説明

現像ローラ

【課題】環境性に優れるとともに、トナーフィルミングやトナー漏れの発生のない現像ローラを提供する。
【解決手段】軸1と、その外周に担持された弾性層2と、弾性層2の外周面に形成された1層の表層3と、を備える現像ローラ10である。弾性層2がウレタンフォームからなり、かつ、表層3が、水系ウレタン系樹脂を主成分とし、水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを含有する。水系ウレタン系樹脂としては、紫外線硬化型樹脂を好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、現像、帯電、転写(トナー供給、クリーニング)等の電子写真プロセスにおいて、導電性を付与したローラ部材が用いられている。
【0003】
従来、これら現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ(トナー供給、クリーニング)等として用いられるローラ部材としては、軸の外周に、導電剤を配合することにより導電性を付与した導電性のゴムや高分子エラストマー、高分子フォーム等からなる弾性層を形成した構造を基本構造として、所望の表面粗さや導電性、硬度などを得るために、その外周に一層または複数層の塗膜を設けたものが使用されている。
【0004】
この場合、例えば、ウレタンフォームからなる弾性層の場合には、フォーム表面にセルが開口しているために、溶剤系の塗料では弾性層表面が溶解するなどの不具合を生じ、表面粗さの制御を行うことができない。表面粗さが制御できないと、例えば現像ローラにおいては、プリント画像が粗くなり、トナーフィルミングが発生するなどの問題が生ずるため、ウレタンフォームからなる弾性層の場合には、従来、水系樹脂を用いた水系塗料にて塗膜を形成することで、表面粗さを調整する手法が用いられていた。水系塗料による塗膜
は、溶剤系塗料と異なり環境に対する負荷が少ないため、環境保全の観点からも優れているといえる。
【0005】
ローラ部材に係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、導電性シャフトの周りに弾性層および単または複数の樹脂層を順次同心円状に積層して構成され、樹脂層のうち少なくとも表面層の主成分が、ポリオール、イソシアネートさらに必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得たポリウレタン系樹脂であり、ポリオールと鎖伸長剤との一方または双方にポリシロキサン骨格を含む現像ローラが開示されており、表面層の100%モジュラスを5×10Pa以上30×10Pa以下とすることも開示されている。また、特許文献2には、導電性支持体の外周にハロゲン基を有するポリマーを主体とした導電性弾性体を具備し、その導電性弾性体に塩化物の溶解度が30g以下である金属元素を含む無機化合物を含有し、その無機化合物が疎水化処理されており、かつ、その導電性弾性体の最表面が内部に比べ高架橋化されている電子写真用導電性部材が開示されている。
【特許文献1】特開平11−212354号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2005−338167号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ウレタンフォームからなる弾性層を備えるローラにおいては、表面に水系塗料からなる塗膜を設けることで、表面粗さの制御を図ることは可能である。しかしながら、塗膜の伸び率や弾性率を考慮しないと、感光体ドラム等との摺接時にローラ表面が感光体ドラムに追従できずに、トナーフィルミングやトナー漏れなどの問題を生じてしまう場合があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、環境負荷の低い水系塗料を用いた現像ローラにおいて、トナーフィルミングやトナー漏れの発生を防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、水系樹脂を用いた塗膜中に、水分散性シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを添加することで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の現像ローラは、軸と、該軸の外周に担持された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された1層の表層と、を備える現像ローラにおいて、
前記弾性層がウレタンフォームからなり、かつ、前記表層が、水系ウレタン系樹脂を主成分とし、水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記水系ウレタン系樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましく、前記ウレタンフォームがメカニカルフロス法により形成されてなることも好ましい。また、好適には、前記水分散シリカの含有量は、前記水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部の範囲内であり、前記水系シリコーンアクリルグラフトポリマーの含有量は、前記水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部の範囲内である。さらに、本発明のローラにおいて、前記表層の伸び率は、好適には50〜400%の範囲内であり、前記表層の、周波数11Hzにおける貯蔵弾性率は、好適には8〜20MPaの範囲内である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成としたことにより、環境性に優れるとともに、トナーフィルミングやトナー漏れの発生のない現像ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の現像ローラの一構成例の概略断面図を示す。図示するように、本発明の現像ローラ10は、軸1と、その外周に担持された弾性層2と、弾性層2の外周面に形成された1層の表層3と、を備えている。
