説明

現像剤担持体及びそれを用いた画像形成装置

【課題】 長期にわたり濃度むら及びゴースト画像等の不具合画像の発生を防止し、所望の画像濃度を得ることができる現像剤担持体及びそれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 画像形成装置において、現像剤担持体は、円筒部材と該円筒部材の外周長に対しわずかの余剰内周長を有する可撓性薄膜現像スリーブと、像担持体と可撓性薄膜現像スリーブの接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と非接触であり、現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と接触している部分を有しており、円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、該間隙保持部材が軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真記録方式を利用する現像剤担持体及びそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機等の電子写真方式を用いて画像の作成を行うには、まず画像担体である感光体表面に静電潜像を形成する。ついで、この静電潜像を有する感光体表面に現像装置により帯電トナーを供給して現像(可視像化)した後、得られたトナー像を紙などの転写材に転写、定着する。このような電子写真複写機等に用いられる現像装置、特に、一成分現像剤として非磁性トナーを用いる現像装置においては、均一な帯電トナーの薄層を感光体表面に供給することが重要である。
【0003】
従来、かかる現像装置として、弾性現像ローラの表面に非磁性トナーを供給し、これに現像剤規制部材としてのブレードを圧接して該ローラ外周面に荷電トナー薄層を形成し、該荷電トナー薄層を感光体の表面に直接接触させることによりトナー像を形成するものが提案されている(特開昭52-143831号公報参照)。
【0004】
しかしながら、前記現像装置では、ローラの表面に荷電トナー薄層を形成するために、ブレードはある程度以上の圧接力をもってローラに接触する必要がある。このため弾性ローラに要求される硬度は比較的高く、逆に、静電潜像担体との接触部では静電潜像担体の損傷、像の破壊を防止するために、弾性ローラに要求される硬度は非常に低い。
【0005】
しかしながら、このようにまったく相反する性質を兼ね備えたローラは存在せず、いずれか一方の要求を犠牲にしなければならないという問題点を有していた。
【0006】
これらの問題に対し、そこで、このような問題を解決するため、特開昭63−226676号公報や特開昭64−65579号公報等に開示されている現像装置が提案されるに至った。
【0007】
この現像装置では、駆動ローラに該ローラの周長に対しわずかの余剰周長を有する可撓性薄膜現像スリーブを外装し、該現像スリーブを片側から前記駆動ローラに押圧接触させるとともに反対側にできたたるみ部分を静電潜像担持体に接触させるようにし、さらに該現像スリーブには該片側からトナー規制部材を接触させるようにしてある。
【0008】
この現像装置では、トナー規制部材をある程度の圧接力でもって駆動ローラに支持された現像スリーブに接触させることができるとともに、現像スリーブの余剰たるみ部分をソフトに一様に静電潜像担持体に接触させることができる。
【0009】
しかしながら、この現像装置においては現像スリーブの余剰たるみ部分を利用して静電潜像担持体に接触させるため、駆動ローラの回転を現像スリーブに伝達させる手段は駆動ローラ表面と現像スリーブ内面の摩擦によっていたため、以下に示す不具合を生じていた。
【0010】
非磁性一成分トナーは、磁性トナーと異なり現像スリーブ表面にトナーを供給する手段が必要である。また、前に出力した画像が次の画像に写り込む、所謂「ゴースト」画像を出さないために、現像スリーブ表面のトナーを現像スリーブ表面から除去する手段が必要である。これらの要望を満たすために発泡セルを有するスポンジローラを現像スリーブに周速差をもって当接させる手段が好適に用いられる。これは特に、スポンジの空孔を形成する弾性部分で現像スリーブ表面に付着したトナーをメカニカルにこそぎ落とす必要があることから、現像スリーブ表面とスポンジローラ表面は、一般にカウンター当接される。
【0011】
前述したように従来例に示す現像装置においては、現像スリーブの駆動伝達手段として摩擦を利用していることから、現像ローラ表面にスポンジローラをカウンター当接させて配設させることは、現像ローラの回転を不安定若しくは回転不能にするため困難であった。従って、現像スリーブへの安定したトナーの供給ができず濃度むらを発生させたり、前述した理由によりゴースト画像を発生させたりするなど不具合を生じていた。
【0012】
上記と同様に、支持ロールを内側に挿入した余剰たるみ部分のある円筒状の帯電電極を、電荷受容体に接触させて回転する構成である帯電装置において、回転を不安定若しくは回転不能にする問題を解決するため、特開平10-307451号公報では、図10(a)に示す帯電装置が提案されている。
【0013】
その帯電装置は、図10(b)に示すように、帯電電極112の内側に挿入され、帯電電極112を電荷受容体111に接触させて周回移動させる支持ロール113を配置し、その両側に帯電電極112の内周面と接触しながら回転するスプロケット115を配置する。このスプロケット115は、周面に複数の突起115aを備えており、支持ロール113との間のバネ116によって外側に付勢される。また帯電電極112の両縁部には、周方向に沿って、突起115aと係合する複数の開口112aが設けられている。これにより帯電電極112は、開口112aがスプロケット115の突起115aと係合しながら周回移動し、バネ116によって帯電電極112に幅方向の張力が与えられる。このため、帯電電極112と電荷受容体111との接触を安定化することができる。
【0014】
なお、支持ロールと円筒状の帯電電極は、両側縁部の外側からリング状部材によって締め付けることにより、前記支持ロールに固定されている構成も提案されている。また、張力付与するためのロールは、帯電電極の内周面長とほぼ同じ周長を有し、帯電電極の両側縁部の内側に接着され支持ロールに固定されている構成も提案されている。これらについても支持ロールとの間のバネによって帯電電極を外側に付勢する。これによって帯電電極に幅方向の張力が与えられ、帯電電極と電荷受容体との接触を安定化させることができる。
【0015】
