説明

現像剤供給部材、現像装置、及び画像形成装置

【課題】 本発明の現像剤供給部材は、現像剤供給部材の体積抵抗率を抑制することにより、印刷枚数が増加した場合においても、記録媒体に現像した画像に印字カスレ及び印字濃度低下が発生することを防止することを図る現像剤供給部材の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の現像剤供給部材は、現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成る現像剤供給部材において、前記発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材、上記現像剤担持体を有し記録媒体にトナー画像を現像する現像装置、上記現像装置を有し入力された画像データを一定の制御に基づいて記録媒体に現像して出力する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、及び電子写真カラー記録装置等の画像形成装置においては、帯電装置により一様に帯電させた像担持体の表面に、露光装置により画像情報に基づく静電潜像を形成した後、現像剤供給部材から現像剤担持体に現像剤であるトナーを供給し、現像剤担持体により像担持体に現像剤を担持させてトナー像を形成している。当該トナー像が記録媒体に転写された後に定着器により定着させることで、記録媒体にトナー画像が形成される。
【0003】
ここで、画像形成装置に設けられる現像剤供給部材について、記録媒体に現像した画像に生じる印字カスレ及び印字濃度の低下を解決するために、現像剤供給部材の発泡層に独立気泡の発泡フォームを用いるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-333996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した独立気泡のフォームによる構成では、 小さな成形金型を用いて発泡および加硫する必要があるため、製造装置の操作が煩雑であり、且つ、単位時間当りの生産性を向上させることが困難であった。また、発泡フォームの気泡壁を薄くできないことから気泡壁の低硬度を実現できず、現像剤に対する摩擦負荷が大きくなることで現像剤を損傷し易かった。
【0006】
このため、生産性の向上、及び、現像剤に対する摩擦負荷を軽減することが可能な低硬度の連立気泡のフォームを用いたが、印刷枚数が増加すると現像剤が現像剤供給部材の弾性発泡層に浸食して詰まり、現像剤供給部材の体積抵抗率が上昇した。この様に体積抵抗率が上昇すると、現像剤担持体と現像剤供給部材間において、現像剤により形成されるトナー層に注入される電界強度が弱くなるため、現像剤の帯電量が小さくなる。現像剤の帯電量が小さいと、現像剤担持体への鏡像力が小さくなることから、現像剤が現像ブレードで弾かれることにより現像ローラに担持したトナー層の形成が不安定になり、記録媒体に現像した画像データに印字カスレ及び印字濃度低下が発生する問題があった。
【0007】
そこで、本発明は前述の技術的な課題に鑑み、現像剤供給部材の体積抵抗率を抑制することにより、印刷枚数が増加した場合においても、記録媒体に現像した画像に印字カスレ及び印字濃度低下が発生することを防止できる現像剤供給部材、現像装置、及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決すべく、本発明に係る現像剤供給部材は、現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成る現像剤供給部材において、前記発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る体積抵抗率を抑制した現像剤供給部材によれば、連立気泡の発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有するため、印刷枚数を増加した場合においても、記録媒体に現像した画像に印字カスレ及び印字濃度低下が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像形成装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の現像装置を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のトナー供給ローラを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の現像ローラを示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のトナー供給ローラの電気抵抗値に係る測定を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のトナー供給ローラの体積抵抗値に係る測定を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のトナー供給ローラの体積抵抗値に係る測定を示す模式図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の現像ローラのトナー掻き落し能力に係る現像ローラと供給ローラとの間の負荷トルクの測定を示す模式図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の現像ローラのトナー掻き落し能力に係る画像評価パターンを示す模式図であり、(a)は標準画像評価パターンを示す模式図、(b)はゴースト画像評価パターンを示す模式図である。
【図10】本発明の第1の実施形態のトナー供給ローラにおける電気抵抗値に係る印可電圧に対する発生電流を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のトナー供給ローラにおける電気抵抗値に係る印可電圧に対する発生電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の現像剤供給部材、現像装置、及び画像形成装置に係る好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の現像剤供給部材、現像装置、及び画像形成装置は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
第1の実施形態における現像剤供給部材は、現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成り、当該発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有する。
