説明

現像剤担持体及び現像方法

【課題】 現像プロセスにおいて、初期の現像剤担持体へ現像剤が供給され始めたときの状況に伴い発生するチャージアップ、現像剤担持体上への現像剤供給不足、摩擦帯電不良などを改良し、使用開始直後から、カブリ、スリーブゴースト、スジや濃度ムラ、ブロッチ、画像濃度不足を発生させず良好な画像の得られる現像剤担持体を提供する。
【解決手段】 現像剤担持体上に担持される現像剤の量は現像剤層厚規制部材により規制され、現像剤担持体は静電潜像が担持された静電潜像担持体に対向して配置され、静電潜像担持体との対向部の現像領域へ現像剤を担持搬送し、この現像剤により静電潜像担持体上の静電潜像を現像して可視化するための現像装置に用いられる現像剤担持体として、その表面に、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子が担持された現像剤担持体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット記録法などを利用した記録方法において、潜像担持体上に形成された潜像を現像剤により顕像化するための現像装置に用いられる現像剤担持体、及び該現像剤担持体を用いた現像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法として多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により静電潜像担持体(感光体)上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像を現像剤(トナー)で現像を行って可視像化し、必要に応じて紙などの転写材にトナー像を転写した後、熱・圧力等により転写材上にトナー画像を定着して顕画像を得るものである。
【0003】
電子写真法における乾式現像方式は、主として一成分現像方式と二成分現像方式に分けられる。二成分現像方法は、トナーとキャリアを混合して攪拌することにより、各々を摩擦帯電させ、この帯電したトナーを用いて静電潜像を可視像化する。この方法に属するものは、トナーを搬送するキャリアの種類により、鉄粉などの磁性を有する材料を用いる磁気ブラシ法、ビーズキャリアを用いるカスケード法、ファーを用いるファーブラシ法等と称されている。中でも一般的に用いられるのは磁気ブラシ法である。
【0004】
また、一成分現像方法に属するものには、トナー粒子を噴霧状態にして用いるパウダークラウド法、可撓性又は弾性を有する現像剤担持体上のトナー粒子を直接的に静電潜像面に接触させて現像する接触現像法、トナー粒子を静電潜像面に直接接触させず、静電潜像と現像剤担持体間の電界の作用によりトナー粒子を潜像面に向けて飛翔させるジャンピング現像法、磁性の導電性トナーを静電潜像面に接触させて現像するマグネドライ法等があるが、接触現像法、ジャンピング現像法が一般的に用いられている。
【0005】
近年、電子写真装置の軽量・小型化等を目的として複写装置部分を小さくする必要があるため、一成分系トナーを用いた現像装置が使用されることが多い。一成分現像方式は、二成分方式のようにガラスビーズや鉄粉等のキャリア粒子が不要なため、現像装置自体を小型化・軽量化できる。また、二成分現像方式は現像剤中のトナー濃度を一定に保つ必要があるため、トナー濃度を検知して必要量のトナーを補給する装置が必要である。よって、ここでも現像装置が大きく重くなる。一成分現像方式では、このような装置は必要とならないため、やはり小さく軽くでき、好ましい。
【0006】
これらの現像方法に適用されるトナーとしては、従来、天然又は合成樹脂中に着色剤を分散させた微粉体が使用されている。例えば、スチレン−アクリル樹脂やポリエステル樹脂等の結着樹脂中に各種顔料、染料、カーボンブラック、酸化鉄等の着色粒子を分散させたものを、平均粒径4〜15μm程度に微粒子化させたものがトナーとして用いられる。
【0007】
トナーは、現像される静電潜像の極性及び現像プロセスに応じて、所定の正又は負の電荷を有する必要がある。トナーに電荷を持たせる方法としては、トナーの結着樹脂の摩擦帯電性を利用する方法、トナーに添加する各種粒子に摩擦帯電性を持たせる方法が一般的であり、特に荷電制御剤と称される特定物質をトナー中に添加することが一般的である。また、荷電制御作用を有する樹脂(荷電制御性樹脂)をトナーの結着樹脂の一部として用いることも行われる。これらのトナーは、通常、現像装置に用いられる各種部材と接触することにより摩擦電荷を生ずる。特に一成分現像剤においては、主として現像剤担持体及び現像剤規制ブレードとの間隙を通過する際に、現像剤担持体や現像剤規制ブレードの作
用により摩擦電荷を生ずる。従って、現像剤担持体及び現像剤規制ブレードの材質が現像剤の摩擦帯電性に大きく影響を与え得る。特に、トナー中に磁性体を有する一成分磁性現像剤の場合、磁力の作用によりスリーブ上を移動するが、この間トナーと現像スリーブの接触機会を多く持つことから現像剤担持体側の材質の影響がより大きくなる。
【0008】
一般的に現像プロセスにおいて、トナーに適正な電荷を持たせようとする場合、第一にトナーが十分摩擦帯電可能な材料から構成されているか、つまり、結着樹脂、添加剤、荷電制御剤として適切な材料が選択されているかどうかが挙げられる。しかしながら、トナー成分の大半を占める結着樹脂は、現像のみでなく定着工程において重要な役割を担わせられるため、摩擦帯電ばかりを重視した材料を選択しうるわけではない。近年、省エネルギーの観点から、より低温又は低消費電力で定着させる技術が要求されている。トナーにおいては、定着性を重視した結着樹脂は、摩擦帯電性に劣る場合が多い。例えば、低エネルギーでトナーを定着させるための材料選択として、結着樹脂のTg(ガラス転移点)や結着樹脂の分子量分布において低分子量成分を増やすという方法があるが、このような結着樹脂は通常、摩擦帯電性に劣ることが多い。また、トナーには定着工程における耐オフセット性の向上のため、また樹脂の可塑効果を高めて定着性を向上させる等の目的で所謂ワックス類を添加する場合が多いが、これらのワックス類に関しても現像性に関しては悪い方向の特性を与えやすい。
【0009】
トナーに摩擦帯電電荷を持たせるための手段として、第二に摩擦帯電付与部材に適切な材料を選択して用いることが挙げられる。即ち、トナー材料と現像剤担持体表層材料や現像剤規制部材材質との適切な組み合わせにより、トナーの摩擦帯電電荷のバランスをとる方法も数多く提案されている。
【0010】
規制ブレードとしては、規制ブレードと現像スリーブ間に狭い間隙を設けてトナーの搬送量を規制するタイプや、規制ブレードが現像スリーブに弾性的に接触することにより規制を行うタイプ等があり、一般的には、金属、ゴムなどの材料が用いられる。現像スリーブに弾性的に接触させる場合にはウレタンゴム、シリコーンゴム等のゴムやリン青銅やステンレスの板材が用いられる。また、トナーとの摩擦帯電性を考慮して、例えばトナーに負帯電性を与える際には正帯電性のナイロン系のエラストマーをトナーと接触する表層に用いてトナーに電荷を持たせやすくするなどの方法がとられる。これらの摩擦帯電材料は、直接ブレード状に加工されたり、板材にチップとして貼り付けたり、樹脂コートするなどして用いられる。
【0011】
