説明

玩具用毛髪

【課題】 毛髪を水の適用により自在な形に変えることができ、水が乾燥する前に変形した状態を固定することができると共に、乾燥により変形した状態をより長期間固定でき、必要に応じて、前記変形させた毛髪を元の状態に復元させたり、別の形に変形できる繰り返しの遊戯性を備えた玩具用毛髪を提供する。
【解決手段】 50℃以下の温度で塑性変形性を有する樹脂からなる芯部と、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂からなる鞘部とから構成される芯鞘型複合繊維により形成された玩具用毛髪。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玩具用毛髪に関する。詳細には、水の適用により任意形状に変形された状態が早期に固定される機能に優れた玩具用毛髪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形状変化性を有する玩具の毛髪としては、形状記憶合金を用いたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記毛髪は任意形状に変形させた後、加熱すると合金が記憶した形状に戻るものの、金属製のため柔軟な風合いが得られない。
また、形状記憶樹脂を用いた毛髪が開示されているが(例えば、特許文献2参照)、繊維形成性が困難であると共に、変形させた状態を保持する機能に乏しく、玩具性を満足させていなかった。
前記問題を解消するため、手触等の加温により自在な形に変形させ、冷却により変形した状態を固定でき、必要に応じて固定した形を元の状態に復元したり、別の形に変える機能を備えた玩具用毛髪が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
前記毛髪は利便性を考慮して体温付近の温度に加温して変形させる構成が好ましいものの、変形させた後も経時により元の形状に戻る性質があり、変形させた状態を長時間保持することは困難であった。
【特許文献1】実開昭62−137086号公報
【特許文献2】実開平2−141498号公報
【特許文献3】特開平10−118341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、水の適用により自在な形に変形させ、早期に変形した状態を固定することができると共に、乾燥により変形した状態を長期間固定でき、必要に応じて固定した形を元の状態に復元したり、別の形に変える機能を備えた利便性に富む玩具用毛髪を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、50℃以下の温度で塑性変形する樹脂からなる芯部と、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂からなる鞘部とから構成される芯鞘型複合繊維により形成された玩具用毛髪を要件とする。
更には、前記鞘部の樹脂がポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂を含むこと、前記鞘部にポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂を1質量%以上含有してなること、前記アルコール可溶性樹脂がアルコール可溶性ナイロンであること、前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンを少なくとも含む共重合ナイロンであること、前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンを含む多元共重合ナイロンであること、前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンと610ナイロンを含む多元共重合ナイロンであること、前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンと610ナイロンと12ナイロンを含む多元共重合ナイロンであること、前記芯部の樹脂が少なくともガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を含有してなること、前記芯部の樹脂中にガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を5質量%以上含有してなること、前記芯部の樹脂が形状記憶性樹脂であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、毛髪を水の適用により自在な形に変えることができ、水が乾燥する前に変形した状態を固定することができると共に、乾燥により変形した状態をより長期間固定でき、必要に応じて、前記変形させた毛髪を元の状態に復元させたり、別の形に変形できる繰り返しの遊戯性を備えた玩具用毛髪を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の玩具用毛髪の芯部を構成する樹脂は、50℃以下の温度で塑性変形する樹脂により形成される。
前記樹脂としては、少なくともガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を含有するものが挙げられ、前記樹脂を単独で用いるか、或いは、化学構造が異なる熱可塑性樹脂を混合して用いることもできる。
前記ガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂(未硬化物)、炭化水素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル共重合樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂等を挙げることができる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を併用して用いることもできる。
前記化学構造が異なる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂(6−ナイロン、6,6ナイロン、12−ナイロン、6,9ナイロン、612ナイロン、6−6,6共重合ナイロン、6−12共重合ナイロン、6−6,6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニルデン−塩化ビニル共重合体、共重合アクリロニトリル樹脂、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合樹脂等のポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂等のスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン−エチレンプロピレンラバーブロック共重合樹脂等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、或いはエチレン−酢酸ビニル系共重合体等の熱可塑性エラストマーの何れかより選ばれる重合体等を挙げることができる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を併用して用いることもできる。