【0013】
まず、本実施形態の画像形成装置1について説明する。図1に画像形成装置1の構成図を示す。画像形成装置1は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報に基づいて記録媒体21に印刷する現像装置2C、2M、2Y、及び2Kと、記録媒体21を収納した給紙カセット22を始点として画像情報を印刷した記録媒体21が排出される排紙トレイ41を終点とする略S字状の用紙搬送経路3を備えている。
【0014】
画像形成装置1内の現像装置2は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報を現像する現像装置2C、2M、2Y、及び2Kから成るが、互いに略同一の構成であるため、以下の説明においては現像装置2と称す。現像装置2の詳細は後述する。
【0015】
画像形成装置1内の用紙搬送経路3は、記録媒体21を収納した給紙カセット22を始点とし、リタードローラ23、給紙ローラ24、搬送ローラ25、搬送コロ26、プレッシャローラ31、レジストローラ32、転写ベルト33、ドライブローラ34、アイドルローラ35、転写ベルトクリーニングユニット36、転写ローラ37、定着ユニット38、排出ローラ39、排出コロ40を経て、画像情報を印刷した記録媒体21が排出される排紙トレイ41を終点とする経路から構成される。以下、用紙搬送経路3に含まれる各構成部材等について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
記録媒体21は、モノクロ又はカラーの画像情報を現像させるための所定寸法の記録用紙であり、一般的には、再生紙、光沢紙、及び上質紙のような紙、若しくはOHPフィルムからなる。また、給紙カセット22は、複数枚の記録媒体21を収納しておき、印刷動作が開始されると記録媒体21を画像記録装置1内に供給する。なお、給紙カセット22は、画像記録装置1から脱着可能なように構成されている。また、リタードローラ23は、給紙カセット22に収納した記録媒体21に対して圧接した状態で回転することにより記録媒体21を給紙カセット22から1枚ずつ分離して取り出す。また、給紙ローラ24は、記録媒体21を挟むようにリタードローラ23と対向して配設され、記録媒体21を搬送ローラ25及び搬送コロ26に搬送する。また、搬送ローラ25及び搬送コロ26は、搬送されてきた記録媒体21を挟むように対向して配設され、搬送ローラ25の回転に従動させて搬送コロ26を連れ回すことで記録媒体21をプレッシャローラ31及びレジストローラ32に搬送する。また、プレッシャローラ31及びレジストローラ32は、搬送されてきた記録媒体21を挟むように対向して配設され、レジストローラ32で加圧したプレッシャーローラ31を回転させることで、記録媒体21の斜行取り等を行いながら後述する転写ベルト33へ吸着する。
【0017】
転写ベルト33は、記録媒体21を現像装置2内に搬送して画像情報を現像するための搬送手段であり、転写ベルト33の周面上にトナー14による画像情報を保持するとともに、記録媒体21を吸着できるようにした無端状のベルトである。また、ドライブローラ34及びアイドルローラ35は、無端状に形成された転写ベルト33の両端に設けられ、転写ベルト33に一定の張力を与えている。なお、アイドルローラ35は同様の構成である35A、35B、及び35Cから成る。また、ドライブローラ34及びアイドルローラ35は、高摩擦抵抗から成る部材で形成されている。ドライブローラ34を図示せぬ駆動系によって回転させると、ドライブローラ34の回転に従動してアイドルローラ35が回転することで、転写ベルト33を連動して駆動させる。また、転写ベルトクリーニングユニット36は、転写ベルトクリーニングブレード36A及び廃棄トナー収容室36Bから構成される。転写ベルトクリーニングブレード36Aは、転写ベルト33表面に付着したトナー14や紙粉などの付着物を払い落とすように、転写ベルト33表面に対して一定の圧力を付加した状態で当接されている。また、廃棄トナー回収容器36Bは、転写ベルトクリーニングブレード36Aで払い落としたトナー14や紙粉などの付着物を回収するための容器であり、転写ベルトクリーニングブレード36Aに近接し、転写ベルト33の下部に設けられる。
【0018】
転写ローラ37は、後述する感光体ドラム11の下方に位置し、転写ローラ37と感光体ドラム11により記録媒体21を挟むように当接した状態で回転可能に設けられている。この様な転写ローラ37には、トナー14の帯電とは逆極性のバイアス電圧が供給され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー画像を記録媒体21に転写する。また、定着ユニット38は、定着ローラ38A及び加圧ローラ38Bから構成される。定着ローラ38Aと加圧ローラ38Bは転写ベルト33によって搬送された記録媒体21を挟むように対向して配設され、現像装置2で記録媒体21に現像されたトナー画像を記録媒体21に定着させる。具体的には、定着ローラ38A内部に配設された図示せぬハロゲンランプ等から供給される熱を用いて、記録媒体21上に弱い静電気力だけで付着しているトナー画像を溶解し、加圧ローラ38Bの加圧力によりトナー画像を記録媒体21に定着させる。なお、加圧ローラ38Bは定着ローラ38Aの回転に付勢されることで連れ回る。また、排出ローラ39及び排出コロ40は、定着ユニット38から搬送されてきた記録媒体21を挟むように対向して配設され、排出ローラ39の回転に従動させて排出コロ40を連れ回すことで記録媒体21を排紙トレイ41に排出する。排紙トレイ41は、画像情報を現像して排出された記録媒体21を積載して収容する収納スペースである。
【0019】
次に、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の各色に対応する画像情報に基づいて記録媒体21にトナー画像を印刷する現像装置2について説明する。図2に現像装置2の構成図を示す。なお、説明を容易にするため、図2には現像装置2に加え、静電潜像LED光源13、転写ベルト33、転写ローラ37、及び記録媒体21を図示している。
【0020】
