説明

現像ローラ、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】高温高湿環境下での保存、使用によっても、表面層の弾性層からの剥離が抑制され、また、表面にトナーが固着しにくい、高品位な電子写真画像の形成に資する現像ローラの提供。
【解決手段】当該現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体上に設けられた付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物を含む弾性層と、該弾性層の周面を被覆しているウレタン樹脂を含む表面層とを有する現像ローラであって、該ウレタン樹脂は、隣接する2つのウレタン結合の間に、下記構造式(1)で示される構造と、下記構造式(2)で示される構造および下記構造式(3)で示される構造から選ばれる一方または両方の構造とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いられる現像ローラ、該現像ローラを有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置(電子写真方式を用いた複写機やファクシミリやプリンタ等)においては、電子写真感光体(以降、「感光体」ともいう)が帯電手段により帯電され、レーザー等により露光され、その結果、感光体上に静電潜像が形成される。次いで、現像容器内のトナーがトナー供給ローラ及びトナー規制部材により現像ローラ上に塗布される。現像ローラによって現像領域に搬送されたトナーによって、感光体と現像ローラとの接触部または近接部で感光体上の静電潜像の現像が行われる。その後、感光体上のトナーは、転写手段により記録紙に転写され、熱と圧力により定着され、感光体上に残留したトナーはクリーニングブレードによって除かれる。
【0003】
現像ローラとしては、10〜1010Ω・cmの電気抵抗を有する弾性ローラが一般に用いられている。また、現像ローラへのより一層の高耐久化、及び、電子写真画像へのより一層の高画質化への要求に鑑み、弾性層の表面に表面層を設けた現像ローラが用いられるようになっている。
【0004】
ここで、現像ローラの弾性層としては、変形回復性と柔軟性に優れるシリコーンゴムが好適に用いられる。また表面層としては耐磨耗性、トナーへの帯電付与性に優れるポリウレタンが用いられている。
【0005】
特許文献1には、シリコーンゴム弾性層上に特定の組成からなるポリテトラメチレングリコール系のポリウレタン表面層を設け、各温湿度環境下での弊害を抑制する方法が開示されている。また、特許文献2ではポリエーテル系ポリウレタン表面層の組成により、低融点トナーの融着を抑制できることが開示されている。
【0006】
さらに特許文献3には、高温高湿環境下での帯電特性を維持するため、吸水率を低くしたポリウレタン表面層を用いた現像ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-141192号公報
【特許文献2】特開2006-251342号公報
【特許文献3】特開平7-199645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、電子写真装置には、より苛酷な環境下においても高画質、高耐久性を維持できることが求められている。
ところで、シリコーンゴムは前述のように弾性層の構成材料として優れた物性を有するものの、低極性の材料である。そのため、シリコーンゴムを含む弾性層を具備している特許文献1〜3に係る現像ローラは、本発明者らの検討によれば、温度40℃、相対湿度95%の高温高湿環境下に長期間放置した際に、表面層がシリコーンゴム弾性層から剥離する場合があった。また特許文献1〜3に係る現像ローラは、その表面にトナーが強固に固着し、当該トナーの固着物に起因する濃度ムラを電子写真画像に生じさせることがあった。
【0009】
本発明の目的は、高温高湿環境下での保存、使用によっても、表面層の弾性層からの剥離が抑制され、また、表面にトナーが固着しにくい、高品位な電子写真画像の形成に資する現像ローラを提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真画像形成装置及びそれに用いられるプロセスカートリッジを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、特定の構造を有するポリウレタン樹脂を含む表面層は、シリコーンゴム弾性層との接着性に優れ、かつ、その表面にはトナーが固着しにくいことを見出し、本発明を為すに至った。
【0012】
すなわち、本発明の一態様によれば、軸芯体、弾性層および該弾性層の表面を被覆している表面層を有し、該弾性層は、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物を含み、該表面層はウレタン樹脂を含み、該ウレタン樹脂は、隣接する2つのウレタン結合の間に、下記構造式(1)で示される構造と、下記構造式(2)で示される構造および下記構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有しているものである現像ローラが提供される。
【化1】

