説明

現像ローラ、現像装置、プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】トナーの経時的劣化を抑制できる程度に柔軟であり、かつ、永久変形を生じにくい現像ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体と、弾性体層と、該弾性層を被覆する表面層としての被覆層とを有し、該被覆層の表面におけるAsker−C硬度が40°以上、85°以下である現像ローラである。該被覆層は、厚さ15nm以上、5000nm以下であって、かつ、該現像ローラの表面におけるマルテンス硬度H1(N/mm2)と、前記弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)と、前記被覆層の膜厚d(mm)とが下記式(1)の関係を満たす。 400 ≦ (H1−H2)/d ≦ 2000 (1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターあるいはファクシミリの受信装置、電子写真方式を採用した画像形成装置に組み込まれる潜像担持体(感光ドラム)に接触させて使用される現像ローラに関する。またそれを用いた現像装置、プロセスカートリッジ、および電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像ローラは、感光ドラムとのニップ幅を確保するためにゴム成分や樹脂成分を含む弾性体層を設けることが実質的に必須となっている。そして、このような弾性体層から染み出すことがある低分子成分の感光ドラムへの付着を抑えるために弾性体層の上に被覆層を設けた構成が採用されている。
【0003】
ところで、現像ローラのAsker−C硬度は、トナーの経時的な劣化と密接に関連する。即ち、Asker−C硬度が高すぎる場合、トナーの経時的な劣化を加速してしまうことがある。そのため、現像ローラのAsker−C硬度として、25°以上、85°以下の範囲内とすることが従来より提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
一方、上記したように弾性体層の存在を必須の構成要素として備えた現像ローラが有する他の課題として、感光ドラム、クリーニングブレード等の当接部材との当接状態が長期間にわたり継続したときに生じることがある部分的な永久変形がある。部分的な永久変形の生じた現像ローラを用いて電子写真画像を形成すると、永久変形した部分に対応して画像不良が生じることがある。
【0005】
従って、低硬度でありながら、永久変形を生じにくい現像ローラの提供は、従来より解決すべき課題として挙げられている。例えば、特許文献3、特許文献4には、当該課題を解決する種々の構成が開示されている。しかし、本発明者らの検討によれば、従来の提案にかかる現像ローラは上記課題について必ずしも十分な効果を得られているとは言えず、上記の課題をより高いレベルで解決することができる新規な現像ローラの開発が必要であるとの認識を得るに至った。
【特許文献1】特開2001−166533号公報
【特許文献2】特開2005−121728号公報
【特許文献3】特開2006−106323号公報
【特許文献4】特開2005−248084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、トナーの経時的劣化を抑制できる程度に柔軟であり、かつ、永久変形を生じにくい現像ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題に対し鋭意検討を重ねた結果、柔軟な弾性層の上に、特定の硬度を有し、かつ、極めて薄い被覆層を表面層として形成した場合に、上記の課題を高いレベルで解決できることを見出した。本発明はこのような新たな知見に基づき為されたものである。
【0008】
即ち、本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、弾性体層と、該弾性層を被覆する表面層としての被覆層とを有し、該被覆層の表面におけるAsker−C硬度が40°以上、85°以下である現像ローラであって、
該被覆層は、厚さ15nm以上、5000nm以下であって、かつ、
該現像ローラの表面におけるマルテンス硬度H1(N/mm2)と、前記弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)と、前記被覆層の膜厚d(mm)とが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする:
400 ≦ (H1−H2)/d ≦ 2000 (1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低硬度であって、かつ、永久変形を生じにくいため、高品位な電子写真画像を安定して提供することのできる現像ローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明にかかる現像ローラは、電子写真画像形成装置において、トナーを担持して静電潜像の形成された潜像担持体表面にトナーを供給し前記静電潜像を顕在化するためのものである。そして、軸芯体と、該軸芯体の外周面に形成された弾性体層と、該弾性体層を被覆してなる表面層としての被覆層を有している。そして、下記(ア)〜(ウ)の要件をも満たしている。
(ア)表面のアスカーC(Asker−C)硬度が、40°以上85°以下であること;
(イ)被覆層の厚さが15nm以上、5000nm以下であること;
(ウ)現像ローラ表面のマルテンス硬度H1(N/mm2)と、弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)と、被覆層の膜厚d(mm)とが下記式(1)に示す関係を満たしていること:
400 ≦ (H1−H2)/d ≦ 2000 (1)。
【0012】
上記(ア)乃至(ウ)の要件を満たすことにより、現像ローラは、低硬度であり、かつ、変形回復性に優れたものとなる。その結果、当該現像ローラは、トナーに与えるストレスを軽減でき、経時的なトナーの劣化を有効に抑制できるものとなる。その一方で、当該現像ローラは、比較的に硬い被覆層を表面層として具備していることにより、当接部材が長期間にわたり特定の部位に当接した場合であっても部分的な永久変形を生じにくいものとなる。
【0013】
本発明にかかる現像ローラの実施形態の一例を図1及び図2に示す。図1は、本発明の現像ローラの一例の全体構成を模式的に示す図であり、図2は、軸芯体に直交する面での断面を模式的に示した図である。図1及び図2に示した実施形態の現像ローラ1は、中心に軸芯体11と、該軸芯体の外周面に順次、弾性体層12及び被覆層13を有している。
【0014】
<軸芯体>
軸芯体11は、通常、円柱状の形状を有しており、金属の如き導電性材料で形成されているものを用いることができる。画像形成装置に利用される現像ローラは、電気的なバイアスを印加して、または、接地されて、使用されるのが一般的であるので、軸芯体11は、支持部材であって、現像部材の電極としても機能する。
【0015】
そこで、軸芯体11は、少なくともその外周面は、その上に形成されるゴムを含む弾性体層に所定の電圧を印加するに十分な導電性の材質で構成する。具体的には、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金、あるいは、クロム、ニッケルで鍍金処理を施した鉄、導電化された合成樹脂等が挙げられる。画像形成装置に利用される現像ローラにおいては、軸芯体の外径は、通常4〜10mmの範囲とされる。
【0016】
<弾性体層>
弾性体層12は柔軟性を有するものであり、ゴムを原料主成分とした成型体を用いることができる。原料主成分のゴムとしては、従来から弾性ローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。ゴムの具体例を以下に列挙する。エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)。フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム。所望とする弾性体層の硬度や現像ローラとしての特性を与える限り、これらのゴムは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、これらのゴムに種々の添加剤を必要に応じて配合して弾性体層を成形することができる。添加剤としては、現像ローラの個別的な用途に合わせて、弾性体層自体に要求される機能に必要な成分、導電剤、非導電性充填剤、また、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、架橋剤、触媒、分散促進剤等が挙げられる。
【0018】
弾性体層に導電性を付与するために用い得る導電剤の具体例を以下に列挙する。
【0019】
カーボンブラック、グラファイト(GF)、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼の如き金属や合金;
酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体の如き導電性の金属酸化物;
上記金属や合金または金属酸化物で被覆された絶縁性物質の微粉末。
【0020】
これらの内、カーボンブラックは、比較的容易に入手でき、また、主成分のゴムの種類によらず、良好な帯電性が得られるため、好適である。
【0021】
前記弾性体層を導電化する手段としてカーボンブラックを用いる場合、DBP吸収量が50ml/100g以上、110ml/100g以下の範囲内にあるカーボンブラックが好ましい。この範囲のDBP吸収量のカーボンブラックを用いると、弾性体層の硬度を相対的に低く抑えて、所望の導電性を得ることが容易となる。
【0022】
より具体的には、DBP吸収量が50ml/100g以上のカーボンブラックを用いると、弾性体層中への分散が容易になると共に、導電性を出すための添加量を抑えることができる。また、DBP吸収量が110ml/100g以下のカーボンブラックを用いると、弾性体層に対する補強効果が大きくなく、必要以上に硬度を上げることがなく、好適な硬度と所望の導電性を安定して得ることが容易となる。カーボンブラックのDBP吸収量は、60ml/100g以上100ml/100g以下の範囲にあることがより好ましい。
【0023】
