説明

現像ローラ、現像ローラの製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】良好な帯電付与性を有し、かつ導電性低下や表面硬度上昇による画像弊害が抑制された高品位の現像ローラ及びその製造方法、さらに前記現像ローラを有する高品位なプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、表面層とを有する現像ローラであって、該表面層は、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、明細書中に定義される構造式(1)に示す構造を有する化合物とを含有することを特徴とする現像ローラ。その製造方法、該現像ローラを有するプロセスカートリッジ、及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像ローラ、現像ローラの製造方法、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性一成分接触現像方式の画像形成装置には、感光体を帯電させたり、静電潜像を現像したりするため、103〜1010Ω・cm程度の電気抵抗を有する弾性ローラが用いられている。このような弾性ローラとしては、軸芯体、弾性層および表面層をこの順に有する構成が一般的である。
【0003】
弾性層を形成する高分子弾性材料としては、ゴム弾性を有する高分子エラストマーや高分子フォームが用いられており、低硬度で、感光体や転写部材を汚染することがなく、かつトナーと融着しない特性を有することが求められる。そこで高分子エラストマーや高分子フォームを構成する材料としては、以下のものが用いられている。イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の固形ゴム加硫物や、ポリオール等の液状原料をイソシアネートにより硬化させたポリウレタン。
【0004】
また、トナーに対する帯電付与性をコントロールするために種々の荷電制御剤が用いられる。例えば特許文献1では、ニグロシンやトリアミノフェニルメタン、4級アンモニウム塩などのカチオン系染料を含有する現像ローラが報告されている。また特許文献2では、表面層にフルオロオレフィン系の樹脂とメラミン、ベンゾグアナミンなどのトリアジン系樹脂を含有する現像ローラが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−186836号公報
【特許文献2】特開2001−296737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、複写機、プリンタやファクシミリなど、電子写真方式を採用した装置に使用される現像ローラに求められる性能はより高度になっており、より安定した帯電付与性や、高画質と画像耐久性の両立が要求されるようになっている。
しかし特許文献1は、荷電制御剤の添加により導電性の低下を招くことがあり、特に低温低湿環境で画像不具合を引き起こす場合がある。
また特許文献2は、メラミンやグアナミン自体が架橋剤となり得るため、表面硬度の上昇が起こりやすいことがあり、トナーに対しストレスを与えて、破壊、劣化したトナー塊により画像品質に影響を及ぼすことなどが懸念される。
【0007】
本発明の目的は、良好な帯電付与性を有し、かつ導電性低下や表面硬度上昇による画像弊害が抑制された高品位の現像ローラ及びその製造方法を提供すること、さらに前記現像ローラを有する高品位なプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、軸芯体、弾性層、および表面層を有する現像ローラであって、
該表面層は、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、下記構造式(1)に示す構造を有する化合物とを含有することを特徴とする現像ローラである。
【0009】
【化1】

【0010】
上記構造式(1)中、
1は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基またはフェニル基を表し、
2は水素原子、メチル基または水酸基を表し、
3及びR4は各々独立して炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、フェニル基またはビフェニル基を表す。
ただし、R3およびR4が表すフェニル基の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子、および、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含む総炭素数2以上16以下のオキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基または原子によって置換されていてもよい。
【0011】
また本発明は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、表面層とを有する現像ローラの製造方法であって、
バインダー樹脂と、導電性微粒子と、上記構造式(1)に示す構造を有する化合物とを含有する該表面層を形成する工程を有することを特徴とする現像ローラの製造方法である。
【0012】
また本発明は、少なくとも上記現像ローラが装着され、電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0013】
さらに本発明は、潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する上記現像ローラを備え、該現像ローラが前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を現像する電子写真装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、良好な帯電付与性を有し、かつ導電性低下や表面硬度上昇による画像弊害が抑制された高品位の現像ローラ及びその製造方法、さらに前記現像ローラを有する高品位なプロセスカートリッジ及び電子写真装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の現像ローラの一例を示す概念断面図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】液循環型浸漬塗工装置の一例を示す概念図である。
【図5】抵抗測定の一例を説明するための概念図である。
【図6】トナー帯電量測定装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、現像ローラの表面層に、特定の構造を有するフェニルトリアジン化合物(構造式(1)に示す構造を有する化合物)を含有することにより、上記課題を解決する現像ローラを得ることができる。
【0017】
<現像ローラ>
本発明の現像ローラは、軸芯体と、軸芯体の周囲に弾性層と、表面層とを有する。また、表面層は、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、下記構造式(1)に示す構造を有する化合物、即ちフェニルトリアジン骨格を有する化合物とを含有する。
【0018】
【化2】

