説明

現像ローラ、その製造方法、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】低硬度、かつ低セット性で、ブリード物が少なく、かつ適度かつ均一な導電性を有する現像ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体11と、該軸芯体11の外周面に順次、弾性体層12、被覆層13が積層された現像ローラ1であって、該弾性体層12が、共役ジエン系重合体の架橋物と、質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを含有し、該共役ジエン系重合体の架橋物と該カーボンブラックとの間に化学結合が形成されている。この現像ローラ1の弾性体層12は、スズ原子、窒素原子及び珪素原子の中から選ばれる少なくとも一種を導入しカップリングされた変性共役ジエン系重合体と、前記ポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを混合して未架橋ゴム組成物を調製し、該未架橋ゴム組成物を軸芯体11の外周面に形成し、加熱硬化することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像ローラとその製造方法、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、プリンターの如き画像形成装置には、現像ローラが用いられている。一成分現像方式の画像形成装置では、現像ローラから潜像担持体へトナーを移動させて静電潜像が顕像化、すなわち現像される。このような画像形成装置に用いられる現像ローラは、潜像担持体と所定の接触幅をもって圧接または近接され、ブレード等によって薄層化されたトナーを担持する。よって、柔軟で変形し易く、かつ低セット性に優れると共に、潜像担持体を汚染させないことが必要となる。さらに、現像ローラには、画像ムラを発生させないために、適度かつ均一な導電性を有することが要求される。
【0003】
これらの要求を満たすため、特許文献1は、弾性体層に柔軟でセット性に優れるシリコーンゴムを用いた現像ローラを開示している。また、特許文献2は、弾性体層に共役ジエン系重合体を含む種々のゴムを用いた現像ローラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3084801号公報
【特許文献2】特開2001−201935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現像ローラとして、従来より安価であって、柔軟で変形し易く、低セット性に優れ、潜像担持体を汚染させず、適度かつ均一な導電性を有する現像ローラが求められている。弾性体層にシリコーンゴムを用いた現像ローラは、シリコーンゴム自体が比較的高価な材料であると同時に、外周に設ける被膜層との接着性を持たせるために、中間に接着層を設けたり、シリコーンゴム表面を処理する必要がある。このため、現像ローラは相対的に高価なものとなり易い。弾性体層に用いる安価な材料として、共役ジエン系重合体の架橋物が知られている。しかしながら、弾性体層を低硬度とする目的で、単純に可塑剤を添加した場合などには、潜像担持体の汚染を発生させる場合がある。
【0006】
導電性を付与させる手段としては、導電性フィラー、具体的にはカーボンブラックを用いることがある。カーボンブラックを添加して導電性(抵抗特性)を調整する場合には、弾性体層中での均一な分散が難しく、また添加量によっては弾性体層の硬度が上昇するという問題がある。そこで本発明は、低硬度、かつ低セット性で、汚染性も低く、かつ適度かつ均一な導電性を有する現像ローラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の外周面に順次、弾性体層、被覆層が積層された現像ローラであって、該弾性体層が、共役ジエン系重合体の架橋物と、下記一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを含有し、該共役ジエン系重合体の架橋物と該カーボンブラックとの間に化学結合が形成されていることを特徴とする。
【化1】

(一般式(1)中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、−COOH及び−CH2−CH2−OHからなる群から選ばれる何れかを示し、m及びnは1以上の整数である)。
【0008】
また、上記のような特徴を持つ現像ローラの弾性体層は、スズ原子、窒素原子及び珪素原子の中から選ばれる少なくとも一種を導入しカップリングされた変性共役ジエン系重合体と、一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを混合して未架橋ゴム組成物を調製し、該未架橋ゴム組成物を軸芯体の外周面に形成し、加熱硬化することを特徴とする現像ローラの製造方法により得ることが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低硬度、かつ低セット性で、ブリード物が少なく、かつ適度かつ均一な導電性を有する現像ローラを得ることが出来る。この利点から、プロセスカートリッジ、および画像形成装置における現像ローラとして用いた場合には、潜像担持体への汚染を発生させず、画像濃淡ムラがなく、高速化された画像形成装置においても、高品位な画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の現像ローラの一例の斜視図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例の軸芯体に直交する面での断面図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の一例の模式図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの一例の模式図である。
【図5】画像評価に用いた、標準チャートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明の現像ローラの一例の全体構成を模式的に示す図である。現像ローラ1は、中心部に軸芯体11を有し、該軸芯体の外周面に順次、弾性体層12及び被覆層13が積層された構造を有している。
【0012】
<軸芯体>
軸芯体としては、円柱状または中空円筒状の形状を有し、金属などの導電性材料で形成される軸芯体を用いることができる。
【0013】
<弾性体層>
本発明の弾性体層は、共役ジエン系重合体の架橋物と、一般式(1)で表される基本構造を持つ質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを含有し、該共役ジエン系重合体の架橋物と該カーボンブラックとの間に化学結合が形成されている。
【化2】

(一般式(1)中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、−COOH及び−CH2−CH2−OHからなる群から選ばれる何れかを示し、m及びnは1以上の整数である)。
【0014】
<共役ジエン系重合体の架橋物>
弾性体層を構成する弾性体としては、共役ジエン系重合体の架橋物、すなわちゴムが用いられる。共役ジエン系重合体とは、共役ジエン化合物の単独重合体、2種以上の共役ジエン化合物の共重合体、共役ジエン化合物と他の化合物との共重合体である。これらの共役ジエン系重合体は、後述の加硫処理等によって、架橋物とすることができる。共役ジエン化合物としては、以下のものがあげられる。1,3−ブタジエン;イソプレン;1,3−ペンタジエン;2,3−ジメチルブタジエン;2−フェニル−1,3−ブタジエン;1,3−ヘキサジエン。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、汎用性の点で1,3−ブタジエンが好ましい。また、これらの共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、以下のものがあげられる。例えばスチレン;α−メチルスチレン;p−メチルスチレン;o−メチルスチレン;p−ブチルスチレン、;1−ビニルナフタレン;3−ビニルトルエン;エチルビニルベンゼン;ジビニルベンゼン;4−シクロヘキシルスチレン;2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中でも、汎用性、コストの点でスチレンが好ましい。
【0015】
共役ジエン系重合体の具体例としては、以下のものがあげられる。ポリブタジエン;スチレン−ブタジエン共重合体;スチレン−イソプレン共重合体;α−メチルスチレン−ブタジエン共重合体。これらの中で、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。さらには、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体(以下、「S−SBR」と称することがある)が特に好ましい。
