説明

現像剤担持体、その製造方法及び現像装置

【課題】樹脂層の耐摩耗性を高め、潤滑性を向上させることで、現像剤による汚染を未然防止し且つ長期間に亘って高画質を維持可能な現像剤担持体を提供する。
【解決手段】基体及び樹脂層を有する現像剤担持体であって、該樹脂層が式(1)で示されるユニットを有する変性シリコーン樹脂を含有する。nは1以上の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いる現像剤担持体、その製造方法及び現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表層にオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有した現像剤担持体が開示されている。この構成により現像剤担持体表面の潤滑性を図ることができるため、現像剤による現像剤担持体表面の耐汚染性を高めることができ、スリーブゴーストの悪化を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−264614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年、電子写真装置の更なる高速化及び長寿命化に対するニーズが高まってきている。このような状況下、本発明者らは、現像剤担持体および現像装置に対してもより一層の耐久性の向上が必要であるとの認識を得た。
【0005】
従って、本発明の目的は、樹脂層の耐摩耗性を高め、潤滑性を向上させることで、長期間の使用においても表面状態の変化が少なく、良好な現像特性を安定して得られる現像剤担持体を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成し得る現像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基体及び表面層としての樹脂層を有する現像剤担持体であって、該樹脂層が、下記式(1)で示される構造を有する変性シリコーン樹脂を含有することを特徴とする現像剤担持体である。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1)中、R及びRは、各々独立して下記式(2)乃至(5)のいずれかを示す。Aは、下記式(6a)で示されるユニットと下記式(6b)で示されるユニットとを有するアクリル樹脂成分を示す。nは1以上の整数を示す。
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
式(2)乃至(5)中、R乃至R、R10乃至R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15乃至R18、R23、R24及びR29乃至R32は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n、m、l、q、s及びtは、各々独立して1以上8以下の整数を示す。
p及びrは、各々独立して4以上12以下の整数を示し、x及びyは、各々独立して0または1を示す。*2及び*3は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。
【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
式(6a)において、R33は、水素原子又はメチル基を示す。R34は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*1は、式(1)中のRとの結合部位を示す。式(6b)において、R35は、水素原子又はメチル基を示し、R37、R38及びR39は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R36は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、Aは、アニオンを示す。
【0018】
また、本発明は、下記〔1〕乃至〔5〕の工程を有することを特徴とする前記現像剤担持体の製造方法である。
〔1〕式(9)及び式(10)で示されるモノマーを重合させてアクリル系重合体を得る工程(1)、
〔2〕式(11)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる工程(2)、
〔3〕前記工程(1)で得られたアクリル系重合体および前記工程(2)で得られた加水分解縮合物を含む塗工液の塗膜を基体上に形成する工程(3)、
〔4〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物中のR47に由来するエポキシ環を開裂させて該加水分縮合物の重合物を得る工程(4)、
〔5〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物もしくはその重合物と、前記アクリル系重合体とを脱水反応により結合させて前記塗膜を硬化させ、前記基体上に樹脂層を形成する工程(5)。
【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
【化10】

【0022】
式(9)において、R40は、水素原子又はメチル基を示し、R41は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。式(10)において、R42は、水素原子又はメチル基を示し、R44、R45およびR46は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R43は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。Aはアニオンを示す。式(11)において、R47は、下記式(12)乃至(15)のいずれかを示し、R48乃至R50は、各々独立して炭素数1乃至4のアルキル基を示す。
【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
【化14】

【0027】
式(12)乃至(15)において、R51乃至R53、R56乃至R58、R63、R64、R69及びR70は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R54、R55、R59乃至R62、R67、R68及びR73乃至R76は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R65、R66、R71及びR72は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、又は炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’及びt’は、各々独立して1以上8以下の整数を示す。p’及びr’は、各々独立して4以上12以下の整数を示す。
【0028】
更に本発明は、少なくとも負帯電性の現像剤と、前記現像剤を収容するための容器と、前記容器に貯蔵された現像剤を担持搬送するための現像剤担持体を有し、現像剤層厚規制部材により前記現像剤担持体上に現像剤層を形成しながら現像剤担持体上の現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと搬送し、前記静電潜像担持体の静電潜像を現像により現像し、現像剤像を形成する現像装置において、前記現像剤担持体が前記本発明に係る現像剤担持体であることを特徴とする現像装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の現像剤担持体は、樹脂層の耐摩耗性に優れ、且つ良好な潤滑性を有しているため、現像剤による表面汚染を未然に防止でき、且つ現像剤への摩擦帯電付与を長期に亘り安定化することができるため、終始良好な現像特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る現像装置の一態様を示す断面図である。
【図2】本発明に係る現像装置の他の態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは、特定のシリコーン樹脂ブロックとアクリル樹脂ブロックが結合した樹脂を含有する樹脂層を表面層として有する現像剤担持体を用いることで、耐摩耗性、潤滑性、及び負帯電性現像剤に対する帯電付与能を向上させることができることを見出した。すなわち、シリコーン樹脂ブロックが存在することにより潤滑性が向上し、4級アンモニウム塩を有するアクリル樹脂ブロックが存在することにより負帯電性現像剤に対して高い帯電付与能を与えることができる。その両者が3次元的に架橋した構造を有することにより、より緻密な樹脂層を形成することで耐摩耗性が向上する。
【0032】
<現像剤担持体>
本発明に係る現像剤担持体は、基体及び表面層としての樹脂層を有する現像剤担持体であって、該樹脂層が式(1)で示されるユニットを有する変性シリコーン樹脂を含有している。
【0033】
【化15】

【0034】
以下に、本発明における式(1)で示される変性シリコーン樹脂を構成する、アクリル樹脂成分(式(1)中のAで示される部分を構成する成分)及びシリコーン樹脂成分(式(1)中のAで示される部分以外を構成する成分)について説明する。
【0035】
<シリコーン樹脂成分>
式(1)中、R及びRは、各々独立して下記式(2)乃至(5)のいずれかを示す。
【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

【0038】
【化18】

【0039】
【化19】

【0040】
式(2)乃至(5)中、R乃至R、R10乃至R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15乃至R18、R23、R24及びR29乃至R32は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n、m、l、q、s及びtは、各々独立して1以上8以下の整数を示す。
p及びrは、各々独立して4以上12以下の整数を示し、x及びyは、各々独立して0または1を示す。*2及び*3は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。
【0041】
〔Si−O−M結合、Si−O−Ta結合〕
変性シリコーン樹脂は、式(7)で示される構成単位を有し、且つ、分子内にSi−O−Mの結合を有していることが好ましい。
【0042】
【化20】

【0043】
式(7)中、MはTi、ZrまたはHfを表す。
【0044】
また、変性シリコーン樹脂は、式(8)で示される構成単位を有し、且つ、分子内にSi−O−Taの結合を有していることが好ましい。
【0045】
【化21】