【化2】

【化3】

【0013】
また本発明の他の態様によれば、少なくとも現像ローラが装着されてなり、電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが上記の現像ローラであるプロセスカートリッジが提供される。
【0014】
さらに本発明の他の態様によれば、現像ローラと、該現像ローラと当接して配置されている電子写真感光体とを具備している電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の構造単位を有するウレタン樹脂を含む表面層を、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物を含む弾性層上に設けることで、高温高湿環境下に長期間保管した際も、表面層の剥離、およびトナーの固着の双方を高いレベルで抑制でき、高品位の電子写真画像の形成に資する現像ローラを得られる。
【0016】
また本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジおよび電子写真装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す概念図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である
【図3】本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】液循環型浸漬塗工装置の一例を示す概念図である。
【図5】本発明に係るウレタン樹脂が有する特徴的構造を示す図である。
【図6】本発明に係るウレタン樹脂が有する特徴的構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る現像ローラ1の一実施形態を図1に示す。図1に示した現像ローラ1は、円柱状または中空円筒状の導電性の軸芯体2の外周面に弾性層3が形成されている。また、表面層4は、弾性層3の外周面を被覆している。
【0019】
<軸芯体>
軸芯体2は、現像ローラ1の電極および支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。
【0020】
<弾性層>
弾性層3は、現像ローラと感光体との当接部において、所定の幅のニップを形成するために必要な弾性を現像ローラに与えるものである。弾性層3は、当該弾性層に高い変形からの回復性および高い柔軟性を与える、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物を含む。
【0021】
疎水性相互作用による表面層と弾性層との接着をより強くするために、接着界面近傍の水分子の存在量は少ない方がよいと考えられる。シリコーンゴムは、ゴム成分自体が低極性であり、また、低吸湿性であるため、含有するフィラーの種類によっては、弾性層の吸水率を非常に低いレベルまで低下させることが可能である。それによって、後述する、ウレタン樹脂を含む表面層との疎水性相互作用による高い接着効果をより一層向上させることが可能である。
【0022】
具体的には弾性層3は、日本工業規格(JIS) K7209 A法に基づく吸水率が0.10%以下であることが好ましく、0.02%以上0.10%以下であることがより好ましい。
【0023】
付加硬化型ジメチルシリコーンゴムとしては以下のものが挙げられる。ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、ポリメトキシメチルシロキサン、ポリエトキシメチルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体。
【0024】
弾性層3中には、導電性微粒子を含有させることができる。導電性微粒子としてはカーボンブラック、またはアルミニウム、銅の如き導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンの如き導電性金属酸化物の微粒子を用いることができる。カーボンブラックは比較的低い添加量で良好な導電性が得られるので特に好ましい。
【0025】
弾性層3の吸水率を低くするためには、上記の如き導電性微粒子の中でも、特に水との親和性の低いものを用いることが好ましい。例えば、導電性粒子としてカーボンブラックを用いる場合、比較的一次粒子径が大きく、表面が極性化処理されていないカーボンブラックを選択することが好ましい。具体的には、ゴムの補強性、導電性を考慮すると、一次粒子径が、30nm以上、60nm以下の範囲にあり、表面特性としては、中性または疎水化処理されたもの、すなわち、pH値が5.0以上、8.0以下のカーボンブラックが好適に用いられる。
【0026】
導電性微粒子として前述の如きカーボンブラックを用いる場合の含有量の目安としては、弾性層中のシリコーンゴム100質量部に対して5〜20質量部である。
【0027】
カーボンブラック以外の導電性微粒子を用いる場合は、微粒子の吸湿性に応じて適宜添加量を調整して、弾性層の吸水率が上記した範囲内となるようにすることが好ましい。
【0028】
弾性層3中には、導電性微粒子以外に非導電性充填剤、架橋剤、触媒の如き各種添加剤を適宜含有させてもよい。
【0029】
<表面層>
表面層4に含有されているウレタン樹脂は、隣接するウレタン結合の間に、下記構造式(1)で示される構造と、下記構造式(2)で示される構造および下記構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる何れか一方または両方の構造とを有している。
すなわち、本発明に係るウレタン樹脂は、下記構造式(1)で示される構造と、下記構造式(2)で示される構造および下記構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる何れか一方または両方の構造が、2つのウレタン結合によって挟まれている構造を分子内に有するものである。
【化4】

