説明

現像剤担持体と現像装置とプロセスカートリッジと画像形成装置およびカラー画像形成装置

【課題】溝ピッチ濃淡ムラやスリーブピッチ濃淡ムラの発生を抑制するとともに、前記のピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジの発生を経年使用においても抑制できる現像剤担持体を提供する。また、かかる現像剤担持体を備えた現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】中空体132が回転スラスト方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝141aと、スラスト方向に対して反対側に傾斜した方向に延びる複数の溝141bとが交差するように形成されてなるアヤメ状の溝を有するとともに、外表面の溝141aおよび141bに囲まれた部分141cに線条材65を衝突させて粗面化して楕円形状の凹みをランダムに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等に用いられる現像剤担持体、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、中空体に担持された現像剤を、感光体と中空体とが間隙をもって対向する現像領域に搬送し、該感光体上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像剤担持体及び現像装置に関する。また、本発明は、かかる現像装置を有するプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の複写機、プリンタ等は高画質、高安定性に対する要求が非常に高い。これらを満足させるには現像剤担持体上の現像剤量の経時安定性及び均一性が重要となる。従来は、サンドブラストによって表面に凹凸を形成した中空体や、現像剤担持体の回転軸に対して平行に延びる複数の溝を表面に形成した中空体を一般的に使用していた。
【0003】
サンドブラストを用いて凹凸を持たせた中空体は、凹凸量が小さいと現像剤搬送能力が低下する。凹凸の具体的な条件によっては、凹凸が経年使用により現像剤により徐々に削られ、現像剤搬送能力が低下し、異常画像(濃度低下)が発生することがある。また、現像剤搬送能力を上げる為に凹凸量を大きくすると、加工時に中空体が変形し異常画像(スリーブピッチ濃淡ムラ)が発生することがある。
【0004】
表面に現像剤担持体の回転軸に対して平行に延びる複数の溝を形成した中空体は、サンドブラストを用いて凹凸を持たせた中空体よりも現像剤搬送能力が大きく、経年使用による現像剤搬送能力の低下が少ない。しかし、平行に延びる溝の具体的な条件によっては、現像剤規制部材に対して平行な各現像剤搬送溝の各部が同じ瞬間に規制部材上を通過するため、ショックジターによる異常画像(溝ピッチ濃淡ムラ)が発生することがある。また、現像剤へ与えるストレスが大きいという問題がある。さらに、各溝の形状が不均一になると汲み上げ量のムラができ、異常画像(スリーブピッチ濃淡ムラ)が発生することがある。
【0005】
このような従来の技術課題を解決するために、特許文献1〜4に記載の中空体が提案されている。これらの中空体は、表面にアヤメ状の溝が形成された中空体である。
【特許文献1】特開2003−316146号公報
【特許文献2】特開2003−316146号公報
【特許文献3】特開2000−242073号公報
【特許文献4】特開平07−13410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アヤメ状の溝の具体的な条件によっては中空体の周方向(回転方向)の所定のピッチで、スラスト方向(長手方向)に延びる現像濃度が高い部分が生じて横の黒スジ状に見える異常画像(以下、ピッチ状横黒スジという)が発生することがある。また、アヤメ状の溝の具体的な条件によっては中空体のスラスト方向(長手方向)の所定のピッチで、周方向(回転方向)に延びる現像濃度が高い部分が生じて縦の黒スジ状に見える異常画像(以下、ピッチ状縦黒スジという)が発生することがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、溝ピッチ濃淡ムラやスリーブピッチ濃淡ムラの発生による異常画像の発生を抑制するとともに、前記のピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジの発生による異常画像の発生を経年使用においても抑制できる現像剤担持体を提供することを第1の目的とし、そして、かかる現像剤担持体を備えた現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された発明は、外表面に、回転スラスト方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝と回転スラスト方向に対して反対側に傾斜した方向に延びる複数の溝とが交差するように形成されてなるアヤメ状の溝および前記アヤメ状の溝に囲まれた部分を有する中空体と、前記中空体内部に磁力により前記外表面に現像剤を吸着する磁界発生手段と、を備えた現像剤担持体において、前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分が、粗面化処理にて形成された凹みをランダムに設けていることを特徴とする現像剤担持体である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分に多数の楕円形状の凹みが、ランダムに設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分の多数の楕円形状の凹みが、ランダムに衝突された短線状の線条材によって形成されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の現像剤担持体を有したことを特徴とする現像装置である。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載の発明において、現像剤が、トナーと磁性キャリアとを含んでいるとともに、前記磁性キャリアの平均粒径が、20μm以上でかつ50μm以下の範囲内にあることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載に記載された発明は、請求項4または5に記載の現像装置を有したことを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載のプロセスカートリッジを有したことを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
請求項8に記載された発明は、請求項6に記載のプロセスカートリッジを複数有することを特徴とするカラー画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の現像剤担持体によれば、中空体が回転スラスト方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝と、回転スラスト方向に対して反対側に傾斜した方向に延びる複数の溝とが交差するように形成されてなるアヤメ状の溝を有するとともにアヤメ状の溝に囲まれた部分が粗面化処理により凹みが形成されているので、溝以外の部分の現像剤搬送能力が向上し、そのため、溝と溝以外の現像剤の搬送能力の差が小さくなり、よって、溝ピッチ濃淡ムラやスリーブピッチ濃淡ムラの発生を抑制するとともに、ピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジの発生を経年使用においても抑制できる。
【0017】
請求項2に記載の現像剤担持体によれば、中空体外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分に多数の楕円形状の凹みが、ランダムに設けられているので、経時においても中空体外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分の現像剤搬送力の低下が特によく抑えられ、ピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジが抑制できる。
【0018】
請求項3に記載の現像剤担持体によれば、楕円形状の凹みが中空体の外表面にランダムに衝突された短線状の線条材によって形成されているので、中空体の軸芯が湾曲したり、内外径が変化したり断面形状が楕円形状になることを防止でき、異常画像(スリーブピッチムラ)が抑制できる。
【0019】
請求項4に記載の現像装置によれば、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の現像剤担持体を有したことを特徴としているため、溝ピッチ濃淡ムラやスリーブピッチ濃淡ムラの発生を抑制するとともに、ピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジの発生を経年使用においても抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の現像装置によれば、現像剤に含まれる磁性キャリアの平均粒径が、20μm以上でかつ50μm以下の範囲であるため、粒状度に優れ、ムラの少ない優れた画像を得ることができる。
【0021】
請求項6に記載のプロセスカートリッジによれば、請求項4乃至6のうちいずれか一項に記載の現像装置を有しているため、粒状度に優れ、かつ画像ムラの無い優れた画像を得ることができる。
【0022】
請求項7に記載の画像形成装置によれば、請求項6に記載のプロセスカートリッジを有しているため粒状度に優れ、かつ画像ムラの無い優れた画像を得ることができる。
【0023】