カーボンブラックのDBP吸収量は、カーボンブラック100g当たりのDBPの吸収量を示しており、カーボンブラックのストラクチャーの大小を判断する指標の1つである。カーボンブラックのストラクチャーはカーボンブラックの単位粒子が鎖状に連係してできるものであって、その大きさが、ゴム中に配合された際のカーボンブラックの電気伝導性を左右する。本発明において、DBP吸収量は、JISK6217−4の規定に従って測定したものである。これらのカーボンブラックは前記特性を備えるものであれば、市販品であっても、市販品を処理したものであっても、あるいは新規に製造されたものであってもよい。オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルタイプのカーボンブラック、これらのカーボンブラックに対し酸化処理を施したものを挙げることができる。
【0024】
また、前記カーボンブラックの添加量としては、通常、前記弾性体層を形成するゴム100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下とすることが好ましい。10質量部以上とすると所望とする導電性を安定して得ることが容易となる。また、80質量部以下とすると硬度が高くなりすぎてしまうことがない。さらには、弾性体層中への分散がし易く、導電性を安定して得ることができる点より、20質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
主成分のゴム中に、微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーの如き装置を用いる方法を挙げることができる。これらは、主成分のゴム材料に応じて適宜選択し利用すればよい。
【0026】
弾性体層に導電性を付与するその他の方法として、導電剤とともに、あるいは単独で導電性高分子化合物を添加する手法を利用することができる。導電性高分子化合物としては、ホストポリマーに種々のドーパントをドープしたものを用いることができる。
【0027】
ホストポリマーの具体例を以下に列挙する。ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)。ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)など。
【0028】
ドーパントの具体例を以下に列挙する。AsF5、I2、Br2、SO3、Na、K、ClO4、FeCl3、F、Cl、Br、I、Kr、Li、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)。
【0029】
弾性体層に添加可能な非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウムを挙げることができる。
【0030】
弾性体層を作製する際に利用される架橋剤の具体例を以下に列挙する。有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、含硫黄有機加硫剤、トリアジン系化合物等。
【0031】
また、加硫剤として、有機過酸化物を使用する場合には、有機過酸化物と併用して、共架橋剤を配合することができる。共架橋剤の具体例を以下に列挙する。
【0032】
硫黄、p−キノンジオキシム、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N′−4−ジニトロアニリン、N,N′−m−フェニレンジマレイミド、ジペンタメチレンチウラムペンタスルフィド。ジニトロソベンゼン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアジンチオール、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート。ジアリルメラミン、トリメタクリレート、ジメタクリレート、ジビニルアジペート、ビニルブチラート、ビニルステアレート、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム。マグネシウムジアクリレート、カルシウムジアクリレート、アルミニウムアクリレート、亜鉛アクリレート、スタナスアクリレート、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸亜鉛。
【0033】
これらの共架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0034】
また、加硫剤として、硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を使用することができる。このような加硫促進剤の具体例を以下に列挙する。
【0035】
ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド・アンモニアなどのアルデヒドアンモニア類;
n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合品、ヘプトアルデヒド−アニリン縮合物、トリクロトニリデン・テトラミン縮合物などのアルデヒドアミン類;
ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、オルト・トリル・ビグアニド、ジカテコール・ほう酸のジオルト・トリル・グアニジン塩などのグアニジン塩類;
2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;
2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩。2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホリノ−2−ベンゾテアジル・ジスルフィドなどのチアゾール類;
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール・スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド。N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミドなどのスルフェンアミド類;
チオカルバニド、エチレン・チオ尿素(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチル・チオ尿素、ジブチル・チオ尿素、混合アルキルチオ尿素、トリルメチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素などのチオ尿素類;
ジメチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチル・カルバミンン酸ナトリウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸鉛、ジアミル・ジチオカルバミン酸亜鉛。ジエチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジル・ジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチル・ジチオカルバミン酸セレン。ジエチル・ジチオカルバミン酸セレン、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル、ジエチル・ジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸銅、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉄、ジメチル・ジチオカルバミン酸ビスマス。ジメチル・ジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペコリン、活性化ジチオカルバメートなどのジチオカルバミン酸塩類;
テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、活性テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラエチルチウラム・ジスルフィド、テトラブチルチウラム・ジスルフィド。N,N′−ジメチル−N,N′−ジフェニルチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・テトラスルフィド、混合アルキル・チウラム・ジスルフィドなどのチウラム類;
イソプロピル・キサントゲン酸ナトリウム、イソプロピル・キサントゲン酸亜鉛、ブチル・キサントゲン酸亜鉛などのザンテート類;
4,4′−ジチオジモルホリン、アミノジアルキルジチオホスフェート、亜鉛−o,o−n−ブチル・ホスホロジチオエート、3−メルカプトイミダゾリン−チオン−2、チオグリコール酸エステルなど。
【0036】
これらの加硫促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0037】
上記加硫剤および加硫促進剤に加え、必要に応じて、加硫促進助剤を添加することもできる。このような加硫促進助剤を以下に列挙する。酸化マグネシウム、亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、リサージ、鉛丹、鉛白などの金属酸化物。ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウムなどの有機酸(塩)類。特に、亜鉛華、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0038】
これらの加硫促進助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0039】
また、液状シリコーンゴムの場合には、硬化可能なオルガノポリシロキサンと、シロキサン骨格を有する硬化剤を用いて架橋したものであることが好ましい。
【0040】
硬化可能なオルガノポリシロキサンとしては例えば、ジメチルポリシロキサンまたは末端にビニル基等の硬化剤と反応する官能基を有するオルガノポリシロキサンを用いることができる。硬化可能なオルガノポリシロキサンはシリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下が好ましく、平均分子量はおよそ50万程度が好ましい。
【0041】
また、硬化剤としてはオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。硬化可能なオルガノポリシロキサンのアルケニル基は、硬化剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位である。このようなアルケニル基の種類は特に限定されないが、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基およびアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2コ以上であり、硬化反応を最適に行わせるために、3個以上のポリマーが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量に特に制限はなく、低分子量(オリゴマー)から高分子量まで含有される。しかし、硬化反応を最適に行わせるために、比較的低分子量のポリマーが好ましい。