【化5】

【化6】

【0030】
図5および図6に本発明に係るウレタン樹脂が有する特徴的な構造の一部を示す。図5においては、前記構造式(1)で示される構造と前記構造式(2)で示される構造とが、隣接するウレタン結合A1及びA2によって挟まれている。
また、図6に係るウレタン樹脂においては、隣接しているウレタン結合B1とB2とによって、および、隣接するウレタン結合C1とC2とによって、前記構造式(1)で示される構造と前記構造式(2)で示される構造とが挟まれている。
通常、合成樹脂同士の接着性は、化学結合に加えて、水素結合、酸−塩基相互作用のような、主に極性官能基の相互作用に依存する。しかし、シリコーンゴムは非常に極性が低く、その表面は不活性である。そのため、一般に、シリコーンゴムを含む弾性層とポリウレタン樹脂を含む表面層との接着性に関して、極性官能基による強い相互作用は期待できない。しかしながら、本発明に係る弾性層と表面層とは、苛酷な高温高湿環境下に長期間放置した場合にも良好な接着性を示す。
【0031】
その詳細な理由は現在解明中であるが、本発明者らは以下のように推測している。
【0032】
すなわち、隣接するウレタン結合間に存在する構造式(1)で示される構造と、構造式(2)で示される構造および構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造とを有するウレタン樹脂は、従来のポリエーテルポリウレタンと比較して、メチル基を側鎖に導入したことにより、ポリウレタンとしては非常に低極性となっている。
一方、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物は、シロキサン(Si−O)結合が6個で1回転する「らせん状」の分子構造を有しており、かつ、メチル基が外側に配向していることが知られている。つまり、シリコーンゴムのポリマー鎖の表面は、疎水性のメチル基で実質的に被覆されている。そのため、本発明に係る弾性層中のシリコーンゴム表面のメチル基と、表面層中のウレタン樹脂中の隣接する2つのウレタン結合の間に導入された側鎖としてのメチル基との間に疎水性の分子間に働く引力が作用している。その結果として、本発明に係る表面層と弾性層とは優れた接着性を示すものと考えられる。
【0033】
また、本発明に係るポリウレタンは、構造式(1)で示されるポリエーテル成分を含み、柔軟性に優れる。また、構造式(2)で示される構造、および構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる何れか一方、または両方を含むことにより、低温域での結晶性が著しく低くなっている。そのため、本発明に係るポリウレタンを含む表面層を具備する現像ローラは、低温環境下でも柔軟で、硬度が上昇しにくくなっており、低温環境下でも、トナーに与えるストレスが低く、フィルミングを生じにくいものとなる。
【0034】
更に、本発明に係るポリウレタンは、構造式(1)で示される構造よりも疎水性が高い構造式(2) または(3)で示される構造を分子内に有することにより、ウレタン樹脂自体の水との親和性が低下し、ウレタン樹脂としては比較的に低吸水性とすることが可能である。さらに高温域においては、構造式(2)または(3)で示される構造中の、側鎖としてのメチル基の存在により高温域での分子運動性が抑制される。そのため、本発明に係る現像ローラの表面は、高温高湿環境下においても粘着性が上昇しにくく、高温高湿環境下での現像ローラ表面へのトナーの固着を有効に抑制し得る。
【0035】
本発明に係るウレタン樹脂としては、構造式(1)で示される構造と、構造式(2)および構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも一方とがランダムに共重合されてなるものが好ましい。その理由は、低温域での結晶性の低減効果、および高温域での分子運動性の抑制効果がより高いためである。
【0036】
前述のポリウレタン中、「構造式(1)の構造のモル比」:「構造式(2)または(3)から選ばれる少なくとも一つの構造とのモル比」 は80:20 以上 50:50以下であることが好ましい。各化学式の構造のモル比がこの範囲であると、表面のトナー固着性、また表面層剥がれの両面において、より優れた抑制効果を得られる。また低温域での柔軟性にも優れるため、耐久性も良好となる。
【0037】
表面層に含まれるポリウレタンは、構造式(1)の構造と、構造式(2) および(3)から選ばれる少なくとも一つの構造を有するポリエーテルジオールまたは該ポリエーテルジオールと芳香族ジイソシアネートを反応させた水酸基末端プレポリマーと、該ポリエーテルジオールと芳香族イソシアネートを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーとを熱硬化することにより得られるものであることが好ましい。
【0038】
通常、ポリウレタンの合成は、以下の如き方法が用いられる。
・ポリオール成分とポリイソシアネート成分を混合、反応させるワンショット法、
・一部のポリオールとイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、低分子ジオール、低分子トリオールの如き鎖延長剤とを反応させる方法
【0039】
しかし、構造式(1)の構造、および構造式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも一つの構造とを有するポリエーテルジオールは極性の低い材料である。そのため、極性の高いイソシアネートとの相溶性が低く、系内にポリオールの比率の高い部分と、イソシアネートの比率が高い部分に微視的に相分離しやすい。ポリオールの比率の高い部分は未反応成分が残存しやすく、残留する未反応ポリオールの染み出しにより表面トナー固着の原因となる場合がある。
【0040】
未反応ポリオールの残留を低減するため、高極性のイソシアネートを過剰に使用する必要があり、その結果として、ポリウレタンの吸水率は高いものになる場合が多い。また前述のいずれの方法も、イソシアネート同士の反応が高い比率で起こる場合が多く、高極性であるウレア結合、アロファネート結合を生じる。
【0041】
構造式(1)の構造と、構造式(2)および(3)から選ばれる少なくとも一つの構造を有するポリエーテルジオールまたは該ポリエーテルジオールと芳香族ジイソシアネートを反応させた水酸基末端プレポリマーと、該ポリエーテルジオールと芳香族イソシアネートを反応させたイソシアネート基末端プレポリマーとを熱硬化させることにより、ポリオールとイソシアネートとの極性差を小さくすることができる。
そのためポリオールとイソシアネートの相溶性を向上させ、従来例より少ないイソシアネート比率で、より極性の低いポリウレタンが得られる。さらに未反応ポリオールの残留を非常に低く抑えることが可能であるため、未反応ポリオールの染み出しによる表面トナー固着を抑制することができる。
【0042】
構造式(1)の構造、および構造式(2)または(3)の構造からなるポリエーテルジオールを芳香族ジイソシアネートと反応させた水酸基末端プレポリマーとして使用する場合、プレポリマーの数平均分子量としては10000以上15000以下が好ましい。
【0043】
またイソシアネート基末端プレポリマーとして使用する際は、プレポリマーのイソシアネート含有量が3.0質量%から4.0質量%の範囲にあることが好ましい。水酸基末端プレポリマーの分子量、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート含有量がこの範囲にあると、生成するポリウレタンの低吸水率化と未反応成分の残留抑制のバランスが良く、トナー固着、表面層の剥がれを抑制する効果においてより高いレベルで両立できる。
【0044】
また、本発明に係るポリウレタンは、下記(a)の水酸基末端プレポリマーと、下記(b)のイソシアネート基末端プレポリマーとを熱硬化させたものであることがより好ましい。
(a)構造式(1)の構造、および構造式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも一つの構造からなる数平均分子量2000以上3000以下のポリエーテルジオールと芳香族ジイソシアネートを反応させた数平均分子量10000以上15000以下の水酸基末端プレポリマー
(b)構造式(1)の構造、および構造式(2)及び(3)から選ばれる少なくとも一つの構造からなる数平均分子量2000以上3000以下のポリエーテルジオールと芳香族イソシアネートを反応させたイソシアネート基末端プレポリマー
【0045】
数平均分子量2000以上3000以下の該ポリエーテルジオールを、水酸基末端プレポリマーおよびイソシアネート基末端プレポリマーの原料として用いると、最終的に得られるポリウレタンの低吸水率化を図ることができ、また未反応成分の残留を抑制することができる。さらに表面層の強度と粘着性にも優れるため、耐久性も向上することができる。
