説明

珪酸カルシウムの製造方法

【課題】石膏を原料とする珪酸カルシウムの製造方法において、廃棄物を有効利用する方法を提供する。
【解決手段】水性媒体中で石膏と珪酸アルカリとを反応させ、珪酸カルシウムを製造する製造工程、前記製造工程で得られた珪酸カルシウムと硫酸アルカリを含む水溶液とを分離する分離工程、前記分離工程で分離した水溶液中の硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させ、石膏を製造する石膏製造工程、及び前記石膏製造工程で得られた石膏を前記製造工程に循環する循環工程とを含む珪酸カルシウムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪酸カルシウムの新規な製造方法に関する。詳しくは、廃棄物を利用した珪酸カルシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
珪酸カルシウムは、その優れた性質から様々な用途に使用されている。例えば、高分子材料に配合されるフィラー、医薬・化粧品等の成形助剤、吸着担体及び土壌改良剤等に使用されている。中でも、花弁状の構造を有する珪酸カルシウム(以下、単に花弁状珪酸カルシウムとする場合もある)は、その構造上の特徴から、吸液特性、成形性に優れ、吸着担体、紙用填料等の用途に好適に使用されている。
【0003】
このような花弁状珪酸カルシウムの製造方法としては、水性媒体中で塩化カルシウム、硝酸カルシウム、石膏等のカルシウム原料と、珪酸アルカリとを反応させ、水熱処理を行う方法が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
これら製造方法の中でも、特許文献3には、火力発電所等から排出される排煙脱硫副生石膏を原料とすることが示されており、発電所や工場から排出される廃棄物を原料として有効利用する方法が示されている。更に、この特許文献3には、水熱処理時に使用した高温水を、再度、花弁状珪酸カルシウムの製造工程で使用することが示されており、該特許文献3に示された方法は、廃棄物の有効活用が図られた優れた方法である。
【0005】
近年、環境問題から、様々な物質の製造において、通常であれば廃棄されていたものを再利用することが重視されている。そのため、珪酸カルシウムの製造方法においても、上記特許文献3に示された方法よりも、更に、一段と廃棄物を少なくでき、廃棄物を有効利用できる珪酸カルシウムの製造方法が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−45115号公報
【特許文献2】特開昭55−85445号公報
【特許文献3】特開昭56−5317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、廃棄物を有効利用することができ、かつ、廃棄物の発生を低減することができることができる珪酸カルシウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を続けてきた。その結果、工場や廃棄物から回収されることが多い石膏を原料とし、更に、石膏を原料とした際、通常では廃棄されていた硫酸アルカリ、特に、硫酸イオン分に着目し、該硫酸イオン分を再度、石膏に変換することにより、上記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水性媒体中で石膏と珪酸アルカリとを反応させ、珪酸カルシウムを製造する製造工程、前記製造工程で得られた珪酸カルシウムと硫酸アルカリを含む水溶液とを分離する分離工程、前記分離工程で分離した水溶液中の硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させ、石膏を製造する石膏製造工程、及び前記石膏製造工程で得られた石膏を前記製造工程に循環する循環工程とを含む珪酸カルシウムの製造方法である。
【0010】
尚、珪酸アルカリとして珪酸ナトリウムを使用した場合の製造工程における反応は、下記の反応式(I)で表すことができる。また、この場合における石膏製造工程の反応は、下記の反応式(II)で表すことができる。
【0011】
CaSO+NaO・nSiO → CaO・nSiO+NaSO (I)