【0042】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの架橋触媒として使用される塩化白金酸六水和物のかわりに、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物が使用できる。架橋触媒としては特に制限はないが、例えば、以下のものを挙げることができる。Fe(CO)5、Co(CO)8、RuCl3、IrCl3、〔(オレフィン)PtCl22、ビニル基含有ポリシロキサン−Pt錯体。H2PtCl6・6H2O、L3RhCl3、L2Ni(オレフィン)、L4Pd、L4Pt、L2NiCl2(但し、L=PPh3若しくはPR’3、ここでPhはフェニル基、R’はアルキル基を示す)。その中でも、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム系遷移金属化合物触媒である。
【0043】
弾性体層の厚さとしては、感光ドラムと当接する際に均一なニップ幅を確保し、かつ、好適なセット回復性を満たすためには、0.5mm以上、特には1.0mm以上とすることが好ましい。作製される現像ローラの外径精度を損なわない限り、弾性体層の厚さに特に制限はないものの、一般に、弾性体層の厚さを過度に厚くすると、作製コストを適正な範囲に抑えることが難しく、現像ローラ自体の寸法精度を安定させることが難しくなる。これらの実用上の制約を考慮すると、弾性体層の厚さは5.0mm以下、特には4.0mm以下とすることが好ましい。即ち、弾性体層の厚さは0.5mm以上、5.0mm以下、特には1.0mm以上、4.0mm以下の範囲とすることが好ましい。そして、弾性体層の厚さは上記の範囲内において、その硬さに応じて適宜決められる。
【0044】
弾性体層の形成は、押出成形、注型成形等いずれの方法によってもよく、弾性体層に用いる材料の種類によっては、被覆層を積層する前に、弾性体層の外周面に改質処理を施してもよい。改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧水銀UV処理、エキシマUV処理等を挙げることができる。
【0045】
<被覆層(表面層)>
本発明の現像ローラは、弾性体層12の外周面に被覆層(表面層)13を有する。
<要件(イ)および(ウ)について>
被覆層は、前記の要件(イ)及び(ウ)を満たしていることを要する。以下に要件(イ)及び(ウ)の技術的意義について説明する。
【0046】
まず、要件(ウ)は、単位厚さ(1mm)あたりの被覆層の硬さを特定しているものである。
【0047】
本発明において、マルテンス硬度は、ISO14577に基づく、圧子に荷重をかけながら、測定対象物に押し込むことにより求められる物性値であり、以下の式によって求められる:
(試験荷重)/(試験荷重下での圧子の表面積)(N/mm2)。
【0048】
マルテンス硬度の測定は、超微小硬さ試験システム(商品名:ピコデンターHM500;フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて行うことが可能である。この測定装置では、所定の形状の圧子を、所定の比較的小さい試験荷重をかけながら被測定物に押し込む。そして、所定の押し込み深さに達した時点で、その押し込み深さから圧子が接触している表面積を求め、上記式よりマルテンス硬度を求めるものである。つまり、定荷重測定条件で圧子を被測定物に押し込んだ際に、押し込まれた深さに対するそのときの応力をマルテンス硬度として定義するものである。
【0049】
本発明においては、現像ローラ表面に対し、表面から垂直方向へ、一定荷重印加速度(1mN/mm2/sec)で四角錐形状圧子を深さ0.80μmまで押し込みマルテンス硬度を測定した。測定は、現像ローラの長手方向を4等分した位置である3ヵ所にて測定し、その相加平均した値を、現像ローラ表面のマルテンス硬度H1(N/mm2)とする。
【0050】
弾性体層のマルテンス硬度H2は、現像ローラの外周面を周方向で6等分したときの隣り合う2点間を結ぶ直線(断面で考えると、外周6分の1に相当する弧に対する弦)を通り、軸芯体の軸に平行な平面で切断した現像ローラの弾性体層の切断面にて測定する。
【0051】
弾性体層のマルテンス硬度H2の測定自体は、上記現像ローラ表面のマルテンス硬度の測定と同様の方法で行う。なお、測定箇所は、現像ローラの長手方向を4等分した位置である3ヵ所で測定し、その相加平均した値を弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)とする。
【0052】
このようにして測定されるマルテンス硬度H1とH2との差を被覆層の厚さで除することにより、単位厚さ当たりの被覆層の硬度が求められる。被覆層の硬度を、このように定義付けた理由は、被覆層が、15nm以上、5000nm以下と非常に薄いためである。即ち、このような薄い被覆層が弾性体層の表面に存在している場合において、当該被覆層の固有の硬度を直接、かつ精度よく測定することは現在の技術水準では極めて困難である。そこで、弾性体層と被覆層との積層体としての硬度、並びに弾性体層の硬度を各々測定し、その差をとることによって被覆層に固有の硬度と定義したのである。
【0053】
そして、現像ローラにおいて(H1−H2)/dの値を400以上とすることは、被覆層の厚さが15nm以上、5000nm以下の範囲内にあることを前提として、現像ローラに生じる部分的な永久変形を有効に抑制することができる。
【0054】
部分的な永久変形を抑制できる理由は明確ではないが、以下のように考えることができる。すなわち、被覆層が比較的硬いため、被覆層自体が変形し難く、且つ、適度な可撓性を有する。被覆層自体は膜として撓むが、部分的な急激な屈曲や、膜厚が薄くなるような変形を起こし難くなる。被覆層は当接部材が当接したときに受ける力を、その内部へ分散させて、下層の弾性体層へ伝える。当接部材が長期間にわたり現像ローラの特定の部位に当接し、その後、その当接から解放された際、該弾性層は、低硬度で、かつ変形回復に優れているため、十分に変形を回復させ得る。同時に、被覆層自体も、弾性層の回復に合わせて、元の形状に戻る。つまり、被覆層は弾性層の優れた変形回復性を阻害しないことはもとより、弾性層へ応力を分散させることにより、弾性層の変形回復性をさらに優れたものとする。
【0055】
一方、現像ローラにおいて(H1−H2)/dの値を2000以下とすると、被覆層の厚さが15nm以上、5000nm以下の範囲内にあることを前提として、トナーの劣化を抑制し得る現像ローラとしての柔軟性を備えるものとなる。
【0056】
被覆層は厚さが15nm以上、5000nm以下であることを必要とする。被覆層の厚さが15nm以上であれば、式(1)の関係を満たすマルテンス硬度を有する被覆層を安定して形成することができる。一方、被覆層の厚さが5000nm以下であれば、被覆層が、現像ローラのアスカーC硬度に実質的な影響を及ぼすことを抑制できる。そして、式(1)の関係を満たすマルテンス硬度を有する被覆層の厚さが5000nm以下であれば、現像ローラのアスカーC硬度を85°以下とし易く、トナーの劣化を抑制することができる。
【0057】
<被覆層の具体的構成、製法について>
被覆層13を形成する成分の具体例を以下に列挙する。
【0058】
ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリスチレン樹脂、SiOxの如きシリカ系材料。ダイヤモンドライクカーボン(Diamond like Carbon;DLCと表すことがある)など。
【0059】
これらの材料は、単独であるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0060】
これらの中でも、機械的性質に優れるフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、SiOxのシリカ系材料、DLCが好適である。
【0061】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体等の一般的なフッ素を含む重合体を用いることができる。
【0062】
フッ素樹脂としては、以下の材料があげられる。ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、
テトラフルオロエチレンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体との共重合体。ここで、エチレン性不飽和単量体の例としては例えば以下のものが挙げられる。エチレン、プロピレン等のオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレン、ビニルフルオライド等のハロゲン化オレフィン類、パーフルオロアルキルビニルエーテル類等。
【0063】
また、溶剤可溶型フッ素樹脂を用いた場合には、そのフッ素樹脂溶液の濃度を調整することにより、後述する湿式法を用いることにより、比較的簡便に、所望の厚みを有するフッ素樹脂の被覆層を得ることができる。溶剤可溶型フッ素樹脂としては、以下のものが挙げられる。
【0064】
フッ化ビニリデン;テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンの三元共重合体等のフッ化ビニリデン共重合体;
テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどのフルオロオレフィンとビニルエーテル,ビニルエステル、ビニルシランなどの炭化水素系オレフィンとの共重合体;
フルオロアクリレートとアクリレートとの共重合体;
パーフルオロアルキル基によって置換されたジエポキシ化合物の重合体。
【0065】
これらの樹脂は樹脂成分として単独で用いられてもよく、また他の樹脂と混合して用いられてもよい。
【0066】
ポリイミド樹脂は、主鎖に環状イミド構造を持ったポリマーであれば、芳香族ポリイミドでも、脂環式ポリイミドでもよい。より具体的なポリイミド樹脂材料としては、例えば、ポリピロメリット酸イミド系のポリイミド樹脂材料、ポリビフィニルテトラカルボン酸イミド酸系樹脂材料等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0067】
