説明

現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ、及び電子写真画像形成装置

【課題】 低温環境におけるトナーフィルミングの成長を抑制し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な現像ローラ、良好な画像形成が可能な電子写真プロセスカートリッジ、及び電子写真画像形成装置の提供。
【解決手段】 本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、該弾性層の周囲にバインダー樹脂と粗し粒子としての樹脂粒子とを含有する表面層を有する現像ローラであって、該バインダー樹脂の弾性率が該樹脂粒子の弾性率よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザビームプリンター、ファクシミリ、印刷機等の電子写真方式を利用した画像形成装置に使用される現像ローラに関する。さらに本発明は、この現像ローラを具備する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真画像形成装置においては、高速化、高画質化の進展に伴い、静電潜像の形成された感光体に対してトナーを供給する現像ローラに対する要求性能も高度なものとなってきている。
【0003】
例えば、特に低温環境において、現像ローラを始めとする接触部材から継続してストレスを受けたトナーが現像ローラ表面に固着し、これがさらにトナーフィルミングに成長して、画像の白部にトナーが現像されてしまう「カブリ」の画像弊害を引き起こす課題がある。これを改善する為、現像ローラの表面層と表面層に含有する粗面形成用の粒子(以下、粗し粒子とも称する)についても、広く検討が成されてきた。このような課題に対して特許文献1では、所望の硬度の粗面形成用の粒子を表面層に含有させ、粒子が存在する部分と存在しない部分で、定荷重押し込み時の押し込み深さのばらつきを30%未満に規定した現像ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−233255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記特許文献1に記載された構成について更に検討を重ねた。その結果、特許文献1に係る現像ローラは、トナーに対するストレスを低減できるものの、高速機用の長期間使用されるカートリッジでは、低温環境においてトナー固着物がトナーフィルミングに成長するのを抑制するには更なる改善が必要であることが分かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、低温環境におけるトナーフィルミングの成長を抑制し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な現像ローラ、該現像ローラを有する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、該弾性層の周囲にバインダー樹脂と粗し粒子としての樹脂粒子とを含有する表面層を有する現像ローラであって、該バインダー樹脂の弾性率が該樹脂粒子の弾性率よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電子写真プロセスカートリッジは、静電潜像が形成される感光体と、該感光体上の静電潜像を現像するための現像部材とを具備し、電子写真画像形成装置の本体に脱着可能な電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像部材が上記本発明の現像ローラであることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る電子写真画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体と、該感光体上の静電潜像を現像するための現像部材とを具備する電子写真画像形成装置において、該現像部材が上記本発明の現像ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温環境におけるトナーフィルミングの成長を抑制し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な現像ローラ、該現像ローラを有する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の現像ローラの一例であり、(a)は長手方向に平行な概略断面図、(b)は長手方向に垂直な概略断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係わる電子写真プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係わる現像ローラの接触面積比率の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、現像ローラの表面層のバインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の弾性率よりも大きくすることで、低温環境におけるトナーフィルミングの成長を抑制し、長期間に渡って安定した画像形成が可能な現像ローラを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
トナーフィルミングの成長過程を顕微鏡で詳細に観察したところ、トナーフィルミングは以下の過程を経て発生することを確認した。
【0014】
まず初めに、現像ローラの回転方向に対して、表面層に含有される樹脂粒子により形成された凸部の上流側の裾野位置にトナーが堰き止められる。次に、堰き止められたトナーのうち、トナー規制ブレードや感光体といった当接部材からの圧力を受け、他のトナーと入れ替わらずに固定化されたものがトナー固着物として形成される。次に、このトナー固着物を起点としてトナーがさらに堰きとめられ固定化されて成長することにより、画像上にかぶりや黒点を発生させる原因となるトナーフィルミングに成長する。
【0015】