【0019】
上記構造式(1)中、
1は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、
2は水素原子、メチル基、または水酸基を表し、
3及びR4は各々独立して炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、フェニル基またはビフェニル基を表す。
ただし、R3およびR4が表すフェニル基の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1以上4以下のアルキル基と、炭素数1以上9以下のアルコキシ基と、水酸基と、ニトロ基と、ハロゲン原子と、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含む総炭素数2以上16以下のオキシアルキル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの基または原子によって置換されていてもよい。
【0020】
本発明の現像ローラ1は、図1に示すように、導電性軸芯体2の外周面に弾性層3が固定され、弾性層3の外周面に表面層4が積層された導電性部材から構成されることができる。
【0021】
(軸芯体)
軸芯体2は、現像ローラ1の電極および支持部材として機能するもので、円柱状または中空円筒状のものが使用できる。
【0022】
(弾性層)
弾性層3は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を、現像ローラに付与するものである。本発明に用いる弾性層は、後述するゴム、導電性付与剤、並びに、非導電性充填剤、架橋剤および触媒などの各種添加剤を適宜配合したゴム材(弾性層形成用材料)を用いて形成することができる。弾性層3は、通常ゴム材の成型体により形成されることが好ましい。上記ゴム材としては、従来、電子写真装置等の分野で導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができる。
【0023】
ゴム材に使用するゴムとしては、以下のものが挙げられる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。これらは単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。この中でも、特にセット性能の観点からシリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体が挙げられる。
【0024】
弾性層3の厚さは2.0mm以上6.0mm以下にすることが好ましく、3.0mm以上5.0mm以下にすることがより好ましい。
【0025】
弾性層3中には、導電性付与剤としてカーボンブラックを含有することができ、さらに非導電性充填剤、架橋剤、触媒等の各種添加剤を適宜配合することができる。導電性付与剤としては、カーボンブラックの他に、アルミニウム、銅等の導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン等の導電性金属酸化物の微粒子を用いることができる。このうち、カーボンブラックは比較的容易に入手でき、良好な導電性が得られるので特に好ましい。導電性付与剤としてカーボンブラックを用いる場合は、ゴム材中のゴム100質量部に対して10質量部以上80質量部以下配合することが好ましい。
【0026】
非導電性充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛および炭酸カルシウムが挙げられる。架橋剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよびジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0027】
(表面層)
本発明に用いる表面層は、後述するバインダー樹脂、導電性微粒子、および構造式(1)に示す構造を有する化合物、並びに必要に応じて粗さ制御用微粒子等の添加剤を含有することができる。
【0028】
・バインダー樹脂
表面層4に含有するバインダー樹脂成分としては、具体的にはポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、アクリル、エポキシ、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリウレタン樹脂は皮膜の強度とトナー帯電性の観点から好ましい。例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂は、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオールと、イソシアネート化合物との反応により得ることができる。
【0029】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
またポリエステルポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのジオール成分、トリメチロールプロパンなどのトリオール成分と、
アジピン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0030】
これらのポリオール成分は必要に応じてあらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(1,4−MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
【0031】
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば以下のものを用いることができる。即ち、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物や、そのブロック体を用いることができる。
【0032】
バインダー樹脂成分としては、ポリオール成分に、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテルポリウレタン樹脂が特に好ましい。
