説明

現像ローラ

【課題】本発明は、プリンタ内で使用し続けても、抵抗値が高くなりにくい現像ローラを提供することを目的としている。
【解決手段】軸芯体と、該軸芯体の外周に設けられた弾性層とを有する現像ローラであって、該弾性層は、アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、アルコキシ変性シリコーンオイルと、カーボンブラックとを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真用現像装置に用いられる現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性一成分トナー等の現像剤を接触現像方式によって感光ドラム上に形成した静電潜像を現像する電子写真装置に用いられる現像ローラは、感光ドラムと安定したニップを形成し、かつ、現像電界を与えるために導電性の弾性層を有する構成が一般的である。かかる弾性層の材料としては、カーボンブラック等の電子導電性粒子を分散させてなるゴムがよく用いられている。ところで、電子導電系の導電剤によって導電化させた弾性層を有する帯電部材は、電気抵抗特性が不安定であるという課題がある。
【0003】
かかる課題に対して、特許文献1には、非エーテル系ポリウレタン、カーボンブラックおよびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムからなる組成物を成型してなる現像ローラなどに用い得るOA機器用導電性部材を開示している。特許文献1によれば、上記の導電性部材は、10〜1012Ω・cmの体積抵抗領域においてきわめて安定した電気抵抗を示し、導電性の電圧依存性が小さいことが記載されている。また、その理由として、上記導電性部材は、カーボンブラックの導電パスに欠陥が生じた場合でも、イオン導電性物質であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムがこれを補完するため、成形方法によらず、また厳しい製造条件の調節を行うことなく成型物に所望の導電性を均一に付与することができることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−178752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が、特許文献1の発明に係る導電性部材を現像ローラに用いることについて検討したところ、長期に亘る使用によって電気抵抗が徐々に上昇していくことがあった。
そして、電気抵抗の変動は、電子写真画像の品位にまで影響を与えることがあった。
そこで、本発明は、長期間の使用によっても電気抵抗が変動しにくい現像ローラを提供することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、軸芯体と、軸芯体の外周に形成された弾性層とを有しており、該弾性層は、アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、アルコキシ変性シリコーンオイルと、カーボンブラックとを含有している帯電部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長期間に亘って電位を印加し続けたときにも電気抵抗が上昇しにくい現像部材を得ることができる。その結果として、安定して高品位な電子写真画像を得ることができる電子写真装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る電子写真装置の概略図
【図2】本発明の実施の形態を示す現像装置の概略図
【図3】本発明の実施の形態を示す現像ローラの側面、断面図
【図4】本発明の実施の形態を表す抵抗測定装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、電子導電性粒子にて導電性を付与した弾性層を備えた現像ローラの経時的な電気抵抗の上昇の理由について検討を行った。その結果、以下の現象の発生が原因であると考えている。
すなわち、現像ローラは電子写真装置内で、感光ドラム等とある一定の圧力で接触させられているため、現像ローラの弾性層は変形と回復とを繰り返す。また、現像ローラには電位が印加されている。このような状況下においては、電子導電性粒子は、架橋したゴムの網目構造中を徐々に移動していき、電子導電性粒子同士が凝集する。その結果、長期の使用によって帯電ローラの電気抵抗が上昇してしまうものと考えられる。
【0010】
そこで本発明者らは、電子写真装置内での長期の使用による現像ローラの電気抵抗値の上昇を抑制すべく、電子導電性粒子の弾性層中における分散状態の変動を抑制することについて検討した。具体的には、電子導電性粒子の弾性層内での移動を抑制することを検討した。
その結果、現像ローラの弾性層に下記(1)〜(3)を含有させることにより、現像ローラをプリンタ内で長時間使用しても電子導電性粒子の移動が抑えられ、現像ローラの電気抵抗値の上昇を抑制し得ることを見出した。
(1)アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴム。
(2)アルコキシ変性シリコーンオイル。
(3)カーボンブラック。
上記(1)〜(3)を含有する弾性層を有する現像ローラは、長期の使用によっても電気抵抗値が上昇し難い。なお、本発明におけるアルコキシ変性ポリシロキサンとは分子中にアルコキシ基を持ち、アルコキシ基以外の架橋可能な反応性の官能基を持つポリシロキサンを表している。また、アルコキシ変性シリコーンオイルとは分子中にアルコキシ基を持ち、架橋したシリコーンゴムとは結合せずに、シリコーンゴム中で液体の状態で存在している化合物であり、トルエン等を用いる抽出により抽出される成分を表す。
