説明

玩具銃におけるリコイルショック装置

【課題】 ピストンシリンダーの可動部とウエイトとを別体に設けることにより、ピストン重量を増すことなくしかもピストン重量を増したのと同等のリコイルショックを得る。また、銃の外観を損うことなく、実銃と同様のリコイルショックが得られるようにする。
【解決手段】 圧縮エアを生成するピストンシリンダーの可動部の動作に基因してウエイトを駆動し、模擬的な反動即ちリコイルショックを得るために、可動部(13)により後退方向へ移動させられる連絡部31を設けるとともに、可動部(13)により連絡部31を介してウエイト33に伝えられる力を受けて圧縮状態となるリコイルばね35を設け、リコイルばね35が圧縮され、その後リコイルばね35が弾発力によって伸張する際のウエイト33の移動に伴う反作用がリコイルショックとして錠本体(37)に伝達されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置における可動部の動作に基因してウエイトを駆動し、模擬的な反動を得るようにした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾丸発射時に反動を発生する実銃と同様に、模擬的な反動(リコイルショック)を玩具銃にも再現しようという試みは従来から行われている。市販された玩具銃に見られた反動付与方式は、圧縮エアを生成するピストンシリンダーを有する玩具銃について、ピストンを重くしてショックを得る方式のものであった。このため、十分なショックを得るにはピストンを重くする必要があり、ピストンを重くすると弾速低下を避けるためにピストンスプリングを強化する必要を生じ、スプリング強化によりピストンをコッキングする負荷が増加し、ピストン前進時の衝撃でシリンダーヘッドやピストン自体、或いは作動機構などを破損させ、耐久性を著しく損うという問題があった。
【0003】
出願された文献の中には、特開2000−88494号のように、引き金を引く操作でピストンロッドを突出させ、可動肩当てを後方へ突出させて射手の肩に衝撃を与えるものがあるが、肩当てを可動にするという実銃にはない機構を付与しなければならない不利がある。また特開平8−89661号は、スライドカバーを、トリガー操作に連動するソレノイドによって駆動し、反動を付与するものであるが、スライド機構を有していない小銃型のものには適さない。また実開平6−22793号は、銃身に沿ったスプリングと重りにより後ろ向きに発生させた衝撃を利用して空気室を押し、その圧力でエアガンの弾丸を発射させるというものであるが、衝撃が発射に先行するという特殊なもので一般向きということはできない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−88494号
【特許文献2】特開平8−89661号
【特許文献3】実開平6−22793号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、ピストンシリンダー装置における可動部とウエイトとを別体に設けることにより、ピストン重量を増すことなくピストン重量を増したのと同等のリコイルショックを得ることである。また、本発明の他の課題は、実銃と同じようなリコイルショックを、外観を損うことなしに体感できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置における可動部の動作に基因してウエイトを駆動し、模擬的な反動を得るようにした装置として、可動部により後退方向へ移動をさせられる連絡部を設けるともに、可動部により連絡部を介してウエイトに伝えられる力を受けて圧縮状態となるリコイルばねを設け、リコイルばねが圧縮されその後弾発力により伸張する際のウエイトの移動に伴う反作用が銃本体に伝達されるようにするという手段を講じたものである。
【0007】
本発明の玩具銃は、ピストンシリンダー装置を使用して圧縮エアを生成する方式の銃に関するものである。ピストンシリンダー装置は、ピストンがシリンダー内を摺動するとの理解が一般的であるが、ピストンが固定されシリンダーが可動となるものもあり、どちらの場合でも圧縮エアを生成するので、ピストン、シリンダーのどちらかが可動部材となってウエイトを駆動するものは、本発明の対象となる。
【0008】
ピストンシリンダー装置により圧縮エアが生成される玩具銃では、圧縮エアは弾丸の発射のために使用することができる。しかし、弾丸が発射されない場合でも、ピストンはシリンダーの動作に基因してウエイトが駆動されれば、模擬的な反動を得ることができるのはいうまでもない。従って弾丸発射に伴うリコイルショックに対して、本発明による模擬的な反動は弾丸発射を条件としていない。つまり本発明の装置は弾丸発射機構を備えているものについて適用できることはもちろん、弾丸発射機構を備えていないものについても適用可能である。
【0009】
本発明の装置では、ピストン又はシリンダーのどちらかによって構成される可動部の作動に基づいて、後退方向へ移動させられる連絡部を設けている。連絡部は、可動部に発する力を受けてウエイトに伝える役割を果たすもので、ウエイトには上記の力を受けて圧縮状態になるリコイルばねが設けられている。要するに可動部→連絡部→ウエイト→リコイルばね、という順序に力が伝えられるのであるが、しかし、可動部、連絡部、ウエイトの各部は同じ方向へ、ほぼ同じ長さだけ移動するものであるので、3部品に分かれていることは絶対的に必要な条件ではなく、設計上部品数や構造を任意に変更することができるものに該当する。
