説明

現像剤供給装置

【課題】 現像剤を搬送する際の気流の発生状態を良好に制御することで、現像剤の現像剤担持体に向けての良好な搬送状態を形成すること。
【解決手段】 現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、ケーシングと、現像剤搬送手段と、整流部材と、を備えている。現像剤搬送手段は、現像剤収容部から現像剤担持面と最近接しつつ対向する担持位置に向かって現像剤を上方に搬送するように、ケーシングの内部に収容されている。整流部材は、ケーシング内に収容されていて、現像剤搬送手段による現像剤の上方への搬送の際に生じる気流の状態を調整すべく、現像剤搬送手段と離隔しつつ対向するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、供給対象としての感光体と対向配置された現像剤担持体(現像ローラ)と、この現像剤担持体に向けて現像剤を主走査方向と直交する方向に搬送する現像剤搬送手段と、を備えたものがある(例えば、特開2003−131490号公報、特開2011−64842号公報、等参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような構成の装置においては、前記現像剤担持体に向けて前記現像剤を搬送する際に、気流が発生する。かかる気流の発生状態によっては、前記現像剤の搬送状態が悪影響を受けるおそれがある。
【0004】
本発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、前記現像剤を搬送する際の気流の発生状態を良好に制御することで、前記現像剤の前記現像剤担持体に向けての良好な搬送状態を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の現像剤供給装置は、帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成されている。この現像剤供給装置は、現像剤担持部材と、ケーシングと、現像剤搬送手段と、を備えている。
【0006】
前記現像剤担持部材は、現像剤供給位置にて前記供給対象と最近接しつつ対向するように配置されている。この現像剤担持部材は、主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有している。そして、この現像剤担持部材は、回転駆動されることによる前記現像剤担持面の前記主走査方向と直交する方向への移動により、当該現像剤担持面上に担持された前記現像剤を前記現像剤供給位置に供給するように設けられている。
【0007】
前記ケーシングは、上部に開口部が形成された箱状部材であって、前記現像剤を収容するための空間である現像剤収容部を底部に備えている。このケーシングは、前記開口部にて前記現像剤担持部材と対向するように配置されている。
【0008】
前記現像剤搬送手段は、前記現像剤収容部から前記現像剤担持面と最近接しつつ対向する担持位置に向かって前記現像剤を上方に搬送するように、前記ケーシングの内部に収容されている。
【0009】
本発明の特徴は、前記現像剤供給装置が、さらに、整流部材を備えたことにある。この整流部材は、前記ケーシング内に収容されている。そして、この整流部材は、前記現像剤搬送手段による前記現像剤の上方への搬送の際に生じる気流の状態を調整すべく、前記現像剤搬送手段と離隔しつつ対向するように配置されている。
【0010】
特に、本発明においては、
前記整流部材は、
当該整流部材の上端における、当該整流部材と前記現像剤搬送手段との間隔をD1、
搬送中途位置(前記現像剤収容部に収容された前記現像剤の集合体である現像剤溜まりの上端と前記現像剤搬送手段の上端との中間の位置)における、当該整流部材と前記現像剤搬送手段との間隔をD2、
前記現像剤担持面と当該整流部材の前記上端との間隔をD3、
当該整流部材が設けられていない状態にて、気流速度が前記現像剤搬送手段の表面上における最大速度に対して10分の1となる位置と、前記表面と、の間隔をα、
とすると、
D1<α、D2≧α、D3≧D1
となるように配置されている。
【0011】
なお、前記整流部材は、ノズル形成部と、本体部と、接続部と、を備えていてもよい。前記ノズル形成部は、当該整流部材における前記上端を構成するように設けられている。具体的には、前記ノズル形成部は、前記現像剤搬送手段による前記現像剤の搬送の下流部と対向するように設けられている。前記本体部は、前記ノズル形成部の下方にて、上端部が前記ノズル形成部の下端部よりも前記現像剤搬送手段の前記表面から離隔するように設けられている。前記接続部は、前記ノズル形成部の前記下端部と前記本体部の前記上端部とを接続するように設けられている。