前記化学構造が異なる熱可塑性樹脂のうち、経時変化により硬質化して性能が低下する(しなやかさや柔軟性が損なわれる)ことを防止できる熱可塑性エラストマーが好適に用いられる。
【0007】
前記ガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂のうち、ガラス転移温度は好ましくは10℃〜50℃、より好ましくは20℃〜40℃、更に好ましくは30℃〜40℃のものが効果的であり、中でも、飽和ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン樹脂等が好適である。
前記ガラス転移温度範囲にある熱可塑性樹脂を選択することにより、生活温度範囲の温度或いはその近傍、公知の各種髪形変形治具や適宜応力変形手段の適用により、任意形状の髪形に変形し、保持する機能を有し、幼児等が簡易に髪形を変えて遊ぶことができる。
【0008】
前記化学構造が異なる熱可塑性樹脂との混合物を用いる場合、樹脂中にガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を5質量%以上含有することが好ましい。
ガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂が5質量%未満では、変形処理時における曲げ弾性率の低下によって所望の機能を発現でき難くなる。
【0009】
また、前記50℃以下の温度で塑性変形する樹脂として、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、ポリノルボルネン樹脂、結晶性ジエン共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリイソプレン樹脂等を主体とする形状記憶性樹脂を用いることもできる。
【0010】
更に、前記50℃以下の温度で塑性変形する樹脂として、形状記憶性を有さない一般のポレオレフィン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリオレフィン、スチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリブタジエン等の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
【0011】
本発明の玩具用毛髪の鞘部を構成する樹脂は、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂であって、ポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂を含む樹脂を例示できる。
前記アルコール可溶性樹脂としては、繊維形成性に優れた熱可塑性のアルコール可溶性ナイロンが好適に用いられる。特にアルコール可溶性ナイロンのうち、6,6ナイロンを少なくとも含む共重合ナイロン、6ナイロンと6,6ナイロンを少なくとも含む多元共重合ナイロン、6ナイロンと6,6ナイロンと610ナイロンを少なくとも含む多元共重合ナイロン、或いは、6ナイロンと6,6ナイロンと610ナイロンと12ナイロンを少なくとも含む多元共重合ナイロンはホルマリン等の有害物質を用いることがないため、製造時や使用時の安全性を高めることができる。
前記フィラメントを構成する樹脂としては、アルコール可溶性樹脂のみを用いる他、アルコール可溶性樹脂と異なる樹脂をブレンドして用いることもできる。
前記アルコール可溶性樹脂と異なる樹脂としては、繊維形成性を有する樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
前記ポリアミド樹脂としては、6ナイロン、6,6ナイロン、6,9ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、6−12共重合ナイロン、6,9−12共重合ナイロン、ポリアミドエラストマー等が例示され、ポリエステル樹脂としては、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、飽和脂肪族ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が例示され、前記ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン−エチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンラバー等を例示できる。なお、これらの樹脂は単独又は併用して用いてもよい。
なお、前記別の樹脂とブレンドする場合、樹脂中にアルコール可溶性樹脂を1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上含有することにより、水の適用による変形性と乾燥により変形した状態の固定性を満足させることができる。
ここでアルコール可溶性樹脂としてアルコール可溶性ナイロンを用いる場合、併用する樹脂としては共重合ポリアミド樹脂が好適である。これは同じポリアミド構造により相溶性が良いと共に、ブレンドした樹脂は吸水率が大きく、柔軟性にも優れるためである。
なお、鞘部の樹脂が水の適用により柔軟性を示して変形し、前記変形した形状を水が乾燥することにより固定されるのは、ポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂が親水性に富むため吸水により結晶性構造が崩れ、柔軟性を有して曲げ弾性率が低下し、乾燥によって再び結晶化して曲げ弾性率がアップし、硬化性を有して変形した状態が保持されるためと推察される。
【0012】
本発明の複合繊維は、50℃以下の温度で塑性変形する樹脂からなる芯部と、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂からなる鞘部とが接合され、一体化された芯鞘型の複合繊維である。
