に長手方向Iに設けられた被着孔3内に前記スピンドル1、および前記拡張部材4,4、前記ウェイト部材W;W,W・・・、前記ナット5が挿入され、前記ネジ部1bに前記ナット5を螺進することにより、前記拡張部材4,4を半径方向Rに拡張させて前記被着孔3の内周に圧接、固定される。
【0019】
前記スピンドル1の大きさは、本実施形態では、図2に示すように、例えば外径φ1が5mmであり、長さL1が122mmに形成される。
【0020】
前記被着孔3が、銃床2内に長手方向Iに下側斜面部2aに沿って設けられ、後端には前記ナット5が臨まれる開口3aを設けている。
【0021】
前記拡張部材4の大きさは、例えばその外径φ3が12mmであり、内径φ2が5.2mmである。
【0022】
前記ウェイト部材Wが、図3に示すように一定長さL2の第1ウェイト部材W1と、図4に示すように該第1ウェイト部材W1の略1/2の長さの第2ウェイト部材W2および第3ウェイト部材W3と、図5に示すように前記第1ウェイト部材W1に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材W4、および第5ウェイト部材W5、第6ウェイト部材W6とにより構成され、前記第1ウェイト部材W1、および前記第2ウェイト部材W2、前記第3ウェイト部材W3、前記第4ウェイト部材W4、前記第5ウェイト部材W5、前記第6ウェイト部材W6が、例えば鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる何れかの金属により形成され、前記第2ウェイト部材W2、前記第3ウェイト部材W3、前記第4ウェイト部材W4、前記第5ウェイト部材W5、前記第6ウェイト部材W6は、射手の好みに応じて適正に組合わせて使い分けがされる。
【0023】
そして、前記第1ウェイト部材W1の大きさは、具体的に例えば内径φ4が5.2mm、外径φ5が12mm、長さL2が85mmである。そして、この第1ウェイト部材W1が例えば鋼鉄で形成されている場合の重量は61gであり、アルミニウムで形成されている場合の重量は21gであり、鉛で形成されている場合の重量は89gであり、タングステンで形成されている場合の重量は151gである。
【0024】
また、前記第1ウェイト部材W1が、鋼鉄で形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は103gであり、第1ウェイト部材W1がアルミニウムで形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は63gであり、第1ウェイト部材W1が鉛で形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は131gであり、第1ウェイト部材W1がタングステンで形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は193gである。
【0025】
さらに、前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3を異なる材質で形成した場合、例えば前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3の何れか一方を鉄、何れか他方をアルミニウムで形成したもの相互を組み合わせたウェイト部材Wは、83gである。また、前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3の何れか一方を鉛、何れか他方をタングステンで形成したもの相互を組み合わせたウェイト部材Wは、162gである。
【0026】
6はワッシャー、7はスプリング・ワッシャーであり、これらのワッシャー6、およびスプリング・ワッシャー7は、ナット5をスピンドル1のネジ部1bに螺合した際に介装されて緩みを防止するためのものである。8はパットプレートであり、銃床2の後尾に着脱自在に取付けられる蓋部材である。なお、各図において、図中の同一部分は同一符号で示している。
【0027】
本発明の猟銃の銃床用バランサーの実施形態は以上の構成からなり、銃床2内にバランサーを取付けるのには、先ず、一端に鍔部1aを有し、他端にはネジ部1bが設けられたスピンドル1をゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材4,4に内挿することにより、該拡張部材4,4を前記スピンドル1の少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材W;W,W・・・に前記スピンドル1を内挿して前記拡張部材4,4にて挟持可能に予め組立て、ワッシャー6、スプリングワッシャー7も挿設し、ナット5を軽く締め込んでおく。
【0028】