【0012】
前記現像剤供給装置には、さらに、撹拌部材と、補助整流部材と、が設けられていてもよい。前記撹拌部材は、前記現像剤を撹拌するように設けられた回転体であって、前記現像剤収容部内に収容されている。前記補助整流部材は、前記撹拌部材の回転軌跡に沿って設けられていて、当該撹拌部材と前記整流部材との間に配置されている。
【0013】
この場合、前記補助整流部材は、
当該補助整流部材と前記整流部材との間隔をD4とすると、
D4≧D1
となるように配置されている。
【発明の効果】
【0014】
上記構成においては、前記現像剤搬送手段により、前記現像剤が、前記ケーシングの底部の前記現像剤収容部から前記担持位置に向けて上方に搬送される。かかる搬送動作に伴って、前記ケーシング内には、気流が発生する。このとき、前記現像剤搬送手段の近傍においては、前記現像剤の搬送に伴って、主として当該現像剤の搬送方向に沿った上方向きの気流が発生する。
【0015】
ここで、本発明の現像剤供給装置においては、前記現像剤搬送手段と前記整流部材との間隔が上方に向かうと狭くなるように、当該整流部材が設けられている。これにより、前記搬送中途位置においては、前記現像剤搬送手段と前記整流部材との間に形成される気流の「流路」の幅が、前記現像剤の上方への搬送が良好に行われる程度に充分確保される。一方、前記整流部材の上端においては、前記「流路」の幅が絞られることで、前記下流部にて、前記現像剤の前記担持位置に向かう搬送を妨げるような気流の「乱れ」(例えば、前記現像剤が前記現像剤搬送手段の前記表面から不用意に離隔して行ったり局所的に上下循環したりするような状態を生ぜしめるような気流状態)の発生が、良好に抑制される。
【0016】
また、前記現像剤収容部内に前記撹拌部材が設けられている構成においては、前記補助整流部材が上述のように配置されることで、前記補助整流部材と前記整流部材との間における「流路」の幅が良好に確保され、以て前記搬送中途位置に向かう気流が良好に形成される。
【0017】
このように、本発明の現像剤供給装置によれば、前記現像剤を搬送する際の気流の発生状態を良好に制御することで、前記現像剤の前記現像剤担持体に向けての良好な搬送状態を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像形成装置であるレーザープリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示されているトナー供給装置を拡大した側断面図である。
【図3】図2に示されているトナー供給装置の一変形例の概略構成を示す側断面図である。
【図4】図2に示されているトナー供給装置の他の変形例の概略構成を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0020】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像形成装置としての、レーザープリンタ1の概略構成を示す側面図である。図1を参照すると、レーザープリンタ1は、用紙搬送機構2と、感光体ドラム3と、帯電器4と、スキャナーユニット5と、トナー供給装置6と、を備えている。
【0021】
レーザープリンタ1内に設けられた図示しない給紙トレイには、シート状の用紙Pが、積み重ねられた状態で収容されている。用紙搬送機構2は、上述の給紙トレイに収容された用紙Pを、所定の用紙搬送経路PPに沿って一枚ずつ搬送するように構成されている。
【0022】
感光体ドラム3の周面には、静電潜像担持面LSが形成されている。静電潜像担持面LSは、主走査方向(図中z軸方向:用紙幅方向あるいは単に幅方向とも称され得る)と平行な円柱面であって、電位分布による静電潜像が形成されるとともに当該静電潜像に対応した位置にてトナーT(図2参照)を担持するようになっている。感光体ドラム3は、主走査方向と平行な中心軸Cを中心として、所定方向(図中反時計回り)に回転駆動されることで、主走査方向と直交する副走査方向に沿って静電潜像担持面LSが移動するように構成されている。
【0023】
帯電器4は、静電潜像担持面LSを一様に正帯電させるために、静電潜像担持面LSと対向するように配置されている。スキャナーユニット5は、感光体ドラム3の回転によって副走査方向に沿って移動する静電潜像担持面LS(帯電器4によって一様に正帯電されている)上に、画像データに基づいて変調されたレーザービームLBをスキャン位置SPにて結像させつつ主走査方向に沿って走査することで、静電潜像担持面LS上に静電潜像を形成するように、構成及び配置されている。