本発明の共役ジエン系重合体の架橋物は、カーボンブラックとの間に化学結合を有している。このような化学結合は、(1)あらかじめグラフト化したカーボンブラックを使用する、(2)カップリング剤により共役ジエン系重合体とカーボンブラックを化学結合させる、(3)変性された共役ジエン系重合体とカーボンブラックとを混練時の熱等により、直接、化学結合させることで得ることが出来る。(3)の方法により、共役ジエン系重合体とカーボンブラックとの間に化学結合を持たせる場合、本発明に用いる共役ジエン系重合体は、スズ原子、窒素原子及び珪素原子の中から選ばれる少なくとも一種を導入しカップリングされた変性共役ジエン系重合体であることが好ましい。
【0016】
この変性共役ジエン系重合体は、混練り時に、ステアリン酸等の酸触媒の存在下で、カップリングされた部分の結合が切断され、カップリング前の共役ジエン系重合体となる。この時、共役ジエン系重合体の末端は、カチオン構造となる。共役ジエン系重合体の末端(すなわち、カチオン)が、カーボンブラック表面の主にキノン基(>C=O基)と結合することによって、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合が形成される。
共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合を形成させることにより、カーボンブラックの分散性を改善し、弾性体層に対して適度かつ均一な導電性を安定的に付与すること出来る。また、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合を形成させることで、従来とは異なる補強層(カーボンブラックによる影響を受けるポリマー層)を形成すると推測される。
【0017】
一般的に知られているカーボンブラックの補強作用は、例えば、カーボンブラックの表面に、ポリマー鎖が物理的に吸着し、その運動性が制限されるといったものである。この場合、ポリマー鎖の運動性は低くなり、カーボンブラックの添加量にもよるが、ゴムの硬度は高くなり易い。一方、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合を形成させた場合、ポリマー鎖の運動性は大きく変わらず、末端でのみ影響(拘束)を受ける。このような補強形態が多くなると、ゴムの硬度は高くならず、かつ、ゆるやかな拘束を受けるポリマー層が多く形成される。その結果、相対的に低硬度でありながら、いわゆるゴム弾性に優れたゴムとなる。さらには、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合を形成させた場合、弾性体層は、外的入力による変形等に対して、カーボンブラック表面における、ポリマー鎖のずれを抑制し、低セット性を併せ持つものとなる。なお、前記のゆるやかな拘束を受けるポリマー層は、軟化剤等の低分子量成分を多量に保持することが可能となるため、低硬度で、ブリード物が少ない弾性体が得られる。
【0018】
上記の変性共役ジエン系重合体は、公知の方法により製造することができる。例えば共役ジエン化合物を含む単量体を、適当な不活性溶媒中において、好ましくは有機リチウム化合物を重合開始剤として、アニオン重合させることにより、一方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体を得たのち、各種変性剤で変性することにより、所望の変性共役ジエン系重合体が得られる。重合開始剤の有機リチウム化合物としては、ヒドロカルビルリチウム、及びリチウムアミド化合物を用いることができる。ヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、一方の末端に水素原子を有し、かつ他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体が得られる。リチウムアミド化合物を用いる場合には、一方の末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体が得られる。
【0019】
ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、以下のものがあげられる。エチルリチウム;n−プロピルリチウム;イソプロピルリチウム;n−ブチルリチウム;sec−ブチルリチウム;tert−オクチルリチウム;n−デシルリチウム;フェニルリチウム;2−ナフチルリチウム;2−ブチル−フェニルリチウム;4−フェニル−ブチルリチウム;シクロヘキシルリチウム;シクロペンチルリチウム;ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物。これらの中で、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウムが好ましい。
リチウムアミド化合物としては、以下のものがあげられる。リチウムヘキサメチレンイミド;リチウムピロリジド;リチウムピペリジド;リチウムヘプタメチレンイミド;リチウムドデカメチレンイミド;リチウムジメチルアミド;リチウムジエチルアミド;リチウムジブチルアミド;リチウムジプロピルアミド;リチウムジヘプチルアミド;リチウムジヘキシルアミド;リチウムジオクチルアミド;リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド;リチウムジデシルアミド;リチウム−N−メチルピペラジド;リチウムエチルプロピルアミド;リチウムエチルブチルアミド;リチウムメチルブチルアミド;リチウムエチルベンジルアミド;リチウムメチルフェネチルアミド。これらの中で、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジドが好ましい。
【0020】
有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族,脂環族,芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記有機リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0021】
ここで言うランダマイザーとは、ゴムのミクロ構造のコントロール、例えば、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエンゴムのブタジエン部のビニル結合(1,2結合)の増量、共役ジエン/ビニル芳香族炭化水素共重合ゴムのモノマー単位の組成分布のコントロール、スチレン−ブタジエンゴムのブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等、の作用を有する化合物である。すなわち、ランダマイザーを重合系に適当量添加することにより、ブタジエン部におけるビニル結合量を適宜変えることができる。また、ランダマイザーを用いることにより、分子量分布の狭い重合体を得易くなるという利点もある。
【0022】
ランダマイザーとしては、エーテル類、第三級アミン化合物を用いることができる。エーテル類のランダマイザーとしては、以下のものが挙げられる。テトラヒドロフラン(THF);テトラヒドロピラン;1,4−ジオキサン;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールメチルエチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジプロピルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールブチルt−ブチルエーテル;エチレングリコールジアミルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジブチルエーテル;トリエチレングリコールジメチルエーテル;トリエチレングリコールジブチルエーテル;テトラエチレングリコールジエチルエーテル;ビス(2−オキソラニル)メタン;2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン;1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン;2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン。
【0023】
第三級アミン化合物のランダマイザーとしては、以下のものが挙げられる。トリエチルアミン;トリプロピルアミン;トリブチルアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジピペリジノエタン。ランダマイザーは有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル以上1000モル以下の範囲で用いられる。
【0024】
重合は約−80℃以上150℃以下の任意の温度で行うことができるが、−20℃以上100℃以下の温度が好ましい。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
重合方式は、不活性溶媒中での溶液重合を用いることが好適である。溶媒は普通重合反応の条件下では液体であることが好ましく、脂肪族、脂環族又は芳香族炭化水素が使用される。
好ましい不活性溶媒としては以下のものがあげられる。プロパン;ブタン;ペンタン;ヘキサン;ヘプタン;イソオクタン;シクロペンタン;シクロヘキサン;メチルシクロヘキサン;デカン;トルエン;キシレン;ナフタレン;テトラヒドロナフタレン。これら溶媒を2種類以上の混合物として用いてもよい。一般に、開始剤、溶媒、モノマー等の重合工程に関与する全ての物質から、水、酸素、二酸化炭素及び他の触媒毒を除去するのが好適である。
