説明

現像剤と画像形成方法

【課題】有機粒子を外添剤として用いながら、その変形を抑制し、長期に亘り安定な帯電性能を有する、転写性が劣化しないトナーを用いた現像剤と、それを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】静嵩密度1.1以上、2.0以下の樹脂被覆キャリアと有機粒子を外添したトナーを用いたことを特徴とする現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤とそれを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会全般の省エネルギー化、省資源化への対応の動きの中で、電子写真技術においては画像形成装置全体で消費される電力量と、廃棄物量を削減する必要性が高まってきている。
【0003】
上記の観点から、電子写真技術による画像形成装置を全体的に見た場合、定着装置で消費される電力量が大きく、この電力量の削減が省エネルギー化への対応策として大きな比重を占める。このためには、低温定着可能なトナーを用いることが有効であるが、この様なトナーは柔らかく外添剤などはトナー粒子内に埋没しやすく、広く用いられているシリカなどの無機粒子は硬くしかも比較的小粒径であるため、特にこの傾向が著しい。
【0004】
省資源化への対応としては現像剤を長寿命化することにより廃棄される現像剤の量を削減することが効果的であるが、トナー粒子内への埋没等は、現像剤の長寿命化にはマイナスの効果をもたらし、転写性を劣化させる。
【0005】
さらに近年、画像形成装置の高速化、特にカラー画像形成装置の高速化につれて現像器内の撹拌強度が高まり、現像剤が受ける撹拌によるストレスが大きくなった結果、トナーの劣化が促進され、トナーの破砕に伴う帯電量低下、外添剤の埋没が著しく発生するようになった。その結果、現像剤の長寿命化が急務となっている。
【0006】
この対策としては、キャリアの低比重化が進められ、磁性体分散型のキャリアなどが提唱されているが、衝撃による割れ、変形を生じやすいという問題を生じていた(例えば、特許文献1参照)。又、上記した如くトナー劣化の抑制や、帯電性能の安定化のため、有機粒子が外添剤として用いられている。しかし、有機粒子は無機粒子に比べて柔らかいため、現像器内のストレスにより変形することで、外添剤の効果が減少する。このため、有機粒子の変形による劣化を抑制する必要がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−248684号公報
【特許文献2】特開2008−225311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決する為に成された。
【0009】
即ち、本発明の目的は、有機粒子を外添剤として用いながら、その変形を抑制し、長期に亘り安定な帯電性能を有する、樹脂被覆キャリア(以下、単にキャリアということあり)と転写性が劣化しないトナーを用いた現像剤、及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成される。
【0011】
(1)
静嵩密度1.1以上、2.0以下の樹脂被覆キャリアと有機粒子を外添したトナーを用いたことを特徴とする現像剤。
【0012】
(2)
多孔質フェライトを芯材に用い、乾式コーティング法にて樹脂被覆キャリアを作製したことを特徴とする(1)記載の現像剤。
【0013】
(3)
前記有機粒子の強制撹拌試験後のSF−1の変形率が5%以上、30%以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の現像剤。
【0014】
(4)
(1)〜(3)のいずれか1項記載の現像剤を用いて行うことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、有機粒子を外添剤として用いながら、その変形を抑制し、長期に亘り安定な帯電性能を有する、樹脂被覆キャリアと転写性が劣化しないトナーを用いた現像剤、及びそれを用いた画像形成方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わる樹脂被覆キャリアの嵩密度測定方法を説明するための図。
【図2】本発明に係わる樹脂被覆キャリアの製造工程を模式的に説明する図。
【図3】乾式コーティング法に用いられる一例の高速撹拌混合機の概要構成図。
【図4】本発明の画像形成方法を説明するための画像形成装置の一例の構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明につきさらに説明する。
【0018】
通常有機粒子は現像剤の撹拌により、キャリアからストレスを受け変形する。この変形により、外添剤としての効果、すなわち流動性の向上、スペーサ効果による転写性の向上といった効果が失われてしまい、結果として転写性が悪化し、画像品質も低下する。
【0019】
又、通常使用される無機の外添剤や、変形しない外添剤は、それ自体が紙に定着されない。この外添剤が紙とトナー母体粒子との間に存在していると、紙とトナーとの接着面積が減少しトナーの定着性が悪くなる。この外添剤による定着性能への阻害を少なくし、低温定着化を図る必要がある。
【0020】
本発明は、キャリアを低比重化し現像器内でのトナーへのストレスを減らし、有機粒子の劣化を抑制することで、現像剤の長寿命化が可能になり転写性の悪化も防ぐことが出来る。
【0021】
しかし、キャリア嵩密度が1.1より小さい場合、キャリア自体の強度が低下し、キャリア破砕が起こる。また、嵩密度を下げるため磁性体量が減量してしまうため、キャリア1粒子当たりの磁化が減少する。これらからキャリア付着が起こりやすくなり画像欠陥を引き起こす。一方、キャリア嵩密度が2.0より大きい場合、低比重化によるストレスの減少が不十分であり、転写性を悪化させる。
【0022】
キャリア嵩密度が1.1〜2.0の低嵩密度キャリアでは、従来型のキャリアを用いると変形してしまうような柔らかい有機粒子を使用できる。これにより有機粒子外添剤による定着阻害をも抑制する。
【0023】
柔らかい粒子とは強制撹拌後のSF−1の変形率が5%以上のものを指す。特に変形率5%以上であれば、外添剤による定着の阻害は問題なく、低温定着性を確保できる。しかし、変形率が30%を超える場合、キャリアによるストレスを減らしても、低印字率モードなどトナーの入れ替えが少ない場合、外添剤が変形し、転写性が悪化してしまう可能性がある。
【0024】
〔有機粒子〕
次に、本発明に係るトナーに使用可能な有機粒子について説明する。
【0025】
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と着色剤を含有する着色粒子に、有機粒子を外添してなるものである。そして、本発明に使用可能な有機粒子は、その大きさが好ましくは個数平均粒径で50nm以上200nm以下、より好ましくは70nm以上100nm以下のものである。
【0026】
個数平均粒径が上記範囲の有機粒子を用いることにより、トナー同士の直接接触を回避するいわゆるスペーサ効果が適度に発現される様になる。その結果、シリカやチタニア等のトナーの流動性や帯電性を向上させるために添加された小粒径の外添剤がトナーに埋没することを防いでいる。また、有機粒子の個数平均粒径を上記範囲とすることにより、ストレスを受けても有機粒子はトナー表面に保持されるので、トナーの表面状態が安定して維持される。
【0027】
また、有機粒子がトナーの構成樹脂と同じ様な有機材料で形成されていることで、有機粒子の表面硬度がトナーと同等レベルとなり、トナーと有機粒子が受けるストレスの影響が同じ様なレベルになる(均一化する)ことで効果が発現されると考えられる。すなわち、トナーがストレスを受けたときに、外添剤にのみストレスの影響が強く加わることがなくなり、外添剤が変形しにくくなるものと考えられる。又、定着時にはトナー結着樹脂同様に、転写材上に定着される機能も有する。
【0028】