また、トナーを現像ローラに供給し、前の画像の履歴を消去するために発泡セルを有するスポンジローラが好適に使用されるが、このスポンジローラもある程度の圧接力が必要である。
【特許文献1】特開昭52-143831号公報
【特許文献2】特開昭63-226676号公報
【特許文献3】特開昭64-65579号公報
【特許文献4】特開平10-307451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図10(a、b)に示すような支持ロールを内側に挿入した余剰たるみ部分のある円筒状の帯電電極を、電荷受容体に接触させて回転する構成である帯電装置においては、帯電電極を外側に付勢し帯電電極に幅方向の張力を与え、電荷受容体と帯電電極との接触を一定にし帯電電極の回転を安定するために、支持ロールとの間のバネ状部材により帯電電極を外側に付勢していたため、以下に示す不具合を生じていた。
【0017】
円筒状の帯電電極を外側に付勢しているバネ状部材を長期にわたり使用し続けると張力が弱まり、所望の張力を維持できなくなる虞がある。また、高温多湿などの劣悪な環境下では破損する虞があり、この場合、円筒状の帯電電極を傷つける若しくは破損してしまい、その後、帯電装置が使用不能になる。
【0018】
上記の問題点に関して、付勢バネを現像装置へ応用した場合も同様であり、円筒状の現像スリーブを傷つける若しくは破損し、その後、現像装置が使用不能になる。
【0019】
この種の問題が発生した場合には、バネの交換が必要となるが、構造上分解しなくてはならず、手間がかかる。
【0020】
また、左右付勢バネを用いた場合は、一周の間で現像スリーブへの接触圧に圧差が生じた場合、現像スリーブの張力に差が生じ、しわが発生し易くなる。そのため、長期に渡る使用で左右の張力にバラツキが生じると、円筒部材軸方向に張力の差ができ、回転が不安定になる虞がある。
【0021】
本発明は、このような技術的な課題に鑑みてなされたものであり、この種の画像形成装置であって、付勢バネを交換するための分解というような手間のかかる作業をなくし、付勢力の調節作業が簡単にできる画像形成装置を提供することができ、安定した圧力を維持した状態で、長期にわたり濃度むら及びゴースト画像等の不具合画像の発生を防止し、所望の画像濃度を得ることができる現像剤担持体及びそれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の画像形成装置において、上記課題を解決するための手段を以下に示す。
【0023】
静電潜像が形成される像担持体と、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、現像剤担持体上に担持する現像剤量を規制する現像剤規制部材を有する画像形成装置において、現像剤担持体は、円筒部材と該円筒部材の外周長に対しわずかの余剰内周長を有する可撓性薄膜現像スリーブと、像担持体と可撓性薄膜現像スリーブの接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と非接触であり、現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と接触している部分を有しており、円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、該間隙保持部材が軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段を有することを特徴とする。この結果、現像剤担持体と像担持体との当接部では軽圧にすることができ、現像剤担持体と現像剤供給部材若しくは現像剤規制部材との当接部では所望の圧力をかけて、現像剤を所定の帯電量に電荷付与することで、ゴースト画像や濃度むらを長期にわたって防止することが可能となる。また、前記現像剤担持体を構成する軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段が前記円筒部材の回転駆動部材と併用であることを特徴とする。
【0024】
また、円筒部材の略両端部には円筒部材と可撓性薄膜現像スリーブとの間に間隔を保持するための間隔保持部を設けており、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材との間に間隔を保持した状態で該円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブは外装固定し同軸駆動しており、該可撓性薄膜現像スリーブの円筒部材軸方向の幅W1と該円筒部材の軸方向の幅W2とはW1>W2であり、該可撓性薄膜現像スリーブの内径R1と該円筒部材の外径R2とは、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定前はR1<R2の関係を満たし、円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブとで構成された空間に大気圧以上の気体を入れ密封して、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定後はR1>Rの関係を満たすことを特徴とする。円筒部材の略両端部における間隔保持部において、該間隔保持部の円筒部材軸方向外側の可撓性薄膜現像スリーブとの固定部に曲率を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によれば、本発明の画像形成装置において、上記課題を解決するための手段を以下に示す。
【0026】
静電潜像が形成される像担持体と、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、現像剤担持体上に担持する現像剤量を規制する現像剤規制部材を有する画像形成装置において、現像剤担持体は、円筒部材と該円筒部材の外周長に対しわずかの余剰内周長を有する可撓性薄膜現像スリーブと、像担持体と可撓性薄膜現像スリーブの接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と非接触であり、現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と接触している部分を有しており、円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、該間隙保持部材が軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段を有することを特徴とする。この結果、現像剤担持体と像担持体との当接部では軽圧にすることができ、現像剤担持体と現像剤供給部材若しくは現像剤規制部材との当接部では所望の圧力をかけて、現像剤を所定の帯電量に電荷付与することで、ゴースト画像や濃度むらを長期にわたって防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施形態1)