そこで、本発明者らは現像ローラの表面層のバインダー樹脂の弾性率と樹脂粒子の弾性率の関係を鋭意検討した結果、バインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の弾性率よりも大きくすることが、トナーフィルミングの成長を抑制するのに効果的であることを見出した。これは、トナー規制ブレードが当接した際に樹脂粒子の沈み込みが生じ、樹脂粒子の裾野位置近傍のトナーに対してトナー規制ブレードによる掻き取り効果が充分に得られるようになったことによるものと推測される。その結果、堰き止められたトナーが固定化されるのを妨げ、トナーフィルミングの成長を抑制できたものと考えられる。
【0016】
また、トナーフィルミングの成長抑制効果をより得るためには、ナノインデンテーション装置により測定した該樹脂粒子の弾性率を1200MPa以下とし、該表面層のバインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の弾性率の1.5倍以上とすることがさらに好ましいことを見出した。
【0017】
これは、上記条件を満たすことにより、トナー規制ブレードが当接した際の樹脂粒子の沈み込みを促進することができ、樹脂粒子の裾野位置近傍のトナーに対してトナー規制ブレードによる掻き取り効果がさらに得られるようになったものと推察される。その結果、トナー固着物がトナーフィルミングに成長するのを抑制できたものと考える。
【0018】
さらに、本発明者らは、本発明の現像ローラを電子写真プロセスカートリッジに搭載することで、トナーフィルミングの成長を抑制し、良好な画像形成が可能なことを見出した。
【0019】
さらに、本発明者らは、本発明の現像ローラを電子写真画像形成装置に搭載することで、トナーフィルミングの成長を抑制し、良好な画像形成が可能なことを見出した。
【0020】
以下、発明を実施するための具体例について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0021】
<本発明の現像ローラ>
本発明の現像ローラの一例を、図1に示す。
図1中の(a)は現像ローラの長手方向に対して平行な面での断面図を表したものであり、(b)は長手方向に対して垂直な面での断面図を表したものである。図1において、現像ローラ10は、円柱状の軸芯体11の周囲に弾性層12、その周囲に粗し粒子としての樹脂粒子を含有する表面層13が形成されている。表面層13は2層以上形成してあっても良い。
以下、図1の現像ローラについて詳細に説明する。
【0022】
(軸芯体)
軸芯体11には、円柱状、円筒状いずれの形状のものも用いることができる。
軸芯体11の材料は、その外周に弾性層を支持することができ、電子写真プロセスにおける負荷に十分に耐え得る強度を有するものであれば特に限定されない。導電性が求められる場合には、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。さらに防錆対策として軸芯体にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきのいずれも使用することが出来るが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni―P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。めっきの膜厚はそれぞれ0.05μm以上が好ましく、より好ましくは0.10μm以上30.00μm以下である。
【0023】
(弾性層)
弾性層は、使用される電子写真装置において要求される弾性を現像ローラに付与するために設けられる。具体的な構成としては、中実体、発泡体のいずれであってもよい。また、弾性層は、単層であっても、複数の層からなっていてもよい。例えば、現像ローラにおいては、感光ドラム、及びトナーと常に圧接しているので、これらの部材間において相互に与えるダメージを低減するため、低硬度、低圧縮歪みの特性を持つ弾性層が設けられる。
【0024】
弾性層の材質としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
弾性層12の厚さは、現像ローラ10に充分な弾性を与えるために0.5mm以上10.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0mm以上5.0mm以下である。弾性層12の厚さを0.5mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上にすることで、現像ローラ10に充分な弾性を与えることができ、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。また、弾性層12の厚さを10.0mm以下、さらに好ましくは5.0mm以下にすることで、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を小型化することができる。
【0026】
弾性層12の硬度は、Asker−C硬度で10度以上80度以下であることが好ましく、さらに好ましくは20度以上70度以下である。弾性層12の硬度を10度以上、さらに好ましくは20度以上にすることで、トナー規制ブレードが現像ローラに圧接することにより生じる現像ローラの凹み量を抑制することができ、変形に起因する画像弊害の発生を抑制することができる。また、弾性層12の硬度を80度以下、さらに好ましくは70度以下にすることで、感光ドラムの摩耗を抑制することができる。
【0027】
弾性層12には、低硬度及び低圧縮歪みの特性を阻害しない範囲内で、充填剤を添加しても良い。充填剤の材料としては、以下のものが挙げられる。石英微粉末、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、ケイソウ土、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、有機補強剤、及び有機充填剤。これらの充填剤の表面は有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化しても良い。