なお、本発明に使用される有機粒子の個数平均粒径は、具体的には下記の方法により測定される。すなわち、有機粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡にて30,000倍の倍率でトナーの写真撮影を行い、この写真画像をスキャナにより取り込んで、画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析を行って算出される。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する有機粒子を2値化処理し、100個の有機粒子について水平方向のフェレ径を算出して、その平均値を個数平均粒径としている。また、具体的な走査型電子顕微鏡としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等が挙げられる。
【0029】
また、本発明に係るトナーに使用される有機粒子は、強制撹拌試験前後における有機粒子の形状係数SF−1の変形率が5%以上、30%以下となるものである。ここで、有機粒子の形状係数SF−1とは、有機粒子の丸さの度合を示す指数であり、下記式で定義されるものである。前述の様に、形状係数SF−1は有機粒子の丸さの度合いを示すもので、SF−1の値が100の場合、その有機粒子の形状は真球となる。
【0030】
SF−1=〔{(有機粒子の最大径)/(有機粒子の投影面積)}×(π/4)〕
×100
なお、式中の「最大径」とは、有機粒子の平面上への投影像を2本の平行線で挟んだときに、平行線の間隔が最大となる有機粒子の幅をいうものである。
【0031】
有機粒子の形状係数SF−1は、上記有機粒子の個数平均粒径の測定と同様に、走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用いて算出することが可能である。すなわち、走査型電子顕微鏡により30,000倍の倍率でトナーの写真撮影を行い、この写真画像をスキャナにより取り込み、画像解析処理装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」で解析を行って算出する。画像解析処理装置による解析では、写真画像上のトナー表面に存在する有機粒子を2値化処理し、100個の有機粒子についてSF−1を算出して、その平均値を有機粒子の形状係数SF−1としている。また、具体的な走査型電子顕微鏡としては、たとえば、日立製作所(株)製のフィールドエミッション走査型電子顕微鏡「S−4500」等が挙げられる。
【0032】
本発明では、有機粒子の耐久性を、以下に示す手順で行われる強制撹拌処理前後での形状係数SF−1の変形率に基づいて評価している。有機粒子の耐久性を評価する強制撹拌試験の手順は以下のとおりである。なお、下記強制撹拌試験はシアン色トナー上の有機粒子について行ったものである。
(1)前述した走査型電子顕微鏡と画像解析処理装置を用い、3万倍の写真にて100個の有機粒子を測定し、強制撹拌処理前のシアントナー上の有機粒子の形状係数SF−1の平均値を測定する。
(2)フルカラー複合画像形成装置「bizhub PRO C500型(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」のシアントナー用現像装置を清掃し、排出した現像剤量を測定しておく。
(3)排出した現像剤を中性洗剤溶液になじませてシアントナーを除去し、キャリアのみ抽出して乾燥させておく。
(4)上記キャリアとトナー濃度が5%となる様にサンプルトナーを測定しておき、現像装置に充填しておく。
(5)上記フルカラー複合画像形成装置「bizhub PRO C500型」にて、トナー供給を行わない条件のもとで1000枚のプリントを行うことにより、現像剤の強制撹拌試験を行う。
(6)前述の走査型電子顕微鏡と画像解析装置を用いて、3万倍の写真にて100個の有機粒子を測定し、強制撹拌処理後のシアントナー上の有機粒子の形状係数SF−1の平均値を測定する。
【0033】
上記手順により、強制撹拌処理による有機粒子の形状変化を測定し、強制撹拌処理前後における形状係数SF−1の変形率を算出する。形状係数SF−1の変形率は以下の式より算出されるものである。
【0034】
形状係数SF−1の変形率(%)
=〔{(強制撹拌試験後のSF−1の平均値)−(強制撹拌試験前のSF−1の平均値)}/(強制撹拌試験前のSF−1の平均値)〕×100
なお、変形率の数値は小数点以下2桁目を四捨五入するものとする。
【0035】
形状係数SF−1の変形率は、たとえば、強制撹拌前後での変形率が0の場合は強制撹拌により有機粒子の形状に変化が起きなかった、すなわち、強制撹拌を行っても破砕が起きなかったことを意味するものである。
【0036】
本発明に使用される有機粒子は、前述した強制撹拌試験により変形率が5%以上、30%以下となるものが好ましい。変形率が30%以下とすることで、前述のスペーサ効果がより確実に発現され、また、変形した有機粒子がトナー表面を隠蔽してトナーの帯電性に影響を与える問題が確実に回避される。しかし、全く変形しないほど硬い有機粒子はトナーやキャリアの変形を引き起こし、却って好ましくないこともある。
【0037】
(樹脂材料)
次に、本発明に外添剤として使用可能な上記有機粒子を構成する樹脂材料について説明する。本発明に使用可能な上記有機粒子を構成する樹脂材料としては、たとえば、スチレン系重合体樹脂やその架橋樹脂、スチレンアクリル系共重合体樹脂やその架橋樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。上記有機粒子はこれらの樹脂を単独、あるいは、混合体で用いて形成することが可能である。
【0038】
次に、上記樹脂を構成する重合性単量体について具体例を挙げて説明する。なお、上記樹脂は、下記に示す重合性単量体を、1種類のみを使用して形成されるものであっても、また、複数種類の単量体を併用して形成される樹脂であってもよい。
【0039】
(1)スチレン系単量体
スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等、これらの中でもスチレンが好適に用いられる。
【0040】
(2)アクリル系単量体
メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート等のアルキルアクリレート、及び、アルキルメタクリレート
アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド等、これらの中でもメチルメタクリレートが特に好ましい。
【0041】
(3)架橋構造を形成することが可能な重合性単量体
ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレンオキシドジアクリレート、エチレンオキシドジメタクリレート、テトラエチレンオキシドジアクリレート、テトラエチレンオキシドジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンアクリレート、テトラメチロールプロパンメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート等、なお、これらの重合性単量体のうち、分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するものは単独で使用することが可能である。
【0042】
次に、有機粒子の作製方法と個数平均粒径の制御方法について説明する。
【0043】
本発明に使用可能な有機粒子は、公知の重合法により作製することが可能であり、上記の重合性単量体を用いて有機粒子を形成する場合、たとえば、公知の懸濁重合法や乳化重合法等のラジカル重合反応を用いた作製方法が代表的なものである。本発明では、通常個数平均粒径が50nm以上200nm以下の有機粒子を使用することが好ましく、乳化重合法はこの範囲の大きさの有機粒子を作製するのに好ましい作製方法といわれている。すなわち、乳化重合法では、以下に挙げる反応因子を制御することで、所望の大きさの有機粒子を作製することが可能なので好ましい。