【0024】
トナー供給装置6は、スキャン位置SPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側の現像位置DPにて、静電潜像担持面LSと対向するように、感光体ドラム3の下方に配置されている。トナー供給装置6は、現像位置DPにて、正帯電した状態のトナーT(図2参照)を下方から静電潜像担持面LSに供給するように構成されている。次に、レーザープリンタ1の各部の具体的な構成について、より詳細に説明する。
【0025】
用紙搬送機構2は、一対のレジストローラ21と、転写ローラ22と、を備えている。レジストローラ21は、用紙Pを所定のタイミングにて感光体ドラム3と転写ローラ22との間の転写位置TP(現像位置DPよりも感光体ドラム3の回転による静電潜像担持面LSの移動方向における下流側)に向けて送出するように構成されている。
【0026】
転写ローラ22は、静電潜像担持面LSと、転写位置TPにて、用紙搬送経路PP(用紙P)を挟んで対向するように配置されている。この転写ローラ22は、感光体ドラム3の回転方向と反対方向(図中時計回り)に回転駆動されるように構成されている。また、転写ローラ22は、静電潜像担持面LS上に付着したトナーT(図2参照)を用紙Pに転写させるための所定の転写バイアス電圧が感光体ドラム3との間に印加されるように、図示しない転写バイアス電源回路と電気的に接続されている。
【0027】
<<トナー供給装置の概略構成>>
図2は、図1に示されているトナー供給装置6を拡大した側断面図(主走査方向を法線とする平面による断面図)である。図2を参照すると、トナー供給装置6のケーシングをなすトナーボックス61は、側断面視にて上方に開口するように形成された箱状部材であって、フロントパネル61aと、下側リアパネル61bと、上側リアパネル61cと、フロント側底板61dと、リア側底板61eと、を備えている。このトナーボックス61における下側リアパネル61b、上側リアパネル61c、フロント側底板61d、及びリア側底板61eは、合成樹脂によって一体に形成されている。
【0028】
フロントパネル61aは、主走査方向及び上下方向(図中y軸方向:鉛直方向とも称され得る)と平行に配置された平板状の部材であって、水平面に対して直交するように立設されている。下側リアパネル61bは、フロントパネル61aと平行に配置された平板状の部材であって、水平面に対して直交するように立設されている。フロントパネル61a及び下側リアパネル61bは、それぞれの下端縁が同じ高さになるように、互いに対向して設けられている。
【0029】
上側リアパネル61cは、下側リアパネル61bの上端縁からフロントパネル61a側に向かって斜め上方に延出するように設けられている。そして、フロントパネル61aの上端縁と上側リアパネル61cの上端縁とによって、上方に開口する開口部61fが形成されている。
【0030】
フロント側底板61d及びリア側底板61eは、主走査方向と平行な中心軸線を有する半円筒状の部材であって、上方に開口するように設けられている。フロント側底板61dは、その一端がフロントパネル61aの下端縁と接続されていて、他端がリア側底板61eの一端と接続されている。リア側底板61eの他端は、下側リアパネル61bの下端縁と接続されている。
【0031】
フロント側底板61dの内側の空間には、粉末状のトナーTを収容するための空間であるメイントナー貯留部61gが形成されている。同様に、リア側底板61eの内側の空間には、トナーTを収容するための空間であるサブトナー貯留部61hが形成されている。なお、本実施形態においては、トナーTは、正帯電性、非磁性一成分の、黒色の乾式現像剤である。
【0032】
トナーボックス61は、開口部61fにて、本発明の現像剤担持部材としての現像ローラ62と対向するように配置されている。すなわち、現像ローラ62は、トナーボックス61の上端部にて、主走査方向と平行な軸を中心として回動可能に支持されている。
【0033】
現像ローラ62は、現像位置DPにて感光体ドラム3と所定間隔のギャップを隔てて最近接しつつ対向するように、メイントナー貯留部61gの真上に配置されている。この現像ローラ62は、主走査方向と平行な円柱面状の周面であるトナー担持面62aを有している。そして、この現像ローラ62は、回転駆動されることによるトナー担持面62aの主走査方向と直交する方向への移動により、トナー担持面62a上に担持されたトナーTを現像位置DPに供給するように設けられている。