また、被覆層に含まれる材料のSiOxとしては以下のものが挙げられる。酸素−ケイ素−酸素を主骨格とし、ケイ素−炭素の結合を持ち、水素、酸素、炭素のうち少なくとも1つの元素が、ケイ素に対して2つ結合された構造を有する酸化ケイ素系材料。
【0068】
前記DLCとはダイヤモンドに類似した高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性を持つカーボン薄膜の総称である。具体的には、炭素を主成分とし、水素を少量含み、ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両結合が混在しているアモルファス構造の材料である。
【0069】
上記した被覆層は、湿式法、真空蒸着、物理的気相成長(PVD)法、化学的気相成長(CVD)法などの乾式法で弾性体層12上に形成される。湿式法の具体例としては、ディップコート、スプレーコート、ロールコート等が挙げられる。また、PVD法の具体例としては、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられる。更にCVD法の具体例としては、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等が挙げられる。
【0070】
ディップコート、スプレーコート、ロールコート等に用いる溶液を調製するための溶剤は、形成しようとする被覆層の材料に応じて溶解するものを選択すればよい。通常、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく用いられる。
【0071】
本発明において、被覆層は、SiOxを主成分とする材料で形成することが特に好ましい。上記の要件(イ)及び(ウ)の調整を容易に行うことができるためである。SiOxを主成分とする被覆層は、被覆層の組成や膜厚をより均一に形成することができるという理由から、プラズマCVD法で形成することが好ましい。即ち、一対の電極間に弾性ローラを配置したチャンバー内に原料ガスとして有機ケイ素化合物を、必要な炭化水素化合物、酸素ガス等と共に導入し、電極間に高周波電力を供給し、プラズマを発生させて弾性層上にSiOx膜を形成する方法である。ここで、有機ケイ素化合物の具体例としては、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。また、炭化水素化合物の具体例としては、トルエン、キシレン、メタン、エタン、プロパン、アセチレン等が挙げられる。
【0072】
プラズマCVD法を用いて形成したSiOx膜を被覆層とする場合、SiOx膜におけるケイ素原子、および、ケイ素原子に化学結合している酸素原子の存在比率によりその硬度を調整することができる。具体的には、ケイ素原子に対するケイ素原子に化学結合している酸素原子の存在比(O/Si)を高めること、言い換えればSiO2に近づくほどにSiOx膜は硬質の膜となる。即ち、[(H1−H2)/d]の値を大きくすることができる。また、O/Siを低めることで、SiOx膜は軟質の膜となる。即ち、[(H1−H2)/d]の値を小さくすることができる。
【0073】
そしてO/Siは、原料ガスの配合比などにより調整することができる。例えば、有機ケイ素化合物と酸素ガスとの配合比において、酸素ガスの比率を高めることによりO/Siの値を増加させることができる。また、高周波電力を増加させることで、O/Siの値を低下させることができる。
【0074】
シリコーンゴムを含む弾性体層上に、プラズマCVD法によってSiOx膜を形成した場合において、O/Siが1.00以上1.80以下の範囲にあるSiOx膜は、上記要件(イ)を満たすことを前提として上記要件(ウ)を満たすものとなる。
【0075】
SiOx膜からなる被覆層中の各元素の存在比率は次のようにして求めることができる。
【0076】
X線光電子分光装置(商品名:Quantum2000;アルバック・ファイ株式会社製)を用い、X線源をAlKαとして、現像ローラの表面層13の表面をSiの2p軌道、Oの1s軌道の結合エネルギーに起因するピークを測定する。それぞれのピークから各原子の存在比を算出し、得られた存在比よりO/Siとする。
【0077】
<要件(ア)について>
被覆層が形成された現像ローラは、当該表面から測定されるアスカーC(Asker−C)硬度が40°以上85°以下の範囲にある必要がある。トナーの劣化を抑制し、電子写真感光ドラムとのニップ幅を確保するためである。
【0078】
ここで、現像ローラ表面のAsker−C硬度は、実質的には、弾性体層と被覆層との厚みによる影響を受ける値であるが、同じ材質の弾性体層で、層厚が薄くAsker−C硬度が高くなる場合にも、上記と同じ傾向がある。これは、弾性体層の厚みが薄い場合には、軸芯体の硬度が測定値に反映されるためである。いずれの場合であっても、被覆層の表面におけるAsker-C硬度の測定値が上記範囲であれば、本発明の現像ローラにおいて、要件(ア)を満たすことになる。実質的に弾性体層より被覆層の硬度が高くなっているが、被覆層の厚みが上記範囲にある場合、現像ローラ表面のAsker−C硬度は、実質的には、弾性体層のAsker−C硬度に支配される。そして、要件(ア)を満たす限り、被覆層を形成する前の弾性体層が表面にあるローラ表面のAsker−C硬度は、25°以上82°以下の範囲にあることが好ましい。
【0079】
<ジヨードメタンに対する接触角>
本発明において、現像ローラ表面は、ジヨードメタンに対する接触角が40°以上、70°以下、特には50°以上65°以下の範囲にあることがより好ましい。ジヨードメタンに対する接触角が40°以上の場合、トナーの構成成分である外添材やトナー自体の付着を低く抑えることができる。ジヨードメタンに対する接触角が70°以下の場合、現像ローラの表面に安定してトナーを担持させることができる。すなわち、画像を形成する際に十分な濃度を得ることができる。
【0080】
現像ローラ表面のジヨードメタンに対する接触角を制御することで、外添剤やトナーの付着を防ぐことができる理由としては、以下のように考えることができる。外添剤やトナーの付着は物理的に除去できるものである。被覆層が無機系膜からなる場合には、外添剤やトナーの付着は、van der Waals力が支配的となる。この場合、水素結合成分を有さないジヨードメタンの接触角を制御することが、外添剤やトナーの付着を防ぐことに結びついている。
【0081】
水素結合成分は、表面自由エネルギー(γTotal)を構成する一要素であり、以下のように定義する。表面自由エネルギー(γTotal)は、3つの成分、分散力成分(γd)、配向力成分(γp)、水素結合力成分(γh)に分けて考えられ、以下の式で表すことができる。
【0082】
γTotal=γd+γp+γh
(上記式中、γdは、分散力(誘起双極子間)成分を、γpは、配向力(極性/極性分子間)成分を、γhは、水素結合力(水素原子/陰性原子)成分を表す。)この解析については北崎−畑理論に準じており、具体的には、畑らの論文(J.Adhesion,21,177,(1987))に述べられている。
【0083】
上記の通り、現像ローラにおいて、ジヨードメタンの接触角の値と表面自由エネルギー(γTotal)とは必ずしも反比例する関係にあるとは限らないが、表面のジヨードメタンに対する接触角を制御することにより、付着物を低減させ得る効果が得られる。
【0084】
さらに本発明の現像ローラは、現像ローラ表面が20mJ/m2以上40mJ/m2以下の表面自由エネルギーを有し、かつ、該表面自由エネルギーの分散力成分が10mJ/m2以上25mJ/m2以下であることが好ましい。これらの値がこの範囲にある場合、外添材やトナーの付着をより低く抑えることができると共に、必要なトナー搬送性を両立することが容易である。
【0085】
<5%延伸変形時の割れについて>
被覆層は、該現像ローラから切り取った被覆層及び弾性体層を含む短冊状の被験試料を5%延伸変形させたときに、割れを生じないものであることが好ましい。被覆層をこのようなものとすると、弾性体層に含まれる成分が、現像ローラ表面にブリードし難く、現像ローラ表面へのトナーや外添剤の付着を抑制することができる。
【0086】
以上、軸芯体11の外周面に順次、弾性体層12及び被覆層13を有する2層構造の現像ローラについて説明したが、本発明に係る現像ローラは、軸芯体の外周面上に3層以上の多層の層構成を有するものであってもよい。このような現像ローラとして、例えば、弾性体層12自体が複数の層で構成される現像ローラが挙げられる。その場合、最も外側に位置する弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)を、式(1)におけるマルテンス硬度H2(N/mm2)に適用することができる。
【0087】
以上説明したように、本発明の現像ローラは、低硬度かつ変形回復性に優れ、感光ドラムの汚染を抑制し、トナーや外添剤が付着しにくい表面性を合せ持つ現像ローラとなる。この利点から、現像装置、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置の現像ローラとして用いた場合に、画像出力枚数を重ねた際に、画像濃淡ムラや濃度低下を抑制することができる。また、規制ブレードへのトナー融着による画像スジの発生を抑制し良好な画像を継続して得ることができる。
【0088】
さらに、利用される電子写真画像形成装置自体、高速化され、プロセス速度、すなわち、感光ドラムの表面速度が増加する画像形成において、前記の利点は一層顕著なものとなる。
【0089】
<現像装置、電子写真プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置について>
次に、本発明にかかる現像装置、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置について説明する。
【0090】
本発明にかかる現像装置は、静電潜像を担持する潜像担持体と対向した状態でトナーを担持する現像ローラと、該現像ローラに担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制ブレードとを備えている。そして前記現像ローラが、前記潜像担持体にトナーを付与することにより前記静電潜像をトナー像として顕像化する現像装置であり、前記現像ローラが、上記本発明の現像ローラであることを特徴とする。
【0091】
本発明にかかる電子写真プロセスカートリッジは、潜像担持体と、該潜像担持体の表面を一様に帯電する帯電装置と、該潜像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置とを備えており、前記現像装置が上記本発明の現像装置である。
【0092】