【0044】
有機粒子の個数平均粒径を制御する具体的な方法としては、
(1)水系媒体中の界面活性剤濃度を制御する
(2)重合開始剤の使用量を制御する
(3)重合温度を制御する
といったものが挙げられ、これらの条件を適宜組み合わせることで、所望の個数平均粒径を有する有機粒子を作製することが可能である。
【0045】
たとえば、粒子径の大きな有機粒子を作製する場合、水系媒体の界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上の条件下でなるべく低めに設定し、重合開始剤の添加量を少なめにして、重合温度を低くする、といった方策をとる。
【0046】
〔キャリアの嵩密度〕
キャリア等の静嵩密度の値は、JIS−Z−2504に準じて、次のようにして求めることができる。
【0047】
即ち、図1に示すように、上端に直径が28mmの円形の開口1を有する容量25cmの円筒型の容器6を、水平面上に設置された容器台7上に配置し、この容器台7に設けられたスタンド4の漏斗保持部5により、下端に2.5mmの口径の排出口2を有する漏斗3を、円筒型の容器6の直上方に、開口1のレベルから排出口2までの高さhが25mmとなる位置に保持してなる装置を用い、特定の条件に従って乾燥させた試料を、開口1から溢れるまで、漏斗3の排出口2から排出し落下させて開口1から容器6内に流し込み、その後、当該容器6の開口1の面に沿って水平に試料を摺り切ることにより盛り上がった試料部分を除去し、その結果容器6内に充填された試料の質量を測定し、その測定値から、次の式により、試料の静嵩密度A(g/cm)を求める。
【0048】
A=〔容器内の試料の質量(g)〕/〔容器の容積(cm)〕
〔キャリアの製造方法〕
特に限定はなく、本発明の嵩密度を得られる方法であればよい。
【0049】
図2にその一例として、磁性芯材として多孔質フェライト粒子を用い、該多孔質フェライト粒子11と樹脂粒子13を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、多孔質フェライト粒子表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体14を作製する例を示す。このとき多孔質フェライト粒子表面にある細孔12の口部は静電的に凝集した樹脂粒子が、その入り口にブリッジを架けるように存在し塞ぐので、内部に樹脂粒子は入らない。この状態で該キャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌すると、樹脂被覆層15が形成される。この工程においても多孔質フェライト粒子の細孔の口部付近は基本的にもとの状態が保たれ、細孔部はブリッジ状になった樹脂層により塞がれた状態で、樹脂被覆キャリア16が出来あがると推察される。
【0050】
そのため、樹脂溶液を用いたコーティングにおいて著しい、細孔部にコーティング用樹脂が浸透し、嵩密度が大きくなる問題を解消できる。さらに、少ない樹脂量で磁性芯材の被覆ができるため、得られたキャリアは従来の湿式コーティングによるものと異なり、所謂樹脂充填型のキャリアではないので、大幅な低比重化を図ることができる。それゆえ現像器内での撹拌時等のストレスが減り、キャリアの耐久性が上がり、長期使用においてもキャリア付着による画像不良やトナー外添剤埋没による転写効率低下を起こさないと考えられる。
【0051】
(多孔質フェライト粒子)
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子(磁性芯材)の細孔径は0.2〜1.8μmが好ましい。多孔質フェライト粒子の細孔径が1.8μmを超えると、粒子の表面積に対して、樹脂が存在する面積が大きくなるため、内部に樹脂が入りやすくなるためと推察される。こうなると被覆用樹脂の損失が大きく、またキャリアの比重も大きくなりトナーとの混合性も悪くなる。また、細孔径が0.2μm以下であると、芯材の空隙率が小さくなり、十分な低比重化を図れなくなる。
【0052】
この多孔質フェライト粒子の細孔径の測定は、次のようにして行われる。
【0053】
水銀ポロシメーターPascal140とPascal240(ThermoFisher Scientific社製)を用いて測定する。
【0054】
ディラトメータはCD3P(粉体用)を使用し、サンプルは複数の穴を開けた市販のゼラチン製カプセルに入れて、ディラトメータ内に入れる。Pascal140で脱気後、水銀を充填し低圧領域(0〜400kPa)を測定し、1st Runとした。次に再び脱気と低圧領域(0〜400kPa)の測定を行い、2nd Runとした。2nd Runの後、ディラトメータと水銀とカプセルとサンプルを合わせた質量を測定した。
【0055】
次にPascal240で高圧領域(0.1MPa〜200MPa)を測定した。この高圧部の測定で得られた水銀圧入量をもって、多孔質フェライト粒子の細孔容積、細孔径及び細孔径分布を求めた。また、細孔径を求める際には水銀の表面張力を4.80mN/cm、接触角を141.3°として計算した。
【0056】
多孔質フェライト粒子の空隙率は、10〜60%が好ましく、より好ましくは20〜40%である。本発明でいう該粒子の空隙率とは、多孔質フェライト粒子断面の全面積に対する空隙部分の割合である。
【0057】
多孔質フェライト粒子の空隙率は、多孔質フェライト粒子の断面を金属顕微鏡、走査型顕微鏡等で撮影した後、得られた画像を画像解析ソフト(Image−Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて解析して求める。具体的には、該粒子の表面の凹凸を包絡する線で結んだ粒子面積(A)を測定し、次いで、その粒子画面に含まれる多孔質フェライト粒子の面積(B)を測定する。ここで、下記式(1)を用いて、空隙率を計算する。
【0058】
式(1)
空隙率(%)
=(包絡粒子面積(A)−多孔質フェライト粒子面積(B))/包絡粒子面積(A)
×100
この式(1)によって計算される空隙率は、多孔質フェライト粒子表面から連続する空隙と、多孔質フェライト粒子内部に独立して存在する空隙をあわせた空隙率となる。
【0059】
具体的には、多孔質フェライト粒子10個の中央付近の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像解析してその平均から空隙率を求める。
【0060】
又、空隙率測定に用いる多孔質フェライト粒子としては、現像剤より分離したキャリア2gとメチルエチルケトン15mlをウェーブロータで10分間撹拌し、被覆樹脂層及び注入樹脂の一部を除去したものを用いることとする。
【0061】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その平均粒径が好ましくは体積基準におけるメディアン径(D50)で15〜80μm、より好ましくは20〜60μmである。
【0062】
キャリアの体積基準におけるメディアン径(D50)は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定することができる。
【0063】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その電気抵抗が好ましくは10〜1012Ω・cm、より好ましくは10〜1011Ω・cmである。電気抵抗を上記範囲とすることで、作製したキャリアの電荷リークが発生しにくく、電気抵抗が高くなりすぎることもなく、高濃度の画像を得ることができ好ましい。
【0064】
本発明で用いられる磁性芯材(多孔質フェライト粒子)は、フェライトからなるものが望ましく、一般式(MO)(Fe(ここでyは30〜95mol%)で示されるものがさらに好ましい。ここでMはFe、Mn、Mg、Sr、Ca、Ti、Cu、Zn、Ni、Li、Al、Si、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0065】