次いで、銃床2に長手方向Iに設けられた被着孔3内に前述のように予め組立てられた前記スピンドル1、および前記拡張部材4、前記ウェイト部材W;W,W・・・を挿入する。その後、ナット5の後面に設けられた割溝5a内にドライバーの先端やコイン(図には示さず)を嵌入してから、回動操作することにより、スピンドル1の前記ネジ部1bに前記ナット5を螺進し、前記拡張部材4,4を半径方向Rに拡張させて前記被着孔3の内周に圧接、固定し、ウェイト部材W;W,W・・・を被着孔3内に取付ける。
【0029】
この際、前記ウェイト部材W;W,W・・・が、一定長さの第1ウェイト部材W1と、該第1ウェイト部材W1の略1/2の長さの第2ウェイト部材W2および第3ウェイト部材W3と、前記第1ウェイト部材W1に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材W4、および第5ウェイト部材W5、第6ウェイト部材W6とにより構成された多種類が用意され、これらの前記第1ウェイト部材W1、および前記第2ウェイト部材W2、前記第3ウェイト部材W3、前記第4ウェイト部材W4、前記第5ウェイト部材W5、前記第6ウェイト部材W6は、例えば鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる何れかの金属により形成されているので、射手は、第1ウェイト部材1単独で用いたり、または、前記第2ウェイト部材W2、前記第3ウェイト部材W3、前記第4ウェイト部材W4、前記第5ウェイト部材W5、前記第6ウェイト部材W6のうちから、好みにあった適切なものを選択して組合わせることにより、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて自己の好みに合わせて適正に調整することができる。
【0030】
例えば、内径φ4が5.2mm、外径φ5が12mm、長さL2が85mmをなす第1ウェイト部材W1が鋼鉄で形成されている場合の重量は61gであり、また、アルミニウムで形成されている場合の重量は21gであり、また鉛で形成されている場合の重量は89gであり、タングステンで形成されている場合の重量は151gであり、これらのうちから射手は自己の好みに合わせて適正なものを選択する。
【0031】
また、第1ウェイト部材W1が鋼鉄で形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は、例えば103gであり、第1ウェイト部材W1がアルミニウムで形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は63gであり、第1ウェイト部材W1が鉛で形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は131gであり、第1ウェイト部材W1がタングステンで形成されている場合の銃床用バランサー全体の全体重量は193gである。
【0032】
さらに、前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3を異なる材質で形成した場合、例えば前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3の何れか一方を鉄、何れか他方をアルミニウムで形成したもの相互を組み合わせたウェイト部材Wは、83gである。また、前記第2ウェイト部材W2、および前記第3ウェイト部材W3の何れか一方を例えば鉛、何れか他方をタングステンで形成したもの相互を組み合わせたウェイト部材Wは、162gであるので、射手は自己の好みに合わせて適正なものを選択する。
【0033】
こうして、特許文献1に記載された上記従来の散弾銃のように、銃全体に対して本来的に大きな重量を占める銃身に沿ったリブの予定位置に、厚板状の内部錘、またはアングル状の側部錘をねじよりなる固着手段により固着したものは、銃身に内部錘、または側部錘を固着するものなので、一層銃身部分が重くなり、銃全体としては、銃前方(銃口側)が重くなり、前重のバランスとなりがちになっていたのとは異なり、本実施形態の猟銃の銃床用バランサーは、銃身に対して下方に位置する銃床に設けた被着孔内に取付けられるため、銃は前重にならずにバランス良く、安定化し、狩猟する飛鳥やクレーのように動きのある標的に対して自己の好みに適正に調整され、据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の猟銃の銃床用バランサーの実施形態では、前記ウェイト部材W;W,W・・・が、銃床2に設けられた被着孔3内に前記スピンドル1、および前記拡張部材4、前記ウェイト部材W;W,W・・・、ワッシャー6,スプリングワッシャー7,ナット5を組み込んだものを挿入し、その後、ナット5をスピンドル1の後端のネジ部1bの回りで回動操作することにより、前記ネジ部1bに前記ナット5を螺進し、前記拡張部材4,4を半径方向Rに拡張させて前記被着孔3の内周に圧接、固定し、ウェイト部材W;W,W・・・を被着孔3内に取付けるのに対し、例えば特許文献1に記載された従来の散弾銃では、銃身に沿ったリブに、例えばアングル状の側部錘をねじよりなる固着手段により径方向から固着するものであり、側部錘が外部に露出して外観的に不体裁であり、銃身の側部錘の取付個所の厚みが厚くなり、銃の把持に違和感を覚えたり、取扱操作が不自然を感じていたのに対して本実施形態の猟銃の銃床用バランサーでは、外観的にもスマートであり、銃の把持にはヒット感を覚え、取扱い操作も簡便に行える。