現像剤担持体としては、その現像方法により、表面が柔軟な材料を用いる場合と剛性を有する材料を適宜用いる。現像剤担持体を潜像担持体に直接接触させ現像を行う、いわゆる接触現像方法においては、一般的にはステンレス等の金属の主軸に、ウレタンゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム等の弾性体を円筒上に成形したものや、アルミニウムやステンレスの円筒部材の表面にエラストマーの層を形成したものが用いられる。このような場合、いわゆるゴム中には、可塑剤、加硫剤、離型剤、低分子量成分等の不純物が含まれており、これらの不純物が潜像担持体や現像剤規制部材と接触した際にブリードして、これらの部材及び画像に悪影響を及ぼすことから、ゴム層の表面に、バリアー層、保護層などの層を設け上記悪影響を防止する。更には、最表面に、離型性の良い材料やトナーに摩擦電荷を与えやすい樹脂で表面層を形成することも知られている。
【0012】
非接触型の現像に用いられる現像剤担持体を構成する現像スリーブは、従来、例えば金属、その合金又はその化合物を円柱又は円筒状に形成し、その表面を電解、メッキ、ブラスト、ヤスリがけ等で所定の表面粗さになるように処理したものが用いられる。一成分磁性現像剤を用いる場合には、円筒内に所定の磁力及び磁極構成を有する磁石が配置される。
【0013】
しかし、上記のような表面を有する現像スリーブを用いた場合、規制部材によって現像剤担持体表面に形成される現像剤層中の現像剤担持体表面近傍に存在する現像剤は非常に高い電荷を有することとなり、現像剤担持体表面に強く拘束されてしまい、これにより後からくるトナーと担持体との摩擦機会が持てなくなるため、現像剤に好適な帯電が与えられなくなる、いわゆるチャージアップ現象を引き起こす。この様な状況では、現像剤担持体上の現像剤が十分な摩擦帯電電荷を保持できない、また現像剤を十分に担持することができないことにより、画像濃度が低くなる、画像ムラが発生する、文字飛び散りの多い画像になる、斑点状やさざ波状のブロッチが発生する、スリーブゴーストが発生する、などの現象が起こり得ることになる。
【0014】
このような過剰な電荷を有する現像剤の発生や、現像剤の強固な拘束を防止するための手段として、現像剤と摩擦帯電可能な樹脂中にカーボンブラック、グラファイトの如き導電性物質や固体潤滑剤を分散させた樹脂被覆層を、上記現像剤担持体基体上に形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、モリブデン酸塩を含む溶液にスリーブを浸漬することで、モリブデン系被膜を形成し、現像剤の摩擦帯電を安定化させスリーブゴーストを防止する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。更には、現像スリーブ上に球状粒子によるサンドブラスト処理を施した後にその粗面上に無電解ニッケル−リンメッキによる被覆層を形成させ、現像剤の摩擦帯電性を改良する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0015】
これらの方法は、現像剤の特性を把握した上で、適宜被覆層を選択することにより良好な画像性能を発揮し得るものである。しかしながら、これらの方法においても画出し初期においては欠点を有する。例えば、現像剤担持体基体上に樹脂被覆層を形成する方法によれば、結晶性グラファイトの作用により現像剤は良く摩擦帯電され、且つ樹脂被覆層が導電性であるためにチャージアップ現象も回避可能であるが、樹脂被覆層は初期において結晶性グラファイトが樹脂で薄く被覆されている部分がその使用後に比較して多く、このため耐久使用を進めていくうちに表層が削れていくことにより画像性が良好になるものの、初期においては不具合を発生する場合がある。またモリブデン系被膜を用いる方法では、現像剤の過剰帯電は押さえられるものの、初期においては現像剤の摩擦帯電電荷(トリボ)の立ち上がりが遅く、濃度薄やゴーストを発生させる場合がある。一方、上記ニッケル−リンメッキ被覆層を用いる方法では、現像剤の摩擦帯電は良好で耐久性もあり耐久使用においては良好であるが、逆に初期においてはチャージアップを増長させることがある。
【0016】
また、特殊なトナー材料又は特殊な円形度を有する現像剤に対し、現像剤担持体に特定の結着樹脂と特定の第四級アンモニウム塩を有する樹脂被覆層を用いることで、摩擦帯電量を適正化し、摩擦帯電量過多によって発生する、ブロッチ画像、カブリ、スリーブゴースト、画像濃度薄、などを改善する方法及び現像剤担持体が開示されている(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)。この方法を用いた場合においても、耐久使用中においては非常に良好な画像性能を発揮できるが、近年の高画質化への流れの中で、現像剤の摩擦帯電電荷の立ち上がりをより速くするような改良が行われつつあるために、例えば、より球形化度を向上させた現像剤や高帯電性の樹脂(荷電制御性樹脂)を用いたような現像剤を用いた場合には、初期(画出し初期に現像剤が現像剤担持体上に供給されて始めてから現像装置内の現像剤循環、現像剤供給が安定するまで)において不具合を発生することもある。更に現像装置において現像剤が現像剤担持体上に供給され始める初期においては、例えば、現像剤量が少ないため現像剤担持体上での循環が速く現像剤担持体との接触機会も増える、現像剤担持体長手方向で現像剤の供給量(現像剤担持体裏に存在する現像剤量)が異なることにより現像剤の摩擦帯電状況が異なる、現像剤担持体端部(現像容器端部)の循環が悪く現像剤が滞りやすくなる、などの現象が重なるため、前記現象を増長させやすいこととなる。
【0017】
また、弾性規制ブレードに現像剤に使用される材料と同一成分の樹脂を塗布し弾性規制ブレードと現像剤担持体間の摩擦を現象させ、ブレードめくれやブレード剥がれを解消する旨の技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。同様に、トナーと同極に帯電する粉末潤滑剤を弾性規制ブレード(ドクターブレード)に塗布し、弾性規制ブレードと現像剤担持体間の摩擦を現象させ、ブレードめくれを解消する旨の技術が開示される(例えば、特許文献7参照)。更には、これらの改良技術が開示されている(例えば、特許文献8及び特許文献9参照)。
【0018】
しかしながら、これらの従来技術で用いられている塗布粒子は摩擦帯電性のある粒子であり、非導電性の粒子である。このような塗布粒子を用いた場合、現像剤との組み合わせにおいて、これら塗布された粒子が現像剤担持体表面(又は規制ブレード表面)に存在することにより、現像剤担持体と塗布粒子との間、又は塗布粒子と現像剤担持体表面に供給された現像剤との間において摩擦帯電現象が発生し、直接又は間接的に現像剤のトリボを不必要に高めたり低めたりしてしまい、スリーブゴーストや画像濃度低下を発生することがある。また、場合によって不必要なほど摩擦帯電された結果、粒子がチャージアップを起こし、粒子同士や現像剤を巻き込んだ形の凝集物となり、その結果、スジやムラ、ブロッチの原因となることがある。また過剰に摩擦帯電した塗布粒子が現像剤担持体に強固に付着し、現像剤担持体の被覆層が本来持っている性能を発揮できないことがある。特に、弾性規制ブレードを有する現像装置のように、現像剤が存在していない時に規制ブレードが現像剤担持体に接触しているような構成においては、前述のようにこれらの粒子を現像剤担持体表面に存在させることにより、ブレードめくれやブレードの現像剤担持体への付着を防止していることから、規制ブレード又は現像剤担持体に塗布する粒子の選択が重要となっている。
【0019】
また、表面が黒鉛化された球状の粒子を樹脂被覆層に添加して用いた現像剤担持体や、特定の黒鉛化度を有する黒鉛化粒子を樹脂被覆層中に添加して用いた現像剤担持体も提案されている(例えば、特許文献10及び特許文献11参照)。
【0020】
