説明

玩具銃

【課題】圧縮ガスの噴出を制御するバルブを動かすボルトの構造を大きく改変することなく、ガス圧によって弾丸を発射する玩具銃の弾丸発射時及びブローバック時に強い衝撃を生じさせる。
【解決手段】バルブボディ122は、筒形状をなし、前方側でバレル113の後方側の端部に連通する。バルブボディ122は、内部に気室126を形成する。放出バルブ123は、バルブボディ122の内部に位置付けられる。放出バルブ123は、後方からボルト121に叩かれることでバレル113と気室126との連通を開閉する。ボルト121が前後にスライド移動すると、ボルト121の前方の第1の開口121gにはバルブボディ122が嵌り込む。ボルト121の筒部121hや閉口端121dには、ボルト121内の気体が流出入する第2の開口が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者がトリガを引くことによりボルトが移動し、ボルトがバルブを開いて圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスによる圧力で弾丸を発射する玩具銃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玩具銃の愛好者によって自宅内での的当て(プリンキング;plinking)などの遊戯目的で使用され、使用者がトリガを引くことによりボルトが移動し、ボルトがバルブを開いて圧縮ガスを噴出させ、この圧縮ガスによる圧力で弾丸を発射する玩具銃がある(例えば、特許文献1に記載の自動連射型玩具銃)。
【0003】
特許文献1に記載の自動連射型玩具銃は、オープンボルト式のものである。この自動連射型玩具銃における弾丸発射時の進退ボルト11の動きについて、概略的に説明する。進退ボルト11が銃の後方寄りの待機位置にあるもとでトリガ1が引かれると、リコイルスプリング27が進退ボルト11を押し、進退ボルト11に一体的に設けられたハンマ21が開閉弁部材51(バルブ)を殴打する。ハンマ21の殴打により、弾丸BBはガス圧を受けて銃身2における前端部側に向かう方向に加速し、銃から発射される。そして、銃身2から弾丸BBが発射された略直後において、蓄圧室50からのガス圧とリバウンドスプリング29の付勢力とによって、進退ボルト11は後退に転じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−197200号公報(段落番号0050〜0057、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
玩具銃の使用者の中には、玩具銃に対して、ただ弾丸を発射するのみならず、実銃に類する機能や使用感を求める者も多い。そして、銃身の前後方向に移動するボルトの動きに伴ってバルブが開閉し弾丸の充填及び発射がなされる玩具銃では、ボルトの移動により強い衝撃が発生し、実銃に近い使用感を得ることが可能である。ボルトが移動することで弾丸を発射する玩具銃は、ボルトが固定されている玩具銃よりも人気が高い。
【0006】
特許文献1に記載の玩具銃は、ボルトが前進してバルブを叩打することによってバルブを開放して弾丸を発射し、次いで、ボルトが後退した後にバルブが閉鎖されるものである。この玩具銃は、前述のように実銃に近い使用感を得られるものである。もっとも、この玩具銃の場合、ハンマとバルブと弾丸とが一直線上には位置しない。しかるに、ハンマとバルブと弾丸とが一直線上に存在するのであれば、弾丸発射機構はより小型化できるし、より効率的にガス圧を弾丸に与えることができるはずである。そこで、特許文献1記載の自動連射型玩具銃とは別に、ハンマとバルブと弾丸とが略一直線上に存在するオープンボルト式の玩具銃が考えられる。
【0007】
この仮想事例の玩具銃は、可動式のボルトを備える。このボルトは、その後方部分に空気またはガスが流入する空間(可変容積圧力室)を有する。この可変容積圧力室は、弾丸の発射後にガスが流入する空間である。この可変容積圧力室に流入したガスは、その圧力によって、ボルトを後方に押す。そして、可変容積圧力室にガスが満たされている間、ガスはボルトを後方に押し続ける。つまり、上記ボルトは弾丸発射後に後退する。そして、このボルトは、最後退位置に到達する直前に、バルブボディから離反する。これにより、ボルト内の気密が解け、可変容積圧力室の中にあるガスが大気に排出される。その結果、可変容積圧力室内のガスの圧力が弱まる。
【0008】
このため、仮想事例の玩具銃では、可変容積圧力室を形成する有底筒状部が長いほど、ボルトがガスから圧力を受け続ける時間が長くなり、その結果、仮想事例の玩具銃が使用者に与えるリコイルショックも大きくなる。
【0009】