【0013】
本発明においては、弾性層2がウレタンフォームからなり、かつ、表層3が、水系ウレタン系樹脂を主成分とし、かつ、水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを含有する。弾性層2上に形成する表層3を、水系ウレタン系樹脂を主成分として形成したことで、溶剤を使用しないために環境に対する負荷を低減することができるとともに、水分散シリカおよび水系シリコーンアクリルグラフトポリマーの少なくともいずれか一方を添加したことで、所望の表層伸び率を得ることができ、感光体等に対する追従性を向上して、トナーフィルミングやトナー漏れの問題についても解消することが可能となった。
【0014】
本発明においては、表層3中に、水分散シリカおよび水系シリコーンアクリルグラフトポリマーのうちのいずれか一方を添加しても双方を添加してもよく、いずれにおいてもトナーフィルミングやトナー漏れの発生を防止する効果が得られるが、特に、水分散シリカを添加した場合には、親水性シリカが表層内で吸湿効果を発揮するために、高湿時においても水系の表層の表面性を確保できるメリットがある。
【0015】
また、表層3中に添加する水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーの添加量は、水分散シリカについては、水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部、特には5〜20重量部の範囲内とすることが好ましく、水系シリコーンアクリルグラフトポリマーについても、水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部、特には5〜20重量部の範囲内とすることが好ましい。水分散シリカまたは水系シリコーンアクリルグラフトポリマーの添加量が上記範囲より少ないと、トナーフィルミングやトナー漏れを十分防止できないおそれがあり、一方、上記範囲より多いと、水系ウレタン系樹脂との分散性に難を生ずるおそれがある。
【0016】
表層3に用いる水系ウレタン系樹脂としては、熱硬化型でも紫外線(UV)硬化型でもよいが、特には、硬化の速い紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。本発明において表層3中に含有させる水分散シリカおよび水系シリコーンアクリルグラフトポリマーは、いずれも光透過性が良好であるため、紫外線硬化型樹脂との相性は良いといえる。UV硬化の条件は、例えば、UV照射の積算光量50〜2000mJ/cmとすることができ、この範囲よりも照射量が少ないと表層3が十分硬化しない場合があり、この範囲よりも照射量が多いと表層3が焦げるおそれがあり実用的でない。
【0017】
本発明においては、上記水系ウレタン系樹脂と水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーとを用いたことで、伸び率が好適には50〜400%、より好適には100〜300%の範囲内であって、周波数11Hzにおける貯蔵弾性率が好適には8〜20MPa、より好適には10〜20MPaの範囲内であるような柔軟な表層を得ることが可能である。また、表層3の膜厚は、特に制限されるものではないが、好適には、10〜50μmの範囲内とする。
【0018】
また、本発明に係る弾性層2を構成するウレタンフォームの原料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はない。ポリオール成分としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0019】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0020】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、400〜3000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、1500〜6000の範囲のものがより好ましい。更に、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0021】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400〜4000の範囲、特には、650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0022】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、重量比で95:5〜20:80の範囲、特には90:10〜50:50の範囲となるよう用いることが好適である。
【0023】
また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0024】
また、ウレタンフォームを構成するイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートまたはその誘導体、脂肪族イソシアネートまたはその誘導体、脂環族イソシアネートまたはその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネートまたはその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネート(TDI)またはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはその誘導体が好適に用いられる。
【0025】
トリレンジイソシアネートまたはその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンまたはその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0026】