【0034】
本実施形態においては、現像ローラ62は、現像位置DPにおいてトナー担持面62aの移動方向が静電潜像担持面LSの移動方向に沿った方向(略同一方向)となるように、感光体ドラム3と反対方向(図中時計回り)に回転駆動されるようになっている。すなわち、現像ローラ62は、上方から(感光体ドラム3側から)見た場合に、トナー担持面62aがフロントパネル61a側から出現して上側リアパネル61c側に向かうような方向に回転駆動されるようになっている。
【0035】
トナーボックス61の内部には、本発明の現像剤搬送手段としての搬送基板63が収容されている。具体的には、搬送基板63は、フロントパネル61a及びフロント側底板61dの内壁に固定されている。この搬送基板63は、その上端部にてトナー担持面62aと最近接しつつ対向するトナー担持位置TCPに向かって、トナーTをメイントナー貯留部61gから上方に搬送するように設けられている。この搬送基板63は、トナーTを、進行波状の電界によって搬送するように構成されている(かかる搬送基板63の構成は周知であるので、本明細書においては、その構成の詳細な説明は省略する。)。
【0036】
現像ローラ62と、上側リアパネル61cの上端と、の間には、トナー回収部64が配置されている。トナー回収部64は、現像位置DPを経てトナー担持面62a上に残留したトナーTをトナー担持面62aから剥離することで回収するように設けられている。具体的には、このトナー回収部64は、回収ローラ64aと、回収ブレード64bと、を備えている。
【0037】
回収ローラ64aは、主走査方向と平行な軸を中心として回転駆動可能なローラ状部材(回転体)であって、現像ローラ62と所定間隔のギャップを隔てて対向するように配置されている。回収ローラ64aと現像ローラ62との間には、トナー担持面62a上からトナーTを回収するための所定の回収電圧が印加されている。また、回収ローラ64aは、トナー担持面62aと最近接しつつ対向する位置にてトナー担持面62aと同一方向に周面が移動するように、現像ローラ62の回転方向と逆方向(図中反時計回り)に回転駆動されるようになっている。
【0038】
回収ブレード64bは、上側リアパネル61cの上端部に固定されている。この回収ブレード64bは、回収ローラ64aによってトナー担持面62a上から回収されたトナーTを、当該回収ローラ64aの周面から剥離して、下方のサブトナー貯留部61hに向けて落下させるように設けられている。
【0039】
<<整流部材>>
本発明の整流部材に相当する整流板65は、搬送基板63におけるフロントパネル61aに固定された部分と対向するように、トナーボックス61内に収容されている。この整流板65は、搬送基板63によるトナーTの上方への搬送の際に生じる気流の状態を調整すべく、搬送基板63と離隔しつつ対向するように配置されている。具体的には、本実施形態においては、整流板65は、ノズル形成部65aと、本体部65bと、接続部65cと、スカート部65dと、を備えている。
【0040】
ノズル形成部65aは、整流板65における上端を構成するように設けられている。具体的には、ノズル形成部65aは、フロントパネル61aと平行な平板状の部材であって、搬送基板63によるトナーTの搬送の下流部と対向するように配置されている。
【0041】
本体部65bは、ノズル形成部65aの下方にてフロントパネル61aと平行に配置された平板状の部材であって、その上端部がノズル形成部65aの下端部よりも搬送基板63の表面から離隔するように設けられている。具体的には、本体部65bは、搬送基板63おけるフロントパネル61aに固定された部分の略中央部分と対向するように配置されている。
【0042】
接続部65cは、ノズル形成部65aの下端部と本体部65bの上端部とを滑らかに接続するように設けられている。スカート部65dは、本体部65bの下端から、フロント側底板61dとリア側底板61eとの接続部に向けて、斜め下方に延出するように設けられている。スカート部65dの下端と、フロント側底板61dとリア側底板61eとの接続部と、の間には、トナーボックス61内の空間における整流板65よりも下側リアパネル61b側(図中右側)の部分から、同空間における整流板65よりもフロントパネル61a側(図中左側)の部分に向かって、空気が良好に流入し得るような充分なギャップが形成されている。
【0043】
本実施形態においては、整流板65は、以下のような位置関係となるように配置されている。
