説明

玩具体におけるカバー部材の動作構造および玩具体

【課題】 より簡単な構成により、見栄えのよい玩具体におけるカバー部材の動作構造および玩具体を提供する。
【解決手段】 本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、第1の部材および第2の部材を互いに接近、離間可能となるように連結している連結部と、連結部に対向する位置に設けられるカバー部材と、を備えてなり、カバー部材は、第1の部材が第2の部材に対して接近したときには、第2の部材との接触により連結部に対して移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具体におけるカバー部材の動作構造および玩具体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、玩具体におけるカバー部材の動作構造として、人形体の関節構造に設けられたカバー部材の動作構造が知られている。この人形体の関節構造は、連結機構をカバー部材で覆い、見栄えをよくしつつ、関節を曲げたとき、カバー部材が回動部品(中間部材や、第1の部材あるいは第2の部材)に干渉してしまい、十分な曲げ角が得られなくならないよう、関節を曲げても、カバー部材が回動部品に干渉しない関節構造が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される関節構造では、人形体の大腿部と脛部との間に中間部材を設け、大腿部と中間部材を回動軸で連結し、膝部と中間部材を別の回動軸で連結する。
【0004】
脛部の上部には、中間部材を覆う可動外装部品が設けられており、この可動外装部品は、リンク機構を介して中間部材に連結される。これにより、膝部が回動すると、リンク機構によって可動外装部品が変位するため、可動外装部品と膝部との干渉を防ぐことができる。
【0005】
このような特許文献1の技術を用いれば、関節を曲げてもカバー部材が第1の部材あるいは第2の部材等の回動部品に干渉しない関節が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4641326号公報(第9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述したような特許文献1の構造においては、複雑なリンク機構を必要とするため、部品点数が多く、組み立て工数も多い。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、より簡単な構成により、見栄えのよい玩具体のカバー部材の動作構造および玩具体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、玩具体における第1の部材と第2の部材の間に介在されるカバー部材の動作構造であって、前記第1の部材および前記第2の部材を互いに接近、離間可能となるように連結している連結部と、連結部に対向する位置に設けられるカバー部材と、を備えてなり、前記カバー部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記第2の部材との接触により前記連結部に対して移動可能となっているものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき前記カバー部材の移動を制限可能な制限部材を有するものとしても良い。
【0011】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も接近した状態のとき前記制限部材は前記カバー部材の移動を制限しないようにしても良い。
【0012】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記カバー部材には前記連結部と対向する位置に被係合部が設けられており、前記制限部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき、前記カバー部材の移動を制限可能なように前記被係合部と係合可能な係合部を有しているようにしても良い。
【0013】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記係合部は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態から接近していくに応じて前記被係合部から離間していくようにしても良い。
【0014】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記制限部材は、前記第2の部材に設けられているようにしても良い。
【0015】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記制限部材は、前記第1の部材に設けられているようにしても良い。
【0016】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記第1の部材の端部は、前記連結部にて前記第2の部材に対して第1の回動軸を介して連結されており、前記カバー部材は前記第1の回動軸に対して移動可能に取り付けられているようにしても良い。
【0017】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記カバー部材には前記第1の回動軸に嵌合する長穴が設けられており、前記カバー部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記長穴の長さ方向に沿って移動可能となっているものであるようにしても良い。