【0011】
本発明において、アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムとアルコキシ変性シリコーンオイルを含有することが必要である。架橋したアルコキシ変性ポリシロキサンのアルコキシ基の酸素原子とカーボンブラック表面にある水酸基やカルボキシル基が相互作用し架橋の網目に取り込まれて、カーボンブラックはシリコーンゴム中で固定化される。さらに本発明の特徴であるアルコキシ変性シリコーンオイルは架橋構造に関与しないため、アルコキシ変性ポリシロキサンより自由度が高く動きやすい。よって、架橋したアルコキシ変性ポリシロキサンと相互作用しているカーボンブラックの表面にある水酸基やカルボキシル基のみならず、相互作用していないカーボンブラックの表面にある水酸基やカルボキシル基とも相互作用する。そのため、カーボンブラックの移動を抑制する効果が非常に高くなる。さらに一定の分子量を有するアルコキシ変性シリコーンオイルが複数のカーボンブラックを相互作用することでカーボンブラック相互の距離が一定に保たれ、凝集を起こしにくくなる効果がある。従って、本発明において、アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、アルコキシ変性シリコーンオイルとを含有する弾性層を現像ローラとして用いることにより、前述のような作用が相乗的に働き、ゴム中のカーボンブラックの移動を抑制する。よって、現像ローラの抵抗値上昇を低減でき、プリンタ内で現像ローラとして長期間使用しても、プリンタ使用開始時と同様にネガゴースト性能が良好である。
【0012】
架橋したアルコキシ変性ポリシロキサンにおいて、式1の-ORで表されるアルコキシ基のRの炭素数は1以上5以下であることが好ましく、炭素数が1または2であることがより好ましい。Rの炭素数を上記範囲内とすることにより、Rが立体的に大きくなり過ぎることがなく、立体障害によりアルコキシ基の酸素原子とカーボンブラック表面にある水酸基やカルボキシル基との相互作用が阻害されることを抑えられる。その結果、カーボンブラックのより確実な固定化を図ることができ、現像ローラの経時的な抵抗上昇をよりよく抑制することができる。同様の理由により、アルコキシ変性シリコーンオイルにおいても、アルコキシ基の炭素数は1以上5以下、特には、炭素数が1〜2であることが好ましい。
【0013】
アルコキシ変性シリコーンオイルの重量平均分子量が3000以上20000以下であることが好ましく、より好ましい範囲は4000以上15000以下である。アルコキシ変性シリコーンオイルの重量平均分子量を上記範囲内とした場合、カーボンブラックを固定化がより確実なものとなる。さらに感光ドラムやトナー規制部材との長期圧接時にも、表面へのブリードが生じにくい。
【0014】
アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させたシリコーンゴムは、下記式1(R、R、R、Rは炭素数1〜5である炭化水素で同一でも可)で示される構造を有し、かつl、mがl/m≦120であることが好ましい。l/mが120以下とすることで、弾性層中における、カーボンブラック粒子と相互作用するアルコキシ基の数が確保され、カーボンブラックの固定化効果を、より確実に発現させ得る。なお、l、mの値は弾性層を切り出し、13CのNMRを測定し、得られたピークの面積比より求めた。
【0015】
【化1】

【0016】
アルコキシ変性シリコーンオイルの含有量の目安としては、弾性層からのアルコキシ変性シリコーンオイルのブリード抑制とを考慮して、弾性層の質量に対して0.5質量%以上、6.0質量%以下、特には、1.0質量%以上、5.0質量%以下とすることが好ましい。
【0017】
本発明におけるアルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムは、分子内にアルコキシ基とアルケニル基を分子中に持つポリシロキサンと、分子中にSiH基を持つポリシロキサンとの付加反応により得ることができる。
アルコキシ基とアルケニル基を分子中にもつポリシロキサンは分子中に少なくともアルコキシ基を2個以上持ち、さらに分子中に少なくともアルケニル基を2個以上持つことが好ましい。また、アルコキシ基とアルケニル基を分子内に持つポリシロキサンとして、両末端ジアルキルアルケニルシロキシ−アルキルアルコキシシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体や両末端ジアルキルアルコキシシロキシ−アルケニルアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ−アルコキシアルキルシロキサン−アルケニルアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体、両末端ジアルキルアルコキシシロキシ−アルキルアルコキシシロキサン−アルケニルアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体等用いることができる。
【0018】
アルコキシ基とアルケニル基を分子中に持つポリシロキサンの分子構造としては直鎖状、分岐状のものなど特に制限することなく使用することができる。
アルコキシ基とアルケニル基を分子中に持つポリシロキサンの重量平均分子量は500〜1000000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が1種類のポリシロキサンまたは異なる重量平均分子量を持つ複数種類のポリシロキサンを混合したものでも良い。