ここで、MをFeとした場合は、鉄フェライト、すなわちマグネタイトを意味している。マグネタイトに比べて、フェライトは高次の酸化物であり、ストレスによって特性が変化しにくい。又、低比重化が図りやすい。Feが30mol%未満であると、所望の磁化を得ることが困難であり、キャリア付着が生じやすい。特に特定の金属酸化物を原料としたフェライトは、粒子間の組成ばらつきが少なく、所望の特性を得やすい。
【0066】
磁気特性を安定させる観点から、MはMn、Mg、Sr、Ca、Ti、Li、Al、Si、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、Mn、Mg、Sr、Ca、Li、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
【0067】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子の製造は、原材料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を加圧成型機等を用いてペレット化した後700〜1200℃の温度で仮焼成する。
【0068】
加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。仮焼成後さらにボールルミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、造粒し、酸素濃度を制御し、1000〜1500℃の温度で1〜24時間保持し、本焼成を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
【0069】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的且つ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。又使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0070】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法など用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0071】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300〜700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。酸化被膜の厚さを前記範囲とすることで、酸化被膜層の効果が得られ、高抵抗になりすぎず所望の特性を得やすく好ましい。又、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。
【0072】
上記のような、芯材の空隙率や連続空隙度、見掛け密度、真密度をコントロールする方法としては、配合する原料種、原料の粉砕度合い、仮焼の有無、仮焼温度、仮焼時間、スプレードライヤーによる造粒時のバインダー量、水分量、乾燥度合い、焼成方法、焼成温度、焼成時間、解砕方法、水素ガスによる還元等、様々な方法で行うことができる。これらのコントロール方法は特に限定されるものではないが、その一例を以下に示す。
【0073】
すなわち、配合する原料種として、水酸化物や炭酸化物を用いた方が、酸化物を用いた場合に比べて、空隙率及び連続空隙度が高くなりやすい。又、原料として重金属であるCu、Ni、Znの酸化物に比べて、Mn、Mg、Ca、Sr、Li、Ti、Al、Si、Zr、Bi等の酸化物を使用した方が、真密度や見掛け密度が低くなりやすい。
【0074】
又、仮焼成を行わない方が空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度は低くなり、仮焼成を行った場合でも、その温度が低い方が空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度は低くなりやすい。
【0075】
スプレードライヤーによる造粒においては、原料をスラリー化する際の水分量を多くした方が、空隙が多くなり、空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度が低くなりやすく、焼成時には温度を低くした方が、空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度が低くなりやすい。
【0076】
所望の空隙率を得るために、これらのコントロール方法を、単独もしくは組み合わせて使用する方ことができる。
【0077】
しかし、各コントロール因子が、各特性に与える影響度合いは様々であるため、それらを組み合わせて使用することにより、高空隙率の特性を持つフェライトからなる芯材を得ることができる。
【0078】
(被覆層形成用樹脂)
本発明のキャリアの被覆層形成に好適な樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体やスチレン−アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等である。なお、トナーのスペント化防止の点で特に好ましい樹脂は、ポリアクリレート樹脂あるいはスチレン−アクリル酸共重合体樹脂である。
【0079】
樹脂被覆層形成用樹脂粒子のガラス転移点は、60〜130℃、特に好ましくは、100〜120℃が好ましい。
【0080】
尚、上記樹脂のガラス転移点の測定には下記の方法を用いることができる。
【0081】
示差走査熱量計として例えば「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)などを用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定される。
【0082】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
【0083】
(樹脂被覆キャリア製造法)
前記した乾式コーティング法としては、例えばローターとライナーを有するハイブリタイザー(奈良機械社製)等を用いてもよいが、好ましくは図3に示す高速撹拌混合機が用いられる。
【0084】
図中111は本体上蓋で、該上蓋11には原料投入口112、投入弁113、フィルター114、点検口115が設けられている。
【0085】
原料投入口112より所定量の芯材粒子および樹脂粒子凝集体が投入され、投入された前記原料は、モーター122により駆動される水平方向回転体118により撹拌される。該回転体118はその中心部118dに対して互いに120°の角度間隔で配置された撹拌羽根118a、118b、118cが結合されていて、これらの羽根は底部110aの面に対して35°の角度で傾けて取付けられている。このため前記撹拌羽根118a、118b、118cを高速回転させると、前記原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下するが、途中垂直方向回転体119に衝突し、原料の撹拌が行われる前記高速撹拌混合機を用いて被覆層を形成する場合、芯材同士の衝突による破壊をより防止し、かつ均一で固着性に優れた被覆層を形成するため、次の(イ)、(ロ)、(ハ)、(二)の各工程が必要とされ、各工程の処理条件を以下のようにするのが好ましい。
(イ)予備混合工程:ジャケット117に10℃〜15℃の冷却水を通して撹拌羽根118a、118b、118cを1m/sec以下の周速で回転させ、容器110内の温度を樹脂粒子のTg以下、通常は50℃以下とし、投入された原料を1〜2分間撹拌混合する。
(ロ)中間体形成工程:ジャケット117に10℃〜15℃の冷却水を通して撹拌羽根118a、118b、118cを10m/sec以下の周速で回転させ、容器1110内の温度を樹脂粒子のTg以下、通常は50℃以下とし、投入された原料を10〜20分間撹拌混合する。