以上説明したように、用いる現像剤に合わせて現像剤担持体の被覆層を適正化し、摩擦帯電量を適正化且つ安定化し、良好な画像を得ようとする技術に関しては種々提案されているものの、それは画出し耐久寿命全般に関わる改良がほとんどである。従って、現像剤が現像剤担持体に供給され始めた画出し初期に発生するチャージアップや現像剤の供給不足、摩擦帯電量不足などによって発生する画像の不具合を改良する手段に関しては、未だ十分に行われているとは言い難い。また、弾性規制ブレードのめくれなどを改善するための塗布剤に関しても、潤滑性と現像性を十分に両立できるような塗布剤に関しても不十分なものが多い。
【特許文献1】特開平01−277265号公報
【特許文献2】特開平07−281517号公報
【特許文献3】特開平11−194618号公報
【特許文献4】特開2000−242040公報
【特許文献5】特開2002−311636公報
【特許文献6】特開平02−054288号公報
【特許文献7】特開平02−298971号公報
【特許文献8】特開平08−211728号公報
【特許文献9】特開2002−278262公報
【特許文献10】特開平08−240981号公報
【特許文献11】特開2003−323042公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、初期画像特性を改良すること、及び弾性規制ブレードを用いる系においては現像剤担持体と弾性規制ブレードの間の潤滑性をも両立させることを目的としてなされたものである。従って本発明は、現像プロセスにおいて、初期の現像剤担持体へ現像剤が供給され始めたときの状況に伴い発生するチャージアップ、現像剤担持体上への現像剤供給不足、摩擦帯電不良などを改良し、使用開始直後から、カブリ、スリーブゴースト、スジや濃度ムラ、ブロッチ、画像濃度不足を発生させず良好な画像の得られる現像剤担持体及び現像方法を提供することを課題とする。
【0022】
また、本発明は、繰り返しの出力又は耐久的な使用においても安定的に良好な画像の得られる現像剤担持体及び現像方法を提供することを課題とする。また、本発明は、異なる環境下において、初期においても繰り返し使用後においても、カブリ、スリーブゴースト、スジや濃度ムラ、ブロッチ、画像濃度不足などは発生しない現像剤担持体及び画像形成方法を提供することを課題とする。
【0023】
また、本発明は、塗布粒子の過剰帯電による粒子凝集や現像剤担持体への付着をなくし、耐久的な使用においては現像剤担持体が本来有する性能を十分に発揮可能である現像剤担持体及び現像方法を提供することを課題とする。
【0024】
また、本発明は、弾性ブレードのめくれや剥がれなどの発生の無い、現像方法を提供することを課題とする。更に、本発明は、現像装置などに大掛かりな改造を求めずに、初期から良好な画像の得られる現像方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を現像剤担持体表面に担持させることにより、特に画出し初期に発生しやすい現像剤のチャージアップ、現像剤担持体上への現像剤供給不足、摩擦帯電不良などに起因する画像不良の発生を防止し、初期から良好な画像を形成することを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)現像剤を担持し、静電潜像を担持する静電潜像担持体に該現像剤を搬送するための現像剤担持体であって、
現像剤担持体上に担持される現像剤の量は現像剤層厚規制部材により規制され、
前記現像剤担持体は静電潜像が担持された静電潜像担持体に対向して配置され、静電潜像担持体との対向部の現像領域へ現像剤を担持搬送し、この現像剤により静電潜像担持体上の静電潜像を現像して可視化するための現像装置に用いられ、
前記現像剤担持体はその表面に、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を担持されている特徴とする現像剤担持体。
(2)前記現像剤担持体は、少なくとも基体と、該基体の表面に形成された被覆層とを有し、更にこの被覆層表面に、前記少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を担持することを特徴とする(1)の現像剤担持体。
(3)前記被覆層が導電性を有することを特徴とする(2)の現像剤担持体。
(4)前記被覆層がメッキ層又は導電性粉末を含有する樹脂層であることを特徴とする(2)又は(3)の現像剤担持体。
(5)静電潜像を担持する静電潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に現像剤を担持し、現像剤層厚規制部材によって現像剤担持体上の現像剤の量を規制し、現像剤担持体と静電潜像担持体の対向部の現像領域へ現像剤担持体から現像剤を担持搬送し、この現像剤により静電潜像担持体上の静電潜像を現像して可視化する現像方法であって、
現像剤担持体が現像剤を担持するのに先立ち、現像剤担持体上に現像剤が存在しない状態で、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を現像剤担持体表面に担持させ、その後、現
像剤担持体上に現像剤を担持させて静電潜像担持体上の静電潜像を現像することを特徴とする現像方法。
(6)前記現像剤担持体は、少なくとも基体と、該基体の表面に形成された被覆層とを有し、現像剤担持体が現像剤を担持するのに先立ち、現像剤担持体上に現像剤が存在しない状態で、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子が前記被覆層表面に担持されることを特徴とする(5)の現像方法。
(7)前記被覆層が導電性を有することを特徴とする(6)の現像方法。
(8)前記被覆層がメッキ層又は導電性粉末を含有する樹脂層であることを特徴とする(6)又は(7)の現像方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、現像剤が現像剤担持体上に塗布され始める画出し初期における現像剤の過剰帯電を防ぐことができ且つ現像剤に適正な摩擦帯電を行うことができる。その結果、画出し初期におけるカブリ、スジや濃度ムラ、ブロッチ、画像濃度薄などの画像不良を防ぐことが可能となり、初期から良好な画像を形成することができる。また、少なくとも表面が黒鉛化された粒子は潤滑性が良好であるために、弾性規制ブレードを用いた現像装置においてもブレードめくれやブレードキズ、スリーブキズなどの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
上述のように、本発明の主たる目的は、現像剤が現像剤担持体上に担持され始める、画出し初期において発生する画像上の不具合を改良することにある。前述のように、現像剤が現像剤担持体上に担持され始めた初期においては、現像剤担持体上の現像剤の量が少なく摩擦帯電機会が多い、現像剤担持体上の現像剤の量が不均一なため現像剤が不均一に摩擦帯電されやすい、撹拌が不均一であるため現像剤が不均一に摩擦帯電されやすい、などの理由によりチャージアップ現象が発生しやすい。また、現像剤の小粒径化、球形化、結着樹脂の摩擦帯電性の向上、樹脂制御剤の添加、などの現像剤要因によってもチャージアップ現象が促進されやすい。逆に、耐久的な使用によるチャージアップを防ぐために現像剤担持体表面に被覆層を設けた場合には、画出し初期における摩擦帯電不足が発生する場合がある。更には、弾性規制ブレードを用いる系において不可欠な潤滑剤の摩擦帯電によって引き起こされる弊害も発生することがある。
【0029】