現像装置2は、画像情報に基づく静電潜像を担持する感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面に電荷を蓄えさせる帯電ローラ12と、画像情報に対応した光を感光体ドラム11の表面に照射する画像形成装置1本体に設けられた静電潜像LED光源13と、現像剤であるトナー14と、トナー14を収容するトナーカートリッジ15と、トナー14を現像ローラ17に供給するトナー供給ローラ16と、感光体ドラム11表面の静電潜像をトナー14によって現像する現像ローラ17と、現像ローラ17表面におけるトナー14の厚みが均一となるように規制する現像ブレード18で構成される。また、現像装置2は画像形成装置1に対して着脱可能に配設されている。以下、現像装置2に含まれる各構成部材及び画像形成装置1本体に設けられた静電潜像LED光源13について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
感光体ドラム11は、現像剤像が形成される像担持体であり、画像情報に基づく静電潜像を担持するために表面に電荷を蓄えることが可能なように構成されている。なお、感光体ドラム11は、円筒形状部からなり、図2に示す時計回りに回転可能なように設けられている。この様な感光体ドラム11は、アルミニウム等から成る導電性基層に光導電層と電荷輸送層からなる感光層を形成している。また、帯電ローラ12は、図示せぬ電源を用いて感光体ドラム11の表面に所定の正電圧又は負電圧を印加することにより、感光体ドラム11の表面に対して一様に電荷を蓄えさせるためのものである。帯電ローラ12は、一定の圧力で感光体ドラム11の表面に接触しながら、感光体ドラム11に連れ回ることで図2に示す反時計回りに回転可能なように設けられている。この様な帯電ローラ12は、導電性の金属シャフトにシリコーン等の半導電性ゴムを被覆することで構成されている。また、静電潜像LED光源13は、画像情報に対応した光を感光体ドラム11の表面に照射して感光ドラム11の表面に静電潜像を形成することが可能なように構成されており、感光体ドラム11の上方に設けられている。この様な静電潜像LED光源13は、複数のLED素子、レンズアレイ、及びLED駆動素子を組み合わせたものから構成されている。なお、静電潜像LED光源13は、画像形成装置1本体に設けられる。
【0022】
トナー14は、現像剤であり、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像に付着させることで画像情報を可視化する。トナー14の仕様は、体積平均粒径5.5μm、飽和帯電量−44μC/g、非磁性一成分、負帯電性粉砕製造法、ポリコースデル樹脂製である。なお、飽和帯電量の測定は、トナー14を4wt%及び関東電化工業株式会社製の平均粒子径90μmのシリコーンコートフェライトキャリアを96wt%の割合で調合し、ボールミルにて1分間にわたり混合した後に、Trek株式会社製で型式Model210HSの帯電量測定器を用いて行った。また、トナーカートリッジ15は、トナー14を収容する収容器であり、トナー供給ローラ16の上方に配設される。この様なトナーカートリッジ15は、例えば側面部が略長方形で記録媒体21の搬送方向と垂直方向に長い矩形状部から形成される。なお、トナーカートリッジ15は、トナー14が消耗した時に交換できるように、画像形成装置1に対して着脱自在に構成されている。
【0023】
トナー供給ローラ16は、本発明に係る重要な構成部材であることから、図2に加えて図3、及び表1乃至表3を参照しながら、より詳細に説明する。トナー供給ローラ16は、現像剤供給部材であり、一定の圧力で現像ローラ17の表面に当接しながら図2に示す反時計回りに回転可能なように配設され、現像ローラ17にトナー14を供給する。なお、トナー供給ローラ16は現像ローラ17に対して例えば1mm圧縮させた状態で当接させている。この様なトナー供給ローラ16は、材質がステンレスで直径6mmの金属シャフトで形成される芯金16Aと、芯金16Aの外周面に円筒形状に形成する弾性発泡層16Bから構成される。また、芯金16Aに弾性発泡層16Bを加えたトナー供給ローラ16の直径は15.5mmである。弾性発泡層16Bには、ポリオール成分、ポリイソシアネート、発泡剤、及び触媒から成る材料を攪拌及び混合した後に、発泡及び硬化させて形成する発泡フォームを用いる。また、ポリオール成分には、ポリマーポリオールを含有するポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等を用いる。なお、ポリマーポリオールには、重合鎖を有し末端等に複数の水酸基を有する化合物であって、例えばポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン、及びメチルメタアクリレート等のエチレン性不飽和結合を有する化合物をグラフト重合させたものを用いる。また、ポリイソシアネートには、芳香族系、脂肪族系及脂環族系の各種ポリイソシアネートを用いる。なお、芳香族ポリイソシアネートには、トリレンジイソシアネ一ト(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、及びm−キシレンジイソシアネート等を用いる。
【0024】
同様に、脂肪族ポリイソシアネートには、1, 6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を用いる。同様に、脂環族ポリイソシアネートには、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及び水添MDI等を用いる。なお、これらは単独でも2種以上を混合して使用しても良く、芳香族系、 脂肪族系及び脂環族系のいずれの混合物或いは変性物等が使用される。また、発泡剤には、主に純水を用いるが、塩化メチレン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロロメタン、フロン系化合物、及び炭酸ガス等を併用する場合がある。また、触媒には、アミン系触媒、特に3級アミン(トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N',N'−トリメチルアミノエチルピペラジン等)、及びオクチル酸スズ(スズオクトエート) 等の有機金属化合物等を併用する場合がある。また、整泡剤には、オルガノシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、及び、シリコーン−グリース共重合体等のシリコーン化合物より成る非イオン系界面活性剤、又は、それらの混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、及びフェノール系化合物等を用いる。
【0025】