SiH基を持つポリシロキサンは分子中にSiH基を2個以上もつことが好ましい。SiH基を持つポリシロキサンとして、両末端トリアルキルシロキシ−アルキルハイドロジェンシロキサン、両末端トリアルキルシロキシ−アルキルハイドロジェンシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体、両末端ジアルキルハイドロジェンシロキシ−アルキルハイドロジェンシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体等用いることができる。
【0019】
SiH基を持つポリシロキサンの分子構造としては直鎖状、分岐状、環状のものなど特に制限することなく使用することができる。
SiH基を持つポリシロキサンの重量平均分子量は300〜100000の範囲にあることが好ましい。また、重量平均分子量が1種類のポリシロキサンまたは異なる重量平均分子量を持つ複数種類のポリシロキサンを混合したものでも良い。
【0020】
SiH基を持つポリシロキサンの配合量はSiH基のモル比とアルコキシ基とアルケニル基を分子中に持つポリシロキサンのアルケニル基のモル比の関係が(SiH基のモル比)/(アルケニル基のモル比)=0.8〜2.5となるようにすることが好ましい。
アルコキシ変性シリコーンオイルとして、両末端ジアルキルアルコキシシロキシ−ジアルキルシロキサンや両末端ジアルキルアルコキシシロキシ−アルキルアルコキシシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体、両末端トリアルキルシロキシ−アルキルアルコキシシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体等を用いることができる。なお、ケイ素原子と結合するアルコキシ基は分子中に少なくとも2個以上もつことが好ましい。
【0021】
アルコキシ変性シリコーンオイルの分子構造として直鎖状、分岐状のものなど特に制限することなく使用することができる。
弾性層中にアルコキシ変性シリコーンオイルを存在させる方法として、分子中にアルコキシ基とアルキル基以外の官能基を持たないポリシロキサンを混合する方法や、アルコキシ基とアルケニル基を分子中に持つポリシロキサンを、SiH基を持つポリシロキサンに対して過剰に添加し、未反応成分としてアルコキシ変性シリコーンオイルをシリコーンゴム成分中に残す方法等が挙げられる。
【0022】
アルケニル基を分子中に持つポリシロキサンを必要に応じて使用することができる。分子中に少なくともアルケニル基2個以上持つことが好ましい。また、ケイ素原子と結合するアルケニル基を持つポリシロキサンとして、両末端ジアルキルアルケニルシロキシ−ジアルキルシロキサンや両末端トリメチルシロキシ−アルケニルアルキルシロキサン−ジアルキルシロキサン共重合体等を用いることができる。
アルケニル基を分子中に持つポリシロキサンの分子構造としては直鎖状、分岐状のものなど特に制限することなく使用することができる。
アルケニル基を分子中に持つポリシロキサンの重量平均分子量の目安としては、500〜2000000の範囲である。また、重量平均分子量が1種類のポリシロキサンまたは複数の種類のポリシロキサンを混合したものでも良い。
【0023】
弾性層に配合するカーボンブラックとして、特に制限することなく種々のものを使用することができる。例えば導電性の高いアセチレンブラックや、ファーネスブラックとしてSAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF等が挙げられる。なお添加する量は弾性層に対して、1質量%以上12質量%以下とすることが好ましく、より好ましい範囲は2質量%以上10質量%以下である。
【0024】
必要に応じて他の導電剤をカーボンブラックと併せて使用することができる。例えば、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体などを各種導電化処理した金属酸化物が挙げられる。なお、添加する量は弾性層の質量に対して、2質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、より好ましい範囲は3質量%以上8質量%以下である。
【0025】
その他各種添加剤として公知のものを使用することができる。例えば親水性シリカ、疎水性シリカ、石英、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の補強剤、伝熱向上剤等を必要に応じて添加してもよい。
本発明の現像ローラを製造するために、軸芯体の上に弾性層を設ける方法として、公知の方法を用いることができる。例えば、軸芯体と弾性層用の材料を押出して成型する方法や、材料が液状であれば、円筒状のパイプとパイプ両端に配設された軸芯体を保持するための駒を配設した金型に注入し、加熱硬化する方法等が挙げられる。
なお、硬化するための加熱条件は材料の硬化速度に合わせて選択することができる。また、低分子成分の除去や反応を完結させるために、一度加熱硬化した後、さらに加熱することもできる。加熱条件としては170℃〜230℃の温度で30分〜8時間加熱することが好ましい。
【0026】
現像ローラの軸芯体は、導電性部材の電極および支持する部材として機能するものであれば本発明に適用できる。その材質として、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、鉄の如き金属または合金、導電性合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。これらの材質にクロムやニッケルで鍍金(めっき)処理を施した物でも良い。なお、軸芯体とその周面に形成される弾性層を接着するために、プライマーを軸芯体に塗布することができる。通常使用されているプライマーとして、例えばシランカップリング系プライマーが挙げられる。
