説明

現像剤層厚規制部材、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置

【課題】 ドクターブレードの温度を適切に安定化し、現像材の融着やドクターブレードの劣化を抑制するドクターブレード、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 現像剤を表面に担持して回転する現像ローラ62と、現像ローラ62に圧接して、現像剤の層厚を規制するドクターブレード68を備え、ドクターブレード68は、現像ローラ62に圧接する圧接部材684及び該圧接部材684を支持する支持部材682から構成され、圧接部材684は、中空部683を有するとともに、中空部683は、圧接部材682の温度変化を抑制する温度変化抑制物質684で満たされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体に代表される像担持体に形成された静電像を現像剤で現像する現像装置に関し、レーザープリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に好ましく用いられる現像剤層厚規制部材、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用するプリンタ等の画像形成装置においては、像担持体である感光体の表面に形成される静電潜像に対して、現像装置から現像剤を供給して現像することによって可視像である現像剤像を形成し、さらに現像剤像を記録紙などの転写媒体に転写し、転写媒体上に転写された現像剤像を定着して堅牢な記録画像を形成する。
【0003】
近年、カラーインクジェット方式の画像形成装置の普及により、電子写真方式を利用した画像形成装置においても、小型化・低価格化が求められている。このような状況から、電子写真方式の現像装置としては、構造が簡単で小型化が可能な、非磁性一成分現像方式が有用であり、現在も改良技術の開発が進められている。
【0004】
非磁性一成分現像方式は、潜像担持体に現像剤担持体(以下、現像ローラと記す。)を接触させて現像を行う接触現像方式と、潜像担持体と現像ローラ間に所定の間隙を隔てて現像を行う非接触現像方式に大別される。両者とも現像装置自身の構造は類似しており、コンパクトな特徴を有するが、現像ローラ及び現像剤層厚規制部材(以下、ドクターブレードと記す。)の材質は異なる場合がある。
【0005】
先ず、接触現像方式では、現像領域での均一な接触を得る為に、現像ローラは導電性を有するゴムなどの弾性部材から構成される。特に潜像担持体として感光体ドラムなどの剛体を用いる構成では、接触状態の不具合による傷つけを防止する観点からもゴムなどの弾性部材よりなる現像ローラは有効である。このゴムなどの弾性部材よりなる現像ローラの場合、現像ローラ上の現像剤層形成を行うドクターブレードとしては、ゴム製のもの、金属シャフトからなるローラ型のもの、又は金属板単体のものなどが好適に用いられる。中でも、金属板からなるブレードは低コストに提供できる為、広く用いられている。
【0006】
一方、非接触現像方式の場合、潜像担持体との間隙を精密に保持する必要があるため、現像ローラとしては、金属等の剛体から成るローラやスリーブが用いられることが多い。これはゴムローラに比べ、表面の研磨精度が高く、駆動軸と表面の偏心を抑制しやすいためである。また非接触ゆえに接触による傷つけの懸念が無いことも挙げられる。ドクターブレードとしては上記の接触型と同様幾つかの方式が採用可能であるが、現像剤層規制部での接触安定化や傷つけ防止の観点から、ゴム製のドクターブレードが用いられることが多い。ゴム製のドクターブレードとしては、金属板等の弾性支持部材とその端縁部にゴム材が配された現像剤層規制部からなるものが一般的であり、例えば特許文献1に示すような現像剤層規制部であるゴム部に中空部を有するものなどが知られている。
【0007】
図8は、特許文献1に示されたドクターブレードの構造を説明するための概略図である。該文献に示されたドクターブレードは、現像ローラ80に当接する可撓性シート部材81及び該可撓性シート部材81を支持する支持部材82から構成され、可撓性シート部材81の両端は、それぞれ、支持部材82の第一支持部82a、第二支持部82bで支持される。可撓性シート部材81は、湾曲するように曲げられることにより、可撓性シート部材81と支持部材82の間に中空部83を形成し、可撓性シート部材81を介して、該中空部を現像ローラ80に当接させている。
【0008】
