説明

玉揚装置およびそれを備えた繊維機械

【課題】巻取管ストッカーに貯留されている巻取管をチャッカーで把持する際、その把持位置を一定にすることができる玉揚装置およびそれを備えた繊維機械を提供する。
【解決手段】チャッカーによる巻取管9の把持の際、把持される巻取管9以外の巻取管9を退避させるセパレータ69に支持されていて、かつ、セパレータ69の巻取管退避動作に従動して巻取管9の一方側端部に当接することにより、把持される巻取管9の他方側端部を巻取管ストッカー65の位置決め部材65aに押し付ける押付部材60cを備えた、巻取管位置規制手段60を含む玉揚装置6とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダ等に備えられる玉揚装置に関し、詳しくは、巻取管ストッカーに貯留されている巻取管を所定の位置に規制するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダ等に備えられる玉揚装置6は、図2に示す如く、巻取装置2の並設方向に沿って走行自在に設けられ、クレードルアーム21を開くことで満巻となった巻取パッケージPを後方に転がして、搬送装置12上に載置させるようになっている。また、その後、箱状の巻取管ストッカー65に貯留されている巻取管9をチャッカー66によって掴み下ろし、クレードルアーム21に支持させると共に、その巻取管9に給糸ボビンBの糸Yを掛けて巻取を再開させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、自動ワインダ等に用いられる巻取管は、その製造ばらつきにより、軸方向の長さが5mm程度ばらついている場合がある。また、巻き取る糸種毎に巻取管の種類を変更している場合、変更前と変更後とで、5mm程度軸方向の長さが異なる巻取管が用いられる場合がある。
【0004】
そこで、巻取管の軸方向端部に対向する巻取管ストッカーの両側壁間の距離は、軸方向の長さが異なる巻取管全てに対応できる程度に、大きくとられているのが一般的であった。
【特許文献1】特開平10−297826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、巻取管ストッカーの両側壁間の距離が巻取管と比較して大きいと、軸方向の長さが短い巻取管は巻取管ストッカーの両側壁間で自由に位置をとり得ることになり、一定の回動運動をするチャッカーによる巻取管の把持位置が軸方向にばらつくことになる。チャッカーによる把持位置がずれていると、巻取管をクレードルアームに装着する際、クレードルアームに対する正規の装着位置に巻取管がこないことになり、装着ミスを生じてしまう場合があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻取管ストッカーに貯留されている巻取管をチャッカーで把持する際、その把持位置を一定にすることができる玉揚装置およびそれを備えた繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、(1)多数並設された繊維装置間を走行自在に設けられていて、当該繊維装置に設けられた巻取管ストッカーから巻取管を把持し、当該繊維装置における巻取部の巻取管支持部材に装着するチャッカーと、当該チャッカーによる巻取管の把持の際、前記巻取管ストッカーにおいて、把持される巻取管以外の巻取管を退避させるセパレータとを備えた玉揚装置であって、前記セパレータに支持されていて、かつ、前記セパレータによる巻取管退避動作に従動して把持される巻取管の一方側端部に当接することにより、当該巻取管の他方側端部を前記巻取管ストッカーの位置決め部材に押し付ける押付部材を備えた、巻取管位置規制手段を含んでいることを特徴とする玉揚装置を提供するものである。
【0008】
また本発明は、上記構成において、(2)前記セパレータは、支軸周りに回動することで前記巻取管退避動作をするようになっていて、前記巻取管位置規制手段は、前記支軸と略平行に延びると共に前記セパレータに回動可能に支持された第1の軸体と、当該第1の軸体の一端から半径方向に突出すると共にその突端に前記押付部材が取り付けられた第2の軸体とからなっており、さらに、前記押付部材は、前記把持される巻取管の一方側端部に当接した際、自身の重力の分力によって前記把持される巻取管の他方側端部を前記位置決め部材に押し付け得るように、その当接面が傾斜していることを特徴とする玉揚装置を提供するものである。