【0028】
現像ローラ10は、半導体領域の電気抵抗を有する必要がある。そのため、弾性層12が導電剤を含有し、適宜体積抵抗率を調整したゴム材料から形成されていることが好ましい。
【0029】
弾性層12の材料を導電化する手段としては、電子導電機構、またはイオン導電機構による導電付与剤を上記材料に添加することにより導電化する手法が挙げられる。
【0030】
電子導電機構による導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイトの炭素系物質、アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅―ニッケル合金の金属或いは合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀の金属酸化物、各種フィラーに銅、ニッケル、銀の導電性金属めっきを施した物質。
【0031】
また、イオン導電機構による導電付与剤としては、以下のものが挙げられる。LiCFSO、NaClO、LiClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、NaClの周期律表第1族金属の塩、NHCl、(NHSO、NHNOのアンモニウム塩、Ca(ClO、Ba(ClOの周期律表第2族金属の塩、これらの塩と1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールの多価アルコールやそれらの誘導体との錯体、これらの塩とエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルのモノオールとの錯体、第4級アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩の陰イオン性界面活性剤、及びベタインの両性界面活性剤。
【0032】
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することが出来る。この中でも、カーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるといった観点から好適に用いられる。
【0033】
(表面層)
表面層13のバインダー樹脂として用いられる材料としては、以下のものが挙げられる。ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、珪素樹脂、ポリエステル樹脂、スチロール系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、シリコーン樹脂、及び水系樹脂。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。現像ローラにおいては、特に含窒素化合物であるウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂を用いることがトナーの帯電を制御する上で好ましく、中でもイソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるウレタン樹脂を有することがより好ましい。
【0034】
イソシアネート化合物としては、以下のものが挙げられる。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、カルボジイミド変性MDI、キシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0035】
また、ここで用いるポリオールとしては、以下のものが挙げられる。2官能のポリオール(ジオール)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール。3官能以上のポリオールとして、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール。さらに、ジオール、トリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した高分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド‐プロピレンオキサイドブロックグリコール。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
【0036】
表面層のバインダー樹脂の弾性率は、500MPa以上4000MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは1000MPa以上3000MPa以下である。500MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上とすることで、トナー規制ブレードが現像ローラに圧接することにより生じる現像ローラの凹み量を抑制することができ、変形に起因する画像弊害の発生を抑制することができる。また、4000MPa以下、さらに好ましくは3000MPa以下とすることで、トナーに与えるストレスを抑制することができ、長期に渡って安定した画像形成が可能となる。表面層の弾性率は、後述するナノインデンテーション測定装置によりISO14577準拠の方法で測定することができる。本発明においては、真空下でサンプル温度を5℃に制御した後に測定した結果から算出される弾性率を用いた。表面層のバインダー樹脂を上記の弾性率にするためには、2官能のポリエーテルポリオール成分と2官能のイソシアネート成分を鎖延長させて得られるウレタン化ポリオールを用いることが好ましい。ウレタン化ポリオールのポリエーテルポリオール成分として、具体的にメチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコールを単重合、またはこれらグリコールの2種以上のモノマーの共重合体として得られる2官能のポリグリコールなどを挙げることができ、特に、ポリテトラメチレングリコールを好ましいものとして挙げることができる。また、ウレタン化ポリオールのイソシアネート成分としては、具体的にイソシアン酸の他、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチルなどを挙げることができる。