しかしながら、有底筒状部が長いほど、ボルトが有底筒状部に嵌合してからハンマを殴打するまでの移動距離が長くなる。その結果、有底筒状部内の空気があたかも緩衝材(エアクッション)のように機能して、ボルトがハンマを殴打する衝撃が弱くなってしまう。ここで、有底筒状部内の空気の圧力を調整するための機構をボルトに設けようとすると、ボルトの構造が複雑になってボルトのスライド移動に支障が出るおそれがあり、改造コストも増大する。
【0010】
本発明の目的は、圧縮ガスの噴出を制御するバルブを動かすボルトの構造を大きく改変することなく、ガス圧によって弾丸を発射する玩具銃の弾丸発射時及びブローバック時に強い衝撃を生じさせることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の玩具銃は、銃身の前後方向に延びるバレルと、銃身の前後方向に延びる筒形状をなして内部に圧縮ガスで充満される気室を形成し、前方側で前記バレルの後方側の端部に連通し、後方側に銃身の前後方向に貫通する貫通孔を有するバルブボディと、前記バルブボディの内部に位置付けられ、前記バレルと前記気室との連通を閉止する閉位置と前記閉位置よりも前方寄りであって前記バレルと前記気室との連通を開放する開位置との間で変位自在に設けられる放出バルブと、前記放出バルブを後方に押し前記閉位置に位置付ける放出バルブスプリングと、銃身の前後方向にスライド自在に設けられ、前方に第1の開口を形成し、前記第1の開口よりも後方に第2の開口を形成し、前記第1の開口から前記バルブボディの後方側外周を嵌合させる嵌合受け部と、前記第1の開口に対面する前記嵌合受け部の底部に設けられる当接部とを有し、前記当接部を前記放出バルブに当接させ当該放出バルブを前記開位置に位置付ける押圧位置と、この押圧位置よりも後方で前記当接部を前記放出バルブから離反させる後退位置との間で変位するボルトと、前記ボルトを前方に押すボルトスプリングと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の開口にバルブボディを嵌合させた状態でボルトが前進すると、嵌合受け部内の空気は第2の開口を通って外部に排出され、ボルトが放出バルブを押すときの衝撃が弱まらない。また、弾丸発射後、圧縮ガスがボルトの嵌合受け部内に急激に流入してボルトの底部を押し、ボルトは十分な速度で後退する。このため、圧縮ガスの噴出を制御するバルブを動かすボルトの構造を大きく改変することなく、ガス圧によって弾丸を発射する玩具銃の弾丸発射時及びブローバック時に強い衝撃を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態における、玩具銃の左側面図である。
【図2】玩具銃の内部構造を示す左断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】放出バルブがバレルと気室との連通を閉止している状態を示す左側面図である。
【図5】放出バルブがバレルと気室との連通を開放している状態を示す左側面図である。
【図6】ボルトの左断面図である。
【図7】当接部が放出バルブの摺動突起に当接した状態のボルトの左断面図である。
【図8】図2に続いて、ボルトが前方に移動した状態の玩具銃の内部構造を示す左側面図である。
【図9】図8に続いて、弾丸が発射された直後の玩具銃の内部構造を示す左側面図である。
【図10】図9に続いて、ボルトが後退した状態の玩具銃の内部構造を示す左側面図である。
【図11】第2の実施の形態における、ボルトの左断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の一形態を、図1ないし図10に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第1の実施の形態と呼ぶ。本実施の形態は、連射方式の玩具銃への適用例である。
【0015】
図1は、玩具銃101の左側面図である。本実施の形態の玩具銃101は、ガスボンベ102を取り付けて用いる連射方式の玩具銃である。この玩具銃101は、ガスボンベ102に封入された圧縮ガスの圧力を弾丸Bに与えて、弾丸Bを銃口103から発射する。使用者は、玩具銃101を使用する場合、掌でグリップ104を握ってトリガ105に指をかけ、銃口103を射撃対象物(例えば、的)に向ける。そして、使用者は、指を動かしてトリガ105を玩具銃101の後方側に引くことで、銃口103から弾丸Bを発射させることができる。
【0016】
図2は、玩具銃101の内部構造を示す左断面図である。以下の説明において、銃口103がある側を玩具銃101の前方側と呼ぶ。また、グリップ104がある側を玩具銃101の後方側と呼ぶ。
【0017】