【0009】
また本発明は、上記構成のいずれかにおいて、(3)前記セパレータは、リンク機構を介して前記チャッカーに連動するようになっていることを特徴とする玉揚装置を提供するものである。
【0010】
また本発明は、(4)上記玉揚装置のいずれかを備えたことを特徴とする繊維機械を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本発明の玉揚装置では、セパレータがチャッカーによる把持対象外の巻取管を上方へ退避させる際、把持対象の巻取管の一方側端部に、巻取管位置規制手段の押付部材が当接するようになっている。その結果、把持対象の巻取管は、把持される前、押付部材によって巻取管ストッカーの位置決め部材にその他方側端部が押し付けられる。したがって、本発明の玉揚装置およびそれを備えた繊維機械によれば、把持される際の巻取管の位置が常に一定となるため、チャッカーが巻取管を常にクレードルアームに対する正規の装着位置へ運ぶことができ、装着ミスを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る玉揚装置を適用した自動ワインダについて、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る玉揚装置を適用した繊維機械の一例としての自動ワインダの全体構成を示す正面図、図2は図1の自動ワインダにおける巻取装置および玉揚装置を示す側面図、図3は図2の玉揚装置を示す正面図、図4は図2の玉揚装置における巻取管ストッカー、セパレータおよび巻取管位置規制手段を示す斜視図、図5は図2の玉揚装置におけるチャッカーおよびセパレータを示す概略側面図、図6は図4の巻取管位置規制手段の作用を示すための概略図、である。
【0013】
まず、本実施形態に係る自動ワインダ1の全体構成について説明する。
自動ワインダ1は主に、図1または図2に示す如く、多数並設された巻取装置(繊維装置)2と、各巻取装置2に対して給糸ボビンBを供給する給糸ボビン供給装置3と、各巻取装置2について玉揚作業を行う玉揚装置6と、玉揚装置6により玉揚げされた巻取パッケージPを搬送する搬送装置12と、各巻取装置2および玉揚装置6等を制御する機台制御装置8と、から構成されている。
【0014】
巻取装置2は、図2に示す如く、複数個または1個の給糸ボビンBから解舒された糸Yを、巻取管9に巻き取って1個の巻取パッケージPとするものである。この巻取装置2の上部には、巻取管9を回転自在に支持するクレードルアーム(巻取管支持部材)21と、クレードルアーム21で支持された巻取管9を回転させるドラム22とが設けられている。
【0015】
クレードルアーム21は、図2に示す如く、巻取パッケージP(巻取り開始時は巻取管9)がドラム22に接触する巻取位置(図2の実線で示す位置)と、玉揚装置6によって巻取パッケージPが取り外される取外位置(図2の二点鎖線で示す位置)とをとり得るようになっている。また、クレードルアーム21は、図3に示す如く、巻取管9を挟持するための巻取管ホルダ23,23を有していると共に、その一方側がドラム22の軸方向に揺動自在になっており、巻取管9を着脱自在な構成となっている。
【0016】
ドラム22は、図2に示す如く、ユニット制御器24によって制御される駆動モータ25に連結されており、高速または低速で回転せしめられる。
【0017】
ユニット制御器24は、図2に示す如く、機台制御装置8と通信可能に接続されており、機台制御装置8から満巻回転数の値を受信する。
また、ユニット制御器24は、切断された糸Yを巻取パッケージPに巻き取るための低速回転、巻取管9にバンチ巻きするための低速回転、および巻取管9に本巻きするための高速回転の順にドラム22を回転させて、ドラム22に接触される巻取管9による糸Yの巻取りを制御している。
【0018】
また、巻取装置2の糸道に沿った下流側には、糸Yを継ぐ糸継装置26と、糸切断部27aを有していて糸欠陥を検出するヤーンクリアラ27と、給糸ボビンB側の切断された糸Yを吸引捕捉するヤーントラップ28(糸端捕捉手段)と、糸Yをヤーントラップ28から引き取って糸継装置26まで導入するサクションアーム(不図示)とを備えている。
【0019】