ポリエーテルポリウレタン樹脂は柔軟性に富み、構造式(1)に示す構造を有する化合物添加による硬度上昇が特に起こりにくく、またこの化合物との相溶性にも優れるため、より好適な現像ローラが得られる。
【0033】
・導電性微粒子
表面層4に含有する導電性微粒子としては、導電付与性、補強性の観点からカーボンブラックが好ましい。さらに、カーボンブラックの性状は、一次粒子径を18nm以上25nm以下、かつDBP吸油量を50ml/100g以上160ml/100g以下とすることがより好ましく、これらにより、導電性、硬度、分散性のバランスを容易に良好にすることができる。導電性微粒子の含有率は、表面層を形成するバインダー樹脂成分100質量部に対して10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0034】
・構造式(1)に示す構造を有する化合物(フェニルトリアジン化合物)
本発明においては、表面層4が構造式(1)に示すフェニルトリアジン骨格(トリアジン環の2、4、6位の少なくとも一つの水素がフェニル基で置換された構造)を有する化合物(フェニルトリアジン化合物)を含有することを特徴とする。また、このフェニルトリアジン化合物は、荷電制御剤として用いることができる。
【0035】
一般的に電子写真装置に用いられる荷電制御剤は、その構造内に窒素を始めとするヘテロ原子を有することが多く、また分子が比較的大きなπ共役系を有するものが多い。
荷電制御剤添加による帯電付与の詳細なメカニズムは明らかではないが、窒素原子の正電荷傾向が何らかの寄与をしていると考えられる。このような窒素原子を有する荷電制御剤は、窒素に由来する塩基性を呈するものが多く、この塩基性により、表面層中のカーボンブラックなどの導電剤(導電性微粒子)を凝集させ、ローラの導電性を著しく低下させる場合がある。
【0036】
またメラミン構造、ベンゾグアナミン構造を有する荷電制御剤は、それ自体が架橋剤として機能するため、表面硬度を上昇させることがあり、トナーに対するストレスを増大させ画像耐久性を損なう場合がある。
【0037】
本発明の特徴であるフェニルトリアジン化合物は上記のような添加弊害が非常に少なく、また分子内に大きなπ共役系を有するため、良好な帯電付与特性を示す。フェニルトリアジン化合物群の添加により弊害が起きにくい理由は現在のところ明らかではない。しかし、フェニルトリアジン化合物は、1,3,5−トリアジン環に直接、かさ高いフェニル基(Ph基)が結合しているため、その構造中の窒素原子に対してこのかさ高いフェニル基が立体障害となり、窒素由来の塩基性を抑制しているものと考えられる。
【0038】
フェニルトリアジン化合物のうち、トリアジン環に3個のフェニル基が結合したトリフェニルトリアジン化合物(R3およびR4がいずれもPh基を表す場合)、即ち2,4,6−トリフェニルトリアジン骨格を有する化合物を用いることがより好ましい。この骨格を有することにより、高い帯電付与能と弊害抑制効果が容易に両立可能となる。
【0039】
また、R3およびR4が表すPh基の少なくとも1つの水素原子は、以下の基によって置換されていても良い。即ち、炭素数1以上4以下のアルキル基と、炭素数1以上9以下のアルコキシ基と、水酸基と、ニトロ基と、ハロゲン原子と、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含む総炭素数2以上16以下のオキシアルキル基とからなる群から選ばれる1つの基または原子。
【0040】
なお、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含むオキシアルキル基としては、例えば、アルコキシアルキルオキシ基(−O−R−O−R)およびアルコキシカルボニルアルキルオキシ基(−O−R−C(=O)−O−R)を挙げることができる。これらの基中のRは、直鎖状や分岐状アルキル基を表しても良いし、他の基(例えば、水酸基)を含むアルキル基を表しても良い。
【0041】
フェニルトリアジン化合物が、アルコキシフェニル骨格またはアルコキシアルキルオキシフェニル骨格を有する場合も、より高い帯電付与能と弊害抑制効果が得られる。これは、アルコキシ基やアルコキシアルキルオキシ基の導入により、バインダー樹脂成分とフェニルトリアジン化合物との相溶性が向上することに起因するものと思われる。アルコキシフェニル骨格およびアルコキシアルキルオキシフェニル骨格とは、フェニル基の少なくとも一つの水素原子がアルコキシ基およびアルコキシアルキルオキシ基でそれぞれ置換された構造を指す。
【0042】
また、フェニルトリアジン化合物は、Ph基の水素原子をアルコキシカルボニルアルキルオキシ基と置換したアルコキシカルボニルアルキルオキシフェニル骨格を有することもできる。
【0043】
また、フェニルトリアジン化合物は、2,4,6−(4−アルコキシ)トリフェニルトリアジン骨格または2,4,6−(4−アルコキシアルキルオキシ)トリフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。
【0044】
さらに、フェニルトリアジン化合物がビフェニル骨格を有する場合、特に高い帯電付与能が得られるが、これはビフェニル骨格の導入により、さらにπ共役系が拡大することに起因している可能性がある。
【0045】
上記フェニルトリアジン化合物は、たとえば紫外線吸収剤や防虫剤成分として用いられることが知られており、これらの中から市販の物を適宜選択して使用することも可能である。
【0046】
フェニルトリアジン化合物の含有量は、表面層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下であることが特に好ましい。含有量が0.5質量部以上の場合、帯電付与効果に特に優れ、5.0質量部以下である場合弊害抑制効果に特に優れる。
【0047】
・その他の添加剤
現像ローラとして表面粗度が求められる場合は、表面層4に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。
【0048】
<現像ローラの製造方法>