まず、玩具銃101の前方部分に備わる各部について説明する。玩具銃101は、筐体をなすフレーム111と、マガジン112と、バレル113とを備える。本実施例では、フレーム111は、銃身の一部をなし、玩具銃101の前後方向を規定する。また、マガジン112とバレル113とは、フレーム111から、玩具銃101の前方に突出している。もっとも、マガジン112およびバレル113は、フレーム111から突出せずに内部に設けられていてもよい。
【0018】
マガジン112は、一端が閉口端112aとなっている円筒状の部材で、内部に弾丸Bを格納可能である。マガジン112の内部で閉口端112aの内側面には、マガジンスプリング112bが取り付けられる。閉口端112aとは反対側になるマガジンスプリング112bの端部には、弾丸Bを押すマガジンフォロワ112cが取り付けられる。弾丸Bは、マガジン112の開口端112dからマガジン112の内部に導入される。もっとも、マガジン112の開口端112d以外の適宜の箇所に開口部を設け、その開口部から弾丸Bを導入することも可能である。弾丸Bを収納した状態のマガジン112は、開口端112dを玩具銃101の後方に向けた状態で、フレーム111の前方側に装着される。マガジン112は、フレーム111に着脱自在とすることも可能であるし、固定して設けることも可能である。
【0019】
バレル113は、円筒状の部材であり、銃身の前後方向に延びている。バレル113の前端は、銃口103である。このバレル113の内径は、弾丸Bの直径よりもわずかに大きい。バレル113は、フレーム111の前方側でマガジン112の下方に位置する。
【0020】
バレル113における銃口103とは反対側の開口端103aからは、弾丸連絡通路190が延びる。弾丸連絡通路190は、銃身の前後方向に直線上に延びる。弾丸連絡通路190の後端は、放出バルブ123の内部空間に連通する(図4も参照)。
【0021】
マガジン112の後端(開口端112d側)からは、弾丸落下通路191が延びる。弾丸落下通路191は、弾丸連絡通路190に合流する。マガジン112内の弾丸Bは、マガジンフォロワ112cに押されて開口端112dから押し出され、弾丸落下通路191内を自然落下し、弾丸連絡通路190内でマガジン112の開口端112dに対面する位置に到達する。この状態で放出バルブ123(後述)が圧縮ガスを前方に噴出すると、ガス圧によって給弾ノズル192(図4に基づいて後述)が前進して弾丸Bの後面を押し、さらに給弾ノズル192の内部空間を通過した圧縮ガスが弾丸Bの後面を押す。その結果、弾丸Bは、給弾ノズル192内を通過する圧縮ガスによって前方に押し出され、バレル113の内部を通過し、銃口103から前方に飛び出す(図9参照)。
【0022】
次いで、玩具銃101の中腹に備わる各部について、図2に基づいて説明する。玩具銃101は、フレーム111の内部に、ボルト121と、バルブボディ122と、放出バルブ123と、ボルトスプリング124と、パッキン122cと、放出バルブスプリング129とを備える。
【0023】
ボルト121は、玩具銃101の前後方向に延びる筒状の部材である。このボルト121は、玩具銃101の前後方向にスライド自在に設けられていて、押圧位置121A(図5参照)と後退位置121B(図4参照)との間を往復できるようになっている。このボルト121は、前後方向に一往復する間に放出バルブ123に当接及び離反して、バレル113と気室126(後述)との連通を開閉する。
【0024】
ボルト121は、前方に開く第1の開口121gを有する。ボルト121は、後方に、第1の開口121gに対面する底部をなす閉口端121dを有する。そして、ボルト121は、後方に嵌合受け部121iを有する。嵌合受け部121iは、第1の開口121gと閉口端121dを両端に持ち、側面(筒部121h)が筒状に覆われている。この嵌合受け部121iには、第1の開口121gから、バルブボディ122の後方側外周が嵌合する。
【0025】
ボルトスプリング124の一端は、ボルト121の閉口端121dの外側面に当接する。ボルトスプリング124の他端は、フレーム111の後部内側面111bに当接する。ボルトスプリング124は、後退位置121B(図4も参照)に位置付けられているボルト121を前方に押す。ボルトスプリング124がボルト121を前方に押す。ボルト121は、スライド移動し前方まで到達した後、貫通孔122bと摺動突起123bとの間の空隙S(後述)を通過する圧縮ガスの圧力を受けて後方に進む。ボルト121は、このような前進と後退とを繰り返す往復運動をする。
【0026】
ボルト121は、係止突起121fを有する。係止突起121fは、ボルト121の閉口端121d側の下面から下方に延出する。また、ボルト121は、上面から上方に突出する凸部121aを有する。
【0027】
ボルト121は、閉口端121dの内面側に、当接部121eを有する。当接部121eは、バルブボディ122の後端にある嵌合孔122f(次に述べる)に嵌合する。
【0028】