CaCl+NaSO → CaSO+NaCl (II)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常では廃棄していた硫酸アルカリを有効利用することにより、廃棄物を低減することができる。また、石膏ボード廃材から回収された石膏を原料とすることで、従来、埋め立て処理されていた石膏廃材を有効に使用することも可能となる。更に、上記硫酸アルカリと反応させる塩化カルシウムも、廃棄物や副生物(例えば、脱水剤として使用した廃棄物や、水酸化カルシウムを使用したクロルヒドリンのケン化反応時に生成する副生物など)を使用すれば、より廃棄物の有効利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、石膏と珪酸アルカリとを反応させ、珪酸カルシウムを製造し、その際、副生する硫酸アルカリを有効利用するものである。
【0015】
先ず、本発明は、水性媒体中で石膏と珪酸アルカリとを反応させ、珪酸カルシウムを製造する製造工程を含むものである。
【0016】
本発明において、前記石膏は、特に制限されるものではないが、天然石膏、化学石膏、排煙脱硫副生石膏及び工場で副生する副生石膏を使用することができる。また、従来では、埋め立て処分されていた建築廃材である石膏ボード廃材から回収された石膏を使用することにより、廃棄物の有効利用をより進めることができる。この石膏ボード廃材は、石膏ボードを製造した際に排出される端材であってもよいし、建築物から排出されるものであってもよい。尚、これら原料として使用する石膏は、最終的に得られる花弁状珪酸カルシウムの用途に応じて、適宜決定してやればよい。
【0017】
特に、本発明において、石膏ボード廃材から回収された石膏を使用する場合、最終的に得られる珪酸カルシウムを紙の填料として使用することが好ましい。石膏ボード廃材から回収される石膏(以下、回収石膏とする)には、該ボードに使用された紙の成分(微細な繊維状のパルプ等)を不純物として含む場合があるが、最終的に得られる珪酸カルシウムを紙の填料として使用することにより、回収石膏から前記不純物を厳密に取り除かなくても使用可能となる。
【0018】
尚、本発明において使用する石膏は、珪酸アルカリとの反応性を考慮すると、2水石膏の状態のものを使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、前記珪酸アルカリは、市販の珪酸ナトリウム、珪酸カリウムを好適に使用することができる。中でも、SiO/RO(RはNa、またはK)モル比が1.55〜3.4のものを好適に使用することができ、特に、嵩高い花弁状珪酸カルシウムを得るためには、SiO/ROモル比が2.0〜2.6のものを使用することが好ましい。
【0020】
本発明の製造工程においては、水性媒体中で前記石膏と前記珪酸アルカリとを反応させる。前記水性媒体は、水を主成分とするものであり、珪酸カルシウムの生成を疎外しない範囲で水に可溶な無機物、有機物を含むことができる。後記に詳述するが、石膏製造工程における未反応の塩化カルシウムや、塩化物等を、少量、含むこともできる。環境負荷、廃棄物等の低減を考慮すると、前記水性媒体は、水が100質量%であることが最も好ましいが、水が90質量%以上であることが好ましく、更に水が95質量%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明において、前記水性媒体中で石膏と珪酸アルカリとを反応させる方法は、公知の方法を採用することができる。具体的には、石膏および珪酸アルカリを予め水性媒体中に懸濁、溶解させたものを混合することにより反応させることができる。特に、花弁状珪酸カルシウムを製造する場合には、石膏を水溶性媒体に入れ、十分に撹拌して懸濁液とし、そこへ珪酸アルカリ水溶液を徐々に添加することが好ましい。この際、より高い吸油特性を発揮し、嵩高い花弁状珪酸カルシウムを安定して製造するためには、懸濁液中の石膏の濃度は3〜10質量%であることが好ましい。また、添加する珪酸アルカリ水溶液は、珪酸アルカリ水溶液100ml中に、SiOが10〜20gの濃度にすることが好ましい。更に、珪酸アルカリ水溶液を添加する時間は、石膏の粒度、結晶形、反応(混合)時の温度、圧力等で一概に決まるものではないが、安定して優れた特性の花弁状珪酸カルシウムを得るためには、50〜120分で実施することが好ましい。
【0022】
また、石膏と珪酸アルカリとのモル比(CaO/RO(RはNaまたはK)のモル比)は、1.05〜1.3程度であることが好ましい。石膏の量を少し多くすることにより、珪酸アルカリを十分に反応させることができる。また、この範囲であれば、未反応の石膏は、後記に詳述する硫酸アルカリと共に水溶液中に存在するため、ろ過・水洗等により、得られる珪酸カルシウムと容易に分離することができる。そのため、珪酸カルシウムの製造において、問題が生じることはない。その他の条件としては、常圧下、10〜50℃の温度で反応させることが好ましい。更に、前記反応は、連続方式、またはバッチ方式のいずれの方式を採用してもよく、反応させる際に使用する混合装置も公知のものを使用することができる。