請求項8に記載のカラー画像形成性装置によれば、請求項6に記載のプロセスカートリッジを複数有しているため粒状度に優れ、かつ画像ムラの無い優れたカラー画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図12に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。図2は、図1に示された画像形成装置の本発明の一実施形態にかかるプロセスカートリッジの断面図である。図3は、図2中のIII−III線に沿う断面図である。図4は、図3に示された現像装置の現像剤担持体としての中空体の斜視図である。図5は、図2に示された現像装置の現像剤の磁性キャリアの断面図である。図6は、図4に示された中空体の外表面を拡大して示す説明図である。図7は、図4に示された中空体の外表面に粗面化処理を施す表面処理装置の構成の概略を示す斜視図である。図8は、図7中のII−II線に沿う断面図である。図9は、図7で示された表面処理装置で用いられる磁性砥粒の斜視図である。図10は、図4に示された中空体の外表面に穂立ちした状態を模式的に示す断面図である。図11は、従来のサンドブラストが施された中空体の外表面に穂立ちした状態を模式的に示す断面図である。図12は、図4に示された中空体に設けられる溝の断面図である。
【0025】
画像形成装置101は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像則ちカラー画像を、一枚の転写材としての記録紙107(図1に示す)に形成する。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の各色に対応するユニットなどを、以下、符号の末尾に各々Y、M、C、Kを付けて示す。
【0026】
画像形成装置101は、図1に示すように、装置本体102と、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、転写ユニット104と、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kと、複数のプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kとを少なくとも備えている。
【0027】
装置本体102は、例えば、箱状に形成され、フロア上などに設置される。装置本体102は、給紙ユニット103と、レジストローラ対110と、転写ユニット104と、定着ユニット105と、複数のレーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kと、複数のプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kを収容している。
【0028】
給紙ユニット103は、装置本体102の下部に複数設けられている。給紙ユニット103は、前述した記録紙107を重ねて収容するとともに装置本体102に出し入れ自在な給紙カセット123と、給紙ローラ124とを備えている。給紙ローラ124は、給紙カセット123内の一番上の記録紙107に押し当てられている。給紙ローラ124は、前述した一番上の記録紙107を、転写ユニット104の後述する搬送ベルト129と、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの後述する現像装置113の感光体ドラム108との間に送り出す。
【0029】
レジストローラ対110は、給紙ユニット103から転写ユニット104に搬送される記録紙107の搬送経路に設けられており、一対のローラ110a、110bを備えている。レジストローラ対110は、一対のローラ110a、110b間に記録紙107を挟み込み、該挟み込んだ記録紙107を、トナー像を重ね合わせ得るタイミングで、転写ユニット104とプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kとの間に送り出す。
【0030】
転写ユニット104は、給紙ユニット103の上方に設けられている。転写ユニット104は、駆動ローラ127と、従動ローラ128と、搬送ベルト129と、転写ローラ130Y、130M、130C、130Kとを備えている。駆動ローラ127は、記録紙107の搬送方向の下流側に配置されており、駆動源としてのモータなどによって回転駆動される。従動ローラ128は、装置本体102に回転自在に支持されており、記録紙107の搬送方向の上流側に配置されている。搬送ベルト129は、無端環状に形成されており、前述した駆動ローラ127と従動ローラ128との双方に掛け渡されている。搬送ベルト129は、駆動ローラ127が回転駆動されることで、前述した駆動ローラ127と従動ローラ128との回りを図中反時計回りに循環(無端走行)する。
【0031】
転写ローラ130Y、130M、130C、130Kは、それぞれ、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラム108との間に搬送ベルト129と該搬送ベルト129上の記録紙107とを挟む。転写ユニット104は、転写ローラ130Y、130M、130C、130Kが、給紙ユニット103から送り出された記録紙107を各プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラム108の外表面に押し付けて、感光体ドラム108上のトナー像を記録紙107に転写する。転写ユニット104は、トナー像を転写した記録紙107を定着ユニット105に向けて送り出す。
【0032】
定着ユニット105は、転写ユニット104の記録紙107の搬送方向下流に設けられ、互いの間に記録紙107を挟む一対のローラ105a、105bを備えている。定着ユニット105は、一対のローラ105a、105b間に転写ユニット104から送り出されてきた記録紙107を押圧加熱することで、感光体ドラム108から記録紙107上に転写されたトナー像を、該記録紙107に定着させる。
【0033】
レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、それぞれ、装置本体102の上部に取り付けられている。レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、それぞれ一つのプロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kに対応している。レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kは、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの後述の帯電ローラ109により一様に帯電された感光体ドラム108の外表面にレーザ光を照射して、静電潜像を形成する。
【0034】
プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、それぞれ、転写ユニット104と、レーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kとの間に設けられている。プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、装置本体102に着脱自在である。プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、記録紙107の搬送方向に沿って、互いに並設されている。
【0035】
プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kは、図2に示すように、カートリッジケース111と、帯電装置としての帯電ローラ109と、静電潜像担持体としての感光体ドラム108と、クリーニング装置としてのクリーニングブレード112と、現像装置113と、を備えている。このため、画像形成装置101は、帯電ローラ109と、感光体ドラム108と、クリーニングブレード112と、現像装置113と、を少なくとも備えている。
【0036】
カートリッジケース111は、装置本体102に着脱自在で、かつ帯電ローラ109と、感光体ドラム108と、クリーニングブレード112と、現像装置113と、を収容している。帯電ローラ109は、感光体ドラム108の外表面を一様に帯電する。感光体ドラム108は、現像装置113の後述する現像剤担持体115と間隔をあけて配されている。感光体ドラム108は、軸芯を中心として回転自在な円柱状又は円筒状に形成されている。感光体ドラム108は、対応するレーザ書き込みユニット122Y、122M、122C、122Kにより、外表面上に静電潜像が形成される。感光体ドラム108は、外表面上に形成されかつ担持する静電潜像にトナーが吸着して現像し、こうして得られたトナー像を搬送ベルト129との間に位置付けられた記録紙107に転写する。クリーニングブレード112は、記録紙107にトナー像を転写した後に、感光体ドラム108の外表面に残留した転写残トナーを除去する。
【0037】
現像装置113は、図2に示すように、現像剤供給部114と、ケース125と、現像剤担持体115と、規制部材としての規制ブレード116とを少なくとも備えている。
【0038】
現像剤供給部114は、収容槽117と、攪拌部材としての一対の攪拌スクリュー118と、を備えている。収容槽117は、感光体ドラム108と長さが略等しい箱状に形成されている。また、収容槽117内には、該収容槽117の長手方向に沿って延びた仕切壁119が設けられている。仕切壁119は、収容槽117内を第1空間120と、第2空間121とに区画している。また、第1空間120と第2空間121とは、両端部が互いに連通している。
【0039】
