説明

現像ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】 高画質化を図り、画像耐久性に優れ、トナーの変質や劣化を生じさせることがなく、現像スジなどを発現させずにトナーを均一に供給し高品位の画像形成ができ、高画質、省エネ、安定した画像の形成が要請される電気写真装置に好適に搭載することができる現像ローラを得ること。
【解決手段】 軸芯体の周囲に導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周に樹脂粒子を含む導電性樹脂層とを有する電子写真装置用またはプロセスカートリッジ用現像ローラであって、軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してA%、軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してB%のとき、10≦A≦40 且つ A≦B/2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置など電子写真装置に組み込まれる感光体に接触させて使用される現像ローラや、これを用いたプロセスカートリッジや電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置など電子写真装置においては、帯電手段により帯電した感光体に画像を通して光を照射し、画像に相当する部分以外、あるいは画像に相当する部分を放電することにより画像に対応した静電潜像を感光体に形成し、これにトナーを供給して静電潜像を現像し、静電潜像に付着したトナーを転写体上へ転写し、更に転写体上のトナーを記録材上へ転写、定着し、一方、トナーを転写した後の感光体は表面を除電しクリーニング工程を経て、記録材上への画像の形成が行われている。このような電子写真装置においては、103〜1010Ωの半導電性領域でその目的にあった導電性(電気抵抗)を有する弾性ローラが一般に用いられており、より高品質化するため、導電性ゴム層上に1または2以上の複数の樹脂層を形成した半導電性ないし導電性ローラが多用されている。また、かかる電子写真装置においてメンテナンスを容易にするため、電子写真装置に着脱自在に組み込まれるプロセスカートリッジには、トナーが収納されると共に現像ローラが設けられている。このような電子写真装置やプロセスカートリッジに設けられる現像ローラは、例えば、非磁性一成分接触現像方式の電子写真装置では、トナーを感光体上の静電潜像に供給するため感光体に圧接して設けられ、安定したトナー搬送ができるように、ローラの表面を適度な表面粗度に調整されて組み込まれている。現像ローラの表面を所望の粗度とするための手段として、表面層に粒径10〜150μmの有機高分子化合物粒子を含む樹脂を用いる方法(特許文献1)が知られており、かかる方法はローラの製造において研磨工程が省略でき、簡便な表面粗度調整法として有用である。
【特許文献1】特許第3112489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、電子写真装置に対しては高画質、安定した画像の形成、省エネの要請が高く、より柔軟で低融点のトナーが用いられるようになっている。しかしながら、このような柔軟で低融点のトナーは劣化を受け易く、劣化したトナーを感光体に均一に供給することはむずかしく、高画質と、写真画像などのベタ画像に対してもトナーが均一に供給されムラが生じないという画像耐久性とを両立できる現像ローラが特に要請されているが、特許文献1の方法においては、長期にわたる連続した現像工程により、トナーに対しストレスを与え、変質や劣化したトナー塊による現像スジの発生などの画像に悪影響を及ぼすなどの問題が懸念される。
【0004】
本発明の課題は、柔軟で低融点の高画質用トナーに対しても変質や劣化の発生を長期に亘って抑制し、現像スジなどの発生を抑制しトナーを均一に長期に亘って安定して供給することができる画像耐久性(画像安定性)に優れ、しかも、高品位の画像形成を可能とする現像ローラや、これを用いて高画質化と長期に亘る画像安定性を両立し得るプロセスカートリッジや電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、現像ローラのニップ面積と現像ローラ表面の状態がトナーに及ぼす影響や、これらと高画質画像形成との関連性について鋭意研究した結果、現像ローラを特定の荷重をしてガラス面に圧接したとき、現像ローラがガラス面に接触する面積と、該ガラス面とのニップ面積とが特定の割合を有するような、弾性と表面状態を備えることにより、電子写真装置において高画質化を図ると共に、画像安定性や画像耐久性に優れた現像ローラを得ることができることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、軸芯体の周囲に導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周に樹脂粒子を含む導電性樹脂層とを有する現像ローラであって、
軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してA%、
軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してB%のとき、
10≦A≦40 且つ A≦B/2