【0046】
変性シリコーン樹脂が、Si−O−M結合、またはSi−O−Ta結合を有することにより、樹脂中に緻密な架橋構造を形成することができ、樹脂の摩擦定数を低下させ、これを含む樹脂層の潤滑性を向上させることができる。
【0047】
<アクリル樹脂成分>
式(1)で示される変性シリコーン樹脂は、式(6a)及び(6b)で示されるユニットを有するアクリル樹脂成分によって変性されている。
【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
式(6a)において、R33は、水素原子又はメチル基を示す。R34は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*1は、式(1)中のRとの結合部位を示す。式(6b)において、R35は、水素原子又はメチル基を示し、R37、R38及びR39は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R36は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、Aは、アニオンを示す。
【0051】
変性シリコーン樹脂中に含まれるアクリル樹脂成分は、負帯電性現像剤の摩擦帯電量を高める役割を有する。更に、該アクリル樹脂成分は自身が架橋構造を有すると共に、シリコーン樹脂成分とも架橋しているため、結着樹脂として強度を高めることができる。その結果、樹脂層の耐摩耗性が向上し、長期間の使用によっても、高い現像特性を維持できる。係る効果をもたらすアクリル樹脂成分は、式(6a)で示されるユニット(以降「ユニット(1)」ともいう)、及び式(6b)で示されるユニット(以降「ユニット(2)」ともいう)を有する。
【0052】
ユニット(2)は、現像剤担持体の負帯電性現像剤への摩擦帯電付与能の向上に寄与する。式(6b)中のR37、R38及びR39のいずれかがオクタデシル基を超える長鎖アルキル基(炭素数19以上)のユニットを有する場合は、結晶性が高くなって溶媒との相溶性が相対的に低下する傾向にある。そこで、均一な樹脂層を得るために、R37乃至R39は炭素数1乃至18のアルキル基とすることが好ましい。式(6b)中のR37、R38及びR39から選ばれる1つ以上のアルキル基を炭素数8乃至18の長鎖アルキル基とすることで、現像剤担持体の負帯電性現像剤への摩擦帯電付与能をより高めることができるため、好ましい。式(6b)中のAは、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸の如き無機酸類、カルボン酸、スルホン酸の如き有機酸類におけるアニオンである。Aは、負帯電性現像剤の摩擦帯電量をさらに向上させるため、メチルスルホン酸イオン又はp−トルエンスルホン酸イオンであることがより好ましい。
【0053】
なお、上記のアクリル樹脂成分の帯電付与能をより良く制御するために、上記ユニット(1)、ユニット(2)以外に、下記式(17)で示される他のユニット(3)を含有しても良い。
【0054】
【化24】

【0055】
式(17)中、R77は、水素原子又はメチル基を示し、R78は、炭素数1乃至18のアルキル基を示す。
【0056】
<樹脂層中のその他の成分>
本発明の樹脂層には、本発明に係る変性シリコーン樹脂を含有させたことによる機能を阻害しない範囲において、他の樹脂や導電性粒子、表面に凹凸を形成する粒子等を含有させてもよい。
【0057】
樹脂層のより一層の耐摩耗性の向上のために、他の樹脂として、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を含有させてもよい。特に、フェノール樹脂は硬化後の硬度が高くすることができるため、好ましい。
【0058】
本発明では樹脂層の電気抵抗値を調整するために、導電性粒子を樹脂層中に含有することができる。導電性粒子としては、例えば、金属や導電性金属酸化物の微粉末、導電性カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0059】
本発明に係る樹脂層の体積抵抗値は、10Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。この範囲とすることで、現像剤への適正な摩擦帯電付与が達成でき、その結果、良好な現像特性を得ることができる。
【0060】
また、樹脂層の表面の粗さを適切な値に制御し、且つ維持する目的で、凹凸付与粒子を添加しても良い。本発明に使用可能な凹凸付与粒子としては、球状のものが好ましい。凹凸付与粒子の体積平均粒径の目安としては、0.3μm以上30.0μm以下、特には、0.5μm以上14.0μm以下であることが好ましい。
【0061】
<基体>
基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状の部材が挙げられる。基体の材質としてはアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮の如き非磁性の金属又は合金が挙げられる。
【0062】
<現像剤担持体の製造方法>
本発明に係る現像剤担持体は、例えば下記の反応工程によって得ることができる。
〔1〕式(9)及び式(10)で示されるモノマーを重合させてアクリル系重合体を得る工程(1)、
〔2〕式(11)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる工程(2)、
〔3〕前記工程(1)で得られたアクリル系重合体および前記工程(2)で得られた加水分解縮合物を含む塗工液の塗膜を基体上に形成する工程(3)、
〔4〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物中のR47に由来するエポキシ環を開裂させて該加水分縮合物の重合物を得る工程(4)、
〔5〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物もしくはその重合物と、前記アクリル系重合体とを脱水反応により結合させて前記塗膜を硬化させ、前記基体上に樹脂層を形成する工程(5)。
【0063】
【化25】

【0064】
【化26】

【0065】
【化27】

【0066】
式(9)において、R40は、水素原子又はメチル基を示し、R41は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。式(10)において、R42は、水素原子又はメチル基を示し、R44、R45およびR46は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R43は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。Aはアニオンを示す。式(11)において、R47は、下記式(12)乃至(15)のいずれかを示し、R48乃至R50は、各々独立して炭素数1乃至4のアルキル基を示す。
【0067】
【化28】

【0068】
【化29】

【0069】
【化30】

【0070】
【化31】

【0071】
式(12)乃至(15)において、R51乃至R53、R56乃至R58、R63、R64、R69及びR70は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R54、R55、R59乃至R62、R67、R68及びR73乃至R76は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R65、R66、R71及びR72は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、又は炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’及びt’は、各々独立して1以上8以下の整数を示す。p’及びr’は、各々独立して4以上12以下の整数を示す。
【0072】
以下に、本発明の現像剤担持体の製造方法における各工程の詳細を説明する。
【0073】
[工程(1);アクリル系重合体の合成]
工程(1)は、式(9)及び式(10)で示されるモノマーを重合させる工程である。この工程によって、本発明における変性シリコーン樹脂中に含まれるアクリル樹脂成分の原料となるアクリル系重合体を合成することができる。このアクリル系重合体は例えば、ヒドロキシル基変性アクリル系モノマーと第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーのラジカル重合反応により製造することができる。合成されたアクリル系重合体は式(16)および式(6b)で示されるユニットを有する。
【0074】
【化32】

【0075】
式(16)中、R33は水素原子又はメチル基を示し、R34は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。
【0076】
【化33】

【0077】
式(9)で示されるヒドロキシル基変性アクリル系モノマーとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミドが反応を容易に制御できる点で好ましい。
【0078】
式(10)で示される第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーにおいて、式(10)中のR44、R45及びR46のいずれかがオクタデシル基の炭素数を超える長鎖アルキル基(炭素数19以上)である場合、そのモノマーは、結晶性が高くなり、溶媒との相溶性が相対的に低下するために製造が困難となる場合がある。そのため、R44乃至R46は、炭素数1乃至18のアルキル基とすることが好ましい。式(10)中のR44、R45及びR46のうちの少なくとも1つのアルキル基が炭素数8乃至18の長鎖アルキル基を有するモノマーである場合は、樹脂層が負帯電性現像剤の摩擦帯電量をより高めることができるため、より好ましい。モノマー(9)及びモノマー(10)を用いて重合することで、本発明の変性シリコーン樹脂の製造に使用可能なアクリル系重合体を容易に得ることができる。
【0079】
アクリル系重合体は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合の如き公知の重合方法を用いて製造することできるが、中でも反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合法で使用する溶媒としては、アクリル系重合体が均一に溶解するものであれば構わないが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコールの如き低級アルコールが好ましい。低級アルコールとすることで、塗料とした時に低粘度となり、塗工後の樹脂層の成膜性が良好となりやすい。また、必要に応じて他の溶媒を混合して使用しても構わない。溶液重合法で使用する溶媒とモノマー成分の比は、モノマー成分100質量部に対して、溶媒25質量部以上400質量部以下とすることで粘度を適切な範囲に制御できるため、好ましい。モノマー混合物の重合は、例えば、モノマー混合物を重合開始剤の存在下で不活性ガス雰囲気下、温度50℃以上100℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0080】
重合開始剤としては以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
通常は重合開始剤をモノマー溶液に添加して重合を開始するが、未反応モノマーを低減するために重合開始剤の一部を重合の途中に添加しても良い。また、紫外線や電子線の照射によって重合を促進させる方法も使用することが可能であり、これらの手法を組み合わせても構わない。重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下、特には、0.1質量部以上15質量部以下である。重合開始剤の使用量をこの範囲にすることで、残留モノマーの量が低減でき、アクリル系重合体の分子量を容易に制御することができる。
【0082】
重合反応の温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、モノマー成分の組成に応じて設定することができるが、温度40℃以上150℃以下で行うことが安定して重合反応を進める点で好ましい。また、モノマー(10)は、式(18)で表されるモノマー(18)を4級化剤により4級化させて生成したものを用いることができる。
【0083】
【化34】