【0046】
2つのウレタン結合の間には、構造式(1)の構造と、構造式(2)および(3)から選ばれる少なくとも一つの構造以外に、本発明の効果が損なわれない程度に必要に応じてポリプロピレングリコール、脂肪族ポリエステルを含有してもよい。脂肪族ポリエステルとしては、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1.5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られる脂肪族ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0047】
これらのポリオール成分は必要に応じてあらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
【0048】
構造式(1)の構造と、構造式(2)および(3)から選ばれる少なくとも一つの構造以外の成分は、本発明の効果発現の観点から、ポリウレタン中、20質量%以下の含有率とすることが好ましい。
【0049】
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、そのブロック体を用いることができる。
【0050】
この中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネートがより好適に用いられる。
【0051】
芳香族イソシアネートとウレタン結合同士の間に、構造式(1)と、構造式(2)および(3)から選ばれる少なくとも一つの構造を有するポリエーテル成分とを反応させて得られるポリウレタンは、柔軟かつ強度に優れ、高温高湿下で粘着性が低いため好ましい。
【0052】
ポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物の混合比は、ポリオールの水酸基1.0に対してイソシアネート基の比率が1.2から4.0の範囲であることが好ましい。
【0053】
表面層4は導電性を有することが好ましい。導電性の付与手段としてはイオン導電剤や導電性微粒子の添加が挙げられるが、安価であり抵抗の環境変動が少ない導電性微粒子が好適に用いられ、また導電付与性と補強性の観点からカーボンブラックが特に好ましい。該導電性微粒子の性状としては、一次粒子径18nm以上50nm以下、かつDBP吸油量が50ml/100g以上160ml/100g以下であるカ−ボンブラックであると、導電性、硬度、分散性のバランスが良好であり好ましい。導電性微粒子の含有率は、表面層を形成する樹脂成分100質量部に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0054】
現像ローラとして表面粗度が必要な場合は、表面層4に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。粗さ制御用微粒子としては、体積平均粒径が3〜20μmであることが好ましい。また、表面層に添加する粒子添加量が、表面層の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の微粒子を用いることができる。
【0055】
表面層4の形成方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレー、浸漬、又はロールコートが挙げられる。浸漬塗工は、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0056】
図4は浸漬塗工装置の概略図である。25は円筒形の浸漬槽であり、現像ローラ外径よりわずかに大きな内径を有し、現像ローラの軸方向の長さより大きな深さを有している。浸漬槽25の上縁外周には環状の液受け部が設けられており、撹拌タンク27と接続されている。また浸漬槽25の底部は撹拌タンク27と接続されている。撹拌タンク27の塗料は、液送ポンプ26によって浸漬槽25の底部に送り込まれる。浸漬槽の上端部からは、塗料がオーバーフローしており、浸漬槽25の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンク27に戻る。弾性層3を設けた芯体2は昇降装置28に垂直に固定され、浸漬槽25中に浸漬し、引き上げることで表面層4を形成する。
【0057】
本発明の現像ローラは、磁性一成分現像剤や非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置や、二成分現像剤を用いた現像装置等いずれにも適用することができる。
【0058】
図2は、本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。図2に示したプロセスカートリッジ17は、現像ローラ1、現像ブレード21、及び現像装置22、電子写真感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、および、帯電ローラ24が一体化され、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されている。現像装置22は、トナー容器20を含み、トナー容器20中には、トナー20aが充填されている。トナー容器20中のトナー20aは、トナー供給ローラ19によって現像ローラ1の表面に供給され、現像ブレード21によって、現像ローラ1の表面に所定の厚みのトナー20aの層が形成される。
【0059】
図3は、本発明に係る現像ローラを用いた電子写真装置の断面図である。図3の電子写真装置には、現像ローラ1、トナー供給ローラ19、トナー容器20および現像ブレード21からなる現像装置22が脱着可能に装着されている。また、感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、帯電ローラ24からなるプロセスカートリッジ17が脱着可能に装着されている。また、感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、帯電ローラ24は電子写真装置本体に配備されていてもよい。感光体18は矢印方向に回転し、感光体18を帯電処理するための帯電ローラ24によって一様に帯電され、感光体18に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光体18に対して接触配置される現像装置22によってトナー20aを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0060】
現像は露光部にトナー像を形成する所謂反転現像を行っている。可視化された感光体18上のトナー像は、転写部材である転写ローラ29によって記録媒体である紙34に転写される。紙34は、給紙ローラ35および吸着ローラ36を経て装置内に給紙され、エンドレスベルト状の転写搬送ベルト32により感光体18と転写ローラ29の間に搬送される。転写搬送ベルト32は、従動ローラ33、駆動ローラ28、テンションローラ31により稼働している。転写ローラ29および吸着ローラ36には、バイアス電源30から電圧が印加されている。トナー像を転写された紙34は、定着装置27により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0061】
一方、転写されずに感光体18上に残存した転写残トナーは、感光体表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード26により掻き取られ廃トナー収容容器25に収納され、クリーニングされた感光体18は上述作用を繰り返し行う。
【0062】
現像装置22は、一成分現像剤としてトナー20aを収容したトナー容器20と、トナー容器20内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体18と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ1とを備えている。この現像装置22は感光体18上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【実施例】
【0063】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について示す。
【0064】
(軸芯体2の用意)
軸芯体2として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマー(商品名、DY35−051;東レダウコーニング社製)を塗布、焼付けしたものを用意した。
【0065】
(弾性ローラの作成)
(弾性ローラC−1)
上記で用意した軸芯体2を金型に配置し、下記表1に記載した材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【表1】