収容槽117は、第1空間120と第2空間121との双方に現像剤126を収容する。現像剤126は、トナーと、磁性キャリア(磁性粉ともいい、図5に断面を示す)135とを含んでいる。トナーは、第1空間120と、第2空間121とのうち現像剤担持体115から離れた側の第1空間120の一端部に、適宜供給される。トナーは、乳化重合法又は懸濁重合法により製造された球状の微粒子である。なお、トナーは、種々の染料又は顔料を混入・分散した合成樹脂で構成される塊を粉砕して得られても良い。トナーの平均粒径は、3μm以上でかつ7μm以下である。また、トナーは、粉砕加工などにより形成されても良い。
【0040】
磁性キャリア135は、第1空間120と第2空間121との双方に収容されている。磁性キャリア135の平均粒径は、20μm以上でかつ50μm以下である。磁性キャリア135は、図5に示すように、芯材136と、該芯材136の外表面を被覆した樹脂コート膜137と、樹脂コート膜137に分散されたアルミナ粒子138と、を備えている。
【0041】
芯材136は、磁性材料としてのフェライトで構成されているとともに、球形に形成されている。樹脂コート膜137は、芯材136の外表面全体を被覆している。樹脂コート膜137は、アクリルなどの熱可塑性樹脂とメラミン樹脂とを架橋させた樹脂成分と、帯電調整剤とを含有している。この樹脂コート膜137は、弾力性と強い接着力を有している。アルミナ粒子138は、外径が樹脂コート膜137の厚みより大きな球形に形成されている。アルミナ粒子138は、樹脂コート膜137の強い接着力で保持されている。アルミナ粒子138は、樹脂コート膜137より磁性キャリア135の外周側に突出している。
【0042】
攪拌スクリュー118は、第1空間120と第2空間121それぞれに収容されている。攪拌スクリュー118の長手方向は、収容槽117、現像剤担持体115及び感光体ドラム108の長手方向と平行である。攪拌スクリュー118は、軸芯周りに回転自在に設けられており、軸芯周りに回転することで、トナーと磁性キャリア135とを攪拌するとともに、該軸芯に沿って現像剤を搬送する。
【0043】
図示例では、第1空間120内の攪拌スクリュー118は、現像剤126を前述した一端部から他端部に向けて搬送する。第2空間121内の攪拌スクリュー118は、現像剤126を他端部から一端部に向けて搬送する。
【0044】
前述した構成によれば、現像剤供給部114は、第1空間120の一端部に供給されたトナーを、磁性キャリア135と攪拌しながら、他端部に搬送し、この他端部から第2空間121の他端部に搬送する。そして、現像剤供給部114は、第2空間121内でトナーと磁性キャリア135とを攪拌し、軸芯方向に搬送しながら、現像剤担持体115の外表面に供給する。
【0045】
ケース125は、箱状に形成され、前述した現像剤供給部114の収容槽117に取り付けられて、該収容槽117とともに、現像剤担持体115などを覆う。また、ケース125の感光体ドラム108と相対する部分には、開口部125aが設けられている。
【0046】
現像剤担持体115は、円柱状に形成され、第2空間121と、感光体ドラム108との間でかつ前述した開口部125aの近傍に設けられている。現像剤担持体115は、感光体ドラム108と収容槽117との双方と平行である。現像剤担持体115は、感光体ドラム108と間隔をあけて配されている。現像剤担持体115は、感光体ドラム108と間隔をあけて配されている。現像剤担持体115と感光体ドラム108との間の空間は、現像剤126のトナーを感光体ドラム108に吸着させて、静電潜像を現像してトナー像を得る現像領域131をなしている。現像領域131では、現像剤担持体115と感光体ドラム108とが相対する。
【0047】
現像剤担持体115は、図2および図3に示すように、芯金134と、円筒状の磁界発生手段(磁石体ともいう)133と、円筒状の中空体132とを備えている。芯金134は、長手方向が感光体ドラム108の長手方向と平行に配され、前述したケース125に回転することなく固定されている。
【0048】
磁界発生手段133は、磁性材料で構成され、かつ円筒状に形成されているとともに、図示しない複数の固定磁極が取り付けられている。磁界発生手段133は、芯金134の外周に軸芯回りに回転することなく固定されている。
【0049】
固定磁極は、長尺で棒状の磁石であり、磁界発生手段133に取り付けられている。固定磁極は、磁界発生手段133則ち現像剤担持体115の長手方向に沿って延びており、該磁界発生手段133の全長に亘って設けられている。前述した構成の磁界発生手段133は、中空体132内に収容されている(内包されている)。
【0050】
一つの固定磁極は、前述した攪拌スクリュー118と相対している。該一つの固定磁極は、汲み上げ磁極をなしており、中空体132即ち現像剤担持体115の外表面上に磁気力を生じて、収容槽117の第2空間121内の現像剤126を中空体132の外表面に吸着する。
【0051】
他の一つの固定磁極は、前述した感光体ドラム108と相対している。この固定磁極は、現像磁極をなしており、中空体132即ち現像剤担持体115の外表面上に磁気力を生じて、中空体132と感光体ドラム108との間に磁界を形成する。この固定磁極は、該磁界によって磁気ブラシを形成することで、中空体132の外表面に吸着された現像剤126のトナーを感光体ドラム108に受け渡すようになっている。
【0052】
前述した汲み上げ磁極と現像磁極との間には、少なくとも一つの固定磁極が設けられている。この少なくとも一つの固定磁極は、中空体132即ち現像剤担持体115の外表面上に磁気力を生じて、現像前の現像剤126を感光体ドラム108に向けて搬送するとともに、現像済みの現像剤126を感光体ドラム108から収容槽117内まで搬送する。
【0053】
前述した固定磁極は、中空体132の外表面に現像剤126を吸着すると、現像剤126の磁性キャリア135が該固定磁極が生じる磁力線に沿って複数重ねさせて、該中空体132の外表面上に立設(穂立ち)させる。このように、磁性キャリア135が磁力線に沿って複数重なって中空体132の外表面上に立設する状態を、磁性キャリア135が中空体132の外表面上に穂立ちするという。すると、この穂立ちした磁性キャリア135に前述したトナーが吸着する。則ち、中空体132は、磁界発生手段133の磁力により外表面に現像剤126を吸着する。
【0054】
中空体132は、図4に示すように、円筒状に形成されている。中空体132は、磁界発生手段133を内部に収容して、軸芯回りに回転自在に設けられている。中空体132は、その内周面が固定磁極に順に相対するように回転される。中空体132は、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)などの非磁性材料で構成されている。
【0055】
アルミニウム合金は、加工性、軽さの面で優れている。アルミニウム合金を用いる場合には、A6063、A5056及びA3003を用いるのが好ましい。SUSを用いる場合には、SUS303、SUS304及びSUS316を用いるのが好ましい。
【0056】
中空体132の外径は、17mm〜18mm程度であるのが望ましい。中空体132の軸(軸芯)方向の長さは、300mm〜350mm程度であるのが望ましい。中空体132の外表面の表面粗さは、該中空体132の軸芯方向の中央部から両端部に向かうにしたがって、徐々に大きく(粗く)なっている。
【0057】
中空体132の表面には、アヤメ状の溝が形成されている。図6に中空体132表面の溝の拡大斜視図を示す。図6に示すようにアヤメ状の溝とは、現像剤担持体115の回転軸方向(回転スラスト方向)に対して傾斜した複数の溝141aと反対側に傾斜した複数の溝141bが交差するように形成されているものである。また、前者の複数の溝141aにおける傾斜の角度と、後者の複数の溝141bにおける傾斜の角度とは、必ずしも互いに同一でなくてもよい。
【0058】
さらに、中空体132の外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分(アヤメ状の溝が形成されていない部分)141cは後述する表面処理装置1によって粗面化されて多数の楕円状の凹みが設けられている。なお、外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分141cの粗面化は、表面処理装置1に限らず、周知のサンドブラストなどにより行っても良い。
【0059】
規制ブレード(規制部材、現像ドクタともいう)116は、現像装置113の感光体ドラム108寄りの端部に設けられている。規制ブレード116は、中空体132の外表面と間隔をあけた状態で、前述したケース125に取り付けられている。規制ブレード116は、所望の厚さを越える中空体132の外表面上の現像剤126を収容槽117内にそぎ落として、現像領域131に搬送される中空体132の外表面上の現像剤126を所望の厚さにする。
【0060】
前述した構成の現像装置113は、現像剤供給部114でトナーと磁性キャリア135とを十分に攪拌し、この攪拌した現像剤126を固定磁極により中空体132の外表面に吸着する。そして、現像装置113は、中空体132が回転して、複数の固定磁極により吸着した現像剤126を現像領域131に向かって搬送する。現像装置113は、規制ブレード116で所望の厚さになった現像剤126を感光体ドラム108に吸着させる。こうして、現像装置113は、現像剤126を現像剤担持体115に担持し、現像領域131に搬送して、感光体ドラム108上の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。
【0061】
そして、現像装置113は、現像済みの現像剤126を、収容槽117に向かって離脱させる。さらに、そして、収容槽117内に収容された現像済みの現像剤126は、再度、第2空間121内で他の現像剤126と十分に攪拌されて、感光体ドラム108の静電潜像の現像に用いられる。
