説明

現像ローラ

【課題】低硬度でありながら、圧縮永久歪みが生じにくく、また、長期の使用によっても弾性層に破断や亀裂が生じにくい現像ローラの提供。
【解決手段】軸芯体とその外周に設けられた弾性層を有する現像ローラであって、
該弾性層は、軸芯体の外周上の設けられた第1弾性層と、その外周に設けられた第2弾性層とからなり、該第1弾性層及び該第2弾性層は、シリカ及び導電剤を含有する付加反応型シリコーンゴムを含み、
該第1弾性層及び該第2弾性層のデュロメータA硬さを各々、A1及びA2とし、該第1弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB1、該第2弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB2としたとき、A1、A2、B1及びB2が特定の関係を満たすことを特徴とする現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーに与えるストレス軽減を目的とした現像ローラとして、特許文献1には、軸芯体の外周に第1のシリコーンゴム層(内層)を有し、その外側に第2のシリコーンゴム層(外層)を有し、内層の硬度を外層の硬度より高くした現像ローラが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、積層弾性層において、30°乃至60°の硬度(JISA)を有する低硬度弾性層と、その上に積層した50°乃至80°の硬度(JISA)を有する高硬度弾性層とを備えるローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−350194号公報
【特許文献2】特開2000−081782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1で提案されている構成を用いた現像ローラは、長期に亘って静止状態で長期に亘り電子写真感光体に当接させた場合、硬度が低い部分で圧縮永久歪みが生じることがあった。また、特許文献2で提案されている構成を用いた現像ローラは、硬度が高いため、表面にトナーのフィルミングが発生することがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、低硬度でありながら、圧縮永久歪みが生じにくく、また、長期の使用によっても弾性層に破断や亀裂が生じにくい現像ローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る現像ローラは、軸芯体とその外周に設けられた弾性層を有する現像ローラであって、
該弾性層は、軸芯体の外周上の設けられた第1弾性層と、その外周に設けられた第2弾性層とからなり、該第1弾性層及び該第2弾性層は、シリカ及び導電剤を含有する付加反応型シリコーンゴムの硬化物を含み、
該第1弾性層及び該第2弾性層のデュロメータA硬さを各々、A1及びA2としたとき、A1及びA2が下記式(1)及び式(2)の関係を満たし、かつ、
該第1弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB1、該第2弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB2としたとき、B1及びB2が下記式(3)及び式(4)の関係を満たすことを特徴とする。
式(1) 8≦A1≦18
式(2) 2≦(A2−A1)≦5
式(3) 40≦B1≦60
式(4) 0.125≦(B2/B1)≦0.250
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低硬度であって、かつ、圧縮永久歪みが生じにくい現像ローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の現像ローラの概略を示す断面図である。
【図2】本発明の現像ローラを組み込むのに適した電子写真装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る現像ローラの軸芯体に平行な方向の断面図を図1(A)に、また軸芯体に直交する方向の断面図を図1(B)に示す。本発明に係る現像ローラは、軸芯体4c及びその外周上に設けられた弾性層を有し、該弾性層は第1弾性層4aと、その外周上に設けた第2弾性層4bとからなる。第1及び第2弾性層は、バインダーとしての付加反応型シリコーンゴムの硬化物と、これに分散されているシリカ及び導電剤とを含む。そして、第1弾性層の硬さ(デュロメータA硬さ、単位:度)をA1とし、第2弾性層の硬さ(デュロメータA硬さ、単位:度)をA2としたとき、A1及びA2は、下記式(1)及び式(2)を満たす。
式(1) 8≦A1≦18
式(2) 2≦(A2−A1)≦5
【0011】