よって、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂によって、50℃以下の温度で塑性変形する樹脂が被覆されているので、水の適用により自在な形に変えることができ、水が乾燥する前では芯部の50℃以下の温度で塑性変形する樹脂により、外力を加えない限り変形した状態を固定することができ、鞘部の樹脂が乾燥することによりパーネントウェーブのように変形した状態が固定される機能を有する。
【0013】
前記複合繊維中には一般顔料、蛍光顔料、熱変色性マイクロカプセル顔料、フォトクロミック材料等を添加して種々の色調の繊維を得ることもできる。
前記熱変色性マイクロカプセル顔料は、電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物と呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたものが有効である。
前記マイクロカプセルは粒子径1〜30μm、好ましくは5〜15μmの範囲のものを適用でき、樹脂中に0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%含有させる。
0.5重量%未満の配合量では鮮明な熱変色効果を視覚させ難いし、40重量%を越えると、過剰であり、消色状態にあって残色が生じることもある。
前記フォトクロミック材料は、スピロオキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、ジアリールエテン系化合物等のフォトクロミック化合物が有効である。
【0014】
本発明は、前記したとおり、水の適用により柔軟性を示し、芯部の樹脂による塑性変形性により変形が可能となり、外力を加えない限り変形した状態を保持することができ、また所望の形状に変形した状態のまま乾燥させることにより形状を永続的に固定する機能に優れ、更に前記形状を保持した毛髪を再び水の適用により解除して、別の任意の形に変形、固定できるといった、繰り返しの実用性を備える玩具用毛髪を与える。
従って、50℃以下の温度で塑性変形する樹脂により形成された単一相フィラメントからなる毛髪と比較して変形した形状を長期間維持する機能に優れ、また、吸水により変形させた状態を乾燥により保持できる樹脂により形成された単一相フィラメントからなる毛髪と比較して変形させた直後の形状を維持する機能に優れる。
【実施例】
【0015】
本発明の玩具用毛髪を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例中の配合は質量部を示す。
実施例1
玩具用毛髪の作製
共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)60部、ガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂39部、茶色の着色剤1部を混合して芯部を構成する樹脂を得た。
鞘部を構成する樹脂としてアルコール可溶性樹脂(6−6,6−610三元共重合ナイロン)100部を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=5/5(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなる茶色の玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
【0016】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は剛性を有し、ヘアーカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
更に手触により36℃以上に加温すると、毛髪はより柔軟性を有し、この状態で直径9mmの円筒状ヘアーカーラーに巻き付けて乾燥させた後、カーラーを外すと、毛髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、カールした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。ここで手触により36℃以上に加温すると、容易にストレート状態に戻すことができた。
なお、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外しても、外力を加えない限り毛髪はカーラーと同一径にカールした状態となり、乾燥によりカールした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくカーリングする遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外してカールした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてからヘアーカーラーに巻いてカールさせる他、乾燥状態の毛髪をカーラーに巻いた後、水を付着させてカールさせることもできる。
【0017】
実施例2
玩具用毛髪の作製
ポリアミドエラストマー(融点160℃)70部、ガラス転移温度40℃のポリエステル樹脂とガラス転移温度−20℃のポリエステル樹脂の3:1混合物(混合後のTg=25℃)29部、黒色の着色剤1部を混合して芯部を構成する樹脂を得た。
アルコール可溶性樹脂(6−6,6−610三元共重合ナイロン)10部、アルコール可溶性樹脂と異なる樹脂(6−12共重合ナイロン)90部を混合して鞘部を構成する樹脂を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=8/2(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなる黒色の玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
【0018】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は剛性を有し、ヘアーカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
更に、手触により25℃以上になると、毛髪はより柔軟を有し、この状態で直径9mmの円筒状ヘアーカーラーに巻き付けて乾燥させた後、カーラーを外すと、毛髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、カールした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。ここで手触により25℃以上になると、容易にストレート状態に戻すことができた。