このような構成とすることで、可撓性シート部材81と現像ローラ80が、長期間に亙って、常に同じ当接部で加圧接触しても、中空部83を有する可撓性シート部材81を変形させることで、現像ローラ表面の凹みを抑制でき、またドクターブレードと現像ローラの当接部からの現像剤の漏れを抑制でき、さらには画像形成時にのみ良好な画像を得るのに十分な当接圧を確保できる。これにより画像かぶりや画像むらが発生しないという効果を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−151939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、近年、画質に対する要求性能の高まりを受け、現像剤の小粒径化が進み、それに伴って現像ローラ上に形成する現像剤層の厚みも薄層化する必要があった。そのためにはドクターブレードによる加圧力を上げていく必要があるが、押圧力を大きくすることにより、ドクターブレードと現像剤、あるいはドクターブレードと現像ローラとの摩擦力が大きくなるため、現像剤の温度が上昇してしまい、現像剤が融解し固化してしまう、いわゆる融着現象が発生し、これによっても画像欠陥を生じさせてしまうという問題があった。
【0011】
また、高温環境下での駆動においては、上記特許文献1に示されたドクターブレードの中空部83に熱がこもってしまい、上記融着現象をさらに加速させてしまう問題もある。さらに、摩擦力が大きくなり、温度上昇が生じると、可撓性シート部材81のゴム部の劣化が進み、長期の使用に耐えられなくなり、画像品質の低下を招く虞もある。
【0012】
このように、ドクターブレードの使用環境においては、温度がその画像品質、あるいは装置全体の寿命に与える影響が大きいため、最適な温度状態を保つ必要がある。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドクターブレードの温度を適切に安定化し、現像材の融着やドクターブレードの劣化を抑制するドクターブレード、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る現像剤層厚規制部材は、現像剤を表面に担持して回転する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に圧接して、前記現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材を備えた現像装置に用いられる現像剤層厚規制部材であって、前記現像剤層厚規制部材は、前記現像剤担持体に圧接する圧接部材及び該圧接部材を支持する支持部材から構成され、前記圧接部材は、中空部を有するとともに、前記中空部は、前記圧接部材の温度変化を抑制する温度変化抑制物質で満たされていることを特徴とする。
【0015】
また、前記温度変化抑制物質は、前記圧接部材よりも比熱が大きいことを特徴としてもよい。また、前記温度変化抑制物質は、液体もしくは気体であることを特徴としてもよい。また、前記液体もしくは気体は、温度調整されたものであることを特徴としてもよい。
【0016】
本発明に係る現像装置は、上記のいずれかに記載の現像剤層厚規制部材を用いたことを特徴とする。また、前記温度変化抑制物質を前記中空部に循環させる循環機構をさらに備えることを特徴としてもよい。
【0017】
本発明に係る画像形成装置は、上記のいずれかの現像装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドクターブレードの温度を適切な温度に安定化し、ドクターブレードと現像ローラとの摩擦による温度上昇によっておこる現像剤の融着やドクターブレードの劣化を抑制するドクターブレード、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置Xを備えた画像形成装置Zの全体構成を表す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る現像装置Xの概略構成を表す断面図である。
【図3】実施形態1に係るドクターブレードの概略図である。
【図4】実施形態1に係るドクターブレードの中空部の形状例を示した断面図である。
【図5】実施形態2に係るドクターブレードの概略図である。
【図6】実施形態3に係るドクターブレードの概略図である。
【図7】実施形態3に係るドクターブレードの中空部における温度変化抑制物質の配置例を示した断面図である。
【図8】従来技術におけるドクターブレードの構造を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の現像装置について図面を参照して説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本実施形態は一成分現像方式を例に挙げて説明するが、現像方式はこれに限らず、例えば二成分現像方式など、他の現像方式でも適用可能である。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る現像装置Xを備えた画像形成装置Zの全体構成を表す断面図である。先ず同図を用いて、画像形成装置Zの構成と動作内容について説明する。
【0022】
画像形成装置Zは、印刷モードとして複写モード、プリンタモード、及びFAXモードを有しており、不図示の操作部からの操作入力や、パーソナルコンピュータ等の外部ホスト装置からの印刷ジョブの受信に応じた印刷モードが後述する制御部によって選択される。