【0023】
尚、ここで生成する珪酸カルシウムは、無定形の珪酸カルシウムである。
【0024】
本発明においては、このような反応条件下で反応を行うことにより、無定形の珪酸カルシウムを製造することができる。この際、製造工程においては、石膏と珪酸アルカリとを反応させるため、珪酸カルシウムと、副生物として、水に可溶な硫酸アルカリが生成する。
【0025】
次に、本発明においては、前記製造工程で得られる珪酸カルシウムと硫酸アルカリを含む水溶液とを分離する分離工程を行う。
【0026】
本発明において、前記硫酸アルカリとは、使用する珪酸アルカリによって決まるものであり、珪酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸ナトリウムとなり、珪酸カリウムを使用した場合には、硫酸カリウムとなる。
【0027】
本発明の分離工程において、珪酸カルシウムと硫酸アルカリを含む水溶液(以下、硫酸アルカリ水溶液とする場合もある)を分離する方法は、公知の方法、装置を使用することができる。例えば、遠心分離装置、ろ過分離装置等を使用することが出来る。この際、分離した珪酸カルシウムに副生物である硫酸アルカリや未反応の石膏が含まれないように、洗浄することが好ましい。この洗浄液は、含まれる硫酸アルカリ等の濃度が低く、そのまま廃棄することもできるが、分離した硫酸アルカリ水溶液に加えることもできる。尚、この洗浄液を硫酸アルカリ水溶液に加える場合には、そのまま洗浄液を加えることもできるし、洗浄液を濃縮した後、加えることもできる。また、そのまま洗浄液を加えた後、硫酸アルカリ水溶液を濃縮することもできる。
【0028】
次に、本発明においては、前記分離工程で分離した硫酸アルカリ水溶液と塩化カルシウムとを混合し、該水溶液中の硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させ、石膏を製造する石膏製造工程を行う。尚、前記の通り、硫酸アルカリ水溶液には、少量の石膏が含まれる場合があるが、本発明においては、該水溶液から、再度、石膏を生成するものであり、この石膏は、何ら悪影響を与えるものではない。
【0029】
従来、前記硫酸アルカリ水溶液は、前記珪酸カルシウムを洗浄して、珪酸カルシウムと分離した際、そのまま廃棄されていた。本発明は、この硫酸アルカリに着目し、特に、硫酸イオンを再利用することに着目し、廃棄物の低減、および廃棄物の有効利用を行ったものである。
【0030】
本発明において、前記硫酸アルカリと反応させる塩化カルシウムは、特に制限されるものでなく、市販のものを使用することができる。また、硫酸アルカリ水溶液と塩化カルシウムとを混合して、反応を行うため、最終的に得られる珪酸カルシウムの用途によっては、脱水剤として使用した廃棄物の塩化カルシウムを使用することもできる。更に、水酸化カルシウムを用いたクロルヒドリンのケン化反応時に副生する塩化カルシウム等を使用することができる。これら廃棄物、および/または副生物を使用することにより、より環境負荷の低減に繋がる。
【0031】
本発明において、硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させる方法は、硫酸アルカリ水溶液に塩化カルシウムを添加し、混合することにより反応させることができる。塩化カルシウムは、粉体、または水溶液として添加することができる。硫酸アルカリ水溶液と塩化カルシウムを混合する方法は、撹拌器等を備えた公知の混合装置を使用することができる。また、混合する際、硫酸アルカリと塩化カルシウムの比は、塩化カルシウム/硫酸アルカリのモル比が1〜1.5であることが好ましい。上記範囲のモル比とすることにより、硫酸アルカリを石膏として十分に回収することができる。また、硫酸アルカリと塩化カルシウムが前記範囲であれば、後記に示す循環工程で石膏と一緒に未反応の塩化カルシウムが製造工程へ循環されたとしても、製造工程において、該塩化カルシウムは、珪酸アルカリと反応して珪酸カルシウムとなる。そのため、得られる珪酸カルシムの品質(粒度、花弁状の形状等)に悪影響を与えることがない。ただし、後記に詳述するが、無定形の珪酸カルシウムを水熱処理する場合には、前記石膏に塩素分が極力含まれないようにすることが好ましい。
【0032】