また、第1弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB1とし、第2弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB2としたとき、B1及びB2は、下記式(3)及び式(4)を満たす。
式(3) 40≦B1≦60
式(4) 0.125≦(B2/B1)≦0.250
【0012】
本発明において、第1弾性層は硬さ及びとシリカの含有量が上記式(1)、式(3)を満たす範囲にあると、使用時のゴムの破断や亀裂を有効に抑えられる。
【0013】
また、第2弾性層の硬さとシリカの含有量が上記式(2)、式(4)を満たす範囲にあると、プリンタ等を長期使用しない場合に生じる感光ドラムや現像剤規制部材との圧接による永久変形が抑えられる。現像ローラの弾性層の厚さをD(mm)としたとき、第1弾性層の厚さを0.3D以上0.7D以下とすることが好ましい。弾性層の破断や亀裂は厚さ方向で軸芯体から0.3Dの範囲で発生し易いためである。また、第2弾性層の厚さを0.3D以上0.7以下とすることが好ましい。永久圧縮歪みが、現像ローラの弾性層の厚さをD(mm)としたとき、現像ローラの表面から0.3Dの範囲で発生し易いためである。
【0014】
本発明における第1弾性層の硬さ(デュロメータA硬さ、単位:度)をA1としたとき、8≦A1≦18とすることが必要で、10≦A1≦16とすることがより好ましい。A1を上記範囲とすることで、第1弾性層を構成するシリコーンゴム材料の強度が十分なものとなり、現像ローラとして使用した際に、弾性層に破断や亀裂が生じにくい。また、トナーに対するストレスが過度に大きくなることが抑制できるため、トナーフィルミングの発生が抑制される。なお、第1弾性層の硬さA1は、以下の方法で測定したものである。第1弾性層の形成に用いる原料組成物を厚さ6mmのシートとし、温度25℃の恒温槽に5時間置いた後、デュロメータ硬度計タイプA(商品名、高分子計器株式会社製)を用いて測定する。
【0015】
本発明において、第2弾性層の硬さ(デュロメータA硬さ、単位:度)をA2としたとき、2≦(A2−A1)≦5を満足する。なお、より好ましい範囲は3≦(A2−A1)≦4を満たす。(A2−A1)を上記範囲内とすることにより、永久圧縮歪みをより有効に抑制できる。また、使用時における現像剤規制部材との圧接によるストレスによる第1弾性層への破断や亀裂の発生をより有効に抑制できる。なお、第2弾性層の硬さA2の測定は第1弾性層の硬度A1の測定と同じ測定方法である。
【0016】
本発明において、第1弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB1としたとき、40≦B1≦60、より好ましくは45≦B1≦55以下である。B1を上記範囲内とすることで、実使用時の弾性層への破断や亀裂の発生、および圧縮永久歪みの発生を抑制できる。
【0017】
本発明において、第2弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB2としたとき、0.125≦(B2/B1)≦0.250を満たす必要がある。より好ましくは0.150≦(B2/B1)≦0.225である。(B2/B1)を上記の範囲内とすることで、弾性層への破断、亀裂の発生、および圧縮永久歪みの発生を有効に抑制できる。
【0018】
これら弾性層に用いるシリカとしては公知なものから適宜選択して使用することができる。例えば、乾式シリカ、湿式シリカ等がある。
【0019】
弾性層を構成する付加反応型シリコーンゴム(以下、単に「シリコーンゴム」という)は、下記一般式(I)で表されるオルガノポリシロキサンである。
1a2bSiO(4-a-b)/2 (I)
式中、R1はメチル基を表し、R2はビニル基を表す。また、a及びbはそれぞれR1及びR2の置換数を表し、a+bは約2である。
【0020】
第1弾性層は、その硬さA1が上記式(1)の範囲内にあることが必要である。そのために、使用するシリコーンゴムが一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサンにおいて、b/aが0.002以上0.005以下であることが好ましい。b/aを上記の範囲内とすることで、第1弾性層の硬さA1を8度以上に調整でき、ゴムに十分な強度を持たせられる。また、第1弾性層の硬さA1が18度以下に調整でき、トナーに対するストレスが過度に大きくなることを避け得る。
【0021】
第2弾性層は、その硬さA2が上記式(2)を満足することが必要であり、そのために、使用するシリコーンゴムが一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサンにおいて、b/aが0.006以上0.009以下であることが好ましい。b/aを上記の範囲内とすることで、圧縮永久歪みの発生を抑えられる。また、(A2−A1)を5度以下とできるため、第1弾性層への大きなストレスの印加を抑制できる。その結果、第1弾性層への破断や亀裂の発生をより有効に抑制できる。