バルブボディ122は、銃身の前後方向に延びる筒状の部材であり、その内部に圧縮ガスで充満される気室126を形成する。このバルブボディ122の外径は、ボルト121の内径よりも小さい。バルブボディ122は、第1の開口121gからボルト121に入りこみ、このボルト121の内部で前後方向にスライド自在となる。バルブボディ122の内空間で玩具銃101の前方領域には、放出バルブ123(後述)が前方にスライド移動するための空間122gが確保されている。
【0029】
バルブボディ122は、後蓋122aを後端に有する。後蓋122aの前方を向く端面には、リング状のパッキン122cが取り付けられている。この後蓋122aは、貫通孔122bを有する。貫通孔122bは、銃身の前後方向に貫通して、バルブボディ122の外部と放出バルブ123の内部とを連通する。貫通孔122bの後方は、内径が大きい嵌合孔122fとなっている。嵌合孔122fには、バルブボディ122の外部から、ボルト121に備わる当接部121eが嵌合する。また、貫通孔122bに対しては、バルブボディ122の内部側から、放出バルブ123に備わる摺動突起123b(後述)が入り込む。この摺動突起123bは、嵌合孔122f側に突出する。
【0030】
図3は、図2のA−A線断面図である。この摺動突起123bは、後蓋122aの貫通孔122bに入り込むことができる形状を有する。摺動突起123bは、貫通孔122bに入りこむと、この貫通孔122bの内周面との間に、空隙Sを形成する。
【0031】
図2を再び参照する。バルブボディ122は、ガス導入部122dを有する。ガス導入部122dは、バルブボディ122の下面から下方に突出している。ガス導入部122dは中空になっていて、バルブボディ122の内空間とフレーム111よりも外側の空間とを連通している。このガス導入部122dは、フレーム111の内底面111aに設けられた装着孔111cに嵌合する。その結果、ガス導入部122dの先端122eは、フレーム111の下方に突出する。ガスボンベ102(図2では図示せず)は、このガス導入部122dの先端122eに取り付けられる。そして、ガスボンベ102は、このガス導入部122dを介して気室126(後述)に圧縮ガスを送り込む。
【0032】
図4は、放出バルブ123がバレル113と気室126との連通を閉止している状態を示す左側面図である。図4中、ドット領域は、圧縮ガスで満たされている領域を示す。放出バルブ123は、筒状の部材であり、前方の端面は開口している。放出バルブ123の外径は、バルブボディ122の内径よりも小さい。この放出バルブ123は、バルブボディ122の内部に位置付けられて、バルブボディ122と放出バルブ123との間に気室126を形成する。
【0033】
放出バルブ123は、後端領域に、フランジ部123aと、摺動突起123bとを有する。フランジ部123aは、放出バルブ123の外周から放射方向に突出する。摺動突起123bは、放出バルブ123の後方の端面から突出する。
【0034】
放出バルブ123は、連通路123cを有する。連通路123cは、放出バルブ123の内部空間の延びる方向に対して傾斜している筒状の空間である。連通路123cの一端は、放出バルブ123の内部空間に連なる。連通路123cの他端の開口部は、フランジ部123aと摺動突起123bとの間に現れる。
【0035】
放出バルブ123の外周でその前端領域には、Oリング127とワッシャ128とが取り付けられる。Oリング127は、ワッシャ128とバルブボディ122の内壁とに挟まれる。ワッシャ128は、Oリング127の後方に隣接して位置付けられる。ワッシャ128の後方の面には、放出バルブスプリング129の一端が接触する。放出バルブスプリング129は、放出バルブ123の外周に巻きつくように配置される。放出バルブスプリング129の他端は、フランジ部123aに接触する。放出バルブスプリング129は、ワッシャ128を押してOリング127をバルブボディ122の内壁に押し付けている。また、放出バルブスプリング129は、放出バルブ123のフランジ部123aを後方に押してこのフランジ部123aをパッキン122cに押し付け、放出バルブ123を閉位置123Aに位置付ける。このとき、気室126は気密になる。この状態では、ガス導入部122dから気室126に導入されたガスは、バルブボディ122の前後から漏れない。
【0036】