即ち、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子が、その表面に担持された現像剤担持体を用いることで、上述したような現像剤の摩擦帯電の不均一化及びチャージアップ、又は現像剤担持体に被覆層を設けた場合の摩擦帯電不足などの不具合を改善し、良好な画像が得られることを発見し、本発明に至った。更に、上記微粒子を現像剤担持体表面に担持させることと、長期の画出しにわたり良好な画像を提供することのできるように現像剤担持体表面に被覆層を設けることの組み合わせの相乗効果により、初期のみならず耐久的な使用を通じて良好な画像が得られるということを発見し、本発明に至ったのである。
【0030】
次に、本発明の構成について、更に詳しく説明する。
本発明の現像剤担持体はその表面に、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子(以下、「黒鉛化粒子」とも言う)を担持していることを特徴とする。本発明において、表面が黒鉛化された微粒子を「担持する」とは、黒鉛化粒子が、現像剤担持体そのもの又は現像剤担持体の表面に形成された被覆層中に存在したり現像剤担持体表面に(現像工程によっても全く脱離しない程度に)強固に固着したりしていることではなく、現像剤担持体上に静電的に付着している、粉体の状態で塗布されている、被覆層からは遊離している、などの状態を意味する。また、現像剤担持体表面の窪みに保持されたり、凸部に引っかかって担持されたりする状態も含むものとする。
【0031】
特開平08−240981号公報には、表面が黒鉛化された球状の粒子を樹脂被覆層中に用いることで、被覆層表面に好適な凹凸を形成し、更にこの粒子が現像剤の現像性に好ましいものであることが開示されている。また、特開2003−323042公報には、特定の結晶化度を有する黒鉛化粒子を樹脂被覆層中に用いることで、現像剤に対して好適な現像特性を付与可能であることが開示されている。これらの先行技術において、黒鉛化粒子は樹脂被覆層中に結着されており、またこれら樹脂被覆層中の黒鉛化粒子は、初期においては現像剤担持体の樹脂被覆層の表面に全て露出するわけではなく、大部分は結着樹脂による薄皮をかぶった状態で存在する。この薄皮は、耐久的な使用に伴い現像剤との摩擦により剥離し、その結果、樹脂被覆層表面の大部分において上記黒鉛化粒子が露出し、現像剤に対して非常に良好な摩擦帯電特性を発揮するものであるが、初期においてはこの薄皮が存在することにより黒鉛化粒子の効果を十分に発揮し得ない場合が起こる。従って、本発明は、黒鉛化粒子が現像剤担持体の表面に担持される点において、樹脂被覆層中に黒鉛化粒子が存在する場合とはその構成及び効果は異なり、画出し初期から良好な画像特性を発揮することが可能である。また、黒鉛化粒子が樹脂被覆層中に存在している場合には、弾性規制ブレードと現像剤担持体表面の間に潤滑作用を持たせることには不十分であり、本発明の効果とはこの点においても異なる。
【0032】
図1及び図2に、現像剤担持体上に黒鉛化粒子が存在する様子を模式的に示す。図1には、現像剤担持体の基体13上に樹脂被覆層12が形成されており、この樹脂被覆層12の表面に黒鉛化粒子11が担持された例を示す。別の例として、図2には、サンドブラスト処理された現像剤担持体の基体15上にメッキ層14が形成されており、このメッキ層34表面に黒鉛化粒子11が担持された様子を示す。これら図1及び図2は、黒鉛化粒子が現像剤担持体表面に担持される形態の一例をそれぞれ示すものであり、これら各図で表される状態に限定されるものではない。
【0033】
即ち、黒鉛化粒子が単層からなる現像剤担持体上に担持されていても良く、図1及び図2のように複数層からなる現像剤担持体上に担持されていても良い。また、現像剤担持体表面全てが黒鉛化粒子に被覆される必要はなく、部分的に現像剤担持体表面が露出されるような状況であっても良い。黒鉛化粒子は現像剤担持体表面に対して10%程度の被覆率で担持されていれば、黒鉛化粒子を現像剤の摩擦帯電性に好適に作用させることができるが、十分な効果を得たい場合には20%以上の被覆率があった方が良い。ただし、黒鉛化粒子と現像剤担持体の被覆層の作用を同時に働かせることによりその相乗効果が得られる場合があるので、基本的には被覆率にはこだわらない。
【0034】
本発明の現像剤担持体に用いることのできる黒鉛化粒子は特に限定されるものではないが、上記特開平08−240981号公報又は特開2003−323042公報に記載の黒鉛化粒子を好適に用いることが可能である。
【0035】
特開平08−240981号公報に記載される、表面が黒鉛化された粒子として、例えば次のような方法で得られる炭素粒子がある。フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリルなどからなる球状樹脂粒子表面に、メカノケミカル法によってバルクメソフェーズピッチを被覆し、被覆された粒子を酸化性雰囲気下で熱処理した後に不活性雰囲気下又は真空下で焼成して炭素化及び/又は黒鉛化し、導電性球状炭素粒子とする。この方法で得る球状炭素粒子は、黒鉛化すると得られる球状炭素粒子の被覆部の結晶化が進んだものとなるので導電性、潤滑性がより向上し、好ましい。上記した方法で得られる導電性の球状炭素粒子は、いずれの方法でも、焼成条件を変化させることによって、得られる球状炭素粒子の導電性を制御することが可能であり、本発明において好ましく使用される。
【0036】
また、特開2003−323042公報に開示される、次のような、黒鉛化度P(002)が0.20≦P(002)≦0.95を満足する黒鉛化粒子も好ましく用いることができる。黒鉛化度P(002)とは、FranklinのP値といわれるもので、黒鉛のX線回折図から得られる格子間隔d(002)を測定することにより、下記関係式より求められる。
d(002) = 3.440−0.086(1−P
【0037】
このP値は、炭素の六方網目平面積み重なりのうち、無秩序な部分の割合を示すもので、P値が小さいほど黒鉛化度が大きいことを示す。この黒鉛化粒子は、特開平02−105181号公報や特開平03−036570号公報等において現像剤担持体表面の被覆層中に用いられている人造黒鉛、又は天然黒鉛からなる結晶性のグラファイトとは、黒鉛化粒子の原材料及び製造工程が異なる。そのため黒鉛化粒子は従来用いられていた結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低いものの、従来の結晶性グラファイトと同様に高い導電性や潤滑性を有している。更に、黒鉛化粒子はその形状が従来の結晶性グラファイトが燐片状又は針状の形状であることとは異なり、概略球状でしかも黒鉛化粒子自身の硬度が比較的高いことが特徴である。
【0038】
本発明で使用する黒鉛化粒子の黒鉛化度P(002)は、0.20≦P(002)≦0.95を満足することが好ましく、0.25≦P(002)≦0.75を満足することがより好ましい。P(002)は0.95を超えない方が、粒子の現像剤に対する摩擦帯電付与性が良好であり、現像剤の摩擦帯電性が安定することにより、チャージアップの発生を抑制し、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度等の不具合が起こりにくい。一方、P(002)が0.20以上である方が、黒鉛化粒子が機械的に脆くなることがないため、粒子の破壊や再凝集を発生し難く、これまた現像剤への摩擦帯電付与性を安定化させる効果を得やすい。
【0039】
上記黒鉛化粒子を得る方法としては、以下に示すような方法が好ましいが、必ずしもこれらの方法に限定されるものではない。本発明に使用される、特に好ましい黒鉛化粒子を得る方法としては、原材料としてメソカーボンマイクロビーズやバルクメソフェーズピッチ等の、光学的異方性を示し、しかも単一の相からなる炭素粒子を用いて黒鉛化することが、得られる黒鉛化粒子の黒鉛化度を高め且つ球状の形状を保持するのに好ましい。