【0018】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記カバー部材は前記第1の部材に取り付けられており、前記第1の部材または前記カバー部材の少なくともいずれか一方には被係合部が設けられており、前記制限部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき、前記カバー部材の移動を制限可能なように前記被係合部と係合可能な係合部を有しており、前記第1の部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記カバー部材と前記第2の部材との接触により、前記カバー部材とともに前記連結部に対して移動可能となっているようにしても良い。
【0019】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記係合部は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態から接近していくに応じて前記被係合部から離間していくようにしても良い。
【0020】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記制限部材は、前記第2の部材に設けられているようにしても良い。
【0021】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記制限部材は、前記第1の部材に設けられているようにしても良い。
【0022】
また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造は、前記第2の部材は、前記連結部として前記第1の部材の端部と回動可能に連結された中間部材と、その端部が前記中間部材に対して回動可能に連結された末端部材からなり、前記カバー部材は前記中間部材と対向する位置に設けられているようにしても良い。
【0023】
また、本発明は、以上述べてきた玩具体におけるカバー部材の動作構造を備えた玩具体である。
【0024】
また、本発明に係る玩具体は、玩具体は人形体であり、以上述べてきた玩具体におけるカバー部材の動作構造が当該人形体の関節部に設けられているようにしても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、より簡単な構成により、見栄えのよい玩具体におけるカバー部材の動作構造およびガンGぬ体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る玩具体の一例としての人形体の斜視図である。
【図2】本発明に係る玩具体の一例である人形体の脚部を背面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係るカバー部材の動作構造の一例である人形体の脚部関節部の分解斜視図である。
【図4】本発明に係るカバー部材の動作構造の一例である人形体の関節部断面図である。
【図5】第1のカバー部材および中間部材の斜視図である。
【図6】第3のカバー部材の構成例を説明する脚部の部分断面図である。
【図7】本発明に係るカバー部材の動作構造の一例である人形体の関節部の作用説明図であり、脚部が直立した状態を示す図である。
【図8】本発明に係るカバー部材の動作構造の一例である人形体の関節部の作用説明図であり、(A)は中間部材の回動直後の状態を示す図、(B)は回動部品がカバー部材に当接した状態を示す図である。
【図9】本発明に係るカバー部材の動作構造の一例である人形体の関節部の作用説明図であり、第2の外装部材が反転した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、本実施形態においては、本発明に係る玩具体を人形体10とし、また、本発明に係る玩具体におけるカバー部材の動作構造を、当該人形体10の関節部に適用した例について説明する。
【0028】
さて、図1に示すように、本実施形態にかかる人形体10(本発明にいう玩具体)は、胴部11と、頭部12と、左右の腕部13と、左右の脚部14とからなる。本実施形態では、脚部14の膝関節に、本発明に係る動作構造を適用した例を説明する。脚部14は、大腿部となる第1の外装部材(第1の部材)20と、脛部となる第2の外装部材(第2の部材における末端部材)30と、第1の外装部材20の端部と回動可能に連結されるとともに、前記第2の外装部材の端部とも回動可能に連結された中間部材41とを備えている。ここで、第2の外装部材30と中間部材41により、本発明にいう第2の部材が構成されており、第1の部材(第1の外装部材20)と第2の部材(第2の外装部材30と中間部材41)は、互いに接近、離間可能となるように連結されているになる。すなわち、第1の外装部材20と、中間部材41の連結部分が、本発明にいう連結部に相当する。
【0029】
図2は、脚部14を背面側から見た斜視図であり、図2に示すように、第1の外装部材20は、球体関節15を介して胴部11(図1参照)と連結される。第1の部材(第1の外装部材20)と第2の部材(第2の外装部材30および中間部材41)の間には、関節部40が介在している。
【0030】
すなわち、関節部40は、本発明にいう連結部としての中間部材41と、中間部材41を覆う(すなわち、連結部と対向する位置に設けられた)第1のカバー部材(カバー部材)42を備える。また、本実施形態においては、さらに第2のカバー部材43を備えており、また、第2の外装部材30の上部背面には、第3のカバー部材44が設けられている。