続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを温度150℃で15分間加硫して硬化させた。周面に硬化したシリコーンゴム層が形成された軸芯体を金型から脱型した後、当該芯金を、さらに温度180℃で1時間加熱して、シリコーンゴム層の硬化反応を完了させた。こうして、軸芯体2の外周に直径12mmのシリコーンゴム弾性層が形成された弾性ローラC−1を作成した。
【0066】
(弾性ローラC−2)
カーボンブラックを、トーカブラック#4400(商品名、;東海カーボン社製)10質量部に変更した以外は弾性ローラC−1と同様にして、弾性ローラC−2を作成した。
【0067】
(弾性ローラC−3)
カーボンブラックの量を5質量部に変更した以外は弾性ローラC−1と同様にして弾性ローラC−3を作成した。
【0068】
(弾性ローラC−4)
カーボンブラックの量を10質量部に変更し、また、耐熱性付与剤およびその添加量を、疎水処理シリカ粉体5質量部に変更した以外は、弾性ローラC−1と同様にして弾性ローラC−4を作成した。
【0069】
(弾性ローラC−5)
カーボンブラックの量を12質量部に変更した以外は弾性ローラC−2と同様にして弾性ローラC−5を作成した。
【0070】
(弾性ローラC−6)
カーボンブラックおよびシリカ粉体の種類及び量を下記表2に示したように変更した以外は弾性ローラC−1と同様にして弾性ローラC−6を作成した。
【表2】