【0062】
前述した構成の画像形成装置101は、以下に示すように、記録紙107に画像を形成する。まず、画像形成装置101は、感光体ドラム108を回転して、この感光体ドラム108の外表面を一様に帯電ローラ109により帯電する。感光体ドラム108の外表面にレーザ光を照射して、該感光体ドラム108の外表面に静電潜像を形成する。そして、静電潜像が現像領域131に位置付けられると、現像装置113の中空体132の外表面に吸着した現像剤126が感光体ドラム108の外表面に吸着して、静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラム108の外表面に形成する。
【0063】
そして、画像形成装置101は、給紙ユニット103の給紙ローラ124などにより搬送されてきた記録紙107が、プロセスカートリッジ106Y、106M、106C、106Kの感光体ドラム108と転写ユニット104の搬送ベルト129との間に位置して、感光体ドラム108の外表面上に形成されたトナー像を記録紙107に転写する。画像形成装置101は、定着ユニット105で、記録紙107にトナー像を定着する。こうして、画像形成装置101は、記録紙107にカラー画像を形成する。
【0064】
次に、中空体132に粗面化処理を施す方法について説明する。前述した中空体132は、該中空体132を加工対象物2として図7及び図8に示す表面処理装置1によって外表面に粗面化処理が施される。
【0065】
表面処理装置1は、図7および図8に示すように、ベース3と、固定保持部4と、電磁コイル移動部5と、移動保持部6と、移動チャック部7と、電磁コイル8と、収容槽9と、回収部10と、冷却部11と、リニアエンコーダ75と、制御装置76(図8に示す)と、を備えている。
【0066】
ベース3は、平板状に形成されて、工場のフロアやテーブル上等に設置される。ベース3の上面は、水平方向と平行に保たれる。ベース3の平面形状は、矩形状に形成されている。
【0067】
固定保持部4は、ベース3の長手方向(以下、矢印Xで示す)の一端部から立設した複数の支柱12と、保持ベース13と、立設ブラケット14と、円筒保持部材15と、保持チャック16と、を備えている。
【0068】
保持ベース13は、平板状に形成され、支柱12の上端に取り付けられている。立設ブラケット14は、平板状に形成され、保持ベース13から立設している。円筒保持部材15は、円筒状に形成され、立設ブラケット14と保持ベース13とに取り付けられている。円筒保持部材15は、その軸芯が水平方向と矢印Xとの双方と平行な状態でかつ前記立設ブラケット14よりベース3の中央部寄りに配置されている。円筒保持部材15は、内側に収容槽9の後述する一端部9aに取り付けられた後述するフランジ部材51b,51c,51d(即ち一端部9a)を収容する。
【0069】
保持チャック16は、前述した円筒保持部材15即ち保持ベース13の近傍に配され、前述したベース3に取り付けられている。保持チャック16は、円筒保持部材15内に一端部9aが収容された収容槽9をチャックして、該収容槽9の一端部9aを保持する。前述した構成の固定保持部4は、収容槽9の一端部9aを保持する。
【0070】
電磁コイル移動部5は、一対のリニアガイド17と、電磁コイル保持ベース18と、電磁コイル移動用アクチュエータ19と、を備えている。リニアガイド17は、レール20と、スライダ21とを備えている。レール20は、ベース3上に設置されている。レール20は、直線状に形成されているとともに、その長手方向がベース3の長手方向即ち矢印Xと平行に配されている。スライダ21は、レール20に該レール20の長手方向即ち矢印Xに沿って移動自在に支持されている。一対のリニアガイド17は、レール20がベース3の幅方向(以下、矢印Yで示す)に沿って互いに間隔をあけて配されている。なお、矢印Xと矢印Yとは、勿論、互いに直交しているとともに、それぞれ水平方向と平行である。
【0071】
電磁コイル保持ベース18は、平板状に形成され、前述したスライダ21上に取り付けられている。電磁コイル保持ベース18の上面は、水平方向と平行に配されている。電磁コイル保持ベース18は、電磁コイル8を表面上に設置する。電磁コイル移動用アクチュエータ19は、ベース3に取り付けられているとともに、前述した電磁コイル保持ベース18を矢印Xに沿って、スライド移動させる。前述した電磁コイル移動部5は、電磁コイル移動用アクチュエータ19により電磁コイル保持ベース18即ち電磁コイル8を矢印Yに沿ってスライド移動させる。また、電磁コイル移動部5による電磁コイル8の移動速度は、0mm/秒〜300mm/秒の間で変更可能である。さらに、電磁コイル移動部5の電磁コイル8の移動範囲は、600mm程度である。
【0072】
移動保持部6は、一対のリニアガイド22と、保持ベース23と、第1アクチュエータ24と、第2アクチュエータ25と、移動ベース26と、軸受け回転部27と、保持チャック28と、を備えている。
【0073】
リニアガイド22は、レール29と、スライダ30とを備えている。レール29は、ベース3上に設置されている。レール29は、直線状に形成されているとともに、その長手方向が矢印X即ちベース3の長手方向と平行に配されている。スライダ30は、レール29に該レール29の長手方向即ち矢印Xに沿って移動自在に支持されている。一対のリニアガイド22は、レール29が矢印Y即ちベース3の幅方向に沿って互いに間隔をあけて配されている。
【0074】
保持ベース23は、平板状に形成され、前述したスライダ30上に取り付けられている。保持ベース23の上面は、水平方向と平行に配されている。第1アクチュエータ24は、ベース3に取り付けられているとともに、前述した保持ベース23を矢印Xに沿って、スライド移動させる。
【0075】
第2アクチュエータ25は、保持ベース23に取り付けられているとともに、移動ベース26を矢印Yに沿って、スライド移動させる。移動ベース26は、平板状に形成され、その上面が水平方向と平行に配されている。
【0076】
軸受け回転部27は、一対の軸受31と、芯軸としての中空保持部材32と、回転手段としての駆動用モータ33と、チャック用シリンダ34とを備えている。一対の軸受31は、矢印Xに沿って、互いに間隔をあけて配置されているとともに、移動ベース26上に設置されている。中空保持部材32は、磁性材料で構成され、かつ円筒状に形成されているとともに、前述した軸受31により軸芯回りに回転自在に支持されている。中空保持部材32は、その軸芯が前述した矢印X即ち固定保持部4の円筒保持部材15の軸芯と平行に配置されている。中空保持部材32は、一端部32aが収容槽9内に位置するように移動ベース26上から固定保持部4に向かって突出した格好で、かつ、他端部32cが移動ベース26上に位置した状態に配されている。中空保持部材32は、図8に示すように、円筒状の加工対象物2内に通される。また、中空保持部材32の移動ベース26上に位置付けられた他端部32cには、プーリ35が固定されている。プーリ35は、中空保持部材32と同軸に配置されている。
【0077】
駆動用モータ33は、移動ベース26に設置されているとともに、その出力軸にプーリ36が取り付けられている。駆動用モータ33の出力軸の軸芯は、矢印Xと平行である。前述したプーリ35,36には、無端状のタイミングベルト37が掛け渡されている。駆動用モータ33は、中空保持部材32を軸芯回りに回転させる。駆動用モータ33は、中空保持部材32を軸芯回りに回転させることで、加工対象物2を収容槽9の長手方向と平行な中空保持部材32の軸芯回りに回転させる。
【0078】
チャック用シリンダ34は、移動ベース26に設置されたシリンダ本体38と、該シリンダ本体38にスライド自在に設けられたチャック軸39とを備えている。チャック軸39は、円柱状に形成されその長手方向が矢印Xと平行に配されている。チャック軸39は、中空保持部材32内に収容されているとともに、該中空保持部材32と同軸に配置されている。チャック軸39には、一対のチャック爪40が複数取り付けられている。
【0079】
一対のチャック爪40は、チャック軸39の外周面から該チャック軸39の外周方向に突出する格好で、該チャック軸39に取り付けられている。また、チャック爪40は、中空保持部材32の外周面から該中空保持部材32の外周に向かって突出可能となっている。チャック爪40は、チャック軸39及び中空保持部材32からの突出量が変更自在に設けられている。複数対のチャック爪40は、前述したチャック軸39の長手方向即ち矢印Xに沿って、間隔をあけて配置されている。一対のチャック爪40は、チャック用シリンダ34のチャック軸39がシリンダ本体38に近づく方向に縮小すると、前述したチャック軸39及び中空保持部材32からの突出量が増加する。
【0080】
前述したチャック用シリンダ34は、チャック軸39がシリンダ本体38に縮小することで、チャック爪40をよりチャック軸39の外周方向に突出させて、該チャック爪40を中空保持部材32の外周に取り付けられた加工対象物2の内周面に押圧させて、チャック軸39と中空保持部材32と加工対象物2とを固定する。すなわち、加工対象物2の外表面の粗面化処理が施される面は露出されたまま保持される。このとき、勿論、チャック軸39と中空保持部材32と加工対象物2と後述の円筒部材50即ち収容槽9は、同軸になる。
【0081】
前述したチャック用シリンダ34とチャック爪40は、中空保持部材32と収容槽9と同軸となるように加工対象物2を保持する。即ち、チャック用シリンダ34とチャック爪40は、加工対象物2を収容槽9の中心に加工対象物2の外表面の粗面化処理が施される面を露出して保持する。前述したチャック用シリンダ34とチャック爪40と、中空保持部材32とは、保持手段をなしている。
【0082】
