説明

現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置

【課題】高温高湿環境においても、長期間に亘り、かぶりを低減することが可能な現像ローラを得て、高品質な画像を提供可能な電子写真画像形成装置を得る。
【解決手段】軸芯体1と、該軸芯体の周囲に樹脂層を有する現像ローラ。最表面の樹脂層3は、バインダー成分がポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂成分からなり、かつ、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンターの如き電子写真装置に用いられる現像ローラ、この現像ローラを用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置の如き電子写真画像形成装置には、静電潜像保持体(以下、感光体という場合がある。)の表面に形成された静電潜像に、現像ローラの表面に担持して搬送した現像剤(以下、トナーという場合がある。)を接触又は近接させトナー像を形成する現像装置が使用されている。この種の現像装置には、現像ローラにより開口を閉塞されて内部にトナーを保持するトナー容器、トナー容器内で現像ローラにトナーを供給するトナー供給部材、現像ローラ上のトナー量を一定厚に形成する規制部材(以下、現像ブレードという場合がある。)が設けられる。トナー供給部材により現像ローラに供給されたトナーは、現像ローラの回転に伴い現像ブレードにより一定厚さに形成されつつ、現像ローラがトナー容器から露出する部分で対向する感光体へ搬送されるようになっている。従来の現像ローラには、適正な高トナー帯電量を保持して残像及び地汚れの発生を防止する目的で、分子構造中に窒素元素を有する高分子化合物よりなる樹脂、例えば、ポリエチレンイミンを使用したものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−122108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の現像ローラは、窒素元素の存在によりトナー帯電性は優れているものの、吸湿性を有するために、特に高温高湿環境においては、トナー帯電性が低下して、非印字部分にトナーが現像する、かぶりが発生するといった課題があった。本出願に係る発明の目的は、高温高湿環境においても、長期間に亘り、かぶりを低減することが可能な現像ローラを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の周囲に樹脂層を有している現像ローラである。該現像ローラの最表面をなす樹脂層は、バインダー成分としてポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む。更に、該樹脂層は、下記一般式(1)および(2)で示される構成単位を有するアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを含有する。
【0006】
【化1】

【0007】
また、本発明に係る電子写真プロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置本体に脱離可能に装着であり、かつ、上記の現像ローラを有することを特徴とする。
更に、本発明に係る電子写真画像形成装置は、静電潜像を保持するための静電潜像保持体及び該静電潜像保持体に当接配置される現像ローラを有し、該現像ローラが、上記の現像ローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る現像ローラは、アミノ基やウレア結合を有するアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを含む樹脂層を最表面に有することにより、優れたトナー帯電性を有する。また、炭素数8乃至20のアルキル基の存在により疎水性を示し、吸湿作用が低減され、高温高湿環境におけるトナー帯電性の低下を防止することが可能となる。更に、バインダー成分として、前記樹脂成分を用いることにより、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとの相溶性に優れ、長期使用に対しても現像ローラ最表面の組成物が変化することなく、安定なトナー帯電性を得ることができる。本発明に係る電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置は、高温高湿環境においてもトナーへの良好な帯電性を示し、かぶりの低減、トナーの劣化防止、現像ローラ最表面の組成物の変化の抑制ができる。その結果、長期に亘って高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の現像ローラの一例の軸方向に垂直な断面を示す断面図である。
【図2】本発明の現像ローラを適用した電子写真画像形成装置の一つの実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の現像ローラを適用した電子写真プロセスカートリッジの一つの実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る現像ローラは、軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた樹脂層を有する。