(ハ)成膜工程:(ロ)の混合工程と同じか、またはそれ以上の周速で前記撹拌羽根を回転し、ジャケット117に温水を通して、樹脂粒子のTg以上の温度に昇温し撹拌混合する。
(ニ)成膜後工程:ジャケット117に10〜15℃の冷水を通して冷却する。その間前記撹拌羽根の周速を成膜工程の場合の周速またはそれ以下にして撹拌冷却し、樹脂粒子のTg以下、通常は70℃以下になったら、得られたキャリアを排出弁121を開き取出し口120から排出する。
【0086】
〔静電潜像現像用トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法としては、特に限定はなく、粉砕法でも重合法でもよい。しかし、重合法の一種である乳化会合法によるトナー製法が好ましく用いられる。特に、ミニエマルジョン重合法により多段重合した樹脂粒子を、会合(凝集/融着)したトナー製法が好ましい。
【0087】
次に、ミニエマルジョン重合会合法による製造方法では、以下の工程を経て製造される。
【0088】
(1)離型剤をラジカル重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
(2)離型剤を溶解/分散させた重合性単量体溶液を水系媒体中で液滴化し、ミニエマルジョン重合して樹脂粒子の分散液を調製する重合工程
(3)水系媒体中で樹脂粒子を会合させて会合粒子を得る凝集・融着工程
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成して形状を調整しトナー母体粒子とする熟成工程
(5)トナー母体の分散液を冷却する冷却工程
(6)冷却されたトナー母体の分散液から当該トナー母体を固液分離し、当該トナー母体から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(7)洗浄処理されたトナー母体を乾燥する乾燥工程
(8)乾燥処理されたトナー母体に外添剤を添加する工程
〔トナー製造に使用される素材〕
(結着樹脂)
本発明のトナーを構成するトナー粒子が粉砕法、溶解懸濁法などによって製造される場合には、トナーを構成する結着樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフオン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
また、本発明のトナーを構成するトナー粒子が懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナーを構成する各樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレンスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
また、重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0091】
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0092】
(界面活性剤)
本発明のトナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂を得るために使用する界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。これらの界面活性剤はトナーを乳化重合法によって得る場合に乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0093】
(着色剤)
本発明のトナーを構成する着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。以下に、具体的な着色剤を示す。
【0094】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
【0095】
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0096】
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0097】
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0098】
以上の着色剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
【0100】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などが好ましく用いることができる。
【0101】
(離型剤)
特に限定はなく、パラフィンワックス、エステルワックス等公知のものを用いることが出来る。一例を挙げれば下記の構造を有するものがある。
【0102】
エステルワックス R−(OCO−R
(R、Rは炭化水素基、n=1〜4)
好ましくはnが2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。
【0103】
は炭素数1〜40、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜5であり、Rは炭素数1〜40、好ましくは16〜20、さらに好ましくは18〜26である。
【0104】
エステルワックスの添加量はトナー100質量部に対し1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部が特に好ましい。
【0105】
(荷電制御剤)
本発明のトナーを構成するトナー粒子中には、必要に応じて荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
【0106】
(トナー粒子の粒径)
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜8μmのものが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、上述したトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。
【0107】
個数平均粒径が3〜8μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。
【0108】
(外添剤)
本発明の外部添加剤を用いるが、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、公知の外添剤を更に添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0109】
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粒子を使用することが好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。また、無機微粒子としては数平均一次粒子径が5〜40nm程度のものを使用することができる。
【0110】
〔現像剤〕
本発明の現像剤は、キャリアとトナーを混合した2成分現像剤として通常使用される。キャリアとトナーの他に添加剤が加えられることもあるが、本発明においては、本発明に係わるキャリアと有機粒子を用いればその特に限定はない。キャリアとトナーの混合比は通常はトナーが現像剤全体の4〜16質量%を占めるが、その他は実質的にキャリアの質量で占められると考えてよい。
【0111】
〔画像形成方法〕
本発明の現像剤が用いられる電子写真画像形成方法は、公知のものでよく、特に画像形成方法に限定はない。以下に、画像形成方法、および画像形成装置の一例を説明する。図4は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0112】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜850nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを、像露光光源として用いるのが望ましい。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0113】