玉揚装置6は、図2および図3に示す如く、フレーム61に配置されたレール7に沿って巻取装置2の上方を走行して、巻取装置2の巻取パッケージPが満巻になると所定位置で停止して玉揚作業を行うものである。玉揚装置6は、ヤーントラップ28まで延びることのできる糸把持装置62と、クレードルアーム21を移動および開閉するオープナー63と、糸Yをクレードルアーム21で支持された巻取管9に寄せてガイドする糸寄レバー64とを備えている。
【0020】
糸把持装置62は、エアシリンダを用いて糸切断把持部62aを伸縮すると共に、この伸縮に連動して糸切断把持部62aで糸Yを切断して把持するようになっている。そして、糸把持装置62は、ドラム22の径方向に旋回自在として玉揚装置6の下部に設けられており、糸Yをドラム22の上側まで引き上げてクレードルアーム21の間に介在するように旋回する。
【0021】
玉揚装置6のオープナー63は、図2および図3に示す如く、玉揚装置6の側部からドラム22の軸方向に突出する回動軸63aに固定されたオープンレバー63bを有し、オープンレバー63bの先端には、クレードルアーム21に設けられたクレードルレバー21aに当接するオープンハンド63cが設けられている。
【0022】
オープンレバー63bは、ドラム22の軸方向に揺動自在に支持されてクレードルアーム21に向かって延びており、旋回軌跡がクレードルアーム21と一体に旋回するクレードルレバー21aの旋回軌跡と交差するオープンハンド63cを備えている。
そして、オープナー63は、オープンハンド63cをクレードルレバー21aに当接させた状態でドラム22から離れる方向に旋回することにより、巻取パッケージPを支持するクレードルアーム21を巻取位置から取外位置まで移動させるようになっている。
【0023】
オープナー63はさらに、逆にドラム22に向かう方向に旋回することにより、クレードルアーム21を取外位置から巻取位置まで旋回させて、巻取管9をドラム22に当接させるようになっている。また、オープナー63は、ドラム22の軸方向に揺動することにより、クレードルレバー21aを介してクレードルアーム21を開閉し、満巻パッケージPの玉揚げおよび巻取管9の装着を可能とする。
【0024】
玉揚装置6の糸寄レバー64は、先端側に糸引掛部を有していて、図3に示す如く、ドラム22の糸入り側に、巻取管9側に回動自在として配置されている。糸寄レバー64は、糸把持装置62で引き上げられた糸Yを、巻取管9側へ回動することにより引掛け、巻取管9の大径端と巻取管ホルダ23との間で挟むべく、糸寄せするようになっている。
【0025】
また、玉揚装置6は、図2または図3に示す如く、フレーム61に固設された巻取管ストッカー65から巻取管9を先端のチャック爪で把持してドラム22まで運ぶチャッカー66と、チャッカー66が巻取管9を把持する際、把持対象以外の巻取管9を上方に退避させて、チャッカー66による巻取管9の把持およびクレードルアーム21への装着を可能にするセパレータ69と、を備えている。
【0026】
セパレータ69は、図4に示す如く、ベース部69aから突出する爪部69b,69bを有してなり、後端69dに接続されたばね69eによる付勢力を受けつつ、支軸69cの周りに回動し得るように取り付けられている。なお、支軸69cおよびばね69eは、玉揚装置6内に固定されている。
チャッカー66による把持動作前において、セパレータ69の後端69dは、図5Aに示す如く、カム67により揺動軸68cを中心として下方に揺動せしめられた第1リンク腕68の後端68bにより、下方に押し付けられる。ここで、第1リンク腕68は、その突起部68gに一端が接続されかつ玉揚装置6内に他端が固定されたばね68fにより、揺動軸68cを中心として後端68bが上方に揺動する方向に付勢されている。なお、カム67は、不図示の駆動手段によって回転せしめられるようになっている。また、第1リンク腕68とカム67とが当接する箇所には、カム従動子68eが設けられている。
また、第1リンク腕68の前端68aは、図5Aに示す如く、第2リンク腕68dを介してチャッカー66に連結されており、チャッカー66を起立状態に引き上げている。
【0027】