【0084】
式(18)中、R42は、水素原子、またはメチル基を示し、R44及びR45は、炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R43は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。4級化剤の具体例を以下に挙げる。ブチルブロマイド、2−エチルヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、ラウリルブロマイド、ステアリルブロマイド、ブチルクロライド、2−エチルヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ラウリルクロライド。4級化剤の使用量は、モノマー(18)1モルに対して、0.8モル以上、1.0モル以下が好ましい。かかるモノマーの4級化は、例えば、モノマーと4級化剤とを、溶媒中で温度60℃以上90℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0085】
また、上記モノマー(9)とモノマー(18)を共重合させた後に、さらに前記の4級化剤で4級化させることによって、所望の4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を得ることも可能である。その他に、例えば、モノマー(18)をメチルクロライドの如きアルキルハライドで4級化を行った後、モノマー(9)と共重合させる。得られた第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を、p−トルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸の如き酸で処理して対イオン交換を行い、目的のアニオン種とした第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体とすることも可能である。
【0086】
また、アクリル系重合体の摩擦帯電付与能を制御するため、もしくは、溶媒との溶解性を制御するために、上記以外のその他のモノマーをラジカル重合時に使用しても良い。その他のモノマーとしては、式(19)に示すモノマー(19)が挙げられる。
【0087】
【化35】

【0088】
式(19)中、R79は、水素原子又はメチル基を示し、R80は、炭素数1乃至18のアルキル基を示す。式(19)中のR80の炭素数は、溶媒との溶解性を制御するために適宜設定することが可能である。上記アクリル系重合体中の各ユニットの組成比率は、アクリル系重合体中のユニット(1)のモル数をa[モル]、ユニット(2)のモル数をb[モル]、その他のユニット(3)のモル数をc[モル]とする時、a/(a+b+c)が0.3以上0.8以下、b/(a+b+c)が0.2以上0.7以下、且つc/(a+b+c)が0.0以上0.5以下であることが好ましい。a/(a+b+c)を0.3以上とすることで、アクリル系重合体の架橋点が増加し、樹脂としての耐摩耗性を向上させることができる。また、b/(a+b+c)を0.2以上とすることで、アクリル系重合体の現像剤に対する摩擦帯電付与能を向上させることができ、負摩擦帯電性現像剤の摩擦帯電量を高めることができる。更に、c/(a+b+c)を0.5以下とすることで、ユニット(1)及びユニット(2)の導入による前記の効果を得ることが容易となる。なお、前記組成比率において、ユニット(1)がアクリル系重合体中に複数種含有される場合は、それらの合計モル数をa[モル]とする。また、ユニット(2)がアクリル系重合体中に複数種含有される場合は、それらの合計モル数をb[モル]とする。更に、ユニット(3)がアクリル系重合体中に複数種含有される場合は、それらの合計モル数をc[モル]とする。
【0089】
[工程(2);加水分解縮合物の合成]
工程(2)は、式(11)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる工程である。水及びアルコールの存在下で加水分解縮合反応行うことによって、加水分解縮合物を合成することができる。
【0090】
式(11)中、R47は、活性エネルギー線により架橋を形成し得るカチオン重合可能な基を有する式(12)乃至(15)で示される構造から選ばれるいずれかを示す。また、R48乃至R50は各々独立に炭素数1乃至4のアルキル基を示す。
【0091】
式(11)で示される第一の加水分解性シラン化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。4−(1,2−エポキシブチル)トリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリメトキシシラン、8−オキシラン−2−イルオクチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルオキシプロピルトリエトキシシラン。
【0092】
工程(2)においては、式(11)で示される加水分解性シラン化合物と式(20)で示される加水分解性シラン化合物を併用することができる。
【0093】
【化36】

【0094】
式(20)中、R81は、炭素数1乃至4のアルキル基またはフェニル基を示し、R82乃至R84は、各々独立に炭素数1乃至4のアルキル基を示す。
【0095】
式(20)で示される第二の加水分解性シラン化合物は、式(11)の加水分解性化合物の溶解性、及び樹脂の電気特性を向上させる。特にR81がアルキル基の場合、溶解性の改善を図り、R81がフェニル基の場合は、樹脂層の強度向上に寄与する。
【0096】
式(20)で示される第二の加水分解性シラン化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン。
【0097】
また本発明においては、前記加水分解性シラン化合物と共に式(21)乃至式(24)で表される加水分解性化合物のうち、少なくとも1種を混合し、加水分解縮合物を合成することが、緻密な架橋構造の形成、樹脂層の潤滑性の向上のため好ましい。
【0098】
【化37】

【0099】
上記式(21)乃至式(24)中、R85乃至R101は、各々独立して炭素数1乃至9のアルキル基を示す。
【0100】
式(21)で示される加水分解性チタン化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウムn−プロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムn−ブトキシド、チタニウムt−ブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムノニルオキシド、チタニウム2−エチルヘキソキシド、チタニウムメトキシプロポキシド。
【0101】
式(22)で示される加水分解性ジルコニウム化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。ジルコニウムメトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウム2−エチルヘキソキシド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキシド。
【0102】
式(23)で示される加水分解性ハフニウム化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−プロポキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、ハフニウム2−エチルヘキソキシド、ハフニウム2−メチル−2−ブトキシド。
【0103】
式(24)で示される加水分解性タンタル化合物として、具体的には以下のものを用いることができる。タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−プロポキシド、タンタルイソプロポキシド、タンタルn−ブトキシド、タンタルt−ブトキシド、タンタルム2−エチルヘキソキシド、タンタル2−メチル−2−ブトキシド。
【0104】
式(11)、式(20)、及び、式(21)乃至式(24)のいずれか1つの合計モル数を100モル%としたとき、Ti又はZr又はHf又はTaのモル含有量を5モル%以上、30モル%以下とすることが好ましい。Ti又はZr又はHf又はTaのモル含有量が5モル%以上であると、表面自由エネルギーを低下させる効果、つまり化学的な付着の抑制効果の高い樹脂層が得られる。Ti又はZr又はHf又はTaのモル含有量が30モル%以下であると、緻密な樹脂層が得られ、摩擦係数が急激に上昇するのを抑制し、現像剤や外添剤の物理的な付着を抑制することができる。
【0105】
加水分解縮合物を合成する際の加水分解性シラン化合物に対する水の添加量の割合WR(モル比)は、0.3以上6.0以下であることが好ましい。より好ましくは1.2以上3.0以下である。
WR=水/{加水分解性化合物(11)+加水分解性化合物(20)}
水の添加量が上記範囲内であれば、合成時の縮合の程度を制御し易くなる。また縮合速度を制御し易くなる。また上記範囲内であれば、エポキシ基が開環しないpH領域において合成を行えるので好ましい。
【0106】
[工程(3);基体への塗工液の塗布]
工程(3)は、前記工程(1)で得られたアクリル系重合体および工程(2)で得られた加水分解縮合物を含む塗工液の塗膜を基体上に形成する工程である。
【0107】
先ず、アクリル系重合体および加水分解縮合物の混合物が溶剤に分散されて塗工液が調製される。その他の樹脂成分として熱硬化性樹脂等を併用する場合や、導電性粒子及び凹凸付与粒子の如き他の材料を使用する場合は、これらの材料も一緒に混合される。分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。
【0108】
アクリル系重合体と加水分解縮合物の混合比率(質量部)は、90:10乃至20:80の範囲が好ましい。加水分解縮合物の含有量が10質量部以上であれば現像剤担持体汚染が防止され、また80質量部以下であれば耐久性は良好である。塗工液の基体への塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能であるが、樹脂層中の各成分を均一にする為には、スプレー法が好ましい。
【0109】
[工程(4);加水分解縮合物の重合]
工程(4)は、前記塗膜に含まれる前記加水分解縮合物中のR47に由来するエポキシ環を開裂させて該加水分解縮合物の重合物を得る工程である。即ち、工程(4)においては、塗膜中の加水分解縮合物の重合が進行する。加水分解縮合物を重合させるためには、活性エネルギー線を照射することが好ましい。活性エネルギー線照射により、式(11)に含まれるカチオン重合可能な基R47は開裂し、式(11)、または更に式(20)の化合物を架橋させることで硬化反応が促進され、樹脂層の耐久性が向上する。
【0110】
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。硬化反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に加水分解性縮合物を架橋させることができる。
【0111】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプの如きランプを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上、480nm以下の光を豊富に含む紫外線源であることが好ましい。なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離で行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0112】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、例えばウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」や「UVD−S254」(いずれも商品名)を用いて測定することができる。また、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、例えばウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」や「VUV−S172」(いずれも商品名)を用いて測定することができる。
【0113】
光重合開始剤としては、例えばカチオン重合開始剤、ラジカル型光重合開始剤が挙げられるが、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合開始剤を少なくとも含むことが好ましい。カチオン重合開始剤としては、ルイス酸あるいはブレンステッド酸の如きオニウム塩を用いることが好ましい。その他のカチオン重合開始剤としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。各種カチオン重合開始剤の中でも、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特には、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(25)で示される構造を有する化合物(商品名:「アデカオプトマーSP150」、(株)ADEKA製)が好ましい。また、下記式(26)で示される構造を有する化合物(商品名:「イルガキュア261」、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0114】
【化38】