軸芯体は、その周囲に設けられる樹脂層を支持し、感光体へトナーを搬送可能な強度と、担持したトナーを感光体へ移動可能な導電性を、現像ローラの最表面に付与する電極となり得るものであればよい。その材質としては、鉄合金、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金及びニッケル合金、例えばステンレス鋼、ジュラルミン、真鍮及び青銅や、カーボンブラックや炭素繊維とプラスチックの複合材料を挙げることができる。また、上記軸芯体として、導電性材料にめっき、酸化処理の如き防錆処理を行ったものを使用することができる。軸芯体の形状は、円柱状又は円筒状である。軸芯体の外径は、例えば、2mm以上10mm以下である。かかる軸芯体の例としては、炭素鋼合金の表面に5μm厚さの工業ニッケルメッキを施した円柱体等が挙げられる。
【0011】
軸芯体の周囲に設けられる樹脂層は、1層、または2層以上である。但し、現像ローラの最表面をなす樹脂層は、バインダー成分としてポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む。後述するアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとの良好な相溶性を有するためである。柔軟性に優れ、良好なトナー帯電性を有する樹脂層とするためにバインダー成分としては、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
また、該樹脂層は、下記一般式(1)および(2)で示される構成単位を有するアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを含有する。
【0012】
【化2】

【0013】
上記一般式(1)および(2)で示されるユニットを含むアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとしては、市販のポリエチレンイミン(例えばエポミン(商品名)、日本触媒社製)に、アルキルイソシアネートを付加反応させることにより得ることができる。ポリエチレンイミンとしては、重量平均分子量300〜70000が好ましく、更に好ましくは重量平均分子量1200〜10000である。アルキルイソシアネートのアルキル基としては、炭素数8乃至20のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基およびエイコシル基を挙げることができる。アルキル基は直鎖であっても、分岐を有する構造であっても良いが、柔軟性に優れる、直鎖アルキル基が好ましい。アルキルイソシアネートのアルキル基の炭素数が8以上であると、高温高湿環境下での吸湿が抑制され、良好なかぶり低減効果が得られる。また、炭素数が20以下であると、バインダー成分と適度な相溶性を付与できるため、長期使用においても持続的なかぶり抑制効果が得られやすい。アルキルイソシアネートの付加率としては、ポリエチレンイミンのアミン価に対して、0.8乃至1.3モル当量が好ましい。付加率が0.8モル当量以上であると、より高い吸湿抑制効果が得られる。また、付加率が1.3モル当量以下であると、バインダー成分と適度な相溶性を付与できるため、長期使用においても持続的なかぶり抑制効果が得られやすい。アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンの添加量としては、バインダー成分100質量部に対し、0.5質量部以上、40質量部以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量部以上、30質量部以下である。添加量が0.5質量部以上であると、より高いかぶり抑制効果が得られる。また、添加量が40質量部以下であると、樹脂層の機械的物性、特に硬度に対する影響が少なく、長期使用時のかぶり抑制効果が高い。
【0014】
また、最表面の樹脂層は、体積抵抗率が1×103 Ωcm以上、1×1011 Ωcm以下であることが好ましく、より好ましくは1×104 Ωcm以上、1×1010 Ωcm以下である。体積抵抗率については、樹脂層を形成する樹脂塗料を、厚さ200μmになるようにアルミ型にキャストしで作製した樹脂シートを試験片とし、弾性層の体積抵抗率と同様の方法で求めた値を採用することができる。最表面の樹脂層に導電性を付与するために用いられる電子導電性物質としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラックの如き導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTの如きゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、銅、銀、ゲルマニウムの如き金属及び金属酸化物。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことからカーボンブラックが好ましい。