本発明にかかる電子写真画像形成装置は、電子写真方式により静電潜像が形成される潜像担持体、該静電潜像形成に必要な帯電量に該潜像担持体を帯電するための帯電装置、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置を有している。更に、前記静電潜像形成装置により形成された静電潜像にトナーを付着させてトナーの像として顕像化する現像装置、及び該トナーの像を転写材に転写するための転写装置を有している。そして、本発明の電子写真画像形成装置は、前記現像装置が、上記本発明の現像装置であることを特徴とする。
【0093】
図3は、本発明にかかる現像ローラを用いた現像装置を備えた電子写真画像形成装置の一例の概略構成を示す断面図である。図3に示した電子写真画像形成装置は、電子写真方式により静電潜像が形成される潜像担持体としての感光ドラム21、該静電潜像形成に必要な帯電量に該潜像担持体を帯電するための帯電装置としての帯電部材26を備えている。
【0094】
また、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置(不図示)、該静電潜像にトナーを付着させて可視化させトナーからなる画像を形成するための現像装置2を有している。更に該潜像担持体上に形成されたトナーの像を転写材としての転写紙36に転写するための転写装置としての転写ローラ31を有している。そして、図3に示した画像形成装置は、現像装置2として、本発明の現像装置を備えている。
【0095】
図3に示した電子写真画像形成装置においては、感光ドラム21が矢印方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電部材26によって一様に帯電される。感光ドラム21に静電潜像を書き込むための静電潜像形成装置の露光手段であるレーザー光25により、感光ドラム21の表面に静電潜像が形成される。レーザー光25により形成された静電潜像は、感光ドラム21に対して接触配置される現像装置2によってトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像により行われる。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ31によって転写紙36に転写される。トナー像を転写された転写紙36は、定着装置29により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0096】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーは、感光ドラム21表面をクリーニングするためのクリーニングブレード28により掻き取られる。掻き取られた転写残トナーは、廃トナー容器27に収納される。クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0097】
現像装置2は、静電潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラム21と対向した状態でトナーを担持する現像ローラ1と、現像ローラ1に担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制ブレード24とを備えている。現像装置2においては、現像ローラ1が潜像担持体である感光ドラム21にトナー23を付与することにより静電潜像をトナー像として顕像化(可視化)し、トナーからなるトナー像を形成する。図3に示された現像装置2は、一成分トナーとして非磁性トナー23を収容した現像容器と、該現像容器内の長手方向に延在する開口部の位置に、トナー担持体である本発明に係る現像ローラ1を備えている。また、規制ブレード24は、現像容器の長手方向に延在する開口部の上縁に沿って配置されている。なお、図3において、34は転写紙36を搬送する転写搬送ベルトである。30、33及び35は、各々転写搬送ベルトの回動に用いられる駆動ローラ、テンションローラ及び従動ローラである。32はバイアス電源である。更に、37は不図示の給紙カセットから転写紙36を供給する給紙ローラである。また、38は給紙ローラ37によって供給された転写紙36を吸着して転写搬送ベルト34に担持させるための吸着ローラである。
【0098】
また本発明にかかる電子写真プロセスカートリッジの実施形態の一例の説明図を図4に示す。図4に示したプロセスカートリッジ4は、潜像担持体としての感光ドラム21と、感光ドラム21の表面を一様に帯電する帯電装置としての帯電部材26と、感光ドラム21に形成された静電潜像を現像する現像装置としての本発明の現像装置2を備えている。なお、本発明の電子写真プロセスカートリッジは、さらに、クリーニング部材28、転写ローラ31のうちの少なくとも一つを有しているものであってもよい。本発明のプロセスカートリッジは、上記部材が一体的に保持されてなるものであり、電子写真画像形成装置に着脱可能に設けられる。画像形成時には、現像ローラ1は感光ドラム21と接触幅をもって接触している。現像装置2においては、トナー塗布部材22が、現像容器内で、トナーの層厚を規制する部材である規制ブレード24と現像ローラ1表面との接触部に対し、現像ローラ1の回転方向上流側に接触し、かつ、回転可能に支持されている。トナー塗布部材22の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミドの如き繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ1へのトナー23の供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。具体的には、例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの弾性ローラをトナー塗布部材22として用いることができる。このトナー塗布部材22の現像ローラ1に対する接触幅としては、1〜8mmが好ましく、また、現像ローラ1に対してその接触部において相対速度をもたせることが好ましい。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に順次弾性体層及び被覆層を有する現像ローラを例にして説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、実施例によって、何ら限定されるものではない。実施例に示す手法で作製される現像ローラは、電子写真画像形成装置に使用される現像ローラとして好適に使用できる。
【0100】
本実施例において、被覆層の膜厚、Asker−C硬度、マルテンス硬度、接触角、表面自由エネルギー、表面自由エネルギーの分散力成分、カーボンブラックのDBP吸収量については下記の方法により測定したものである。
【0101】
<被覆層の膜厚>
本発明の被覆層の膜厚は、薄膜測定装置F20−EXR(商品名、FILMMETRICS社製)を用いて測定した。現像ローラの長手方向を4等分した位置である3ヵ所で、周方向に120°で分けた各3点の、計9点にて測定し相加平均した値である。
【0102】
<Asker−C硬度>
本発明におけるAsker−C硬度(アスカーC硬度)は、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)社製)を用いて測定した現像ローラ表面の硬度である。常温常湿(23℃、55%RH)の環境中に12時間以上放置した現像ローラに対して、上記硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後の測定値とする。
【0103】
<マルテンス硬度>
マルテンス硬度の測定は、超微小硬さ試験システム ピコデンターHM500(商品名、フィッシャー:インストルメンツ社製)を用いて前述の方法により測定した。現像ローラ表面のマルテンス硬度、弾性体層部のマルテンス硬度の測定には、図7に示すビッカース圧子を用い、四角錐の形状に補正して求めた。
【0104】
<接触角>
本発明における現像ローラ表面のジヨードメタンに対する接触角は、協和界面科学(株)製の接触角計CA−S ROLL(商品名)を使用して測定した。現像ローラの長手方向を4等分した位置である3ヵ所で測定し、その相加平均した値を現像ローラ表面のジヨードメタンに対する接触角θdとした。測定は温度25℃、相対湿度50%RHの環境下にて行った。
【0105】
<表面自由エネルギー及びその分散力成分>
本発明における現像ローラ表面の表面自由エネルギーは、表1に示される表面自由エネルギー3成分が既知のプローブ液体を使用し、測定を行った。
【0106】
【表1】

【0107】
具体的には、シヨードメタン以外のブロード液体(水、エチレングリコール)についても、ジヨードメタンと同様にして、該プローブ液体と現像ローラ表面との接触角θを測定した。
【0108】
表1のプローブ液体の水、ジヨードメタン、エチレングリコールの表面自由エネルギーγLd、γLp、γLh及びγLTotalとそれぞれのプローブ液体を用いて求めた上記接触角θを下記式(2)で示される北崎・畑の式に代入して3つの式を作る。その3元連立方程式を解いて、現像ローラ表面の表面自由エネルギーの各成分γsd、γsp、γshを求め、γsd、γsp、γshの和である表面自由エネルギー(γTotal)及び該表面自由エネルギーの分散力成分(γsd)を求めた。
【0109】
【数1】

【0110】
<延伸時の被覆層の割れ>
現像ローラの外周面を周方向で6等分した場合の隣り合う2線間を結ぶ直線(断面で考えると、外周6分の1に相当する弧に対する弦)を通り、軸心体の中心線に平行な平面で切断し弾性体層と被覆層をその表面に有するゴム片を切り出した。これは、弾性体層部のマルテンス硬度H2(N/mm2)を測定する際の加工で現像ローラから切り取られた部分に相当する。このゴム片を長さ100mmに切断し、長手方向の40mm、60mmの位置に、標線間の間隔が20mmとなるようにスタンプし被験試料とした。この被験試料を加硫ゴム引張永久歪み試験用定伸長冶具(ダンベル社製)にセットし、標線間が21mmとなるように伸張し、5分間静置した後に定伸長冶具より被験試料を取り外した。5%延伸変形された標線間の被覆層の状態を目視で観察し被覆層の割れの有無を判断した。測定は温度25℃±2℃、相対湿度50%RH±5%の環境下にて行った。
【0111】
<DBP吸収量>
DBP吸収量は、弾性体層中に存在するカーボンブラックを下記の手順にて弾性体層から単離したものについて、JIS K6217−4「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:DBP吸収量の求め方」に準じて測定した。
【0112】