【0040】
上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛化処理で更に発達し、高度の黒鉛化度を有する黒鉛化粒子が得られる。バルクメソフェーズピッチを用いる場合は、加熱下で軟化溶融するものを用いることが球状で黒鉛化度の高い黒鉛化粒子を得るために好ましい。上記バルクメソフェーズピッチとして代表的なものは、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加及び重質化処理を行うことによって得られるメソフェーズピッチである。また、上記重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼン又はトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得られるメソフェーズピッチも用いられる。このバルクメソフェーズピッチはキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。95質量%以上のものの方が、粒子内部が液相炭化しやすく、固相炭化しにくいために粒子が破砕状のままとなりにくく、球状のものを得られやすい。
【0041】
またメソフェーズピッチを用いて黒鉛化する方法としては、まず、前記のバルクメソフェーズピッチを2〜25μmに微粉砕して、これを空気中で約200〜350℃で熱処理することにより、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチは表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融や融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチは酸素含有量が5〜15質量%であることが好ましい。酸素含有量は5質量%以上であると、黒鉛化熱処理時のバルクメソフェーズピッチ粒
子同士の融着が起こり難いため好ましい。一方、酸素含有量が15質量%以下であると、バルクメソフェーズピッチ粒子内部まで酸化されていることが少ないため、形状が破砕状のまま黒鉛化しにくく、球状のものが得られやすい。
【0042】
次に上記酸化処理したバルクメソフェーズピッチを窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下にて、約800〜1,200℃で一次焼成することにより炭化し、続いて約2,000〜3,500℃で二次焼成することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。
【0043】
また、黒鉛化粒子を得るためのもう一つの好ましい原材料であるメソカーボンマイクロビーズを得る方法として代表的なものを以下に示す。例えば、石炭系重質油又は石油系重質油を300〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズを生成し、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離等の処理に供することにより、メソカーボンマイクロビーズを分離した後、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、更に乾燥することによって得られる。このようなメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化する方法としては、まず、乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズを破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズは、不活性雰囲気下において200〜1,500℃の温度で一次加熱処理され炭化される。
【0044】
一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に分散させることが、黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において約2,000〜3,500℃で二次加熱処理することにより所望の黒鉛化粒子が得られる。また、前記のいずれの原材料から得られた黒鉛化粒子も、製法に関わらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、現像剤を現像剤担持体上に均一に担持させるためには好ましい。黒鉛化粒子の粒径が不揃いで、粗大粒子がある場合にはその部分に現像剤が担持されにくくなり画像不良が発生する場合がある。
【0045】
また、いずれの原材料を用いた黒鉛化粒子の生成方法においても、黒鉛化粒子の焼成温度は2,000〜3,500℃が好ましく、2,300〜3,200℃がより好ましい。焼成温度を2,000℃以上とすると黒鉛化粒子の黒鉛化度を十分なものとしやすく、このような黒鉛化粒子は現像剤に対する摩擦帯電付与性が良好である。現像剤の摩擦帯電性が安定することにより、チャージアップなどを発生しがたく、スリーブゴースト、カブリ、画像濃度低下等の画質不良が発生しにくい。また、焼成温度を3,500℃以下とすると、黒鉛化粒子の黒鉛化度が高くなりすぎることがなく、そのため黒鉛化粒子の硬度を適度なものとすることができ、黒鉛化粒子の破壊や再凝集を起こし難く、現像剤に対して均一に摩擦帯電付与することが可能となる。
【0046】
本発明において、現像剤担持体表面に担持される黒鉛化粒子の粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは体積平均粒径が0.2〜30μmであり、より好ましくは0.3〜15μmである。黒鉛化粒子の体積平均粒径が0.2μmより小さいと現像剤担持体上への塗布がしづらくなるのと同時に、現像剤担持体上で現像剤と混合されてしまうことにより、却って現像剤の摩擦帯電を阻害してしまう場合がある。また、体積平均粒径が30μmよりも大きいと、現像剤担持体上に担持させにくいことと、黒鉛化粒子が現像剤担持体上に形成された凹凸よりも突出してしまうため、現像剤担持体上の現像剤量の規制が阻害されることにより、現像剤担持体上の現像剤の摩擦帯電量が不安定になりやすい。目安としては、現像剤担持体のJIS B 0601(1982表記)における十点平均粗さ(Rz)よりも小さい体積平均粒径の黒鉛化粒子を用いることが、黒鉛化粒子の現像剤担持体上への担持しやすさと現像剤への摩擦帯電付与性の観点から好ましい。
【0047】
黒鉛化粒子を現像剤担持体表面に担持させる方法は特に限定されないが、例えば、溶媒中に黒鉛化粒子を分散し、現像スリーブなどの現像剤担持体にスプレー、浸漬などにより塗布する方法、フェルトなどの部材に保持した黒鉛化粒子を現像剤担持体にこすりつける方法、スポンジ状の部材(現像装置の供給ローラーのような部材)に黒鉛化粒子を保持させ、現像剤担持体に圧接させて塗布する方法などを用いることができる。更に、弾性規制ブレードを有する現像装置に用いる場合には、上述した方法以外に、弾性規制ブレードの現像剤担持体との接触面側に黒鉛化粒子を塗布し、現像装置を組み上げた後に現像スリーブを回転させて現像剤担持体表面に黒鉛化粒子を塗布する方法を用いることもできる。
【0048】