であることを特徴とする現像ローラに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の現像ローラは、柔軟で低融点の高画質用トナーに対しても変質や劣化の発生を長期に亘って抑制し、現像された画像において現像スジなどが発生することを抑制しトナーを均一に長期に亘って安定して供給することができる画像耐久性(画像安定性)に優れ、しかも、高品位の画像形成を可能とし、高画質化と長期に亘る画像安定性の両立が要請される電気写真装置に好適に搭載することができる。また、本発明のプロセスカートリッジや電子写真装置は、高画質化と、長期に亘る画像耐久性や画像安定性との両立を図り、省エネを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の現像ローラは、軸芯体の周囲に導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周に樹脂粒子を含む導電性樹脂層とを有する現像ローラであって、
軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してA%、
軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してB%のとき、
10≦A≦40 且つ A≦B/2
であるものであれば、特に制限されるものではない。
【0009】
本発明の現像ローラに用いられる軸芯体は、現像ローラの支持部材として機能するものであり、また、現像ローラ表面に付着させたトナーを感光体上の静電潜像に搬送できるように、静電潜像との関連において現像ローラ表面を適切な導電性とするための電極となり得ることが好ましく、例えばアルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄などの他、導電性を有する合成樹脂などの導電性の材質のものが好ましい。軸芯体の外径は、搭載される電子写真装置との関連において適宜選択することができ、例えば、通常4〜10mmの範囲のものを例示することができる。
【0010】
このような軸芯体の外周に設けられる導電性弾性層は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を現像ローラに付与するものである。また、外周に設けられる導電性樹脂層の表面に付着させたトナーを感光体上の静電潜像に供給できるように、静電潜像との関連において導電性樹脂層を適切な導電性に保持できるものが好ましい。このような導電性弾性層の材質としては、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴム材を単独であるいは2種以上を混合したものを挙げることができる。これらのうちシリコーンゴムは、電子写真装置の停止時に、現像ブレードなどの現像ローラ上のトナー層の厚さを調整するトナー層厚規制部材に当接して局部的な負荷を継続して受けた部分が圧接痕として画像上に発生するのを抑制できる、いわゆるセット性能等の観点から好ましい。かかるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を挙げることができる。
【0011】
これらのゴム材には導電性付与剤が必須成分として含有される。導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、銅等の導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン等の導電性金属酸化物などの微粒子を用いることができる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な帯電性が得られるので好ましい。
【0012】
その他、導電性弾性層の作製に用いられるゴム材には、これらの機能を害さない範囲で、非導電性充填剤、架橋剤、触媒等の各種添加剤を適宜含有させることができ、例えば、珪藻土、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等の非導電性充填剤や、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の架橋剤などを含有させることができる。
【0013】
このような導電性弾性層の体積固有抵抗値は、100Vの直流電圧印加時で103〜108Ω・cmの範囲にあることが好ましい。例えば、導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、上記範囲の体積固有抵抗値を有するものとするために、ゴム材中のゴム100質量部に対して15〜80質量部配合することができる。
【0014】
また、導電性弾性層の厚さは2.0〜6.0mmの範囲にあることが好ましく、3.0〜5.0mmの範囲にあることがより好ましい。この範囲であると、現像ローラにおいて適切なニップ幅、ニップ圧を有するものとすることができる。
【0015】
このような導電性弾性層の外周に設けられる導電性樹脂層は、樹脂粒子を含むものであれば、特に制限されるものではなく、導電性樹脂層を構成する樹脂固形分中に導電性を付与する導電剤と、樹脂粒子とを含有するものが好ましい。かかる樹脂固形分としては、いずれの樹脂も含有するものであってもよいが、現像ローラを特定のニップ面積を有するものとするため、また、皮膜強度、トナー帯電性等の観点から、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂またはポリエーテル樹脂等が好ましく、これらの1種または2種以上を、使用される現像システムに応じたトナー帯電量を得ることができるように適宜選択して用いることができる。これらの樹脂のうち、ガラス面に圧接した際の特定のニップ幅を現像ローラに付与するためには、ウレタン系樹脂が特に好ましく、かかるウレタン系樹脂としては2官能のポリエーテルポリオールと2官能のイソシネート成分を鎖延長させて得られるウレタン化ポリオールが好ましい。ウレタン化ポリオールのポリエーテルポリオール成分として、具体的にメチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコールを単重合、またはこれらグリコールの2種以上のモノマーの共重合体として得られる2官能のポリグリコールなどを挙げることができ、特に、ポリテトラメチレングリコールを好ましいものとして挙げることができる。また、ウレタン化ポリオールのイソシアネート成分としては、具体的にイソシアン酸の他、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチルなどを挙げることができる。