本発明の現像ローラの製造方法は、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、構造式(1)に示す構造を有する化合物(フェニルトリアジン化合物)とを含有する表面層を形成する工程を有する。
【0049】
また、この工程の前に、軸芯体の周囲に弾性層を形成する工程を有することができる。弾性層の形成方法としては、適宜選択することができ、例えば以下の方法を用いることができる。まず、上述したゴム、導電性付与剤、および各種添加剤を適宜混合した弾性層形成用材料を調製する。ついで、成形金型内に軸芯体を配置し、この弾性層形成用材料を金型内のキャビティに入れ、金型を加熱し、弾性層形成用材料を硬化して弾性層を形成する方法である。
【0050】
また、表面層4の形成方法も特に限定されるものではないが、例えば、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、フェニルトリアジン化合物とを含む表面層形成用塗料によるスプレー法、浸漬法、およびロールコート法を用いることができる。浸漬塗工法として、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0051】
図4は浸漬塗工装置の概略図の一例である。以下に、この装置について説明する。符号25は円筒形の浸漬槽であり、現像ローラ外径よりわずかに大きな内径を有し、現像ローラの軸方向の長さより大きな深さを有している。浸漬槽25の上縁外周には環状の液受け部が設けられており、その液受け部は撹拌タンク27と接続されている。また浸漬槽25の底部は撹拌タンク27と接続されている。撹拌タンク27の表面層形成用塗料は、液送ポンプ26によって浸漬槽25の底部に送り込まれる。浸漬槽の上端部からは、塗料がオーバーフローしており、浸漬槽25の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンク27に戻る。弾性層3を設けた軸芯体2は昇降装置28に垂直に固定され、浸漬槽25中に浸漬し、引き上げることで表面層4を形成することができる。
【0052】
<プロセスカートリッジおよび電子写真装置>
本発明のプロセスカートリッジは、電子写真装置に着脱可能であり、少なくとも本発明の現像ローラが装着される。また、本発明の電子写真装置は、潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する本発明の現像ローラを備え、その現像ローラが前記感光体にトナーを付与することにより潜像を可視化する。
なお、本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置は、本発明の現像ローラを有するものであれば使用形態は適宜選択することができ、その使用形態は複写機、ファクシミリ、およびプリンタに限定されるものではない。
【0053】
本発明の現像ローラを搭載した本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置の一例として、非磁性一成分現像系プロセスを用いたプロセスカートリッジ及びプリンターを以下に説明する。
【0054】
図2は本発明のプロセスカートリッジの一例を表す。図2において、現像装置10は、一成分トナーとして非磁性トナー8を収容した現像容器と、現像容器内の長手方向に延在する開口部に位置し感光体5と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光体5上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。また、現像装置10は、この他に、トナー供給ローラ7および規制ブレード9を有する。
【0055】
また、図3は本発明の現像ローラを備えた電子写真装置の一例(プリンター)を表す。図3に示すように、プリンターには、図示しない回転機構により回転される感光体5が備えられる。また、この感光体5の周りには、感光体5の表面を所定の極性・電位に帯電させる帯電部材12と、帯電された感光体5の表面にレーザー光11を用いた画像露光を行って静電潜像を形成する、不図示の画像露光装置とが配置される。更に感光体5の周りには、形成された静電潜像上にトナーを付着させて現像する本発明の現像ローラを有する現像装置10が配置される。一方、記録媒体である紙22は、給紙ローラ23により給紙された後、バイアス電源18から吸着ローラ24に供給されるバイアスにより転写搬送ベルト20上に吸着され、駆動ローラ16の駆動により矢印方向に搬送される。転写搬送ベルト20は、駆動ローラ16、従動ローラ21およびテンションローラー19に張架されている。また、この装置には、可視化された感光ドラム5上のトナー像を紙22上に転写する転写ローラ17、転写後、感光体5上をクリーニングするクリーニング部材(図2の符号6)を有する装置13が設けられる。また、符号14はクリーニング用帯電装置を表す。紙22の搬送経路上には、転写されたトナー像を紙22上に定着させる定着装置15が配置される。
【実施例】
【0056】
以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について示す。まず、各例に用いたフェニルトリアジン化合物の合成方法を説明する。
【0057】
[合成例1]
(2,4−ジメチル−6−フェニル−1,3,5−トリアジンの合成)
無水THF(テトラヒドロフラン)60ml中でヨウ素により活性化させたマグネシウム小片24.30g(1.0モル)を、60℃に加熱した。次いで、これに、原料Aとしてクロロベンゼン 56.6g(0.5モル)及び無水THF220mlを30分かけて滴下し、2時間加熱還流した後冷却した。
次に、別途原料Bとして2,4−ジメチル−6−クロロ−1,3,5−トリアジン 71.8g(0.5モル)と無水THF200mlとの混合物を撹拌し、温度を10℃に保持した。これに、前述の原料Aの混合物を1時間かけて滴下した。その後、得られた混合物をトルエン300mlを用いて希釈し、得られた懸濁液を10質量%塩酸400g中に注ぎ、トルエン相を分取し、純水500gを使用してそのトルエン相を洗浄した。続いて減圧下、洗浄したトルエン相のトルエンを留去し、構造式(2)の構造を有する化合物1を得た。
【0058】
【化3】