また、弾性発泡層16Bに電子導電機構による導電性を付与するための導電剤には、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、 及びカラーブラック等のカーボンブラック、グラファイト等の粉末、繊維状物質、銅、ニッケル、及び銀等の金属粉末、繊維状物質、酸化スズ、酸化チタン、及び酸化インジウム等の金属酸化物、ポリアセチレン、ポリピロール、及びポリアニリン等の有機系の導電性微粉末等を用いる。同様に、イオン導電機構による導電性を付与するための導電剤には、LiCFSO、NaClO、LiClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、及びNaCl等のLi、Na、及びK等周期率表第1族の金属塩、NH4の塩等の電解質、Ca(ClO)等のCa++、Ba++等周期率表第2族の金属塩、1.4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等多価アルコールとその誘導体等の錯体、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びエチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体を用いる。
【0026】
次に、トナー供給ローラ16に係る製造プロセス等について更に具体的に説明する。トナー供給ローラ16は、異なる条件で製作したローラA、ローラB、ローラC、ローラD、及びローラEの5つである。なお、ローラCについては、該ローラCに対し製品外径に係る仕様のみを異ならせたローラC1及びローラC2を製作した。表1乃至表3に5つのローラに係る仕様等を示す。以下、各ローラについてそれぞれ説明する。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
まず、ローラAに係る製造プロセス等について具体的に説明する。表1及び表3に示したポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及びイオン導電剤から成る混合物を、一辺が500mmの立方体の容器内に注入し、容器の上部に蓋等をしない大気圧下で発泡させた後に、加熱炉を通過させることにより加熱、反応、及び硬化させて、連立気泡の発泡フォームを形成した。なお、連立気泡の発泡フォームを形成するためには、密閉されない大気下で発泡させる必要がある。また、容器のサイズは一辺が300mm以上であることが好ましい。形成後の連立気泡の発泡フォームを、一辺400mm及び高さ25mmの直方体に切り出した後、導電処理液に20℃で5分間浸漬させた。なお、発泡フォームは、各気泡が接合した連立気泡から形成されているため、導電処理液が発泡フォームの内部に浸清し易い。また、導電処理液は、山陽色素株式会社製の品番エマコールブラックで固形分36%のカーボンブラック分散液を、日本ゼオン株式会社製の品番:Nipol851で固形分45%のアクリル樹脂エマルジョンに、30重量%添加して攪拌することで得た。次に、高さ25mmの発泡フォームを通過させる場合に隙間が0.2mmとなるように対向して配設された一対の治具ロール間に、導電処理液に20℃で5分間浸漬させた発泡フォームを通過させることにより、発泡フォームの連立気泡内に含浸された余分な分散液を除去した。なお、表3に記載したTDI-80は、2,4−トリレンジイソシアネート80質量%及び2,6−トリレンジイソシアネート20質量%から成る混合物である。
【0031】
次に、連立気泡内に含浸された余分な分散液を治具ローラにより除去した発泡フォームを、100℃に設定した熱風循環式のオーブンで60分間加熱及び乾燥させた。この様な加熱及び乾燥処理により、発泡フォームから水分を除去してアクリル樹脂を架橋させることで連立気泡壁にカーボンブラックを強固に固着させて、弾性発泡層16Bの材料に使用する導電性フォームを形成した。次に、一辺400mm及び高さ25mmの直方体から成る導電性フォームから、側面が一辺25mmの正方形で長さ300mmの角柱体を切り出した後、一辺25mmの正方形部の中心に芯金16Aを装通する直径5mmの貫通孔を形成した。次に、材質がステンレスで直径6mm及び長さ272mmの金属シャフトで形成される芯金16Aの表面に接着剤を塗布した後、側面が一辺25mmの正方形で長さ300mmで直径5mmの貫通孔を形成した弾性発泡層16Bに装通した。最後に、弾性発泡層16Bを研磨することにより、外径を15.5mmに形成した。上述した方法によりローラAを製造した。なお、表1に記載した体積抵抗率ρは、各ローラに電圧10Vを印加した場合の体積抵抗率ρを、10のρ乗(Ω・cm)の形式で記載している。しかし、ローラAについては、非常に高抵抗値を有することから、電圧500Vを印加することにより測定器のダイナミックレンジを超えないように電圧値を変更した。
【0032】
次に、ローラB、ローラC、ローラD、及びローラEの各ローラに係る製造プロセス様等について説明する。各ローラは、イオン導電剤を添加することに特徴を有し、その他は前述のローラAの仕様と同一である。従って、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤等は同一である。なお、イオン導電剤には関東化学株式会社製の無水過塩素酸リチウムを用いた。また、イオン導電剤の添加量は、ローラBが相対的に一番少なくローラEが相対的に一番多くなるように配合した。また、ローラCは、ローラAと同様に導電性フォームを作成した後、材質がステンレスで外径6mm及び長さ272mmの円柱形状部から成る芯金を、貫通孔に装通して接着することにより製作した。ここで、表2に示すように、製品外径15.5mmのローラCに対して、ローラC1は研磨により製品外径を14.7mmに成形した。同様に、ローラC2は研磨により製品外径を14.5mmに成形した。なお、ローラC1及びローラC2は、ローラCに対して製品外径に係る仕様のみが異なる。
【0033】
現像ローラ17は、図2に加えて図4を参照しながら、より詳細に説明する。現像ローラ17は、現像剤担持体であり、一定の圧力で感光体ドラム11の表面に当接しながら図2に示す反時計回りに回転可能なように構成されている。具体的には、現像ローラ17は、回転しながらトナー14を感光体ドラム11に搬送し、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像をトナー14によって現像する。なお、現像ローラ17は感光体ドラム11に対して例えば0.1mm圧縮させた状態で当接させる。この様な現像ローラ17は、例えば材質がステンレスで直径10mmの金属シャフトで形成される芯金17Aと、芯金17Aの外周面に円筒形状に形成する弾性層17Bと、更に弾性層17Bの外周面に被覆して形成する表層17Cから構成される。また、芯金17A、弾性層17B、及び表層17Cを含めた現像ローラ17の直径は16mmである。なお、芯金17Aと弾性層17Bの接着性を高めるために、芯金17Aに接着剤及びプライマー等を塗布しても良い。また、塗布剤である接着剤及びプライマー等は導電化しても良い。