【0071】
(弾性ローラC−7)
弾性層を構成する材料を下記表3に記載したものに変更した。それ以外は弾性ローラC−1と同様にして弾性ローラC−7を作成した。
【表3】

【0072】
(表面層4の調製)
以下に本発明のポリウレタン表面層を得るための合成例を示す。
【0073】
[共重合体の分子量測定]
本実施例中における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定に用いた装置、並びに条件は以下の通りである。
測定機器:HLC−8120GPC(東ソ−社製)
カラム:TSKgel SuperHZMM(東ソ−社製)×2本
溶媒:THF(20mmol/L トリエチルアミン添加)
温度:40℃
THFの流速:0.6ml/min
なお測定サンプルは0.1質量%のTHF溶液とした。更に検出器としてRI(屈折率)検出器を用いて測定を行った。
【0074】
検量線作成用の標準試料として、TSK標準ポリスチレンA−1000、A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、F−80、F−128(東ソ−社製)を用いて検量線の作成を行った。これを基に得られた測定サンプルの保持時間から重量平均分子量を求めた。
【0075】
(ポリエーテルジオール A−1〜A−6の合成)
反応容器中で、乾燥テトラヒドロフラン 144.2g(2モル)、乾燥3−メチルテトラヒドロフラン 172.2g(2モル)(モル混合比50/50)の混合物を、温度10℃に保持した。70%過塩素酸13.1g、及び無水酢酸 120gを加え、3時間反応を行った。次に反応混合物を20%水酸化ナトリウム水溶液600g中に注ぎ、精製を行った。さらに減圧下残留する水及び溶媒成分を除去し、液状のポリエーテルジオールA−1 224gを得た。数平均分子量は1000であった。
【0076】
乾燥テトラヒドロフランと乾燥3−メチルテトラヒドロフランのモル混合比、および反応時間を下記表4のように変更した以外は同様の条件にして、ポリエーテルジオール A−2〜A−6を得た。
【0077】
【表4】

【0078】
(水酸基末端ウレタンプレポリマー A−7の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中で、MDI(商品名:コスモネートMDI、三井化学社製)28.4質量部に対し、反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、200.0gのポリエーテルジオールA−1を徐々に滴下した。滴下終了後、温度75℃にて3時間反応させた。得られた反応物を室温(25℃)まで冷却して、水酸基末端ウレタンプレポリマーA−7を226g得た。数平均分子量は15000であった。
【0079】
(水酸基末端ウレタンプレポリマー A−8およびA−9の合成)
反応に用いたポリエーテルジオールおよび反応時間を下記表5に記載したように変更した以外は同様の条件にして、水酸基末端ウレタンプレポリマーA−8、A−9を得た。各々のプレポリマーA−8及びA−9の数平均分子量を表5に併せて示す。
【0080】
【表5】