【0015】
また、最表面の樹脂層に導電性を付与するために用いられるイオン導電性物質としては以下のものが挙げられる。過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムの如き無機イオン導電性物質、変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテートの如き有機イオン導電性物質である。これら導電性付与剤は、樹脂層の体積抵抗率を前記のような適切な値にするのに必要な量が用いられるが、通常バインダー成分100質量部に対して好ましくは1乃至50質量部の範囲で用いられる。
【0016】
現像ローラの最表面に適度な粗さを形成するためには、上記最表面の樹脂層に、体積平均粒子径が5乃至30μmの絶縁性の表面粗し粒子、例えば、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコン粒子を含有してもよい。体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置(コールター Multisizer3(商品名)、ベックマン・コールター社製)を用いて測定する。これらの表面粗し粒子は、現像ローラ最表面が、中心線平均粗さRaが0.1乃至3.0μmの表面粗さを有する程度に含有されることが好ましい。表面粗さは、JIS B 0601(1994)に準じて測定される中心線平均粗さRaを指し、小坂研究所表面粗さ計サーフコーダーSE3500を用い、カットオフを0.8mm、測定長さを2.5mm、測定速度を0.1mm/秒として測定する。
【0017】
最表面の樹脂層の厚さは、弾性層の柔軟性を阻害しない範囲で、耐摩耗性を考慮して、2μm乃至300μmの範囲とすることが好ましい。樹脂層の厚さは、現像ローラ軸方向に対して垂直方向に樹脂層断面を切り出し、観察することにより測定することができる。測定機としては、デジタルマイクロスコープ(VHX−600(商品名)、キーエンス社製)と、高倍率ズームレンズ(VH−Z450(商品名)、キーエンス社製)を用い、倍率を1000倍とする。測定箇所は、軸方向3箇所(両端部、中央部)それぞれについて、周方向に3箇所、合計9箇所とし、その平均値を樹脂層の厚さとする。
【0018】
上記最表面をなす樹脂層と軸芯体との間に設けてもよい樹脂層は、最表面上に薄膜状に形成されたトナーを感光体へ供給可能とするため、現像ローラに適度な弾性を付与することが可能な適切な弾性を有する層(以下、弾性層という。)であることが好ましい。また、弾性層は、現像ローラに接触する感光体、現像ブレード、トナーに対する損傷を低減するため低硬度であることが好ましい。また弾性層は、同時に、これらから受ける押力による現像ローラの塑性変形を抑制するため、現像ローラに耐圧縮永久歪性を付与するものが好ましい。
【0019】
このため、弾性層は、アスカーC硬度が20度以上、80度以下であることが好ましい。弾性層の硬度が20度以上であれば、現像ローラの圧縮永久歪を抑制しスジ状の画像不良の発生を抑制することができる。また、弾性層の硬度が80度以下であれば、現像ローラと感光体の間の圧接力の増大を抑制し、トナーの劣化を抑制することができる。アスカーC硬度は、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(商品名、高分子計器社製)を用いて測定した硬度である。常温常湿(23℃、55%RH)の環境に5時間以上放置した硬度測定用ゴムシートに、上記硬度計を1Kgの力で当接させてから3秒後の値を測定値とするものである。ゴムシートについては、100mm四方、厚さ2mmの平板成型用金型を用い、必要量の原料を流し込み、プレス成型にて130℃20分で1次加硫を行い脱型した後、200℃4時間で二次加硫を行うことにより得ることができる。得られたゴムシート5枚を隙間なく重ねることにより、厚さ10mmの硬度測定用ゴムシートを得ることができる。
【0020】
また、弾性層は、体積抵抗率が1×102 Ωcm以上、1×1012 Ωcm以下であることが好ましく、より好ましくは1×104 Ωcm以上、1×1010 Ωcm以下である。体積抵抗率は、以下の方法で求めた値を採用することができる。抵抗計として、デジタル超高抵抗/微少電流計(8340A(商品名)、エーディーシー社製)を用い、以下の条件で測定を行う。
測定モード:プログラムモード5(チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)
印加電圧:100(V)
試料箱:レジスティビティ・チェンバ42(エーディーシー社製)、主電極は直径22mm、厚さ10mmの金属、ガードリング電極は内径41mm、外径49mm、厚さ10mmの金属とする。
試験片:はじめに、上記方法で作製した厚さ2mmのゴムシートから直径56mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設け、もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径25mmの主電極膜と、内径38mm、外径50mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って形成される。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0021】