【0016】
このようなウレタン化ポリオールは、重量平均分子量が10000〜50000であり、分子量分散度がMw/Mn=3.0以下、Mz/Mw=2.5以下であることが好ましい。このようなウレタン化ポリオールを含む導電性樹脂層を有することにより、比較的融点の低い柔軟なトナーに対してストレスを与えることがなく、現像ローラにおいて高画質画像形成性、画像耐久性を備えた高品位なものとすることができる。かかるウレタン化ポリオールは導電性樹脂層を構成する樹脂固形分中に70〜95質量%含有されることが好ましい。上記ウレタン化ポリオールの導電性樹脂層を構成する樹脂固形分中の含有量がこの範囲であれば、トナーに与えるストレスを抑制することができ、現像ローラが高画質画像形成性、画像耐久性を有する。
【0017】
上記導電性樹脂層に含有される樹脂粒子は、材質などいずれのものであってもよいが、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD7000(島津製作所製)により、分散媒に純水を用いた測定(試料20gに純水50mlを加え、5分間超音波照射した後、サンプラーバス中に滴下し、3回測定平均値として求めた値)において、体積平均粒径Dが10〜25μmであり、体積分布における変動係数Cが、C≦1.0[但し、C=(Sw/D)×100で表され、Swは粒子の体積分布における標準偏差(上記体積平均粒径Dの測定における値)を示し、Dは粒子の体積平均粒径を示す。]である粒度分布を有することが好ましい。更に、樹脂粒子は、MCTM−500(島津製作所製)を用い、平面50の圧子(モード1)にて10%圧縮時の微小圧縮弾性率(平均的な大きさの樹脂粒子を計10回測定)として0.20〜1.20MPaであることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.50MPaである。樹脂粒子がこの範囲の弾性率を有することにより、現像ローラにおいて画像耐久性や高画質画像形成性が得られる特定のニップ幅および表面の状態を有し、トナーの搬送を良好に行うことができる。
【0018】
このような樹脂粒子の材質としては特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂粒子の含有量は、導電性樹脂層の樹脂固形分100質量部に対し、5〜15質量部であることが、現像ローラにおいて特定のニップ面積を有するものとすることができるため、好ましい。
【0019】
この導電性樹脂層には、導電性を付与するために導電剤が含有されることが好ましい。導電性付与剤としては、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックの導電性樹脂層中の含有量は、導電性樹脂層を形成する樹脂固形分100質量部に対して、10〜50質量部であることが、現像ローラとしての導電性を好ましい範囲にすることができるため好ましい。使用するカーボンブラックの平均粒径およびDBP吸油量に特に制限はないが、皮膜強度と導電付与性の点から、平均粒径15〜50nm、DBP吸油量70〜150ml/100gであることが好ましい。
【0020】
このような導電性樹脂層の膜厚はいずれであってもよいが、導電性や含有する樹脂粒子の粒子径との関係において適宜選択することができ、5〜100μmであることが好ましい。この範囲であると含有する樹脂粒子により現像ローラの表面にトナーを保持することができる凹凸を形成することができ、表面を粗面化する工程を不要とできる。
【0021】
本発明の現像ローラは、軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してA%、軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してB%のとき、
10≦A≦40 且つ A≦B/2
との関係を有する。本発明の現像ローラは、ガラス面に軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重により圧接したとき、現像ローラ表面とガラス面との接触を巨視的に観察したときのニップ面積100%に対し、現像ローラ表面とガラス面との接触を微視的に観察したときの現像ローラがその凸部分においてガラス面と接触する面積A%が、10≦A≦40の範囲であるような凹凸状態の表面を有する。更に、本発明の現像ローラは、ガラス面に軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重により圧接したとき、現像ローラ表面とガラス面との接触を巨視的に観察したときのニップ面積100%に対し、現像ローラ表面とガラス面との接触を微視的に観察したときの現像ローラがその凸部分においてガラス面と接触する面積B%が、A≦B/2の範囲であるような凹凸状態の表面を有する。