【0059】
次に、原料Aと原料Bを、モル数はそのまま、表1に示す化合物に変更した以外は合成例1に記載した操作に従い、表3に示す化合物2〜5を合成した。
【0060】
【表1】

【0061】
[合成例2]
(2−ブチル−4−フェニル−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンの合成)
無水THF60ml中でヨウ素により活性化させたマグネシウム小片24.30g(1.0モル)を、約60℃に加熱した。次いで、これに、クロロベンゼン67.9g(0.6モル)、1−クロロ−4−メトキシベンゼン86.5g(0.6モル)、及びTHF220mlを50分かけて滴下し、2時間加熱還流した。冷却後、得られた混合物を1時間かけて、2−ブチル−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン 103.0g(0.5モル)と無水THF200mlとの混合物に添加し、温度を10℃に保持した。その後、得られた混合物をトルエン300mlを用いて希釈し、得られた懸濁液を10質量%塩酸400g中に注ぎ、トルエン相を分取し、純水500gを使用して洗浄した。続いて減圧下トルエンを留去し、構造式(3)の構造を有する化合物6を得た。
【0062】
【化4】

【0063】
[合成例3]
(2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジンの合成)
原料Aとしてベンズアミジンハイドロクロライド113.0g(0.6モル)を、メタノール120ml中に溶解し、そこに、室温(23℃)で、ナトリウムメチラートの30質量%メタノール溶液108.0g(0.6モル)を30分かけて滴下した。得られた懸濁液に対し、原料Bとしてサリチルアルデヒド 36.6g(0.3モル)を10分かけて滴下した。この混合物を40℃に加熱し、40℃に保持したまま12時間撹拌した。続いて、得られた懸濁物を10℃に冷却した後、濾過した。この濾過生成物を最初に質量比1:1のメタノール/水の混合液300mlで洗浄し、次に500mlの純水で洗浄後110℃で減圧乾燥した。
次に得られた生成物35.7g(0.1モル)を、ジメチルホルムアミド350mlに溶解した。この溶液に、亜硫酸水素ナトリウムの40質量%水溶液38.3mlを、45℃において30分間かけて滴下した。この溶液を50℃まで加熱し、50℃に保持したまま6時間撹拌し、次いで純水400mlで希釈した後ろ過した。ろ過生成物を110℃で減圧乾燥して、構造式(4)の構造を有する化合物7を得た。
【0064】
【化5】

【0065】
また、原料Aと原料Bを、表2に示す化合物およびモル数に変更した以外は合成例3に記載した操作に従い、表4に示す化合物8〜12を合成した。
【0066】
【表2】

【0067】
[合成例4]
(2,4,6−トリス−[2−ヒドロキシ−4−ノニルオキシフェニル]−s−トリアジンの合成)
窒素雰囲気下、塩化シアヌル18.5g(0.1モル)、レゾルシノール55.0g(0.5モル)およびメタンスルホン酸2.3g(0.02ミリモル)を130℃で3時間攪拌混合した。その後純水50mlを添加し、この混合物を減圧ろ過により捕集した。
得られたろ過生成物に炭酸カリウム15.2g(0.11mol)を添加し、エチルセルソルブ200ml中で110℃に加熱した。次いで1−ブロモノナン74.5g(0.36mol)を30分かけて滴下し、混合物を130℃に加熱し、130℃に保持したまま3時間攪拌した。この混合物を室温まで冷却し、沈澱したろ過生成物を純水500gを使用して洗浄した。洗浄したろ過生成物を110℃で減圧乾燥して、構造式(5)の構造を有する化合物16を得た。
【0068】
【化6】

【0069】
[合成例5]
(2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンの合成)
キシレン30mlとピリジン1mlの混合物中に、サリチルアミド15.1g(0.11mol)を添加し、120℃に加熱した。次いで、これに、キシレン100ml中にビフェニル−4−カルボニルクロリド21.7g(0.10mol)を添加して調製した溶液を、70℃で2.5時間かけて滴下した。この反応混合物を180℃に加熱し、180℃に保持したまま4時間攪拌した。得られた混合物を23℃まで冷却し、減圧下、この混合物中の溶剤を留去すると、油状の残渣35.3gが残った。この油状残渣24.4gを40℃でメチルセルソルブ400mlに溶解させた。次いで、これに、メタノール50mlに塩酸4−ビフェニルアミジン17.0g (0.07mol)を添加して調製した溶液を10分かけて滴下し、続いて30質量%水酸化ナトリウム19.6gを添加した。この反応混合物を90℃に加熱し、90℃で保持したまま4時間攪拌し、23℃まで冷却後、ろ過した。得られたろ過生成物を110℃で減圧乾燥して、構造式(6)の構造を有する化合物17を得た。
【0070】
【化7】