測定時には、直径22mmの主電極を、直径25mmの主電極膜からはみ出さないように置く。また、内径41mmのガードリング電極を、内径38mmで外径50mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、該電極膜の上に置く。測定は、常温常湿(23℃、55%RH)の環境で行うが、測定に先立って、測定サンプルを、該環境に12時間以上放置しておく。以上の状態で、試験片の体積抵抗(Ω)を測定する。次に、測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)として、試験片の体積抵抗率RR(Ω・cm)を、以下の式によって求める。
RR(Ω・cm)=π×1.25×1.25×RM(Ω)÷t(cm)
【0022】
弾性層の材質としては、種々の液状ゴム材料が好ましい。具体的には、ジエン系ゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴムの液状ゴム材料を挙げることができる。これらの液状ゴム材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよいが、耐圧縮永久歪性を考慮すると、シリコーンゴム又はウレタンゴムが好ましい。また、上記液状ゴム材料に導電剤や非導電性充填剤を添加することができる。導電剤としては、有機金属塩のイオン導電性をもつ化合物や、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼の各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫―酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体の各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質の微粉末を用いることができる。また、非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、又は炭酸カルシウムを挙げることができる。
【0023】
弾性層の厚さは、例えば、1mm以上、5mm以下を挙げることができる。弾性層の厚さが、1mm以上であれば、感光体との圧接力が過大になるのを抑制しトナーの劣化を抑制することができ、5mm以下であれば、装置の大型化、コスト高を抑制することができる。上記最表面の樹脂層は、耐磨耗性による表面の保護機能や、トナー帯電性能、トナー搬送性機能を有するものである。
【0024】
このような現像ローラの製造方法を以下に説明する。まず、軸芯体上に弾性層を成形する。弾性層の成形は、成形型を用いる方法、押出成形、いずれの方法によってもよい。例えば、先ず、円筒状の金型両端に、金型内に軸芯体を保持するための駒を固定し、駒に注入口を形成する。次いで、上記液状ゴム材料、カーボンブラック、必要に応じて充填剤を混合した材料を注入口より注入した後、ゴム材料が硬化する温度で加熱し、脱型する方法を挙げることができる。また、上記液状ゴム材料を含有する原料を円筒状に押出し硬化してチューブを成形し、これに軸芯体を挿入する方法、あるいは、軸芯体を上記液状ゴム材料を含有する原料と共に押し出し、硬化して、軸芯体の周囲に弾性層を成形する方法を挙げることができる。
【0025】
最表面の樹脂層は、押出成形法や成形型を用いた方法によって成形することができるが、塗工方法によって成形することが好ましい。具体的には、上記樹脂をメチルエチルケトン、トルエン、アルコール、水の如き媒体と混合し、カーボンブラックの如き導電剤を添加してボールミル、サンドミルで分散することによって、樹脂塗料を作製する。得られた樹脂塗料を、コーティング、スプレー、ディッピングの如き方法で弾性層上に塗工した後、風乾と加熱により硬化させて、最表面の樹脂層を成形することができる。
【0026】
本発明の現像ローラの一例として、図1に示す現像ローラを挙げることができる。図1に示す現像ローラは、軸芯体の外周に、弾性層と、その外周に最表面層としての樹脂層とが順次積層されたものである。軸芯体と弾性層との間、弾性層と樹脂層との間に、接着剤層を有していてもよい。また、軸芯体と弾性層との間や、弾性層と樹脂層との間に、必要に応じて機能層を有していてもよい。
【0027】