【0022】
弾性層を構成する一般式(I)のシリコーンゴムを硬化させるために、オルガノポリシロキサン用の硬化剤として下記一般式(II)で示されるオルガノハイドロジンポリシロキサンを用いることが好ましい。
1cdSiO(4-c-d)/2 (II)
式中、R1はメチル基を表す。また、c及びdはそれぞれR1及び水素の置換数を表し、c+dは約2である。
【0023】
なお、d/cの値は0.01以上0.1以下であることが好ましく、より好ましい範囲は0.02以上0.09以下である。d/cが上記範囲内にあることにより、第1弾性層を構成するシリコーンゴム材料の強度が良好となり、弾性層の破断や亀裂を有効に抑制し得る。また、d/cの値を上記範囲内とすることで、現像ローラがトナーに与えるストレスが過大になりすぎることを抑制できる。
【0024】
一般式(II)で示されるオルガノハイドジンポリシロキサンの使用量は、一般式(I)のオルガノポリシロキサンのビニル基に対して、ケイ素に結合している水素原子が、第1弾性層、第2弾性層共、1.1モル倍乃至1.5モル倍となる量であることが好ましい。
【0025】
本発明では、弾性層は上記シリコーンゴムにシリカ及びカーボンブラックが配されたゴム組成物を軸芯体上に2層に形成されたものである。そして、シリカは従来から公知の物が使用可能であるが、それぞれの弾性層において、以下のような性質を持っていることが好ましい。
【0026】
第1弾性層のシリカは、その粒子径分布が2つのピークを持ち、大きい粒径側のピークの個数平均粒子径(μm)をD1Aとしたとき、100≦D1A≦200(式5)、好ましくは110≦D1A≦190であることが好ましい。なお、D1Aを上記の範囲とすることで、成型時にシリカが凝集することが抑えられる。その結果、シリカの凝集物の間(ゴム部)での破断の発生を抑制できる。
【0027】
第1弾性層のシリカの小さい粒径側のピークの個数平均粒子径(μm)をD1Bとしたとき、0.01≦(D1B/D1A)≦0.05(式6)、より好ましくは0.02≦(D1B/D1A)≦0.04であることが好ましい。(D1B/D1A)がこの範囲にあると第1樹脂層の硬さA1を8≦A1≦18とすることができる。
【0028】
また、第1弾性層中のシリカは、大きい径側の含有量(質量部)をC1、小さい径側の含有量(質量部)をC2としたとき、0.2≦(C2/C1)≦0.4(式7)であることが好ましく、より好ましくは0.25≦(C2/C1)≦0.35である。(C2/C1)を上記の範囲内とすることで、大きいシリカの間に存在する小さいシリカの存在量を確保でき、大きいシリカと大きいシリカの間でのゴムの強度向上を十分に確保できる。また、大きいシリカの間に存在する小さいシリカが不足することによる、シリカの凝集物間(ゴム部)で破断の発生を抑えられる。なお、かかる第1弾性層中のシリカの含有量とするには、個数平均粒子径がD1Aであるシリカと個数平均粒子径がD1Bであるシリカを上記割合でシリコーンゴムに配合することで達成できる。
【0029】
第2弾性層中のシリカの個数平均粒子径(μm)をD2としたとき、1≦D2≦40(式8)とすることが好ましく、より好ましい範囲は5≦D2≦30である。D2を上記の範囲内とすることで、成型時のシリカ凝集を抑えられる。その結果、現像ローラがドラムや現像剤規制部材と長期圧接した場合の圧縮永久歪みの発生をより有効に抑制できる。
【0030】
なお、弾性層中のシリカの個数平均粒子径は、それぞれの層の断面を顕微鏡で観察し、各500個のシリカの粒径(円相当径)を測定した。上記D1A、D1Bについては、粒径の頻度分布を求め、大きい粒径側にあるピークの分布から算出した個数平均粒子径をD1Aとし、小さい粒径側にあるピーク分布から算出した個数平均粒子径をD1Bとした。また、D2については、測定した500個のシリカの粒径の平均値を個数平均粒子径D2とした。
【0031】
本発明に用いられるシリコーンゴムを硬化するために触媒として、白金原子を含有する触媒を用いることができる。例えば、白金−オクタノール錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体等を挙げることができる。なお、白金触媒の添加量は1ppm乃至100ppmとするのが好ましい。
【0032】
現像ローラの軸芯体は、導電性部材の電極及び支持する部材として機能するものであればいずれでも使用できる。その材質として、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属又は合金、クロムやニッケルで鍍金処理を施した鉄、導電性合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。なお、軸芯体とその周面に形成される弾性層を接着するために、プライマーを軸芯体に塗布することができる。通常使用されているプライマーとして、例えば、シランカップリング系プライマーが挙げられる。