【0025】
このようにして得られた、一方の末端に水素原子又は窒素含有基を有し、かつ他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体の該重合活性末端に、各種変性剤を反応させることにより、変性共役ジエン系重合体を得ることが出来る。変性剤としては、アルコキシシラン化合物、スズ含有化合物、窒素含有化合物を用いることができる。アルコキシシラン化合物としては、以下のものが挙げられる。メチルトリエトキシシラン;テトラエトキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;1−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}−4,5−ジヒドロイミダゾール;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン;ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン。
【0026】
スズ含有化合物としては、以下のものが挙げられる。テトラクロロスズ;テトラブロモスズ;メチルトリクロロスズ;ブチルトリクロロスズ;オクチルトリクロロスズ;フェニルトリクロロスズ;フェニルトリブロモスズ;ジメチルジクロロスズ;ジメチルジブロモスズ;ジエチルジクロロスズ;ジブチルジクロロスズ;ジオクチルジクロロスズ;ジフェニルジクロロスズ;ジアリルジクロロスズ;ジブテニルジクロロスズ;トリブチルモノクロロスズ;トリフェニルモノクロロスズ;メチルスズトリスステアレート;エチルスズトリスステアレート;ブチルスズトリスオクタノエート;ブチルスズトリスステアレート;オクチルスズトリスステアレート;ブチルスズトリスラウレート;ジブチルスズビスオクタノエート;ジブチルスズビスステアレート;ジブチルスズビスラウレート;ジメチルスズビスステアレート;ジエチルスズビスラウレート;ジオクチルスズビスステアレート;トリメチルスズラウレート;トリメチルスズステアレート;トリブチルスズオクタノエート;トリブチルスズステアレート;トリブチルスズラウレート;トリオクチルスズステアレート;フェニルスズトリスステアレート;フェニルスズトリスオクタノエート;フェニルスズトリスラウレート;ジフェニルスズビスステアレート;ジフェニルスズビスオクタノエート;ジフェニルスズビスラウレート;トリフェニルスズステアレート;トリフェニルスズオクタノエート;トリフェニルスズラウレート;シクロヘキシルスズトリスステアレート;ジシクロヘキシルスズビスステアレート;トリシクロヘキシルスズステアレート;トリブチルスズアセテート;ジブチルスズビスアセート;ブチルスズトリスアセテート。
【0027】
窒素含有化合物としては、以下のものが挙げられる。ジイソシアナートジフェニルメタンなどのイソシアネート系化合物;4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン化合物;4−ジメチルアミノベンジリデンアニリン;ジメチルイミダゾリジノン;N−メチルピロリドン。これらの変性剤の中で、多官能変性剤は、分岐構造を有する変性共役ジエン系重合体を与えるので好ましい。この変性共役ジエン系重合体は、温度上昇による弾性体層の弾性率の低下を抑制する効果を有し、この効果は、分岐構造を有する変性共役ジエン系重合体が大きい。前記変性剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0028】
一方の末端に水素原子又は窒素含有基を有し、かつ他方の末端が重合活性末端である共役ジエン系重合体の重合活性末端と、変性剤とを反応させる条件は、組み合わせる材料の種類、反応のスケール等に応じて適宜選択すればよい。例えば、重合活性末端が活性末端リチウムである場合、変性剤と活性末端リチウムとの反応は、通常30℃以上120℃以下、0.5分以上1時間以下の範囲の条件で行うことができる。変性剤がスズ含有化合物の場合、スズ含有化合物の使用量は、活性末端リチウム1モル当量当り、0.4モル当量以上1.5モル当量以下の範囲で用いることが出来る。このようにして得られた変性共役ジエン系重合体は、通常少なくとも一方の末端に、変性剤としてスズ原子を含む官能基、窒素原子を含む官能基及び珪素原子を含む官能基の中から選ばれる少なくとも一種の官能基が導入され、カップリングされたものとなる。上記の他、主鎖中又は重合末端にこれらの変性基を導入する方法としては、スズを含む開始剤で重合を開始する方法、窒素を含む開始剤を用いて重合を開始する方法、重合系内でピロリジン又はヘキサメチレンイミン等の2級アミンとアルキルリチウムを反応させることにより3級アミンを含む開始剤を合成して、重合を開始させる方法(in−situ法)がある。いずれの方法も、溶液重合により重合体を合成する場合に、共役ジエン系重合体の重合活性末端に変性基が導入される。
【0029】
本発明において、この変性共役ジエン系重合体は、質量平均分子量(Mw)が30万以上120万以下、特には、30万以上80万以下の範囲にあるものが好ましい。質量平均分子量が30万以上であると、必要とするゴム弾性が得られ易く、120万以下であると、ゴムの粘度が低く、混練作業を問題なく行うことが出来る。80万以下である場合、充填剤を分散させ易く、十分な耐破壊特性を安定して得られ易い。本発明に用いる共役ジエン系重合体がスチレン−ブタジエン共重合体である場合、結合スチレン量が10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。結合スチレン量が10質量%以上では、押出し成形時の作業性に優れる。結合スチレン量が25重量%以下では、発熱量が少なく、低セット性がより優れたものとなる。
【0030】
また、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部のビニル結合量が35質量%以上80質量%以下、特には、35質量%以上65質量%以下であることが好ましい。ブタジエン部のビニル結合量が35質量%以上であれば、低温でも柔軟なゴムを得られ易い。ブタジエン部のビニル結合量が80質量%以下では、ポリマー重合上、安定した製造が可能であり、65質量%以下であれば、ガラス転移点が低く、高反発弾性のゴムを得られ易いため、低セット性の点で好ましい。上記のような、ブタジエン部のビニル結合量を得るには、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体が、適している。ブタジエン部におけるビニル結合量は、前述のランダマイザーとして挙げたエーテル化合物、および第3級アミン化合物を使用し、その種類、および重合系に対する添加量を調整することにより、適宜変えることができる。なお、ブタジエン部のビニル結合量が35質量%以上80質量%以下であるスチレン−ブタジエン共重合体に対して、変性を行なうことにより、本発明の効果はより顕著なものとなる。
【0031】
なお、ここに規定するビニル結合(1,2−結合)量は、ブタジエン由来の構成単位中のシス結合、トランス結合及びビニル結合で表される全てのブタジエン量に対する、ビニル結合で表される構成単位の割合を示す。
〔結合スチレン量〕
スチレン−ブタジエン共重合体の結合スチレン量は、1H−NMRによって求められる。
〔ビニル結合量〕
スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部のビニル含量は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法;Chem.&Ind.41,758(1959))により求められる。
【0032】
本発明におけるゴム組成物に用いられるゴム成分としては、前記共役ジエン系重合体の架橋物と共に、他のゴム類を併用することができる。ゴム成分中の前記共役ジエン系重合体の架橋物の比率としては、全ゴム成分の60質量%以上、さらには80質量%以上であることが好ましい。これらの比率であれば、本発明の効果が安定して得られ易い。尚、ゴム成分とは、原料ゴムを指し、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤は含まない。併用可能な他のゴム類としては、特に制限はないが、ブレンド時の相溶性などを考慮することが好ましい。また、必要に応じて2種以上を組合せて用いてもよい。このような他のゴム類としては、以下のものがあげられる。天然ゴム;ポリイソプレン合成ゴム(IR);シス−1,4−ポリブタジエンゴム(BR);スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR);アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);クロロプレンゴム(CR);ブチルゴム(IIR);エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM);フッ素ゴム;シリコーンゴム;エピクロロヒドリンゴム;ウレタンゴム。
【0033】
<ポリブタジエン系化合物>