本発明の電子写真画像形成装置は、静電潜像を保持する静電潜像保持体及び該静電潜像保持体に現像剤を介して当接配置される現像ローラを有する電子写真画像形成装置において、現像ローラが上記現像ローラであることを特徴とする。本発明の電子写真画像形成装置の一例を、図2の概略構成図に示す。図2に示す電子写真画像形成装置には、矢印方向に回転する静電潜像保持体としての感光体5、感光体5に帯電バイアスを印加して帯電処理するための帯電ローラ12、感光体5に静電潜像を書き込む露光手段11が備えられる。更に、トナーを介して感光体に当接配置される上記現像ローラ6が備えられ、現像ローラが担持して供給するトナーが静電潜像に付与されることにより、トナー像として可視化されるようになっている。現像は露光部にトナー像を形成する反転現像を行っている。可視化された感光体5上のトナー像を、紙の如き記録媒体22に裏面から転写バイアス電源18の転写バイアスを印加し、記録媒体22上に転写する転写ローラ17が設けられる。更に、記録媒体22に転写されたトナー像を記録媒体に定着する定着装置15が設けられ、画像が定着された記録媒体が装置外に排出され、画像形成を終了するようになっている。
【0028】
一方、転写されずに感光体5上に残存した残トナーを感光体表面から除去するクリーニングブレード14が設けられ、クリーニングされた感光体5は次の画像形成を待機する。上記現像ローラ6は、一成分現像剤である非磁性トナーを収容した現像剤容器(不図示)の長手方向に延在する開口を閉塞するように配置され、現像剤容器の外部で感光体5と対向設置される。現像剤容器内には現像ローラの表面にトナーを塗布担持させるトナー塗布部材7が、現像ローラの回転方向に対して上流側に、現像ローラが担持するトナー量を一定にして感光体へ搬送するように現像ブレード9が下流側に設けられる。
【0029】
トナー塗布部材7は、トナー像形成に供与されず現像ローラ表面に残留するトナーを、現像ローラ6表面から剥離する機能も有し、その回転速度が現像ローラの回転速度と異なるように回転駆動され、現像ローラと同方向に回転させることもできる。トナー塗布部材7は、1乃至8mmの当接幅をもって現像ローラに当接することが好ましく、ポリウレタンフォームの如き発泡体構造や軸芯体上にレーヨン又はポリアミドの如き繊維を植毛したファーブラシ構造を用いることができる。現像ブレード9には、金属製の板金にゴム弾性体を固定した部材や、SUSやリン青銅の薄板の如きバネ性を有する部材、その表面に樹脂やゴムを積層した部材が用いられる。また、現像ブレード9に、現像ローラに印加する電圧よりも絶対値が高い、例えば、絶対値で100Vから300V大きい電圧を印加することにより、現像ローラ上のトナー層の厚さを制御することが可能である。そのためには、現像ブレード9としてSUSやリン青銅の薄板を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の電子写真プロセスカートリッジは、電子写真画像形成装置本体に脱離可能に装着される。本発明の電子写真プロセスカートリッジの一例として図3に示すものを挙げることができる。この電子写真プロセスカートリッジは、感光体5と上記現像ローラ6、トナー塗布部材7、現像ブレード9及び現像剤容器を有する現像装置、クリーニングブレード14及び廃トナー容器13を有するクリーンニング部材を一体化したものである。上記電子写真プロセスカートリッジにおいては、その他、転写ローラを加え、又は、各部材と交換して一体化したものであってもよい。
【0031】
上記電子写真プロセスカートリッジが脱離可能に設けられる電子写真装置がフルカラー複写機の如きカラー画像形成装置では、シアン、マゼンタ、イエロー又はブラックのトナー毎に電子写真プロセスカートリッジを各ユニットとして有するものとしてもよい。これらの各トナー毎の各ユニットはタンデム型の配置や、ロータリーユニットに組み込んで、各トナー毎の各ユニットが感光体に順次当接可能となるような配置にしてもよい。トナー像の転写方式としては、各ユニットで形成されたトナー像を紙の如き記録媒体に直接重畳する方式、各ユニットで形成されたトナー像をベルトあるいはドラムの如き中間転写部材上に一旦重畳して転写し、その後、記録媒体に一括転写する方式であってもよい。記録媒体上に転写されたトナー像は定着装置に搬送されて、カラー画像が記録媒体上に定着される。
【実施例】
【0032】
〔アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(1)〜(5)の合成〕
攪拌機、冷却機、滴下ロートを備えた反応器中で、ポリエチレンイミン(商品名エポミンSP−200、日本触媒社製)100質量部をトルエン1600質量部中に分散した。次いで、表1に示す量のアルキルイソシアネートを加えて還流温度で3時間反応させた後、25℃まで冷却した。得られた反応混合溶液を、メタノール1600質量部と混合して反応生成物を析出させた後、濾過、乾燥することにより、粉末状のアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(1)〜(5)を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
[実施例1]
SUS304からなる外径8mm、長さ267mmの軸芯体を、内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。また、弾性層を形成する材料として、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン社製、ASKER−C硬度50度、体積抵抗率1×105Ω・cm品)を用意した。次いで、当該材料を上記の金型に注入した。その後、円筒状金型を温度130℃のオーブンに入れて20分間加熱し、室温まで冷却した後に、軸芯体と一体となった弾性層を円筒状金型から脱型した。次いで、軸芯体と一体となった弾性層を温度200℃のオーブンに入れて、4時間2次加硫を行い、軸芯体の外周に厚み4mmの弾性層を形成した。得られた弾性層の長さは246mmである。