本発明の現像剤担持体はその表面に、上記のような少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を担持することにより、現像剤が現像剤担持体上に塗布され始める初期において、黒鉛が導電性であり且つ適度な摩擦帯電付与能力を有するため、現像剤の過剰帯電を防ぐことができ且つ現像剤に適正な摩擦帯電を行うことができる。その結果、従来画出し初期に生じやすかったカブリ、スジや濃度ムラ、ブロッチ、画像濃度薄などの画像不良を防ぐことができる。また、上記本発明に用いる黒鉛化粒子は導電性を有するため、樹脂粒子と異なり、現像剤担持体への粒子の強固な付着が発生しないため、耐久的な使用により現像剤担持体上から離れ、離れた後は現像剤担持体の被覆層が本来有している摩擦帯電性能を十分に発揮できるようになる。また黒鉛化粒子自身は樹脂粒子と異なり導電性であり、粒子がチャージアップして粒子自身の凝集又は現像剤を巻き込んでの凝集を発生しないため、現像剤担持体上に凝集物が存在することによるスジやブロッチ、反転カブリなどの発生を防止することができる、などの効果がある。更に、黒鉛化粒子は潤滑性が良好であるために、弾性規制ブレードを用いた系であっても、ブレードめくれやブレードキズ、スリーブキズなどを発生することがない、という効果もある。
【0049】
本発明の現像剤担持体は、基体及び必要に応じて該基体上に設けられる被覆層とからなる。現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材等があるが、静電潜像担持体に非接触の現像方法においては、金属のような剛体の円筒管又は中実棒が好ましく用いられる。特に、磁性一成分現像剤を用いる場合、内部に磁石を配することから円筒管が用いられる。このような基体としてはアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属又は合金を円筒状又は円柱状に成型し、研磨、研削等を施したものが好適に用いられる。これらの基体は画像の均一性を良くするために、高精度に成型又は加工されて用いられる。例えば、長手方向(円筒又は円柱の軸方向)の真直度は好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。現像剤担持体と静電潜像担持体の間隙の振れ、例えば、垂直面に対し均一なスペーサーを介して突き当て、現像剤担持体を回転させた場合の垂直面との間隙の振れも好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。上記現像剤担持体の基体としては、材料コストや加工のしやすさからアルミニウムが好ましく用いられる。
【0050】
また、弾性層を有する基体としては、芯材と、ウレタン、EPDM、シリコーン等のゴムやエラストマーを含む層構成を有する円筒部材が、特に静電潜像担持体に現像剤担持体を直接接触させる現像方法の場合に好ましく用いられる。
【0051】
現像剤担持体上には、必要に応じて被覆層が設けられる。被覆層は、樹脂に必要に応じて各種材料を分散させた樹脂被覆層でもよく、メッキ層などの金属を含有する被覆層でも良い。通常、ステンレス合金、アルミニウム合金からなる現像剤担持体(現像スリーブ)は、その表面にサンドブラスト処理などを施して、現像剤の搬送力を調整して用いられるが、前述したようにこのような現像剤担持体の表面は、現像剤との強固な鏡映力が生じやすく、チャージアップ現象が発生し、現像時の不具合となりやすい。また、アルミニウム合金は加工のしやすさから好ましく用いられるが、長期の画出しにおいて現像剤との接触により表面が磨耗し、表面粗さの低下が生じ、その結果やはり現像剤の搬送力不足に伴う
画像濃度低下やスジ、濃度ムラなどを起こすことになりやすい。従って、現像スリーブの表面には、現像剤特性に合わせた、表面粗さの変化し難い耐摩耗性と、好適な摩擦帯電付与性を有する被覆層を設けることが好ましい。現像剤担持体表面に現像剤の摩擦帯電付与性を制御可能な被覆層が存在することにより、現像剤担持体表面に存在した黒鉛化微粒子が初期において現像剤のチャージアップを抑制して現像剤の帯電量を適正なものとし、耐久的な使用により上記黒鉛化粒子が現像剤担持体上から離れた後においても、被覆層が現像剤の摩擦帯電付与性を制御することができるため、耐久使用を通じて現像剤の摩擦帯電電荷を適正化し、良好な画像を得ることができる。
【0052】
樹脂被覆層について説明する。図3は樹脂被覆層を有する現像剤担持体の模式的断面図である。図3において、現像剤担持体は基体(現像スリーブ)1上に樹脂被覆層2を積層して有している。樹脂被覆層2は表面粗さ(凹凸)を形成したい場合に添加される粗し粒子3、及び樹脂層に潤滑性や導電性を付与するために添加される、グラファイトなどの添加剤6を含んでいる。樹脂被覆層2には、更に、ここでは図示されていない、カーボンブラック等の導電性微粒子、荷電制御剤及び樹脂層硬度を付与するためのフィラー等が、必要に応じて添加される。
【0053】
現像剤担持体を構成する樹脂被覆層の結着樹脂材料としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えば、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱又は光硬化性樹脂等を使用することができる。中でもシリコーン樹脂、フッ素樹脂のような離型性のあるもの、又はポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような機械的性質に優れたものが好ましく用いられる。更に、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などは、現像剤に摩擦帯電を付与させるという観点から見ても好ましい。
【0054】
本発明において、上記した形成材料によって現像剤担持体上に形成される被覆層は、チャージアップによる現像剤の現像剤担持体上への固着や、現像剤のチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面から現像剤への摩擦帯電付与不良を防ぐためには、導電性を有する層であることが好ましい。被覆層を導電性とすることにより、耐久使用により黒鉛化粒子が現像剤担持体上から離れた後においても、現像剤担持体表面上の電荷が逃げることができるため現像剤が鏡映力により現像剤担持体に強固に付着するのを防止でき、耐久使用を通じて現像剤の摩擦帯電電荷を適正化し、良好な画像を得ることができる。
【0055】
被覆層の体積抵抗値は、10Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10Ω・cm以下である。現像剤担持体表面の被覆層の体積抵抗値が10Ω・cmを超えるとチャージアップが発生しやすく、現像剤への摩擦帯電付与不良が発生し、その結果、ブロッチ(斑点画像や波模様画像)や画像濃度低下が発生し易い。
【0056】
本発明において、樹脂被膜層の抵抗値を上記の値に調整するためには、下記に挙げる導電性物質からなる粉末、即ち導電性粉末を被覆層中に含有させることが好ましい。この際に使用される導電性物質としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、銀等の金属粉体の微粉末;酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化モリブデン、チタン酸カリウム等の導電性金属酸化物;各種カーボンファイバー、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャネルブラ
ック等のカーボンブラック、グラファイト等の炭素物;更には金属繊維等が挙げられる。
【0057】
これらのうち、カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは、特に電気伝導性に優れており、高分子材料に充填して導電性を付与し、その添加量をコントロールするだけで、ある程度任意の導電度を得ることができるため好適に用いられる。また、塗料にした場合のチキソ性効果により、分散安定性・塗工安定性も良好となりうる。