また、イソシアネートをポリオールによりあらかじめプレポリマー化してもよく、その方法としては、ポリオールとイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30重量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15重量%である。イソシアネートの含有率が4重量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30重量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。イソシアネートをあらかじめポリオールによりプレポリマー化したイソシアネート成分を用いる場合のポリオール成分としては、上記ポリオール成分に加えて、エチレングリコールやブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンやソルビトール等のポリオール類やそれらの誘導体を用いることもできる。
【0027】
ウレタンフォーム原料中には、これらポリオール成分およびイソシアネート成分に加え、所望に応じて導電剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、架橋剤、界面活性剤、触媒、整泡剤等を添加することができ、これにより所望に応じた弾性層とすることができる。
【0028】
導電剤としてはイオン導電剤と電子導電剤があり、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。その配合量には特に制限はなく、所望に応じ適宜選定可能であるが、通常は、ポリオールとイソシアネートとの総量100重量部に対し、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合である。
【0029】
ウレタンフォームの硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明においては、ウレタンフォーム配合中にシリコーン整泡剤や各種界面活性剤を配合することが、フォーム材のセルを安定させるために好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリオール成分とイソシアネート成分との総量100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることが更に好ましい。
【0031】
本発明におけるウレタンフォーム原料の発泡方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができるが、特には、不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させるメカニカルフロス法を用いることが好ましい。メカニカルフロス法を用いると、ウレタンフォーム表面にスキン層を形成しやすいメリットがあるが、これに本発明に係る水系樹脂からなる表層2を組み合わせることで、溶剤系では侵されやすいスキン層の破壊を防止することができる。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のウレタンフォーム原料と反応しない気体が挙げられる。
【0032】
本発明においては、弾性層2を形成するに際し、上記のようにして発泡させたウレタンフォーム原料を、軸を配置した金属モールド等に注型して硬化させる金型成形の手法を好適に用いることができ、これにより、金属モールドに接した部分に自己スキン層(薄い層状の皮膜)が形成されたウレタンフォームを得ることができる。その際、金属モールドの内面をフッ素樹脂等でコーティングする等の方法により、金属モールドに離型性を付与することができる。成形されたウレタンフォームは、モールドから脱型した後、研磨工程なしで表層用塗料の塗工工程に供することができ、表層用塗料の塗工を、ディップ塗布、スプレー塗布、ロールコーター塗布などの公知の手法を用いて行った後、乾燥し、所望に応じ加熱硬化させることで、本発明の導電性ローラを得ることができる。
【0033】
なお、本発明の現像ローラ10の軸1としては、良好な導電性を有するものであれば特に制限はなく、いずれのものも使用し得るが、例えば、硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトを用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示すような、軸1と、その外周に順次形成された弾性層2および表層3とを備える現像ローラ10を、下記表1,2中にそれぞれ示す配合内容、配合部数および下記の手順に従い、作製した。
【0035】
まず、円筒状金型(SUS製、内径φ12mm×長さ290mm(弾性層形成部長さ:225mm))に軸1としての鉄製シャフト(直径φ6mm、長さ250mm)を挿入し、上型と下型とで軸1を固定した。
【0036】
NCO含有率6%のウレタン変性イソシアネート100重量部にカーボンブラック(電気化学工業(株)製,デンカブラック)2重量部を配合してイソシアネート成分とし、ポリエーテルポリオール(三洋化成(株)製,サンニックスHL332)20重量部、ポリエステルポリオール((株)クラレ製,クラレポリオールF510)20重量部、ポリジメチルシロキサンポリオキシエチレン共重合体(東レダウコーニングシリコーン(株)製,SF2937F)5重量部およびジブチル錫ジラウレート0.02重量部を配合してポリオール成分とした。これらイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し、メカニカルフロス法により乾燥空気を混合分散させて、液状のウレタンフォーム原料を調製し、これを、25℃に温調された上記筒状金型内に、上型のゲート口から注入した。この金型を加熱炉で110℃1時間加熱して熱硬化させた後、金型を冷却して脱型することで、軸1の外周に、ウレタンフォームからなる弾性層2を担持させた。
【0037】
次いで、この弾性層2の外周に、下記表1中に示す表層配合塗料をディップ塗工して風乾し、その後、紫外線ランプを用いて積算光量1000mJ/cmの条件でUV照射を行い、硬化させることにより膜厚約10μmの表層3を形成して、現像ローラ10を作製した。
【0038】
<画像特性の評価>
上記により得られた各現像ローラを用いて、以下に従い画像特性の評価を行った。
【0039】