上記画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0114】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0115】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0116】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0117】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0118】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0119】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0120】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0121】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0122】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された画像支持体(定着された最終画像を担持する画像:例えば普通紙、透明シート等)としての画像支持体Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、画像支持体P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の画像支持体を総称して転写媒体と云う。
【0123】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0124】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0125】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0126】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0127】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0128】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット17は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0129】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0130】
次に、本発明の実施態様を示し本発明の構成と効果を具体的に説明するが、無論、本発明はこれらの構成に限定されるわけではない。
【0131】
〔キャリアの作製〕
(芯材1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0132】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。空隙率ならびに連続空隙度を調整するために、MnO原料としては炭酸マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを用いた。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、空隙率を高めにしつつ適度な流動性を得るために、直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。このスラリーに分散剤を適量添加し、又造粒される粒子の強度を確保し、空隙率ならびに連続空隙度を調整する目的で、バインダーとしてPVAを固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1150℃、酸素濃度0体積%で3.5時間保持し、本焼成を行った。
【0133】
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、芯材を得た。
【0134】
(芯材2の作製)
芯材1の作製で用いた炭酸マンガンの代わりに二酸化マンガンを用い、添加するバインダーの量を0.5質量%にし、電気炉にて、温度1200℃、酸素濃度1.5体積%で6時間保持し、本焼成を行った以外は、芯材1の作製と同様にして、「芯材2」を作製した。
【0135】
(芯材3の作製)
芯材1の作製で用いた炭酸マンガンの代わりに四酸化三マンガンを用い、電気炉にて、温度1100℃、酸素濃度0.5体積%で4時間保持し、本焼成を行った以外は、芯材3の作製と同様にして、「芯材3」を作製した。
【0136】
(芯材4の作製)
直径0.5cm径のジルコニアビーズに代えて、0.15mmのステンレスビーズを用い、添加する添加するバインダーの量を1.0質量%にし、電気炉にて、温度1100℃で本焼成を行った以外は、芯材1の作製と同様にして、「芯材4」を作製した。
【0137】
(芯材5の作製)
芯材1の作製の仮焼成温度を950℃から1100℃に変更、その後の粉砕時間を12時間、本焼成を1300℃にて2時間、酸素濃度2.5%で行った以外は、芯材1の作製と同様にして、「芯材5」を作製した。
【0138】
(芯材6の作製)
芯材1の作製の電気炉の温度条件を、1350℃にて6時間保持し、本焼成を行った以外は、芯材1の作製と同様にして、「芯材6」を作製した。
【0139】
(キャリア1の作製)
「芯材1」100質量部と、メタクリル酸エステル系樹脂よりなる被覆用微粒子(ガラス転移点:115℃、粒径(D50):100nm)5質量部とからなるキャリア原料を高速撹拌混合機における混合撹拌槽に投入し、予備混合工程として、周速1m/secで2分間低速混合・撹拌した。そして、キャリア中間体形成工程として、ジャケットに冷水を通過させ、40℃にて周速8m/secで20分間混合・撹拌し、キャリア中間体を形成した。その後、キャリア粒子形成工程として、ジャケットに蒸気を通過させ、キャリア中間体を120℃にて周速8m/secで30分間撹拌してキャリア1を得た。
【0140】
(キャリア2〜6の作製)
「芯材2〜6」を用い、キャリア1と同様の方法で、キャリア2〜6を得た。
【0141】
(キャリア7の作製)
トルエン1000質量部に、市販の熱可塑性アクリル樹脂「BR−52(三菱レイヨン(株)製)」5.5質量部を溶解させて「樹脂溶液」を作製した。
【0142】
「芯材2」100質量部を一軸式間接加熱型の乾燥機に投入し、温度を75℃に保持し、撹拌を行いながら前述の「樹脂溶液」全量を滴下させた。トルエンが十分に揮発したことを確認後、撹拌を行いながら前記乾燥機内を150℃まで昇温させて2時間保持し、その後、前記乾燥機より取り出し、凝集した粒子を解砕し、粒度調整を行ってキャリア7を作製した。
【0143】
(キャリア8の作製)
「芯材3」を用い、キャリア7と同様の方法で、キャリア8を得た。
【0144】
下記表1に前記した測定方法にて測ったキャリア1〜8の嵩密度を示す。
【0145】
【表1】

【0146】
〔外添する有機粒子〕
(有機粒子1の作製)
撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び、還流冷却器を備えたセパラブルフラスコ中に、イオン交換水828質量部を投入し、窒素ガス気流下、一定の撹拌状態の下で70℃に昇温し、30分経過後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.6質量部を添加した。
【0147】