放出バルブ123の内部空間には、給弾ノズル192と給弾ノズルスプリング193とが設けられる。給弾ノズル192は、筒状の部材である。給弾ノズル192の前端の外径は、バレル113の内径及び弾丸連絡通路190の内径のいずれよりも小さい。給弾ノズル192の後端には、給弾ノズルフランジ部192aが設けられる。給弾ノズルフランジ部192aは、放出バルブ123の内周面に摺動自在に接触する。給弾ノズルスプリング193は、給弾ノズル192の外周に巻き付くように配置される。給弾ノズルスプリング193の他端は、空間122gを形成する係止段部194に接触する。また、給弾ノズルスプリング193の一端は、給弾ノズルフランジ部192aに接触し、給弾ノズルフランジ部192aを抜止突起192bに押し付ける。ここで、抜止突起192bとは、放出バルブ123の内部空間と連通路123cとの境界に位置し、放出バルブ123の内側に突出する部分である。抜止突起192bと給弾ノズルフランジ部192aの端面との間には、圧縮ガスが入り込む空隙Vが形成される。
【0037】
図4において、ボルト121は、玩具銃101の後方の後退位置121Bに位置付けられている。この後退位置121Bとは、当接部121eを放出バルブ123の摺動突起123bから離反させるようなボルト121の位置である。このとき、放出バルブ123は放出バルブスプリング129によって後方に押されている。
【0038】
図5は、放出バルブ123がバレル113と気室126との連通を開放している状態を示す左側面図である。図5中、矢印は、圧縮ガスの動きを示す。図5において、ボルト121は、玩具銃101の前方の押圧位置121Aに位置付けられている。押圧位置121Aとは、当接部121eを放出バルブ123の摺動突起123bに当接させて、放出バルブ123を前方に押すようなボルト121の位置である。このとき、放出バルブ123は前方に動いて放出バルブ123と気室126の連通を開放させる開位置123Bに位置付けられる。ボルト121が開位置123Bに位置付けられると、ボルト121の当接部121eが嵌合孔122fに入り込み、摺動突起123bを前方に押す。これにより、放出バルブ123はバルブボディ122内部の空間122gに向けてスライドする。その結果、フランジ部123aは、パッキン122cから離反する。
【0039】
気室126に満たされた圧縮されたガスは、図5中の矢印に示すように、フランジ部123aとパッキン122cとの間に形成された隙間から放出バルブ123の内部空間に流入する。流入した圧縮ガスの一部は、空隙Vに入り込んで給弾ノズルフランジ部192aにあたり、給弾ノズル192を前進させる。給弾ノズル192は、その前端で弾丸連絡通路190(図4参照)内に位置する弾丸B(図4参照)の後面を押して、この弾丸Bをバレル113(図4参照)に嵌め込む。また、放出バルブ123の内部空間に流入した圧縮ガスの別の一部は、給弾ノズル192の内部空間を通過して弾丸連絡通路190に噴出し、弾丸Bを前方に押し出す。
【0040】
また、フランジ部123aとパッキン122cとが離反すると、圧縮ガスは、図5中の矢印に示すように、空隙Sにも入り込んで貫通孔122bを通過する。この圧縮ガスは、ボルト121の当接部121eやボルト121の閉口端121dにあたって、ボルト121を後方に押す。
【0041】
放出バルブ123が前方に動くと、放出バルブスプリング129は放出バルブ123を後方に押し返す。これにより、放出バルブ123が後方にスライドし、フランジ部123aがパッキン122cに密接する。その結果、気室126は再び気密になる。気密になった状態で、気室126は、ガスボンベ102から供給された圧縮ガスで満たされる。
【0042】
図2を再び参照する。次いで、玩具銃101の後方部分に備わる各部について説明する。玩具銃101は、トリガ105と、トリガスプリング131と、ボルトシア132と、ボルトシアスプリング133とを備える。
【0043】
トリガ105は、グリップ104(図2では図示せず)の前方に位置する。トリガ105は、支点105aを中心に回動自在にフレーム111に支持される。支点105aによって、トリガ105は、弾丸を発射するための発射位置105A(一点鎖線で示すトリガ105の位置)と非発射位置105B(実線で示すトリガ105の位置)との間で変位自在となっている。トリガ105は、支点105aから下方に延出する操作部105dを有する。また、トリガ105は、支点105aから玩具銃101の後方に延びる後方延出部105bを有する。後方延出部105bの上面には、ボルトシア押上部105cが上方に突出する。
【0044】
トリガスプリング131は、操作部105dの後方に位置する。トリガスプリング131は、フレーム111に取り付けられている。トリガスプリング131は、トリガ105を時計回りに押し、発射位置105Aに位置付けられたトリガ105を非発射位置105Bに押し戻す。操作者が指で操作部105dを後方に引くと、トリガ105は発射位置105Aに位置付けられる。その後、操作者が操作部105dから指を離すと、トリガ105は非発射位置105Bまで変位する。
【0045】