本発明の弾性体層には、一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物が含有されている。一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物は、一種を単独で用いても、異なる構造(R1、R2が異なる)のものを2種以上用いてもよい。質量平均分子量が3000未満である場合、ポリブタジエン系化合物がブリードし易く、潜像担持体の汚染を発生させてしまう。一方、質量平均分子量が7000を超えるものは、弾性体層を可塑化する効果が小さくなるため、低硬度の弾性体層とすることが難しい。
〔質量平均分子量〕
質量平均分子量は、以下の方法で測定される。GPCカラム「TSKgel SurperHM−M」(商品名、東ソー株式会社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー株式会社製)を用いる。溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、温度40℃、流速0.6ml/min、RI(屈折率)検出器の測定条件下において、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液として測定する。検量線作成用の標準試料として数種の単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて検量線の作成を行い、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から質量平均分子量を求める。
【0034】
一般式(1)中の、R1、R2は、製造方法上、同じ官能基であるものが作り易く、かつ入手もし易い。一方、R1、R2が異なるものを作ることは可能であり、同様の効果が期待できる。一般式(1)で表されるポリブタジエン系化合物の中でも、R1、R2が、−COOH基であるもの、すなわち、1,2−ポリブタジエングリコールであることがより好ましい。1,2−ポリブタジエングリコールを用いた場合には、低硬度でも、よりセット性に優れた弾性体層を得ることが出来る。本発明においては、−COOH基の部分が、カーボンブラック表面の官能基や、混練り時に変性剤による結合部が開裂して外れたポリマー末端との間に、結合や相互作用を持つことが考えられ、分子鎖のずれ等によるヒステリシスロスが低減されていると推測される。
【0035】
一般式(1)中のm及びnは、それぞれ1,2−ビニル結合及び1,4−トランス結合の比率を示している。おり、ポリブタジエンの微細構造としては、任意のものを使うことが出来る。その中でも、1,2−ビニル結合の比率が高いものが、分子運動性の面から好ましく用いられる。一般式(1)で表されるポリブタジエン系化合物は、例えば、アニオン重合により合成することが可能であり、公知の方法を用いて製造すればよい。また、市販されているものを使用してもよい。一般式(1)で表されるポリブタジエン系化合物の添加量としては、共役ジエン系重合体の架橋物100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下含有されていることが好ましい。10質量部以上であれば、弾性体層を軟化させる効果が、弾性体層全体に対して均一となる。50質量部以下であれば、共役ジエン系重合体の持つ良好な低セット性を阻害することなく、かつブリードも少なく、潜像担持体に対する汚染性も低い。
【0036】
<カーボンブラック>
弾性体層は、カーボンブラックを含有することを必須とし、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合が形成されている。共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間に化学結合が形成されるためには、カーボンブラックがその表面にキノン基(>C=O基)を持つことが有効である。この化学結合を形成させる効果は、官能基の絶対量ではなく、表面積当りの官能基量、すなわち官能基の密度に依存する。即ち、カーボンブラックの、〔>C=O官能基濃度〕/N2SAの値は、3.0×10-4meq/m2以上とすることが好ましく、6.0×10-4meq/m2以上とすることがより好ましい。ここで、〔>C=O官能基濃度〕はヒドロキシルアミンと反応してオキシムを生成する官能基濃度(meq/g)を表し、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/mg)を表す。窒素比表面積は、1g当たりに吸着する窒素量を示しており、カーボンブラックの比表面積、言い換えれば粒径に関係する数値である。〔>C=O官能基濃度〕/N2SAの値を大きくすることで、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとの間の化学結合を増やすことができる。この化学結合量を多くすることによって、外的入力による変形等に対する、カーボンブラック表面における、ポリマー鎖のずれを、さらに抑制し、低セット性をより向上することが出来る。
【0037】
〔>C=O官能基濃度〕
〔>C=O官能基濃度〕は、下記1〜3により求められる。
(1.オキシム化カーボンブラックの調製)
約1.5gのカーボンブラックを入れた2本の三角フラスコを用意し、一方のフラスコにはピリジン20mlに塩酸ヒドロキシルアミン1gを溶かしたものを、他方のフラスコ(コントロール用)にはピリジン20mlを添加する。三角フラスコの上部に球付冷却管を取付け、冷却管には塩化カルシウム管および脱酸素装置を接続する。装置全体を、窒素ガスを流しながらガス置換し、窒素雰囲気とする。フラスコを100℃に保ったオイルバスに入れ、この温度で16時間反応させる。反応終了後、反応物を冷却しながら3規定の塩酸50mlを加え、過剰のヒドロキシルアミンを中和する。内容物を吸引ろ過してオキシム化カーボンブラックを分離し、約300mlの蒸留水で洗浄する。これをろ紙上に移し、さらに300mlの蒸留水で洗浄する。洗浄後のオキシム化カーボンブラックを105℃に保った乾燥器中に入れ、恒量となるまで乾燥してオキシム化カーボンブラックを調製する。コントロール用の三角フラスコについても同様の操作を行う。
【0038】
(2.定量用サンプルの調製)
オキシム化カーボンブラックとコントロールカーボンブラックの約0.2gを精秤し、それぞれを別のセミ・ミクロケルダール分解ビンに入れる。それぞれに硫酸カルシウム2.5g、酸化第2水銀0.02gを入れ、最後に濃硫酸4mlを加える。分解ビンをセミ・ミクロケルダール分解装置に取付け、排ガス吸引アスピレーターに水道水を流して加熱する。炎の強さは初めは弱くして分解ビンの内容物が沸騰しない程度とし、分解ビンの白煙の発生が少なくなったら徐々に強くしていき、沸騰する程度まで火を強める。分解ビンの内容物が完全に透明になってから、さらに1時間強熱する。火を止めて室温まで放冷後、分解装置からビンをはずし、約10mlの蒸留水を少量づつ加える。その後、内容物をセミ・ミクロケルダール窒素蒸留装置のサンプルフラスコに入れる。
【0039】
(3.窒素量の定量)
サンプルフラスコを蒸留装置に取付け、蒸留装置の球付冷却管の出口に2%ホウ酸溶液5mlを入れたビーカーを接続する。蒸留装置のアルカリ注入口から、水酸化ナトリウム・チオ硫酸ナトリウム(50%・5%)溶液25mlを注入し、注入口と蒸気口を閉じて9分間蒸留を行う。アンモニアが溶解した2%ホウ酸液を1/100規定の塩酸により滴定する。窒素量既知の硫酸アンモニウム溶液を用い、上述の操作を行って検量線を作成し、サンプルの滴定量と検量線から窒素のミリ当量を求め、カーボンブラック1g当りの>C=O官能基のミリ当量(meq/g)を算出する。
【0040】
【数1】

〔窒素比表面積〕
JISK6217−2の規定に従って、単位質量当たりの表面積(m2/g)を測定する。
【0041】
本発明に用いられるカーボンブラックは、前記の通り、弾性体層中で、共役ジエン系重合体の架橋物との間に化学結合を形成することが可能であれば、市販品でも、市販品を処理したものでも、あるいは新規に製造されたものでも、特に制限されない。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(オイルファーネスブラック及びガスファーネスブラックを含む)、チャンネルタイプのカーボンブラック、またはファーネスブラック及びチャンネルタイプのカーボンブラックよりなる群から選ばれた少なくとも1種を、酸化手段により酸化処理を施したものが挙げられる。これらの中でも、チャンネルタイプのカーボンブラック、ファーネスブラック及びチャンネルタイプのカーボンブラックよりなる群から選ばれた少なくとも1種を、酸化手段により酸化処理を施したものは、前記、〔>C=O官能基濃度〕/N2SAの値を、6.0×10-4meq/m2以上とし易い点からも好ましい。なお、前記酸化手段の具体的な方法としては、HNO3、H22、O3、重クロム酸塩による処理が挙げられる。
【0042】