次に、下記化合物を含有してなる「乳化分散液A」108質量部を、上記重合開始剤を添加した水溶液中に一括添加した後、重合反応系の温度を70℃に維持した状態で約3時間の重合反応を行った。なお、下記化合物を含有してなる乳化分散液は、ホモジナイザを用いて作製した。
【0148】
イオン交換水 54質量部
テトラメチロールプロパントリアクリレート(25℃における水に対する溶解度が1質量%以下) 36質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの16質量%水溶液 8質量部
次に、ホモジナイザにより、下記化合物を乳化させて作製した「乳化分散液B」252質量部を、滴下ロートより滴下速度1g/分で、上記重合反応系に、約4時間かけて滴下した。
【0149】
イオン交換水 126質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における水に対する溶解度が1質量%以下) 69質量部
エチレングリコールジメタクリレート 28質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの16質量%水溶液 15質量部
上記乳化分散液の滴下終了後、更に2時間重合反応を継続して、架橋樹脂微粒子エマルジョンを作製した。上記架橋樹脂微粒子エマルジョン中の架橋樹脂微粒子の個数平均粒径を測定したところ100nmであった。
【0150】
次に、凍結乾燥機を用いて上記で得られた架橋樹脂微粒子エマルジョンを凍結乾燥し、架橋樹脂微粒子からなる白色粉末状物を得た。これを「有機粒子1」とする。
【0151】
(有機粒子2の作製)
撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び、還流冷却器を備えたセパラブルフラスコ中に、イオン交換水300質量部とヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド7質量部を添加し、窒素ガス気流下、一定の撹拌状態の下で75℃に昇温した。この溶液中に、2,2−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)1質量部の酢酸100%中和水溶液を10分かけて滴下し、さらに5分間のエイジング処理を行った。
【0152】
次に、メチルメタクリレート10質量部を5分間かけて滴下した後、さらに5分間のエイジング処理を行って重合反応を進行させた。
【0153】
次に、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド15質量部とイオン交換水270質量部とを混合してなる溶液中に、下記化合物を添加、撹拌して作製した「乳化分散液C」を上記重合反応系に40分かけて滴下した。なお、下記化合物を含有してなる「乳化分散液C」は、ホモジナイザを用いて作製した。
【0154】
メチルメタクリレート 10質量部
スチレン 30質量部
n−ブチルメタクリレート 25質量部
グリシジルメタクリレート 5質量部
ネオペンチルグリコールジメタクリレート 30質量部
上記「乳化分散液C」を滴下後、さらに、40分間重合反応を継続し、その後、冷却し、「有機粒子1」の作製時と同様の処理を行って、架橋樹脂微粒子エマルジョンを作製した。上記架橋樹脂微粒子エマルジョン中の架橋樹脂微粒子の個数平均粒径を測定したところ110nmであった。
【0155】
次に、凍結乾燥機を用いて上記で得られた架橋樹脂微粒子エマルジョンを凍結乾燥し、架橋樹脂微粒子からなる白色粉末状物を得た。これを「有機粒子2」とする。
【0156】
(有機粒子3の作製)
上記「有機粒子2」の作製において、「乳化分散液C」中の「ネオペンチルグリコールジメタクリレート」の添加量を15質量部に変更した。それ以外は、同様の手順として個数平均粒径が100nmの「有機粒子3」を作製した。
【0157】
(有機粒子4の作製)
上記「有機粒子2」の作製において、「乳化分散液C」中の「ネオペンチルグリコールジメタクリレート」の添加量を10質量部に変更した。それ以外は、同様の手順として個数平均粒径が100nmの「有機粒子4」を作製した。
【0158】
(有機粒子5の作製)
上記「有機粒子1」の作製において、「乳化分散液B」中の「トリメチロールプロパントリアクリレート」の添加量を72質量部、「エチレングリコールジメタクリレート」の添加量を8質量部に変更した。それ以外は同様の手順により、個数平均粒径が90nmの「有機粒子5」を作製した。
【0159】
下記表2に、前記した方法で測定した有機粒子1〜5の変形率を示す。
【0160】
【表2】

【0161】
〔トナーの作製〕
以下の方法で、トナーを作製した。
【0162】
(コア用樹脂粒子の作製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器中に、下記化合物を投入混合して混合液を作製した。
【0163】
スチレン 110.9質量部
n−ブチルアクリレート 52.8質量部
メタクリル酸 12.3質量部
当該混合液に、
パラフィンワックス「HNP−57(日本精鑞社製)」 93.8質量部
を添加した後、80℃に加温して溶解し、重合性単量体溶液を作製した。
【0164】
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.9質量部をイオン交換水1340質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。当該界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、上記重合性単量体溶液を投入し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」により、上記重合性単量体溶液を2時間混合分散させた。そして、D50が245nmの乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。
【0165】
次いで、イオン交換水1460質量部を添加した後、重合開始剤(過硫酸カリウム)6質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた開始剤溶液と、n−オクチルメルカプタン1.8質量部とを添加し、温度を80℃とした。この系を80℃にて3時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い樹脂粒子を作製した。これを「樹脂粒子C」とする。
【0166】
(2)第2段重合(外層の形成)
上記「樹脂粒子C」に、過硫酸カリウム5.1質量部をイオン交換水197質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に下記重合性単量体を混合してなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液は、
スチレン 282.2質量部
n−ブチルアクリレート 134.4質量部
メタクリル酸 31.4質量部
n−オクチルメルカプタン 4.93質量部
からなり、滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って第2段重合(外層の形成)を行った。その後、28℃まで冷却し、「コア用樹脂粒子」を得た。
【0167】
尚、形成された「コア用樹脂粒子」の重量平均分子量は21,300、D50は180nm、ガラス転移点は39℃であった。
【0168】
(シェル用樹脂粒子の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた反応容器にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0169】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記化合物を混合してなる重合性単量体混合溶液を3時間かけて滴下した。尚、重合性単量体混合溶液は、