なお、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外しても、外力を加えない限り毛髪はカーラーと同一径にカールした状態となり、乾燥によりカールした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくカーリングする遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外してカールした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてからヘアーカーラーに巻いてカールさせる他、乾燥状態の毛髪をカーラーに巻いた後、水を付着させてカールさせることもできる。
【0019】
実施例3
玩具用毛髪の作製
ガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂99部、茶色の着色剤1部を混合して芯部を構成する樹脂を得た。
アルコール可溶性樹脂(6−6,6−610三元共重合ナイロン)10部、アルコール可溶性樹脂と異なる樹脂(6−12共重合ナイロン)90部を混合して鞘部を構成する樹脂を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=5/5(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなる茶色の玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
【0020】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は剛性を有し、ヘアーカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
更に手触により36℃以上に加温すると、毛髪はより柔軟性を有し、この状態で直径9mmの円筒状ヘアーカーラーに巻き付けて乾燥させた後、カーラーを外すと、毛髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、カールした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。ここで手触により36℃以上に加温すると、容易にストレート状態に戻すことができた。
なお、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外しても、外力を加えない限り毛髪はカーラーと同一径にカールした状態となり、乾燥によりカールした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくカーリングする遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外してカールした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてからヘアーカーラーに巻いてカールさせる他、乾燥状態の毛髪をカーラーに巻いた後、水を付着させてカールさせることもできる。
【0021】
実施例4
可逆性熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン2部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−オクタン6部、カプリン酸ステアリル50部からなる可逆性熱変色性組成物をエポキシ樹脂/アミンの界面重合法によってマイクロカプセル化して平均粒子径10〜20μmの可逆性熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
前記マイクロカプセル顔料は34℃以上で無色、28℃以下でピンク色に可逆的に色変化した。
【0022】
玩具用毛髪の作製
前記マイクロカプセル顔料3部、共重合ポリアミド樹脂(融点155℃)60部、ガラス転移温度36℃のポリエステル樹脂37部を混合して芯部を構成する樹脂を得た。
鞘部を構成する樹脂としてアルコール可溶性樹脂(6−6,6−610三元共重合ナイロン)100部を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=5/5(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなる玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
前記フィラメントは34℃以上で無色、28℃以下でピンク色に可逆的に色変化した。
【0023】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は25℃の室温下でピンク色を呈すると共に剛性を有し、ヘアーカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
更に手触により36℃以上に加温すると、毛髪はより柔軟性を有すると共に無色になり、この状態で頂点間の距離が10mm間隔の波形形状の板に挟み込んで乾燥させた後、板を外すと、毛髪は波形の板と同形状のウェーブした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、ウェーブした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。ここで手触により36℃以上に加温すると、無色になると共に容易にストレート状態に戻すことができた。
なお、毛髪に水を付着させて板に挟み込んだ後、毛髪が乾燥する前に板を外しても、外力を加えない限り毛髪は板と同形状のウェーブした状態となり、乾燥によりウェーブした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくウェーブさせる遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させて板に挟み込んだ後、毛髪が乾燥する前に板を外してウェーブした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてから板に挟み込んでウェーブさせる他、乾燥状態の毛髪を板に挟み込んだ後、水を付着させてウェーブさせることもできる。
【0024】
実施例5
玩具用毛髪の作製
イソフタル酸35モル%変性ポリブチレンテレフタレート(融点168℃)60部、ガラス転移温度35℃のアクリル樹脂39部、ブロンド色の着色剤1部を混合して芯部を構成する樹脂を得た。