保持チャック28は、前述した移動ベース26上に設置されている。保持チャック28は、収容槽9の他端部9bに取り付けられた後述のフランジ部材51aをチャックして、該収容槽9の他端部9bを保持する。保持チャック28は、収容槽9がその軸芯回りに回転することを規制する。
【0083】
前述した構成の移動保持部6は、保持チャック28及び中空保持部材32などをアクチュエータ24,25により互いに直交する矢印X,Yに沿って移動させる。即ち、移動保持部6は、保持チャック28で保持した収容槽9を矢印X,Yに沿って移動させる。
【0084】
移動チャック部7は、保持ベース41と、リニアガイド42と、保持チャック43とを備えている。保持ベース41は、リニアガイド22のレール29の固定保持部4寄りの端部に固定されている。保持ベース41は、平板状に形成され、その上面が水平方向と平行に配されている。
【0085】
リニアガイド42は、レール44と、スライダ45とを備えている。レール44は、保持ベース41上に設置されている。レール44は、直線状に形成されているとともに、その長手方向が矢印Y即ちベース3の幅方向と平行に配されている。スライダ45は、レール44に該レール44の長手方向即ち矢印Yに沿って移動自在に支持されている。
【0086】
保持チャック43は、スライダ45上に設置されている。保持チャック43は、前述した保持チャック16,28間に位置付けられている。保持チャック43は、収容槽9の他端部9b寄りの箇所をチャックして、該収容槽9を保持する。前述した移動チャック部7は、保持チャック43が収容槽9を保持することで、該収容槽9を位置決めする。また、移動チャック部7は、保持チャック43が収容槽9を保持することで、収容槽9が軸芯に沿って移動する際に、前述した保持チャック28と協働して収容槽9を保持して、該収容槽9が軸受け回転部27即ち表面処理装置1から脱落することを防止する。
【0087】
電磁コイル8は、図8に示すように、円筒状に形成された外皮46と該外皮46内に配された複数のコイル部47とを備えて、全体として円環状に形成されている。電磁コイル8の内径は、収容槽9の外径より大きい。即ち、電磁コイル8の内周面と収容槽9の外周面との間には、空間が形成されている。また、電磁コイル8の軸芯方向の全長は、収容槽9の軸芯方向の全長より十分に短い。電磁コイル8の軸芯方向の全長は、収容槽9の軸芯
方向の全長の2/3以下であるのが望ましい。図示例では、電磁コイル8の内径は、90mmであるとともに、電磁コイル8の軸芯方向の長さは、85mmである。
【0088】
外皮46は、その軸芯即ち電磁コイル8自身の軸芯が矢印Xと平行な状態で前述した電磁コイル保持ベース18に取り付けられている。電磁コイル8は、中空保持部材32、チャック軸39及び収容槽9と同軸に配置されている。複数のコイル部47は、外皮46即ち電磁コイル8の周方向に沿って互いに並設されている。コイル部47は、図8に示す三相交流電源48により印加される。複数のコイル部47には互いに位相のずれた電力が印加されて、これらの複数のコイル部47が互いに位相のずれた磁場を発生する。そして、電磁コイル8は、これらの磁場を合成して形成される該電磁コイル8の軸芯回りの回転方向の磁場(回転磁場)を内側に生じさせる。
【0089】
前述した電磁コイル8は、三相交流電源48から印加されて、回転磁場を発生するとともに、電磁コイル移動部5によりその軸芯即ち収容槽9の長手方向に沿って移動される。そして、電磁コイル8は、前述した回転磁場により、後述の線条材65を加工対象物2の外周に位置付け、該線条材65を収容槽9及び加工対象物2の軸芯回りに回転(移動)させる。そして、電磁コイル8は、前述した回転磁場により線条材65を加工対象物2の外表面に衝突させる。
【0090】
また、三相交流電源48と電磁コイル8との間には、インバータ49が設けられている。則ち、表面処理装置1は、インバータ49を備えている。インバータ49は、三相交流電源48が電磁コイル8に印加する電力の周波数、電流値、電圧値を変更自在である。インバータ49は、電磁コイル8に印加する電力の周波数、電流値、電圧値を変更することで、三相交流電源48が電磁コイル8に印加する電力を増減させて、該電磁コイル8が発生する回転磁場の強さを変更する。
【0091】
収容槽9は、図8に示すように、外壁が一重構造(外壁が一枚の壁からなること)の円筒部材50と、複数のフランジ部材51と、一対の削り屑封止ホルダ52と、一対の削り屑封止板53と、一対の位置決め部材54と、複数の仕切手段としての仕切部材55と、一対の封止板56とを備えている。
【0092】
円筒部材50は、円筒状に形成されており、収容槽9の外殻を構成している。このため、収容槽9は、円筒部材50が一重構造に形成されていることで、外壁が一重構造に形成されているとともに、円筒状に形成されている。円筒部材50即ち収容槽9の外径は、40mm〜80mm程度であるのが望ましい。さらに、円筒部材50の肉厚は、0.5mm〜2.0mm程度であるのが望ましい。円筒部材50の軸芯方向の長さは、600mm〜800mm程度であるのが望ましい。円筒部材50は、非磁性体で構成されている。
【0093】
円筒部材50には、複数の砥粒供給孔57が設けられている。砥粒供給孔57は、勿論、円筒部材50を貫通して、該円筒部材50の内外を連通している。砥粒供給孔57には、封止キャップ58が取り付けられている。砥粒供給孔57は、内側に線条材65を通して、該線条材65を円筒部材50即ち収容槽9に出し入れする。また、封止キャップ58は、砥粒供給孔57を塞いで、線条材65が円筒部材50即ち収容槽9の外部に流出することを規制する。
【0094】
複数のフランジ部材51は、円環状又は円柱状に形成されている。複数のフランジ部材51のうち一つを除く大多数のフランジ部材51(図示例では、三つ)は、円筒部材50の一端部9aに取り付けられ、一つのフランジ部材51(以下、符号51aで示す)は、円筒部材50の他端部9bに取り付けられている。
【0095】
円筒部材50の一端部9aに取り付けられた複数のフランジ部材51のうち一つのフランジ部材51(以下、符号51bで示す)は、円環状に形成され、かつ円筒部材50の外周に嵌合している。他の一つのフランジ部材51(以下、符号51cで示す)は、円環状に形成され、かつ前述したフランジ部材51bの外周に嵌合している。残りのフランジ部材51(以下、符号51dで示す)は、円環状のリング部59と、円柱状の円柱部60とを一体に備えている。リング部59は、円柱部60の外縁から立設した格好となっている。フランジ部材51dは、リング部59がフランジ部材51cの外周に嵌合している。
【0096】
前述したフランジ部材51dには、軸受74により従動軸73が回転自在に支持されている。従動軸73は、円柱状に形成され、かつ収容槽9の円筒部材50と同軸に配されている。従動軸73は、端面に中空保持部材32が押し付けられる。従動軸73は、中空保持部材32とともに回転するとともに、該中空保持部材32の自由端としての一端部32aを支持する。
【0097】
前述した一つのフランジ部材51aは、円環状に形成され、かつ円筒部材50の他端部9bの外周に嵌合している。フランジ部材51aは、内側に中空保持部材32を通している。なお、円筒部材50の一端部9aは、収容槽9の一端部をなしているとともに、円筒部材50の他端部9bは、収容槽9の他端部をなしている。
【0098】
一対の削り屑封止ホルダ52は、それぞれ、円環状に形成されている。一方の削り屑封止ホルダ52は、円筒部材50の一端部9aの内周に嵌合し、他方の削り屑封止ホルダ52は、円筒部材50の他端部9bの内周に嵌合している。該他方の削り屑封止ホルダ52は、内側に中空保持部材32を通している。
【0099】
一対の削り屑封止板53は、それぞれ、メッシュ状に形成されている。一方の削り屑封止板53は、円板状に形成され、かつ円筒部材50の一端部9aの内周に配されているとともに、前述した一方の削り屑封止ホルダ52に取り付けられている。さらに、一方の削り屑封止板53は、内側に従動軸73を通している。他方の削り屑封止板53は、円環状に形成され、かつ円筒部材50の他端部9bの内周に配されているとともに、前述した他方の削り屑封止ホルダ52に取り付けられている。他方の削り屑封止板53は、内側に中空保持部材32を通している。削り屑封止板53は、後述の線条材65が加工対象物2の外表面に衝突して、該加工対象物2から削りとられて形成される削り屑が円筒部材50即ち収容槽9外に漏れ出ることを規制する。
【0100】
一対の位置決め部材54は、円筒状に形成されている。一方の位置決め部材54は、中空保持部材32の自由端である一端部32aの外周に嵌合している。他方の位置決め部材54は、円筒部材50内に位置しかつ他端部9b寄りの中空保持部材32の中央部32bの外周に嵌合している。一対の位置決め部材54は、互いの間に加工対象物2を挟んで、該加工対象物2を中空保持部材32に位置決めする。なお、一端部32aは、中空保持部材32の固定保持部4寄りでかつ移動保持部6から離れた側の端部をなしている。中央部32bは、収容槽9内でかつ中空保持部材32の固定保持部4から離れた側であるとともに移動保持部6寄りの端部をなしている。
【0101】
仕切部材55は、円環状に形成された本体部61と、メッシュ部62とを備えている。本体部61即ち仕切部材55は、円筒部材50の内周に嵌合して、該円筒部材50に取り付けられているとともに、内側に中空保持部材32を通している。本体部61即ち複数の仕切部材55は、一対の削り屑封止板53間に配されている。また、本体部61即ち複数の仕切部材55は、円筒部材50の軸芯P即ち長手方向に沿って、互いに間隔をあけて、並設されている。図示例では、仕切部材55は、7つ設けられている。
【0102】
本体部61には、貫通孔63が設けられている。メッシュ部62は、貫通孔63を塞ぐ格好で本体部61に取り付けられている。メッシュ部62は、メッシュ状に形成されており、気体と削り屑が通ることを許容するとともに、線条材65が通ることを規制する。
【0103】
