説明

珊瑚育成用構造物

【課題】珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制すること。
【解決手段】この珊瑚育成用構造物1は、子珊瑚を移植する移植孔43fが設けられる珊瑚育成部8を備える。珊瑚育成部8はコンクリートで構成されており、ここに子珊瑚が移植され、海中で成長させる。珊瑚育成部8の少なくとも子珊瑚が移植される部分の周辺には、フッ素樹脂が塗布されて、被覆層3が形成される。この被覆層3によって、珊瑚の成育を妨げる藻類や貝類等の付着が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珊瑚の養殖に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、埋め立てや地球の温暖化に起因する海水温度の上昇等によって、珊瑚群集の白化や珊瑚の死滅といった珊瑚礁の衰退が問題となっている。このため、近年においては、珊瑚を人工的に養殖して、珊瑚礁を回復させる試みが提案されている。特許文献1には、海中の任意の深さに位置できる複数の浮体間に、珊瑚の付着する珊瑚養生棚を備える珊瑚養殖装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開11−32620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている珊瑚養殖装置では、珊瑚養生棚に藻類や貝類が付着して成長し、珊瑚養生棚に付着した珊瑚の光合成を阻害し、成育を妨げるという問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制できる珊瑚育成用構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る珊瑚育成用構造物は、子珊瑚を移植して海中に保持することにより、前記子珊瑚を育成する珊瑚育成部と、前記珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に設けられる被覆層と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この珊瑚育成用構造物は、珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に被覆層を設ける。これによって、珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制できる。
【0008】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記被覆層は、フッ素樹脂で構成されることを特徴とする。
【0009】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、被覆層をフッ素樹脂で構成する。これによって、子珊瑚の成育を妨げる生物の付着をより効果的に抑制できる。
【0010】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記被覆層は、前記珊瑚育成部に取り付けられる板状の被覆部材であることを特徴とする。
【0011】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、珊瑚育成部に取り付けられる板状の被覆部材で被覆層を構成する。これによって、珊瑚育成部に樹脂系の材料を塗布しにくい場合でも、板状の被覆部材を取り付けることによって、容易に子珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制できる。
【0012】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記被覆部材は、前記珊瑚育成部に着脱可能であることを特徴とする。
【0013】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、被覆部材を着脱可能とする。これによって、子珊瑚が十分に成育した後は、被覆部材を珊瑚育成用構造物から取り外して再利用できるので、経済的である。
【0014】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記珊瑚育成部には、前記子珊瑚を移植するための移植孔が設けられており、前記被覆部材は、少なくとも2の部材に分割されるとともに、前記移植孔上に前記被覆部材の分割部が位置することを特徴とする。
【0015】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、移植孔上に被覆部材の分割部が位置するようにしてあるため、被覆部材を容易に取り外すことができる。
【0016】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記被覆部材は、金属又はガラスであることを特徴とする。
【0017】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、被覆部材を金属又はガラスとする。これによって、子珊瑚の成育を妨げる生物の付着をより効果的に抑制できる。
【0018】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に水を流す、水流生成手段を備えることを特徴とする。
【0019】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、子珊瑚が移植される部分の周辺に水を流す水流生成手段を備える。これによって、子珊瑚の成育を妨げる生物の定着をより確実に抑制できる。
【0020】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、海面に向かって張り出す揺れ抑制手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、海面に向かって張り出す揺れ抑制手段を備える。これによって、珊瑚育成用構造物に移植された子珊瑚の動揺を低減できるので、子珊瑚の脱落等を抑制できる。