【0058】
また、本発明においてカーボンブラックの添加量は、カーボンブラックの粒径によっても異なるが、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では被覆層の抵抗値を所望のレベルに下げることは通常困難であり、また、現像剤担持体被覆層に用いられる結着樹脂に対するトナー付着が発生する可能性が高い。添加量が100質量部超であると、樹脂被覆層の強度(摩耗性)が低下することがある。
【0059】
更に、現像剤担持体表面への現像剤の付着をより軽減化するため、被覆層中に潤滑性粒子を混合させることもできる。この際に使用し得る固体潤滑材としては、例えば、二硫化モリブデン、窒化硼素、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石等が挙げられる。中でも二硫化モリブデン、グラファイト、窒化硼素などがより好ましく用いられる。また、本発明で使用することのできるこれらの潤滑性粒子の添加量は、結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部の範囲とすることが好ましい。1質量部未満では被覆層の結着樹脂表面に対する現像剤の付着性の改善効果は少なく、100質量部超となると、特にサブミクロンオーダーの粒径を有する微粉体が多く含まれる材料を用いた場合、被覆層の強度(摩耗性)が低下することがある。これらの潤滑性粒子は、体積平均粒径が好ましくは0.2〜20μm程度、より好ましくは0.3〜15μmのものを使用するのが良い。潤滑性粒子の体積平均粒径が0.2μm未満の場合には、潤滑性が十分に得られ難く好ましいとは言えず、体積平均粒径が20μmを超える場合には、被覆層表面の形状への影響が大きく表面性が不均一となり、トナーの摩擦帯電が不均一になりやすい。また、潤滑性粒子の体積平均粒径は、下記に示すような現像剤担持体の表面粗さを制御するための粗し粒子と併用する場合には、粗し粒子の体積平均粒径より小さいことが好ましい。
【0060】
上記潤滑性粒子は粗し粒子として好ましく用いられる球状の粗し粒子に比較するとより不定形になる方向であることから、樹脂被覆層の表面粗さに与える影響は、同じ粒径で比較した場合は粗し粒子よりも小さいが、その体積平均粒径は0.2μmより大きく、粗し粒子の体積平均粒径より小さいことが好ましい。潤滑性粒子の体積平均粒径が粗し粒子の体積平均粒径より大きい場合には、初期における現像剤担持体の表面粗さに対する潤滑性粒子の影響が大きくなってしまい、粗し粒子による表面粗さの調整がしにくくなることがある。
【0061】
樹脂被覆層中には、被覆層表面に凹凸を形成するための固体粒子を粗し粒子として含有させることができる。このような粗し粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のビニル系重合体や共重合体;ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂粒子;アルミナ、酸化亜鉛、シリコン、酸化チタン、酸化錫等の酸化物粒子;炭素化粒子;導電処理を施した樹脂粒子等の導電性粒子;その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物を粒子状にして用いることも可能である。なお、イミダゾール化合物は、トナーに摩擦帯電電荷を付与する役割も果たす。
【0062】
凹凸形成用の粗し粒子の形状は特に制限されないが、少ない量で凹凸付与効果が得やす
い点、粒子の結着樹脂中での分散性が良好で且つ均一な凹凸表面を得やすい点、などから、より球状に近いものが好ましく用いられる。粗し粒子として、例えば球状の樹脂粒子を用いる場合、懸濁重合法や分散重合法等により得られる球状の樹脂粒子などが用いられる。球状の樹脂粒子はより少ない添加量で好適な表面粗さが得られ、更に均一な表面形状が得られやすい。このような球状の樹脂粒子としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系樹脂粒子;ナイロン等のポリアミド系樹脂粒子;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂粒子;シリコーン系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン粒子等が挙げられる。粉砕法により得られた樹脂粒子を熱的に又は物理的に球形化処理したものを粗し粒子として用いても良い。
【0063】
また、上記球状の樹脂粒子の表面に無機微粉末を付着又は固着させたものを用いてもよい。このような無機微粉末としては、SiO、SrTiO、CeO、CrO、Al、ZnO、MgO、TiOなどの酸化物;Siなどの窒化物;SiCなどの炭化物;CaSO、BaSO、CaCOなどの硫酸塩・炭酸塩等が挙げられる。
【0064】
このような無機微粉末は、カップリング剤により処理して用いても良い。特に上記球状の樹脂粒子と結着樹脂との密着性を向上させる目的、又は樹脂粒子に疎水性を与える等の目的で好ましく用いることが可能である。このようなカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等がある。より具体的には、例えばシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛の硅素原子に結合した水酸基を含有したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
このように球状樹脂粒子表面を無機微粉末で処理することにより、結着樹脂中への分散性、被覆層形成時の塗工表面の均一性、被覆層の耐汚染性、トナーへの帯電付与性、被覆層の耐磨耗性等を向上させることができる。
【0066】
球状粒子に耐汚染性、耐磨耗性などを持たせるために導電性の球状粒子を粗し粒子として用いることもよい。導電性の球状粒子としては、例えば、導電処理された球状粒子として、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化鉛等の金属酸化物や硫酸バリウム等の顔料の表面に、酸化スズ等の良導電性物質をコートしたもの;又は酸化亜鉛、酸化銅、酸化イリジウム等の絶縁性金属酸化物中に、酸化数の異なる金属をドーピングして導電性を持たせたものがある。導電性球状粒子の体積抵抗は10Ω・cm以下であることが好ましい。10Ω・cmを超えると現像剤が粗し粒子の周辺に汚染となって固着する場合がある。
【0067】
添加される導電性球状粒子の真密度は、3g/cm以下であることが好ましい。真密度が3g/cmを超えると、樹脂被覆層中で導電性球状粒子の分散性が不十分になることがあるため、被覆層表面に均一な粗さを付与しにくくなり、トナーへの均一な帯電付与や被覆層の強度が不十分となり、更にこれらの粒子の利点である耐汚染性や耐磨耗性が発
揮できなくなる可能性がある。このような条件を満たす導電性球状粒子の種類としては、球状炭素粒子、導電性物質で表面処理された球状樹脂粒子、導電性微粒子が分散された球状樹脂粒子などが挙げられる。
【0068】
上記種々の粗し粒子の中では、特に導電性の球状粒子を用いることが好ましい。このような粒子の例としては、特開平8−240981号公報に記載された導電性球状粒子が挙げられる。即ち、球状粒子に導電性を持たせると、その導電性ゆえに球状粒子表面にチャージが蓄積しにくく、現像剤担持体へのトナー付着の軽減を軽減したりトナーの帯電付与性を向上させたりできるからである。本発明において、導電性球状粒子としては、体積抵抗値が10Ω・cm以下、より好ましくは10−3〜10Ω・cmの粒子であることが好ましい。上記導電性球状粒子の体積抵抗が10Ω・cmを超えると、摩耗によって被覆層表面に露出した球状粒子を核としてトナーの汚染や融着が発生しやすくなるとともに、現像剤への迅速且つ均一な帯電が行われにくくなる。