そして、チャッカー66による把持動作の際、図5Bに示す如く、カム67が回転し、第1リンク腕68の後端68bが、ばね68fによって上方に揺動する。これによって、セパレータ69の後端69dは、ばね69eによって引き上げられ、支軸69c周りに上方へ回動する。この回動により、セパレータ69は、把持対象の巻取管9とそれ以外の巻取管9との間に爪部69bの先端を挿入し、把持対象以外の巻取管9を把持対象の巻取管9と引き離すように上方へ退避させる。また、このとき、チャッカー66は、第1リンク腕68の前端68aが下方に揺動することで下方に回動し、把持対象の巻取管9を把持する。
つまり、セパレータ69は、チャッカー66と第1リンク腕68および第2リンク腕68d(リンク機構)を介して連結されており、チャッカー66の把持動作に連動して把持対象外の巻取管9を退避させるようになっている。したがって、セパレータ69は、独立の駆動源を要することなく、チャッカー66の動作に連動して回動するようになっている。
【0028】
セパレータ69はさらに、図4に示す如く、セパレータ69の支軸69cと略平行に延びると共にベース部69aに回動可能に支持された第1の軸体60aと、第1の軸体60aの一端から半径方向に突出すると共にその突端に押付部材60cが取り付けられた第2の軸体60bとからなる、巻取管位置規制手段60を有している。なお、第2の軸体60bは、中間部分がセパレータ69の一方の爪部69b上に載り得るように、略くの字状に屈曲しており、セパレータ69の上方への回動に伴って、巻取管位置規制手段60も同様に上方へ移動し得るようになっている。
【0029】
押付部材60cは、セパレータ69が把持対象外の巻取管9を退避させるべく巻取管9に接近した際、図6Aに示す如く、把持対象の巻取管9の一方側端部に当接するように配置されている。押付部材60cは、図6に示す如く、巻取管9との当接面が、下方側および巻取管9側を向くように傾斜して配置されており、押付部材60cの重力の分力Ghによって、把持対象の巻取管9の他方側端部を、巻取管ストッカー65の側壁(位置決め部材)65aに押し付けるようになっている(図6B参照)。
【0030】
次に、本発明の実施形態における自動ワインダ1において、満巻になった巻取パッケージPを玉揚げする一連の手順につき、図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0031】
巻取装置2のドラム22で高速回転されている巻取パッケージPが満巻になると、ヤーンクリアラ27の糸切断部27aを作動させて糸Yを切断すると共に、切断された給糸ボビンB側の糸Yの先端をヤーントラップ28により吸引捕捉する。この巻取装置2の作動と同時に、玉揚装置6が走行して満巻となった巻取装置2の巻取パッケージPの真上に停止する。
【0032】
玉揚装置6が満巻になった巻取パッケージPの真上に停止すると、ユニット制御器24は、駆動モータ25を駆動することでドラム22を低速回転させて、切断された巻取パッケージP側の糸Yを巻取パッケージPに巻き取らせる。所定時間が経過して、切断された糸Yが巻取パッケージPに巻き取られると、ユニット制御器24は、駆動モータ25の駆動を停止してドラム22の回転を止める。
【0033】
切断された糸Yを巻取パッケージPに巻き取った後、玉揚装置6は、オープナー63を旋回させることにより、満巻パッケージPを支持するクレードルアーム21を巻取位置から取外位置まで移動させる。さらに、オープナー63をドラム22の軸方向に揺動させることで、クレードルアーム21を開いて満巻パッケージPを取り外す(玉揚げする)。そして、パッケージガイド29を介して満巻パッケージPは搬送装置12に載置され、所定の場所に運ばれる。
【0034】
クレードルアーム21から満巻パッケージPを取り外した(玉揚げした)後、オープナー63は揺動を解除し、ドラム22に向けて旋回することでクレードルアーム21を巻取位置まで移動させる。そして、再びオープナー63を揺動させることでクレードルアーム21を開く。ここで、玉揚装置6の糸把持装置62をヤーントラップ28まで延ばし、ヤーントラップ28で吸引捕捉されている給糸ボビンBの糸Yの先端を切断すると共に把持し、糸把持装置62を上昇させることでドラム22の前方を通る上側まで糸Yを引き上げる。
【0035】
そして、ドラム22の上側まで糸Yを引き上げた糸把持装置62をクレードルアーム21に向けて旋回させることで、糸Yを各クレードルアーム21の間に介在させると共に、糸Yの有無を検知するためにヤーンクリアラ27内に糸Yを挿入する。
【0036】