【0022】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記珊瑚育成部の近傍に海水の水流を発生させる水流発生手段を備えることを特徴とする。
【0023】
この珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、珊瑚育成用構造物の近傍に海水の水流を発生させる水流発生手段を備える。これによって、子珊瑚が移植される珊瑚育成用構造物の周辺には常に新鮮な海水が存在するようになるので、子珊瑚の成育悪化を抑制することができる。
【0024】
次の本発明に係る珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物において、前記珊瑚育成用構造物の底部には、海水が流通する通水路が設けられることを特徴とする。
【0025】
の珊瑚育成用構造物は、前記珊瑚育成用構造物の構成を備えるので、前記珊瑚育成用構造物と同様の作用、効果を奏する。さらにこの珊瑚育成用構造物は、海水が流通する通水路を、珊瑚育成用構造物の底部に備える。これによって、子珊瑚が移植される珊瑚育成用構造物の周辺には常に新鮮な海水が存在するようになるので、子珊瑚の成育悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る珊瑚育成用構造物は、珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
この実施形態は、子珊瑚を移植して海中に保持することにより子珊瑚を育成する珊瑚育成部を備え、この珊瑚育成部の少なくとも子珊瑚が移植される部分の周辺に、珊瑚の成育を阻害する生物の付着を抑制するための被覆層を設ける点に特徴がある。
【0029】
図1は、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物の構造を示す断面図である。コンクリートで構成された浮桟橋や防波堤等の沿岸構造物の表面には、珊瑚や海草、貝類等が付着して繁殖することが知られている。特に珊瑚の成育にとっては、水深が比較的浅く、太陽光がよく差し込む海域が適していることが分かっている。そこで、この実施形態においては、コンクリートが海水と接する部分に打設された浮力体に珊瑚を養殖する部分を設けて、珊瑚を養殖する。
【0030】
この珊瑚育成用構造物1は、浮力を発生して海上に浮かぶ浮力体である。なお、珊瑚育成用構造物1は、浮力体に限られるものではない。珊瑚育成用構造物1は、鋼板1SPをリブ1SRで補強して基本骨格を構成し、その外面に複数のジベル1SE、鉄筋1SCを配置した後、コンクリートを打設してコンクリート層2を形成して、浮力体として構成される。珊瑚育成用構造物1は、珊瑚の養殖用に用意して岸壁や海底に係留してもよいが、例えば、珊瑚育成用構造物1を浮桟橋等として用いてもよい。あるいは、浮桟橋等を利用して、海水と接する側面に珊瑚を養殖する部分を設けてもよい。
【0031】
ここで、珊瑚育成用構造物1を移動可能な浮力体として構成すると、海水温度が異常に上昇した場合には、浮体構造物ごと成育中の子珊瑚を適正な水温の海域に移動させることができる。また、台風等による暴風時には、浮体構造物ごと生育中の子珊瑚を港内に移動できるので、生育中における子珊瑚の破損等を最小限に抑えることができる。
【0032】
図2−1〜図2−3は、珊瑚の移植及び養殖の手順を示す説明図である。図2−1に示すように、親珊瑚から分割した珊瑚(以下子珊瑚)sを、例えば支持棒(アクリル製が好ましい)40に取り付けて成育させる。このようにして成育した子珊瑚cを、海中に置かれる被移植体(この実施形態では、珊瑚育成用構造物1のコンクリート層2、図1参照)に開口した移植孔43fに、支持棒40を介して移植する(図2−2)。そして、海中で所定期間成育させることにより、子珊瑚cは親珊瑚Cに成長する(図2−3)。
【0033】
図3−1、図3−2は、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物に設けた珊瑚の養殖部における珊瑚の成育状況を示す説明図である。図3−1に示すように、珊瑚育成用構造物1のコンクリート層2(例えば、浮桟橋の側壁等)には、移植孔43fが所定の間隔で開口している。これによって、珊瑚を成育させる部分(珊瑚育成部)8を形成する。この移植孔43fに、図2−1で示した子珊瑚cを、支持棒40を介して移植する(図3−1)。そして、養殖に適した海域の海中で、前記子珊瑚cを所定の期間成育させることによって、図3−2に示すように、子珊瑚cは親珊瑚Cに成長する。
【0034】
コンクリート層2には、珊瑚も付着しやすいが、藻類や貝類も付着しやすい。藻類や貝類が珊瑚育成部8に付着した場合、藻類が子珊瑚cの周りに生い茂ったり、貝類が子珊瑚cの周囲に密集したりして子珊瑚cの光合成を阻害し、子珊瑚cの成育を妨げる。このため、子珊瑚cが親珊瑚Cに成長するまでの間、珊瑚以外の藻類や貝類が珊瑚育成部8に極力付着しないようにする必要がある。
【0035】
そこで、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物1では、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に、硬質かつ表面が滑らかな被覆層を設ける。これによって、子珊瑚cの周囲に藻類や貝類が付着することを抑制できるので、子珊瑚cの成育が妨げられるおそれを低減できる。
【0036】
図4は、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物を示す説明図である。図5は、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物の珊瑚育成部における被覆構造を示す断面図である。上述したように、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物1は、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に、被覆層3を設ける。被覆層3は、例えば、フッ素樹脂やウレタン系の樹脂を用いることができる。特にフッ素樹脂は、硬度が高く、また撥水性も高く、さらに表面が滑らかである。このため、藻類や貝類が付着しにくくなって、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着が効果的に抑制でき、好ましい。フッ素樹脂やウレタン系の樹脂は、例えば、塗料として珊瑚育成部8に塗布する。