【0037】
このようなウレタン化ポリオールは、重量平均分子量が10000〜50000であり、分子量分散度がMw/Mn=3.0以下、Mz/Mw=2.5以下であることが好ましい。このようなウレタン化ポリオールを用いることにより、トナーに与えるストレスを抑制することができ、長期に渡って安定した画像形成が可能となる。
【0038】
現像ローラ10の表面粗さはとくに限定はされないが、トナーの搬送力を確保して、充分な画像濃度によりゴーストや濃度ムラを抑制し高品質の画像を得る目的で、適宜調整して用いることができる。本発明においては、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが、0.3〜5.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜4.0μmである。Raを0.3μm以上、さらに好ましくは0.5以上にすることで、温度によらず安定したトナーのコート量を得ることができ、画像濃度の低下やゴーストといった画像品質の低下を抑制することができる。また、Raを5.0μm以下、さらに好ましくは4.0以下とすることで、かぶりやガサツキといった画像品質の低下を抑制することができる。
【0039】
本発明においては、表面層13には、所望の表面粗さに制御する手段として、弾性率をコントロールした樹脂粒子を粗し粒子として含有させる。中でも、柔軟性に富み、比較的比重が小さくて塗料の安定性が得やすい樹脂粒子がより好ましい。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、及びシリコーン粒子を挙げることができる。中でも、柔軟性に富み、比較的比重が小さくて塗料の安定性が得やすいことから、ウレタン粒子が好ましく用いられる。
【0040】
これらの樹脂粒子は単独、又は複数種を混合して使用することができる。表面層を複数層形成する場合には、複数層全てに粒子を含有させても良いし、複数層のうちの少なくとも一層に粒子を含有させても良い。また、樹脂粒子を複数種混合して使用する場合には、少なくとも一種の樹脂粒子が所望の弾性率を有していれば、本発明の効果を得ることができる。
【0041】
樹脂粒子の体積平均粒子径は、1.0μm以上30.0μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.0μm以上20.0μm以下である。1.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上にすることで、現像ローラ10を所望の表面粗さに制御することが可能となり、充分な画像濃度を得ることができる。また、30.0μm以下、さらに好ましくは20.0μm以下にすることで、かぶりやガサツキといった画像品質の低下を抑制することができる。
【0042】
樹脂粒子の弾性率は、500MPa以上4000MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは800MPa以上1200MPa以下である。500MPa以上、さらに好ましくは800MPa以上とすることで、トナー規制ブレードを当接させた際に樹脂粒子が凹みすぎて、トナーのコート量が不足してしまうのを抑制することができる。また、4000MPa以下とすることで、トナーに与えるストレスを抑制することができ、長期に渡って安定した画像形成が可能となる。さらには、1200MPa以下とすることで、トナー規制ブレードが当接した際の樹脂粒子の沈み込みを促進することができ、樹脂粒子の裾野位置近傍のトナーに対してトナー規制ブレードによる掻き取り効果を充分に得ることができる。
【0043】
樹脂粒子の弾性率は、表面層と同じく、後述するナノインデンテーション測定装置により測定することができ、真空下でサンプル温度を5℃に制御した後に測定した結果から算出される弾性率を用いた。
【0044】
表面層のバインダー樹脂の弾性率と樹脂粒子の弾性率の関係について、本発明では、表面層のバインダー樹脂が樹脂粒子の弾性率よりも大きくする必要がある。さらに好ましくは、表面層のバインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の1.5倍以上とすることである。樹脂粒子の弾性率を表面層のバインダー樹脂の弾性率よりも小さくすることで、トナー規制ブレードが当接した際に樹脂粒子の沈み込みが生じ、樹脂粒子の裾野位置近傍のトナーに対してトナー規制ブレードによる掻き取り効果を発揮することができる。さらには、表面層のバインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の1.5倍以上とするで、樹脂粒子の裾野位置近傍のトナーに対してトナー規制ブレードによる掻き取り効果をさらに発揮することができる。表面層13は、現像ローラの電気抵抗を調整するため、導電剤を含有するものであってもよい。含有する導電剤としては、具体的には、上記弾性層に用いる導電剤として例示したものと同様のものを例示することができる。
【0045】
表面層13の形成方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレ−、浸漬、又はロールコートが挙げられる。浸漬塗工は、特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフロ−させる方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0046】
表面層13の厚さは、1.0μm以上500.0μm以下が好ましい。さらに好ましくは2.0μm以上50.0μm以下である。表面層13を1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上にすることで、現像ローラに耐久性を与えることができる。また、500.0μm以下、さらに好ましくは50.0μm以下にすることで、トナーに与えるストレスを抑制することができ、長期に渡って安定した画像形成が可能となる。本発明における表面層13の厚さとは、キーエンス株式会社製のデジタルマイクロスコープVHX−600を用いて表面層の厚み方向の断面を観察し、表面層と弾性層の界面から表面層表面の平坦部までの距離の任意の5点の相加平均値をいう。