D1<α、D2≧α、D3≧D1 ・・・(1)
【0044】
上記の式(1)において、D1は、ノズル形成部65aと搬送基板63との間隔である。すなわち、D1は、整流板65の上端における、整流板65と搬送基板63との間隔である。また、D2は、本体部65bと搬送基板63との間隔である。すなわち、D2は、搬送中途位置における、整流板65と搬送基板63との間隔である。ここで、「搬送中途位置」とは、メイントナー貯留部61gに収容されたトナーTの集合体であるトナー溜まりの上端(図中「トナー貯留レベルTL」参照)と、搬送基板63の上端と、の中間の位置である。また、D3は、トナー担持面62aと整流板65の上端(ノズル形成部65aの上端)との間隔である。
【0045】
さらに、上記の式(1)におけるαは、整流板65が設けられていない状態にて、気流速度が搬送基板63の表面上における最大速度に対して10分の1となる位置と、前記表面と、の間隔である。かかるαの値は、計算機シミュレーションによって算出することが可能である。
【0046】
<実施形態の構成による作用・効果>
以下、本実施形態の構成による作用・効果について、各図面を参照しつつ説明する。なお、図2において、一点鎖線は気流を示し、破線はトナーTの移動状態を示すものとする。
【0047】
搬送基板63によるトナーTの電界搬送動作に伴って、トナーボックス61内には、気流が発生する。このとき、搬送基板63におけるフロントパネル61aに固定された部分(上述のトナー貯留レベルTLよりも上方に露出した部分)の近傍においては、トナーTの搬送に伴って、主としてトナーTの搬送方向に沿った上方向きの気流が発生する。
【0048】
ここで、上述のような本実施形態の構成においては、搬送基板63におけるフロントパネル61aに固定された部分と、整流板65と、の間隔が、上方に向かうと狭くなるように、整流板65が設けられている。すなわち、整流板65は、搬送基板63との間に、先絞り状のノズルを形成するように、構成及び配置されている。すると、図中一点鎖線で示されているような、整流板65の周りを循環するような気流が、トナーボックス61の内部にて発生する。
【0049】
かかる構成によれば、本体部65bと搬送基板63との間には、トナーTの上方への電界搬送が良好に行われる程度の、充分な気流の「流路」の幅が確保される(これに対し、本体部65bと搬送基板63との間隔が上述のαよりも小さくなると、本体部65bと搬送基板63との間の「流路」内に強いせん断力が発生するため、トナーTの上方への搬送力が大きく減殺されてしまう。)。
【0050】
また、かかる構成によれば、ノズル形成部65aと搬送基板63との間には、トナーTのトナー担持位置TCPに向かう搬送を妨げるような気流の「乱れ」の発生が、良好に抑制される(これに対し、ノズル形成部65aと搬送基板63との間隔が上述のα以上になると、トナーTが搬送基板63の表面から不用意に離隔したり、ノズル形成部65aと搬送基板63との間にてトナーTが局所的に上下循環したりすることで、トナーTがトナーボックス61内を浮遊するような状態を生ぜしめるような、気流状態の「乱れ」が発生してしまう。このようにトナーTの浮遊が発生すると、形成画像に乱れが生じる等の問題が生じてしまう。)。
【0051】
さらに、本体部65bと搬送基板63との間の空間に向かう気流がトナー分離部TSAに干渉しないように、スカート部65dを設けることで、トナーボックス61内での不良帯電(未帯電等)のトナーTの浮遊の発生が、良好に抑制される。ここで、「トナー分離部TSA」とは、搬送基板63によるトナーTの電界搬送の起動部であるトナー貯留レベルTLの近傍から、そのやや上方にわたる領域である。このトナー分離部TSAにおいては、不良帯電のトナーTが、電界搬送から離脱して下方のメイントナー貯留部61gに向かって落下する。
【0052】
このように、本実施形態の構成によれば、トナーTを搬送する際の気流の発生状態を良好に制御することで、トナーTのトナー担持位置TCPに向けての良好な搬送状態を形成することが可能になる。
【0053】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を、単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0054】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部材の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が援用され得るものとする。