以下、本発明の実施例を図面に従って詳細に説明する。本実施の形態は、電子写真方式の画像形成装置における、非磁性一成分の現像剤を使用する画像形成装置である。
【0028】
本発明においては、現像剤担持体としての現像ローラは、可撓性薄膜現像スリーブと該現像スリーブの内周長より小さい外周長を有する円筒部材と、該円筒部材両端近傍に配され前記現像スリーブと円筒部材の間に所定の間隙を形成する間隙保持部材からなる。現像スリーブは両端において間隙保持部材により円筒部材に固定されることで現像スリーブと中実円筒部材は同軸で回転駆動されるようになる。更に、現像ローラと像担持体としての感光ドラムの対向部では、現像スリーブは感光ドラムに少ない当接圧で接触し、現像ローラと現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との当接においては、現像スリーブ内面と円筒部材とが当接することで、所定の当接圧を得るものである。
【0029】
次に、本発明に係る画像形成装置について図を用いて説明する。図1は現像剤担持体の構成図、図2は本実施形態に係る画像形成装置の詳細説明図、図3は本実施形態に係る画像形成装置の全体構成図、図4は現像剤担持体の正面断面図および側面断面図、図5は現像剤担持体と他の部材の当接状態を説明する図である。
【0030】
まず、図3を用いて本実施形態に係る画像形成装置の全体構成について説明する。図に示す画像形成装置は電子写真方式を採用している。回転自在に設けられた像担持体である感光ドラム1は電気的に接地され、矢印X方向に回転速度Vxにて回転している。この感光ドラム1は一次帯電器としての帯電ローラ2で一様に帯電し、そこにレーザー等の発光素子3によって情報信号を露光して静電潜像を形成する。
【0031】
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、後述する現像装置4によって現像することによりトナー像を形成する。現像装置4は非磁性一成分トナーTを収容しており、現像剤担持体である現像ローラ8を感光ドラム1に接触させている。現像ローラ8は負極性DC電圧が印加され、矢印Y方向に回転速度Vyで回転する。ここで現像ローラ8の回転速度Vyは、感光ドラム1の回転速度Vxよりも高速である。また現像装置4には現像剤規制手段である現像ブレード10、矢印Z方向に回転する供給ローラ9、非磁性一成分トナーTを攪拌する攪拌部材11を有している。現像ブレード10は板バネの特性を生かして、金属薄板を当接させている。供給ローラ9は芯金の周辺に多孔質の発泡スポンジが接着されたもので構成される。
【0032】
形成されたトナー像は転写ローラ5によって転写材Pに転写され、しかる後に定着装置6によって熱と圧力を加えることにより画像が形成される。感光ドラム1上の転写残トナーはクリーニング装置7によって除去される。
【0033】
次に、上記現像ローラ周辺の各構成要素の配置について説明する。上述したように、画像形成時においては、現像ローラ8の周囲には現像ブレード10、供給ローラ9、そして感光ドラム1が現像ローラ8に接触して配設される。ここで、感光ドラム1については、非画像形成時について現像ローラ8から離間する構成を有していてもよい。画像形成時の当接状態について、前述のように供給ローラ9と現像ブレード10については、ある程度の当接圧を必要とするが、感光ドラム1については接触していればよく、トナーを劣化させないためにはなるべく当接圧を下げることが望ましい。
【0034】
そこで、本発明においては現像ローラを以下の構成とすることで、供給ローラ9と現像ブレード10については、ある程度の当接圧をもうけ、感光ドラム1においては当接圧を低減するものである。
【0035】
まず、現像ローラ8の取りうる構成について図1を用いて説明する。図1(b)に示すように、現像ローラ8は、円筒部材8bにまず間隙保持部材8cが両端に取り付けられる。この間隙保持部材8cは、図1(a)に示すように、ネジ状部材8dを備えた部材であり、ネジ部材8dのネジ山が切られていない部分(図1中、E部)において間隔保持の役割を成す部材8eと接着固定される。ここで、円筒部材8bと間隙保持部材8cの外径は間隙保持部材のほうが大きくなっている。そして、可撓性薄膜現像スリーブ8aが嵌められる(図1(c))。最後に、間隙保持部材8cと現像スリーブ8aが接着されて固定される(図1(d))。
【0036】
ここで、図4に示すように、可撓性薄膜現像スリーブ8aは、その両端(図4中、G部)を間隙保持部材8cと張力fをもって固定される。本発明において、この張力fは次のようにして得る。間隔保持部材8cに備えられたネジ部材8dを回転し、円筒部材8bと間隔保持部材8cとを左右に等しい距離だけ離す。これにより、間隔保持部材8cに固定された可撓性薄膜現像スリーブ8aを左右に引っ張られることになり、張力fが得られる。図4(a)と図4(b)は、それぞれ可撓性薄膜現像スリーブを左右に引っ張ることにより張力を与える前の状態と、張力を与えている状態を示す。但し、この張力fは可撓性薄膜現像スリーブ8aが自重で撓まない程度で充分である。このとき、張力はネジ部材の回転により調節することができ、分解するなどの手間を必要としない。また、左右への張力はネジの回転数により一意的に決められるので、例えば、左右に等しく距離I引っ張ることにより、左右の張力を等しくすることができる。つまり、本構成では、簡単な張力調整で、長期にわたり左右の張力を等しく維持することができるのである。その結果、所望の当節圧を保ちながら、安定した回転状態を保ち続ける現像スリーブを提供できる。
【0037】
ここで、円筒部材8bの外周面と可撓性薄膜現像スリーブ8aの内周面の距離Dは間隙保持部材8cと円筒部材8bの半径差となる。該距離Dは、40μm乃至1mmで可能であり、より好ましくは70μm乃至500μmである。
【0038】
40μm以下であると間隙を正確に製造するのが困難であり、多数の量産まで考慮した場合には70μm程度であることが望ましい。また、該距離Dが1mm以上となると現像ブレード10や供給ローラ9が当接された場合に、両端部に過大な力がかかることになる。更に現像ブレード10や供給ローラ9が現像ローラ8に侵入する分の可撓性薄膜現像スリーブの延びが必要であるが、該距離Dが大きくなればなるほど現像スリーブとして大きな引張強さを必要としてくるため、材料選択の余地が狭くなることとなる。500μm以下であれば、樹脂フィルム等も使用可能である。