【0027】
本発明の現像ローラにおいては弾性層の周面上に、現像ローラ表面に凹凸を設ける等の目的で、表面層を設けてもよい。
表面層として用いる樹脂は、硬化する前の状態で溶剤に可溶なものであれば、特に制限されること無く適宜用いることができる。具体的には、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
表面層には樹脂にカーボンブラックを添加したものを用いることができる。例えば、ケッチェンブラックEC300JやケッチェンブラックEC600JD(ライオン社製)の様な高い導電性をもつカーボンブラックや、中程度の導電性をもつゴム用カーボンブラック或いは塗料用のカーボンブラックが挙げられる。分散性と導電性の制御の観点から塗料用カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの配合量は樹脂成分に対して3質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
表面層は前記樹脂とカーボンブラックと溶剤を混合、分散した塗工液を弾性層に塗工することによって得られる。
塗工液に用いる溶剤としては、表面層として用いる樹脂が溶解するという条件内で適宜使用することができる。具体的には溶剤として以下のものが挙げられる。メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンに代表されるケトン類。ヘキサン、トルエン等に代表される炭化水素類。メタノール、イソプロパノールに代表されるアルコール類。他エステル類。水。特に好ましい溶剤は樹脂の溶解性、沸点からメチルエチルケトン(以下、MEKと表す)、又はメチルイソブチルケトンである。表面層の厚みの目安としては、4μm以上50μm以下が好ましく、特に5μm以上45μm以下が好ましい。
【0030】
本発明に用いられる電子写真装置の一例を図1に示す。感光ドラム2は、所定のプロセススピードで回転する。感光ドラム2は所定のプロセススピードで回転する工程の際に、所定の帯電バイアスを持つ帯電ローラ9によって、感光ドラムの表面が一定の電位になるよう帯電される。さらに、レーザー光21により、画像露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて感光ドラム2の表面に目的とする静電潜像が形成される。
現像ローラ1によって感光ドラム2の静電潜像を現像してトナー画像を形成する。感光ドラム2と搬送ベルト23が当接している転写部には、給紙ローラ22により、所定のタイミングで紙(記録媒体24)が搬送される。そして、搬送ベルト23に対してバイアス電源25及び転写ローラ26を用いて転写バイアスが印加され、感光ドラム2の表面のトナー画像が、紙に転写される。
【0031】
トナー画像が転写された紙は、感光ドラム2の表面から分離されて定着装置31へ移動し、定着装置31によってトナー画像が紙に定着され、定着画像を有する紙は定着装置31から排出される。また、一方で、トナー画像を転写した後の感光ドラム2の表面には、転写されなかったトナーが残る場合がある。転写されずに残ったトナーはクリーニングブレード33により感光ドラム2の表面から除去される。
【実施例】
【0032】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
・現像ローラの抵抗値と通電による抵抗値変化の評価方法
現像ローラの抵抗値を以下に示す測定方法と抵抗値の算出方法により求めた。現像ローラ抵抗値の測定機の概略図を図4に示す。現像ローラ1をアルミ製ドラム35に圧接し、現像ローラ1の軸芯体の両端に500gfの荷重をかけ、アルミニウム製のドラム35を現像ローラ1の回転数が60rpmになるように回転させた。次に、現像ローラ1の軸芯体に電圧100Vを印加した。ドラム35はR(Ω)の抵抗値を有する基準抵抗37を通じて接地されており、基準抵抗の両端の電位差を電圧計38を用いて毎秒135回の速度でサンプリングした。なお、基準抵抗37の抵抗は現像ローラ1の抵抗値より十分低い。現像ローラ1を5回転させたところまで測定し、5周分のデータの相加平均値を求めた。求めた値をX(V)とする。
電流値I(A)=X(V)/R(Ω)
よって、初期の現像ローラの抵抗値Z(Ω)を以下のように計算した。
Z(Ω)=100(V)/I(A)=100(V)/X(V)×R(Ω)
【0033】
次に、現像ローラ1に長時間電荷をかける試験を行った。現像ローラ1の抵抗値の測定機に現像ローラ1を組み、現像ローラ1の軸芯体の両端に500gfの荷重をかけ、ドラム35を現像ローラ1の回転数が60rpmになるように回転させた。この状態で23℃の温度下で、100時間、現像ローラの軸芯体に電流値が100μAとなるような電荷をかけた。その後、先の現像ローラ1の抵抗値測定と同様に、基準抵抗の両端の電位差を毎秒135回の速度でサンプリングした。現像ローラ1を5回転させたところまで測定し、5周分のデータの相加平均値を求めた。求めた値をX’(V)とし、さらに通電後の現像ローラの抵抗値Z’(Ω)を求めた。求めた初期の抵抗値Z(Ω)と通電後のZ’(Ω)よりZ’(Ω)/Z(Ω)の値を求め、この値を現像ローラの抵抗値変化とし、以下のように評価した。
【0034】
A:Z’(Ω)/Z(Ω)≦3.0の場合
B:3.0<Z’(Ω)/Z(Ω)≦6.0の場合
C:6.0<Z’(Ω)/Z(Ω)≦10.0の場合
D:10.0<Z’(Ω)/Z(Ω)の場合