【0037】
被覆層3の厚さtは、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着を抑制できる範囲で、できる限り小さくすることが好ましい。これによって、被覆層3を形成するためのフッ素樹脂等の使用量を低減できる。なお、子珊瑚cが親珊瑚Cに成長するまでの期間、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着を抑制できればよい。したがって、前記期間、珊瑚育成部8に被覆層3が存在していればよいので、かかる観点から被覆層3の厚さtを決定してもよい。また、被覆層3を形成するフッ素樹脂等は、時間の経過とともに消耗するため、子珊瑚cが親珊瑚Cに成長するまでの期間前後に被覆層3がなくなるように、被覆層3の厚さtを決定してもよい。
【0038】
また、この実施形態に係る珊瑚育成用構造物1のように、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に水を流す、水流生成手段9を設けてもよい。水流生成手段9によって、定期的に珊瑚育成部8の移植孔43fの周辺に水を流すことで、珊瑚育成部8に付着した子珊瑚cの成育を妨げる生物が珊瑚育成部8に定着する前に、これを流し落とすことができる。これによって、珊瑚育成部8に対して、子珊瑚cの成育を妨げる生物の定着を抑制できるので、子珊瑚cの成育が妨げられるおそれをより効果的に低減できる。次に、珊瑚育成部8に被覆層3を形成する手順を説明する。
【0039】
図6−1は、珊瑚育成部に被覆層を形成する手順を示す説明図である。図6−2は、珊瑚育成部に被覆層を形成する手順を示すフローチャートである。ここでは、フッ素樹脂塗料を塗布して被覆層3を形成する場合を説明する。まず、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に下地処理をする(ステップS101)。これは、フッ素樹脂塗料をコンクリートの珊瑚育成部8に直接塗布することは困難であるためである。
【0040】
下地処理は、例えば、エポキシ樹脂の塗料等を塗布することにより、珊瑚育成部8の表面に下地層6を形成する。下地層6を形成したら、下地層6の表面にフッ素樹脂塗料を塗布して、被覆層3を形成する(ステップS102)。これによって、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に被覆層3を形成することができる。
【0041】
図7−1、図7−2は、この実施形態の変形例に係る珊瑚育成部の被覆層を示す説明図である。この変形例は、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に、板状の被覆部材を取り付けて被覆層を形成する点に特徴がある。この変形例においては、図7−1、図7−2に示すように、珊瑚育成部8の少なくとも移植孔43fの周辺に、被覆部材である金属板4を取り付ける。
【0042】
金属板4は、第1金属板4aと第2金属板4bとに分割されており、移植孔43f上に金属板4の分割部が位置するように、珊瑚育成部8に取り付けられる。また、第1及び第2金属板4a、4bは、締結手段であるボルト5によって、珊瑚育成部8へ着脱可能に取り付けられる。これによって、子珊瑚cが成長して親珊瑚Cになった場合には、金属板4を珊瑚育成部8から取り外して、他の珊瑚育成用構造物1に適用することができる。また、移植孔43f上に金属板4の分割部が位置するようにしてあるため、金属板4の取り外しが容易になる。
【0043】
被覆部材は海水に接しているため、被覆部材を金属材料で構成する場合は、例えば、チタン(Ti)やチタン化合物、ステンレス等といった、耐食性に優れた材料を用いることが好ましい。チタン及びチタン化合物を用いると、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着を効果的に抑制できるので好ましい。被覆部材に金属材料を用いる場合、海水と接触する面を、鏡面加工することが好ましい。このようにすれば、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着をより効果的に抑制できる。また、被覆部材をガラスで構成してもよい。このようにしても、子珊瑚cの成育を妨げる生物の付着を効果的に抑制できる。なお、被覆部材を接着して珊瑚育成部8に取り付けてもよい。次に、この実施形態の変形例に係る珊瑚育成用構造物1の変形例を説明する。
【0044】
図8〜図11は、この実施形態の変形例に係る珊瑚育成用構造物の変形例を示す説明図である。図8に示す珊瑚育成用構造物1aは、珊瑚育成用構造物1aから海面Sに向かって、揺れ抑制手段であるフィン25を張り出させる。これによって、珊瑚育成用構造物1aの近くを航行する船舶の引き波等による珊瑚育成用構造物1aの動揺を抑制できる。その結果、珊瑚育成用構造物1aに取り付けられる子珊瑚cの動揺を低減できるので、子珊瑚cの脱落等を抑制できる。
【0045】
図9に示す珊瑚育成用構造物1bは、珊瑚育成用構造物1bに水流発生手段26を備える。珊瑚育成用構造物1bの周辺、特に複数の珊瑚育成用構造物1bで囲まれた内側は、海水が滞りやすく、子珊瑚cの成育に影響を与えるおそれがある。この珊瑚育成用構造物1bでは、珊瑚育成用構造物1bに水流発生手段26を備えることにより、珊瑚育成用構造物1bの周辺における海水の交換が促進されて、珊瑚育成用構造物1bの周辺には常に新鮮な海水が存在するようになる。これによって、子珊瑚cの成育悪化を抑制することができる。
【0046】