【0081】
(イソシアネート基末端プレポリマー B−1の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でトリレンジイソシアネート(TDI)(商品名:コスモネート80;三井化学社製)69.6質量部に対し、ポリプロピレングリコール系ポリオール (商品名:エクセノール1030;三洋化成工業社製)200.0gを反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。
滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量4.8%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーB−1を244g得た。
【0082】
(イソシアネート基末端プレポリマー B−2の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMT 日本ポリウレタン工業社製)76.7質量部に対し、ポリプロピレングリコール系ポリオール (商品名:エクセノール1030 三洋化成工業社製) 200.0gを反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。
滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量4.7%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーB−2を229g得た。
【0083】
(イソシアネート基末端プレポリマーB−3〜B−4の合成)
ポリエーテルジオールを前記表4のポリエーテルジオールA−6およびA−3に変更した以外はイソシアネート基末端プレポリマーB−2と同様にして、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーB−3およびB−4を得た。
【0084】
(イソシアネート基末端プレポリマー B−5の合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でコロネート2030(商品名、日本ポリウレタン工業社製)46.4質量部に対し、前記表4のポリエーテルジオールA−6を200.0g反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。
滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量3.4%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーB−5を229g得た。
イソシアネート基末端プレポリマーB−1〜B−5の合成に用いたポリエーテルジオール種と、イソシアネート種および各イソシアネートのNCO%を表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
(実施例1)
以下に、本願発明の現像ローラの製造法について説明する。
表面層4の原材料として下記表7に記載の材料を反応容器に加え、撹拌混合した。
【表7】

【0087】
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下MEK)を加えた後、サンドミルにて混合した。ついで、更に、MEKで粘度10〜13cpsに調整して表面層形成用塗料を調製した。
先に作成した弾性ローラC−2を、表面層形成用塗料に浸漬して、弾性ローラC−2の弾性層の表面に当該塗料の塗膜を形成し、乾燥させた。さらに温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例1に係る現像ローラを作成した。
【0088】
本発明の表面層が構造式(1)で示される構造と、構造式(2)で示される構造および構造式(3)で示される構造から選ばれる一方または両方の構造とを有していることは、例えば熱分解GC/MS、FT−IRまたはNMRによる分析等により確認することが可能である。
【0089】
本実施例で得られた表面層については、熱分解装置(商品名:パイロホイルサンプラーJPS−700、日本分析工業社製)およびGC/MS装置(商品名:Focus GC/ISQ、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、熱分解温度を590℃、キャリアガスとしてヘリウムを使用し、分析を行った。その結果、得られたフラグメントピークから、構造式(1)で示される構造と、構造式(2)で示される構造および構造式(3)で示される構造から選ばれる一方または両方の構造とを有していることが確認された。
【0090】
こうして得られた実施例1に係る現像ローラについて以下の項目を評価した。
【0091】
[表面層剥がれの評価、および剥離強度の測定]
高温苛酷環境下における表面層剥がれの評価は、以下の方法で行った。
実施例1に係る現像ローラを、気温40℃、相対湿度95%RHの環境下、60日間放置した。その後3時間室温下に放置し、現像ローラの両端部に10mm×50mmの切り込みを入れた。現像ローラを水平に固定し、切り込みの角から表面層を垂直方向に、10mm/minの速度で引っ張り、強制的に剥離した際の荷重をロードセルで測定した。測定は現像ローラの両端部で各々計3回行い、n=6の平均値を剥離強度とした。
次に剥離面の観察を行った。弾性層または表面層の内部で破壊した部分(凝集破壊)は除き、以下の基準で表面層剥がれの評価とした。
A:表面層、弾性層界面での剥離が全く認められない
B:剥離面中、20%以下の範囲で表面層、弾性層界面での剥離が認められるが使用上問題ないレベルである
C:剥離面の大部分または前面で表面層、弾性層界面での剥離が認められる
【0092】
[表面硬度の測定]
現像ローラの表面硬度を、マイクロゴム硬度計(商品名:MD−1capa、高分子計器社製)にて、直径0.16mm押針を用い、気温25℃、相対湿度50%RH環境下、導電性樹脂層形成後の現像ローラの中央部、上端部、下端部3点を測定した平均値を用いた。
【0093】
[フィルミングの評価]
フィルミングの評価は、図3のような構成を有するレーザプリンタ(商品名:LBP5300;キヤノン社製)に本実施例の現像ローラを装填し、評価を行った。即ち、気温15℃、相対湿度10%RHの環境(以下L/L)下、ブラックトナーを用いて、A4サイズの紙上に、サイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字を、印字率1%となるような電子写真画像を連続印刷した。1000枚印字する度に、現像ローラの表面を目視で観察し、現像ローラの表面にブラックトナーが固着していることが確認できた時点における画像の印字枚数をフィルミングが発生した枚数とした。
【0094】
[トナー固着濃度の測定]
高温高湿環境下におけるトナー固着濃度の評価は、以下の方法で行った。
図3のような構成を有するレーザプリンタ(商品名:LBP5300;キヤノン社製)用のイエロートナーカートリッジに実施例1に係る現像ローラを装着した。このイエロートナーカートリッジを上記レーザプリンタに装填した。そして、このレーザプリンタを用いて白ベタ画像の出力動作を行って、現像ローラの表面がイエロートナーでコートされた状態とした。このような状態にある現像ローラをイエロートナーカートリッジから取り出した。この現像ローラを、ポリテトラフルオロエチレン製の平板上に載せて、300gf荷重(軸芯体両端に各150gf荷重)で平板に対して現像ローラを圧接し、気温40℃、相対湿度95%RHの環境下で、60日間放置した。次いで、現像ローラを、平板に対する圧接状態から解放し、温度25℃、相対湿度45%の環境に3時間静置し、その後、現像ローラの表面をエアブローした。
ついで、現像ローラ上に固着したトナーを、粘着テープを用いて剥離した。このイエロートナーが付着した粘着テープを普通紙上におき、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)を用いて反射濃度を測定した。また、対照として、トナーの付着していない粘着テープを同様に普通紙上におき、同様にして反射濃度を測定した。そして、トナーの付着していない粘着テープの反射濃度を基準として、反射率の低下量(%)を算出した。この測定は、現像ローラの中央部、および両端部の計3点で行い、その算術平均値を、評価対象の現像ローラのトナーの固着濃度とした。
【0095】
[弾性層吸水率の測定]
弾性層3の吸水率の測定は、試験片として弾性層を2mm×2mm×25mmに切り出した後、日本工業規格(JIS) K7209 A法に準じて行い、n=3の平均値を弾性層の吸水率とした。
【0096】
(実施例2〜19)
表面層4の原材料として、下記表8の材料を用いた以外は実施例1と同様に表面層形成用塗料を作成した。そして、各塗料を、表8に示した弾性ローラに対して、実施例1と同様にして塗布、乾燥および加熱を行って実施例2〜19に係る現像ローラを作成した。
【0097】
【表8】