【0115】
【化39】

【0116】
また、光重合開始剤は、式(11)及び式(20)乃至式(24)の加水分解性化合物から得られる加水分解縮合物100質量部に対して、1.0質量部以上、5.0質量部以下の範囲であることが好ましい。光重合開始剤の使用量が1.0質量部以上であれば紫外線による硬化を十分に行うことができ、5.0質量部以下であれば光重合開始剤の縮合反応液への溶解を容易に行うことができる。
【0117】
[工程(5);脱水反応による塗膜の硬化]
工程(5)は、前記塗膜に含まれる加水分解縮合物もしくはその重合物とアクリル系重合体とを脱水反応により結合させて塗膜を硬化させ、基体上に樹脂層を形成する工程である。この脱水反応には、熱風乾燥炉、赤外線ヒーターの如き公知の加熱装置が好適に利用可能である。加熱温度を100℃以上、170℃以下として処理することが好ましい。上記の温度範囲とすることで、溶媒の揮発と同時に脱水反応を進行させることができる。
【0118】
この脱水反応は、工程(4)の活性エネルギー線照射後に行うことが好ましい。活性エネルギー線照射を先に行うことで、加水分解縮合物中においてカチオン重合可能な基を介した架橋が行われ、加水分解縮合物の炭素鎖末端にアクリル系重合体と反応可能な水酸基が生成される。
【0119】
工程(5)においては、式(16)および式(6b)で示されるユニットを有するアクリル系重合体と、加水分解縮合物(もしくはその重合物)との結合は、式(16)中の水酸基と、加水分解縮合物(もしくはその重合物)中の水酸基を介して行われ、アクリル系重合体中の式(16)で示されるユニットは、式(6a)で示されるユニットとなる。
【0120】
樹脂層の膜厚は、均一な膜厚に成形することが容易であることから、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、更に好ましくは4μm乃至30μmである。樹脂層の表面粗さの目安としては、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)で0.3μm乃至2.5μmである。
【0121】
<現像装置>
本発明に係る現像装置は、トナー粒子を有する負帯電性の現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に貯蔵された該現像剤を担持搬送するための現像剤担持体と、現像剤層厚規制部材とを有する。そして、該現像剤層厚規制部材により該現像剤担持体上に現像剤層を形成しながら該現像剤担持体上の該現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へ搬送し、該静電潜像担持体の静電潜像を該現像剤により現像し、現像剤像を形成するものである。そして、該現像剤担持体が、上記した本発明に係る現像剤担持体である。
【0122】
本発明に係る現像装置は、磁性一成分現像剤や非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置や、二成分現像剤を用いた現像装置のいずれにも適用することができる。特に、本発明の現像装置としては、現像剤担持体上の現像剤の摩擦帯電量にばらつきが生じやすい傾向を有する磁性一成分非接触型現像装置や、非磁性一成分非接触型現像装置の如き非接触型現像装置に好適に適用することができる。
【0123】
図1は本発明に係る、磁性一成分非接触型現像装置の断面図である。現像剤を収容するための容器(現像容器109)と、この容器に貯蔵された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤(磁性トナー、不図示)を担持搬送するための現像剤担持体105を有している。現像剤担持体105には、基体102である金属円筒管上に樹脂層101が被覆形成された現像スリーブ103が設けられている。また、現像スリーブの内部には磁石(マグネットローラ)104が配置され、磁性トナーを表面上に磁気的に保持するようになっている。一方、静電潜像を担持する感光体ドラム106は、矢印B方向に回転する。そして、現像剤担持体105と感光体ドラム106とが対向する現像領域Dにおいて、現像剤担持体105上の磁性トナーを静電潜像に付着させ、磁性トナー像を形成する。かかる現像装置を用いた現像方法を以下に説明する。
【0124】
現像容器109は、第一室112と第二室111に分割されており、第一室112に充填された磁性トナーは撹拌搬送部材110により現像容器109及び仕切り部材113により形成される隙間を通過して第二室111に送られる。第二室111中には撹拌部材114が設けられ、磁性トナーが滞留するのを防止する。
【0125】
現像容器には弾性ブレード107が備えられている。この弾性ブレード107は、現像剤担持体105に、トナーを介して接触又は押し当てられ、トナーは強い規制を受けて現像剤担持体105上に薄い層に形成される。この種の現像装置においては、トナーは現像剤担持体表面の導電性の不均一さの影響を受けやすく、現像剤担持体上のトナー層は摩擦帯電量がばらつきやすく、摩擦帯電量の分布がブロードになりやすい。しかしながら、このような現像装置においても、本発明の現像剤担持体を用いることで、上記現像剤担持体表面の導電性が均一なため、トナーの摩擦帯電量分布をシャープにすることができる。
【0126】
ここで、現像剤担持体105に対する弾性ブレード107の当接圧力は、線圧4.9N/m以上49N/m以下であることが、トナーの規制を安定化させ、トナー層の厚みを好適に規制できる点で好ましい。弾性ブレード107の当接圧力を線圧4.9N/m以上とすると、現像剤担持体上に形成するトナー層の厚さを高精度に制御することができ、得られる画像においてカブリやトナーもれの発生を抑制することができる。また、線圧49N/m以下とすると、トナーの摺擦力が適度な大きさとなり、トナーの劣化や現像剤担持体105及び弾性ブレード107へのトナーの融着を防止することができる。また、現像剤担持体105に担持された磁性トナーを感光体ドラム上の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体105に現像バイアス電源108から現像バイアス電圧を印加することが好ましい。上記例は磁性一成分非接触型であるが、本発明の現像装置は、現像剤担持体上のトナーの層厚が、現像領域Dにおける現像剤担持体と感光体ドラムとの間の間隙距離以上の厚さに形成される、磁性一成分接触型現像装置にも適用することができる。
【0127】
図2は本発明に係る、非磁性トナーを用いる非磁性一成分非接触型現像装置の断面図である。静電潜像を担持する感光体ドラム206は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体205は、基体(金属製円筒管)202とその表面に形成される樹脂層201から構成されている。基体として金属製円筒管の代わりに円柱状部材を用いることもでき、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)が用いられるため、基体202の内部には磁石は内設されていない。このような現像装置における現像方法を以下に説明する。
【0128】
現像容器209内には非磁性一成分現像剤212(非磁性トナー)を撹拌搬送するための撹拌搬送部材210が設けられている。更に、現像容器内には、現像剤担持体205に非磁性トナー212を供給し、かつ現像後の現像剤担持体205の表面に残存する非磁性トナー212を剥ぎ取るための、現像剤供給剥ぎ取り部材(RSローラ)211が現像剤担持体205に当接して設けられている。RSローラ211が現像剤担持体205と同方向又は反対方向に回転することにより、現像容器209内で現像剤担持体205に残留する非磁性トナー212を剥ぎ取り、新たな非磁性トナー212が供給される。現像剤担持体205は、供給された非磁性トナー212を担持して、矢印A方向に回転することにより、現像剤担持体205と感光体ドラム206とが対向した現像領域Dに非磁性トナー212を搬送する。
【0129】
現像剤担持体205に担持されている非磁性トナーは、現像剤層厚規制部材207により現像剤担持体205の表面に押し当てられ、その厚みが一定に形成される。非磁性トナーは相互間、現像剤担持体205との間、現像剤層厚規制部材207との間の摩擦により、感光体ドラム206上の静電潜像を現像するのに十分な摩擦帯電が付与される。現像剤担持体205上に形成される非磁性トナー層の厚みは、現像部における現像剤担持体205と感光体ドラム206との間の最小の間隙よりも薄くてもよい。現像剤担持体205に担持された非磁性トナー212を感光体ドラム206の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体205に現像バイアス電源208から現像バイアス電圧を印加することも可能である。現像バイアス電圧208としては、直流電圧、交番バイアス電圧いずれであってもよく、その電圧も上記と同様の電圧とすることが好ましい。RSローラ211としては、弾性ローラが好ましい。また、RSローラ211の代わりに、場合により、ベルト、ブラシ部材を用いてもよい。現像容器には、図1における弾性ブレード107と同様に、弾性ブレード207が備えられている。
【0130】
また、現像剤担持体205に担持された磁性トナーを感光体ドラム上の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体205に現像バイアス電源208から現像バイアス電圧を印加することが好ましい。上記例は非磁性一成分非接触型であるが、現像剤担持体上の非磁性一成分現像剤の層厚が、現像領域Dにおける現像剤担持体と感光体ドラムとの間の間隙距離以上の厚さに形成される、非磁性一成分接触型現像装置にも好適に適用できる。
【0131】
本発明の現像装置は、現像剤層厚規制部材として弾性ブレード107の代わりに強磁性金属製の磁性ブレードを使用する実施形態としても良い。現像剤層厚規制部材以外にも、現像容器109の形状、撹拌搬送部材110及び114の有無、磁極の配置、補給容器の有無などを変更した実施形態としても良い。
【0132】
<現像剤>
現像剤は、特に限定されるものではなく、使用される現像装置に応じて適宜選択できる。例えばバインダー樹脂に、着色剤、荷電制御剤、離型剤、又は無機微粒子を配合したものである。バインダー樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0133】
現像剤には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤を現像剤粒子に包含させる(内添)、又は現像剤粒子と混合して用いる(外添)ことができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。
【0134】
負の荷電制御剤としては、有機金属化合物又はキレート化合物が有効である。その具体例としては、例えば、アセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸又はサリチル酸系の金属錯体又は塩が挙げられる。
【0135】