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、異なる質量を有する複数種のウェイト部材のうちから、所望のウェイト部材を選択し、銃の重量、重量バランスを簡単な取扱いにて適正に調整し、狩猟する飛鳥やクレーに対しての据銃、照準、射撃の一連の動作がスムーズに行われ、命中率を向上させ、外観的にもスマートであり、銃の取扱い操作も簡便に行えるという用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0036】
1 スピンドル
1a 鍔部
1b ネジ部
2 銃床
3 被着孔
4 拡張部材
5 ナット
5a 割溝
6 ワッシャー
7 スプリングワッシャー
8 パットプレート
W ウェイト部材
W1 第1ウェイト部材
W2 第2ウェイト部材
W3 第3ウェイト部材
W4 第4ウェイト部材
W5 第5ウェイト部材
W6 第6ウェイト部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に鍔部を、他端にはネジ部を有して銃床に設けられた被着孔内に抜差可能に挿入されるスピンドルと、
ゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成されて前記スピンドルが内挿されることにより、該スピンドルの少なくとも左右の両端に挿設される拡張部材と、
略筒形をなして前記拡張部材間に挟持可能に前記スピンドルが内挿されて異なる質量を有する複数種のウェイト部材と、
前記スピンドルの前記ネジ部に螺合可能に設けられ、後端には割溝を有するナットと、を備え、
銃床に長手方向に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材、前記ナットが挿入され、前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定される
ことを特徴とする猟銃の銃床用バランサー。
【請求項2】
前記被着孔が、銃床内に長手方向に設けられ、後端には前記ナットが臨まれる開口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の猟銃の銃床用バランサー。
【請求項3】
前記ウェイト部材が、一定長さの第1ウェイト部材と、該第1ウェイト部材の略1/2の長さの第2ウェイト部材および第3ウェイト部材と、前記第1ウェイト部材に対して略1/3の長さの第4ウェイト部材、および第5ウェイト部材、第6ウェイト部材とにより構成され、
前記第1ウェイト部材、および前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材が、鋼鉄、アルミニウム、鉛、タングステン等の比重が異なる何れかの金属により形成され、
前記第2ウェイト部材、前記第3ウェイト部材、前記第4ウェイト部材、前記第5ウェイト部材、前記第6ウェイト部材は、組合わせて使い分けがされる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の猟銃の銃床用バランサー。
【請求項4】
一端に鍔部を、他端にはネジ部を有したスピンドルをゴムまたは合成ゴムの弾性材により略筒形に形成した拡張部材に内挿することにより、該拡張部材を前記スピンドルの少なくとも両端に挿設するとともに、略筒形のウェイト部材に前記スピンドルを前記拡張部材にて挟持可能に内挿し、
銃床に設けられた被着孔内に前記スピンドル、および前記拡張部材、前記ウェイト部材を組み込んで挿入し、
前記ネジ部に前記ナットを螺進することにより、前記拡張部材を半径方向に拡張させて前記被着孔の内周に圧接、固定する
ことを特徴とする猟銃の銃床用バランサーの取付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−73009(P2012−73009A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220301(P2010−220301)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(303066699)株式会社ミロク製作所 (7)