ボルトシア132は、ボルトシア押上部105cの上方かつボルト121の下方で、これらに挟まれる位置に設けられている。ボルトシア132は、軸芯132aを中心に回動自在にフレーム111に取り付けられる。ボルトシア132は、平板状の前方突出部132bと、側面視扇形形状に広がる後方突出部132cとを有する。前方突出部132bは、軸芯132aよりも前方に突出している。後方突出部132cは、軸芯132aよりも後方に突出する。後方突出部132cの上方は、ボルト121の係止突起121fを止めるストッパ部132dとなる。後方突出部132cの下面には、ボルトシアスプリング133が当接する。ボルトシアスプリング133は、ボルトシア132を反時計回りに回動させる。このようなボルトシア132において、ボルトシア押上部105cが前方突出部132bの下面を押し上げると、ストッパ部132dは下方に変位し、ボルトシア132は許容位置132A(一点鎖線で示すボルトシア132の位置)に位置付けられる。この許容位置132Aとは、ボルト121の係止突起121fの移動軌跡から離れてボルト121の前後方向の往復運動を許容する位置である。一方、ボルトシア押上部105cがボルトシア132から離反すると、ボルトシアスプリング133によってストッパ部132dが上方に変位し、ボルトシア132は阻止位置132B(実線で示すボルトシア132の位置)に位置付けられる。この阻止位置132Bとは、ボルト121の係止突起121fの移動軌跡に干渉して、ボルト121の往復運動を阻止する位置である。
【0046】
ボルト121の構造について、さらに詳細に説明する。図6は、ボルト121の左断面図である。図7は、当接部121eが放出バルブ123の摺動突起123bに当接した状態のボルト121の左断面図である。なお、図7は、放出バルブ123が前方に動き出す直前の状態を示していて、フランジ部123aはパッキン122cから離れていない。以下、図6及び図7を参照して説明する。ボルト121の筒部121hには、第2の開口195が設けられる。第2の開口195は、嵌合受け部121iの内部とボルト121の外部とを連通して、気体の流路Uを形成する。
【0047】
ボルト121は、ボルトスプリング124に押されて直線状に玩具銃101の前方にスライド移動する。これにより、当接部121eは、貫通孔122bの一部をなす嵌合孔122fに入り込み、摺動突起123bに接触する(図7)。
【0048】
前述した図5は、図7に続いて、当接部121eが放出バルブ123の摺動突起123bを前方に押し、フランジ部123aがパッキン122cから離れた状態を、左側面視断面視で示している。気室126内に充満した圧縮ガスは、図5中の矢印のように、空隙Sを通って後方に流れ、当接部121eやボルト121の閉口端121dを後方に押す。これにより、ボルト121の動きは前進から後退に転じる。
【0049】
使用者が玩具銃101を使用した場合の各部の動きを、図2、図8ないし図10に基づいて説明する。まず、図2を参照する。玩具銃101を使用する使用者は、バレル113が水平となるように玩具銃101を持つ。これにより、マガジン112内の弾丸Bは自然落下して、弾丸連絡通路190内でマガジン112の開口端112dに対面する位置に到達する。
【0050】
続いて、使用者は、凸部121aを玩具銃101の後方に引く操作を行う。図2は、このようにしてボルト121が後方に位置付けられた状態の玩具銃101の内部構造を示している。ボルト121が後退する途中で、ボルト121の係止突起121fはボルトシア132のストッパ部132dの上面に当接し、このストッパ部132dを乗り越える。係止突起121fがストッパ部132dを乗り越えると、ボルトシア132はボルトシアスプリング133の弾性力によって反時計回りに回る。ここで、ボルト121はボルトスプリング124の弾性力によって玩具銃101の前方に移動しようとする。しかし、ボルト121の係止突起121fは、ストッパ部132dに引っかかって、それ以上前方に進まない。
【0051】
この状態で、使用者がトリガ105を後方に引くと、トリガ105は反時計回りに回動し、ボルトシア押上部105cがボルトシア132の前方突出部132bを上方に変位させて、ボルトシア132を時計回りに回動させる。これにより、ボルト121の係止突起121fとボルトシア132のストッパ部132dとの係止状態が解除される。その後、ボルト121は、ボルトスプリング124に押されて前方に進む。
【0052】
図8は、図2に続いて、ボルト121が前方に移動した状態の玩具銃101の内部構造を示す左側面図である。図9は、図8に続いて、弾丸Bが発射された直後の玩具銃101の内部構造を示す左側面図である。ボルト121が前方に移動すると、当接部121eは後蓋122aの嵌合孔122fに入り込み、放出バルブ123の摺動突起123bを前方に押す。これにより、フランジ部123aはパッキン122cから離れる。ここで、圧縮ガスは、フランジ部123aとパッキン122cとの間の隙間から放出バルブ123の内部空間に入り込み、給弾ノズル192を前方に押す。さらに、圧縮ガスは、給弾ノズル192の内部空間を通って前方に抜ける。これにより、弾丸連絡通路190内の弾丸Bの後面は、圧縮ガスと給弾ノズル192の前端とに押され、バレル113内を通過して銃口103から発射される。弾丸Bが発射された後、別の弾丸Bがマガジン112から弾丸連絡通路190に供給される(図10参照)。