【0071】
また化合物13としてはチヌビン400、化合物14としてチヌビン405、化合物15としてチヌビン460、化合物18としてチヌビン479(商品名、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を用いた。
【0072】
上述した化合物1〜6を表す下記構造式(1)の置換基R1〜R4を表3に、化合物7〜18を表す下記構造式(7)の置換基R5〜R10を表4に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
【化8】

【0075】
【表4】

【0076】
【化9】

【0077】
(実施例1)
−軸芯体の調製−
軸芯体として、ステンレス鋼:SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:DY35−051、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼付けしたものを用意した。
【0078】
−弾性層の調製−
ついで、その軸芯体を金型に配置し、以下の表5に示す材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物(弾性層形成用材料)を金型内に形成されたキャビティに注入した。
【0079】
【表5】

【0080】
続いて、金型を加熱して付加型シリコーンゴム組成物を150℃、15分間加硫硬化し、脱型した後、さらに180℃、1時間加熱し硬化反応を完結させ、上記軸芯体の外周に直径12mmの弾性層を設けた。
【0081】
−表面層の調製 1−
次に以下の表6に示す表面層の材料を撹拌混合し、総固形分比30質量%になるようにMEK(メチルエチルケトン)に溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0082】
【表6】

【0083】
さらに、これに、表3に記載の化合物1、0.57質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、さらに撹拌モーターにより20分間混合撹拌して、表面層形成用塗料1を得た。さらに、この塗料1を粘度10〜13mPa・s(cps)にMEKで希釈後、前記弾性層上に浸漬塗工した後乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例1の現像ローラを得た。
【0084】
(実施例2)
化合物1を2に変更し、その添加量を18.9質量部とした以外は実施例1と同様にして実施例2の現像ローラを得た。
【0085】
(実施例3)
化合物1を3に変更し、その添加量を5.7質量部とした以外は実施例1と同様にして実施例3の現像ローラを得た。
【0086】
(実施例4)
化合物3を化合物4に変更した以外は実施例3と同様にして実施例4の現像ローラを得た。
【0087】
(実施例5)
化合物1を化合物5に変更した以外は実施例1と同様にして実施例5の現像ローラを得た。
【0088】
(実施例6)
化合物2を化合物6に変更した以外は実施例2と同様にして実施例6の現像ローラを得た。
【0089】
(実施例7)
化合物1を化合物7に変更し、その添加量を0.94質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例7の現像ローラを得た。
【0090】
(実施例8〜13)
化合物7を化合物8〜化合物13に変更した以外は実施例7と同様にして実施例8〜13の現像ローラを得た。
【0091】
(実施例14)
化合物1を化合物14に変更し、その添加量を1.9質量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例14の現像ローラを得た。
【0092】
(実施例15〜18)
化合物14を化合物15〜18に変更した以外は実施例14と同様にして実施例15〜18の現像ローラを得た。
【0093】
(実施例19)
化合物13の添加量を0.57質量部に変更した以外は実施例13と同様にして、実施例19の現像ローラを得た。
【0094】
(実施例20)
化合物13の添加量を9.4質量部に変更した以外は実施例13と同様にして、実施例20の現像ローラを得た。
【0095】
(実施例21)
化合物13の添加量を13.2質量部に変更した以外は実施例13と同様にして、実施例21の現像ローラを得た。
【0096】
(実施例22)
化合物18の添加量を0.57質量部に変更した以外は実施例18と同様にして、実施例22の現像ローラを得た。
【0097】
(実施例23)
化合物18の添加量を9.4質量部に変更した以外は実施例18と同様にして、実施例23の現像ローラを得た。
【0098】
(実施例24)
化合物18の添加量を13.2質量部に変更した以外は実施例18と同様にして、実施例24の現像ローラを得た。
【0099】
(実施例25)
−表面層の調製 2−
以下の表7に示す表面層の材料をメチルエチルケトン(MEK)122.0質量部中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させて重量平均分子量Mw=11000、水酸基価26のポリウレタンポリオールAを得た。
【0100】
【表7】

【0101】
次に、以下の表8に示す材料を撹拌混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0102】
【表8】