そして、玉揚装置6の糸寄レバー64をドラム22に向けて回動させることで、ドラム22の糸入り側にある糸Yを先端で引掛けて、糸Yをバンチ巻き位置にガイドする。バンチ巻き位置に糸Yを寄せると、巻取管ストッカー65の取出口端にある巻取管9を把持すべく、チャッカー66をドラム22に向けて回動させる。
【0037】
このとき、チャッカー66に連動して、セパレータ69が支軸69cを中心として下方に回動し、チャッカー66が把持対象の巻取管9を把持する前に、把持対象外の巻取管9を上方に退避させる。なお、この退避動作は、チャッカー66が把持した巻取管9をクレードルアーム21に装着して元の位置に戻るまで、持続される。
【0038】
さらに、セパレータ69の巻取管退避動作に伴って、巻取管位置規制手段60の押付部材60cが、把持対象の巻取管9の一方側端部に当接せしめられ、把持対象の巻取管9が巻取管ストッカー65の側壁65aに押し付けられる。
なお、押付部材60cが巻取管9の一方側端部に当接した後も、セパレータ69は巻取管退避動作が完了するまで若干回動するが、巻取管位置規制手段60はセパレータ69に対して回動可能に取り付けられているため、巻取管9の当接部に過剰な力が付与されることはない。
【0039】
チャッカー66は、巻取管9を把持した後、さらにドラム22に向けて回動することで、把持した巻取管9をドラム22に接触させ、オープナー63で開かれたクレードルアーム21の巻取管ホルダ23の間に当該巻取管9を配置する。巻取管9をドラム22に接触させた状態で、オープナー63の揺動を解除してクレードルアーム21の巻取管ホルダ23により巻取管9の大径端と小径端とを回転自在に挟持する。これにより、糸Yが巻取管9の大径端と巻取管ホルダ23とで挟持されて、バンチ巻き可能な状態となる。巻取管9がクレードルアーム21の巻取管ホルダ23で把持されると、チャッカー66を玉揚装置6に向けて回動、退避させると共に、糸把持装置62による糸Yの把持を解除する。
【0040】
このように、満巻パッケージPの玉揚げから巻取管9の装着の一連の動作が終了すると、ユニット制御器24は、駆動モータ25を駆動させることでドラム22を低速回転させ、給糸ボビンBからの糸Yを巻取管9の大径端にバンチ巻きする。
【0041】
そして、糸Yの本巻きを自動スタートするために、ユニット制御器24は、駆動モータ25を制御してドラム22を低速回転から連続して高速回転させる。これにより、ドラム22が巻取管6の軸方向に糸Yを綾振りさせながら巻取管9を高速回転させて糸Yの本巻きを自動スタートさせる。この糸Yの本巻きは、ユニット制御器24が計数するドラム22の回転数が満巻回転数に達したときに、定長巻きが完了したとして終了する。そして、その満巻となった巻取装置2に対し、玉揚装置6が満巻パッケージPの玉揚を行うようになっている。
【0042】
上記のように構成された本発明の玉揚装置6では、セパレータ69がチャッカー66の把持対象外の巻取管9を上方へ退避させる際、把持対象の巻取管9の一方側端部に、巻取管位置規制手段60の押付部材60cが当接するようになっている。その結果、把持対象の巻取管9は把持される前、押付部材60cによって巻取管ストッカー65の側壁65aにその他方側端部が当接せしめられる。したがって、本発明の玉揚装置6によれば、把持される際の巻取管9の位置が常に一定となるため、チャッカー66が巻取管9を常にクレードル21に対する正規の装着位置へ運ぶことができ、装着ミスを防ぐことができる。
【0043】
また、巻取管位置規制手段60は、セパレータ69に従動するようになっているため、新たな駆動手段を必要とせず、シンプルに構成することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記実施形態においては、把持される巻取管9の端部を側壁65aに押し付けるようにしたが、別途位置決め部材を設け、その位置決め部材に押し付けるようにしてもよい。