【0053】
ここで、ボルト121が前方に移動する場合、嵌合受け部121iと後蓋122aとに囲まれた空間SP内の空気は、第2の開口195を通ってボルト121の外部に排出される。ボルト121は、ボルト121が前方に移動している間で第2の開口195がバルブボディ122により塞がれるまでは、空間SP内の空気によって減速されることなく、素早く摺動突起123bを押圧する。その後、バルブボディ122が第2の開口195を塞ぐ位置までボルト121が前方に移動すると、流路Uは遮断される。
【0054】
図10は、図9に続いて、ボルト121が後退した状態の玩具銃101の内部構造を示す左側面図である。ボルト121は、空隙Sを通って空間SP内に流入した圧縮ガスに当接部121eや閉口端121dを押されて後方に移動する。このとき、流路Uが遮断されていると、嵌合受け部121iと後蓋122aとに囲われた空間SPに流入した圧縮ガスは、全て、ボルト121を後方に押す動力となる。そして、ボルト121が所定距離だけ後方に移動すると、再び流路Uが確保される。しかしながら、圧縮ガスは空間SP内に急激に流入し閉口端121dは大きな力で押される。このため、ボルト121は十分な速度で後退する。そして、玩具銃101の使用者は、後退するボルト121から強い衝撃を体感することができる。また、給弾ノズル192は、給弾ノズルスプリング193によって押され、抜止突起192bに当接するまで後方に移動する。
【0055】
使用者がトリガ105を後方に引いている間、ボルトシア押上部105cは、ボルトシア132の前方突出部132bを押し上げている。このため、ボルトシア押上部105cのストッパ部132dは、下方に下がったままになる。これにより、ボルト121は、ボルトシア132に止められることなく、後退しきってからボルトスプリング124に押されて前進に転じる。このようにして、ボルト121は、ボルトスプリング124の弾性力及び圧縮ガスの圧力を受けて往復運動し、一往復する間に放出バルブ123に当接及び離反して、バレル113と気室126との連通を開閉する。そして、玩具銃101では、図2、図8〜図10に示す動きが繰り返されて、銃口103から弾丸Bが立て続けに発射される。
【0056】
このように、本実施の形態の玩具銃101によれば、第1の開口121gにバルブボディ122を嵌合させた状態でボルト121が前進すると、嵌合受け部121i内の空気は第2の開口195を通って外部に排出され、ボルト121が放出バルブ123を押すときの衝撃が弱まらない。また、弾丸Bの発射後、圧縮ガスがボルト121の嵌合受け部121i内に急激に流入してボルト121の底部(閉口端121d)を押し、ボルト121は十分な速度で後退する。このため、圧縮ガスの噴出を制御する放出バルブ123を動かすボルト121の構造を大きく改変することなく、ガス圧によって弾丸Bを発射する玩具銃101の弾丸発射時及びブローバック時に強い衝撃を生じさせる。
【0057】
発明者は、本実施の形態の玩具銃101を摂氏10度〜35度の条件下で用い、以下のような知見を得た。この場合、嵌合受け部121iは、円筒形状であり、その直径t(図6参照)は15.4mm(断面積186.17mm)であり、その深さd(図6参照)は22.5mmであり、その容積は、4190.963mm(但し、当接部121eの占める容積を除く)である。また、第2の開口195は円形で、ボルト121の内底面(閉口端121dの前方側の面)から距離p(図6参照)が2.5mmの箇所に設けられる。また、当接部121eは円柱状をなし、その軸心は閉口端121dの中心点を通過している。当接部121eの直径s(図6参照)は6.0mmである。当接部121eの高さq(図6参照)は8.55mmである。当接部121eが嵌合受け部121i内で占める容積は、241.746mmである。また、圧縮ガスとしては、炭酸ガスを用いた。なお、当接部121eが嵌合孔122fに嵌合し摺動突起123bに当接するときの後蓋122aと閉口端121dとの離間距離m(図7参照)は1.0mmである。このときの空隙Sは、図7のB−B線で断面視するとリング状に見える。このリングの幅、すなわち、当接部121eの側面と嵌合孔122fの内側面との離間距離l(図7参照)は、0.7mmである。
【0058】
発明者は、第2の開口195の直径を各種の値に変化させて101の使用感を確認し、以下のような結果を得た。