【0039】
前述のように可撓性薄膜現像スリーブ8aは間隙保持部材8cと接着されており、図1に示すようにネジ部材8dを備えた間隙保持部材8cと円筒部材8bはネジ部材により固定されているため、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bは一体的に回転することになる。
【0040】
更に可撓性薄膜現像スリーブ8aの両端が間隙保持部材8cによって保持されていることにより、可撓性薄膜現像スリーブ8aは円筒部材8bと非接触であり、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内側に可撓性薄膜現像スリーブ8a、間隙保持部材8c及び円筒部材8bによって囲まれた略円筒状の空間が形成されている。
【0041】
上記のように可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面に形成した空間と現像ローラ8に当接される部材の当接状態を図2及び図5を用いて説明する。図5において、供給ローラ9を現像ローラ8に当接させていくと、供給ローラ9の発泡スポンジが歪むとともに、可撓性薄膜現像スリーブ8aも撓んで可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面は、円筒部材8bの内面と接触する(図2中、A部)。更に、供給ローラ9を押し込むと可撓性薄膜現像スリーブ8aは円筒部材8bがあるため撓むことができず、供給ローラ9には円筒部材8bの金属の硬度が反発力として戻ることになる。この結果、現像スリーブ8と供給ローラ9の間には適切な当接圧を有することが可能となる。
【0042】
現像ローラ8と現像ブレード10との当接部(図2中、B部)でも同様に現像ブレード10の当接によって可撓性薄膜現像スリーブ8aが撓み、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面が円筒部材8bと当接して、反発力を現像ブレード10に戻すことで適切な当接圧を有することが可能となる。
【0043】
それに対し、感光ドラム1と現像ローラ8との当接部(図2中、C部)においては、間隙保持部材8bによって感光ドラム1の当接圧を受けることになる。ここで間隙保持部材8cは剛体で形成されるため、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面と円筒部材8bと接触することはない。
【0044】
可撓性薄膜現像スリーブ8a上には、現像ブレード10を通過した時にトナー層が1〜3層ほど形成される。トナー層の高さとしては、トナー粒径が約7μmとした場合には、7〜20μm程度の層厚である。即ち、可撓性薄膜現像スリーブ8aと感光ドラム1との当接部では、両者の間に約7〜20μm程度のトナー層が挟まれることになる。ここで、感光ドラム1は剛体であり、現像スリーブ8aは可撓性のため、現像スリーブ8aが撓むことになる。
【0045】
しかし、前述のように可撓性薄膜現像スリーブ8aは両端で間隙保持部材8cと固定するときに張力fをもって固定されているため、可撓性薄膜現像スリーブ8aの撓みに対して反力Fが働くことになる。この反力Fはトナー層厚分の可撓性薄膜現像スリーブの変位に対する反力しかないため、非常に小さいものである。その結果、感光ドラム1と現像ローラ8の当接部におけるトナーに係る当接圧を減らすことが可能となり、トナー劣化を防止することが可能となる。
【0046】
ここで、図5に示したように感光ドラム1、現像ローラ8、供給ローラ9の長手幅は、感光ドラム1が一番長く、次いで現像ローラ8、供給ローラ8の順で短くなる。また、現像ブレード10は図示していないが、現像ローラ8の幅より短く構成される。トナー担持領域は感光ドラム1及び現像ローラ8の幅よりも狭く、供給ローラ9の幅よりも同じ若しくは広く構成される。
【0047】
次に、上記現像装置4の各構成要素について説明する。
【0048】
(現像ローラ)
円筒部材8bはステンレスやアルミニウム等の剛体が使用可能である。またその形状は中実でも中空でもよい。中実の円筒部材であれば、中実の鋼材から両端部の軸受け部(Dカット部)を切削加工により得られる。中空のパイプを使用する場合には中空のパイプに両端部の軸受け部を接着することで円筒部材8bが得られる。
【0049】
可撓性薄膜現像スリーブ8aが現像ブレ―ド10や供給ローラ9との接触による可撓性薄膜現像スリーブ8aの余分な撓みや変形を防止するために、円筒部材8bは適度な摩擦を有すると更に好ましい。摩擦を上げる方法としては、円筒部材表面に柔軟性のゴムや未架橋の樹脂等を被覆する方法等がある。
【0050】
可撓性薄膜現像スリーブ8aは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素系樹脂等の樹脂チューブ、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPDMゴム)、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム及びゴムと樹脂の混合された薄層チューブ、鉄薄膜やニッケル電鋳薄膜等の金属薄膜上に前記樹脂を塗工した薄膜、前記金属薄膜上に前記ゴム若しくはゴムと樹脂の混合物を積層した薄膜、ゴム等の薄層チューブ上に前記樹脂を塗工したチューブ等が使用可能である。前記金属薄膜単体では、感光ドラムとの接触が不均一になるため好ましくない。
【0051】
可撓性薄膜現像スリーブ8aは直接トナーTと接触することから、トナーに対する電荷付与性は大きいことが好ましい。本発明に於いては、負帯電性のトナーを使用していることから、トナーに対して負電荷付与性であるシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が可撓性薄膜現像スリーブ8a表面に塗工する材料として選択される。
【0052】
可撓性薄膜現像スリーブ8aの厚みとしては、基層として金属薄膜を用いる場合には金属薄膜を10乃至100μm程度が好ましい。可撓性薄膜現像スリーブ8aの金属薄膜厚みが10μm以下になると、可撓性薄膜現像スリーブ8aの強度が弱くなるため、皺やよれが発生しやすくなり、安定して現像を行うことが困難となるからである。また金属薄膜では100μm以上になると可撓性薄膜現像スリーブ8aの可撓性が失われ、あたかも剛体の部材と同様の動作をし、結果的に感光ドラム1と現像ローラ8の接触部に於いて、軽圧に接触させることが困難となる。