カーボンブラックの添加量としては、弾性体層のゴム成分100質量部に対し、30質量部以上120質量部以下含有されていることが好ましい。30質量部以上であれば、導電性が得られると共に、カーボンブラックの分散性が向上し、補強性、低セット性を得られ易い。120質量部以下であれば、良好なカーボンブラックの分散と、低硬度の弾性体層を得られ易い。より好ましい範囲としては、40質量部以上80質量部以下であり、必要以上に弾性体層の硬度を上げることなく、所望の導電性を得ることが出来る。上記カーボンブラックの添加量は、ゴム組成物に用いられるゴム成分に対するものであり、共役ジエン系重合体に対するものではないが、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックの間の化学結合の形成は同じように得られる。これは、ゴム成分中の前記共役ジエン系重合体の比率によらず、共役ジエン系重合体の架橋物とカーボンブラックとが化学結合を形成する機会が大きく変化しないためである。例えば、ゴム成分として共役ジエン系重合体を60質量部、それ以外のゴムを40質量部とし、カーボンブラック50質量部を配合した場合、カーボンブラックが大きく偏在しないため、共役ジエン系重合体60質量部に対して、カーボンブラック30質量部が化学結合を形成する機会を持つ。これは、ゴム成分として共役ジエン系重合体を100質量部とし、カーボンブラック50質量部を配合した場合の化学結合を形成する機会と同程度である。
【0043】
導電剤としては、上記カーボンブラックの他に、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属、または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫―酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることができるが、カーボンブラック単独の使用でも特に問題はない。主成分のゴム成分中に、カーボンブラックなどの微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段を、ゴム成分に応じて適宜利用すればよい。例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーなどが挙げられる。
その他、弾性体層に導電性を付与する手段として、導電剤とともに、導電性高分子化合物を添加する手法も利用できる。弾性体層に添加可能な非導電性充填剤としては以下ものを挙げられる。珪藻土;石英粉末;乾式シリカ;湿式シリカ;酸化チタン;酸化亜鉛;アルミノケイ酸;炭酸カルシウム。
【0044】
本発明の弾性体層を形成するゴム、またはそのゴム組成物から得られる架橋物は、通常の場合、一般のゴムを加硫するときと同様に、未架橋の配合ゴムを一度調製し、次いでこの配合ゴムを意図する形状に成形したのち、架橋(加硫)を行うことにより製造される。ここで、加硫剤としては、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、含硫黄有機加硫剤、トリアジン系化合物などが用いられるが、特に硫黄、硫黄化合物の使用が好ましい。加硫剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。これらの加硫剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.1質量部以上15質量部以下、特には、0.5質量部以上10質量部以下である。
なお、加硫剤として、有機過酸化物を使用する場合には、有機過酸化物と併用して、共架橋剤を配合することができる。これらの共架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。共架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.5質量部以上20質量部以下である。
また、加硫剤として、硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を使用することができる。このような加硫促進剤としては、アルデヒドアンモニア類、アルデヒドアミン類、グアニジン塩類、イミダゾリン類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チオ尿素類、ジチオカルバミン酸塩類、チウラム類、ザンテート類があげられる。これらの加硫促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、通常、0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.2質量部以上10質量部以下である。
【0045】
本発明のゴム組成物には、他に紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性可塑剤、液状ゴム、官能基含有オリゴマー、着色剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、脱水剤、活性剤、ワックス、カップリング剤、素練り促進剤、抗菌剤、発泡助剤、加工助剤などを配合できる。
【0046】
なお、現像ローラを潜像担持体に当接して使用する場合、当接する際に均一なニップ幅を確保するために、弾性体層の目安としての厚さは、0.5mm以上6.0mm以下、特には、1.0mm以上5.0mm以下である。弾性体層を形成するゴム成型体のアスカーC硬度は、40°以上80°以下とすることが好ましい。アスカーC硬度が40°以上では、適当なゴム弾性が得られ、一方、80°以下では、適切なニップ幅を得ることができる。より好ましくは、45°以上70°以下である。
【0047】
<被覆層>
本発明の弾性体層の外周面には被覆層(表層)が積層されている。表層となる被覆層を形成する成分としては、特に限定されるものではないが、自己膜補強性、トナー帯電性等の観点から特にポリアミド樹脂やウレタン樹脂、またはウレア樹脂等が好ましく用いられる。弾性体層に添加された、一般式(1)で表される、ポリブタジエン系化合物のブリードを抑制する作用を、被覆層に持たせる点から、架橋系ゴムであることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えばカーボンブラックをポリウレタンプレポリマー中に配合し、プレポリマーを架橋反応させる方法で得たものや、ポリオールに導電性材料を配合し、このポリオールをワン・ショット法にてポリイソシアネー卜と反応させる方法で得たものなどが挙げられる。この場合、ポリウレタンを得る際に用いられるポリヒドロキシル化合物としては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマーの製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及び両者の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられる。また、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することができる。
【0048】
また、イソシアネート化合物としては、同様に一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマーの製造に使用されるポリイソシアネートが用いられる。即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。ウレタン樹脂としてはポリイソシアネートを含む、1液型や2液型が挙げられ、必要に応じてエポキシ樹脂やメラミン樹脂を架橋剤として用いても良い。ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6,ポリアミド6・6,ポリアミド6・10,ポリアミド6・12,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド12・12及びそれらのポリアミドの異種モノマー間の重縮合から得られるポリアミドなどである。作業性の面からアルコール可溶性のものが好んで用いられる。例えばポリアミドの3元共重合体や4元共重合体の分子量を調整したもの、またはポリアミド6やポリアミド12をメトキシメチル化し、アルコールや水に可溶性としたものが挙げられる。ウレタン樹脂や、ポリアミド樹脂、および他の変性樹脂の1種又は2種以上を混合して用いることもでき、現像を行うシステムに応じて適宜選択して用いることにより、その現像システムに適したトナー帯電量を得ることができる。
【0049】
更に、表層としての被覆層を成膜性よく形成するために、個別的な用途に合せて、被覆層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤などが添加できる。また、弾性体層の外周に成膜積層する際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分の樹脂材料に適宜配合することができる。なお、導電剤、非導電性充填剤などの添加剤は、先に弾性体層に含有可能な添加剤として例示したものなどから、主成分の樹脂材料に応じて、適宜選択することができる。また、その添加量は、形成される被覆層の特性を本発明の効果を発揮する範囲内に維持する限り、添加目的に応じて、適宜選択することができる。被覆層の弾性率及び硬度は、被膜性、耐久性が実用上得られれば、特に制限されることはない。被覆層は、弾性体層の変形に対する高い追従性を示すことが望まれ、従って、被覆層を形成する膜体の硬度および弾性率は低い方が好ましい。
【0050】