【0103】
さらに、これに、表4の化合物15、3.0質量部を撹拌モーターにより撹拌しながら徐々に加え、撹拌モーターにより20分間混合撹拌して表面層形成用塗料2を得た。さらに、この塗料2を粘度10〜13mPa・s(cps)にMEKで希釈後、前記弾性層上に浸漬塗工した後乾燥させ、温度150℃にて1時間加熱処理することで弾性層外周に膜厚約20μmの表面層を設け、実施例25の現像ローラを得た。
【0104】
(実施例26〜27)
化合物15を化合物13または化合物18に変更した以外は実施例25と同様にして、実施例26〜27の現像ローラを得た。
【0105】
(比較例1)
実施例1の表面層形成用塗料1中に化合物1を添加せず、他のフェニルトリアジン化合物も添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の現像ローラを得た。
【0106】
(比較例2)
化合物1を無置換の1,3,5−トリアジンに変更し、そのトリアジンの添加量を9.4質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例2の現像ローラを得た。
【0107】
(比較例3)
化合物1をベンゾグアナミン樹脂(商品名:マイコート105、日本サイテックインダストリーズ社製)に変更し、その添加量を12.2質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例3の現像ローラを得た。
【0108】
(比較例4)
化合物1をメラミン樹脂(商品名:サイメル712、日本サイテックインダストリーズ社製)に変更し、その添加量を11.8質量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例4の現像ローラを得た。
【0109】
以上のようにして得られた実施例1〜27及び比較例1〜4の現像ローラについて以下の項目をそれぞれ評価した。
【0110】
[ローラ抵抗]
各現像ローラを20℃、40%RH(相対湿度)環境下にて、図5に示す抵抗測定機を用いて、9.8N(1kgf)荷重(軸芯体両端各5.9N(500gf)荷重)で金属ドラム30に圧接し、50V印加、ローラ回転数60rpmにて抵抗測定を行った。抵抗測定において、3秒間の平均値を現像ローラの抵抗値とした。なお、図5中、符号18、29はそれぞれバイアス電源、基準抵抗を表す。
【0111】
[ローラ硬度]
各現像ローラの表面硬度は、マイクロゴム硬度計(商品名:MD−1capa、高分子計器社製)にて、直径0.16mm押針を用い、気温25℃、相対湿度50%RH環境下にて測定した。なお、導電性樹脂層形成後の現像ローラの中央部、上端部、下端部3点を測定した平均値を、現像ローラの表面硬度とした。
【0112】
[摩擦帯電量測定]
トナーの飽和摩擦帯電量は以下の方法により測定を行った。図6は摩擦帯電量測定装置31の説明図である。23℃、60%RH環境下、キャリアとしてF813−2535(商品名、パウダーテック社製)を用い、キャリア19.6gにトナー(ブラック)0.4gを加えた混合物を50ml容量のポリエチレン製の瓶に入れ150回手で震盪した。次いで、底に500メッシュのスクリーン33のある金属製の測定容器32に前記混合物0.4〜0.5gを入れ、金属製のフタ34をした。この時の測定容器32全体の質量を測定し、W1(g)とした。
次に吸引機(測定容器32と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口37から吸引し風量調節弁36を調節して真空計35の圧力を2.45kPa(250mmAq)とした。この状態で一分間吸引を行ない、トナーを吸引除去した。この時の電位計39の電位をV(ボルト)とした。ここで38はコンデンサであり容量をC(μF)とした。また吸引後の測定機全体の質量を測定し、W2(g)とした。このトナーの摩擦帯電量(mC/kg;μC/g)を、下式で計算した。
摩擦帯電量(mC/kg)=CV/(W1−W2)
【0113】
〔画像弊害および画像耐久性〕
画像弊害および画像耐久性の評価は、図3のような構成を有するレーザープリンタ(商品名:LBP5300、キヤノン社製)に上記実施例及び比較例の現像ローラをそれぞれ装填し、評価を行った。
【0114】
・低温低湿環境下での評価
低温低湿環境下における評価は、以下の方法で行った。まず、気温15℃、相対湿度10%RHの環境(以下、この環境をL/Lと称する)下、ブラックトナーで画像パターンとして、1枚内で先端部に15mm角のベタ黒、その後全面ハーフトーンの画像を印字した。そして、ハーフトーン部分に現れる現像ローラ周期の濃度ムラを目視評価し、以下の基準でゴーストの評価とした。
【0115】
[L/L画像弊害評価]
A:ゴーストが認められない、
B:極軽微なゴーストが認められる、
C:顕著なゴーストが認められる。
【0116】
画像耐久性の評価は、同様の条件(L/L)で印字率1%にて10000枚連続印刷後(L/L下での耐久試験後)、現像ローラを取り出し、表面のトナーを除去した。その後、デジタルマイクロスコープ(商品名:VHX−600、キーエンス社製)を用い、倍率1000倍で現像ローラ表面のフィルミング状態を観察した。ローラのフィルミング評価を以下の基準で評価した。
【0117】
[フィルミング評価]
A:ローラ表面にフィルミングがほぼ認められない。
B:ローラ表面に軽微なフィルミングが認められる。
C:ローラ表面に顕著なフィルミングが認められる。
【0118】
その後、再び現像ローラを装填し、同様の条件(L/L)で再開し、フィルミングによる印字部、非印字部の濃度差が目視で確認されるまで連続印刷を行い、濃度差が確認された時点での枚数をフィルミング枚数とした。
【0119】
・高温高湿環境下での評価
高温高湿環境下におけるカブリの評価は、以下の方法で行った。
気温30℃、相対湿度80%RHの環境(以下、この環境をH/Hと称する)下、ブラックトナーで印字率2%にて12000枚連続印刷後(H/H下での耐久試験後)、白ベタ画像出力中にプリンタを停止した。このとき、感光体上に付着したトナーをテープではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)にて基準に対する反射率の低下量(%)を測定し、カブリ値とした。このカブリ値を以下の基準に基づき評価した。
【0120】
[H/Hカブリ評価]
A:3%未満、
B:3%以上5%未満、
C:5%以上。
【0121】
以上の結果を表9及び表10に示す。
【0122】
【表9】