【0033】
また、弾性層の厚さDは、第1弾性層と第2弾性層の合計で、1.0mm乃至6.0mmであればよく、1.5mm乃至5.0mmにあることが好ましい。均一なニップを確保できる。なお、第1弾性層及び第2弾性層の厚みは、それぞれ0.3D乃至0.7D、0.7D乃至0.3Dとするのが好ましい。
【0034】
弾性層からの低分子成分の染み出し防止の目的で表面層を設けることができる。表面層として用いる樹脂としては、特に制限されること無く、この目的で使用されている樹脂から適宜選択して用いることができる。具体的には以下のものが例示できる。水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、不飽和基、メチロール基、アルコキシメチル基、アルデヒド基、メルカプト基の如き反応基を持つ、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂等及びこれらの混合物。
【0035】
表面層には、これら樹脂にカーボンブラックを添加したものを用いることができる。該カーボンブラックとして、例えば、ケッチェンブラックの様な高い導電性をもつカーボンブラック、中程度の導電性をもつゴム用カーボンブラック或いは塗料用のカーボンブラックが挙げられる。分散性と導電性の制御の観点から塗料用カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの配合量は、表面層中の樹脂成分を100質量部としたとき、15質量部乃至30質量部とすることが好ましい。
【0036】
表面層の形成は、表面層用の樹脂とカーボンブラックを溶剤中に溶解あるいは分散した塗工液を弾性層に塗工することによって達成される。なお、塗工液に用いる溶剤としては、表面層として用いる樹脂が溶解するという条件内で適宜使用することができる。具体的には溶剤として以下のものが挙げられる。メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類;ヘキサン、トルエンの如き炭化水素類;メタノール、イソプロパノールの如きアルコール類;エステル類;水など。特に好ましい溶剤は、樹脂の溶解性や沸点からメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンである。
【0037】
表面層の厚みは、5μm乃至50μmが好ましく、特に10μm乃至40μmが好ましい。厚みが5μmより薄いと、弾性層中の低分子量成分が染み出してきて潜像担持体(感光ドラム)を汚染しやすく、表面層自身が剥れる場合がある。また、50μmより厚いと、現像ローラの表面硬度が高くなり、感光ドラム表面を削る場合がある。
【0038】
本発明の現像ローラは、弾性層が圧縮永久歪み特性に優れ、かつ、使用時には該弾性層の破断や亀裂が起きにくいので、電子写真装置の現像装置における現像ローラとして極めて優れたものである。
【0039】
<電子写真装置>
本発明の現像ローラを組み込むのに適した電子写真装置の概要図を図2に示す。1は潜像担持体(感光ドラム)であり、所定のプロセススピードで回転する。感光ドラム1は、所定の帯電バイアスE1を印加された帯電ローラ2によって帯電される。さらに、不図示の露光光源からの光3によって露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)され、感光ドラム1の表面に静電潜像が形成される。次いで、所定の現像バイアスE3が印加された本発明に係る現像ローラ4によって感光ドラム1に形成された静電潜像を現像し、トナー画像を形成する。感光ドラム1と所定の転写バイアスE2が印加された転写ローラ5が当接している転写部には、不図示の給紙手段より、所定のタイミングで紙Pが搬送される。そして、転写ローラ5に対して転写バイアスが印加され、感光ドラム1表面のトナー画像が、紙Pに転写される。
【0040】
トナー画像が転写された紙Pは、感光ドラム1表面から分離されて定着手段(不図示)へ移動し、該定着手段によってトナー画像が紙に定着される。定着画像を有する紙Pは定着手段から排出される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下において、特に断らない限り、「部」は質量部を表す。
【0042】
弾性層及び表面層の原料について、説明する。
【0043】
[弾性層用原料]
(シリコーンゴム)
シリコーンゴムである一般式(I)で示されるオルガノポリシロキサンとして、第1弾性層用にb/aが0.002乃至0.005であるものを、また、第2弾性層用にb/aが0.006乃至0.009であるものを用いた。
【0044】
(硬化剤)
シリコーンゴムの硬化剤として用いる一般式(II)で示されるオルガノハイドロジンポリシロキサンとして、d/cが0.01乃至0.1であるものを用いた。
【0045】
(シリカ)