また、上記実施形態において、巻取管を押し付ける方向は右から左(図6参照)であったが、装着先との関係に応じて、左から右の方向に押し付けてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、巻取装置を多数並設した自動ワインダに適用される玉揚装置としたが、これに限定されるものではなく、例えば紡績装置を多数並設した紡績機械に適用される玉揚装置であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、巻取管位置規制手段60を回動可能に取り付けることにより、押付部材60c当接後のセパレータ69の回動不良を回避し、かつ当該当接部へ過剰な力が作用するのを回避していたが、巻取管位置規制手段60を回動可能とせずにセパレータ69に対して固定し、かつ押付部材60cを、セパレータ69の当接後の回動に応じて適度に撓む弾性部材とすることで、これらを回避してもよい。この場合、押付部材60cは重力ではなく、弾性力によって巻取管9を側壁65aに押し付けることになる。
【0047】
さらに、巻取管位置規制手段60は、エアシリンダ等のアクチュエータを第1の軸体60aに設置し、第2の軸体60bを押付方向に揺動自在に第1の軸体60aに接続する構成としてもよい。この場合、アクチュエータにより押付方向に押付部材60cを巻取管9に当接させ、確実に巻取管9を側壁65aに押し付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る玉揚装置を適用した自動ワインダの全体構成を示す正面図である。
【図2】図1の自動ワインダにおける巻取装置および玉揚装置を示す側面図である。
【図3】図2の玉揚装置を示す正面図である。
【図4】図2の玉揚装置における巻取管ストッカー、セパレータおよび巻取管位置規制手段を示す斜視図である。
【図5】図2の玉揚装置におけるチャッカーおよびセパレータを示す概略側面図である。
【図6】図4の巻取管位置規制手段の作用を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0049】
9 巻取管
60 巻取管位置規制手段
60a 第1の軸体
60b 第2の軸体
60c 押付部材
65 巻取管ストッカー
65a 側壁(位置決め手段)
69 セパレータ
69a ベース部
69b 爪部
69c 支軸
69d (セパレータの)後端
69e ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数並設された繊維装置間を走行自在に設けられていて、当該繊維装置に設けられた巻取管ストッカーから巻取管を把持し、当該繊維装置における巻取部の巻取管支持部材に装着するチャッカーと、当該チャッカーによる巻取管の把持の際、前記巻取管ストッカーにおいて、把持される巻取管以外の巻取管を退避させるセパレータとを備えた玉揚装置であって、
前記セパレータに支持されていて、かつ、前記セパレータによる巻取管退避動作に従動して把持される巻取管の一方側端部に当接することにより、当該巻取管の他方側端部を前記巻取管ストッカーの位置決め部材に押し付ける押付部材を備えた、巻取管位置規制手段を含んでいることを特徴とする玉揚装置。
【請求項2】
前記セパレータは、支軸周りに回動することで前記巻取管退避動作をするようになっていて、
前記巻取管位置規制手段は、前記支軸と略平行に延びると共に前記セパレータに回動可能に支持された第1の軸体と、当該第1の軸体の一端から半径方向に突出すると共にその突端に前記押付部材が取り付けられた第2の軸体とからなっており、さらに、
前記押付部材は、前記把持される巻取管の一方側端部に当接した際、自身の重力の分力によって前記把持される巻取管の他方側端部を前記位置決め部材に押し付け得るように、その当接面が傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の玉揚装置。
【請求項3】
前記セパレータは、リンク機構を介して前記チャッカーに連動するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の玉揚装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の玉揚装置を備えたことを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−162712(P2008−162712A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351045(P2006−351045)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】