磁性現像剤とする場合、磁性材料として、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、若しくはフェライトの如き酸化鉄系金属酸化物を用い得る。なお、このような磁性材料は、着色剤として用いることもできる。また、現像剤には離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックス;脂肪酸エステルを主成分とするワックス類を用いることができる。
【0136】
さらに、現像剤には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ等の無機微粉体を外添することが好ましい。すなわち、無機微粉体を現像剤表面近傍に存在させていることが好ましい。また、無機微粉体以外の外添剤として、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤をさらに加えて用いても良い。
【0137】
現像剤を作製するには、例えば、まず、バインダー樹脂、着色剤としての顔料又は染料、離型剤、必要に応じて磁性材料や荷電制御剤、及びその他の添加剤をヘンシェルミキサー、ボールミキサーの如き混合機により充分に混合する。次いで、これを加熱ロール、ニーダー、エクストルーダの如き熱混練機を用いて溶融して樹脂類を互いに相溶せしめた中に離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめる。この溶融物を、冷却固化した後、粉砕及び分級を行って現像剤粒子を得る。さらに、必要に応じて所望の添加剤を加え、ヘンシェルミキサーの如き混合機により充分に混合して、現像剤とすることもできる。
【0138】
現像剤は、質量平均粒径(D)が4μm以上11μm以下の範囲にあることが好ましい。このような現像剤を使用すれば、現像剤の帯電量あるいは画質及び画像濃度がバランスのとれたものとなる。
【実施例】
【0139】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。まず、1.評価方法および2.製造例を説明する。
【0140】
<1.評価方法>
以下に本発明に関わる物性の測定方法及び分析方法について説明する。
【0141】
(1)アクリル系重合体の化学構造評価
熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)装置 Voyager(商品名、サーモエレクトロン社製)を使用し、アクリル系重合体のポリマー構造を分析した。なお、測定条件は、熱分解温度:600℃、カラム:HP−1(15m×0.25mm×0.25μm)、Inlet:温度300℃、Split:20.0、注入量:1.2ml/min、昇温:50℃(4min)−300℃(20℃/min)とした。測定サンプルは、アルミシート上にアクリル系重合体を塗布し、紫外線照射(波長254nm、積算光量9000mJ/cm)、120℃、30分で硬化させ、膜厚7乃至20μmの薄膜を形成し、薄膜を切り取ったものを使用した。
【0142】
(2)シリコーン樹脂成分の化学構造評価
核磁気共鳴(NMR)装置 JMN−EX400(商品名、日本電子株式会社製)を使用し、29Si−NMRによりシリコーン樹脂成分の構造を分析した。測定サンプルは、現像剤担持体の樹脂層の中央部及び左右両端近傍を削り取った3サンプルを使用した。
【0143】
(3)Si−O−M結合及びSi−O−Ta結合の解析
フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置 FT−IR8300(商品名、島津製作所)を使用し、樹脂層のSi−O−M結合及びSi−O−Ta結合の有無を解析した。測定サンプルは、現像剤担持体の樹脂層の中央部及び左右両端近傍を削り取った3サンプルを使用した。
【0144】
(4)Si−O−C結合の解析
フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)装置 FT−IR8300(商品名、島津製作所)を使用し、シリコーン樹脂成分とアクリル樹脂成分の結合であるSi−O−C結合の有無を解析した。測定サンプルとしては、現像剤担持体の製造過程において、工程(4)の紫外線照射後の樹脂層を削り取ったもの(サンプル1)、および、その後の工程(5)の加熱処理後の樹脂層を削り取ったもの(サンプル2)の2種類を用いた。両サンプルのSi−O−C結合のピーク(1050cm−1近傍)を定量し、その差分からシリコーン樹脂成分とアクリル樹脂成分の結合であるSi−O−C結合の有無を判定した。尚、各サンプルは樹脂層の各10箇所をから採取し、測定した。
【0145】
(5)現像剤担持体表面の算術平均粗さRa
現像剤担持体表面の算術平均粗さRaは、JIS B0601−2001に準拠し、表面粗さ計 サーフコーダーSE−3500(商品名、株式会社小坂研究所製)を用いて測定した。測定条件は、カットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとし、長手方向中央部及び両端の3箇所、周方向に120度間隔で3箇所の計9箇所について測定し、その平均値を当該試料の算術平均粗さRaとした。
【0146】
(6)現像剤担持体の樹脂層の膜厚
防振台の上に設置したデジタル寸法測定器:LS−7070M(装置名、株式会社キーエンス製)を用いて測定を行った。樹脂層形成前および形成後の現像剤担持体について、それぞれ長手方向に対し30分割して30箇所測定し、更に現像剤担持体を周方向に90°回転させて30箇所、合計60箇所における、樹脂層形成前の外径d1および樹脂層形成後の外径d2を測定した。そのd2およびd1の平均値の差を樹脂層の膜厚とした。
【0147】
(7)現像剤の質量平均粒径D
粒径測定装置 コールターマルチサイザーIII(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて調整した約1%塩化ナトリウム水溶液を使用した。電解液約100ml中に、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩約0.5mlを加え、さらに測定試料約5mgを加え試料を懸濁させる。試料を懸濁させた電解液は、超音波分散機で約1分間分散処理を行い、前記測定装置により、100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出した。この結果より、質量平均粒径Dを算出した。
【0148】
(8)現像剤の平均円形度測定
現像剤の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(商品名:FPIA−3000、シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定した。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液(コンタミノンN、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加えた。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却した。
【0149】
超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(商品名:VS−150、ヴェルヴォクリーア社製)を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加した。測定には、対物レンズ(商品名:UPlanApro(倍率10倍、開口数0.40))を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース(商品名:PSE−900A、シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測した。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
【0150】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子をイオン交換水で希釈して用いて自動焦点調整を行った。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。標準ラテックス粒子として、RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A(商品名、DukeScientific社製)を使用した。
【0151】
実施例においては、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けたときの測定及び解析条件で測定を行った。
【0152】
(9)画像濃度
画像比率5.5%であるテストチャート上の直径5mm丸部のコピー画像濃度を、反射濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)を用いて測定し、10点の平均値を画像濃度とした。
【0153】
(10)カブリ
デジタル白色光度計(商品名:REFLECTMETER MODEL TC−6DS、有限会社東京電色製)を用いて測定した。プリントアウト画像の白地部分の白色度と未使用の転写紙の白色度の差からカブリ濃度(%)を算出し、10点の平均値をカブリとした。
【0154】
(11)画質
画質の評価は1ドットライン画像をプリントアウトした際のラインの再現性とライン周辺部の現像剤の飛び散りをルーペを用いて30倍に拡大し以下の基準に基づき評価した。
A:飛び散りがほとんど発生せず、良好なライン再現性を示す。
B:軽微な飛び散りが見られる。
C:飛び散りが見られるがライン再現性に対する影響は少ない。
D:顕著な飛び散りが見られ、ライン再現性に劣る。
【0155】
(12)現像剤担持体の汚染
連続プリント後の樹脂層表面をエアーガンで清掃し肉眼で観察すると共に、超深度形状測定顕微鏡(商品名:VK−8500、株式会社キーエンス製)を用いて200倍の倍率下でも観察し、現像剤担持体汚染の程度を以下の基準にて評価した。
A:ほとんど汚染が観察されない。肉眼でも200倍でも汚染が観察されない。
B:肉眼では観察できないが、200倍で観測できる軽微な汚染が部分的に発生している。
C:肉眼では観察できないが、200倍で観測できる軽微な汚染が全体的に発生している。
D:肉眼でもはっきり観察できる融着が部分的に発生している。
E:肉眼でもはっきり観察できる融着が全面に発生している。
【0156】
(13)現像剤担持体の樹脂層の削れ量
4万枚または6万枚の耐久試験終了後の現像剤担持体を現像装置から取り外し、エアブローにて現像剤担持体表面の現像剤を除去した後、前記「(6)現像剤担持体の樹脂層の膜厚」の測定方法と同様の手法で、60箇所において外径d3を測定した。d3およびd2の各々の平均値の差を2で割って現像剤担持体の樹脂層の削れ量とした。
【0157】
<2.製造例>
アクリル系重合体の製造例1〜10、縮合物中間体の製造例1〜6、加水分解縮合物の製造例1〜10、アクリル系重合体と加水分解縮合物を混合した合成液の製造例1〜25、及びその他材料(導電性粒子、凹凸付与粒子)、並びに、現像剤の製造例1〜2を説明する。
【0158】
<2−1.アクリル系重合体の製造例>
〔製造例A−1〕
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の表1に示す材料を混合し、系が均一になるまで撹拌した。
【0159】
【表1】