【0123】
【表10】

【0124】
実施例1〜27は、前述の構造式(1)の構造を有する化合物を表面層に含有するため、H/Hカブリが抑制されている。またL/Lにおける画像弊害も抑制されている。特に構造式(1)の構造を有する化合物がトリフェニルトリアジン骨格、アルコキシフェニル骨格、アルコキシアルキルオキシフェニル骨格、さらにはビフェニル骨格を有する実施例3〜27の現像ローラは帯電量とL/Lにおける画像品質が良好となっている。さらに表面層のバインダー樹脂成分としてポリエーテル系ウレタンを含有する実施例25〜27は帯電付与とL/Lにおける画像品質が最も高い水準で両立されている。
【0125】
それに対し、フェニルトリアジン化合物を含有しない比較例1は、H/Hでの帯電量が低く、カブリが認められた。また、フェニルトリアジン化合物の代わりに、フェニル基を有さないトリアジンを用いた比較例2、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂を用いた比較例3、4はローラの著しい抵抗上昇または硬度上昇のため、L/Lにおける画像弊害が認められた。
【符号の説明】
【0126】
1:現像ローラ
2:導電性軸芯体
3:弾性層
4:表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体、弾性層、および表面層を有する現像ローラであって、
該表面層は、バインダー樹脂と、導電性微粒子と、下記構造式(1)に示す構造を有する化合物とを含有することを特徴とする現像ローラ:
【化1】

(上記構造式(1)中、
1は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基またはフェニル基を表し、
2は水素原子、メチル基または水酸基を表し、
3及びR4は各々独立して炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、フェニル基またはビフェニル基を表す。
ただし、R3およびR4が表すフェニル基の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子、および、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含む総炭素数2以上16以下のオキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基または原子によって置換されていてもよい。)。
【請求項2】
該構造式(1)に示す構造を有する化合物が、2,4,6−トリフェニルトリアジン骨格を有する請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
該構造式(1)に示す構造を有する化合物が、2,4,6−(4−アルコキシ)トリフェニルトリアジン骨格、または2,4,6−(4−アルコキシアルキルオキシ)トリフェニルトリアジン骨格を有する請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
該構造式(1)に示す構造を有する化合物が、ビフェニル骨格を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の現像ローラ。
【請求項5】
該表面層が、バインダー樹脂としてポリエーテルポリウレタン樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像ローラ。
【請求項6】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、表面層とを有する現像ローラの製造方法であって、
バインダー樹脂と、導電性微粒子と、下記構造式(1)に示す構造を有する化合物とを含有する該表面層を形成する工程を有することを特徴とする現像ローラの製造方法:
【化2】

(上記構造式(1)中、
1は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基、またはフェニル基を表し、
2は水素原子、メチル基、または水酸基を表し、
3及びR4は各々独立して炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、フェニル基またはビフェニル基を表す。
ただし、R3およびR4が表すフェニル基の少なくとも1つの水素原子は、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上9以下のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子、および、エーテル結合およびエステル結合の少なくとも一方を含む総炭素数2以上16以下のオキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基または原子によって置換されていてもよい。)。
【請求項7】
少なくとも現像ローラが装着され、電子写真装置に着脱可能なプロセスカートリッジであって、該現像ローラとして請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像ローラを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
潜像を担持する感光体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラを備え、該現像ローラが前記感光体にトナーを付与することにより該潜像を可視化する電子写真装置であって、該現像ローラとして請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像ローラを用いることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220567(P2012−220567A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83722(P2011−83722)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】