また、硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させる際の温度は、10〜40℃が好ましく、また、反応時の圧力も常圧で実施することができる。尚、反応時間は、温度、圧力等に依存するため、一概に限定することはできないが、20〜120分で実施することが好ましい。
【0033】
このような条件で硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させることにより、石膏を製造することができる。尚、この石膏製造工程では、石膏の他、水溶液中には、塩化アルカリ、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等の塩が含まれるが、これらの塩は無害であるため、容易に廃棄することができる。
【0034】
次に、本発明においては、前記石膏製造工程で得られた石膏を、前記製造工程に循環する循環工程を行う。
【0035】
本発明の循環工程において、前記石膏製造工程で得られた石膏は、石膏が分散したスラリーの状態で前記製造工程へ循環することもできる。前記の通り、循環される石膏に、少量の塩化カルシウムが含まれていたとしても、該塩化カルシウムは、製造工程で珪酸アルカリと反応し、珪酸カルシウムとなるため、得られる珪酸カルシウムの品質に悪影響を与えることがない。ただし、前記石膏と共に塩素分が多く循環されると、無定形の珪酸カルシウム中に塩素分が多く含まれることになり、該珪酸カルシウムを水熱処理する際に、オートクレーブを腐食させるおそれがある。そのため、前記石膏は、一旦、公知の方法、例えば、濾過、遠心分離機等により水溶液を分離した後、水洗して塩素分を極力低減したものを製造工程へ循環することが好ましい。また、石膏を循環させる方法は、配管内を輸送させることもできるし、ベルトコンベア等の公知の輸送装置を使用することができる。
【0036】
本発明の循環工程において、循環させる石膏の量は、製造工程で使用する石膏の量に併せて、適宜決定してやればよく、全量を循環させることもできる。
【0037】
このような循環工程において、前記石膏製造工程で得られた石膏を製造工程へ循環する
ことにより、廃棄物であった硫酸アルカリを効率よく、循環使用することができる。
【0038】
また、本発明においては、前記分離工程で得られた無定形の珪酸カルシウムに水を加えてスラリーとし、該スラリーを水熱処理する水熱処理工程を含むことが好ましい。この水熱処理を行うことにより、無定形の珪酸カルシウムを、花弁状の形状に生長させ、結晶性の珪酸カルシウムにすることができる。水熱処理は、珪酸カルシウムに1質量部に対して、10〜100質量部の水を使用し、150〜250℃の温度下で実施することが好ましい。一般的にはオートクレーブ中で水熱処理を行い、処理する時間は、所望とする珪酸カルシウムに応じて適宜決定してやればよく、200℃の場合、3〜5時間であることが好ましい。
【0039】
本発明において、前記水熱処理工程で得られた花弁状の結晶性珪酸カルシウムは、必要に応じて濃度を調整して、スラリーのまま使用することもできるし、更に、必要に応じて、乾燥、粉砕、分級することにより、所望の形状にして使用することもできる。尚、当然のことながら、上記分離した水は、水熱処理時のスラリーの水、および製造工程の水性媒体に使用することができる。また、水熱合成時の廃熱は回収し、オートクレーブヘ仕込む珪酸カルシウム溶液の加温に使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
実施例の測定値は以下の方法によって測定した。
【0042】
吸油量:JIS K5101に準じた。
【0043】
白色度:光電白度計(株式会社Kett科学研究所社製 C−1型)で測定した。
【0044】
嵩高性:水熱処理した花弁状の珪酸カルシウムを含むスラリー50mlを100mlのビーカーに取り、110℃で一日乾燥し、塊状の珪酸カルシウムの厚みおよび質量を測定し、嵩高性(塊状の珪酸カルシウムの厚み/乾燥させた珪酸カルシウムの質量)を算出した。尚、この値が大きい方が、珪酸カルシウムが嵩高くなることを示す。
【0045】
実施例1
(製造工程1)
石膏ボードを製造する際に発生する端材から回収した廃石膏(粒度0.5mm以下、水分:14.79質量%、CaO濃度:26質量%)100gを2Lのビーカーに入れ、水1250mlを混合し、石膏の固形分濃度6.3質量%のスラリーを攪拌速度150rpmで攪拌しながら、珪酸ナトリム水溶液(珪酸ナトリウム水溶液100ml中、SiOの濃度を25.27gとしたもの。25.27(g/100ml)の珪酸ナトリウム水溶液、SiO/NaOのモル比2.26)208mlを、更に水208mlで希釈した希釈珪酸ナトリウム水溶液を63分添加し、無定形の珪酸カルシウムを生成させた。反応は、常圧下、反応温度は24℃とした。CaO/NaOのモル比は1.2である。