【0160】
上記材料を撹拌しながら、温度70℃まで昇温した後、5時間撹拌して3級アミノ基含有モノマーの4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有アクリル系モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、共重合成分として、N−メチロールアクリルアミド14.2質量部を反応系内に仕込み、系が均一になるまで撹拌した。次いで、撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温した。そこに、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部をイソプロピルアルコール50質量部に溶解した重合開始剤溶液を滴下ロートから1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下、還流状態で更に5時間反応させ、さらにAIBNを0.2質量部添加した後、1時間反応させて、重合反応を終了させた。この溶液に、p―トルエンスルホン酸を0.1質量部を添加し、更にイソプロピルアルコールで希釈して固形分40質量%のアクリル系重合体溶液A−1を得た。
【0161】
〔製造例A−2〜A−7〕
材料および使用量を表2に示すものとしたこと以外は、製造例A−1の場合と同様にして、アクリル系重合体溶液A−2乃至A−7を得た。
【0162】
〔製造例a−8〜a−10〕
材料および使用量を表2に示すものとしたこと以外は、製造例A−1の場合と同様にして、アクリル系重合体溶液a−8乃至a−10を得た。なお、表2においては溶剤成分の使用量の記載が省略されている。
【0163】
【表2】

【0164】
得られたアクリル系重合体溶液についてGC/MSを用いて構造分析した。その結果、アクリル系重合体の構造が表3の通りであることを確認した。
【0165】
【表3】

【0166】
<2―2.縮合物中間体の製造例>
〔製造例B−1〕
エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)[商品名:KBM−403、信越化学工業株式会社製]11.97g(0.051モル)、ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)[商品名:KBM−3063、信越化学工業株式会社製]65.25g(0.317モル)を300mlのナスフラスコに入れた。次にエタノール(EtOH)[キシダ化学(株)特級]96.43g、イオン交換水(pH=5.5)11.59gをナスフラスコに追加した。
【0167】
更にフットボール型撹拌子(全長45mm、径20mm)を入れ、室温で、回転数900rpmで30分間スターラーで撹拌し、内容物を混合した。合成時の固形分は28質量%であった。温度暴走防止機構付きスターラー上に、120℃に設定したオイルバスを設置し、このオイルバス中に上記フラスコを置き、回転数750rpmとした。フラスコ内容物は20分後に120℃に到達し、20時間加熱還流を行うことによって、縮合物中間体B−1を得た。
【0168】
〔製造例B−2〜B−4〕
表4に示した材料及び使用量としたこと以外は、製造例B−1の場合と同様にして縮合物中間体B−2乃至B−4を得た。尚、表4中の左欄の記号は、表5に示す化合物を意味する。
【0169】
〔製造例b−5〕
表4に示した材料及び使用量としたこと以外は、製造例B−1の場合と同様にして比較用縮合物中間体b−5を得た。
【0170】
〔製造例b−6〕
比較用縮合物中間体b−6としては、シリコンエポキシワニス ES−1001N(商品名、信越シリコーン株式会社製)をそのまま使用した。
【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
<2−3.加水分解縮合物の製造例>
〔製造例C−1〜C−4〕
光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩[商品名:アデカオプトマーSP150、(株)ADEKA製]を、メタノールで濃度が10質量%となるように希釈した。次に、各々縮合物中間体B−1乃至B−4の50g分の固形分100質量部に対して、光カチオン重合開始剤3.0質量部となるように、メタノール10質量%希釈重合開始剤を添加した。そして、メタノールで調整し固形分20質量%の最終的な加水分解縮合物C−1乃至C−4を調製した。
【0174】
〔製造例C−5〕
上記縮合物中間体B−1を86.85g、チタニウムイソプロポキシドTi(O−iPr)を10.42g取り、300mlのナスフラスコに入れ、室温で3時間撹拌し、縮合物を得た。そして、得られた縮合物の50g分の固形分100質量部に対して、光カチオン重合開始剤3.0質量部となるように、前述のメタノール10質量%希釈重合開始剤を添加した後、メタノールで調整し固形分20質量%の最終的な加水分解縮合物C−5を調製した。
【0175】
〔製造例C−6〜C−9、および製造例c−11〕
表6に示す材料及び使用量としたこと以外は、製造例C−5と同様にして加水分解縮合物C−6乃至C−9、および比較用加水分解縮合物c−11を得た。
【0176】
〔製造例c−10〕
表6に示す材料及び使用量としたこと以外は、製造例C−1と同様にして比較用加水分解縮合物c−10を得た。
【0177】
【表6】