【0034】
また、弾性層17Bの材料には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM) 、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、及びポリウレタン系エラストマー等を用い、導電剤やシリコーンオイル等の添加剤を適宜配合する。なお、添加剤である導電剤には、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、TiO、ZnO、及びSnO等を用いる。また、表層17Cの材料には、樹脂成分として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、及びウレタン樹脂等を用い、導電剤及び帯電制御剤等の添加剤を適宜添加しても良い。また、表層17Cの材料は、変性、グラフト化、又はブロック重合等の処理をして、単独若しくは併せて用いる。なお、添加剤である帯電制御剤には、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、アジン系(ニグロシン系)化合物、アゾ化合物、オキシナフトエ酸金属錯体、及び界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系)等を用いる。この様な表層17Cの材料には、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤等を適宜添加しても良い。
【0035】
現像ブレード18は、その先端部が現像ローラ17の表面に僅かに当接するように設けられ、トナー供給ローラ16から現像ローラ17の表面に供給された内、一定量を越えたトナー14を掻き取ることで、現像ローラ17の表面に形成されるトナー14の厚みを常に均一となるように規制する。この様な現像ブレード18は、例えばステンレスから成る板状弾性部材で形成されている。なお、板状弾性部材の厚みは0.08mmであり、現像ローラ17に当接する板状弾性部材の接触部には曲げ加工を施している。当該曲げ部の曲率半径Rは0.5mmであり、十点平均粗度計測法でRz=0.6μmを満たす。また、クリーニングブレード19は、感光体ドラム11上に形成されたトナー画像を記録媒体21に転写した後に、感光体ドラム11に残留したトナー14を掻き落とすように構成される。具体的には、クリーニングブレード19は、板状に形成しており帯電ローラ12よりも感光体ドラム11の回転方向における上流側に配設され、感光体ドラム11表面に対して一定の圧力を付加した状態で当接されている。また、クリーニングブレード19により感光体ドラム11から掻き落としたトナー14は、図示せぬ螺旋状のクリーニングスパイラルにより図示せぬ廃トナー回収器に搬送される。
【0036】
次に、本発明に係るトナー供給ローラ16に係る電気抵抗特性及び印刷品質等の検証結果について説明する。なお、まず、図5を参照しながらトナー供給ローラ16係る電気抵抗値の測定等について説明する。次に、図6及び図7を参照しながらトナー供給ローラ16に係る体積抵抗値の測定について説明する。
【0037】
まず、トナー供給ローラ16に係る電気抵抗値の測定等について説明する。なお、電気抵抗値に基づいて印字カスレ発生の有無を推定することができる。図5にトナー供給ローラ16の電気抵抗値に係る印加電圧に対する発生電流の測定に関する模式図を示す。
【0038】
トナー供給ローラ16が有する電気抵抗値の測定には、電気抵抗測定器51を用いる。なお、電気抵抗測定器51には、ヒューレット・パッカード株式会社製の型式ハイレジスタンスメータ4339Aを使用した。電気抵抗値の測定は、まず、電気抵抗測定器51のテストリード51Bをステンレス製で外径30mmの金属ローラ治具51Aに接続し、テストリード51Cをトナー供給ローラ16の芯金16Aに接続した上で、金属ローラ治具51Aをトナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bの外周面に当接させる。なお、現像装置2に配設するトナー供給ローラ16は現像ローラ17に対して1mm圧縮させた状態で当接させているため、電気抵抗値の測定においても同条件とし、金属円筒51Aによりトナー供給ローラ16の弾性発泡層16BをL1=1mm圧縮させた状態で当接させる。次に、金属ローラ治具51Aを回転数62.5rpmで回転させることによりトナー供給ローラ16を連れ回した状態で、金属円筒51B及び芯金16A間に電圧を印加して発生電流を計測する。
【0039】
電気抵抗値を検証することにより、画像形成装置1を動作させて記録媒体21に画像データを現像した場合に印字カスレが発生するか否かを推定できる。具体的には、トナー供給ローラ16が有する電気抵抗値は、印加電圧をパラメータとする非線形関数により記述できるため、印加電圧を変化させながら発生電流を計測することで、トナー供給ローラ16が有する電気伝導率の非線形特性を把握できる。具体的には、印加電圧100V以下において発生電流が10μA以上の場合には、記録媒体21に現像する画像データに印字カスレが発生せず、当該発生電流値は最良条件である。なお、上述の条件を満たさない場合、現像ローラ17とトナー供給ローラ16間において、トナー14により形成されるトナー層に注入される電界強度が弱いため、トナー14の帯電量が小さくなる。トナー14の帯電量が小さいと、現像ローラ17への鏡像力が小さくなることから、トナー14が現像ブレード18で弾かれることにより現像ローラ17に担持したトナー層の形成が不安定になり、記録媒体21に現像した画像データに印字カスレが発生する。
【0040】
次に、トナー供給ローラ16が有する体積抵抗値の測定について説明する。なお、体積抵抗値を基準として印字カスレ発生の有無を推定することができる。図6及び図7にトナー供給ローラ16の電気抵抗値に係る印加電圧に対する発生電流の測定に関する模式図を示す。
【0041】
トナー供給ローラ16が有する体積抵抗値の測定には、電気抵抗測定器52を用いる。なお、電気抵抗測定器52には、株式会社エーディーシー製の型式ウルトラハイレジスタンスメータ8340Aを使用した。電気抵抗値の測定は、まず、電気抵抗測定器52のテストリード52Bをステンレス製で内径が15.5mmの円筒形状に形成された金属円筒治具52Aに接続し、テストリード52Cをトナー供給ローラ16の芯金16Aに接続した上で、金属円筒治具52Aにトナー供給ローラ16を挿入する。なお、金属円筒治具52Aの内径部は、トナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bの表面を密着被覆させるために、内径寸法及び表面粗さを満たしている。次に、金属円筒治具52A及び芯金16A間に電圧を印加して発生電流を計測する。なお、金属円筒治具52A及びトナー供給ローラ16の形状を考慮して、発生電流値から体積抵抗率を導出する。