このような特定のニップ面積を有するため、本発明の現像ローラにおいては柔軟なトナーに対して劣化を生じさせることを抑制することができ、連続的な印刷を行なった場合でもスジの発生などの不具合の発生のない高画質の画像を形成できる。上記A%の値としてより好ましくは、30≦A≦35である。ローラ長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接させたときのガラス面に接触している面積がカラス面とのニップ面積に対して10%以上であると、現像ローラとしてのトナー搬送力が低下することがなく、充分な画像濃度が得られ、40%以下であれば、感光体へ供給する現像ローラ上のトナー層の厚さを調整するトナー層厚規制部材と現像ローラのニップエリアにおいてトナーの流動が妨げられることがなく、トナーに過大なストレスが負荷されることが抑制され、現像スジやフィルミング等が生じることがない。Aの値が30以上35以下であれば、上記の効果をより顕著に得ることができる。
【0022】
本発明の現像ローラは、軸芯体の表面を処理した後、軸芯体がセットされた金型を用い、シリコーン樹脂にカーボンブラックを混合した導電性弾性層調製用の樹脂液をキャビティに注入し、適宜加熱して樹脂を硬化して導電性弾性層を作製する。その後、ウレタン化ポリオールなどを含有する樹脂固形分に導電性付与剤、樹脂粒子などを混練し導電性樹脂層調製用の樹脂液を調整し、調整した樹脂液を軸芯体の外周に形成した導電性弾性層上にスプレー、浸漬、ロールコート等の方法により塗布し、塗布膜を適宜加熱、乾燥して導電性樹脂層を作製することができるが、浸漬塗工すなわち、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる方法は、導電性樹脂層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れ、適用することができる。
【0023】
本発明の現像ローラの一例として、図1の斜視図、および図2の断面図に示すように、円柱状または中空円筒状の軸芯体2の外周面に導電性弾性層3、導電性樹脂層4が順次積層された構成の現像ローラ1を挙げることができる。また、本発明の現像ローラとして、導電性弾性層3の内周、導電性弾性層3と導電性樹脂層4の間、または導電性樹脂層4の外周に、さらに他の機能を付加する弾性層または樹脂層を1層以上積層させてもよい。
【0024】
本発明のプロセスカートリッジおよび電子写真装置は、上記本発明の現像ローラを有するものであれば、特に制限されるものではなく、複写機、ファクシミリ、プリンターなどいずれのものに使用されるものであってもよい。
【0025】
本発明の電子写真装置の一例としてプリンターを以下に説明する。図3に示すように、プリンターには図示しない回転機構により回転される感光体5が備えられ、感光体5の周りには、感光体5の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる帯電装置6と、帯電された感光体5の表面に画像露光7を照射し静電潜像を形成する画像露光装置とが配置される。更に、感光体5の周りには、本発明の現像ローラ9を備えた現像装置8が設けられる。現像装置8には、一成分現像剤として非磁性トナー12を収容した現像容器18と、現像容器18に設けられた長手方向の開口部を被うように感光体5と対向して配置される現像ローラ9と、現像ローラ9へトナーを供給する供給ローラ10と、現像ローラ9上の過剰のトナーを掻き落とすブレード11とが設けられ、現像装置8において感光体5上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、紙17にトナー像を転写した後、感光体5上をクリーニングするブレード14が設けられる。紙17の搬送経路上には、転写されたトナー像を紙17上に定着させる定着装置16が配置される。
【0026】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の現像ローラと、例えば上記電子写真装置に設けられる感光体、帯電装置およびクリーニング部材から選ばれる1種または2種以上を一体として設けたものであり、電子写真装置に対して着脱自在の構成を有し、使用されるものである。
【0027】
このようなプリンターや、プリンターなどに適用されるプロセスカートリッジにおいて、現像ローラから劣化が抑制されたトナーが、感光体に供給されて現像が行なわれるため、高画質、ベタ画像であっても、トナー量が不足することなく、スジなどの発生がない画像が得られる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の現像ローラを、レーザービームプリンタに適用した例について説明する。
[実施例1]
軸芯体2としてSUS製の芯金にニッケルメッキを施し、さらにプライマ−DY35−051(商品名、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼付けしたものを用いた。ついで、軸芯体を金型に配置し、液状シリコーンゴム材料SE6724A/B(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)100質量部に対し、カーボンブラックトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン社製)を35質量部、耐熱性付与剤としてシリカ粉体を0.2質量部、および白金触媒0.1質量部を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃、1時間加熱し硬化反応を完結させ、導電性弾性層12を軸芯体11の外周に設けた。軸芯体を除く導電性弾性層の長さは24.0mmであった。