【0055】
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたものに限定されるものではない。また、複数の変形例及び実施形態が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0056】
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態及び下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、発明の保護及び利用を目的とする特許法の目的に反し、許されない。
【0057】
本発明の適用対象は、単色のレーザープリンタに限定されない。例えば、本発明は、カラーのレーザープリンタや、単色及びカラーの複写機等の、いわゆる電子写真方式の画像形成装置に対して、好適に適用され得る。このとき、感光体の形状は、上述の実施形態のようなドラム状でなくてもよい。例えば、感光体の形状は、平板状や無端ベルト状等であってもよい。
【0058】
露光光源としては、レーザースキャナ以外のもの(LED、EL(エレクトロルミネッセンス)素子、蛍光体、等)が好適に用いられ得る。この場合、「主走査方向」は、発光素子(LED等)の配列方向と平行な方向となる。
【0059】
また、帯電極性も、上述の実施形態に開示された具体的態様(正帯電現像剤・正帯電感光体)に限定されない。すなわち、例えば、負帯電現像剤や負帯電感光体にも本発明は好適に適用され得ることは、いうまでもない。
【0060】
あるいは、本発明は、上述の電子写真方式以外の方式(例えば、感光体を用いないトナージェット方式、イオンフロー方式、マルチスタイラス電極方式、等)の画像形成装置に対しても、好適に適用され得る。
【0061】
感光体ドラム3と現像ローラ62とは、接触していてもよい。また、円柱状の現像ローラ62に代えて、円筒状の現像スリーブが用いられ得る。
【0062】
本発明は、電界搬送に限定されない。すなわち、例えば、搬送基板63に代えて、ベルト状の部材によりトナーTを機械的に搬送する手段(特開2003−131490号公報等参照)を採用した構成に対しても、本発明は良好に適用され得る。
【0063】
図3は、図2に示されているトナー供給装置6の一変形例の概略構成を示す側断面図である。図3を参照すると、本変形例においては、整流板65における、搬送基板63と対向する面には、補助搬送基板66が設けられている。また、整流板65における、補助搬送基板66が設けられている面とは反対側の面(すなわち下側リアパネル61b及び上側リアパネル61c側)には、回収搬送基板67が設けられている。
【0064】
補助搬送基板66及び回収搬送基板67は、搬送基板63と同様に、トナーTを進行波状の電界によって搬送するように構成されている。なお、補助搬送基板66は、トナーTを上方に向かって搬送するように設けられていてもよいし、トナーTを下方に向かって搬送するように設けられていてもよい。一方、回収搬送基板67は、トナーTを下方に向かって搬送するように設けられている。
【0065】
かかる変形例の構成によれば、整流板65を含む整流部材の表面へのトナーTの継続的な付着が、効果的に抑制され得る。
【0066】
図4は、図2に示されているトナー供給装置6の他の変形例の概略構成を示す側断面図である。図4を参照すると、本変形例においては、トナーボックス61の内側の空間における底部には、撹拌部材68及び補助整流板69が設けられている。
【0067】
撹拌部材68は、トナーTを撹拌するように設けられた回転体であって、メイントナー貯留部61g内に収容されている。本発明の補助整流部材としての補助整流板69は、撹拌部材68の回転軌跡に沿って設けられていて、撹拌部材68と整流板65との間に配置されている。
【0068】
この場合、補助整流板69は、D4≧D1となるように配置されている。ここで、D4は、補助整流板69と整流板65との間隔である。
【0069】
かかる構成によれば、補助整流板69と整流板65との間における「流路」の幅が良好に確保され、以て上述の搬送中途位置に向かう気流が良好に形成される。また、補助整流板69がトナー分離部TSAに干渉しないように設けられることで、トナーTのトナーボックス61内での浮遊の発生が、良好に抑制される。
【0070】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして援用され得る。
【符号の説明】