【0023】
画像形成装置Zは、原稿読み取り部10、給紙部20、印刷部30、排紙部40に大別され、原稿読み取り部10が給紙部20の上方に配設され、排紙部40が原稿読み取り部10と給紙部20の中間部位に配設されている。
【0024】
以下に、上記各処理モードの中から複写モードについて説明する。ユーザが、原稿読み取り部10のプラテンガラス11上に原稿を載置した後、給紙部20の給紙カセット21或いは装置側面に設けられた手差しトレイ23に記録紙を載置し、さらに装置の外装前面部に配置される操作パネル(不図示)上の条件入力キーで、印刷枚数/印刷倍率などを入力した後に、操作パネルのスタートキーを操作するとコピー動作が開始される。
【0025】
スタートキーが操作されると、メイン駆動モータ(不図示)が始動し、各駆動ギヤが回転する。その後、給紙ローラ22又は22aが回転して用紙が装置内へ送出され、給紙された用紙はレジストローラ31に到達して捕捉される。このレジストローラ31により、用紙は、感光体ドラム32上に形成される画像形成開始部である画像の先端部と同期をとるために一時停止され、用紙の先端部が均一にレジストローラ31に押しつけられて用紙の先端位置の補正が行なわれる。
【0026】
一方、原稿読み取り部10においては、光源であるコピーランプ12aが点灯し、コピーランプユニット12が矢印C方向へ移動することで露光が開始される。コピーランプ12aにより原稿に照射された照射光は、原稿の画像情報を含む反射光となり、該反射光は、コピーランプユニット12に設けられた第1ミラー12bから第2ミラー13、第3ミラー14、光学レンズ15から、CCD(Charge Coupled Device)16へ入射されることによって読み取られる。このようにして読み取られた画像情報は、不図示のCCD回路で、光の画像情報が電気的信号に変換され、その画像情報信号は、設定された条件で画像処理が行われ、レーザスキャナユニット33へプリントデータとして送信される。
【0027】
他方、帯電ユニット34により、感光体ドラム32の周面の一部が軸方向全体に渡って所定帯電電位に帯電され、感光体ドラム32が回転することによってその周面全体が所定の負の帯電電位に帯電される。帯電した感光体ドラム32表面は、感光体ドラム32の回転により次工程へ移動する。
【0028】
次に、レーザスキャナユニット33では、回転方向に複数の反射面を有したポリゴンミラー及び各種光学系により、半導体レーザから出射されたレーザ光が偏向されながら感光体ドラム32へ照射される。これにより、レーザ光が前記帯電ユニット34により帯電した感光体ドラム32上を走査されて、感光体ドラム32上に静電潜像が形成される。
【0029】
その後、現像装置Xが備える現像槽61内の負の直流電位に印加された現像ローラ62により、現像槽61内のトナーが回転する感光体ドラム32表面上に供給され、静電潜像はこのトナーによって感光体ドラム32上の電位ギャップに応じて顕像化される。
【0030】
また、作像される記録紙は、タイミングを合わせてレジストローラ31により、感光体ドラム32方向へ搬送され、転写ユニット36により感光体ドラム32上のトナーが用紙に転写される。感光体ドラム32上の残留したトナーはドラムユニットのクリーニングブレード37aによってかきとられ、クリーナーユニット37により回収される。
【0031】
前記クリーニングブレード37aによりトナーがかきとられた感光体ドラム32の表面は、前記帯電ユニット34へ移動する途中で除電装置39により必要に応じて除電される。
【0032】
他方、トナーの転写が終了した用紙は、定着装置38の加熱ローラ38aと加圧ローラ38bとの間を通過して、熱と圧力が加えられ、用紙上の未定着トナーが用紙に溶融・固着され、排紙ローラ41により排紙トレイ42に排出される。前記加熱ローラ38aは、その内部に設けられた加熱ヒータ38cによって加熱される。
【0033】
また、原稿読み取り部10が備える原稿トレイ19に原稿が載置されていることが、所定のセンサにより検出されている場合には、所定のスタートキー操作がなされたときに給紙ローラ51が回転し、原稿トレイ19上に載置された原稿が原稿読み取り部10内へ送出されて所定の搬送経路Rt1中を搬送される。この搬送経路Rt1には、レジストローラ53が設けられており、このレジストローラ53によって原稿が捕捉され、原稿先端の位置決めが行われた後、所定のタイミングで原稿読み取り位置へ搬送される。そして、前記コピーランプユニット12が所定の停止位置で停止したまま搬送中の原稿を露光する。この露光により得られた原稿からの反射光により原稿画像を読み取る処理は、前述した通りである。このようにして画像が読み取られた原稿は、原稿排出部18へ排出される。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態に係る現像装置Xの概略構成を表す断面図である。ここでは同図を用いて現像装置Xの構成と動作概要につき説明を行う。現像装置Xは、大略、現像剤を担持する現像ローラ62と、現像剤を収容する現像槽61と、現像槽61の中で現像剤60を撹拌搬送する撹拌搬送部材63、64、及び65を含み、該撹拌搬送部材63、64、及び65は、矢印で示すように紙面から見て反時計方向に回転している。