なお、現像ローラに電荷を100時間かけた後の評価は、A4サイズで20枚/分の印刷能力を持つ実機で20000枚出力した後の評価と同等である。
【0035】
・アルコキシ変性シリコーンオイルの重量平均分子量と含有量の求め方
弾性層を切り出し、十分な量のトルエンに浸漬し、23℃の温度下で72時間放置した。弾性層を浸漬したトルエンからエバポレータによりトルエンを除去し、残渣をゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと表す)を用いて分取した。さらに核磁気共鳴スペクトル(以下、NMRと表す)よりアルコキシ基を示すピークが確認できる分取物についてスチレン換算により重量平均分子量を求めた。また、アルコキシ基を示すピークが確認できる分取物の質量を測定し、以下の式よりアルコキシ変性シリコーンオイルの含有量(%)を求めた。
式:アルコキシ変性シリコーンオイルの含有量(%)=(アルコキシ基を示すピークが確認できる分取物の質量)/(切り出した弾性層の質量)×100
【0036】
〔実施例1〕
SUS304製の直径8mmの軸芯体にシランカップリング系プライマー:DY35−051(商品名、東レ・ダウコーニング社)を塗布後、温度170℃で、20分間焼付けした。次に、内径16mmの円筒状のパイプと、その両端に、軸芯体を固定するための駒と軸芯体を組み、一端の駒から下記の内容で構成される材料を分散させた弾性層形成用の液状材料を注入し、130℃の温度で、20分間加熱した。冷却後、金型から脱型することにより、軸芯体の周りに厚さ4.0mmの一次硬化弾性ローラ1を設けた。
【0037】
弾性層を構成する材料
・式2で示される平均分子量が8000でl’/m’が50であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン 83.6質量部
【0038】
【化2】

・式3で示されるSiH基を持つポリシロキサン 8.4質量部
(SiH基のモル数/ビニル基のモル数=2.0となる量)
【0039】
【化3】

・式4で示される重量平均分子量が10000であるメトキシ変性シリコーンオイル
3質量部
【0040】
【化4】

・カーボンブラック:HS−100(商品名、電気化学工業社)
5質量部
先の一次硬化弾性ローラ1を温度200℃で、5時間オーブンで加熱し、弾性ローラを得た。
【0041】
次に弾性層ローラの周面上に以下のようにして表面層を設けた。すなわち、
・ポリオール:N5120(商品名、日本ポリウレタン) 87質量部
・イソシアネート:L−55E(商品名、日本ポリウレタン社) 13質量部
・カーボンブラック:MA77(商品名、三菱化学社) 20質量部
・アクリル粒子:G−800透明(商品名、根上工業社) 20質量部
を秤量し、MEKを加え、よくかきまぜた混合物をオーバーフロー型循環式塗布装置に入れた。上記塗布装置に弾性層ローラを浸漬し、引き上げた後に、60分間風乾し、その後、160℃の温度で、5時間加熱し表面層を設けた。得られた現像ローラについて通電後の抵抗値変化の評価と、13CのNMR測定によるl/mの値と、トルエン抽出とGPCを用いた分取によるアルコキシ変性シリコーンオイルの含有量を求めた。結果を表1に示した。
【0042】
次に、抵抗値変化等の評価をしていない別の現像ローラをカラーレーザープリンタ:LBP5500(商品名、キヤノン社)用カートリッジに組み込み、同レーザープリンタを用いて、以下の画像パターンの画像を出力し、ゴースト性能の評価を行った。(以下、初期のゴースト評価と表す。)100時間かけて、20000枚画像を出力することにより、カートリッジ内のトナーが無くなるまでプリンタを稼動した。以下のゴースト性能評価用の画像パターンを出力し、ゴースト性能を評価した。(以下、耐久後のゴースト評価と表す。)
【0043】
・ゴースト性能を評価するための画像パターン
一枚の紙のなかで上部に一辺20mmの正方形状のベタ画像が6つ横に並んでおり、その下に全面ハーフトーンのパターンがある画像で、ハーフトーンの濃度がそれぞれ異なる2種類の画像パターンをそれぞれ1枚ずつ計2枚用いた。ハーフトーンは分光濃度計(X-Rite Inc製:504分光濃度計)を用いて測定した値が0.4と0.7を示す濃度のものを用いた。
【0044】
・ゴースト性能評価
A:耐久後のゴースト評価において、両方の画像パターンのハーフトーン上に一辺20mmの正方形状のネガゴーストが全く見られない場合
B:耐久後のゴースト評価において、片方の画像パターンのハーフトーン上に一辺20mmの正方形状のネガゴーストを少し確認できるが、実使用で問題が無いレベルの場合
C:耐久後のゴースト評価において、両方の画像パターンのハーフトーン上に一辺20mmの正方形状のネガゴーストを少し確認できるが、実使用で問題が無いレベルの場合
D:耐久後のゴースト評価において、両方のハーフトーン上に一辺20mmの正方形状のネガゴーストをはっきり確認でき実使用でも問題があるレベルの場合
【0045】
〔実施例2〕
重量平均分子量が15000でl’/m’が40であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が8000であるメトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
〔実施例3〕
重量平均分子量が15000でl’/m’が40であるエトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、エトキシ変性シリコーンオイル用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0046】
〔実施例4〕
エトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が8000であるエトキシ変性シリコーンオイル用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
〔実施例5〕
l’/m’が25であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と式5で示される重量平均分子量が8000であるビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%とエトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0047】
【化5】

【0048】
〔実施例6〕
平均分子量が15000でl’/m’が20であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と、式5で示される重量平均分子量が15000であるビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と、重量平均分子量が8000であるエトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0049】
〔実施例7〕
平均分子量が15000でl’/m’が20であるエトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と式6で示される重量平均分子量が100000であるビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%を用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0050】
【化6】

【0051】
〔実施例8〕
l’/m’が25であるエトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と、式6で示される重量平均分子量が100000であるビニル基を持つポリシロキサン41.8質量%と、重量平均分子量が8000であるメトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
〔実施例9〕
平均分子量が15000であるi−ペントキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が8000のメトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0052】
〔実施例10〕
l’/m’が65であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が8000であるメトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
〔実施例11〕
l’/m’が65であるエトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が3000であるエトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0053】
〔実施例12〕
重量平均分子量が5000であるエトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンと、重量平均分子量が3000であるメトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
〔実施例13〕
l’/m’が40であるエトキシ基とビニル基を持つ式7で示されるポリシロキサンで重量平均分子量が1000と150000であるポリシロキサンと、重量平均分子量が3000であるエトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0054】
【化7】

【0055】
〔実施例14〕
エトキシ基とビニル基を持つ式8で示されるポリシロキサンと、重量平均分子量が2000であるエトキシ変性シリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0056】
【化8】

【0057】
〔実施例15〕
エトキシ基とビニル基を持つ式7で示されるポリシロキサンで重量平均分子量が8000と100000であるポリシロキサン及び式9で示されるSiH基含有環状ポリシロキサンを用いたことと、エトキシ変性シリコーンオイルを0.5質量%添加したこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0058】
【化9】

【0059】
〔実施例16〕
l’/m’が40であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンで重量平均分子量が5000と15000であるポリシロキサン及び式9で示されるSiH基含有環状ポリシロキサンを用いたことと、メトキシ変性シリコーンオイルを0.5質量%添加したこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
〔実施例17〕
エトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン及び式9で示されるSiH基含有環状ポリシロキサンを用いたことと、エトキシ変性シリコーンオイルを6質量%添加したこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0060】
〔実施例18〕