【0029】
導電性樹脂層の材料として、ポリテトラメチレングリコールPTG1000SN(商品名、保土谷化学社製)100質量部に、イソシアネート化合物ミリオネートMT(商品名、日本ポリウレタン工業社製)23質量部をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて7時間反応させて、重量平均分子量Mw=11000、水酸基価17.1のポリウレタンポリオールを得た。この基体樹脂100質量部に対し、硬化剤コロネート2521(商品名、日本ポリウレタン工業社製)30.5質量部、カーボンブラックMA11(商品名、三菱化学社製)を樹脂成分に対し18質量部混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、分散液1を調整した。
【0030】
次に樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子バーノックCFB100(商品名、大日本インキ社製)を分級し、体積平均粒径が25μm、体積分布の変動係数が0.78となる樹脂粒子Aを調整した。
【0031】
分散液1に樹脂粒子Aを、分散液に対して5質量部添加し、撹拌モーターで10分間撹拌し、導電性樹脂層形成用塗料1を調整した。
【0032】
次にこの導電性樹脂層形成用塗料1を前記導電性弾性層上に浸漬塗工した後乾燥させ、170℃にて1.5時間加熱処理することで導電性弾性層外周に導電性樹脂層を設け、実施例1の現像ローラを作製した。
[実施例2]
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールCF−600T(商品名、根上工業社製)を分級し、体積平均粒径が10μm、体積分布の変動係数が0.53となる樹脂粒子Bを調整した。
【0033】
樹脂粒子をBとし、添加部数を15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の現像ローラを作製した。
[実施例3]
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールCF−600T(商品名、根上工業社製)を分級し、体積平均粒径が10μm、体積分布の変動係数が1.00となる樹脂粒子Cを調整した。
【0034】
樹脂粒子をCとし、添加部数を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の現像ローラを作製した。
[実施例4]
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールC−400(商品名、根上工業社製)を分級し、体積平均粒径が14μm、体積分布の変動係数が0.45となる樹脂粒子Dを調整した。
【0035】
樹脂粒子をDとし、添加部数を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の現像ローラを作製した。
[実施例5]
添加部数を15質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして実施例5の現像ローラを作製した。
[比較例1]
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールC−400(商品名、根上工業社製)を分級せず使用した以外は、実施例4と同様にして比較例1の現像ローラを作製した。
[比較例2]
樹脂粒子として、アクリル粒子ケミスノーMX−1500H(商品名、綜研化学社製)に変更した以外は、実施例4と同様にして比較例2の現像ローラを作製した。
[比較例3]
樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールC−800(商品名、根上工業社製)を分級し、体積平均粒径が6μm、体積分布の変動係数が1.02となる樹脂粒子Eを調整した。
【0036】
樹脂粒子をE、添加部数を15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例3の現像ローラを作製した。
[比較例4]
次に樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子アートパールC−200(商品名、根上工業社製)を分級し、体積平均粒径が30μm、体積分布の変動係数が0.80となる樹脂粒子Fを調整した。
【0037】
樹脂粒子をF、添加部数を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4の現像ローラを作製した。
[比較例5]
添加部数を20質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして比較例5の現像ローラを作製した。
[比較例6]
添加部数を3質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして比較例6の現像ローラを作製した。
【0038】
作製した現像ローラを、市販のカラーレーザープリンターLBP2160(商品名:キヤノン製)をプロセスカートリッジが装着可能に改造した改造機に装填し、画像耐久性の評価を行った。
【0039】
画像濃度の評価は、上記の電子写真装置を用い、気温25°相対湿度60%RHの環境下、非磁性一成分ブラックトナーのベタ画像を出力し、紙面上の濃度を反射濃度計(GretagMacbeth RD918)を用いて9点測定し、平均値を計算した。
【0040】