【0035】
現像ローラ62は、現像槽内で回転自在に設けられる現像ローラである。現像ローラ62は、感光体ドラム32を臨み、その軸線が感光体ドラム32の回転軸線と平行になるように配置され、現像槽61本体のフレーム部に支持される。
【0036】
現像ローラ62に担持される現像剤としては、例えば、非磁性の一成分現像剤が用いられる。現像ローラ62上流に設けられたトナー供給ローラ66により、その表面にトナーを吸着し、現像ローラ62上に一定量のトナーを供給する。
【0037】
現像ローラ62の上方には、現像剤層厚規制部材として作用するドクターブレード68が設けられている。詳細は後述するが、ドクターブレード68は、支持部材681及び圧接部材682よりなり、支持部材681の先端には圧接部材682としてのウレタンゴムが一体化されており、支持部材681の他端は固定用の板金71及び72により挟持され、ビス73を用いて現像装置X本体に螺設されている。
【0038】
支持部材681は薄く、ばね性を有した金属板金であり、このばね性によってウレタンゴムを一定の圧力で現像ローラ62上に押圧している。これにより、現像ローラ62上には、一定の帯電量を有するトナー層が担持される。これらの電荷を有するトナーが、現像ローラ62と感光体ドラム32との電位差に応じて、現像ローラ62から感光体ドラム32に供給されて静電潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0039】
現像槽61は、たとえば硬質の合成樹脂などからなり、外観が略直方体形状を有する容器部材である。現像槽61内において、第1撹拌搬送部材65と第2撹拌搬送部材63は主として回転方向のトナーの攪拌と搬送の役割を持っている。両部材共に回転軸の周囲に設けられた薄い樹脂性、例えばPET(Polyethylene terephthalate)製の羽を有している。また、第3撹拌搬送部材64は例えば硬質の合成樹脂製のスクリュー状の回転部材であって、主として軸方向のトナーの攪拌と搬送の役割を持っている。
【0040】
第2撹拌搬送部材63とトナー供給ローラ66との間には、中間壁部材69が設けられる。中間壁部材69は、たとえば合成樹脂などからなる平板状の部材であり、現像槽61の長手方向に延びて現像槽61の底部から立ち上がるようにして設けられる。中間壁部材69の中央部には開口穴70があって、槽内において、第2撹拌搬送部材63からトナー供給ローラ66へ向う現像剤の流れを形成している。
【0041】
トナー供給ローラ66は、芯金のまわりに円筒状のたとえば発泡ウレタンなどの多孔性当接部が設けられたものであり、この穴部にトナーを吸着させつつ、現像ローラ62を摺擦する事でトナーを現像ローラ62に供給し、且つ現像後、現像ローラ62に残った余分のトナー層をクリーニングする役割も持つ。
【0042】
<実施形態1>
以下に、実施形態1について説明する。図3は、本実施形態にかかるドクターブレード68の概略図である。ドクターブレード68は、支持部材681及び圧接部材682よりなり、支持部材681の先端には圧接部材682としてのウレタンゴムが一体化されている。
【0043】
本実施形態では、支持部材681の材料としては、りん青銅板を用いているが、他にステンレス板やベリリウム銅板なども使用可能である。また、現像ローラ62に当接する圧接部材682であるゴム部材は、ゴムを溶かして支持部材に成形するため、ゴム部材の成型温度に耐えうる材質であることが望ましい。なお、ゴム部材の外側の支持部分長さAは25mmとしている。支持部材681のばね性は、支持部材681の厚みに依存しており、厚みが薄いとばね性が弱くなり、トナーすり抜け量が多くなる。また、厚みが厚いとばね性が強くなり、トナーのかすれの原因になる。このようなことから、支持部材の厚みは、0.12mm程度が適当である。
【0044】
本実施形態では、圧接部材682としてウレタンゴムを用いているが、他にシリコンゴムなども使用可能である。ゴムの硬度はJIS A硬度で60°〜85°が好適であり、本実施形態では65°〜70°とした。圧接部材682については、厚みを0.4mmとし、中空部683を有したゴムを射出成形などで形成し、支持部材681に接着する。
【0045】
中空部683内部は、温度変化抑制物質684で満たされている。温度変化抑制物質684は、圧接部材682であるゴム部材よりも比熱が大きく、温度変化の少ない物質、例えば水、あるいは吸水ポリマーに水を吸収させてゲル化したもの、あるいはヘリウムガスなどを封入する。このような方法で、厚み方向に中空部683を持ち、その中空部683に温度変化抑制物質684が充填されたドクターブレード68が作製される。