【0098】
(比較例1)
表面層4の材料として、下記表9に記載の材料を反応容器に入れ、撹拌混合した。
【表9】

以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして比較例1に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして弾性ローラC−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、比較例1の現像ローラを作成した。
【0099】
(比較例2)
表面層4の材料として、下記表10に記載の材料を反応容器に入れて、撹拌混合した。
【表10】

以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして比較例2に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして弾性ローラC−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、比較例2の現像ローラを作成した。
【0100】
(比較例3)
表面層4の材料として、下記表11に記載の材料を反応容器に入れて、撹拌混合した。
【表11】

以降は、実施例1に係る表面層形成用塗料の調製方法と同様にして比較例3に係る表面層形成用塗料を調製した。この表面層形成用塗料を実施例1と同様にして弾性ローラC−1のシリコーンゴム弾性層の表面に塗工、乾燥させて表面層を形成し、比較例3の現像ローラを作成した。
【0101】
上記実施例2〜19および比較例1〜3に係る各現像ローラについて、実施例1と同様にして評価した。その結果を表12および表13に示す。
【0102】
【表12】

【0103】
【表13】

【0104】
実施例1〜19は、高温苛酷環境下に長期間放置した後も、表面層の剥離、ローラ表面の硬度上昇、およびトナーの固着が全て抑制されている。
【0105】
特に構造式(1)と(2)または(3)の構造を有するポリエーテルジオールを芳香族イソシアネートと反応させたプレポリマーとした後、さらに硬化反応を行う実施例1〜9、および13は、表面層の剥離とトナー固着がきわめて高いレベルで抑制されている。
【0106】
一方、比較例1〜3の、本発明に係るウレタン樹脂を表面層に含まない現像ローラについては、トナーの固着、または表面層の剥離が発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体、弾性層および該弾性層の表面を被覆している表面層を有する現像ローラであって、
該弾性層は、付加硬化型ジメチルシリコーンゴムの硬化物を含み、
該表面層はウレタン樹脂を含み、
該ウレタン樹脂は、隣接する2つのウレタン結合の間に、
下記構造式(1)で示される構造と、
下記構造式(2)で示される構造および下記構造式(3)で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも一方の構造と、を有しているものであることを特徴とする現像ローラ:
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項2】
前記弾性層の日本工業規格(JIS)K7209 A法に基づく吸水率が0.02%以上、0.10%以下である請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像ローラと、該現像ローラと当接して配置されている電子写真感光体とを具備していることを特徴とする電子写真装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の現像ローラと、該現像ローラと当接して配置されている電子写真感光体とを具備し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−150453(P2012−150453A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−274581(P2011−274581)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】