なお、被覆層の厚さは、十分な耐摩耗性を確保するために、2μm以上とすることが好ましい。一方、現像ローラでは、導電性を有する現像ローラとされ、その際、均一な導電性を実現するために、被覆層の厚さは、100μm以下に留めることが好ましい。また、被覆層の厚さが2μm以上では、弾性体層表面に均一な膜厚の被覆層を塗布・形成することが出来る。一方、被覆層の厚みが100μm以下では、公知の手法により、容易に被覆層を形成することが出来る。被覆層の厚さは、上記の範囲でその硬度等に応じて適宜選択されればよい。例えば、ウレタン樹脂をベースとした場合には、5μm以上25μm以下の範囲の膜厚がより好ましい。この範囲であれば、耐摩耗性があり、硬度への影響小さく、かつ樹脂層自体が設け易いなどの利点が多い。本発明の被覆層の厚さは、ローラより切り出したサンプルにより、断面を光学顕微鏡等により観察することにより測定し求めることができる。
【0051】
被覆層の形成には、膜体の原料となるポリマー原料を液状または溶液状として、弾性体層表面に塗布し、その後、膜体とする方法を利用することができる。この膜体原料の塗布方法は、特に限定されないが、エアスプレー、ロールコート、カーテンコート、ディッピング等の方法により、樹脂原料を所望の厚さで、弾性体層の表面に均一に塗布する。その後、膜体とするため、必要に応じ、加熱処理を行う場合がある。以上、弾性体層及び被覆層を軸芯体上にこの順に積層した2層構造の現像ローラについて説明したが、本発明にかかる現像ローラにおける軸芯体の外周上の層構成は3層以上の多層構成を有するものであってもよい。例えば、弾性体層と被覆層の間に、別の層を設けた現像ローラや、弾性体層自体が複数の層で構成される現像ローラがあげられる。どのような構成においても、本発明の効果が得られれば問題はない。以上説明したように、本発明の現像ローラは、低硬度、かつ低セット性で、ブリード物が少なく、かつ適度かつ均一な導電性を有するものとなる。この利点から、プロセスカートリッジ、および画像形成装置における現像ローラとして用いた場合には、潜像担持体への汚染を発生させず、画像濃淡ムラや濃度低下がなく、高速化された画像形成装置においても高品位な画像を得ることが可能である。
【0052】
本発明の現像ローラの製造に際しては、例えば、スズ原子、窒素原子及び珪素原子の中から選ばれる少なくとも一種を導入しカップリングされた変性共役ジエン系重合体と、一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを混合して未架橋ゴム組成物を調製し、該未架橋ゴム組成物を軸芯体の外周面に形成し、加熱硬化することにより弾性体層を得ることができる。
【0053】
<プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
本発明に係るプロセスカートリッジは前記の現像ローラを有し、この現像ローラが画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。また本発明に係る画像形成装置は、前記の現像ローラを有する。
本発明に係るプロセスカートリッジは、通常、潜像担持体と、該潜像担持体の表面を一様に帯電する帯電装置と、該潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置とを備えている。該現像装置は、該潜像担持体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラ及び該現像ローラに担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制ブレードを備えている。そして、現像ローラが、該潜像担持体にトナーを付与することにより潜像担持体に形成されている静電潜像をトナー像として顕像化する。ここで、該現像ローラが上記した本発明の現像ローラである。
【0054】
また、本発明の画像形成装置は、通常、電子写真方式により静電潜像が形成される潜像担持体、該静電潜像形成に必要な帯電量を該潜像担持体に帯電するための帯電装置、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置を有している。さらに、本発明の画像形成装置は、前記静電潜像形成装置により形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像として可視化するための現像装置及び該トナー像を転写紙に転写するための転写装置を有している。そして、本発明の画像形成装置は、該現像装置における、潜像担持体と対向した状態でトナーを担持する現像ローラが、上記本発明の現像ローラであることを特徴とする。
【0055】
図3は、ブラック、マゼンタ、シアン及びイエローの各色の画像形成部を有するタンデム型のカラー画像形成装置の一例の模式的断面図である。なお、それぞれの画像形成部は色により仕様にわずかな差はあるものの、基本構成は同じである。図3の画像形成装置は、潜像担持体としての感光体ドラム21、帯電装置としての帯電部材26を備えている。さらに、静電潜像形成装置(不図示)、現像装置2及び転写装置としての転写ローラ31を有している。そして、画像形成装置では、現像装置2の現像ローラ1として、本発明の現像ローラを備えている。
【0056】
感光体ドラム21が矢印方向に回転し、帯電部材26によって一様に帯電され、感光体ドラム21に静電潜像を書き込むための静電潜像形成装置の露光手段であるレーザー光25により、感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成される。レーザー光25により形成された静電潜像は、感光体ドラム21に対して接触配置される現像装置2によってトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像により行われる。可視化された感光体ドラム21上のトナー像は、転写部材である転写ローラ31によって、転写搬送ベルト34上に現像剤像の移動に同期して送られてくる記録媒体である転写紙36に転写される。なお、本図では、画像形成部で形成されたトナー像は転写紙36の上に順次積層されている。最後の画像形成部でトナー像を転写された転写紙36は、さらに転写搬送ベルト34により移送され、定着装置29へ送られ、そこで定着処理され、装置外に排出され、プリント動作が終了する。
【0057】
一方、転写されずに感光体ドラム21上に残存した転写残トナーは、感光体ドラム21の表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード28により掻き取られ廃トナー容器27に収納される。クリーニングされた感光体ドラム21は再び帯電処理に供され、画像形成に繰り返し供される。現像装置2は、感光体ドラム21と対向した状態でトナーを担持する現像ローラ1と、該現像ローラ1にトナーを供給するトナー塗布部材22と、現像ローラ1に担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制ブレード24とを備えている。現像装置2においては、現像ローラ1が潜像担持体である感光体ドラム21にトナー23を付与することにより静電潜像をトナー像として顕像化(可視化)し、トナー像を形成する。該現像装置2は、一成分トナーとして非磁性トナー23を収容した現像容器と、該現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置するトナー担持体である現像ローラ1として本発明の現像ローラを備えている。また、規制ブレード24は、長手方向に延在する開口部の上縁に沿って配置されている。
【0058】
転写搬送ベルト34は、駆動ローラ30、テンションローラ33及び従動ローラ35に掛けまわされている。転写紙36が給紙ローラ対37により送られてくると、従動ローラ35及びそれと対峙する吸着ローラ38の働きにより、転写紙36は転写搬送ベルト34に吸着されて、転写搬送ベルト34の移動に合せて転写紙36も移動する。本装置の画像形成部は、従動ローラ35と駆動ローラ30の間に形成されており、搬送ベルト34を挟んで転写ローラ31が設けられている。なお、32は転写のためのバイアス電源である。なお、本装置では、感光体ドラム21と、帯電装置26、現像装置2及びクリーニングブレード28と廃現像剤容器27からなるクリーニング部材の少なくとも一つを一緒にし、電子写真プロセスカートリッジとして、本体に着脱可能にすることもできる。該電子写真プロセスカートリッジの一例の模式断面図を図4に示した。本図においては、上記説明におけると同じ機能を有する部材には同じ符号を付してある。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に順次弾性体層及び被覆層を有する現像ローラを例にして説明する。実施例に示す手法で作製される現像ローラは、その用途において、電子写真装置で使用される現像ローラとして好適に使用できる。
【0060】
〔1.共役ジエン系重合体〕
共役ジエン系重合体として原料ゴムA〜Tを製造した。
<ゴムの製造例1> 原料ゴムAの製造
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャッケットつき7.5リットルの耐圧反応装置に、シクロヘキサン3kg、1,3−ブタジエン単量体350g、スチレン単量体150g、0.4mmolの2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを注入し、4.5mmolのn−ブチルリチウムを加えた後、50℃の開始温度で1時間重合を行った。重合は昇温条件下で行い、重合中の温度が75℃を超えないようにジャッケット温度を調整した。重合転化率は、ほぼ100%であった。
【0061】