・大粒子径のシリカとして、フリマントル・サンド(フジ商事株式会社販売)を粉砕し、分級して、個数平均粒子径(D1A)が100μm、120μm、150μm、160μm、180μm又は200μmであるものを調製して用いた。
・小粒子径のシリカとして、結晶シリカ「QZシリカ」(商品名、林化成株式会社製)を分給して、個数平均粒子径(D1B)が1μm乃至10μmであるものを調製して用いた。
・第2弾性層用のシリカとして、結晶シリカ「QZシリカ」(商品名、林化成株式会社製)を分給して、個数平均粒子径(D2)が1μm乃至40μmであるものを調製して用いた。
【0046】
(導電剤)
導電剤として、高導電性カーボンブラックであるケッチェンブラックEPC−600JD(商品名、ライオン株式会社製)を用いた。
【0047】
(白金触媒)
触媒として、白金−オクタノール触媒(商品名、アヅマックス株式会社製)を5ppm用いた。
【0048】
(軸芯体)
軸芯体として、直径8mm、長さ260mmのSUS304製の円柱に、シランカップリング系プライマー「DY35−051」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布した後、温度150℃で、60分間焼付けしたものを用意した。
【0049】
[表面層用原料]
ポリオール「N5033」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)
イソシアネート「C2507」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)
カーボンブラック「#3030」(商品名、三菱化学株式会社製)
アクリル粒子「G−400透明」(商品名、根上工業株式会社製)
【0050】
〔実施例1〕
(第1弾性層の形成)
内径12mmの円筒状のパイプにプライマー処理した軸芯体を組み込み、一端の駒から下記の内容の原料組成物を注入し、120℃で30分加熱硬化した。冷却後脱型することにより軸芯体の周りに厚さ2mmの第1弾性層を設けた。
【0051】
シリコーンゴム(b/a=0.005) 100部
硬化剤(d/c=0.018) 15部
大粒子径のシリカ(D1A=100μm) 40部(C1)
小粒子径のシリカ(D1B= 1μm) 16部(C2)
カーボンブラック 8部
なお、硬化剤中のケイ素に結合している水素の量は、シリコーンゴム中のビニル基に対して、1.2倍となる量である。また、全シリカ配合量(B1)は56部である。
【0052】
一方、第1弾性層の原料組成物から、120℃、30分の硬化条件で厚さ6mmのシートを作成し、それを温度25℃の恒温槽に5時間置いた後、デュロメータ硬度計タイプA(商品名)にて、シートの硬さを測定したところ18度であった。この測定値を第1弾性層の硬さ(A1)とし、結果を表1に示した。
【0053】
(第2弾性層の形成)
次いで、内径16mmの円筒状のパイプに、第1弾性層を設けたローラを組みこみ、一端の駒から下記の内容の第2弾性層用の原料組成物を注入し、120℃で30分加熱硬化した。冷却後脱型することにより第1弾性層の周りに厚さ2mmの第2弾性層を設けた。その後、さらに温度200℃で、3時間オーブンで加熱して、第1弾性層及び第2弾性層の硬化を完了させた。
シリコーンゴム(b/a=0.008) 100部
硬化剤(d/c=0.028) 15部
シリカ(D2=8μm) 13部(B2)
カーボンブラック 8部
なお、硬化剤中のケイ素に結合している水素の量は、シリコーンゴム中のビニル基に対して、1.2倍となる量である。
【0054】
また、第2弾性層の原料組成物から、上記第1弾性層の原料組成物で作製したと同様にして厚さ6mmのシートを作成し、そのシートの硬さを測定したところ21度であった。この測定値を第2弾性層の硬さ(A2)とし、結果を表1に示した。
【0055】
(表面層の形成)
表面層用の塗工液として、下記のものをMEKに分散させたものを用意した。
ポリオール「N5033」(商品名) 100部
イソシアネート「C2507」(商品名) 20部
カーボンブラック「#3030」(商品名) 30部
アクリル粒子「G−400透明」(商品名) 10部
【0056】
上記塗工液をオーバーフロー型循環式塗布装置に入れた。その塗工液に上記第2弾性層を設けたローラを浸漬し、引き上げた後に、風乾80分、その後、170℃で7時間加熱して表面層を設けて、現像ローラを得た。
【0057】
(評価)
得た現像ローラを、カラーレーザープリンタ「Satera LBP5800」(商品名、キヤノン株式会社製)の改造機用ブッラクカートリッジに組み込み、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0058】
[使用時の弾性層の破壊]
現像ローラを組み込んだブラックカートリッジを該プリンタに組み込み、他色のカートリッジとして、空で、チェック機能を解除したものを組み込んで、画像を10000枚及び12000枚を連続出力した。その後、現像ローラを観察し、下記の基準で、弾性層の破断や亀裂の発生について評価した。なお、下記基準で×のものは10000枚で連続出力は終了した。