【0042】
次に、本発明に係る現像ローラ17に係るトナー掻き落し能力に関する検証について、まず図8を参照しながら現像ローラ17とトナー供給ローラ16との間の負荷トルクの測定について説明し、さらに図9を参照しながらゴースト画像評価法について説明する。
【0043】
現像ローラ17とトナー供給ローラ16との間の負荷トルクの測定は、図8に示すように、現像装置2を現像ローラ17とトナー供給ローラ16のみで構成し、該現像ローラ17とトナー供給ローラ16の間に十分にトナー14が介在する状態で行った。また、現像ローラ17及びトナー供給ローラ16の外径は、本発明に係る実施形態と同一とした。同様に、現像ローラ17及びトナー供給ローラ16の芯金中心間の距離についても、本発明に係る実施形態と同一の14.75mmとした。同様に、現像ローラ17及びトナー供給ローラ16の回転速度及び周速差についても、本発明に係る実施形態と同一とした。具体的には、現像ローラ17の回転速度を233rpm、トナー供給ローラ16の回転速度を159rpmとし、回転方向は同一の方向とした。なお、上記の条件において、現像ローラ17とトナー供給ローラ16との間の摩擦付加をトルク(kgf・cm)と規定した。
【0044】
ゴースト画像評価は、図9に示す画像評価パターンを用いて行った。具体的には、図9(a)は理想的な標準画像評価パターンを示す模式図であり、トナー濃度100%で印刷された100%濃度部60Aと、トナー濃度0%の0%濃度部60Bから成る。また、図9(b)はゴースト画像評価パターンを示す模式図であり、濃度測定部61Aと濃度測定部61Bの2箇所のトナー濃度を、X−Rite社製で型式がX−Rite528の分光色彩濃度計を使用して測定した。なお、濃度測定部61Aと濃度測定部61Bにおけるトナー濃度差が5%未満の場合には良好と判断して評価を○、5%以上の場合には不良と判断して評価を×とした。なお、現像ローラ17によるトナー掻き落し能力が劣ると、濃度測定部61Aと濃度測定部61Bにおけるトナー濃度差が大きくなる。
【0045】
次に、本発明に係るトナー供給ローラ16の電気抵抗値及び体積抵抗値の測定結果等に基づき、図10、表1、及び表2を参照しながらトナー供給ローラ16に係る電気抵抗特性及び印刷品質等の検証結果について詳細に説明する。表1にトナー供給ローラ16を異なる仕様で製作したローラA、ローラB、ローラC、ローラD、及びローラEに係る体積抵抗率及び評価結果等を示す。また、図10にトナー供給ローラ16の電気抵抗値に係る印可電圧に対する発生電流を示す。
【0046】
ローラA、ローラB、ローラC、ローラD、及びローラEの5つのトナー供給ローラ16の特性に係る検証には、株式会社沖データ製で解像度が600DPIである光学LES方式カラー電子写真プリンタのMICROLINE5900dnを使用した。また、トナー14の仕様は、体積平均粒径5.5μm、飽和帯電量−44μC/g、非磁性一成分、負帯電性粉砕製造法、ポリコースデル樹脂製である。なお、印字環境は、室温23℃及び相対湿度45%RHである。また、印字カスレに係る評価は、記録媒体21に対して画像面積密度が100%濃度となるようなテストパターンを印刷した後に現像画像を分析することで行った。具体的には、X−Rite社製で型式がX−Rite528の分光色彩濃度計を使用して、記録媒体21の上端及び下端の画像濃度差を測定し、当該画像濃度差が5未満であれば良好で表1中の記載を○とし、5以上であれば不十分で表1中の記載を×とした。なお、表1に単位として記載しているKは1000を表す記号である。以下、ローラA、ローラB、ローラC、ローラD、及びローラEの各検証結果について説明する。
【0047】
ローラAについては、ローラB乃至ローラEと比較して、カーボン固着処理前の発泡フォームにおける体積抵抗率ρが1012.3と非常に高く、累計印刷10,000枚目における評価で印字カスレを確認した。なお、図10に示すようにローラAにおける印可電圧100V及び累計印刷10,000枚目での発生電流は1.06μAと小さい。従って、ローラAに係る印字カスレは、現像ローラ17とトナー供給ローラ16間において、トナー14により形成されるトナー層に注入される電界強度が弱くトナー14の帯電量が小さいことで、現像ローラ17への鏡像力が小さくなり、トナー14が現像ブレード18で弾かれたことに起因する。
【0048】
ローラB、ローラC、及びローラDについては、累計印刷10,000枚目における評価でそれぞれ印字カスレが確認されなかった。また、累計10,000枚印刷すると、トナー14がトナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bに浸食して詰まるが、表1に示すようにローラB、ローラC、及びローラDにおいて、それぞれ32.6μA、33. 7μA、及び48. 3μAの電流を計測できた。なお、印加電圧100V以下において発生電流が10μA以上の場合には印字カスレが発生しない。しかし、カーボン固着処理前の発泡フォームの状態における体積抵抗率は、ローラAの1012.3Ω・cmに対して、ローラB、ローラC、及びローラDにおいても1010.1から1011.9Ω・cmに範囲にあることから、同等レベルである。このため、ローラAの様にイオン導電剤を添加しない場合には低い導電性しか発現できなかったが、ローラB、ローラC、及びローラDの様にイオン導電剤を添加した場合には、導電経路がカーボン固着剤の付着している弾性発泡層16Bの気泡壁表面に限定されず、発泡フォームの樹脂部にまで延長されることにより、カーボン固着処理に含まれる電子導電機構とウレタン骨格内のイオン導電機構が相互に寄与し合うように作用したと考えられる。
【0049】
ローラEについては、累計印刷10,000枚の耐久試験中に現像ローラ17の表面にトナー14が貼り付いてドラムフィルミングが発生した。 これは、イオン導電剤の添加量が6.0wt%と多いことから、 イオン導電剤が弾性発泡層16Bから滲み出してしまったことに起因する。また、イオン導電剤が滲み出したことにより、弾性発泡層16Bの表面に担持しているトナー14と混ざり合い、記録媒体21に現像した画像の色が変色するブリード現象の発生を確認した。なお、ローラEについては図10中に測定データをプロットしていない。また、ローラB、ローラC、及びローラC1については、ゴースト画像評価法を用いたトナー掻き落とし能力についても良好な結果が得られた。しかし、ローラC2は、ゴースト画像評価法を用いたトナー掻き落とし能力については不十分であった。これは、他のローラと比較して、トルクが0.21kgf・cmと低いことが原因であると考えられる。