前述した複数の仕切部材55は、円筒部材50内即ち収容槽9内の空間を、該円筒部材50即ち収容槽9の軸芯即ち加工対象物2の軸芯Pに沿って、仕切っている。また、軸芯Pは、収容槽9の軸芯と中空保持部材32の軸芯との双方をなしているとともに、収容槽9の長手方向をなしている。即ち、軸芯Pと収容槽9の長手方向とは、互いに平行である。さらに、前述した本体部61とメッシュ部62との双方即ち仕切部材55は、非磁性体で構成されている。
【0104】
一対の封止板56は、円環状に形成されている。また、封止板56は、メッシュ状に形成されているとともに、気体と削り屑が通ることを許容するとともに、線条材65が通ることを規制する。一方の封止板56は、最も一端部9a寄りの仕切部材55に取り付けられているとともに、他方の封止板56は、最も他端部9b寄りの仕切部材55に取り付けられている。封止板56は、内側に加工対象物2の両端に取り付けられた後述するキャップ64を通す。封止板56は、仕切部材55間に位置付けられた線条材65を通すことを規制して、該線条材65の円筒部材50即ち収容槽9の外部への流出を規制する。
【0105】
前述した構成の収容槽9は、複数の仕切部材55間に磁性体で構成される線条材65(図9に示す)を収容するとともに、中空保持部材32に取り付けられた加工対象物2を円筒部材50内に収容する。即ち、収容槽9は、加工対象物2と線条材65との双方を収容する。また、線条材65は、前述した回転磁場により加工対象物2の外周を回転(移動)するなどして、加工対象物2の外表面に衝突する。線条材65は、加工対象物2の外表面に衝突して、加工対象物2の外表面から該加工対象物2の一部を削り取り、該加工対象物2の外表面を粗面化する。
【0106】
線条材65は、例えば、オーステナイト系のステンレス鋼又はマルチンサイト系のステンレス鋼などの磁性材料で構成されている。線条材65は、短線状の円柱状に形成されている。なお、図示例では、線条材65は、円柱状に形成され、その大きさは、外径が0.5mm〜1.4mmでかつ全長が3.0mm〜14.0mm程度である。
【0107】
回収部10は、図8に示すように、気体流入管66と、気体排出用孔67と、メッシュ部材68と、気体排出用ダクト69と、集塵機70(図7に示す)とを備えている。気体流入管66は、他方の削り屑封止ホルダ52より円筒部材50即ち収容槽9の端(移動保持部6)寄りに設けられ、円筒部材50即ち収容槽9の内部に開口している。気体流入管66は、図示しない加圧気体供給源から加圧された気体などが供給される。気体流入管66は、加圧された気体を円筒部材50即ち収容槽9内に導く。
【0108】
気体排出用孔67は、円筒部材50を貫通して、収容槽9の内外を連通しているとともに、一方の削り屑封止ホルダ52より円筒部材50即ち収容槽9の端寄り(移動保持部6から離れた側)に設けられている。メッシュ部材68は、気体排出用孔67を塞いだ格好で、円筒部材50に取り付けられている。メッシュ部材68は、削り屑と気体とが通ることを許容し、線条材65が通ることを規制する。メッシュ部材68は、線条材65が円筒部材50即ち収容槽9の外部に流出することを規制する。
【0109】
気体排出用ダクト69は、配管であるとともに、気体排出用孔67の近傍に取り付けられている。気体排出用ダクト69は、気体排出用孔67の外縁を囲んでいる。気体排出用孔67及び気体排出用ダクト69は、気体流入管66から円筒部材50即ち収容槽9内に供給された気体を、円筒部材50即ち収容槽9の外部に導く。
【0110】
集塵機70は、気体排出用ダクト69に接続しているとともに、該気体排出用ダクト69内の気体を吸引する。集塵機70は、気体排出用ダクト69内の気体を吸引することで、円筒部材50即ち収容槽9内の気体を前述した削り屑とともに吸引する。集塵機70は、削り屑を回収する。前述した回収部10は、気体流入管66を通して円筒部材50即ち収容槽9内に気体を供給し、該気体と集塵機70により気体排出用孔67と気体排出用ダクト69を通して、削り屑を円筒部材50即ち収容槽9の外部に導く。そして、回収部10は、集塵機70に削り屑を回収する。
【0111】
冷却部11は、図7に示すように、冷却用ファン71と、冷却用ダクト72とを備えている。冷却用ファン71は、加圧された気体を冷却用ダクト72に供給する。冷却用ダクト72は、配管である。冷却用ダクト72は、冷却用ファン71から供給された加圧された気体を電磁コイル8に導く。冷却用ダクト72は、冷却用ファン71から供給された加圧された気体を、電磁コイル8に吹き付ける。冷却部11は、加圧された気体を電磁コイル8に吹き付けて、該電磁コイル8を冷却する。
【0112】
リニアエンコーダ75は、図8に示すように、本体部77と、該本体部77に移動自在に設けられた検出子78とを備えている。本体部77は、直線状に延在しており、ベース3に取り付けられている。本体部77は、レール20と平行に、該一対のレール20間に配置されている。本体部77の全長は、前述した収容槽9より長い。本体部77は、長手方向の両端部が前述した収容槽9より該収容槽9の長手方向に沿って外側に突出した位置に配置されている。
【0113】
検出子78は、本体部77則ち収容槽9の長手方向に沿って移動自在に設けられている。検出子78は、電磁コイル保持ベース18に取り付けられている。則ち、検出子78は、電磁コイル保持ベース18を介して、電磁コイル8に取り付けられている。
【0114】
前述したリニアエンコーダ75は、本体部77則ち収容槽9に対する検出子78の位置を検出して、該検出した結果を制御装置76に向かって出力する。このように、リニアエンコーダ75は、電磁コイル8の収容槽9則ち加工対象物2に対する相対的な位置を検出して、検出結果を制御装置76に向かって出力する。
【0115】
制御装置76は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置76は、電磁コイル移動部5と、移動保持部6と、移動チャック部7と、電磁コイル8と、インバータ49と、回収部10と、冷却部11と、リニアエンコーダ75などと接続しており、これらを制御して、表面処理装置1全体の制御を司る。
【0116】
制御装置76は、リニアエンコーダ75の検出した電磁コイル8の加工対象物2に対する相対的な位置に応じた電磁コイル8の回転磁場の強さを記憶している。則ち、制御装置76は、電磁コイル8の加工対象物2に対する相対的な位置に応じたインバータ49が電磁コイル8に印加する電力を記憶している。また、制御装置76は、前述した電力を加工対象物2則ち中空体132の品番毎に記憶している。
【0117】
図示例では、制御装置76は、電磁コイル8が加工対象物2の長手方向(軸方向)の中央部から両端部に向かうにしたがって、インバータ49が電磁コイル8に印加する電力を徐々に大きくするパターンを予め記憶している。そして、制御装置76は、予め記憶した前述した電力のパターン通りにインバータ49に電磁コイル8の発生する回転磁場の強さを変更させる。このように、図示例では、制御装置76は、加工対象物2の両端部を加工する際の回転磁場が、加工対象物2の中央部を加工する際の回転磁場より強くなるように、インバータ49に電磁コイル8の発生する磁場の強さを変更させる。前述したように、制御装置76は、リニアエンコーダ75が検出した電磁コイル8の収容槽9則ち加工対象物2に対する相対的な位置に基づいて、インバータ49に電磁コイル8の発生する回転磁場の強さを変更させる。
【0118】
さらに、制御装置76には、キーボードなどの各種の入力装置や、ディスプレイなどの各種の表示装置が接続している。
【0119】
次に、前述した構成の表面処理装置1を用いて加工対象物2の外表面を処理(粗面化)して、中空体132を製造する工程を、以下説明する。
【0120】
まず、制御装置76に入力装置から加工対象物2則ち中空体132の品番などを入力する。そして、加工対象物2の長手方向(軸方向)の両端の外周に円筒状のキャップ64を嵌合させる。そして、前述した他方の位置決め部材54を中空保持部材32の外周に嵌合させる。そして、両端にキャップ64が取り付けられた加工対象物2内に中空保持部材32を通す。その後、前述した一方の位置決め部材54を中空保持部材32の外周に嵌合させる。そして、チャック用シリンダ34のチャック軸39を縮小させて、中空保持部材32に加工対象物2を固定する。このとき、中空保持部材32と加工対象物2などが同軸になる。こうして、加工対象物2を中空保持部材32に取り付ける。
【0121】
そして、収容槽9内に加工対象物2及び中空保持部材32を収容するとともに、収容槽9の円筒部材50内に線条材65を供給する。こうして、収容槽9内に線条材65及び加工対象物2を収容する。さらに、収容槽9を保持チャック28,43でチャックする。こうして、移動保持部6に加工対象物2と収容槽9とを取り付ける。すると、収容槽9の円筒部材50と中空保持部材32と加工対象物2などが同軸になる。
【0122】
前述した作業は、勿論、アクチュエータ24,25で移動ベース26の位置を調整しながら行われる。さらに、前述した作業は、勿論、保持ベース41の位置を調整しながら行われる。保持チャック16で収容槽9の一端部9aをチャックさせるなどして、固定保持部4に収容槽9の一端部9aを保持させる。
【0123】
そして、回収部10の気体流入管66を通して収容槽9内に気体を供給するとともに、集塵機70で収容槽9内の気体を吸引するとともに、冷却部11に加圧された気体を電磁コイル8に吹き付けさせる。
【0124】
そして、駆動用モータ33で中空保持部材32とともに加工対象物2を軸芯P回りに回転させる。その後、電磁コイル8に三相交流電源48からの電力を印加して、電磁コイル8に回転磁場を発生させる。すると、電磁コイル8の内側に位置する線条材65が自転しながら軸芯P回りに公転(回転即ち移動)して、該線条材65が加工対象物2の外表面に衝突して、該加工対象物2の外表面を粗面化する。
【0125】