◎:12000枚出力しても弾性層に破断や亀裂がない。
○:10000枚乃至12000枚の間で破断や亀裂が起きた。
×:10000枚出力ですでに現像ローラの弾性層に破断や亀裂が生じていた。
【0059】
[トナーフィルミング]
上記連続出力終了後の現像ローラの表面を、顕微鏡で観察し、フィルミングの発生状況を確認し、下記の基準で評価した。
○:フィルミングは未発生。
×:フィルミングが発生。
【0060】
[長期未使用による圧接痕]
現像ローラを組み込んだカートリッジを2ヶ月間、温度25℃の恒温槽に放置した後、カラーレーザープリンタに組み、画像を出力し、画像上に感光ドラム、現像剤規制部材との長期圧接による圧接痕が現れているか確認し、下記の基準で評価した。
◎:全く圧接痕が見られない。
○:少しだけ圧接痕が見られるが、問題のないレベルである。
×:明らかに圧接痕が見られる。
【0061】
〔実施例2乃至49、比較例1乃至24〕
シリコーンゴム、シリカについて、表1に示すb/a、個数平均粒子径及び配合量にしたこと及び硬化剤として適宜d/cを調製したものを用いたこと以外は、実施例1と同様に現像ローラを製造し、得られた現像ローラについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1乃至表6に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
実施例1〜49において、第1弾性層の硬さA1とシリカの含有量B1及び、第2弾性層の硬さA2とシリカの含有量B2が下記式(1)〜式(4)の条件を全て満足しているため、現像ローラは弾性層での破断や亀裂が起きなかった。さらに、プリンタを長期使用しない場合においても、感光ドラム、現像剤規制部材との長期圧接による圧接痕起因のスジが画像を出力しても発生しなかった。
(式1) 8≦A1≦18
(式2) 2≦A2−A1≦5
(式3) 40≦B1≦60
(式4) 0.125≦B2/B1≦0.250
【0069】
一方、比較例では、それぞれ以下のような条件のずれに基づき、不具合があった。
・比較例1、13、14:A1>18度。トナーフィルミングが発生。
・比較例2、15、16:A1<8度。弾性層で破断が発生。
・比較例3、5、17:(A2−A1)>5度。弾性層で破断が発生
・比較例4、6、18:(A2−A1)<2度。長期未使用時に永久変形が大きく、長期未使用後に画像を出力した際、画像に圧接痕起因によるスジが発生。
・比較例7、19、20:B1>60質量部。長期未使用時に永久変形が大きく、長期未使用後に画像を出力した際、画像に圧接痕起因によるスジが発生。
・比較例8、21、22:B1<40質量部。弾性層の強度が小さく、弾性層で破断、亀裂が発生。
・比較例9、11、24:(B2/B1)<0.125。弾性層の強度が小さく、弾性層で破断が発生。
・比較例10、12、23:(B2/B1)>0.250。長期未使用時に永久変形が大きく、長期未使用後に画像を出力した際、画像に圧接痕起因によるスジが発生。
【符号の説明】
【0070】
1 潜像担持体(感光ドラム)
2 帯電手段
3 露光系
4 現像手段
4a 第1弾性層
4b 第2弾性層
4c 軸芯体
5 転写手段
6 クリーニング手段
E1、E2、E3 バイアス印加用電源
P 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体とその外周に設けられた弾性層を有する現像ローラであって、
該弾性層は、軸芯体の外周上の設けられた第1弾性層と、その外周に設けられた第2弾性層とからなり、該第1弾性層及び該第2弾性層は、シリカ及び導電剤を含有する付加反応型シリコーンゴムを含み、
該第1弾性層及び該第2弾性層のデュロメータA硬さを各々、A1及びA2としたとき、A1及びA2が下記式(1)及び式(2)を満たし、かつ、
該第1弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB1、該第2弾性層中のシリカの含有量(シリコーンゴム100質量部に対する質量部)をB2としたとき、B1及びB2が下記式(3)及び式(4)を満たすことを特徴とする現像ローラ。
式(1) 8≦A1≦18
式(2) 2≦(A2−A1)≦5
式(3) 40≦B1≦60
式(4) 0.125≦(B2/B1)≦0.250

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−209421(P2011−209421A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75374(P2010−75374)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】