【0053】
樹脂チューブやゴム等の薄層チューブを用いる場合の厚みとしては、30乃至800μmであることが好ましい。30μm以下になると強度不足となり、成型も困難なためである。また800μm以上となると両端における支持が困難となるためである。
【0054】
可撓性薄膜現像スリーブ8aの表面は現像装置4内のトナーTを担持、搬送しやすいよう適度な粗さを有していることが好ましい。この表面粗さは、十点平均粗さRzで 3〜15μmが好適である。Rzが3μm以下であるとトナー搬送量が少なく、所定の画像濃度が得られ難くなり、15μm以上であると出力画像に可撓性薄膜現像スリーブ8aの表面粗さに相当した濃度ムラが発生するためである。該十点平均粗さRzはJIS B0601に示されている定義を用い、測定には小坂研究所製の表面粗さ試験器「SE-30H」を使用した。
【0055】
可撓性薄膜現像スリーブ8aの電気的な抵抗としては、抵抗値で1e3 〜1e9 Ω程度の範囲であることが好ましい。感光ドラム1の表面にピンホール等があった場合に過電流が流れる虞があるため、可撓性薄膜現像スリーブ8aで多少の抵抗を有すると良い。また、可撓性薄膜現像スリーブ8aを複数層で構成する場合には、下層を低抵抗とし表層側を高抵抗とすることで、感光ドラム当接部における現像電界の形成が均一となる。
【0056】
現像バイアスは円筒部材8bから現像ブレード10若しくは供給ローラ9と現像ローラ8の当接部における可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面との接触部を通して感光ドラム当接部(現像部)に作用させてもよい。他の方法としては、間隙保持部材8cを導電性で構成し、円筒部材8bから間隙保持部材8cを通じて可撓性薄膜現像スリーブ8aに現像バイアスを供給してもよい。
【0057】
間隙保持部材8cは金属若しくは硬質樹脂等で構成される。感光ドラム1と現像ローラ8の当接圧を保持するための材料としての硬度が必要である。
【0058】
(供給ローラ)
現像装置4内に収容された一成分非磁性トナーTを現像ローラ8に付着させるには、トナーTを供給ローラ9と現像ローラ8で摩擦させ、電荷付与を行わなければならない。供給ローラ9の材料としては、発泡ウレタンゴム、発泡EPDMゴム、発泡シリコーンゴムなどの公知の材料が用いられる。本発明においては、発泡ウレタンゴムを用いた。
【0059】
(トナー規制部材)
トナー規制部材としての現像ブレード10は、現像ローラ8の外周面に付着したトナーの層厚を規制すると共に、電荷を付与するものである。この現像ブレード10には、板バネを利用したものや固定部材を押しつけるもの等がある。板バネを利用したものでは、金属薄板の一端を固定端とし、他端を自由端として自由端近傍を現像ローラ8に当接させるものである。本発明においては、0.1mm厚のステンレス薄板を使用した。トナーへの帯電性付与を変化させたい場合には、前記金属薄板表面にウレタン、シリコーン等の樹脂若しくは弾性を有するゴム等を塗工若しくは成型したものを使用することが可能である。
【0060】
(トナー)
現像装置4に収容される非磁性一成分トナーTの形状については、粉砕法等で形成される凹凸を有するトナーであっても、また重合法等で形成される略球形トナーであっても使用に問題はない。しかし、略球形のトナーを使用することで現像ローラと感光ドラムとの接触部でのトナーの転がりが容易となるため、トナーは均一に摩擦帯電され、かぶりや文字周辺の非画像部にトナーが付着する所謂飛び散り等を低減することができ、画像の均一性が向上する。
【0061】
(評価方法)
(1)濃度むら
上記の画像形成装置を用いて、A4縦送りでベタ黒画像の画出しを行い、その後、4%印字率にて1000枚の通紙耐久を行い、1000枚時点でベタ画像の画出しを行い、初期と1000枚時点での各々のベタ画像において、マクベス社製濃度計RD-1255にて、濃度の最大値と最小値の差が実用上問題のない0.2以下であるかを評価した。
【0062】
(2)ゴースト
上記の画像形成装置を用いて、A4縦送りで紙の通紙方向に20×20mmのベタ黒画像を、ベタ黒画像のすぐ下から濃度が約0.2のハイライト画像を出力した。その後、4%印字率にて1000枚の通紙耐久を行い、1000枚時点でも初期と同様に画出しを行い、初期と1000枚時点での各々の出力画像において、ハイライト画像部分の20×20mmのベタ画像のゴーストにより発生する輪郭の有無を評価した。
【0063】
(3)現像スジ
上記の画像形成装置を用いて、4縦送りで4%印字率にて1000枚の通紙耐久を行い、1000枚時点でベタ画像の通紙を行い、通紙方向に濃度が現像ローラの回転周期で変化する不具合により画像上にスジがでるか否かを評価した。
【0064】
上記の評価を行った結果、本実施形態において、濃度むらは実用上問題のない0.2以下であり、ゴーストおよび現像スジの発生しない、画像情報に忠実な画像が得られることが確認できた。
【0065】
以上述べたように、本発明においては、現像剤担持体としての現像ローラは、可撓性薄膜現像スリーブと該現像スリーブの内周長より小さい外周長を有する円筒部材と、該円筒部材両端近傍に配され前記現像スリーブと円筒部材の間に所定の間隙を形成する間隙保持部材からなる。現像スリーブは両端において間隙保持部材により円筒部材に固定されることで現像スリーブと中実円筒部材は同軸で回転駆動されるようになる。更に、現像ローラと像担持体としての感光ドラムの対向部では、現像スリーブは感光ドラムに少ない当接圧で接触し、現像ローラと現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との当接においては、現像スリーブ内面と円筒部材とが当接することで、所定の当接圧を得るものである。その当節圧は、ネジ状部材を備えた間隔保持部材による付勢手段により得ている。そのため、長期にわたり所望の当節圧と安定した回転を維持し、組み立ておよび当節圧調整の容易な現像ローラを実現できる。この結果、長期にわたり濃度むら及びゴースト画像等の不具合画像の発生を防止し、所望の画像濃度を得ることができる。
【0066】
(実施形態2)
第2の実施形態においては、間隔保持部材と現像ローラの駆動用ギアを一体にし併用することを特徴とする。
【0067】
前記実施形態1においては、図1に示すように、現像剤担持体としての現像ローラは、可撓性薄膜現像スリーブと該現像スリーブの内周長より小さい外周長を有する円筒部材と、該円筒部材両端近傍に配され前記現像スリーブと円筒部材の間に所定の間隙を形成するネジ状部材を備えた間隙保持部材からなる。この現像ローラを駆動する力は、付図示のギアを現像ローラに嵌め込み、本体側の駆動ギアと噛合せることで得ている。