【0031】
次に、脚部14の各部の構成を図3〜図5に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、第1の外装部材20は、横断面が略U字状の大腿部本体21と、大腿部本体21に収納されて球体関節15を回転自在に支持する球体支持部22と、球体支持部22に合わさる球体保持部23とを備える。
【0032】
また、第1の外装部材20は、左右1対の上部連結体24,25を備える。上部連結体24,25の内面には、中間部材41の位置を規制する円弧状の位置規制リブ26が設けられる。また、一方の上部連結体24の端部内面には、他方の上部連結体25に向けて突出する第1の軸体(本発明にいう第1の回動軸)27が設けられる。さらに、他方の上部連結体25の端部内面には、第1の軸体27の先端を支持する軸穴28が設けられる。中間部材41は、上部連結体24,25を、第1の軸体27を介して回動可能に支持している。以上のとおり、第1の軸体27、すなわち、第1の回動軸は、上部連結体24,25の端部内面、すなわち、第1の外装部材20(本発明にいう第1の部材)の端部に設けられていることになる。また、中間部材41、すなわち、第2の部材は、第1の軸体27を回動可能に支持していることになるので、第1の部材の端部が、第2の部材に対して第1の回動軸を介して連結されていることになる。また、第1の軸体27が存在する部分が、本発明にいう連結部になる。以上のとおりであるから、第1の部材の端部は、連結部にて第2の部材に対して第1の回動軸を介して連結されていることになる。
【0033】
また、本実施形態においては、第1のカバー部材42は、横断面が略円弧状に形成されており、第1の軸体27に回動可能に取り付けられている。すなわち、第1のカバー部材42は、前方に(すなわち、中間部材41に向かって)突出した左右一対の端部42aを有しており、当該突出した左右の端部42aのそれぞれに形成された長穴42bに、第1の軸体27が長穴42bに沿って移動可能に挿通されている。すなわち、カバー部材(第1のカバー部材42)は、第1の回動軸(第1の軸体27)に対して移動可能に取り付けられていることになり、カバー部材には第1の回動軸に嵌合する長穴(長穴42b)が設けられていることになる。また、長穴42bは、脚部14(図2参照)の長手方向に沿って形成されている。本実施形態においては、第1の軸体27は、長穴42b、上部軸筒41b、そして軸穴28に挿入された後、ビス51で締結されている。
【0034】
第2の外装部材30は、略筒状の脛部本体31と、当該脛部本体31の上部に収納・固定された左右1対の下部連結体32,33を備える。一方の下部連結体32の上端部内面には、他方の下部連結体33に向けて突出する第2の軸体34(第2の回動軸)が設けられる。他方の下部連結体33の上端部内面には、第2の軸体34の先端を支持する軸穴35が設けられる。そして、第2の軸体34は、中間部材41に回動可能に軸支されている。前述の通り、第2の軸体34は下部連結体32,33の上端部に存在するので、第2の外装部材30、すなわち、末端部材の上端部は、中間部材41に回動可能に連結されていることになる。
【0035】
また、中間部材41には第2のカバー部材43(本発明にいうカバー部材とは異なる)が取り付けられている。より具体的には、第2のカバー部材43は、横断面が略円弧状に形成されており、また、前方に(中間部材41に向かう方向に)左右の端部43aが形成されている。そして、突出した左右の端部43aのそれぞれには軸穴43bが形成されており、第2の軸体34は、軸穴43bと中間部材41の下部軸筒41c、そして軸穴35に挿入された後、ビス51で締結される。このようにして、中間部材41に第2のカバー部材43は第2の軸体34を介して取り付けられている。なお、本実施形態において、第2のカバー部材43が中間部材41に取り付けたとき、第2のカバー部材43に設けられた係合段部(図示せず)は中間部材41の下部軸筒41cに設けられた被係合段部と契合するようになっており、そのため、第2のカバー部材43は中間部材41と一体となって第2の軸体34周りを回動可能となっている。第2のカバー部材43は中間部材41と一体となっているので、第2のカバー部材43も本発明にいう第2の部材の一部を構成している。
【0036】
なお、第1・第2の外装部材20,30のそれぞれを構成する要素は、本実施形態に格別に限定されるものではなく、2個以上の要素を一体形成するなど、任意の構成が選択可能である。
【0037】
さて、中間部材41についてさらに具体的に説明する。中間部材41は、略半月板状に形成されており、凹面41aを第1・第2の軸体27,34に向けた姿勢で、第1の外装部材20および第2の外装部材30に収納されている。凹面41aには、第1の軸体27が挿入される上部軸筒41bが設けられており、上部軸筒41bの下方には、第2の軸体34が挿入される下部軸筒41cが設けられている。さらに、上部軸筒41bには、後下方に向けて突出するストッパ41d(本発明にいう制限部材、係合部)が設けられている。中間部材41は、本発明にいう第2の部材を構成するものであるから、本実施形態においては、制限部材(係合部、ストッパ41d)は、第2の部材に設けられていることになる。
【0038】
続いて、第1のカバー部材42(本発明にいうカバー部材)の構成をさらに詳細に説明する。
図4および図5に示すように、第1のカバー部材42は、左右の側端に摺動部42cを備えており、摺動部42cは、第1のカバー部材42の幅方向外方に突出する。一方、上部連結体24には、摺動部42cを上下に摺動させる摺動溝29が設けられる。この摺動溝29に摺動部42cが係合することで、第1のカバー部材42は、回転することなく安定した姿勢で、長穴42bに沿って移動可能となる。