そして、電磁コイル移動部5が、適宜、電磁コイル8を軸芯Pに沿って移動する。すると、電磁コイル8の内側に侵入した線条材65が前述した回転磁場により移動(自転及び公転)するとともに、電磁コイル8の内側から抜け出た線条材65が停止する。また、仕切部材55が収容槽9内の空間を仕切っているので、線条材65が仕切部材55を越えて移動することが規制され、電磁コイル8の内側から抜け出た線条材65が前述した回転磁場内から抜け出ることとなる。さらに、電磁コイル移動部5が予め定められた所定の回数電磁コイル8を矢印Xに沿って往復移動させると、加工対象物2の外表面の粗面化が終了する。
【0126】
前述した加工対象物2の外表面の粗面化処理が終了すると、電磁コイル8への電力の印加を停止するとともに、駆動用モータ33を停止する。さらに、回収部10と冷却部11とを停止する。そして、固定保持部4の保持チャック16の収容槽9の保持を解除するとともに、移動チャック部7の保持チャック43と移動保持部6の保持チャック28とが収容槽9を保持したまま、第1アクチュエータ24で移動ベース26を矢印Xに沿って固定保持部4から離す。すると、収容槽9が固定保持部4から離れる。そして、収容槽9内から外表面の粗面化が終了した加工対象物2を取り出して、新たな加工対象物2を収容槽9内に収容する。こうして、加工対処物2の外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分141cの粗面化を行って、中空体132が得られる。
【0127】
本実施形態によれば、中空体132が回転スラスト方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝141aと、スラスト方向に対して反対側に傾斜した方向に延びる複数の溝141bとが交差するように形成されてなるアヤメ状の溝を有するとともに、外表面の溝141aおよび141bで囲まれた部分141cが線条材65を衝突させて粗面化されて凹みが形成されているので、溝ピッチ濃淡ムラやスリーブピッチ濃淡ムラの発生を抑制するとともに、ピッチ状横黒スジやピッチ状縦黒スジの発生を経年使用においても抑制できる。
【0128】
粗面化処理による凹みが形成されていないと、外表面の溝141aおよび141bに囲まれた部分141cに比して溝141aおよび141bの部分では現像剤搬送が多いため、溝部に現像剤126は溜まっている。そのため、周期性を持った異常画像(濃淡ムラ)が発生しやすい。つまり、異常画像(濃淡ムラ)を抑制するには、溝141aおよび141bに囲まれた部分141cと、溝141aおよび141bの部分の現像剤搬送量の差を小さくすることが有効である。そこで、溝141aおよび141bに囲まれた部分141cを粗面化して凹みを形成することで、溝141aおよび141bに囲まれた部分141cの現像剤搬送能力が向上し、溝141aおよび141bに囲まれた部分141cと溝141aおよび141bの部分の現像剤搬送の差が小さくなり、異常画像(濃淡ムラ)が抑制できる。アヤメ状の溝の場合、溝141aと溝141bが交差しているため、特に溝交点部分で現像剤が多く搬送される。その結果、溝141aと141bの交点部分とそれ以外の部分とで現像濃度差が生じ、異常画像(ピッチ状横黒スジ、ピッチ状縦黒スジ)が発生する。アヤメ状の溝を配置した中空体の溝に囲まれた部分141cを粗面化して凹みを形成することで、溝の交点部分とそれ以外の部分とでの現像剤搬送の差が小さくなり、異常画像(ピッチ状横黒スジ、ピッチ状縦黒スジ)が抑制できる。
【0129】
サンドブラストなどに用いる砥粒よりも遙かに大きな線条材65を、加工対象物2の外表面に衝突させて、該加工対象物2(中空体132)の外表面に粗面化処理を施す。則ち、図11に示す従来から用いられてきたサンドブラストを施して形成された凹凸139aに比べ、本実施形態は、図10に示すように、前述した線条剤65を衝突させることで凹凸139を滑らかに形成している。
【0130】
図11に示すサンドブラストを施して形成された従来の中空体132aの凹凸139aでは、凹凸139a間の間隔が狭いため、磁性キャリア135が、該細かい凹凸139a上に乗っかっている状態となる。このため、磁性キャリア135が、凹凸139a上を滑り易く、一つ一つの穂が磁界発生手段からの磁界により磁気モーメントを有しており、同方向の磁気モーメントを有した穂が互いに隣り合った状態となる。このため、穂同士が反発して、互いに離れようとする。この結果、図11に示すサンドブラストを施して形成された凹凸139aでは、磁性キャリア135則ち現像剤126aは、細く長く(中空体132aの外周面上では細く、中空体132aからの突出量が長く)穂立ちする。
【0131】
このため、図11に示された中空体132aでは、実線で示す状態から二点鎖線で示す状態まで汲み上げた現像剤126aの量が減少すると、穂立ち形状を実線と二点鎖線とで相似形とするために、前述した中空体132aの外周側からみた穂立ちした現像剤126aの幅則ち面積が著しく小さくなる。
【0132】
これに対して、本実施形態の前述した線条材65を衝突させることで形成した凹凸139間の間隔は、図10に示すように、図11に示す凹凸139a間の間隔より遙かに大きいため、本実施形態の凹凸139は、図11に示す凹凸139aより遙かに滑らかである。このため、本実施形態では、図10に示すように、一つ一つの凹みを根として穂立ち形状が形成される。則ち、一つ一つの凹み上に穂立ちが形成される。
【0133】
このため、本実施形態では、図11に示された場合より、磁性キャリア135則ち現像剤126は、太く短く(中空体132の外周面上では太く、中空体132からの突出量が短く)穂立ちする。このため、図10に示された本実施形態の中空体132では、実線で示す状態から二点鎖線で示す状態まで汲み上げた現像剤126の量が減少して、穂立ち形状を実線と二点鎖線とで相似形としても、前述した中空体132の外周側からみた穂立ちした現像剤126の幅則ち面積が殆ど小さくならない。
【0134】
このため、本実施形態の現像装置113は、経年変化によって、中空体132の外表面の凹凸139が摩耗して、現像剤126の汲み上げ量が減少しても、中空体132の外表面に吸着した現像剤126の外周側からみた面積の減少量を抑制できる。したがって、経年変化によって画像のムラが発生することなどを抑制して、長期間に亘って高品質な画像を得ることができる。
【0135】
また、線条材65をランダムに外表面に衝突させるので、中空体132の軸芯が湾曲したり内外径が変化したり断面形状が楕円形状になることを防止できる。則ち、中空体132の振れ精度を高精度に保つことができる。したがって、感光体ドラム108に供給される現像剤126の量にムラが生じることを防止でき、形成した画像に濃度のムラ(スリーブピッチムラ)が生じることを防止できる。
【0136】
回転磁場内に線条材を位置付けて、該線条材65を加工対象物2(中空体132)の外表面に衝突させるので、よりランダムに線条材65を加工対象物2の外表面に衝突させることができる。したがって、より一様な凹凸139を中空体132の外表面に形成でき、より一様な画像を得ることができる。
【0137】
また、回転磁場内に線条材65を位置付けることで中空体132の外表面に凹凸139を形成できるので、中空体132の外表面に凹凸139を形成する際にかかる工程が増加することを防止できる。したがって、中空体132の外表面に凹凸139を形成するための工程が煩雑になることを防止でき、加工にかかるコストが高騰することを防止できる。
【0138】
加工対象物2を線条材65とともに収容槽9内に収容するので、加工対象物2(中空体132)の外表面に線条材65を確実に衝突させることができる。したがって、中空体132の外表面が、確実に粗面化処理を施されることなる。
【0139】
また、現像装置113は、前述した現像剤担持体115を有しているため、画像にムラが生じることを確実に防止できる。
【0140】
磁性キャリア135の平均粒径が20μm以上でかつ50μm以下の現像剤126を用いているので、粒状度に優れ、ムラの少ない優れた画像を得ることができる。磁性キャリア135の平均粒径が20μm未満であると、磁性キャリア135一つ一つの磁化の大きさが小さくなるために、磁性キャリア135の現像剤担持体115からの磁気的拘束力が弱くなり、該磁性キャリア135が感光体ドラム108に吸着しやすいため、望ましくない。磁性キャリア135の平均粒径が50μmを越えると、磁性キャリア135と感光体ドラム108上の静電潜像との間の電界が疎になるため、均一な画像を得ることができない(画質が劣化する)ため、望ましくない。
【0141】
プロセスカートリッジ106Y,106M,106C,106K及び画像形成装置101は、前述した現像装置113を有しているため、画像にムラが生じることを確実に防止できる。
【0142】
電磁コイル8が移動することにより、中空体132の加工を行うと同時に、線条材65が回転磁場内から急激に抜け出ることとなる。このため、線条材65に作用する磁場の強さが急激に変化(減少)して、線条材65内で揃っていた磁区が、不揃いになることにより磁化が弱まり、中空体132の加工と同時に線条材65の残留磁化を取り除く効果を奏でる。
【0143】
この結果、表面処理装置1と別体の線条材65の残留磁化を取り除く消磁装置などが不要となる。したがって、容易に線条材65の消磁を行うことが可能になり、中空体132の長時間に亘る連続した加工が可能になって、表面処理の加工効率を向上させることができる。したがって、中空体132の大量生産を前提とした量産装置としての表面処理装置1を得ることができる。
【0144】
中空体132を収容槽9の中心に保持するので、該中空体132の外表面に略一様に線条材65を衝突させることができる。したがって、中空体132の外表面を一様に加工することができる。
【0145】
線条材65が中空体132の外周で移動(公転)することで、該線条材65を確実に加工対象物2の外表面に衝突させることができ、該中空体132の加工を確実に行うことができる。