【0046】
なお、圧接部材682の長手方向に垂直に切断された中空部683の断面形状は、本実施形態では図4(a)に示すような半月状の形状としているが、これに限らない。例えば、図4(b)に示すような略四角形状、あるいは、図4(c)に示すような三角形状、あるいは図4(d)に示すような楕円形状などにしても構わない。図4(a)〜(c)に示した形状の場合は、現像ローラ62と接する面側に中空部683が広く面しており、中空部683に封入された温度変化抑制物質684がより効果的に働き、現像ローラ62と圧接部材682が接することによる摩擦で生じる温度変化を効果的に抑えることができる。また、図4(b)に示した形状の場合は、排気により支持部材側で温度上昇がある場合に、支持部材側の温度変化を効果的に抑えることができる。さらに、図4(c)に示した形状の場合は、温度変化抑制部材を少量に抑えることができる。
【0047】
本実施形態で用いた現像ローラ62は、直径φ16mm、材質はアルミニウムのスリーブであり、その表面は、表面粗さRa=0.3〜0.5μmのサンドブラスト処理がなされたものを用い、スリーブの回転周速度は145mm/sとした。現像剤はポリエステル樹脂を主成分とする非磁性一成分トナーであり、平均粒径は7μm、粉砕法で作成したものを用いた。
【0048】
上記のドクターブレードを用いて、現像剤の層形成状態や画像形成性能を確認したところ、トナーの融着やニップ幅の変動も少なくなり、画像均一性がアップした。ドクターブレード68において、圧接部材682に中空部683を設け、その中に温度変化抑制物質684を充填あるいは満たすことで、圧接部材682の温度上昇を軽減でき、画像品質を保つことが可能となった。
【0049】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。本実施形態では、温度変化抑制物質684として、温度調整した空気を循環させる点が実施形態1と異なる。
【0050】
図5は、本実施形態に係るドクターブレード68aの概略図である。圧接部材682に設けられた中空部683の内部には循環機構(不図示)により、温度調整した物質の一例である空気を気体媒体として循環させる。空気の循環は、圧接部材682にダクトあるいは配管などを連結し、ファンなどを用いて空気を循環させる方法が一般的である。
【0051】
ここで、圧接部材にゴム素材を用いた場合、低温環境下においては、ゴム部の硬度が硬くなるため、現像ローラ62とのニップ幅が狭くなり、現像剤の層厚を十分規制することができなくなり、結果としてスジムラという画像欠陥が生じるという問題がある。
【0052】
ところが、本実施形態のように、中空部683に温度調整された物質を循環させることで、圧接部材682の温度変化が少なくなり、圧接部材682にゴム素材を用いた場合には、ゴム硬度が一定化する。その結果、ニップ幅も温度変化による影響を受けにくくなり、安定した画像を得ることができる。また、圧接部材682と現像ローラ62の摩擦による温度上昇も防ぐことができるので、現像剤の融着を軽減することができる。
【0053】
なお、空気の循環方法としては、あらかじめ定められた一定温度に調整された空気を循環させる方法の他に、圧接部材682の温度を感知する温度センサ(不図示)を設けて、圧接部材682の温度が上がれば冷却のための低い温度に調整された空気を循環させ、逆に圧接部材の温度が下がれば高い温度に調整された空気を循環させ、圧接部材682の温度変化を抑えるといった方法でも構わない。
【0054】
あるいは圧接部材682の温度が上がれば、ファンの回転数を上げて、より多くの空気を送風させ、逆に圧接部材の温度が下がれば、ファンの回転数を下げることにより、圧接部材682の温度変化を抑制するという方法でも良い。
【0055】
また、本実施形態では、気体媒体として空気を用いたが、温度調整した水やエチレングリコールなどを液体媒体として用いても構わない。また、本実施形態では、圧接部材682としてゴム部材を用いたが、SUS(ステンレス鋼)などの金属部材であってもトナー融着を軽減する効果がある。
【0056】
<実施形態3>
次に実施形態3について説明する。本実施形態では上記実施形態1及び実施形態2を組み合わせた例を説明する。
【0057】
図6は、本実施形態に係るドクターブレード68bの概略図である。圧接部材682に設けられた中空部683の内部の一部に温度変化抑制物質684が設けられている。温度変化抑制物質684によって圧接部材682の温度を適正に保つことができるとともに、中空部683には温度調整された空気が循環されるので、一層効果的である。
【0058】
なお、本実施形態では、温度変化抑制物質684は、中空部683において現像ローラ62と接する面と同じ側に設けているが、これに限るものではない。
【0059】