この重合系に、変性剤としてテトラクロロスズの1規定シクロヘキサン溶液を4.0mmolとなるように加えた後に、50℃で40分間変性反応を行なった。この後重合系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液1.0ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い重合体を乾燥して原料ゴムAを得た。原料ゴムA(スチレン−ブタジエン共重合体)について、赤外吸収スペクトル法によってブタジエン部のビニル結合量を測定したところ47.2%であった。また1H−NMRによって結合スチレン量を測定したところ30.4%であった。
原料ゴムの略称、分類、製造条件、変性剤(カップリング)の有無、ゴムの分類がスチレン−ブタジエン共重合体の場合の結合スチレン量とビニル結合量等を、表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
<ゴムの製造例2〜18> 原料ゴムB〜Rの製造
1,3−ブタジエン単量体の量、スチレン単量体の量、ランダマイザーの種類と使用量、n−ブチルリチウム(重合開始剤)使用量、変性剤の種類と使用量を表1に示す条件へ変更し、その他はゴムの製造例1と同様にして原料ゴムB〜Rを製造した。また、原料ゴムB〜Oについては、ブタジエン部のビニル結合量及び結合スチレン量を測定した。
【0064】
<ゴムの製造例19> 原料ゴムSの製造
乾燥し、窒素置換された温度調整ジャッケットつき7.5リットルの耐圧反応装置に、シクロヘキサン3kg、1,3−ブタジエン単量体350g、スチレン単量体150g、0.4mmolの2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを注入し、4.5mmolのn−ブチルリチウムを加えた後、50℃の開始温度で1時間重合を行った。重合は昇温条件下で行い、重合中の温度が75℃を超えないようにジャッケット温度を調整した。重合転化率は、ほぼ100%であった。この重合系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液1.0ミリリットルを加えて反応を停止させ、常法に従い重合体を乾燥して原料ゴムSを得た。また、原料ゴムSについて、ブタジエン部のビニル結合量及び結合スチレン量を測定した。
【0065】
<ゴムの製造例20> 原料ゴムTの製造
スチレン単量体を使用せず、1,3−ブタジエン単量体の量を500g、に変更した以外は製造例19と同様にして、原料ゴムTを得た。
<JSR #1500>
市販品のゴムとして、乳化重合ポリスチレン−ブタジエン共重合体「JSR #1500」(商品名、JSR株式会社製)を用意した。ブタジエン部のビニル結合量は15.9%であり、結合スチレン量は23.5%であった。
【0066】
〔2.可塑剤(ポリブタジエン系化合物等)〕
実施例、比較例に用いる可塑剤について、その種類、化学構造、質量平均分子量等を表2に示した。尚、ポリブタジエン系化合物AおよびBは、アニオン重合により合成することで用意した。また、市販品として、以下のものを用意した。
・G−1000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・G−2000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・G−3000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・B−1000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・B−3000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・C−1000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・GI−1000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・GI−3000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・BI−3000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・CI−1000(商品名、日本曹達株式会社製)、
・LIR−200(商品名、クラレ株式会社製)、
・ポリサイザーP202(商品名、DIC株式会社製)。
【0067】
【表2】

【0068】
〔3.カーボンブラック〕
弾性体層に用いるカーボンブラックとして、下記の市販品を用意した。また、これらのカーボンブラックの種類(チャンネルタイプへの該否)、酸化処理の有無、〔>C=O官能基濃度〕、N2SA、および〔>C=O官能基濃度〕/N2SAの計算値を、表3に示した。
・トーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)、
・デンカブラック粒状品(商品名、電気化学工業株式会社製)、
・シースト6(商品名、東海カーボン株式会社製)、
・シースト9(商品名、東海カーボン株式会社製)、
・トーカブラック#7550(商品名、東海カーボン株式会社製)、
・トーカブラック#7270SB(商品名、東海カーボン株式会社製)、
・PrintexU(商品名、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)、
・Special Black4(商品名、エボニック デグサ ジャパン株式会社製)、
・カーボンブラックA:トーカブラック#7550を室温、3時間、オゾン雰囲気中で酸化処理したもの、
・カーボンブラックB:PrintexUを室温、3時間、オゾン雰囲気中で酸化処理したもの。
【0069】
【表3】

【0070】
〔4.その他の材料〕
実施例、比較例に用いた、その他の材料は以下の通りである。
・炭酸カルシウム「ナノックス#30」(商品名、丸尾カルシウム株式会社製)、
・酸化亜鉛「酸化亜鉛2種」(商品名、ハクスイテック株式会社製)、
・ステアリン酸亜鉛「ジンクステアレート」(商品名、正同化学株式会社製)、
・分散性硫黄「Sulfax 200S」(商品名、鶴見化学工業社製、純度99.5%)、
・ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学社製)、
・テトラメチルチウラムモノスルフィド「ノクセラーTS」(商品名、大内新興化学社製)。
【0071】
[実施例1]現像ローラ1
軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(直径6mm)の外周面に、さらに接着剤(プライマー)を塗布、焼き付けしたものを用いた。
次に、下記成分を50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、原料コンパウンドを調製した。
・原料ゴムA:100質量部、
・「G−3000」(商品名):80質量部、
・「トーカブラック#7360SB」(商品名):60質量部、
・炭酸カルシウム:30質量部、
・酸化亜鉛二種:質量部、
・ステアリン酸亜鉛:2質量部。
【0072】
この原料コンパウンドに、ゴム分(実施例1においては、原料ゴムA100質量部)に対して、下記成分を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性体層用コンパウンドを得た。
・分散性硫黄「Sulfax 200S」(商品名):1.2質量部、
・ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名):1質量部、
・テトラメチルチウラムモノスルフィド「ノクセラーTS」(商品名):0.5質量部。
この弾性体用コンパウンドを押出し成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を130℃で30分間行い、さらに電気炉によって二次加硫を140℃で30分間行ない、ゴム製チューブを得た。このチューブを切断した後、軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(直径6mm)を圧入し、表面を研磨して直径12mmの弾性ローラを得た。
【0073】
次に、ポリオール「ニッポラン5033」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン工業社製)の固形分10質量部、導電剤としてカーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製)を25質量部添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分14%の有機溶剤混合溶液となるよう調製した。この塗料溶液中に、上記弾性ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、145℃にて30分間加熱処理することで、表面層を弾性体層の外周に設けた現像ローラ1を作製した。被覆層(表面層)の厚みは約25μmであった。現像ローラ1を用いて画像形成を行い、性能を評価し、表5の結果を得た。
【0074】
[実施例2〜40]及び[比較例1〜14]