【0035】
次いで、バインダー成分としてポリウレタン樹脂(ニッポラン5230(商品名)、日本ポリウレタン工業社製)を用い、これをメチルエチルケトンに溶解した。導電剤としてカーボンブラック(MA230(商品名)、三菱化学社製)を、ポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対して25質量部となるよう添加して、ボールミルにて5時間処理してカーボンブラックが分散された樹脂塗料を得た。該樹脂塗料に、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(1)をポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対し、40質量部添加した。次いで、ウレタン粒子(アートパールC−400T(商品名)、根上工業社製)をポリウレタン樹脂の固形分100質量部に対し、15質量部添加して十分に攪拌した後、メチルエチルケトンを加えて粘度が7mPa・sとなるように調整した。粘度は、E型粘度計(RE115L(商品名)、東機産業製)を用い、コーン角度1°34′の標準コーンロータを使用して、液温度25℃に調整し、コーンロータ回転数20rpmで測定した。得られた塗料を用い、ディッピングにより弾性層の表面に塗布した後、温度80℃のオーブンで15分間乾燥し、弾性層の外周に厚さ10μmの最表面の樹脂層を形成し、現像ローラを得た。
【0036】
[実施例2]〜[実施例4]
アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとその添加量を下記表2に示した様に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
[実施例5]
バインダー成分として、ポリエステル樹脂(バイロンGK−810(商品名)、東洋紡社製)を用いた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
[実施例6]
バインダー成分として、メチル化尿素樹脂(ニカラックMX−302(商品名)、三和ケミカル社製)50質量部、ポリエーテルポリオール(PTMG分子量3000、保土谷化学社製)50質量部を用い、オーブンの温度を150℃、乾燥時間を30分とした。それ以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0037】
[実施例7]
バインダー成分として、ポリカーボネートウレタン樹脂(レザミンME8210LP(商品名)、大日精化社製)を用いた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
[実施例8]
バインダー成分として、メチル化メラミン樹脂(ニカラックMW−30(商品名)、三和ケミカル社製)50質量部、ポリエーテルポリオール(PTG(分子量3000)、保土谷化学社製)50質量部を用いた以外は実施例6と同様にして現像ローラを得た。
[実施例9]
バインダー成分として、フェノール樹脂(J−326K(商品名)、大日本インキ化学工業社製)100質量部を用い、希釈溶媒としてメタノールを用いた以外は実施例6と同様にして現像ローラを得た。
【0038】
[実施例10]
バインダー成分として、ポリアミド樹脂(トレジンF−30K(商品名)、ナガセケムテックス社製)を用い、希釈溶媒としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
[実施例11]〜[実施例17]
アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンの種類及び添加量を下記表2に示した様に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0039】
[比較例1]
アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとして、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(4)を用いた以外は実施例13と同様にして現像ローラを得た。
[比較例2]
アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンとして、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(5)を用いた以外は実施例13と同様にして現像ローラを得た。
[比較例3]
アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンの代わりに、ポリエチレンイミン(商品名エポミンSP−200、日本触媒社製)を用いた以外は実施例13と同様にして現像ローラを得た。
【0040】
(表面硬さの測定)