【0039】
また、第1のカバー部材42の内面において、左右の長穴42bの間の、中間部材41の上部軸筒41bと対向する位置には、ストッパ受け部42d(本発明にいう被係合部)が設けられている。前述のとおり、中間部材41の上部軸筒41bには第1の軸体27(第1の回動部材)が挿通され、本発明にいう連結部を構成しているので、ストッパ受け部42d、すなわち、本発明にいう被係合部は、連結部と対向する位置に設けられていることになる。
【0040】
そして、ストッパ41dは、脚部14が略一直線状に延びた形態(膝関節が延びた状態)では、ストッパ受け部42dに上から係合し(上から押さえ)、第1のカバー部材42の上方への移動を制限している。すなわち、第1の部材(第1の外装部材20)と、第2の部材(中間部材41および第2の外装部材30)が最も離間した状態(脚部14が略一直線状に延びた形態(膝関節が延びた状態))のとき、ストッパ41dはカバー部材(第1のカバー部材42)の移動を制限する制限部材として機能しており、かつ、カバー部材(第1のカバー部材42)の移動を制限するように被係合部(ストッパ受け部42d)と係合可能な係合部として機能している。
【0041】
一方、第1の軸体27を介して、第1の外装部材20が、中間部材41および第2の外装部材30に対して回動して脚部14が曲げられると、ストッパ41dはストッパ受け部42dから離れ、ストッパ受け部42dは、解放される。すなわち、係合部(ストッパ41d)は、第1の部材(第1の外装部材20)と第2の部材(中間部材41および第2の外装部材30)が最も離間した状態(脚部14が略一直線上に伸びた形態(膝関節が延びた状態))から接近していく(脚部14が曲げられていく)に応じて、被係合部(ストッパ受け部42d)から離間していくので、このことにより、カバー部材(第1のカバー部材41)は長穴(長穴42b)の長さ方向に沿って移動可能となっている。そして、当然に、第1の部材(第1の外装部材20)と第2の部材(中間部材41および第2の外装部材30)が最も接近した状態(脚部14が最大まで曲げられた状態、本実施形態においては、図9に示すように第1の軸体27、第2の軸体34を介して、中間部材41に対して第1の外装部材20、第2の外装部材30ともに略90°回転した状態)でも当然に係合部(ストッパ41d)は被係合部(ストッパ受け部42d)から離間しているので、制限部材(ストッパ41d)はカバー部材(第1のカバー部材42)の移動は制限しないようになっている。
【0042】
なお、本実施形態には、第2の外装部材30に、第3のカバー部材44が取り付けられているが、これは本発明にいうカバー部材には相当するものではなく、したがって、以下のように構成にしてもよい。
【0043】
図6に示すように、第2の外装部材30の下部において、脛部本体31の左右の側部に、前下方に傾斜する案内溝31aを設ける共に、第3のカバー部材44に、案内溝31aに沿って摺動可能な凸部44aを設け、さらに第3のカバー部材44を正規の位置に戻す、ねじりコイルばね52を設ける。これにより、第3のカバー部材44は、脛部本体31から離間する方向(図中、矢印(1))に移動可能になる。なお、第3のカバー部材44については第2の外装部材30に固定とし、第2のカバー部材43と第3のカバー部材44の位置関係を、第2のカバー部材43を中間部材41とともに、第2の軸体34を介して第2の外装部材30に対して回動させたとしても、第3のカバー部材43に干渉しないように、設定するようにしても良い。
【0044】
以上、説明した本発明にかかる実施形態の作用について、図7〜図9に基づいて説明する。
図7において、脚部14は、直立した状態である(本発明にいう「第1の部材と第2の部材が最も離間した状態」)。この状態では、ストッパ41d(係合部)がストッパ受け部42dを押さえており(被係合部と係合しており)、そのため、第1のカバー部材42は長穴42bに沿って動くことはない(移動が制限されている)ので、人形体10を振る等してもがたつくことが少なく、見栄えが良い。
【0045】
さて、使用者が第1の外装部材20に対して、第1の軸体27を中心に第2の外装部材30は矢印(2)、中間部材41は矢印(3)の方向へと回動させる(本発明にいう「第1の部材と第2の部材が最も離間した状態から接近していく」)と、図8(A)に示すように、ストッパ41d(本発明にいう制限部材、係合部)がストッパ受け部42d(本発明にいう被係合部)から離間していく(矢印(4))。これにより、ストッパ41は第1のカバー部材42(本発明にいうカバー部材)の移動を制限しなくなるため、第1のカバー部材42は上方に移動可能となる。すなわち、第1のカバー部材42は、第1の軸体27が存在している連結部に対して移動可能になっている。そして、図8(B)に示すように、さらに第1の外装部材20に中間部材41および第2の外装部材30を接近させていくと、第2のカバー部材43(特に端部43a)あるいは中間部材41(特に下部軸筒41c)が、第1のカバー部材42の下端に接触する。前述のとおり、ストッパ41dは第1のカバー部材42の移動を制限していないので、第1のカバー部材42は中間部材41あるいは第2のカバー部材43と接触することによりその動きに従って、長穴42bの長さ方向に沿って、第1の軸体27から離れる方向へ移動する(矢印(5))。すなわち、カバー部材(第1のカバー部材42)は、第2の部材(第2の部材を構成する中間部材41、および、中間部材41と一体となっている第2のカバー部材43)との接触により、長穴42bの長さ方向に沿って、連結部(第1の軸体27が存在する部分)に対して移動可能となっている。