第2の開口195の直径(開口面積) 使用感
1.5mm(1.77mm) 不適
2.0mm(3.14mm) 適
2.5mm(4.91mm) 不適
詳細を述べると、第2の開口195の直径が2.0mmである場合、玩具銃101では、弾丸発射時及びブローバック時のいずれにおいても良好な使用感が得られた。また、第2の開口195の直径が1.5mmである場合、銃口103から弾丸Bが発射するものの、ボルト121が前進するときの第2の開口195からの空間SP内の空気の排出が良好ではなく、空間SP内の空気によってボルト121の前進速度が低下した。また、第2の開口195の直径が2.5mmである場合、銃口103から弾丸Bが発射するものの、ボルト121の後退時(ブローバック時)に圧縮ガスが第2の開口195から多く漏れ、閉口端121dは圧縮ガスの圧力を十分に受けられず、ボルト121の後退速度が低下した。
【0059】
そして、上記の知見より、ボルト121の内底面(閉口端121dの前方側の面)からの距離pが2.5mmよりも小さい後方側の位置に第2の開口195を設けると、ボルト121の移動(弾丸発射及びブローバック)の際に流路Uが遮断される時間が更に短くなり、玩具銃101の使用感が一層向上することが推測される。
【0060】
次いで、別の実施の一形態を、図11に基づいて説明する。本実施の形態を、説明の便宜上、第2の実施の形態と呼ぶ。この場合、第1の実施の形態と同一の部分には同一の符号を用い、説明も省略する。図11は、ボルト121の左断面図である。本実施の形態では、第2の開口195’は、嵌合受け部121iの底部をなす閉口端121dに設けられる。この第2の開口195’によって、図12に示すような気体の流路Uが確保される。本実施の形態の玩具銃101によっても、ボルト121が放出バルブ123を押すときの衝撃が弱まらず、また、弾丸Bの発射後にボルト121は十分な速度で後退する。このため、圧縮ガスの噴出を制御する放出バルブ123を動かすボルト121の構造を大きく改変することなく、ガス圧によって弾丸Bを発射する玩具銃101の弾丸発射時及びブローバック時に強い衝撃を生じさせる。
【0061】
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態のいずれも、玩具銃101は連射方式のものであるが、別の実施の形態として、第2の開口195,195’は、単射方式の玩具銃にも、点射(バースト)方式の玩具銃にも適用できる。
【符号の説明】
【0062】
101 玩具銃
113 バレル
121d 閉口端(底部)
121e 当接部
121g 第1の開口
121i 嵌合受け部
121h 筒部(側部)
121A 押圧位置
121B 後退位置
122 バルブボディ
122b 貫通孔
123 放出バルブ
123A 閉位置
123B 開位置
124 ボルトスプリング
126 気室
129 放出バルブスプリング
U 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銃身の前後方向に延びるバレルと、
銃身の前後方向に延びる筒形状をなして内部に圧縮ガスで充満される気室を形成し、前方側で前記バレルの後方側の端部に連通し、後方側に銃身の前後方向に貫通する貫通孔を有するバルブボディと、
前記バルブボディの内部に位置付けられ、前記バレルと前記気室との連通を閉止する閉位置と前記閉位置よりも前方寄りであって前記バレルと前記気室との連通を開放する開位置との間で変位自在に設けられる放出バルブと、
前記放出バルブを後方に押し前記閉位置に位置付ける放出バルブスプリングと、
銃身の前後方向にスライド自在に設けられ、前方に第1の開口を形成し、前記第1の開口よりも後方に第2の開口を形成し、前記第1の開口から前記バルブボディの後方側外周を嵌合させる嵌合受け部と、前記第1の開口に対面する前記嵌合受け部の底部に設けられる当接部とを有し、前記当接部を前記放出バルブに当接させ当該放出バルブを前記開位置に位置付ける押圧位置と、この押圧位置よりも後方で前記当接部を前記放出バルブから離反させる後退位置との間で変位するボルトと、
前記ボルトを前方に押すボルトスプリングと、
を備える玩具銃。
【請求項2】
前記第2の開口は、前記嵌合受け部の側部の一部を貫通する、
請求項1記載の玩具銃。
【請求項3】
前記第2の開口は、前記嵌合受け部の底部の一部を貫通する、
請求項1記載の玩具銃。
【請求項4】
前記嵌合受け部の断面積が186.17mmであり、
前記第2の開口の開口面積が1.77mm以上4.91mm以下である、
請求項1から3のいずれか一に記載の玩具銃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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