得られた現像ローラの表面硬度を、マイクロゴム硬度計(MD−1 capa、高分子計器社製)を用いて測定した。測定箇所は、軸方向3箇所(両端部、中央部)それぞれについて、周方向に3箇所、合計9箇所とし、その平均値を表面硬さとした。
(かぶりの測定)
得られた現像ローラを、レーザービームプリンタ(Satera LBP5500、キヤノン社製)の専用カートリッジ(マゼンダ)内における現像装置部分に組み込み、高温高湿環境(温度30℃/湿度80%RH)にて、1%間欠印字試験を行なった。印字枚数20000枚に達したところで、12時間放置し、感光体ドラム上のかぶり量を測定した。更に、25000枚、30000枚に達したところでも同様にしてかぶり量を測定した。かぶり量は以下の方法により測定した。まず、全面白画像の印字中にプリンタ動作を停止し、カートリッジを取り出し、感光体ドラム上の転写前部分にポリエステルテープ(No.550(#25)トウメイ、18mm×30m、ニチバン社製)を貼った後に剥がし取る。これを未使用の用紙に貼り付け、同じ用紙に貼り付けた未使用のポリエステルテープと共に反射濃度を測定する。反射濃度は反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.LTD社製:REFLECTOMETER MODEL TC−6DS/A)を用いて測定し、感光体ドラムから剥がし取ったポリエステルテープと、未使用のポリエステルテープの反射濃度差をかぶり量とした。感光体ドラム上のかぶり量が10%以上となると、用紙上の非印字部分に目視でトナーが確認できる状態である。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例においては、いずれも耐久試験を通してかぶりの値が実用上問題ないレベルであった。特に、実施例11〜17においては、良好な結果が得られ、中でも実施例17においては、印字20000枚でのかぶりも良好であり、かつ、表面硬さ由来の後半のかぶりの悪化も抑えることが可能となった。これに対し、比較例1においては、バインダー成分との不相溶により、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンが現像ローラの最表面に析出し、印字後半にはこれが削り取られることによってかぶりが悪化した。また、比較例2、3においては、アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミン、もしくはポリエチレンイミンの疎水性が不足し、現像ローラ最表面の吸湿により帯電付与性が低下し、かぶりが悪化した。
【符号の説明】
【0043】
1 軸芯体
2 弾性層
3 最表面の樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に樹脂層を有している現像ローラであって、該現像ローラの最表面をなす樹脂層は、バインダー成分としてポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、及びポリアミド樹脂の中から選ばれる少なくとも1つの樹脂を含み、かつ、下記一般式(1)および(2)で示される構成単位を有するアルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを含有することを特徴とする現像ローラ。
【化1】

【請求項2】
前記バインダー成分がポリウレタン樹脂からなり、かつ、前記最表面の樹脂層が、前記アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンを、該ポリウレタン樹脂の100質量部に対して、1質量部以上、30質量部以下、含んでいる請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記アルキルイソシアネート変性ポリエチレンイミンのアルキル基が、オクタデシル基である請求項1または2に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記最表面の樹脂層と前記軸芯体との間に弾性層を有している請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項5】
電子写真画像形成装置本体に脱離可能に装着される電子写真プロセスカートリッジにおいて、該カートリッジが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像ローラを有することを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項6】
静電潜像を保持するための静電潜像保持体及び該静電潜像保持体に当接配置される現像ローラを有する電子写真画像形成装置において、該現像ローラが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−210794(P2010−210794A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55205(P2009−55205)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】