【0046】
図9に示すように、中間部材41がさらに回動すると、第1のカバー部材42がさらに上方に移動し、上部軸筒41cが第1のカバー部材42をくぐり抜け、第1の外装部材20と中間部材41とがなす角度が約90°となる位置まで、第1の外装部材20に対して中間部材41を動かすことができる。また、第2の外装部材30は、第2の軸体34を中心に第1の外装部材20にさらに接近する方向へと回動させることが可能である。このことにより、人形体10の脚部14は大きく膝関節を曲げることができるようになっている。
【0047】
以上の作用において、第2の軸体34を中心とした第2の外装部材30の回動操作は、中間部材41の回動前、中間部材41の回動過程、中間部材41の回動後のいずれのタイミングで行われてもよい。また、図9において、第2のカバー部材43が第1のカバー部材42に当接するが、脛部本体31は、第2のカバー部材43とは独立して回動する(矢印(6))。したがって、第2のカバー部材43と第1のカバー部材42との当接が、第2の外装部材30の回動を妨げることはない。
【0048】
さらに、第3のカバー部材44を移動可能に構成すれば、図9において、第3のカバー部材44は、第1のカバー部材42に干渉しても、第1のカバー部材42から円滑に逃げる(矢印(7))。これにより、第2の外装部材30を第1の外装部材20に一層近接させることができる。
【0049】
以上に述べた本実施形態によれば、従来に比べ、リンク機構等の複雑な機構を用いていないので、格段に構成が簡素化されており、それでいて、カバー部材(第1のカバー部材42)が関節の回動を妨げないように円滑に移動させ、逃がすことができる。
【0050】
また、脚部14が直立した状態では、使用者による第1のカバー部材42の移動が制限されているので、内部の連結機構の外部への露出を少なくすることができる。
【0051】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0052】
たとえば、制限部材、係合部であるストッパ41dを、中間部材41、すなわち、第2の部材側に設けたが、これを第1の部材側に設けても良い。その場合、前述の実施形態において第1のカバー部材42が第1の外装部材20に対して相対的に回動可能とし(具体的には、第1のカバー部材42は、摺動部42cを第1の外装部材20の摺動溝29に係合させることによって、第1の外装部材20に対して回転しないようになっているところ、この構成を無くす)、第1の部材と第2の部材とが最も離間した状態においては、第1のカバー部材42の上端が第1の外装部材20の縁部と接触し(この接触箇所が制限部材、係合部である)、移動が制限されるような位置関係にすれば良い。
【0053】
また、たとえば、カバー部材を第1の部材に取り付け、カバー部材と第1の部材はともに連結部に対して移動可能となるようにしても良い。その場合、前述の実施形態において第1のカバー部材42における第1の軸体27を相通している長穴42bという構成をなくし、代わりに、中間部材41の上部軸筒41aを長穴形状とし、第1の軸体27はこの中間部材41の長穴に沿って移動可能とする。この構成であれば、第1の部材が第2の部材に対して接近し、第1のカバー部材42が第2の部材と接触して押されると、第1のカバー部材42に取り付けられた第1の外装部材20(第1の部材)も中間部材41の長穴に沿って移動することが可能となる。この場合、本発明いう連結部に相当するのは、中間部材41の長穴の下端(つまり、第1の部材が第2の部材が最も離間した状態にあるときの第1の軸体27の位置)となる。
【0054】
また、たとえば、前述した実施形態においては、本発明に係る動作構造を人形の膝関節に用いたが、本発明に係る構造は、人形体の腕部の肘関節など、各部の関節に適用可能である。
【0055】
さらにいえば、本発明に係る動作構造は人形体の関節以外の部分にも適用可能である。たとえば、カバー部材を人間の筋肉を表現したものとし、人形体の動作に応じてカバー部材が動くことで筋肉の動きを表現するようにしても良い。その
場合、カバー部材で表す筋肉を腹筋として、第1の部材を胸部、第2の部材を腰部とし、胸部と腰部を接近させることによる腹筋の動きを表現することも可能となる。
【0056】
また、玩具体を甲冑を纏った人形体とし、カバー部材が甲冑を構成する部材を表現したものすれば、人形体の動きに応じた甲冑の動作を、カバー部材の動きによって表現することもできる。
【0057】
また、当然ながら、人形体以外の玩具体に適用しても良い。たとえば、玩具体を昆虫とし、カバー部材を昆虫の外殻を表現したものとすれば、昆虫の動作に応じた外殻の動きをカバー部材の動きにより表現できる。
【符号の説明】
【0058】
10 人形体(玩具体)
20 第1の外装部材(第1の部材)
27 第1の軸体(第1の回動軸)
30 第2の外装部材(末端部材)
34 第2の軸体
40 関節部
41 中間部材
41a 凹面
41d ストッパ(制限部材、係合部)
42 第1のカバー部材(カバー部材)
42b 長穴
42d ストッパ受け部(被係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具体における第1の部材と第2の部材の間に介在されるカバー部材の動作構造であって、
前記第1の部材および前記第2の部材を互いに接近、離間可能となるように連結している連結部と、
連結部に対向する位置に設けられるカバー部材と、を備えてなり、