【0047】
表面層を形成した現像ローラ10のMD−1硬度は、20.0°以上50.0°以下であることが好ましく、さらに好ましくは25.0°以上40.0°以下である。20.0°以上、さらに好ましくは25.0°以上にすることで、トナー規制ブレードが現像ローラに圧接することにより生じる現像ローラの凹み量を抑制することができ、変形に起因する画像弊害の発生を抑制することができる。また、45.0°以下、さらに好ましくは40.0°以下にすることで、トナーに与えるストレスを抑制することができ、長期に渡って安定した画像形成が可能となる。ここで、MD−1硬度は、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計MD−1型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに制御した室内で測定したマイクロゴム硬度の値をいう。
【0048】
<弾性率の測定>
現像ローラの表面層のバインダー樹脂及び樹脂粒子の弾性率は、ナノインデンテーション測定装置(Hysitron Inc.製、Tribo Scope+エスアイアイ・ナノテクノロジー製NanoNaviステーション+E−sweep型)により測定した。
【0049】
ナノインデンテーション法は、試料表面にダイヤモンド製圧子をある荷重まで押し込んだ(圧入)後、その圧子を取り除く(除荷)までの荷重と変位の関係を測定する方法である。このとき得られる圧入曲線は材料の弾塑性的な変形挙動を反映し、除荷曲線は弾性的な回復挙動を反映する。従って、除荷曲線の初期の傾きから複合弾性率を算出することができる。
【0050】
本発明では、以下の手順で、ISO14577準拠の方法により測定を行った。
現像ローラ表面を、5mm角、厚さ2mmの大きさに表面層を含んだ状態で切り出した後、ミクロトームで切削して表面層の断面を面出ししたサンプルを作製した。次に、上記のナノインデンテーション測定装置を用いて、真空下でサンプル温度を5℃に制御した後、このサンプルのうち、樹脂粒子が表面に存在しない部分を3カ所測定し、得られた測定結果の相加平均値を計算したものを現像ローラの表面層のバインダー樹脂の弾性率とした。同様に、同じサンプルのうち、樹脂粒子が表面に存在している部分の樹脂粒子の中心部分を3カ所測定し、得られた測定結果の相加平均値を計算したものを樹脂粒子の弾性率とした。なお、測定の際の試料表面への圧子の圧入量を300nmで行った。
【0051】
<接触面積比率の測定>
現像ローラのトナーフィルミングの成長抑制効果の指標として、本発明者らはトナー規制ブレードが当接した際の樹脂粒子の沈み込みに着目した。そこで、トナー規制ブレードが当接した際の樹脂粒子の沈み込みの程度を、現像ローラを透明な平板ガラスに所定荷重で押し当てた際の、ニッブ部全体の面積に対する実際の接触面積の接触面積比率により評価した。
【0052】
本発明では、以下の手順で接触面積比率の評価を行った。
現像ローラ10と、厚さ1mmの透明な平板ガラス20を、温度5℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した後、同環境において、図4(a)に示すように、現像ローラ10に平板ガラス20を200N/cmの線圧で押し当てた。このとき、現像ローラ10と平板ガラス20の接触部分に形成されるニップ部21を、平板ガラス20を透過して、キーエンス株式会社製のデジタルマイクロスコープVHX−500を用いて1000倍の倍率で観察し撮影した。平板ガラス20を透過して、ニップ部21観察した画像の模式図を図4(b)に示す。
【0053】
観察するニップ部21は、現像ローラの長手方向の中央近傍とし、周方向はニップ幅中央近傍の400μm×400μmの領域とし、この面積をニッブ部全体の面積(A)とした。ニップ部21における実際の接触面積(B)は、図4(b)に示すように、撮影した画像の濃淡をもとに画像処理により接触部分22と非接触部分に2値化し、接触部分22の面積を足し合わせることにより求めた。
【0054】
この面積(A)及び(B)を元に、ニッブ部全体の面積に対する実際の接触面積の接触面積比率を、(A)/(B)×100(%)の式により算出した。
【0055】
<本発明に係わる電子写真画像形成装置>
次に、本発明の現像ローラを搭載する電子写真画像形成装置の一例を、図2を用いて説明する。
【0056】
本発明の電子写真画像形成装置の一例を図2に示す。図2において、電子写真画像形成装置100には、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの各色トナー毎に画像形成ユニットが設けられる。各画像形成ユニットには、それぞれ矢印方向に回転する静電潜像担持体としての感光体101が設けられる。各感光体の周囲には、感光体を一様に帯電するための帯電ローラ107、一様に帯電処理した感光体にレーザー光106を照射して静電潜像を形成する露光手段、静電潜像を形成した感光体にトナーを供給し静電潜像を現像するための現像装置105が設けられる。
【0057】
一方、給紙ローラ119により供給される紙等の記録材118を搬送する転写搬送ベルト116が駆動ローラ112、従動ローラ117、テンションローラ115に懸架されて設けられる。転写搬送ベルト116には吸着ローラ120を介して吸着バイアス電源121の電荷が印加され、記録材118を表面に静電気的に付着させて搬送するようになっている。
【0058】
各画像形成ユニットの感光体上のトナー像を、転写搬送ベルト116によって搬送される記録材118に転写するための電荷を印加する転写バイアス電源114が設けられる。転写バイアスは転写搬送ベルト116の裏面に配置される転写ローラ113を介して印加される。各画像形成ユニットにおいて形成される各色のトナー像は、画像形成ユニットに同期して可動される転写搬送ベルト116によって搬送される記録材118上に、順次重畳して転写されるようになっている。
【0059】