【0068】
本実施形態では、間隔保持部材と現像ローラの駆動用ギアを一体にし併用することで、部品点数を減らし、組み立てを更に簡略化するものである。また、駆動ギアと間隙保持部材を併用することで、感光ドラム1と現像ローラ8との当節部(図2中、C部)における摺擦により、可撓性薄膜現像スリーブ8aが捻れるのを防止し、可撓性薄膜現像スリーブが捻れることにより発生する画像ぶれ等の不具合を防止することが可能となる。
【0069】
図6は実施形態2における現像剤担持体の構成図である。図6(a)と図6(b)は、それぞれ可撓性薄膜現像スリーブ8aを左右に引っ張ることにより張力を与える前の状態と、張力を与えている状態を示す。図6において、現像ローラ8は可撓性薄膜現像スリーブ8a、円筒部材8b、間隙保持部と駆動ギアとを併用する部材8gからなる。
【0070】
なお、上記の実施形態2においても、実施形態1と同様の評価を行った。その結果、濃度むらについて実用上問題のない0.2以下であり、ゴースト、現像スジおよび画像ぶれの発生しない、画像情報に忠実な画像を得られることが確認できた。
【0071】
(実施形態3)
第3の実施形態においては、可撓性薄膜現像スリーブの円筒部材軸方向の幅W1と円筒部材の軸方向の幅W2とはW1>W2であり、可撓性薄膜現像スリーブの内径R1と円筒部材の外径R2とは、可撓性薄膜現像スリーブと円筒部材とを固定前はR1<R2の関係を満たし、可撓性薄膜現像スリーブと円筒部材とで構成された空間に大気圧以上の気体を入れ密封して、可撓性薄膜現像スリーブと円筒部材とを固定後はR1>R2の関係を満たすことを特徴とする。なお、可撓性薄膜現像スリーブと円筒部材との間に間隔を保持した状態で、円筒部材の略両端に設けた間隔保持部において、両部材は外装固定され、同軸駆動する。
【0072】
本実施形態について、図7を用いて説明する。図7は本実施形態における現像剤担持体の構成図である。本発明においては、現像剤担持体としての現像ローラ8は、可撓性薄膜現像スリーブ8aと両端に間隙保持部を設けた円筒部材8bからなる。
【0073】
可撓性薄膜現像スリーブ8aは、両端に間隙保持部を設けた円筒部材8bと固定されることで現像スリーブと中実円筒部材は同軸で回転駆動されるようになる。更に、現像ローラ8と像担持体としての感光ドラム1の対向部では、現像スリーブは感光ドラムに少ない当接圧で接触し、現像ローラと現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との当接においては、現像スリーブ内面と円筒部材とが当接することで、所定の当接圧を得るものである。
【0074】
次に、本実施形態における、現像ローラ8の構成について詳しく説明する。可撓性薄膜現像スリーブ8aの幅W1は円筒部材の幅W2より長く、かつ、円筒部材と固定する前は、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内径R1は円筒部材の外径R2より小さい(図7(a))。円筒部材8bには、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとの間に所定の間隙を保持する役割を為し、円筒部材8bと一体成形された間隙保持部8fを両端に設けている。
【0075】
なお、円筒部材の幅W2は、円筒部材の片側に備えた間隔保持部における円筒部材長手方向の内側端から、もう一端に備えた間隔保持部における円筒部材長手方向の内側端までの距離である。円筒部材8bの両端に設けた間隙保持部8fの外径は、円筒部材中央部の外径より大きい。
【0076】
以下に、本実施形態における現像ローラ8の組み立て方法の一例を示す。
【0077】
まず、円筒部材に可撓性薄膜現像スリーブ8aが嵌められる(図7(a))。その後に、円筒部材の間隙保持部8fと現像スリーブ8aが現像スリーブ8aの略両端部(図7中、J部)で接着されて固定される(図7(c))。本発明の形態を満たす現像ローラ8の組み立て方法の例を以下に示す。まず、円筒部材の一端の間隔保持部において円筒部材長手方向外側および外周面(図7中、J部)で円筒部材8bと現像スリーブ8aとを接着固定する。その後に、円筒部材8bと現像スリーブ8aとで成された空間(図7中、H部)に大気以上の気体を入れ、円筒部材の間隙保持部8fの外径以上に可撓性薄膜現像スリーブを膨らませ、両端に引っ張る(図7(b))。可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとの間に空間(図7中、D部)を保ち、所定の張力fを得た状態で、未固定側の円筒部材の間隔保持部における円筒部材長手方向外側および外周面(図7中、J部)において、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとを接着固定する。この張力fは可撓性薄膜現像スリーブ8aが自重で撓まない程度で充分である。固定後、可撓性薄膜現像スリーブの必要ない部分をカットする(図7(c))。
【0078】
また、円筒部材8bの間隔保持部以外の外周面と可撓性薄膜現像スリーブ8aの内周面の距離Dは円筒部材の間隙保持部長手方向内側8cと円筒部材8bの半径差となることが望ましい。該距離Dは、40μm乃至1mmで可能であり、より好ましくは70μm乃至500μmである。
【0079】
40μm以下であると間隙を正確に製造するのが困難であり、多数の量産まで考慮した場合には70μm程度であることが望ましい。また、該距離Dが1mm以上となると現像ブレード10や供給ローラ9が当接された場合に、両端部に過大な力がかかることになる。更に現像ブレード10や供給ローラ9が現像ローラ8に侵入する分の可撓性薄膜現像スリーブの延びが必要であるが、該距離Dが大きくなればなるほど現像スリーブとして大きな引張強さを必要としてくるため、材料選択の余地が狭くなることとなる。500μm以下であれば、樹脂フィルム等も使用可能である。
【0080】
前述のように可撓性薄膜現像スリーブ8aは円筒部材の間隙保持部8cで接着されており、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bは一体的に回転する。
【0081】
更に可撓性薄膜現像スリーブ8aの両端が間隙保持部8cによって保持されていることにより、可撓性薄膜現像スリーブ8aは円筒部材8bと非接触であり、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内側に可撓性薄膜現像スリーブ8a、間隙保持部8c及びそれを備えた円筒部材8bによって囲まれた略円筒状の空間が形成されている。