【0050】
以上、第1の実施形態によれば、体積抵抗率を抑制したトナー供給ローラ16に係る連立気泡の発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有するため、印刷枚数を増加した場合においても、記録媒体21に現像した画像に印字カスレ及び印字濃度低下が発生することを防止できる。
【0051】
[第2の実施形態]
第2の実施形態における現像剤供給部材は、現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成り、当該発泡フォームが、電子導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有する。
【0052】
以下、本発明の第2の実施形態に係るトナー供給ローラ16について説明する。なお、本実施形態においてトナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bにイオン導電剤に替えてカーボンブラックを添加したこと以外のトナー供給ローラ16に係る仕様及び製造プロセス等は、第1の実施形態で述べたトナー供給ローラ16と同様である。そこで、本実施形態では、簡単のため重複した説明は省略し、トナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bにカーボンブラックを添加したことに関連した事項についてのみ説明する。
【0053】
まず、本発明に係るトナー供給ローラ16の電気抵抗値及び体積抵抗値の測定結果等に基づき、図11、表4、及び表5を参照しながらトナー供給ローラ16に係る電気抵抗特性及び印刷品質等の検証結果について詳細に説明する。表4及び表5にトナー供給ローラ16を異なる仕様で製作したローラF、ローラG、ローラH、及びローラIに係る体積抵抗率及び評価結果等を示す。また、図11にトナー供給ローラ16の電気抵抗値に係る印可電圧に対する発生電流を示す。
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
ローラF、ローラG、ローラH、及びローラIは、表4に示したポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及びカーボンブラックから成る混合物を、一辺が500mmの立方体の容器内に注入し、容器の上部に蓋等をしない大気圧下で発泡させた後に、加熱炉を通過させることにより加熱、反応、及び硬化させて、連立気泡の発泡フォームを形成した。従って、本実施形態においてはトナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bに、第1の実施形態で用いたイオン導電剤に替えてカーボンブラックを添加した。なお、カーボンブラックには、ライオン株式会社製で型式EC600JDのケッチェンブラックを用いた。また、発泡フォームを形成した後の製造プロセスは表1乃至表3を参照しながら説明したプロセスと同様である。ここで、ローラFについては、表5に示すように、製品外径15.5mmのローラFに対し、ローラF1は研磨により製品外径を14.7mmに成形した。同様に、ローラF2は研磨により製品外径を14.5mmに成形した。なお、ローラF1及びローラF2は、ローラFに対して製品外径に係る仕様のみが異なる。なお、表4の体積抵抗率ρは、各ローラに電圧10Vを印加した場合の体積抵抗率ρを、10のρ乗(Ω・cm)の形式で記載している。しかし、ローラFについては、非常に高抵抗値を有することから、電圧500Vを印加することにより測定器のダイナミックレンジを超えないように電圧値を変更した。
【0057】
次に、表4に記載した気泡の均一さについて説明する。気泡の均一さの良否は、トナー供給ローラ16の弾性発泡層16B表面上の任意に選択した場所において、25mmの直線上に形成された気泡径の大きさで判定する。気泡径が200μmから600μmの範囲にある場合、トナー供給ローラ16から現像ローラ17に対するトナー供給性能、及び、現像ブレード18による現像ローラ17に対するトナー掻き落し性能が最良であるため、記録媒体21に現像する画像データの画像品位が良好である。しかし、気泡径が200μmに満たない場合もしくは600μmを超える場合には、トナー供給性能及びトナー掻き落し性能ともに不十分であるため、記録媒体21に現像する画像データの画像品位は不良である。なお、気泡径の分布が200μmから600μmの範囲にある場合は良好で表4中の記載を○とし、気泡径の分布が200μmに満たない場合もしくは600μmを超える場合は不十分で表4中の記載を×とした。
【0058】
ローラF、ローラG、ローラH、及びローラIについては、累計印刷10,000枚目における評価で印字カスレが確認されなかった。また、累計10,000枚印刷すると、トナー14がトナー供給ローラ16の弾性発泡層16Bに浸食して詰まるが、図11に示すようにローラF、ローラG、及びローラHにおいて、それぞれ20.8μA、26.3μA、及び32.3μAの電流を計測できた。なお、印加電圧100V以下において発生電流が10μA以上の場合には印字カスレが発生しない。しかし、カーボン固着処理前の発泡フォームの状態における体積抵抗率は、ローラAの1012.3Ω・cmに対して、ローラF、ローラG、及びローラHにおいても109.1から1012.1Ω・cmの範囲にあることから、同等レベルである。このため、ローラAの様にイオン導電剤を添加しない場合には低い導電性しか発現できなかったが、ローラF、ローラG、及びローラHの様にイオン導電剤を添加した場合には、導電経路がカーボン固着剤の付着している弾性発泡層16Bの気泡壁表面に限定されず、発泡フォームの樹脂部にまで延長されることにより、カーボン固着処理に含まれる電子導電機構とウレタン骨格内のイオン導電機構が相互に寄与し合うように作用したと考えられる。
【0059】
ローラIについては、カーボンブラックによる発泡阻害により発泡不良が発生した。具体的には、累計印刷10,000枚の耐久試験中に現像ローラ17の表面にトナー14が貼り付いてドラムフィルミングが発生した。 これは、カーボンブラックの添加量が8.0wt%と多いことが原因である。なお、ローラIについては図11中に測定データをプロットしていない。また、ローラF、ローラG、ローラH、及びローラF1については、ゴースト画像評価法を用いたトナー掻き落とし能力についても良好な結果が得られた。しかし、ローラF2においては、ゴースト画像評価法を用いたトナー掻き落とし能力については不十分であった。これは、他のローラと比較して、トルクが0.25kgf・cmと低いことが原因であると考えられる。