原料ゴムの種類と使用量、可塑剤の種類と使用量、カーボンブラックの種類と使用量を表4に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラ2〜54を製造した。各現像ローラを用いて画像形成を行い、当接部画像の状態、潜像担持体の汚染性、画像濃淡ムラ及び画像縦帯ムラを評価し、表5の結果を得た。尚、各評価方法は以下の通りである。実施例3〜7、10〜15、23、35〜40では、特に良好な結果が得られた。
【0075】
尚、現像ローラの評価方法は以下の通りである。
<1.当接部画像の評価>
シアンカラーカートリッジに現像ローラ1〜28をそれぞれ組み込んだ後、各カートリッジを25℃±2℃、50%RH±5%の環境に、60日間放置した。その後、同環境で上記標準チャートを9枚、ベタ画像を1枚、ハーフトーン画像を1枚連続出力した。得られたベタ画像(10枚目に出力)及びハーフトーン画像(11枚目に出力)について、現像ローラ周期の画像印字方向と垂直な方向のスジ状の濃淡ムラの有無を目視により観察し、下記基準で評価した。前記スジ状の濃淡ムラは、規制ブレード24の現像ローラ1表面との当接部に相当する箇所である。
A:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に、確認されない。
B:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像で確認されるが、ハーフトーン画像では確認されない。
C:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認される。
【0076】
<2.潜像担持体の汚染性>
トナーカートリッジ311(シアン)(商品名、キヤノン製)に現像ローラを組み込み、室温35℃±2℃、相対湿度85%±5%の環境試験機内に14日間放置した。その後に、カートリッジを分解し、潜像担持体表面上への付着の有無を目視で観察した。カートリッジへの現像ローラの組み込み、分解、観察は、室温25℃±2℃、相対湿度50%±5%の環境下にて行った。
なし:潜像担持体表面上への付着がない。
あり:潜像担持体表面上への付着がみられる。
上記、潜像担持体の汚染性の評価において、潜像担持体表面上への付着がない現像ローラに関し、下記の画像評価を行った。なお、比較例4の現像ローラ44は、潜像担持体表面上への付着がみられるが、極めて微量であるため、参考として一緒に評価した。
【0077】
<3.画像評価>
電子写真画像形成装置として、カラーレーザービームプリンター(Satera LBP5400(商品名、キヤノン社製))の出力スピードをA4用紙25枚/分に改造した装置(以下、改造機ともいう。)を用意した。このカラーレーザービームプリンターは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのカラーカートリッジを備え、各カートリッジに対し、画像書き込み手段(レーザービーム)が設けられ、転写ベルトを備えたタンデム型である。尚、標準の画像作成能力はA4サイズで21枚/分である。
上記カラーカートリッジは、感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ規制ブレードが設けられ(一成分接触現像方式対応)、現像ローラは感光体ドラムに当接して配置されている。さらに、前記カラーカートリッジには、感光体ドラムに当接して、クリーニングブレードが設けられている。上記カラーレーザービームプリンターは、帯電ローラによる帯電前に感光体ドラム上に残る帯電を除去するための前露光手段を備えている。シアンカラーカートリッジの現像ローラとして、現像ローラ1〜54をそれぞれ組み込んだ。また、マゼンタ、イエローおよびブラックの各カラーカートリッジは、トナーを抜き取り、さらにトナー残量検知機構を無効として、それぞれのステーションに配置した。
上記各カラーカートリッジを改造機に装着し、低温低湿(温度15℃±2℃、相対湿度20%±5%)及び、高温高湿(温度30℃±2℃、相対湿度80%±5%)下において電子写真画像を作成した。当該画像について、下記のように評価した。転写材としては、レターサイズの普通紙(商品名:XEROX 4024用紙;富士ゼロックス社製)を用いた。
【0078】
<3−1.画像濃淡ムラの評価>
低温低湿(温度15℃±2℃、相対湿度20%±5%)下において、画像出力試験を行い画像の濃淡ムラを評価した。具体的には、以下の通りとした。図5に示す標準チャート(レターサイズ、ベタ黒部6ヶ所と、Sの文字を配置し、印字比率を4%としたもの)の画像を9枚、画像領域全体が一様であるベタ画像を1枚(10枚目)、全面ハーフトーン画像を1枚(11枚目)を連続印刷した。
現像ローラ周期で発生する濃淡ムラの有無を目視により観察し、下記基準で評価し、当該現像ローラでの画像における濃淡ムラとした。
A:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認されない。
B:濃淡ムラが、ベタ画像では確認されるが、ハーフトーン画像では確認されない。
C:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認される確認される。
【0079】
<3−2.画像縦帯ムラの評価>
画像濃淡ムラに用いたベタ画像を1枚(10枚目)、全面ハーフトーン画像を1枚(11枚目)について、目視により現像ローラ周期の画像印字方向の帯状の濃淡ムラ(縦帯ムラ)の有無を検出した。縦帯ムラの有無により下記の基準で現像ローラを評価した。
A:縦帯ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に、確認されない。
B:縦帯ムラが、ベタ画像では確認されるが、ハーフトーン画像では確認されない。
C:縦帯ムラが、ハーフトーン画像でも確認される。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【符号の説明】
【0082】
1 現像ローラ
11 軸芯体
12 弾性体層(基層)
13 被覆層(表層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の外周面に順次、弾性体層、被覆層が積層された現像ローラであって、該弾性体層が、共役ジエン系重合体の架橋物と、一般式(1)で表される、質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを含有し、該共役ジエン系重合体の架橋物と該カーボンブラックとの間に化学結合が形成されていることを特徴とする現像ローラ。
【化1】

(一般式(1)中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、−COOH及び−CH2−CH2−OHからなる群から選ばれる何れかを示し、m及びnは1以上の整数である)。
【請求項2】
前記共役ジエン系重合体が、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体のいずれかである請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるポリブタジエン系化合物が、ポリブタジエングリコールである請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の現像ローラの製造方法であって、スズ原子、窒素原子及び珪素原子の中から選ばれる少なくとも一種を導入しカップリングされた変性共役ジエン系重合体と、一般式(1)で表される質量平均分子量が3000以上7000以下のポリブタジエン系化合物と、カーボンブラックとを混合して未架橋ゴム組成物を調製し、該未架橋ゴム組成物を軸芯体の外周面に形成し、加熱硬化することにより弾性体層を得る工程を有することを特徴とする現像ローラの製造方法。
【化2】

(一般式(1)中、R1及びR2は各々独立して、水素原子、−COOH及び−CH2−CH2−OHからなる群から選ばれる何れかを示し、m及びnは1以上の整数である)。
【請求項5】
前記カーボンブラックが数式(2)で表される特性を有する請求項4に記載の現像ローラの製造方法:
【数1】

(上記数式(2)中、〔>C=O官能基濃度〕はヒドロキシルアミンと反応してオキシムを生成する官能基濃度(meq/g)を表し、N2SAは窒素吸着比表面積(m2/mg)を表す)。
【請求項6】
前記カーボンブラックが、チャンネルタイプのカーボンブラック、またはファーネスブラック及びチャンネルタイプのカーボンブラックよりなる群から選ばれた少なくとも1つを酸化処理を施して得たカーボンブラックであり、数式(3)で表される特性を有する請求項5に記載の現像ローラの製造方法。
【数2】

【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像ローラを有し、画像形成装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像ローラを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58322(P2012−58322A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198995(P2010−198995)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】