【0082】
上記のように可撓性薄膜現像スリーブ8aの内面に形成した空間と現像ローラ8に当接される部材の当接状態については、実施形態1で説明した状態と同様である。
【0083】
可撓性薄膜現像スリーブ8a上には、現像ブレード10を通過した時にトナー層が1〜3層ほど形成される。トナー層の高さとしては、トナー粒径が約7μmとした場合には、7〜20μm程度の層厚である。即ち、可撓性薄膜現像スリーブ8aと感光ドラム1との当接部では、両者の間に約7〜20μm程度のトナー層が挟まれることになる。ここで、感光ドラム1は剛体であり、現像スリーブ8aは可撓性のため、現像スリーブ8aが撓むことになる。
【0084】
しかし、前述のように可撓性薄膜現像スリーブ8aは両端で円筒部材の間隙保持部と固定するときに張力fをもって固定されているため、可撓性薄膜現像スリーブ8aの撓みに対して反力Fが働くことになる。この反力Fはトナー層厚分の可撓性薄膜現像スリーブの変位に対する反力しかないため、非常に小さいものである。その結果、感光ドラム1と現像ローラ8の当接部におけるトナーに係る当接圧を減らすことが可能となり、トナー劣化を防止することが可能となる。
【0085】
また、可撓性薄膜現像スリーブ8aは円筒部材8cの略両端部に設けたネジ状部材で張力を調整できるようにしてもよい。この場合の形態について図9に示す。略両端部にネジ状部材を設けた円筒部材8cを可撓性薄膜現像スリーブ8aに入れ(図9(a))、円筒部材8cの片端(図9中、G部)で接着固定後に、大気圧以上の気体を空間(図9中、L部)に入れ(図9(b))、未固定端を密封して接着固定してもよい(図9(c))。
【0086】
ここで、感光ドラム1、現像ローラ8、供給ローラ9の長手幅は、感光ドラム1が一番長く、次いで現像ローラ8、供給ローラ8の順で短くなる。また、現像ブレード10は図示していないが、現像ローラ8の幅より短く構成される。トナー担持領域は感光ドラム1及び現像ローラ8の幅よりも狭く、供給ローラ9の幅よりも同じか若しく広く構成される。これらについても、実施形態1と同様である。
【0087】
本実施形態においては、部品点数を少なくすることが可能であり、組み立て性およびコスト面において大変有利である。また、本構成では、バネなどの付勢部材を使用していないので、故障確率も少なく、長期にわたり、所望の当節圧を保った現像スリーブを提供できる。その結果、長期にわたり、感光ドラム1と現像ローラ8の当接部におけるトナーに係る当接圧を減らすことが可能となり、トナー劣化を防止することが可能となる。
【0088】
(実施形態4)
第4の実施形態においては、円筒部材の略両端に設けた間隔保持部において、その間隔保持部の円筒部材軸方向外側の可撓性薄膜現像スリーブとの固定部分に曲率があることを特徴とする。
【0089】
円筒部材の間隔保持部長手方向外側および外周面の可撓性薄膜現像スリーブとの接着部の形状が、例えば、間隔保持部8fと可撓性薄膜現像スリーブ8aとの接着部に鋭角な部分があった場合には、その部分を起点に可撓性薄膜現像スリーブが破損する虞がある。
【0090】
本発明においては、間隔保持部材と可撓性薄膜現像スリーブとの接着部に曲率を持たせ、鋭角な部分を無くすことで、可撓性薄膜現像スリーブの破損を防ぐものである。
【0091】
図8は本実施形態における現像剤担持体の構成図である。本実施形態における現像ローラ8の構成について図8を用いて説明する。
【0092】
可撓性薄膜現像スリーブ8aの幅W1は円筒部材の幅W2より長く、かつ、円筒部材と固定する前は、可撓性薄膜現像スリーブ8aの内径R1は円筒部材の外径R2より小さい(図8(a))。円筒部材8bには、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとの間に所定の間隙を保持する役割を為し円筒部材8bと一体成形された間隙保持部8fを両端に設けている。なお、円筒部材の幅W2は、円筒部材の片側に備えた間隔保持部における円筒部材長手方向の内側端から、もう一端に備えた間隔保持部における円筒部材長手方向の内側端までの距離である。
【0093】
ここで、本形態における円筒部材8bの両端に設けた間隙保持部8fは、円筒部材長手方向外側に曲率を有している。また、間隙保持部8fの外径は、円筒部材中央部の外径より大きい。
【0094】
以下に、本実施形態における現像ローラ8の組み立て方法の一例を示す。
【0095】
まず、円筒部材に可撓性薄膜現像スリーブ8aが嵌められる(図8(a))。その後に、円筒部材の間隙保持部8fと現像スリーブ8aが現像スリーブ8aの略両端部(図8中、K部)で接着されて固定される(図8(c))。本発明の形態を満たす現像ローラ8の組み立て方法の例を以下に示す。まず、円筒部材の一端の間隔保持部において円筒部材長手方向外側および外周面(図8中、K部)で円筒部材8bと現像スリーブ8aとを接着固定する。その後に、円筒部材8bと現像スリーブ8aとで成された空間(図7中、H部)に大気以上の気体を入れ、円筒部材の間隙保持部8fの外径以上に可撓性薄膜現像スリーブを膨らませ、両端に引っ張る(図8(b))。可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとの間に空間(図8中、D部)を保ち、所定の張力fを得た状態で、未固定側の円筒部材の間隔保持部における円筒部材長手方向外側および外周面(図8中、K部)において、可撓性薄膜現像スリーブ8aと円筒部材8bとを接着固定する。この張力fは可撓性薄膜現像スリーブ8aが自重で撓まない程度で充分である。固定後、可撓性薄膜現像スリーブの必要ない部分をカットする(図8(c))。
【0096】
本形態においては、接着部分で現像スリーブにかかる負荷が1ヶ所に集中することを防ぐことができるので破損等による故障が少なくなり、長期にわたり、所望の当節圧を保った現像スリーブを提供できる。
【0097】
なお、上記の実施形態3、4、5についても、実施形態1と同様の評価を行った。その結果、濃度むらについて実用上問題のない0.2以下であり、ゴーストおよび現像スジの発生しない、画像情報に忠実な画像を得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施形態1に係る現像剤担持体の構成図である。
【図2】実施形態1に係る画像形成装置の詳細説明図である。
【図3】実施形態1に係る画像形成装置の全体構成図である。
【図4】実施形態1に係る現像剤担持体の正面断面図および側面断面図である。
【図5】実施形態1に係る現像剤担持体と像担持体の当接状態を説明する図である。
【図6】実施形態2に係る現像剤担持体の正面断面図および側面断面図である。