【0060】
以上、第2の実施形態によれば、体積抵抗率を抑制したトナー供給ローラ16に係る連立気泡の発泡フォームが、電子導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有するため、印刷枚数を増加した場合においても、記録媒体21に現像した画像に印字カスレ及び印字濃度低下が発生することを防止できる。
【0061】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態においては、画像形成装置1をプリンタとして説明したが、本実施形態の画像形成装置1を複写機、ファクシミリ装置、MFP装置などに設けても良い。また、本発明における現像装置2は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、及びブラック色の4色に対応する画像情報を現像する4つの現像装置2C、2M、2Y、及び2Kを備えるが、ブラック色を除いた3色に対応する3つの現像装置2C、2M、及び2Yを備えても良い。同様に、それぞれブラック色に対応する画像情報を現像する2つの現像装置2Kを備えても良い。このように、現像装置2の個数及び現像装置2の色の組み合わせ等は限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
2,2C,2M,2Y,2K 現像装置
3 用紙搬送経路
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ
13 静電潜像LED光源
14 トナー
15 トナーカートリッジ
16 トナー供給ローラ
16A 芯金
16B 弾性発泡層
17 現像ローラ
17A 芯金
17B 弾性層
17C 表層
18 現像ブレード
19 クリーニングブレード
21 記録媒体
22 給紙カセット
23 リタードローラ
24 給紙ローラ
25 搬送ローラ
26 搬送コロ
31 プレッシャローラ
32 レジストローラ
33 転写ベルト
34 ドライブローラ
35,35A,35B,35C アイドルローラ
36 転写ベルトクリーニングユニット
36A 転写ベルトクリーニングブレード
36B 廃棄トナー回収容器
37 転写ローラ
38 定着ユニット
38A 定着ローラ
38B 加圧ローラ
39 排出ローラ
40 排出コロ
41 排紙トレイ
51 電流抵抗測定器
51A 金属ローラ治具
51B テストリード
51C テストリード
52 電流抵抗測定器
52A 金属円筒治具
52B テストリード
52C テストリード
60 標準画像評価パターン
60A 100%濃度部
60B 0%濃度部
61 ゴースト画像評価パターン
61A 濃度測定部
61B 濃度測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成る現像剤供給部材において、前記発泡フォームが、イオン導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有することを特徴とする現像剤供給部材。
【請求項2】
前記発泡フォームは、ウレタン樹脂から形成することを特徴とする請求項1に記載の現像剤供給部材。
【請求項3】
前記発泡フォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及びイオン導電剤から成る混合物を発泡させた後に加熱、反応、及び硬化し、カーボンブラック導電処理液に浸漬させた後に加熱及び乾燥させることにより形成することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の現像剤供給部材。
【請求項4】
前記イオン導電による高抵抗の電気導電性とは、体積抵抗率が1010.1Ω・cmから1011.9Ω・cmに範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の現像剤供給部材。
【請求項5】
前記カーボンブラックを固着した後の低抵抗の電気導電性とは、体積抵抗率が105.9Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の現像剤供給部材。
【請求項6】
前記イオン導電に用いるイオン導電剤は、0.1wt%から4.0wt%の範囲で配合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の現像剤供給部材。
【請求項7】
現像剤担持体に現像剤を供給する連立気泡の発泡フォームから成る現像剤供給部材において、前記発泡フォームが、電子導電による高抵抗の電気導電性を有し、更に、気泡壁面にカーボンブラックを固着した後に低抵抗の電気導電性を有することを特徴とする現像剤供給部材。
【請求項8】
前記発泡フォームは、ウレタン樹脂から形成することを特徴とする請求項7に記載の現像剤供給部材。
【請求項9】
前記発泡フォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤、及びカーボンブラックから成る混合物を発泡させた後に加熱、反応、及び硬化し、カーボンブラック導電処理液に浸漬させた後に加熱及び乾燥させることにより形成することを特徴とする請求項7及び請求項8に記載の現像剤供給部材。
【請求項10】
前記電子導電による高抵抗の電気導電性とは、体積抵抗率が109.1Ω・cmから1012.1Ω・cmに範囲にあることを特徴とする請求項7乃至請求項9に記載の現像剤供給部材。
【請求項11】
前記カーボンブラックを固着した後の低抵抗の電気導電性とは、体積抵抗率が106.1Ω・cm以下であることを特徴とする請求項7乃至請求項9に記載の現像剤供給部材。
【請求項12】
前記カーボンブラックを固着する前において、前記電子導電に用いるカーボンブラックは、0.1wt%から5.0wt%の範囲で配合されていることを特徴とする請求項7乃至請求項9に記載の現像剤供給部材。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12に記載の現像剤供給部材を有することを特徴とする現像装置。
【請求項14】
請求項13に記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−33835(P2011−33835A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180088(P2009−180088)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】