スチレン 528質量部
n−ブチルアクリレート 176質量部
メタクリル酸 120質量部
n−オクチルメルカプタン 22質量部
からなる。当該重合性単量体混合液を滴下後、この系を80℃にて1時間にわたり加熱、撹拌して重合を行い樹脂粒子を調製した。これを「シェル用樹脂粒子」とする。
【0170】
尚、「シェル用樹脂粒子」の重量平均分子量は12,000、D50は120nm、ガラス転移点は53℃であった。
【0171】
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム10質量%の水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)100質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0172】
〔着色粒子の作製〕
(塩析/融着(会合・融着)工程)(コア部の形成)
420.7質量部(固形分換算)の「コア用樹脂粒子」とイオン交換水900質量部と「着色剤粒子分散液」200質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整した。
【0173】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、D50が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、更に熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部」を形成した。
【0174】
「コア部」の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.930であった。
【0175】
(シェル層の形成(シェリング操作))
次いで、65℃において「シェル用樹脂粒子」を50質量部(固形分換算)添加し、更に塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、「コア部」の表面に「シェル用樹脂粒子」の粒子を融着させた。その後、75℃で20分熟成処理を行い、シェル層を形成した。
【0176】
ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、「着色粒子を含有する水溶液」を得た。
【0177】
(洗浄、乾燥工程)
着色粒子を含有する水溶液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械社製)で固液分離し、着色粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで水洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「着色粒子」を作製した。得られた着色粒子Bkは、コア・シェル構造を有するD50が6.0μm、Tgが39.5℃の粒子であった。
【0178】
〔トナー1〜5の作製〕
上記で作製した「着色粒子」100質量部に対し、有機粒子1〜5を3.5質量%、疎水性チタニア微粒子(数平均一次粒子径=10nm)を0.6質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)を用いて、周速35m/secで25分間混合して、「トナー1〜5」を作製した。尚、トナーのガラス転移点は着色粒子と同じ39.5℃であった。
【0179】
【表3】

【0180】
〔現像剤の作製〕
前述した「キャリア1〜8」と上記「トナー1〜5」を下記の様に配合して二成分の「現像剤1〜12」を作製した。現像剤の作製は、配合比をキャリア100質量部に対してトナー8質量部とし、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)環境下で、Vブレンダを用いてトナーとキャリアを混合することにより行った。Vブレンダの回転数を20rpm、撹拌時間を20分にして処理を行い、さらに、混合物を目開き125μmのメッシュで篩い分けて作製した。
【0181】
〔性能評価〕
上記で作製した現像剤を下記の画像評価装置に順次装填し、プリントを行い以下の評価を行った。
【0182】
画像評価装置としては、デジタルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ製)を用いた。
【0183】
プリントは、上記で作製したトナーと現像剤を順番に装填し、20℃、50%RHの環境で20万枚行った。尚、プリントは、画素率が1%の画像(文字画像が7%、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)を用い、A4判上質紙(64g/m)に行った。尚、評価は◎、○を合格とする。
【0184】
(低温定着性)
低温定着性は、上記画像評価装置の加熱ベルトの表面温度(加熱ベルトの中心部で測定)を、90〜150℃の範囲で5℃刻みで変化させ、それぞれの表面温度の際に、搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のべた黒帯状画像を有するA4画像を縦送りで搬送定着した後に、搬送方向に対して垂直に5mm幅のべた黒帯状画像と20mm幅のハーフトーン画像を有するA4画像を横送りで搬送し、定着オフセットに起因する画像汚れが発生しない温度領域(非オフセット領域)により判定を行った。
【0185】
評価基準
◎:非オフセット領域の下限温度が110℃以下であり、且つ上限温度が150℃以上
○:非オフセット領域の下限温度が120℃以下であり、且つ上限温度が150℃未満
×:非オフセット領域の下限温度が125℃以上。
【0186】
(転写率)
初期と20万枚プリント終了後、画素濃度が1.30のソリッド画像(20mm×50mm)を形成し、下記式により転写率を求めて、評価を行った。
【0187】
転写率(%)=(転写材に転写されたトナーの質量/感光体上に現像されたトナーの質量)×100
評価基準
◎:転写率が、90%以上で良好
○:転写率が、80%以上で実用上問題ないレベル
×:転写率が、80%未満で実用上問題となるレベル
(キャリア付着)
上記の評価機で20万枚のプリント終了後、ベタ画像のプリントを行い、キャリア付着の評価を行った。
【0188】
ベタ画像上に見られた付着キャリア粒子の個数を、拡大鏡を使用して目視により測定し、以下の判定基準により判定を行った。
【0189】
◎:ベタ画像上にキャリア付着なし
○:ベタ画像上にキャリア付着が5個以内で実用上問題なし
×:ベタ画像上にキャリア付着が5個を超えて存在し、実用上問題有り。
【0190】
【表4】

【0191】
本発明内の現像剤1〜7はいずれの特性もよいが、本発明外の現像剤8〜12は少なくとも何れかの特性に問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0192】
11 多孔質フェライト粒子
12 細孔
13 樹脂粒子
14 キャリア中間体
15 樹脂被覆層
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静嵩密度1.1以上、2.0以下の樹脂被覆キャリアと有機粒子を外添したトナーを用いたことを特徴とする現像剤。
【請求項2】
多孔質フェライトを芯材に用い、乾式コーティング法にて樹脂被覆キャリアを作製したことを特徴とする請求項1記載の現像剤。
【請求項3】
前記有機粒子の強制撹拌試験後のSF−1の変形率が5%以上、30%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の現像剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の現像剤を用いて行うことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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