(1)画像評価
得られた各現像ローラをカートリッジに組み込み、23℃×50%RHの環境下において、ブラザー工業(株)製のHL−2040にて印字率1%の連続画像出しを行い、初期および耐久(5000枚印刷)後に、ベタ画像およびハーフトーン画像について、目視にて下記基準で評価した。
◎:濃度ムラなし
○:若干濃度ムラあり
×:濃度ムラあり
【0040】
(2)耐トナーフィルミング性
各現像ローラ表面にトナーをまぶしてカートリッジに組込み、50℃で1週間放置した後、画像出しを行った。その結果を、下記基準で評価した。
○:1枚目から現像ローラ表面にトナーの付着が見られなかったもの。
△:10枚目までに現像ローラ表面にトナーの付着が見られなかったもの。
×:10枚を超えても現像ローラ表面にトナーの付着が見られたもの。
【0041】
(3)トナー漏れ評価
連続画像出し中にトナーがカートリッジから漏れるかどうかを目視にて確認した。
【0042】
<塗膜特性の評価>
各表層配合塗料をキャスト法により成膜させた後、紫外線ランプを用いて積算光量1000mJ/cmの条件でUV照射を行い、それぞれ下記寸法の塗膜サンプルを調製した。
【0043】
(1)伸び率測定
伸び率の測定には、島津製作所(株)製の小型卓上試験機EZ−TESTを用いた。上記塗膜サンプルを幅10mm、長さ50mm、厚み約500μmにカットしたものを測定サンプルとし、チャック間距離30mm、試験速度30mm/分の条件で測定を行って、破断点ひずみの値を伸び率とした。
【0044】
(2)弾性率測定
弾性率の測定には、(株)エー・アンド・ディ製のレオバイブロンDDVを用いた。上記塗膜サンプルを幅5mm、長さ40mm、厚み約500μmにカットしたものを測定サンプルとし、チャック間距離30mmの条件で、引張り法にて測定を行って、周波数11Hz時の貯蔵弾性率の値を弾性率とした。
上記評価結果を、ローラの抵抗および表面粗さの値とともに、下記の表1,2中に示す。
【0045】
【表1】

※1)ポリエステル系ウレタンアクリレート:R5002(第一工業製薬(株))
※2)EO変性ビスフェノールAジアクリレート:BPE−4(第一工業製薬(株))
※3)EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート:TMP−3(第一工業製薬(株))
※4)水分散シリカ:STN−3(北村化学産業(株))
※5)水系シリコーングラフトアクリルポリマー:サイマックUS−450(東亞合成(株))
※6)ウレタン粒子(平均粒径10μm):アートパールC800(根上工業(株))
※7)光開始剤:ダロキュアー1173(チバスペシャリティケミカルズ(株))
【0046】
【表2】

【0047】
上記表1,2に示すように、ウレタンフォームからなる弾性層上に、水系ウレタン系樹脂を主成分とし、水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを含有する表層を設けた各実施例の現像ローラにおいては、表層において適正な伸び率および弾性率が得られることで、トナーフィルミングやトナー漏れの発生がなく、かつ、良好な画像性が得られるとともに、環境性にも優れることが確認された。これに対し、水分散シリカおよび水系シリコーンアクリルグラフトポリマーがいずれも配合されていない比較例1,2では、トナーフィルミングが発生するとともに、表層の表面にタック(べとつき感)があるために表層と感光体との接着力が強くなって、それぞれ1000枚および2000枚で表層が弾性層から剥がれてしまい、端部からトナーが漏れてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の現像ローラの一構成例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 軸
2 弾性層
3 表層
10 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の外周に担持された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された1層の表層と、を備える現像ローラにおいて、
前記弾性層がウレタンフォームからなり、かつ、前記表層が、水系ウレタン系樹脂を主成分とし、水分散シリカおよび/または水系シリコーンアクリルグラフトポリマーを含有することを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記水系ウレタン系樹脂が紫外線硬化型樹脂である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記ウレタンフォームがメカニカルフロス法により形成されてなる請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記水分散シリカの含有量が、前記水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部の範囲内である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記水系シリコーンアクリルグラフトポリマーの含有量が、前記水系ウレタン系樹脂の固形分100重量部に対し0.2〜30重量部の範囲内である請求項1〜4のうちいずれか一項記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記表層の伸び率が50〜400%の範囲内である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の現像ローラ。
【請求項7】
前記表層の、周波数11Hzにおける貯蔵弾性率が8〜20MPaの範囲内である請求項1〜6のうちいずれか一項記載の現像ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−25419(P2009−25419A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186310(P2007−186310)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】