現像ローラから弾性体層を切り出し、1〜2mm角程度に細かくした弾性体層片を、ロータリーキルンを用いて窒素気流下で一定時間にわたり高温加熱することでゴム成分を分解し、その残渣よりカーボンブラック成分を回収した。温度と時間は、弾性体層に含まれるゴムの種類や量等に応じで選択する。シリコーンゴムの場合、750℃で15分間加熱することで分解できる。ゴムは、炭化水素及び/又はオイルに分解される。また、回収された残渣に、カーボンブラックの他に、SiO(シリコーンゴム)、石英、タルク等の無機添加剤等が含まれる場合は、これらは比重の違いを利用して分離した。弾性体層からカーボンブラック成分を取り出し単離する方法としては、これに限らず一般的に用いられる方法を用いればよい。
【0113】
[実施例1]現像ローラ1
軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(直径6.0mm)の外周面に接着剤(プライマー)としてDY39−051A/B(商品名、東レダウコーニング社製)を塗布し、焼き付けたものを用いた。
【0114】
弾性体層形成用の原材料として下記原材料を準備した。
液状シリコーンゴム(ポリシロキサン混合物と架橋剤と白金系触媒とを加え混合した付加型シリコーンゴム組成物) 100質量部
上記ポリシロキサン混合物は、以下のものからなる。
【0115】
25℃における粘度が12000Pa・sの末端ビニル基封鎖の直鎖状ポリジメチルシロキサン40質量%
25℃における粘度が40Pa・sであり1つのビニル基を有する分岐ポリシロキサンセグメントと二官能のジメチルシロキサンを200個連続して有する直鎖状オイルセグメントとからなるブロックポリマー60質量%
上記架橋剤は1分子中にケイ素結合水素原子を平均2.4個有したオルガノシロキサンである。
シリカ粉体 15質量部
(AEROSIL 130(商品名、日本アエロジル社製))
石英粉末 60質量部
(Min−U−Sil 15(商品名、U.S.Silica Company社製))
カーボンブラック(導電性付与剤) 20質量部
(デンカブラック粒状品(商品名、電気化学工業社製))
上記原材料を混合することにより、導電性の液状ゴムコンパウンドを作製した。
【0116】
前記軸芯体を金型に配置し、上記液状ゴムコンパウンドを金型内に形成されたキャビティに注入した。次いで、該金型を120℃で8分間加熱し、その後室温に冷却した後に脱型した。得られたシリコーンゴムを、再び、200℃で60分間加熱し、加硫硬化して、厚み3.0mmの弾性体層を軸芯体の外周面に設けた。
【0117】
上記の方法で得られた弾性体層を有するローラを、「シリコーン弾性体層ローラ0」とする。このシリコーン弾性体層ローラ0を、図5に示すプラズマCVD装置内に設置し20rpmで回転させながら、原料ガスを供給して、弾性体層の外周面に被覆層を形成し、現像ローラ1を作製した。図5において、41は反応ガス供給部、42は希ガス供給部、43は一対の平行に配置された電極、44は高周波電源、45はチャンバー47の内部を減圧する減圧装置、46はチャンバー47内に配置した弾性体ローラ48を回転させる回転装置である。真空チャンバー内の圧力を25.3Paとし、周波数13.56MHz、出力120wにて4分間高周波加熱処理し上記被覆層を形成した。
【0118】
上記被覆層形成用の原料ガスとして、以下の組成の混合ガスを用いた。
ヘキサメチルジシロキサン蒸気 1.0sccm
酸素 0.5sccm
アルゴンガス 23.5sccm
ここで「sccm」は、前記原料ガスが0℃1気圧の時の毎分当たり1cm3の体積流量を表す。ヘキサメチルジシロキサンは、純度99%の一級品を、酸素は純度99.999%以上のものを、アルゴンガスは純度99.999%以上のものを使用した。
【0119】
こうして形成したSiOx膜からなる被覆層中の各元素の存在比率を次のようにして求めた。X線光電子分光装置(商品名:Quantum2000;アルバック・ファイ株式会社製)を用い、X線源をAlKαとして、現像ローラの表面層13の表面をSiの2p軌道、及び、Oの1s軌道の結合エネルギーに起因するピークを測定する。それぞれのピークから各原子の存在比を算出し、得られた存在比よりO/Siを求めた。
【0120】
また、SiOxの化学結合については、フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置(商品名:SpectrumOne;株式会社パーキンエルマージャパン製)により、SiOx膜の表面のIR測定にて確認した。すなわち、Si−O振動ピーク(450cm-1)の存在により、Si−Oの化学結合の存在を確認した。その結果、本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は、1.03であった。
【0121】
[実施例2]現像ローラ2
原料ガスの酸素を1.0sccm、アルゴンガスを23.0sccmとしたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ2を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.29であった。
【0122】
[実施例3]現像ローラ3
原料ガスの酸素を1.5sccm、アルゴンガスを22.5sccmとしたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ3を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
【0123】
[実施例4]現像ローラ4
原料ガスの酸素を2.0sccm、アルゴンガスを22.0sccmとしたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ4を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.66であった。
【0124】
[実施例5]現像ローラ5
原料ガスの酸素を2.5sccm、アルゴンガスを21.5sccmとしたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ5を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.77であった。
【0125】
[実施例6]現像ローラ6
原材料のシリカ粉体の使用量を20質量部、石英粉末の使用量を70質量部とし、カーボンブラックをデンカブラックFX−35(商品名、電気化学工業社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ6を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.03であった。
【0126】
[実施例7]現像ローラ7
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ7を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.77であった。
原材料のシリカ粉体の使用量を10質量部、
石英粉末の使用量を40質量部、
カーボンブラックをトーカブラック#7350F(商品名、東海カーボン社製)、
カーボンブラックの使用量を40質量部、
原料ガスの酸素を2.5sccm、
アルゴンガスを21.5sccm。
【0127】
[実施例8]現像ローラ8
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ8を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.90であった。
原材料のシリカ粉体の使用量を10質量部、
石英粉末の使用量を40質量部、
カーボンブラックをトーカブラック#7350F」(商品名、東海カーボン社製)、
カーボンブラックの使用量を40質量部、
原料ガスの酸素を2.8sccm、アルゴンガスを21.2sccm。
【0128】
[実施例9]現像ローラ9
原料ガスの酸素を1.5sccm、アルゴンガスを22.5sccmとし、高周波加熱処理時間を30秒としたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ9を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
【0129】
[実施例10]現像ローラ10
原料ガスの酸素を1.5sccm、アルゴンガスを22.5sccmとし、高周波加熱処理時間を90秒としたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラ10を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
【0130】
[実施例11]現像ローラ11
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ11を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.77であった。
原材料のシリカ粉体の使用量を40質量部、
カーボンブラックをデンカブラックFX−35(商品名、電気化学工業社製)、
原料ガスの酸素を2.5sccm、
アルゴンガスを21.5sccm。
【0131】
[実施例12]現像ローラ12
下記原材料を準備した。
ゴム 100質量部
(NBR、(JSR N230SL、商品名、JSR社製))
酸化亜鉛 5.0質量部
ステアリン酸 2.0質量部
炭酸カルシウム 30質量部
2−メルカプトベンズイミダゾール(MB) 0.5質量部
カーボンブラック 35質量部
(トーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン社製))
可塑剤 20質量部
(ポリサイザーP−202(商品名、大日本インキ社製)
上記原材料を、50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練して、ゴムコンパウンドを調製した。
【0132】
さらに上記ゴムコンパウンドに、ゴム(本実施例1においては、NBR)100質量部に対して下記の各種添加剤を添加し、20℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練して、弾性体層用コンパウンドを得た。
分散性硫黄 1.2質量部
(Sulfax 200S(商品名、鶴見化学工業社製、純度99.5%)
ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド 1.0質量部
(ノクセラーDM(商品名、大内新興化学社製))
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド 1.0質量部
(ノクセラーTRA(商品名、大内新興化学社製))
テトラメチルチウラムモノスルフィド 0.5質量部