【0046】
(分離工程1)
次に、前記珪酸カルシウムを含む水溶液をブフナーロートでろ過し、珪酸カルシウムと硫酸ナトリウムを含む水溶液とに分離し、水溶液(濾液)を1L回収した。
【0047】
(石膏製造工程1)
この回収した濾液800mlを1Lのビーカーへ採取し、攪拌速度100rpmで攪拌しながら、塩化カルシウム水溶液(CaCl:35.52質量%)76.5mlを20分で、添加し、石膏を生成させた。塩化カルシウム/硫酸ナトリウムのモル比は1.2である。反応は、常圧下、反応温度は25℃とした。水溶液中に生成した石膏を濾過・水洗し、110℃で、10時間乾燥して、18.1gの白度96の石膏を得た。
【0048】
(水熱処理工程1)
また、前記分離工程で分離した無定形の珪酸カルシウムを水3000mlで水洗した後、固形分濃度5.2質量%のスラリーとして、内容積3Lの攪拌機付きのオートクレーブヘ2L仕込み、攪拌速度200rpm、水熱合成温度200℃で、3時間反応させた後、濾過・水洗し、再び水2000mlを加えスラリー化して、その一部の50mlを前記方法に準じて嵩高性を測定した。乾燥時の花弁状珪酸カルシウムの質量は2gで、塊状の花弁状珪酸カルシウムの厚みは14mmであり、嵩高性は7.0(mm/g)であった。また、再び水を加えた上記スラリーの一部、100mlを乾燥して、4.0gの花弁状の結晶性珪酸カルシウムを得た。この珪酸カルシウムの吸油量は410(ml/100g)で、白色度は84であった。
【0049】
(循環工程1)
石膏製造工程1で得られた乾燥前の石膏100g(水分:16質量%、CaO:33.2質量%)を製造工程へ循環した。
【0050】
(製造工程2)
前記循環工程より循環した石膏を実施例1と同様に、水1250mlに混合し、珪酸ナトリウム水溶液(SiO 10.72(g/100ml)、モル比:2.55)593mlを115分掛けて、添加し、珪酸カルシウムを生成させた。CaO/NaOのモル比は1.2である。反応は、常圧下、反応温度24℃で実施した。
【0051】
(分離工程2)
次に、前記分離工程1と同じく、前記珪酸カルシウムを含む水溶液をブフナーロートでろ過し、珪酸カルシウムと硫酸ナトリウムを含む水溶液とに分離した。
【0052】
(水熱処理工程2)
分離工程2で分離した珪酸カルシウムを前記水熱処理工程1と同様の条件で水熱処理を行った(水洗等も水熱処理工程1と同様に実施した)。この時、最終的に得られた結晶性の花弁状珪酸カルシウムは、吸油量が420(ml/100g)で、白色度が98であった。また、嵩高性の評価において、乾燥時の質量は1.9gで、スラリーケークの厚みは14mmであり、嵩高性は、7.4(mm/g)であった。
【0053】
前記水熱処理工程1および水熱処理工程2で示した通り、水熱処理工程1および水熱処理工程2で得られた珪酸カルシウムは、両者とも、吸油量、嵩高性の基本性質がほぼ同じであることが確認できた。このことから、循環工程より循環した石膏は、問題なく珪酸カルシウムの原料として使用できることが確認できた。更に、水熱処理工程2で得られた珪酸カルシウムは、廃石膏ボードを使用した水熱処理工程1のものよりも白色度が高く、循環する石膏の量を調整することにより、得られる珪酸カルシウムの白色度を調整できることも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の好ましい形態の一例を示す工程図
【符号の説明】
【0055】
1 製造工程
2 分離工程
3 石膏製造工程
4 循環工程
5 水熱処理工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中で石膏と珪酸アルカリとを反応させ、珪酸カルシウムを製造する製造工程、前記製造工程で得られた珪酸カルシウムと硫酸アルカリを含む水溶液とを分離する分離工程、前記分離工程で分離した水溶液中の硫酸アルカリと塩化カルシウムとを反応させ、石膏を製造する石膏製造工程、及び前記石膏製造工程で得られた石膏を前記製造工程に循環する循環工程とを含む珪酸カルシウムの製造方法。
【請求項2】
前記製造工程で使用する石膏が、石膏ボード廃材から回収されたものであることを特徴とする請求項1に記載の珪酸カルシウムの製造方法。

【図1】
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