【図7】実施形態3に係る現像剤担持体の構成図である。
【図8】実施形態4に係る現像剤担持体の構成図である。
【図9】図7とは異なる形態の実施形態3に係る現像剤担持体の構成図である。
【図10】従来の画像形成装置における帯電装置の構成図である。
【符号の説明】
【0099】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光部材
4 現像装置
5 転写ローラ
6 定着装置
7 クリーニング手段
8 現像ローラ
8a 可撓性薄膜円筒スリーブ
8b 円筒部材
8c 間隙保持部材
9 供給ローラ
10 現像ブレード
11 攪拌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、現像剤担持体上に担持する現像剤量を規制する現像剤規制部材を有する画像形成装置において、
現像剤担持体は、円筒部材と該円筒部材の外周長に対しわずかの余剰内周長を有する可撓性薄膜現像スリーブと、
像担持体と可撓性薄膜現像スリーブの接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と非接触であり、
現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と接触している部分を有しており、
円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、
該間隙保持部材が軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像剤担持体を構成する軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段が前記円筒部材の回転駆動部材と併用であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
静電潜像が形成される像担持体と、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する現像剤供給部材と、現像剤担持体上に担持する現像剤量を規制する現像剤規制部材を有する画像形成装置において、
像担持体と可撓性薄膜現像スリーブの接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と非接触であり、
現像剤規制部材若しくは現像剤供給部材との接触部近傍では可撓性薄膜現像スリーブ内面は円筒部材と接触している部分を有しており、
円筒部材の略両端部には円筒部材と可撓性薄膜現像スリーブとの間に間隔を保持するための間隔保持部を設けており、
該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材との間に間隔を保持した状態で該円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブは外装固定し同軸駆動しており、
該可撓性薄膜現像スリーブの円筒部材軸方向の幅W1と該円筒部材の軸方向の幅W2とはW1>W2であり、
該可撓性薄膜現像スリーブの内径R1と該円筒部材の外径R2とは、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定前はR1<R2の関係を満たし、
円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブとで構成された空間に大気圧以上の気体を入れ密封して、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定後はR1>R2の関係を満たすことを特徴とする画像形成装置または請求項1および2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記円筒部材の略両端部に設けた間隔保持部において、
該保持部の円筒部材軸方向外側の可撓性薄膜現像スリーブとの固定部分に曲率があることを特徴とする請求項1から3までに記載の画像形成装置。
【請求項5】
円筒部材と該円筒部材の外周長に対しわずかの余剰内周長を有する可撓性薄膜現像スリーブと、
円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、
円筒部材の略両端部にて可撓性薄膜現像スリーブを該円筒部材に外装固定して、可撓性薄膜現像スリーブを円筒部材と同軸駆動させる間隙保持部材とからなり、
該間隙保持部材が軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段を有することを特徴とする現像剤担持体。
【請求項6】
前記現像剤担持体を構成する軸方向の張力を与えるネジ状部材を設けた張力付与手段が前記円筒部材の回転駆動部材と併用であることを特徴とする請求項5記載の現像剤担持体。
【請求項7】
前記円筒部材の略両端部には円筒部材と可撓性薄膜現像スリーブとの間に間隔を保持するための間隔保持部を設けており、
該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材との間に間隔を保持した状態で該円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブは外装固定し同軸駆動しており、
該可撓性薄膜現像スリーブの円筒部材軸方向の幅W1と該円筒部材の軸方向の幅W2とはW1>W2であり、
該可撓性薄膜現像スリーブの内径R1と該円筒部材の外径R2とは、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定前はR1<R2の関係を満たし、
円筒部材と該可撓性薄膜現像スリーブとで構成された空間に大気圧以上の気体を入れ密封して、該可撓性薄膜現像スリーブと該円筒部材とを固定後はR1>R2の関係を満たすことを特徴とする現像剤担持体または請求項5および6に記載の現像剤担持体。
【請求項8】
前記円筒部材の略両端部における間隔保持部において、
該間隔保持部の円筒部材軸方向外側の可撓性薄膜現像スリーブとの固定部に曲率を有することを特徴とする請求項5から7までに記載の現像剤担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−46235(P2008−46235A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219890(P2006−219890)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】