図10、図11に示す珊瑚育成用構造物1cは、珊瑚育成用構造物1cに通水路27を備える。上述したように、珊瑚育成用構造物1cの周辺、特に複数の珊瑚育成用構造物1cで囲まれた内側は、海水が滞りやすく、子珊瑚cの成育に影響を与えるおそれがある。この珊瑚育成用構造物1cは、珊瑚育成用構造物1cの底部(すなわち重力の作用方向側)に通水路27を備えることにより、図11の矢印方向への海水の動きが生じ、珊瑚育成用構造物1cで囲まれた内側の領域と外側の領域とで海水の交換が促進される。これによって、珊瑚育成用構造物1cの周辺には常に新鮮な海水が存在するようになるので、子珊瑚cの成育悪化を抑制することができる。
【0047】
以上、この実施形態及びその変形例に係る珊瑚育成用構造物は、珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に被覆層を設ける。これによって、珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制できる。なお、この実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明に係る珊瑚育成用構造物は、珊瑚の養殖に有用であり、特に、珊瑚の成育を妨げる生物の付着を抑制することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この実施形態に係る珊瑚育成用構造物の構造を示す断面図である。
【図2−1】珊瑚の移植及び養殖の手順を示す説明図である。
【図2−2】珊瑚の移植及び養殖の手順を示す説明図である。
【図2−3】珊瑚の移植及び養殖の手順を示す説明図である。
【図3−1】この実施形態に係る珊瑚育成用構造物に設けた珊瑚の養殖部における珊瑚の成育状況を示す説明図である。
【図3−2】この実施形態に係る珊瑚育成用構造物に設けた珊瑚の養殖部における珊瑚の成育状況を示す説明図である。
【図4】この実施形態に係る珊瑚育成用構造物を示す説明図である。
【図5】この実施形態に係る珊瑚育成用構造物の珊瑚育成部における被覆構造を示す断面図である。
【図6−1】珊瑚育成部に被覆層を形成する手順を示す説明図である。
【図6−2】珊瑚育成部に被覆層を形成する手順を示すフローチャートである。
【図7−1】この実施形態の変形例に係る珊瑚育成部の被覆層を示す説明図である。
【図7−2】この実施形態の変形例に係る珊瑚育成部の被覆層を示す説明図である。
【図8】この実施形態2の変形例に係る珊瑚育成用構造物の変形例を示す説明図である。
【図9】この実施形態2の変形例に係る珊瑚育成用構造物の変形例を示す説明図である。
【図10】この実施形態2の変形例に係る珊瑚育成用構造物の変形例を示す説明図である。
【図11】この実施形態2の変形例に係る珊瑚育成用構造物の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b、1c 珊瑚育成用構造物
2 コンクリート層
3 被覆層
4 金属板
4a 第1金属板
4b 第2金属板
8 珊瑚育成部
9 水流生成手段
25 フィン
26 水流発生手段
27 通水路
40 支持棒
43f 移植孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子珊瑚を移植して海中に保持することにより、前記子珊瑚を育成する珊瑚育成部と、
前記珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に設けられる被覆層と、
を含むことを特徴とする珊瑚育成用構造物。
【請求項2】
前記被覆層は、フッ素樹脂で構成されることを特徴とする請求項1に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項3】
前記被覆層は、前記珊瑚育成部に取り付けられる板状の被覆部材であることを特徴とする請求項1に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記珊瑚育成部に着脱可能であることを特徴とする請求項3に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項5】
前記珊瑚育成部には、前記子珊瑚を移植するための移植孔が設けられており、
前記被覆部材は、少なくとも2の部材に分割されるとともに、前記移植孔上に前記被覆部材の分割部が位置することを特徴とする請求項4に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項6】
前記被覆部材は、金属又はガラスであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項7】
前記珊瑚育成部の少なくとも前記子珊瑚が移植される部分の周辺に水を流す、水流生成手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項8】
海面に向かって張り出す揺れ抑制手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項9】
前記珊瑚育成部の近傍に海水の水流を発生させる水流発生手段を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の珊瑚育成用構造物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の珊瑚育成用構造物の底部には、海水が流通する通水路が設けられることを特徴とする珊瑚育成用構造物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−110976(P2007−110976A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306392(P2005−306392)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506122246)三菱重工橋梁エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(504089758)株式会社シーピーファーム (10)
【Fターム(参考)】