更に、カラー電子写真画像形成装置には、記録材上に重畳転写したトナー像を加熱などにより定着する定着装置111、画像形成された記録材118を装置外に排出する搬送装置(不図示)が設けられる。
【0060】
一方、各画像形成ユニットには各感光体上に転写されずに残存する転写残トナーを除去し表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング装置108が設けられる。更に、その他感光体から掻き取られたトナーを収納する不図示の廃トナー容器が設けられる。クリーニングされた感光体は画像形成可能状態とされて待機するようになっている。
【0061】
上記各画像形成ユニットに設けられる現像装置105には、一成分現像剤として非磁性トナーを収容したトナー容器103と、トナー容器の開口を閉塞するように設置され、トナー容器から露出した部分で感光体と対向するように現像部材としての現像ローラ10が設けられる。
【0062】
トナー容器内には、現像ローラにトナーを供給すると同時に、現像後現像ローラ上に使用されずに残留するトナーを掻き取るためのトナー供給ローラ102が設けられている。また、現像ローラ上のトナーを薄層状に形成すると共に、摩擦帯電するSUS304製のトナー規制ブレード104が設けられている。これらはそれぞれ現像ローラ10に当接配置されている。
【0063】
トナー規制ブレード104にはトナー規制ブレードバイアス電源109が接続され、現像ローラには現像ローラバイアス電源110が接続され、画像形成時において、トナー規制ブレード104と現像ローラ10にはそれぞれ所望の電圧が印加される。
【0064】
<本発明に係わる電子写真プロセスカートリッジ>
次に、本発明の現像ローラを搭載する電子写真プロセスカートリッジの一例を、図3を用いて説明する。図3に示す電子写真プロセスカートリッジ200は、現像装置105と、感光体101、クリーニング装置108を有し、これらが一体化されて電子写真画像形成装置本体に脱着可能である。
【0065】
現像装置105としては電子写真画像形成装置で説明したものと同様のものを挙げることができる。一成分現像剤として非磁性トナーを収容したトナー容器103と、トナー容器の開口を閉塞するように設置され、トナー容器から露出した部分で感光体と対向するように現像ローラ10が設けられる。なお、図3において、102はトナー供給ローラ、104はトナー形成ブレード、及び107は帯電ローラである。
【0066】
本発明の電子写真プロセスカートリッジは、上記の他、感光体上のトナー像を記録材に転写する転写部材などを上記の部材と共に一体的に設けたものであってもよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。
下記の実施例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0068】
〔実施例1〕
<現像ローラの作製>
以下の手順により、円柱状の軸芯体の周囲に、被覆層として、弾性層と表面層を1層ずつ設けた現像ローラを作製した。
軸芯体として、直径6mm、長さ279mmのSUS304製の芯金を用いた。
弾性層の材料として、以下の方法で液状シリコーンゴムを準備した。まず、次の材料を混合し液状シリコーンゴムのベース材料とした。
・両末端にビニル基を有する温度25℃における粘度が100Pa・sのジメチルポリシロキサン(東レダウコーニング社製、重量平均分子量100,000):100質量部。
・反応性を持たない環状ポリシロキサン(商品名:DC246Fluid、東レ・ダウコーニング社製):12質量部。
・充填剤として石英粉末(商品名:Min−USil、Pennsylvania Glass Sand社製):10質量部。
・カーボンブラック(商品名:デンカブラック、粉状品、電気化学工業製)8質量部。
【0069】
このベース材料100質量部に、硬化触媒として白金化合物(東レダウコーニング社製、Pt濃度1%)を0.05質量部を配合し、ベース材料Aを準備した。またこれとは別に、このベース材料100質量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(東レダウコーニング社製、重量平均分子量500)3質量部を配合し、ベース材料Bを準備した。得られたベース材料Aとベース材料Bを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムとした。
【0070】
内径12mmの円筒型金型内の中心部に軸芯体を配置し、円筒型金型内に注入口からこの液状シリコーンゴムを注入し、温度120℃で5分間加熱硬化させ、室温まで冷却後、軸芯体と一体となった弾性層を脱型した。さらに温度150℃で4時間加熱して硬化反応を完了させ、厚さ3mmのシリコーンゴムを主成分とする弾性層を軸芯体の外周面上に設けた。
【0071】
その後、以下の条件で、弾性層表面のエキシマ処理を行った。
弾性層表面を、軸芯体を回転軸として30rpmで回転させながら、波長172nmの紫外線を照射可能な細管エキシマランプ(ハリソン東芝ライティング製)により、積算光量が200mJ/cm2となるように照射して処理を行った。照射時の弾性層表面とエキシマランプの距離は2mmとした。
【0072】
次に、表面層を以下の方法で形成した。
表面層の材料としては、次のものを用いた。
ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG850、数平均分子量Mn=850、f=2(fは官能基数を表す。以下同じ。)、保土谷化学株式会社製):100.0質量部。イソシアネート(商品名:ミリオネートMT、MDI、f=2、日本ポリウレタン工業株式会社製):22.0質量部。
【0073】
これら材料をメチルエチルケトン溶媒中で段階的に混合して、窒素雰囲気下80度にて6時間反応させ、2官能のウレタン化ポリオールを得た。得られたウレタン化ポリオールは、重量平均分子量が30000であり、分子量分散度がMw/Mn=2.5、Mz/Mw=2.0であった。
【0074】