【0178】
<2−4.アクリル系重合体と加水分解縮合物を混合した合成液の製造例>
〔製造例D−1〕
アクリル系重合体溶液A−1及び加水分解縮合物C−1を質量比50:50でビーカーに入れ、室温で30分間撹拌し、合成液D−1を調製した。合成液D−1の固形分は30質量%であった。
【0179】
〔製造例D−2〜D−19、および製造例d−20〜d−25〕
表7に示すアクリル系重合体及び加水分解縮合物の種類及び比率としたこと以外は、製造例D−1と同様にして合成液D−2乃至D−19、および比較用合成液d−20〜d−25を得た。
【0180】
【表7】

【0181】
<2−5.導電性粒子、凹凸付与粒子>
現像剤担持体の樹脂層用の導電性粒子及び凹凸付与粒子として以下の表8に示すものを用いた。
【0182】
【表8】

【0183】
<2−6.現像剤の製造例>
〔製造例Z−1〕
下記の表9に示す成分(1)の材料の混合物を還流(温度:146 ℃乃至156 ℃)しているクメン200質量部中に4時間かけて滴下し、クメン還流下で溶液重合を完了させ、減圧下で200℃まで昇温させながらクメンを除去した。
【0184】
このようにして得られたスチレン−アクリル系共重合体30質量部を、下記の表9に示す成分(2)の材料の混合物中に溶解し混合溶液とした。
【0185】
次いで上記混合溶液に、ポリビニルアルコール部分ケン化物0.15質量部を溶解した水170質量部を加え、激しく撹拌しながら懸濁分散液とした。更に、水100質量部を加え、窒素雰囲気に置換した反応器に懸濁分散液を添加し、約80℃で8時間重合した。重合終了後、濾別し、充分に水洗した後、脱水乾燥し、結着樹脂Aを得た。
【0186】
更に、下記の表9に示す成分(3)の材料の混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、115℃に加熱された2軸押出機で溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕して現像剤粗粉砕物を得た。
【0187】
【表9】

【0188】
得られた現像剤粗粉砕物を、ターボミルを用いて、機械的に微粉砕し、コアンダ効果を利用したエルボジェット分級機で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。以上の工程を経て、コールターカウンター法で測定される質量平均粒径(D)5.9μm、平均円形度が0.945の負帯電性現像剤粒子を得た。
【0189】
この現像剤粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性現像剤としての現像剤Z−1を調製した。
【0190】
〔製造例Z−2〕
60℃に加温したイオン交換水900質量部に、リン酸三カルシウム3.5質量部を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて、10000rpmにて撹拌し、水系媒体を調製した。
【0191】
一方、下記の表10に示す材料をホモジナイザー(日本精機社製)に投入し、60℃に加温した後、9000rpmにて攪拌し、溶解、分散した。
【0192】
【表10】

【0193】
これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0194】
前記水系媒体中にこの重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて8000rpmで攪拌し、造粒した。その後、プロペラ式撹拌装置に移して撹拌しつつ、2時間かけて70℃に昇温し、更に4時間後、昇温速度40℃/hで80℃まで昇温し、80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、重合体粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してマゼンタトナーの母体粒子(質量平均粒径(D)5.8μm、平均円形度0.973)を得た。
【0195】
この現像剤母体粒子100質量部に対して、シリカ(商品名:R812、アエロジル社製)1質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で5分間乾式混合して、非磁性一成分現像剤としての現像剤Z−2を得た。
【0196】
〔実施例1〕
<1.現像剤担持体の製造および評価>
下記の表11に示す各材料を混合し、サンドミル 横型レディーミルNVM−03(商品名、アイメックス社製)(直径1.0mmのガラスビーズを充填率85%)にて分散処理し、塗工液を得た。
【0197】
【表11】

【0198】
一方、基体として、外径20.0mm、算術平均粗さRa=0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を準備した。この基体の両端部各6mmをマスキングした後、基体を垂直に立てて、1500rpmで回転させ、前記塗工液を、スプレーガンを40mm/秒で下降させながら塗布した。その後、ハリソン東芝ライティング株式会社製の低圧水銀ランプを用いて、波長254nmの紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、シリコーン樹脂を硬化反応させた。更に、120℃、30分間熱風乾燥炉で乾燥し、現像剤担持体E−1を得た。得られた現像剤担持体の樹脂層の膜厚、算術平均粗さRaを測定した。その結果を表12に示す。
【0199】
また、現像剤担持体の樹脂層を削り取って化学構造評価を実施した。FT−IR装置によりアクリル樹脂成分及びシリコーン樹脂成分間のSi−O−C結合が存在することを確認した。また、29Si−NMRにより、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0200】
<2.電子写真画像形成装置の形成及び画像評価>
現像剤担持体E−1にマグネットローラを組み付け、これを市販のプリンター LASER JET4350(商品名、ヒューレットパッカード社製)のカートリッジに組み込み、現像剤Z−1を使用し、現像装置とした。これを上記プリンターに搭載し、下記の画像評価を行った。現像剤Z−1は、カートリッジ内の現像剤残量が100gとなった時点で補給を行った。
【0201】
画像評価は、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH;H/H)で実施した。画像評価には、レターサイズの用紙 Business4200(商品名、XEROX社製;75g/m)を使用し、印字比率3%の文字画像をA4縦送りで6万枚まで連続複写の画出し試験を行った。その結果を表13に示す。
【0202】
なお、尚、(9)画像濃度、(10)カブリ、(12)現像剤担持体の汚染、及び(13)現像剤担持体の樹脂層の削れの評価は、それぞれ初期と4万枚画出し後に行った。
【0203】
〔実施例2〜19および比較例1〜7〕
塗工液の材料および硬化反応条件をそれぞれ表12に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして現像剤担持体E−2乃至E−19、および比較用現像剤担持体e−22乃至e−28を作製した。得られた現像剤担持体の樹脂層の膜厚、算術平均粗さRaを測定した。評価結果を表12に示す。
【0204】
また、樹脂層中にアクリル樹脂成分及びシリコーン樹脂成分間のSi−O−C結合が存在することを確認し、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0205】
更に、実施例15および16においては、Si−O−Ti結合(920cm−1乃至970cm−1)、実施例17においては、Si−O−Zr結合(970cm−1近傍)、実施例18においては、Si−O−Hf結合(970cm−1近傍)、実施例19においては、Si−O−Ta結合(940cm−1近傍)、が存在することを確認した。
【0206】
また、これらの各現像剤担持体を実施例1と同様にしてカートリッジに組み込み、現像装置を得て、画像評価を行った。評価結果を表13に示す。
【0207】
〔実施例20および21〕
合成液D−1:100部の代わりに、合成液D−1:50部及びレゾール型フェノール樹脂J−325CA(商品名、DIC株式会社製):50部を用いたこと以外は実施例1と同様にして現像剤担持体E−20及びE−21を作製した。得られた現像剤担持体の樹脂層の膜厚、算術平均粗さRaを測定した。評価結果を表12に示す。
【0208】
また、樹脂層中にアクリル樹脂成分及びシリコーン樹脂成分間のSi−O−C結合が存在することを確認し、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0209】
また、これらの各現像剤担持体を実施例1と同様にしてカートリッジに組み込み、現像装置を得て、画像評価を行った。評価結果を表13に示す。
【0210】
【表12】