(ノクセラーTS(商品名、大内新興化学社製))
上記弾性体層用コンパウンドを押出成形によってチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を130℃で30分間行い、さらに電気炉によって二次加硫を140℃で30分間行ない、ゴム製チューブを得た。このチューブを切断した後、外周面に接着剤(プライマー)を塗布し焼き付けした、ニッケル鍍金を施したSUS製の軸芯体(直径6.0mm)を圧入した。次いで、表面を研磨して厚み3mmの弾性体層を軸芯体の外周面に設け、得られた弾性体層を有するローラを「NBR弾性体層ローラ0」とする。
【0133】
このNBR弾性体層ローラ0の周囲に被覆層を形成した。被覆層の形成は、原料ガスとして下記の混合ガスを用い、下記の条件とした以外は、実施例1と同様として現像ローラ12を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
原料ガス;
ヘキサメチルジシロキサン蒸気 1.0sccm、
酸素 2.5sccm、
アルゴンガス 21.5sccm
の混合ガス。
高周波加熱処理時間を5分間。
【0134】
[実施例13]現像ローラ13
弾性体層形成用の原材料として下記原材料を準備した。
熱可塑性樹脂 100質量部
(サントプレーン8211−25(商品名、エーイーエスジャパン社製))
可塑剤 20質量部
(ポリサイザーP−202(商品名、大日本インキ社製))
カーボンブラック 35質量部
(トーカブラック#7350F(商品名、東海カーボン社製))
これらの原材料を、スクリュー直径Dが30mm、長さLが960mm、L/Dが32である2軸押出機にて混練し、樹脂組成物ペレットを作製した。
【0135】
また、別途、ニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(直径6.0mm)の外周面に、接着剤(プライマー)を塗布し、焼き付けした軸芯体を準備した。この軸芯体と上記樹脂組成物ペレットを用い、クロスヘッドダイを備えた押出機で、該軸芯体の外周面に前記樹脂組成物からなる弾性体層を形成し、両端部の余分な弾性体層を切断して除去し、軸受け部を設けた。さらに、弾性体層を回転砥石で研磨加工することにより、厚み3mmの弾性体層を軸芯体の外周面に設けた。得られた弾性体層を有するローラを「熱可塑性樹脂による弾性体層ローラ0」とする。
【0136】
この熱可塑性樹脂による弾性体層ローラ0の周囲に被覆層を形成した。被覆層の形成は、原料ガスとして下記の混合ガスを用い、下記の条件とした以外は、実施例1と同様として現像ローラ13を作成した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
原料ガス;
ヘキサメチルジシロキサン蒸気 1.0sccm、
酸素 2.5sccm、
アルゴンガス 21.5sccm、
の混合ガス。
高周波加熱処理時間を3分。
【0137】
[実施例14]現像ローラ14
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ14を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
熱可塑性樹脂をサントプレーン8211−35(商品名、エーイーエスジャパン社製))、
可塑剤の使用量を15質量、
カーボンブラックをトーカブラック#7350F(商品名、東海カーボン社製)、
カーボンブラックの使用量を32質量部。
【0138】
[実施例15]現像ローラ15
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ15を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
熱可塑性樹脂をサントプレーン8211−45(商品名、エーイーエスジャパン社製)、
可塑剤の使用量を10質量、
カーボンブラックの使用量を30質量部。
【0139】
[実施例16]現像ローラ16
シリコーン弾性体層ローラ0を、真空蒸着装置に載置して、るつぼ内にフッ素樹脂(Fluon ファインパウダーCD145(商品名、旭硝子社製)を入れた後、該真空蒸着装置内を13.33Paまで減圧した。その状態で、るつぼの温度を650℃になるように調整し、載置したローラを20rpmで回転させながら、3分間装置内に置いて、被覆層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、現像ローラ16を作製した。
【0140】
[実施例17]現像ローラ17
真空蒸着装置内の処理時間を10分間に変更した以外は、実施例16と同様にして現像ローラ17を作製した。
【0141】
[実施例18]現像ローラ18
真空蒸着装置内の処理時間を20分間に変更した以外は、実施例16と同様にして現像ローラ18を作製した。
【0142】
[実施例19]現像ローラ19
トルエンを溶剤として、溶剤可溶性フッ素樹脂 ルミフロンLF100(商品名、旭硝子社製)を3.0質量%溶解したフッ素樹脂溶液を作成した。この溶液中にシリコーン弾性体層ローラ0を、浸漬し、これを引き上げ150℃で2時間乾燥し、被覆層を形成した。これら以外は実施例1と同様にして、現像ローラ19を作製した。
【0143】
[実施例20]現像ローラ20
N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として、ポリイミドワニス U−ワニス−A(商品名、宇部興産社製)を1.0質量%溶解したフッ素樹脂溶液を作成した。この溶液中にシリコーン弾性体層ローラ0を、浸漬し、これを引き上げ、150℃で4時間の熱処理をした後、さらに200℃で2時間の熱処理をし、被覆層を形成した。これら以外は実施例1と同様にして、現像ローラ20を作製した。
【0144】
[実施例21]現像ローラ21
フッ素樹脂溶液におけるU−ワニス−Aの質量%を3.0質量%に変更した以外は、実施例20と同様にして現像ローラ21を作製した。
【0145】
[比較例1]現像ローラ22
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラ22を作製した。本比較例にかかるSiOx膜のO/Siの値は0.94であった。
原材料のシリカ粉体の使用量を20質量部、
石英粉末の使用量を70質量部、
カーボンブラックをデンカブラックFX−35(商品名、電気化学工業社製)、
原料ガス;
ヘキサメチルジシロキサン蒸気 1.2sccm、
酸素 0.3sccm、
アルゴンガス 23.5sccm
の混合ガス。
【0146】
[比較例2]現像ローラ23
原材料のシリカ粉体の使用量を40質量部、カーボンブラックをデンカブラックFX−35(商品名、電気化学工業社製)とし、原料ガスの酸素を3.0sccm、アルゴンガスを21.0sccmとした。これら以外は実施例1と同様にして現像ローラ23を作製した。本比較例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.98であった。
【0147】
[比較例3]現像ローラ24
原材料のゴムをJSR N222L(商品名、JSR社製)とし、カーボンブラックをMA230(商品名、三菱化学社製)としたこと以外は、実施例12と同様にして現像ローラ24を作製した。本実施例にかかるSiOx膜のO/Siの値は1.56であった。
【0148】
[比較例4]現像ローラ25
以下の通りに材料、条件等を変更した以外は、実施例16と同様にして現像ローラ25を作製した。
フッ素樹脂 Fluon ファインパウダーCD123(商品名、旭硝子社製)
真空蒸着装置内の処理時間 1分間
[比較例5]現像ローラ26
N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として、ポリイミドワニス U−ワニス−S(商品名、宇部興産社製)を3.5質量%溶解したフッ素樹脂溶液を作成した。この溶液中にシリコーン弾性体層ローラ0を、浸漬し、これを引き上げ、150℃で4時間の熱処理をした後、さらに200℃で2時間の熱処理をし、被覆層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、現像ローラ26を作製した。
【0149】
[比較例6]現像ローラ27
実施例1に示した方法で、「シリコーン弾性体層ローラ0」を得た。
塗料調製用原材料として、下記の原材料を準備した。
ポリオール(ニッポラン5196(商品名、日本ポリウレタン工業社製))
硬化剤(イソシアネート「コロネートL」(商品名、日本ポリウレタン工業社製))
導電剤(カーボンブラック「MA11」(商品名、三菱化学社製))
上記ニッポラン5196(固形分で100質量部)に、コロネートL(固形分で4質量部)及びカーボンブラック(MA11)22質量部を添加し、さらにメチルエチルケトンを加え十分に撹拌して塗工液(固形分9.5%)を調製した。この塗工液中に、上記「シリコーン弾性体層ローラ0」を浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥し、145℃にて30分間加熱処理して、15μmの被覆層を弾性体層の外周に設けた以外は、実施例1と同様にして現像ローラ27を作製した。
【0150】
[参考例1]現像ローラ28
実施例1で得られたシリコーン弾性体層ローラ0に、被覆層を設けず、そのものを、現像ローラ28とした。
【0151】
実施例及び比較例で用いたカーボンブラックの、DBP吸収量(使用前の測定値)を表2に示した。
【0152】
【表2】

【0153】
現像ローラ12(実施例12)は、弾性体層が架橋ゴムを含み、DBP吸収量が87ml/100gのカーボンブラックを含有している。同様に、現像ローラ13〜15(実施例13〜15)は、弾性体層が、熱可塑性エラストマーを含み、DBP吸収量が106ml/100gのカーボンブラックを含有している。現像ローラ1〜15、22〜24(実施例1〜15、比較例1〜3)の被覆層は、SiOxを主成分とする材料を含んでいる。
【0154】
延伸時の被覆層の割れについて、現像ローラ8、23を評価した。目視にて割れは生じていないが、被覆層の表面がやや曇るような状態が確認された。現像ローラ8、23について光学顕微鏡にて追加確認をおこなったが被覆層の割れは生じていないことが分かった。
【0155】
現像ローラ1〜28の下記の値を表3及び表4に示した。
表3;
現像ローラ表面のAsker−C硬度
現像ローラ表面のマルテンス硬度
弾性体層部のマルテンス硬度
被膜層の膜厚(d)
(H1−H2)/d
表4;
現像ローラ表面のジヨードメタンに対する接触角
現像ローラ表面の表面自由エネルギー
分散力成分
延伸時の被覆層の割れ
【0156】
【表3】

【0157】
【表4】

【0158】