このウレタン化ポリオール100.0質量部にイソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン工業株式会社製)33.0質量部を加えて、NCO当量を1.4となるようにした。なお、NCO当量は、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数とポリオール成分中の水酸基のモル数との比([NCO]/[OH])を示すものである。
【0075】
さらに、カーボンブラック(商品名:#1000、pH3.0、三菱化学社製)22.0質量部を撹拌混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合した後、サンドミルにて均一に分散した。
【0076】
次に、得られたに分散液に対して、樹脂粒子としてアートパールJB−600T(商品名、根上工業社製)を50質量部添加し、撹拌モーターで10分間撹拌し、表面層形成用塗料を得た。
【0077】
次いで、この表面層形成用塗料中に、上記の弾性層を形成した軸芯体を浸漬した後、引上げて自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間の加熱処理を行い、樹脂層の原料液を硬化させて、膜厚約12.0μmの表面層を設けた。さらに、被覆層の両端部を軸芯体に垂直に切取って除去し、被覆層の長さを調整した。
【0078】
このようにして、外径が約12mm、被覆層の長さ240mm、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが2.2μmの現像ローラを作製した。
【0079】
得られた現像ローラについて、上述のナノインデンテーション測定装置により弾性率を測定した結果、表面層のバインダー樹脂の弾性率は2400MPa、樹脂粒子の弾性率は1000MPaであった。
【0080】
<現像ローラの評価>
(接触面積比率の測定)
作製した現像ローラについて、上述の接触面積比率の測定手順に従い、現像ローラを透明な平板ガラスに所定荷重で押し当てた際の、ニッブ部全体の面積に対する実際の接触面積の接触面積比率を評価した結果、接触面積比率は35%であった。
【0081】
(トナーフィルミング評価)
次に、作製した現像ローラを用い、電子写真画像形成装置で画像評価を行った。電子写真画像形成装置には、Hewlett−Packard社製 Color LaserJet CP3520(商品名)を用いた。プロセスカートリッジには専用のマゼンタ用のものを用い、現像ローラを上記で作製したものに交換して準備した。本実施例の現像ローラを組み込んだプロセスカートリッジを画像形成装置本体に搭載し、温度5℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境において、印字率が1%の画像を、出力画像にかすれが生じるまで連続で出力した。その後、さらに同環境においてベタ白画像を連続で2000枚出力し、以下の方法で2000枚目のかぶり値を測定した。
【0082】
かぶり値は、反射濃度計TC−6DS/A(商品名、東京電色技術センター社製)を用いて、画像形成前の記録材の反射濃度と、ベタ白画像を出力した記録材の反射濃度を測定し、反射濃度の増加分を現像ローラのかぶり値とした。反射濃度は、記録材の画像印刷領域の全域を測定し、画像形成前の記録材では最小値を、ベタ白画像を出力した記録材では最大値を採用した。
【0083】
かぶり値は小さいほど良好であり、1.0より小さければ「A」、1.0以上かつ2.0より小さければ「B」、3.0以上かつ5.0より小さければ「C」、5.0以上であれば「D」として、評価を行った。ここで、評価「A」及び評価「B」は、目視では画像上に「かぶり」を認識できないレベルである。一方、評価「C」及び評価「D」は、目視で画像上に「かぶり」を認識できるレベルである。
【0084】
通常、ベタ白画像を形成した転写紙上には、トナーは転写されず、かぶり値は2.0よりも小さい。しかしながら、トナーフィルミングが成長した現像ローラでは、トナーフィルミングの上に形成したトナーコート層の帯電量が不足してしまう。そのため、ベタ白画像の形成時にも、トナーが感光体上に移動し、さらに転写紙上へ転写されてかぶりを生じ、かぶり値は3.0以上となる。従って、かぶり値を現像ローラのトナーフィルミングの指標として用いることができる。
以上の評価結果を表1に示す。
【0085】
〔比較例1〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG650、数平均分子量Mn=650、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールC−600T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。
評価結果を表1に合わせて示す。
【0086】
〔比較例2〕
樹脂粒子をアートパールC−400T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0087】
〔比較例3〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1400、数平均分子量Mn=1400、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールC−800T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0088】
〔比較例4〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1400、数平均分子量Mn=1400、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールP−400T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0089】
〔実施例2〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1000、数平均分子量Mn=1000、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールP−400T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0090】