【0010】
このような可動部と、連絡部及びウエイトは、ほぼ一直線状に同順に配置されるという構成を取ることができるが、この配置構成は、機関部よりも後方に十分な長さの銃床を有する小銃のような銃に好適である。また連絡部は、その一部が可動部により後退させられる位置に配置されており、かつ可動部の移動軸線と平行に伸びた連絡部の他の一部にてウエイトに連絡した構成を取ることも可能であり、この構成は機関部の前方或いは左右若しくは上方に本装置を設けることになる場合に適している。機関部には、ピストンシリンダー装置から弾丸を発射までの間保持する装弾部までを含む。
【0011】
連絡部とウエイトとの間又は可動部と連絡部の間のどちらか一方又は両方には、連絡部の後退移動により圧縮状態となる弾性体を介装することができる。前述の説明によれば、力は可動部→連絡部→ウエイト、と伝わるので、連絡部とウエイトとの間に弾性体を介装することにより、伝達作用を直接的でなく間接的なものに変えることができる。また、伝達時間にも僅かながらギャップを生じる。さらに弾性体は、ピストンや連絡部、ウエイト間の力の伝達に伴うショックを吸収し、破損を防ぐ役割をも果たす。
【0012】
なお、リコイルショックは、ピストンシリンダーに発する力がウエイトに伝わってリコイルばねを圧縮する状態から始まり、弾発力により伸張するリコイルばねとともにウエイトが前進するのに伴って顕著になる。そこで、本発明では、リコイルばねの圧縮に伴いウエイトが後退し、その後可動部前進時にウエイトの前進を同調させることにより、僅かなウエイトの移動でも実銃のようなリコイルショックを体感できるように図っている。リコイルショックはばねが強ければ早い方にずれ、弱ければ遅れる方にずれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、ピストンシリンダーの可動部とウエイトとを別体にしてウエイトをリコイルばねにより駆動するので、ピストン重量を増さなくても増したのと同等のリコイルショックを得ることができ、しかも玩具銃の外観を損うことがないという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1ないし図4は本発明を適用した玩具銃10の例1を示すもので、電動の発射部を有するいわゆる電動ガンの構成を備えている。例示のピストンシリンダー装置11は固定されたシリンダー12とその内部を摺動するピストン13を有しており、ピストン13が可動部であり、このピストン13は、機関室後壁に支えられたピストンばね14によって前方へ弾発されている。
【0015】
ここで電動の発射部について簡単に説明しておく。例示の発射部は、ピストン下部に前後方向に設けたラック15を有し、それに噛み合う歯部と早戻りのための無歯部とから成るセクターギヤ16の1回転でピストンの後退(蓄圧)と、前進(蓄圧の解放によるエアの圧縮)を行うもので、セクターギヤ16は減速歯車組を介してモーター17により駆動される。モーター17は、引き金18を引く操作によって切り換わるスイッチ19によりオンオフされる。セクターギヤ16にはピン21が側方へ向けて植設され、それとの係合によって所要寸法後退する係合部22を有するシア23がシリンダー前方へ伸びていて、シリンダー12の前端のノズル24を、一時的に後退させ、弾丸25を装弾部26へ1発ずつ供給することができるようになっている。これらのピストンシリンダー装置11、電動発射部、装弾部26は機関部20を構成する。
【0016】
図1ないし図4に示す小銃型の玩具銃10において、本発明に係るリコイルショック装置30は可動部であるピストン13の移動軸線上かつピストン13の後方にほぼ一直線状に配置されている。即ち、可動部であるピストン13により後退方向へ移動させられるロッド状の連絡部31が、機関室後壁に設けられたスラスト軸受27に前進後退可能に設けられており、連絡部31の先端はピストン13に接触可能であり、連絡部31の後端はウエイト33の前部に形成されているガイド穴32に差し込まれている。連絡部31とウエイトとの間に介装される、弾性体34はガイド穴32の中に配置した小型のばねより成
り、ウエイト33に伝えられる力を受けて圧縮状態となるリコイルばね35がリコイルウエイト33を収めたケース36の内部後端部に配置されている。
【0017】
上記の構成を有する例1のリコイルショック装置30では、引き金18を引き、モーター17が回転し、ピストン13が後退を開始した時点では、ピストンばね14の他には何の抵抗も受けずに後退するが、ピストン13が連絡部31であるロッドに当たるようになると連絡部31は後退方向に抵抗を受けるようになる(図2)。しかし、連絡部31は後端にて弾性体34を圧縮し、その後さらに後退するとリコイルばね35の圧縮が始まり、圧縮限界においてウエイト33の荷重が銃本体の側37に伝わるようになる(図3)。圧縮限界を超えると、リコイルばね35は弾発力によって伸張に転じ、それによってウエイト33が前進し、その反作用が反動として射手に感じられることになる(図4)。このリコイルショックは引き金18を引いている間中、間欠的に発生する。
【0018】