【0146】
中空体132を回転させるので、該中空体132の外表面により一様に線条材65を衝突させることができ、中空体132の外表面をより一様に加工することができる。
【0147】
電磁コイル8が収容槽9より短いので、電磁コイル8が収容槽9と略同等の長さの表面処理装置を用いるよりも、回転磁場を強くすることが可能となり、収容槽9内に発生させる回転磁場の損失を少なくすることが出来る。したがって、中空体132の加工効率を向上させることが可能となるとともに、さらに消費電力を抑えることができる。
【0148】
また、電磁コイル8が収容槽9より短いので、収容槽9の両端を支持することが可能となる。これにより、線条材65の移動などで収容槽9が振動(移動)することを防止でき、中空体132の外表面により一層一様に線条材65を衝突させることができ、中空体132の外表面をより一層一様に加工することができる。
【0149】
収容槽9が円筒状であるので、線条材65に回転磁場を作用させた時の該線条材65の円周方向の挙動を収容槽9が妨げることがない。したがって、安定した加工が可能となる。
【0150】
仕切部材55が収容槽9内の空間を長手方向に仕切っている。このため、仕切部材55により、線条材65の移動可能な領域(自転・公転領域)を限定することとなり、より効率的に加工することが可能になる。
【0151】
また、線条材65が仕切部材55を越えて移動することを規制できるので、線条材65と回転磁場とを確実に相対的に移動でき、該線条材65を確実に消磁させることができる。
【0152】
非磁性体で構成されているので、仕切部材55が磁化されることがなく、該仕切部材55が線条材65の挙動を妨げたり、削り屑などが磁化されて仕切部材55に張り付くことがない。このため、安定して加工を行うことが可能となる。
【0153】
仕切部材55が複数設けられているので、中空体132の外表面の粗面化する範囲を区切ることができる。このため、仕切部材55により、線条材65の移動可能な領域(自転・公転領域)を確実に限定することとなり、より効率的に加工することが可能になる。
【0154】
また、線条材65が仕切部材55を越えて移動することを規制できるので、線条材65の消磁を確実に行うことができる。
【0155】
収容槽9の円筒部材50の外壁が一重構造であるため、電磁コイル8から中空体132までの距離を短くすることが可能となり、電磁コイル8が発生する回転磁場をより効率的に加工に使用することが可能となる。
【0156】
封止板56により線条材65の収容槽9外への流出を防ぐことが可能となり加工時の作業性、生産性の向上が可能となり、連続加工することでその効果はさらに高くなり、表面処理装置1は、大量生産を前提とした量産装置としての中空体132の生産(処理)が可能となる。
【0157】
次に本発明の発明者らは、材質A6063、直径25mmの中空体に、溝傾斜角度25°、溝角度65°、溝深さ90μmの溝を各傾斜方向60本、合計で120本形成したアヤメ加工が施された現像剤担持体に対して以下の比較例、実施例1および実施例2の条件の処理を施した後に、初期画像と300,000枚給紙後の画像の比較を行った。
【0158】
ここで、溝角度とは中空体132の溝の断面を示した図12におけるa、つまりアヤメ加工におけるV字状の溝141aおよび141bの底部の角度である。溝深さとは図12におけるb、つまり溝141aおよび141bの底部から中空体表面までの長さである。
【0159】
(比較例)
比較例として、前記現像剤担持体の表面に粗面化処理を施さずに使用した。このときの外表面の溝に囲まれた部分の表面粗さRz=5μm(研磨面)であった。
【0160】
上記の条件で得られた現像剤担持体を用いて画像形成装置でベタ画像を形成したところ、初期画像においてピッチ状縦黒スジが発生した。300,000枚給紙後においても、初期と同等のピッチ状縦黒スジが発生した。
【0161】
(実施例1)
実施例1として、前記現像剤担持体の表面にサンドブラスト処理を施して使用した。サンドブラスト処理にはアルミナ系研磨剤#100を使用した。このときの外表面の溝に囲まれた部分の表面粗さRz=12μmであった。
【0162】
上記の条件で得られた現像剤担持体を用いて画像形成装置でベタ画像を形成したところ、初期画像において濃淡ムラのない良好な画像が得られた。300,000枚給紙後では、許容内のレベルではあるが、ピッチ状縦黒スジが発生した。
【0163】
(実施例2)
実施例2として、前記現像剤担持体の表面に図8および図9に示した表面処理装置による粗面化処理を施して使用した。粗面化処理には線条材としてKPR110AD、Φ0.8×10を使用した。このときの外表面の溝に囲まれた部分の表面粗さRz=14μmであった。
【0164】
上記の条件で得られた現像剤担持体を用いて画像形成装置でベタ画像を形成したところ、初期画像において濃淡ムラのない良好な画像が得られた。300,000枚給紙後でも、濃淡ムラのない良好な画像が得られた。
【0165】
以上の結果から、現像剤担持体外表面のアヤメ状の溝に囲まれた部分を、粗面化することにより異常画像(濃淡ムラ、ピッチ状縦黒スジ)が抑制できることが明らかとなった。また、経年使用においても異常画像(濃淡ムラ、ピッチ状縦黒スジ)が抑制できることが明らかとなった。さらに、線条材による粗面化処理により多数の楕円形状の凹みがランダムに設けられているように粗面化することにより、異常画像(濃淡ムラ、ピッチ状縦黒スジ)がより抑制できることが明らかとなった。また、経年使用においても異常画像(濃淡ムラ、ピッチ状縦黒スジ)がより抑制できることが明らかとなった。
【0166】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。
【図2】図1に示された画像形成装置のプロセスカートリッジの断面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図3に示された現像装置の現像剤担持体としての中空体の斜視図である。
【図5】図3に示された現像装置の現像剤の磁性キャリアの断面図である。
【図6】図4に示された中空体の外表面を拡大して示す説明図である。
【図7】図4に示された中空体の外表面に粗面化処理を施す表面処理装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図8】図7中のII−II線に沿う断面図である。
【図9】図7で示された表面処理装置で用いられる磁性砥粒の斜視図である。
【図10】図4に示された中空体の外表面に穂立ちした状態を模式的に示す断面図である。
【図11】従来のサンドブラストが施された中空体の外表面に穂立ちした状態を模式的に示す断面図である。
【図12】図4に示された中空体に設けられる溝の断面図である。
【符号の説明】
【0168】
1 表面処理装置
2 加工対象物
65 線条材
101 画像形成装置
106Y、106M、106C、106K プロセスカートリッジ
113 現像装置
115 現像剤担持体
131 現像領域
132 中空体
133 磁界発生手段
135 磁性キャリア
136 芯材
139 凹凸(凹み)
141a、141b 溝
141c 溝に囲まれた部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に、回転スラスト方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝と回転スラスト方向に対して反対側に傾斜した方向に延びる複数の溝とが交差するように形成されてなるアヤメ状の溝および前記アヤメ状の溝に囲まれた部分を有する中空体と、前記中空体内部に磁力により前記外表面に現像剤を吸着する磁界発生手段と、を備えた現像剤担持体において、
前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分が、粗面化処理にて形成された凹みをランダムに設けていることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分に多数の楕円形状の凹みが、ランダムに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記中空体外表面の前記アヤメ状の溝に囲まれた部分の多数の楕円形状の凹みが、ランダムに衝突された短線状の線条材によって形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の現像剤担持体。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の現像剤担持体を有したことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
現像剤が、トナーと磁性キャリアとを含んでいるとともに、前記磁性キャリアの平均粒径が、20μm以上でかつ50μm以下の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の現像装置を有したことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスカートリッジを有したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6に記載のプロセスカートリッジを複数有することを特徴とするカラー画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−47821(P2009−47821A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212624(P2007−212624)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】