前記カバー部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記第2の部材との接触により前記連結部に対して移動可能となっているものであることを特徴とする玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項2】
前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき前記カバー部材の移動を制限可能な制限部材を有する請求項1記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項3】
前記第1の部材と前記第2の部材が最も接近した状態のとき前記制限部材は前記カバー部材の移動を制限しないことを特徴とする請求項2記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項4】
前記カバー部材には前記連結部と対向する位置に被係合部が設けられており、
前記制限部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき、前記カバー部材の移動を制限可能なように前記被係合部と係合可能な係合部を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項5】
前記係合部は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態から接近していくに応じて前記被係合部から離間していくことを特徴とする請求項4記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項6】
前記制限部材は、前記第2の部材に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項7】
前記制限部材は、前記第1の部材に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項8】
前記第1の部材の端部は、前記連結部にて前記第2の部材に対して第1の回動軸を介して連結されており、前記カバー部材は前記第1の回動軸に対して移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項9】
前記カバー部材には前記第1の回動軸に嵌合する長穴が設けられており、前記カバー部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記長穴の長さ方向に沿って移動可能となっているものであることを特徴とする請求項8記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項10】
前記カバー部材は前記第1の部材に取り付けられており、
前記第1の部材または前記カバー部材の少なくともいずれか一方には被係合部が設けられており、
前記制限部材は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態のとき、前記カバー部材の移動を制限可能なように前記被係合部と係合可能な係合部を有しており、
前記第1の部材は、前記第1の部材が前記第2の部材に対して接近したときには、前記カバー部材と前記第2の部材との接触により、前記カバー部材とともに前記連結部に対して移動可能となっていることを特徴する請求項2または3に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項11】
前記係合部は、前記第1の部材と前記第2の部材が最も離間した状態から接近していくに応じて前記被係合部から離間していくことを特徴とする請求項10記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項12】
前記制限部材は、前記第2の部材に設けられていることを特徴とする請求項10乃至11のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項13】
前記制限部材は、前記第1の部材に設けられていることを特徴とする請求項10乃至11のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項14】
前記第2の部材は、前記連結部として前記第1の部材の端部と回動可能に連結された中間部材と、その端部が前記中間部材に対して回動可能に連結された末端部材からなり、前記カバー部材は前記中間部材と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のカバー部材の動作構造を備えた玩具体。
【請求項16】
前記玩具体は人形体であり、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の玩具体におけるカバー部材の動作構造が当該人形体の関節部に設けられていることを特徴とする請求項15記載の玩具体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−6028(P2013−6028A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−135892(P2012−135892)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2011−141133(P2011−141133)の分割
【原出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】