重量平均分子量が15000でl’/m’が40であるメトキシ基とビニル基を持つポリシロキサン及び式9で示されるSiH基含有環状ポリシロキサンを用いたことと、メトキシ変性シリコーンオイルを6質量%添加したこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表2に示した。
【0061】
〔比較例1〕
メトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンの替わりに式6で示される重量平均分子量が100000であるケイ素原子と結合するビニル基を持つポリシロキサンを用いたことと、アルコキシ変性シリコーンオイルを用いなかったこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
〔比較例2〕
メトキシ変性シリコーンオイルの替わりにジメチルシリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
【0062】
〔比較例3〕
メトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンの替わりに式6で示される重量平均分子量が100000であるビニル基を持つポリシロキサンを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
〔比較例4〕
メトキシ基とビニル基を持つポリシロキサンの替わりに式6で示される重量平均分子量が100000であるビニル基を持つポリシロキサンを用いたことと、アルコキシ変性シリコーンオイルの替わりにジメチルシリコーンオイルを用いたこと以外については実施例1と同様に行った。結果を表3に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
なお、比較例1、4の抵抗値の変化とネガゴースト性能は比較例2、3と比べて同じDランクであったが、明らかに劣っていた。
実施例1から実施例18において、弾性層は、アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、アルコキシ変性シリコーンオイルで構成されている。よって、現像ローラとして使用中、抵抗値の変化があまり見られなかった。一方、比較例1ではアルコキシ変性でないポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムで弾性層は構成されている。よって、現像ローラとして使用中に抵抗値が高くなり、ネガゴースト性能が悪化した。比較例2ではアルコキシ変性ではないシリコーンオイルを用いた。よって、現像ローラとして使用中、抵抗値が高くなり、ネガゴースト性能が悪化した。比較例3ではアルコキシ変性でないポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムを用いた。よって、現像ローラとして使用中に抵抗値が高くなり、ネガゴースト性能が悪化した。比較例4ではアルコキシ変性でないポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、アルコキシ変性ではないシリコーンオイルで弾性層は構成されている。よって、現像ローラとして使用中に抵抗値が高くなり、ネガゴースト性能が悪化した。
【符号の説明】
【0067】
1 現像ローラ
2 感光ドラム
3 ホッパー
4 トナー
5 攪拌翼
6 トナー供給ローラ
7 現像バイアス電源
8 トナー規制ブレード
9 帯電ローラ
10 現像装置
10a〜10d 現像装置(各色用)
21 レーザー光
22 給紙ローラ
23 搬送ベルト
24 記録媒体
25 バイアス電源
26 転写ローラ
27 駆動ローラ
28 従動ローラ
29 テンションローラ
30 吸着ローラ
31 定着装置
32 剥離装置
33 クリーニングブレード
34 廃トナー容器
35 アルミ製ドラム
36 樹脂製ドラム
37 基準抵抗
38 電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の外周に設けられた弾性層とを有する現像ローラであって、
該弾性層は、
アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムと、
アルコキシ変性シリコーンオイルと、
カーボンブラックとを含有していることを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記アルコキシ変性シリコーンオイルの重量平均分子量が3000以上、20000以下である請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記アルコキシ変性ポリシロキサンを架橋させてなるシリコーンゴムは、
下記式(1)で示される構造を有しており、かつl、mがl/m≦120である請求項1または2に記載の現像ローラ。
【化1】

(上記式(1)中、R、R、R、Rは炭素数1〜5である炭化水素であってそれぞれが同一でも異なっていても良い)。
【請求項4】
前記アルコキシ変性シリコーンオイルの含有量が弾性層の質量に対して1.0質量%以上、6.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の現像ローラ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150346(P2012−150346A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9887(P2011−9887)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】