アルコール可溶性樹脂(6−6,6−610−12四元共重合ナイロン)25部、アルコール可溶性樹脂と異なる樹脂として6−12共重合ナイロン75部を混合して鞘部を構成する樹脂を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=8/2(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから190℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなるブロンド色の玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
【0025】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は剛性を有し、ヘアーカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
更に手触により35℃以上に加温すると、毛髪はより柔軟性を有し、この状態で直径9mmの円筒状ヘアーカーラーに巻き付けて乾燥させた後、カーラーを外すと、毛髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、カールした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。ここで手触により35℃以上に加温すると、容易にストレート状態に戻すことができた。
なお、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外しても、外力を加えない限り毛髪はカーラーと同一径にカールした状態となり、乾燥によりカールした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくカーリングする遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外してカールした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてからヘアカーラーに巻いてカールさせる他、乾燥状態の毛髪をカーラーに巻いた後、水を付着させてカールさせることもできる。
【0026】
実施例6
玩具用毛髪の作製
芯部を構成する樹脂として、ガラス転移温度10℃のポリウレタン系形状記憶樹脂100部を得た。
アルコール可溶性樹脂(6−6,6−610−12四元共重合ナイロン)100部、茶色の着色剤1部を混合して鞘部を構成する樹脂を得た。
前記芯部を構成する樹脂を芯部成形用押出し機に、前記鞘部を構成する樹脂を鞘部成形用押出し機にそれぞれ供給し、複合繊維紡糸装置を用いて芯部/鞘部=5/5(体積比)になるように、20孔の吐出口を有するダイスから200℃で紡出し、延伸処理することにより直径90μmのフィラメント20本からなる茶色の玩具用毛髪(複合繊維)を得た。
【0027】
人形の作製
前記玩具用毛髪をプラスチック材からなる人形の頭部に植毛し、胴体部と連結して人形を得た。
前記人形の毛髪は剛性を有し、ヘアカーラーに巻き付けただけではカールできなかった。この毛髪に噴霧器を用いて水を付着させると、毛髪は柔軟性を有し、塑性変形が可能となった。
この状態で直径9mmの円筒状ヘアカーラーに巻き付けて乾燥させた後、カーラーを外すと、毛髪はカーラーと同一径でカールした状態となり、パーマネントウェーブと同様に長期間その形状を保持できた。
次に、カールした状態の毛髪に再度噴霧器を用いて水を付着させ、ストレートに伸ばしながらブラッシングすると、毛髪は初期のストレート状態に戻った。
なお、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外しても、外力を加えない限り毛髪はカーラーと同一径にカールした状態となり、乾燥によりカールした状態は長期間保持できるため、乾燥を待つことなくカーリングする遊戯性を満足させることができる。
更に、毛髪に水を付着させてカーラーに巻き付けた後、毛髪が乾燥する前にカーラーを外してカールした状態から直線状態に伸ばしながらブラッシングすると、初期のストレートな状態に戻すこともできる。
前記形状変化は、水の付与により変形し、乾燥するとその形状を固定でき、繰り返しの遊戯性を備えていた。
また、毛髪は水を付着させてからヘアカーラーに巻いてカールさせる他、乾燥状態の毛髪をカーラーに巻いた後、水を付着させてカールさせることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃以下の温度で塑性変形性を有する樹脂からなる芯部と、吸水により軟化し、乾燥により硬化する樹脂からなる鞘部とから構成される芯鞘型複合繊維により形成された玩具用毛髪。
【請求項2】
前記鞘部の樹脂がポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂を含む請求項1記載の玩具用毛髪。
【請求項3】
前記鞘部にポリアミド樹脂又はアルコール可溶性樹脂を1質量%以上含有してなる請求項2記載の玩具用毛髪。
【請求項4】
前記アルコール可溶性樹脂がアルコール可溶性ナイロンである請求項2又は3記載の玩具用毛髪。
【請求項5】
前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンを少なくとも含む共重合ナイロンである請求項4記載の人形用毛髪。
【請求項6】
前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンを含む多元共重合ナイロンである請求項5記載の玩具用毛髪。
【請求項7】
前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンと610ナイロンを含む多元共重合ナイロンである請求項5記載の玩具用毛髪。
【請求項8】
前記アルコール可溶性ナイロンが6−ナイロンと6,6−ナイロンと610ナイロンと12ナイロンを含む多元共重合ナイロンである請求項5記載の玩具用毛髪。
【請求項9】
前記芯部の樹脂が少なくともガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を含有してなる請求項1乃至8いずれか一項に記載の玩具用毛髪。
【請求項10】
前記芯部の樹脂中にガラス転移温度が0乃至50℃の範囲にある熱可塑性樹脂を5質量%以上含有してなる請求項9記載の玩具用毛髪。
【請求項11】
前記芯部の樹脂が形状記憶性樹脂である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の玩具用毛髪。

【公開番号】特開2009−254791(P2009−254791A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295109(P2008−295109)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】