〔実施例3〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG650、数平均分子量Mn=650、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールP−600T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0091】
〔実施例4〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1400、数平均分子量Mn=1400、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールP−800T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0092】
〔実施例5〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、変性ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG−L2000、数平均分子量Mn=2000、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールJB−600T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0093】
〔実施例6〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、変性ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG−L1000、数平均分子量Mn=1000、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールJB−800T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0094】
〔実施例7〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1400、数平均分子量Mn=1400、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールJB−800T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0095】
〔実施例8〕
樹脂粒子をアートパールJB−800T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0096】
〔実施例9〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG650、数平均分子量Mn=650、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールJB−400T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0097】
〔実施例10〕
表面層の材料として用いるポリテトラメチレングリコールを、ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG2900、数平均分子量Mn=2900、f=2、保土谷化学株式会社製)に変更した。さらに、樹脂粒子をアートパールJB−600T(商品名、根上工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、現像ローラを作製した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1の実施例1乃至10の結果より、バインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の弾性率よりも大きくすることで、接触面積比率を高めることができ、トナーフィルミングを良化できることを見出した。
また、表1の実施例1、及び、実施例7乃至10の結果より、樹脂粒子の弾性率を1200MPa以下とし、バインダー樹脂の弾性率を樹脂粒子の弾性率の1.5倍以上とすることで、トナーフィルミングをさらに良化できることを見出した。
【符号の説明】
【0100】
10 現像ローラ
11 軸芯体
12 弾性層
13 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に形成された弾性層と、該弾性層の周囲にバインダー樹脂と粗し粒子としての樹脂粒子とを含有する表面層を有する現像ローラであって、該バインダー樹脂の弾性率が該樹脂粒子の弾性率よりも大きいことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
該樹脂粒子の弾性率が1200MPa以下であり、該バインダー樹脂の弾性率が該樹脂粒子の弾性率の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
静電潜像が形成される感光体と、該感光体上の静電潜像を現像するための現像部材とを具備し、電子写真画像形成装置の本体に脱着可能な電子写真プロセスカートリッジにおいて、該現像部材が請求項1又は2に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項4】
静電潜像が形成される感光体と、該感光体上の静電潜像を現像するための現像部材とを具備する電子写真画像形成装置において、該現像部材が請求項1又は2に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215647(P2012−215647A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79484(P2011−79484)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】