図7は、中空部683に温度変化抑制物質684を配置した例を示すものであり、圧接部材682の長手方向に対し垂直方向に切断したときの断面図である。本実施形態では図7(a)に示すように、温度変化抑制物質684を中空部683において現像ローラ62と接する面と同じ側に設けているが、これ以外に、例えば、図7(b)に示すように支持部材681側に設けたり、図7(c)に示すように中空部683の内壁全面を覆うようにドーナツ状に設けたりしても構わない。このように、温度変化抑制物質684によって圧接部材682の温度を適正に保つことができるとともに、中空部683には温度調整された空気が循環されるので、より温度変化が少なくなり、一層効果的である。
【0060】
図7(a)のように、支持部材681側に空気の循環がなされる場合、支持部材681からの熱伝導が空気により遮断されるため、現像ローラ62と接する側の温度変化に対する影響が少なくなる。
また、図7(c)のように中空部683の周囲を温度変化抑制物質684で囲むような構成の場合は、圧接部材682の厚み方向での温度のばらつきが無くなり、温度の均一化が図れるとともに、圧接部材682のひずみも少なくなる。
【0061】
以上それぞれの実施形態を説明したが、いずれの実施形態においても、ドクターブレードの温度を適切に安定化し、現像材の融着やドクターブレードの劣化を抑制するドクターブレード、現像装置、及びこれを備えた画像形成装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、現像ローラに供給される現像剤の量を規制するドクターブレードを備えて、現像剤の層厚を規制するようにした画像形成装置であれば、上述したような構成に限定されるものではなく、その他の画像形成装置等に展開が可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 原稿読み取り部
11 プラテンガラス
12 コピーランプユニット
12a コピーランプ
12b 第1ミラー
13 第2ミラー
14 第3ミラー
15 光学レンズ
16 CCD
18 原稿排出部
19 原稿トレイ
20 給紙部
21 給紙カセット
22、22a 給紙ローラ
23 手差しトレイ
30 印刷部
31 レジストローラ
32 感光体ドラム
33 レーザスキャナユニット
34 帯電ユニット
36 転写ユニット
37 クリーナーユニット
37a クリーニングブレード
38 定着装置
38a 加熱ローラ
38b 加圧ローラ
38c 加熱ヒータ
39 除電装置
40 排紙部
41 排紙ローラ
42 排紙トレイ
51 給紙ローラ
53 レジストローラ
60 現像剤
61 現像槽
62 現像ローラ
63、64、65 撹拌搬送部材
66 トナー供給ローラ
68、68a、68b ドクターブレード
681 支持部材
682 圧接部材
683 中空部
684 温度変化抑制物質
69 中間壁部材
70 開口穴
71、72 板金
73 ビス
X 現像装置
Z 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を表面に担持して回転する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に圧接して、前記現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材を備えた現像装置に用いられる現像剤層厚規制部材であって、
前記現像剤層厚規制部材は、前記現像剤担持体に圧接する圧接部材及び該圧接部材を支持する支持部材から構成され、
前記圧接部材は、中空部を有するとともに、
前記中空部は、前記圧接部材の温度変化を抑制する温度変化抑制物質で満たされていることを特徴とする現像剤層厚規制部材。
【請求項2】
前記温度変化抑制物質は、前記圧接部材よりも比熱が大きいことを特徴とする請求項1記載の現像剤層厚規制部材。
【請求項3】
前記温度変化抑制物質は、液体もしくは気体であることを特徴とする請求項2記載の現像剤層厚規制部材。
【請求項4】
前記液体もしくは気体は、温度調整されたものであることを特徴とする請求項3記載の現像剤層厚規制部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の現像剤層厚規制部材を用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
前記温度変化抑制物質を前記中空部に循環させる循環機構をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の現像装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97347(P2013−97347A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242995(P2011−242995)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】