作成した現像ローラ1〜28を用いて画像形成を行い、以下の評価を行った。
<感光ドラムの汚染性>
トナーカートリッジ311(シアン)(商品名、キヤノン製)に現像ローラを組み込み、室温35℃±2℃、相対湿度85%RH±5%の環境試験機内に14日間放置した。その後に、カートリッジを分解し、潜像担持体表面上への付着の有無を目視で観察した。カートリッジへの現像ローラの組み込み、分解、観察は、室温25℃±2℃、相対湿度50%RH±5%の環境下にて行った。
あり:感光ドラム表面上への付着がない
なし:感光ドラム表面上への付着がみられる。
【0159】
<画像評価>
電子写真画像形成装置として、カラープリンター(Satera LBP5400(商品名、キヤノン社製))の出力スピードをA4用紙25枚/分に改造した装置(以下、改造機ともいう。)を用意した。このカラープリンターは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのカラーカートリッジを備え、各カートリッジに対し、画像書き込み手段(レーザ)が設けられ、転写ベルトを備えたタンデム型である。尚、標準の画像作成能力はA4サイズで21枚/分である。
【0160】
上記カラーカートリッジは、感光ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ規制ブレードが設けられ(一成分接触現像方式対応)、現像ローラは感光ドラムに当接して配置されている。さらに、前記カラーカートリッジには、感光ドラムに当接して、クリーニングブレードが設けられている。上記カラープリンターは、帯電ローラによる帯電前に感光ドラム上に残る帯電を除去するための前露光手段を備えている。
【0161】
シアンカラーカートリッジの現像ローラとして、現像ローラ1〜28をそれぞれ組み込んだ。また、マゼンタ、イエローおよびブラックの各カラーカートリッジは、トナーを抜き取り、さらにトナー残量検知機構を無効として、それぞれのステーションに配置した。
【0162】
上記各カラーカートリッジを改造機に装着し、低温低湿(温度15℃±2℃、相対湿度20%RH±5%)及び、高温高湿(温度30℃±2℃、相対湿度80%RH±5%)下において電子写真画像を作成した。当該画像について、下記のように評価した。転写材としては、レターサイズの普通紙(商品名:XEROX 4024用紙;富士ゼロックス社製)を用いた。
【0163】
<画像濃淡ムラの評価>
低温低湿(温度15℃±2℃、相対湿度20%RH±5%)下において11日間に亘る画像出力試験を行い、初日、および11日目に得られた画像の濃淡ムラを評価した。具体的には、以下の通りとした。
初日:図6に示す標準チャート(レターサイズ、ベタ黒部6ヶ所と、Sの文字を配置し、印字比率を4%としたもの)の画像を9枚、画像領域全体が一様であるベタ画像を1枚、全面ハーフトーン画像を1枚、及び上記標準チャートの画像を389枚連続印字。
2日目〜10日目:上記標準チャートを400枚連続印字。
11日目:上記標準チャートを9枚、ベタ画像を1枚、ハーフトーン画像を1枚連続印字。
【0164】
そして、初日に形成したベタ画像(10枚目に出力)及びハーフトーン画像(11枚目に出力)(初期画像)の濃淡ムラの有無を目視により観察し、下記基準で評価し、当該現像ローラでの初期画像における濃淡ムラとした。11日目に形成したベタ画像(4010枚目に出力)、ハーフトーン画像(4011枚目に出力)(経時画像)についても同様に評価し、経時での画像における濃淡ムラ評価とした。
A:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認されない。
B:濃淡ムラが、ベタ画像では確認されるが、ハーフトーン画像では確認される。
C:濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認される確認される。
【0165】
<画像縦スジの評価>
高温高湿(温度30℃±2℃、相対湿度80%RH±5%)下において、画像濃淡ムラの評価と同様に画像を形成した。初期画像と、経時画像について、目視により現像ローラ周期の画像印字方向と水平方向のスジ状の濃淡ムラの有無を検出した。濃淡ムラの有無により下記の基準で現像ローラを評価した。これをもって、当該現像ローラの縦スジ(規制部材への融着による画像スジ)の評価とした。
A:縦スジが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に、確認されない。
B:縦スジが、ベタ画像では確認されるが、ハーフトーン画像では確認されない。
C:縦スジが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認され、ベタ画像で確認される縦スジの本数が5本以上のもの。
【0166】
<当接部画像の評価>
シアンカラーカートリッジに現像ローラ1〜28をそれぞれ組み込んだ後、各カートリッジを25℃±2℃、50%RH±5%の環境に、60日間放置した。その後、同環境で上記標準チャートを9枚、ベタ画像を1枚、ハーフトーン画像を1枚連続出力した。得られたベタ画像(10枚目に出力)及びハーフトーン画像(11枚目に出力)について、現像ローラ周期の画像印字方向と垂直な方向のスジ状の濃淡ムラの有無を目視により観察し、下記基準で評価した。前記スジ状の濃淡ムラは、規制ブレード24の現像ローラ1表面との当接部に相当する箇所である。
A:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に、確認されない。
B:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像で確認されるが、ハーフトーン画像では確認されない。
C:スジ状の濃淡ムラが、ベタ画像、ハーフトーン画像共に確認される。
【0167】
上記評価の結果を、表5に示す。結果から、実施例1〜21は良好な結果が得られた。その中でも実施例3、4、5、7は特に良好な結果が得られた。
【0168】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の現像ローラの一例の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の現像ローラにおける、軸芯体に直交する面での断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明のプロセスカートリッジの実施形態の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の現像ローラの被覆層の製造装置としてのCVD装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の電子写真画像形成装置による画像評価に用いた原稿を示す図である。
【図7】マルテンス硬度の測定装置の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0170】
1 現像ローラ
2 現像装置
3 画像形成装置
4 プロセスカートリッジ
11 軸芯体
12 弾性体層(基層)
13 被覆層(表層)
21 潜像担持体(感光ドラム)
23 トナー
24 規制ブレード
25 レーザー光(静電潜像形成装置)
26 帯電部材(帯電装置)
31 転写ローラ(転写装置)
36 転写紙(転写材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、弾性体層と、該弾性層を被覆する表面層としての被覆層とを有し、該被覆層の表面におけるAsker−C硬度が40°以上、85°以下である現像ローラであって、
該被覆層は、厚さ15nm以上、5000nm以下であって、かつ、
該現像ローラの表面におけるマルテンス硬度H1(N/mm2)と、前記弾性体層のマルテンス硬度H2(N/mm2)と、前記被覆層の膜厚d(mm)とが下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする現像ローラ:
400 ≦ (H1−H2)/d ≦ 2000 (1)。
【請求項2】
前記被覆層の表面のジヨードメタンに対する接触角が40°以上、70°以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記被覆層は、前記現像ローラから切り取った被覆層及び弾性体層を含む短冊状の被験試料を5%延伸変形させたときに、割れを生じないものである請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記被覆層が、SiOxを主成分とする材料を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記弾性体層が、架橋ゴムまたは熱可塑性エラストマーを含み、また、DBP吸収量が50ml/100g以上、110ml/100g以下であるカーボンブラックを導電剤として含有している請求項1乃至4のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項6】
静電潜像を担持する潜像担持体に対向した状態でトナーを担持する現像ローラと、該現像ローラに担持されたトナーを摩擦帯電しながら該トナーの層厚を規制する規制ブレードとを備え、該現像ローラが前記潜像担持体にトナーを付与することにより静電潜像を現像する現像装置であって、前記現像ローラが、請求項1乃至5のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
潜像担持体と、該潜像担持体の表面を帯電する手段と、該潜像担持体に形成された静電潜像を現像する手段とを備えたプロセスカートリッジであって、該静電潜像を現像する手段が請求項6記載の現像装置であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
電子写真方式により静電潜像が形成される潜像担持体、該潜像担持体を帯電する手段、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成する手段、該静電潜像にトナーを付着させて該静電潜像をトナーの像として顕像化する手段、及び該トナーの像を転写材に転写する手段を有する画像形成装置であって、前記静電潜像をトナーの像として顕像化する手段が、請求項6に記載の現像装置であることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−293002(P2008−293002A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112518(P2008−112518)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】