【0071】
1…レーザープリンタ
2…用紙搬送機構
3…感光体ドラム
4…帯電器
5…スキャナーユニット
6…トナー供給装置
21…レジストローラ
22…転写ローラ
61…トナーボックス(ケーシング)
61a…フロントパネル
61b…下側リアパネル
61c…上側リアパネル
61d…フロント側底板
61e…リア側底板
61f…開口部
61g…メイントナー貯留部
61h…サブトナー貯留部
62…現像ローラ
62a…トナー担持面
63…搬送基板
64…トナー回収部
64a…回収ローラ
64b…回収ブレード
65…整流板
65a…ノズル形成部
65b…本体部
65c…接続部
65d…スカート部
66…補助搬送基板
67…回収搬送基板
68…撹拌部材
69…補助整流板
C…中心軸
DP…現像位置
LB…レーザービーム
LS…静電潜像担持面
P…用紙
PP…用紙搬送経路
SP…スキャン位置
T…トナー
TCP…トナー担持位置
TL…トナー貯留レベル
TP…転写位置
TSA…トナー分離部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2003−131490号公報
【特許文献2】特開2011−64842号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電した粉末状の現像剤を供給対象に対して供給するように構成された、現像剤供給装置において、
主走査方向と平行な円柱面状の周面である現像剤担持面を有し、現像剤供給位置にて前記供給対象と最近接しつつ対向するように配置され、回転駆動されることによる前記現像剤担持面の前記主走査方向と直交する方向への移動により、当該現像剤担持面上に担持された前記現像剤を前記現像剤供給位置に供給するように設けられた、現像剤担持部材と、
前記現像剤を収容するための空間である現像剤収容部を底部に備えるとともに上部に開口部が形成された箱状部材であって、前記開口部にて前記現像剤担持部材と対向するように配置された、ケーシングと、
前記現像剤収容部から前記現像剤担持面と最近接しつつ対向する担持位置に向かって前記現像剤を上方に搬送するように、前記ケーシングの内部に収容された、現像剤搬送手段と、
前記ケーシング内に収容されていて、前記現像剤搬送手段による前記現像剤の上方への搬送の際に生じる気流の状態を調整すべく前記現像剤搬送手段と離隔しつつ対向するように配置された、整流部材と、
を備え、
前記整流部材は、
当該整流部材の上端における、当該整流部材と前記現像剤搬送手段との間隔をD1、
前記現像剤収容部に収容された前記現像剤の集合体である現像剤溜まりの上端と前記現像剤搬送手段の上端との中間の位置における、当該整流部材と前記現像剤搬送手段との間隔をD2、
前記現像剤担持面と当該整流部材の前記上端との間隔をD3、
当該整流部材が設けられていない状態にて、気流速度が前記現像剤搬送手段の表面上における最大速度に対して10分の1となる位置と、前記表面と、の間隔をα、
とすると、
D1<α、D2≧α、D3≧D1
となるように配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、現像剤供給装置であって、
前記整流部材は、
前記上端を構成するノズル形成部と、
前記ノズル形成部の下方にて、上端部が前記ノズル形成部の下端部よりも前記現像剤搬送手段の前記表面から離隔するように設けられた、本体部と、
前記ノズル形成部の前記下端部と前記本体部の前記上端部とを接続するように設けられた、接続部と、
を備えたことを特徴とする、現像剤供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の、現像剤供給装置において、
前記現像剤を撹拌するように設けられた回転体であって、前記現像剤収容部内に収容された、撹拌部材と、
前記撹拌部材の回転軌跡に沿って設けられていて、当該撹拌部材と前記整流部材との間に配置された、補助整流部材と、
をさらに備え、
前記補助整流部材は、
当該補助整流部材と前記整流部材との間隔をD4とすると、
D4≧D1
となるように配置されたことを特徴とする、現像剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114013(P2013−114013A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259737(P2011−259737)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】