画像耐久性の評価は、上記の電子写真装置を用い、気温30°相対湿度80%RHの環境下、非磁性一成分ブラックトナーでハーフトーン画像を10000枚連続印刷後、画像を比較し、現像スジを以下の基準で評価した。
◎:現像スジの発生が認められない
○:極軽微な現像スジの発生が認められる
△:画像に影響を及ぼす現像スジの発生が認められる
×:画像に大きな影響を及ぼす現像スジの発生が認められる
さらに画像耐久試験後の現像ローラ及びトナー層厚規制部材を取り出し、表面のトナーを除去し、光学顕微鏡にて現像ローラ表面のフィルミング状態を観察し、以下の基準でフィルミングを評価した。
◎:ローラ表面にフィルミングが全く認められない
○:ローラ表面に極軽微なフィルミングが認められる
△:ローラ表面にフィルミングが認められ、軽度のカブリが発生している
×:ローラ表面に多量のフィルミングが認められ、画像に著しいカブリが発生している
またトナー層厚規制部材へのトナーの融着状態を観察し、以下の基準で評価した。
◎:部材表面にトナー融着が全く認められない
○:部材表面に極軽微なトナー融着が認められる
△:部材表面にトナー融着が認められ、軽度の現像スジが発生している
×:部材表面に多量のトナー融着が認められ、著しい現像スジが発生している
以上の結果を表1、表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜5のローラはいずれも良好な画像耐久性を示した。特にローラ長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接させたときのA(ガラス面に接触している面積/ガラス面に対するニップ面積)が30〜35である実施例2および4は充分な画像濃度と良好な画像耐久性が両立した。それに対しローラ長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接させたときのAが40以上となる比較例1、3、5はローラ上のトナー流動が制限され、トナーに過大なストレスがかかり耐久画像評価においてスジの発生が認められた。またAが10以下となる比較例7、8はローラ表面の凸部に応力が集中した結果、ローラ表面にフィルミングを発生した。さらにローラ長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接させたときのB(ガラス面に接触している面積/ガラス面に対するニップ面積)との関係がA>B/2となる比較例2は応力がトナーに集中するため著しいスジとフィルミングを生じた。
【0044】
以上の結果より本発明の現像ローラにおいては、優れた高画質画像形成性、画像耐久性を有することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1、9:現像ローラ
2:軸芯体
3:弾性層
4:導電性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の周囲に導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周に樹脂粒子を含む導電性樹脂層とを有する現像ローラであって、
軸方向の長さ1cm当たり0.20Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してA%、
軸方向の長さ1cm当たり0.82Nの荷重でガラス平面に圧接したときのガラス面に接触している面積が、該ガラス面とのニップ面積に対してB%のとき、
10≦A≦40 且つ A≦B/2
であることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
導電性樹脂層に含まれる樹脂粒子が、体積平均粒径が10〜25μmであり、体積分布における変動係数Cが、C≦1.0(但し、C=(Sw/D)×100で表され、Swは粒子の体積分布における標準偏差を示し、Dは粒子の体積平均粒径を示す。)である粒度分布を有することを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
導電性樹脂層に含まれる樹脂粒子が、微小圧縮弾性率が0.20〜1.20MPaであることを特徴とする請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
導電性樹脂層が、導電性樹脂層を構成する樹脂固形分100質量部に対し、樹脂粒子を5〜15質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の現像ローラ。
【請求項5】
導電性樹脂層を構成する樹脂固形分が、2官能のポリエーテルポリオールと2官能のイソシアネートで鎖延長させて得られ、重量平均分子量が10000〜50000、かつ分子量分散度がMw/Mnが3.0以下、Mz/Mwが2.5以下の直鎖状ウレタン化ポリオールを、70〜95質量%含有することを特徴とする請求項4の記載の現像ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の現像ローラを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の現像ローラを有することを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−178084(P2006−178084A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369720(P2004−369720)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】