図5、図6は本発明による装置40の例2を示すもので、ウエイト43を、機関部20の前方に装備されているスペース47の中に組み込んだ例である。この例2では、連絡部41は、一端49が、可動部であるピストン13により後退させられる位置に配置され、かつ係合可能な鉤状に形成されていて、他端48が、ウエイト43の前方に伸び、ガイド穴42の中に差し込まれた上、弾性体44を介してストッパーに接続されている。故に、ピストン13の後退方向の移動に伴う力は、ウエイト43を前方から後方へ押し、リコイルばね45を圧縮させることになる。例2のウエイト43は、例1のウエイト33がケース36内を摺動するのに対して、銃身46の外側に嵌挿され摺動する構成である。
【0019】
他の構成は例1の場合と同様であるので、例1の符号を援用して例2の装置40の作動を説明する。例2では、可動部であるピストン13の後退により、その後端が連絡部41の一端49と係合を生じると、ウエイト43を後退方向へ移動させ、リコイルばね45を圧縮させる状態になる(図6)。そしてリコイルばね45の圧縮限界を超えたのち、リコイルばね45は弾発力によって伸張に転じ、このリコイルばね45が圧縮され尽くして伸張に到る過程において、ウエイト43の移動の反作用が反動の衝撃となり射手に感じられるものとなる。
【0020】
図7、図8は本発明による装置50の例3を示すもので、ウエイト53を、機関部20の上方に備わっているスペース57の中に組み込んだ例である。例3では、連絡部51はその一端59が、可動部であるピストン13により後退させられる位置に配置され、かつ係合可能な鉤状に形成されていて、他端58が、ウエイト53の内部にて前後方向へ移動可能としたガイド穴52に入り込み、弾性体54を介してウエイト53を後退方向へ移動可能に設けている。ピストン13の後退方向への移動に伴う力はウエイト53を後方へ押し、リコイルばね55を圧縮可能とする。例3の場合、ウエイト53は、機関部上と銃本体内との間のスペース57の構成壁面若しくは同スペース57と同形にした収容部内にて前後方向へ摺動可能に設けられている。
【0021】
例3では、可動部であるピストン13の後退により、その後端が連絡部51の一端59と係合して抵抗を生じると、ウエイト53を後退方向へ移動させ、リコイルばね55を圧縮させる状態となる。リコイルばね55の圧縮限界を超えたのちリコイルばね55は弾発力によって伸張に転じ、このリコイルばね55の圧縮から伸張に到る過程において、ウエイト53の移動の反作用が反動の衝撃となり身体に体感されるものとなる。このリコイルショックのタイミングはリコイルばねの強弱によって調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ピストンシリンダー装置の可動部から伝えられる力に基因してウエイトを駆動することによるショックの増幅。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るリコイルショック装置を適用した玩具銃の1例を示す縦断面図。
【図2】同上の装置の例1のものの縦断面図。
【図3】同じくリコイルばねの圧縮状態を示す縦断面図。
【図4】同じくリコイルショックを生じている状態を示す縦断面図。
【図5】本発明装置を適用した玩具銃の例2を示す縦断面図。
【図6】同上装置のリコイルばねの圧縮状態を示す縦断面図。
【図7】本発明装置を適用した玩具銃の例3を示す縦断面図。
【図8】同上装置のリコイルばねの圧縮状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0024】
10 玩具銃
11 ピストンシリンダー装置
12 シリンダー
13 ピストン
14 ピストンばね
20 機関部
30、40、50 リコイルショック装置
31、41、51 連絡部
32、42、52 ガイド穴
33、43、53 ウエイト
34、44、54 弾性体
35、45、55 リコイルばね
37 銃本体の側
46 銃身
48、58 他端
49、59 一端




【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置における可動部の動作に基因してウエイトを駆動し、模擬的な反動を得るようにした装置であって、可動部により後退方向へ移動をさせられる連絡部を設けるともに、可動部により連絡部を介してウエイトに伝えられる力を受けて圧縮状態となるリコイルばねを設け、リコイルばねが圧縮されその後弾発力により伸張する際のウエイトの移動に伴う反作用が銃本体に伝達されるようにしたことを特徴とする玩具銃におけるリコイルショック装置。
【請求項2】
可動部と連絡部及びウエイトがほぼ一直線状に同順に配置されている請求項1記載の玩具銃におけるリコイルショック装置。
【請求項3】
連絡部は、その一部が可動部により後退させられる位置に配置されており、かつ可動部の移動軸線と平行に延びた連絡部の他の一部にてウエイトに連絡している請求項1記載の玩具銃におけるリコイルショック装置。
【請求項4】
連絡部とウエイトの間又はピストンと連絡部の間のどちらか一方又は両方に、連絡部の後退移動により圧縮状態となる弾性体を介装した構成を有する請求項2〜3記載の玩具銃におけるリコイルショック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−51851(P2007−51851A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239054(P2005−239054)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)