【0211】
【表13】

【0212】
〔実施例1〜21及び比較例1〜7の性能比較〕
比較例1〜7においては、樹脂層の削れ量が3.0μm以上と大きく、画像濃度の低下、及び現像剤担持体汚染が見られたのに対し、実施例1〜21では、連続プリント後においても、削れ量が1.3μm以下、現像剤担持体汚染も少なく、良好な画像が得られた。
【0213】
〔実施例22〕
塗工液の組成を以下の表14に示す割合とし、その他は実施例1と同様にして塗工液を得た。また実施例1と同様にして基体に塗工液を塗布し、紫外線照射、加熱処理を行い、現像剤担持体E−29を得た。評価結果を表15に示す。
【0214】
また、樹脂層中にアクリル樹脂成分及びシリコーン樹脂成分間のSi−O−C結合が存在することを確認し、エポキシ基を含む有機鎖をもつ加水分解性シラン化合物が縮合し、−SiO3/2の状態で存在する種があることを確認した。
【0215】
【表14】

【0216】
得られた現像剤担持体E−29を市販のレーザービームプリンタ LBP2160(商品名、キヤノン株式会社製)のマゼンタカートリッジEP82(商品名、キヤノン株式会社製)に組み込み、現像剤Z−2を使用し、現像装置とした。これを上記プリンターに搭載し、下記の画像評価を行った。なお、トナーへの規制を強めるため、現像剤担持体の長手方向にトナー規制ブレードの接触圧を線圧で30g/cmとした。
【0217】
画像評価は、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH;H/H)で実施した。なお、画像評価には、レターサイズの用紙:「Business4200」(商品名、XEROX社製;75g/m)を使用し、印字比率3%の文字画像をA4縦送りで6万枚まで連続複写の画出し試験を行った。その結果を表16に示す。尚、(9)画像濃度、(10)カブリ、(12)現像剤担持体汚染、及び(13)現像剤担持体の樹脂層の削れの評価は、それぞれ初期と6万枚画出し後としたこと以外は、実施例1と同様にして実施した。
【0218】
〔比較例8および9〕
塗工液の組成をそれぞれ表15に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして現像剤担持体e−30及びe−31を作製した。得られた現像剤担持体e−30及びe−31を実施例22と同様にカートリッジに組み込み、現像装置を得た。これらの現像装置を実施例22と同様にプリンターに搭載し、画像評価を行った。結果を表16に示す。
【0219】
【表15】

【0220】
【表16】

【0221】
〔実施例22及び比較例8、9の性能比較〕
比較例8および9においては樹脂層の削れ量が3.1μm以上と大きく、画像濃度の低下及び現像剤担持体汚染が見られたのに対し、実施例22では連続プリント後においても、削れ量が0.32μm、現像剤担持体汚染も少なく、良好な画像が得られた。
【符号の説明】
【0222】
101 樹脂層
102 基体
103 現像スリーブ
104 マグネットローラ
105 現像剤担持体
106 静電潜像担持体(感光体ドラム)
107 現像剤層厚規制部材(弾性ブレード)
108 現像バイアス電源
109 現像容器
110 撹拌搬送部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体及び表面層としての樹脂層を有する現像剤担持体であって、該樹脂層が下記式(1)で示される構造を有する変性シリコーン樹脂を含有することを特徴とする現像剤担持体:
【化1】

[式(1)中、R及びRは、各々独立して下記式(2)乃至(5)のいずれかを示す。Aは、下記式(6a)で示されるユニットと下記式(6b)で示されるユニットとを有するアクリル樹脂成分を示す。nは1以上の整数を示す:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

[式(2)乃至(5)中、R乃至R、R10乃至R14、R19、R20、R25及びR26は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を示す。R、R、R15乃至R18、R23、R24及びR29乃至R32は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R21、R22、R27及びR28は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n、m、l、q、s及びtは、各々独立して1以上8以下の整数を示す。p及びrは、各々独立して4以上12以下の整数を示し、x及びyは、各々独立して0または1を示す。*2及び*3は、各々、式(1)中のケイ素原子及び酸素原子への結合部位を示す。]、
【化6】

【化7】

[式(6a)において、R33は、水素原子又はメチル基を示す。R34は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*1は、式(1)中のRとの結合部を示す。式(6b)において、R35は、水素原子又はメチル基を示し、R37、R38及びR39は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R36は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、Aは、アニオンを示す。]]。
【請求項2】
前記変性シリコーン樹脂が、更に下記式(7)で示される構成単位を有し、且つ、分子内にSi−O−Mの結合を有している請求項1に記載の現像剤担持体:
【化8】

[式(7)中、Mは、Ti、ZrまたはHfを表す。]。
【請求項3】
前記変性シリコーン樹脂が、更に下記式(8)で示される構成単位を有し、且つ、分子内にSi−O−Taの結合を有している請求項1に記載の現像剤担持体:
【化9】

【請求項4】
下記〔1〕乃至〔5〕の工程を有することを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体の製造方法:
〔1〕式(9)及び式(10)で示されるモノマーを重合させてアクリル系重合体を得る工程(1)、
〔2〕式(11)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる工程(2)、
〔3〕前記工程(1)で得られたアクリル系重合体および前記工程(2)で得られた加水分解縮合物を含む塗工液の塗膜を基体上に形成する工程(3)、
〔4〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物中のR47に由来するエポキシ環を開裂させて該加水分縮合物の重合物を得る工程(4)、
〔5〕前記塗膜に含まれる、前記加水分解縮合物もしくはその重合物と、前記アクリル系重合体とを脱水反応により結合させて前記塗膜を硬化させ、前記基体上に樹脂層を形成する工程(5)、
【化10】

【化11】

【化12】

[式(9)において、R40は、水素原子又はメチル基を示し、R41は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。式(10)において、R42は、水素原子又はメチル基を示し、R44、R45およびR46は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R43は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。Aはアニオンを示す。式(11)において、R47は、下記式(12)乃至(15)のいずれかを示し、R48乃至R50は、各々独立して炭素数1乃至4のアルキル基を示す:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

[式(12)乃至(15)において、R51乃至R53、R56乃至R58、R63、R64、R69及びR70は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基を示す。R54、R55、R59乃至R62、R67、R68及びR73乃至R76は、各々独立して水素原子または炭素数1乃至4のアルキル基を示す。R65、R66、R71及びR72は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至4のアルコキシル基、又は炭素数1乃至4のアルキル基を示す。n’、m’、l’、q’、s’及びt’は、各々独立して1以上8以下の整数を示す。p’及びr’は、各々独立して4以上12以下の整数を示す。]]。
【請求項5】
請求項4において、工程(2)の代わりに、式(11)で示される加水分解性シラン化合物及び式(20)で示される加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる工程(2’)を行うことを特徴とする、請求項1に記載の現像剤担持体の製造方法:
【化17】

【請求項6】
請求項4において、工程(2)の代わりに、式(11)で示される加水分解性シラン化合物及び式(21)乃至式(24)のいずれかで示される加水分解性化合物を加水分解縮合させる工程(2’’)、または、式(11)で示される加水分解性シラン化合物、式(20)で示される加水分解性シラン化合物及び式(21)乃至式(24)のいずれかで示される加水分解性化合物を加水分解縮合させる工程(2’’’)を行うことを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の現像剤担持体の製造方法:
【化18】

【請求項7】
少なくとも負帯電性の現像剤と、前記現像剤を収容するための容器と、前記容器に貯蔵された現像剤を担持搬送するための現像剤担持体を有し、現像剤層厚規制部材により前記現像剤担持体上に現像剤層を形成しながら現像剤担持体上の現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へと搬送し、前記静電潜像担持体の静電潜像を現像により現像し、現像剤像を形成する現像装置において、前記現像剤担持体は請求項1乃至3のいずれかの1項に記載の現像剤担持体であることを特徴とする現像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−255942(P2012−255942A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129467(P2011−129467)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】