【0069】
また、導電性球状粒子は、真密度が3g/cm程度以下であることがより好ましい。球状粒子が導電性を有するものであっても、真密度が高すぎる場合、同じ表面粗さを形成するための添加量は増加してくることと、樹脂被覆層の結着樹脂又は該結着樹脂を構成する樹脂組成物との真密度差が大きくなるため、樹脂被覆層製造時の導電性球状粒子の分散状態が非均一となりやすく、従って形成された被覆層においても分散状態が不均一となり好ましくない。また粒子が球状であると、圧接される現像剤規制部材等との接触面積が低減されるので、摩擦力によるスリーブ回転トルクの増加や、トナーの付着などを軽減することができるのでより好ましい。
【0070】
上記粗し粒子の粒径は、体積平均粒径が1.0〜30μmであることが好ましい。体積平均粒径が1.0μm未満であると均一な表面凹凸を形成することが難しく、表面粗さを大きくしようとした場合には粗し粒子の添加量が過大になり、樹脂被膜層が脆くなり耐摩耗性が極端に低下することがある。逆に、体積平均粒径が30μmより大きくなると、粗し粒子が担持体表面から突出しすぎるため、現像剤層の厚みが大きくなり過ぎて現像剤の帯電量が低下したり、不均一になったりしやすく、バイアスをかけた際に感光ドラムへリークするポイントになる恐れがある。
【0071】
樹脂被覆層中には、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。荷電制御剤には、負荷電制御剤と正荷電制御剤とがある。例えば(被覆層を)負荷電性に制御するものには下記物質がある。例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
【0072】
また、(被覆層を)正帯電性に制御する物質としては下記のようなものがある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物などである。
【0073】
特に、負帯電性トナーに対しては、イミダゾール化合物を現像剤担持体の樹脂被覆層中に添加させることで、トナーの帯電性を上げるのにより効果を発揮する。このようなイミダゾール化合物の中でも、下記一般式(101)又は(102)で示されるイミダゾール化合物が、トナーへの迅速且つ均一な帯電付与及び樹脂被覆層の強度の観点から特に好ましく用いられる。
【0074】
【化1】


〔式中、R及びRは、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、これらR及びRは同一であっても異なっていても良い。R及びRは炭素数が3〜30の直鎖状アルキル基を表し、これらR及びRは同一であっても良い。〕
【0075】
【化2】


〔式中、R及びRは、水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表し、これらR及びRは同一であっても良い。Rは、炭素数が3〜30の直鎖状アルキル基を表す。〕
【0076】
また、極性基を有するモノマーをベースモノマーに共重合させ適当な分子量に重合させたポリマーを樹脂被覆層に添加し、樹脂制御剤として用いることも可能である。
【0077】
例えば、負帯電性の樹脂制御剤としては、少なくともビニル重合性単量体とスルホン酸含有アクリルアミド系単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、ビニル重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチル(アミノ)エチルメタクリレート、ジエチル(アミノ)メタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等であり、これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。より好ましい例として、スチレンとアクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
【0078】
また、スルホン酸含有アクリルアミド系単量体としては、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘ
キサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,2,4−トリメチルペンタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2一メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸などを挙げることができる。より好ましい例として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
【0079】
更に、正帯電性の樹脂制御剤として、少なくとも、上記したようなビニル重合性単量体と含窒素ビニル系単量体との共重合体が挙げられる。より詳しくは、含窒素ビニル系単量体の代表例としては、例えば、p−ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどがあり、更に、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルベンズイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピペリジン、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルインドールなどの含窒素複素環式N−ビニル化合物がある。特に、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、などの下記一般式(I)に示される含窒素ビニル系単量体、又は4級アンモニウム基含有ビニル系
単量体を用いることが好ましい。
【0080】
【化3】


[式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。]
【0081】
本発明に用いられる4級アンモニウム基含有ビニル系単量体としては、上記ビニル重合性単量体と共重合可能なものであれば特にその構造は限定されるものではないが、より好ましい4級アンモニウム基含有ビニル系単量体として、下記一般式(II)に示される4級アンモニウム基含有ビニルモノマーがある。
【0082】
【化4】


[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立にメチル基、エチル基又はプロピル基を示し、Xは−COO−又は−CONH−を示し、AはCl、(1/2)SO2−などのアニオンを示す。]
【0083】
また、特開2000−242040公報や特開2002−311636公報に開示される、第四級アンモニウム塩化合物を荷電制御剤として樹脂被覆層に添加して用いることも可能である。この方法を用いることで、正帯電性現像剤に対しては摩擦帯電量を高くすることができ、負帯電性現像剤、特に特殊なトナー材料又は特殊な円形度を有する現像剤に対しては摩擦帯電量を抑えて帯電性を安定化させることができる。
【0084】
上記第四級アンモニウム塩を樹脂被覆層中に添加することの効果は、特に樹脂被覆層成分に、より好ましくは結着樹脂がその構造中に−NH基、=NH基、又は−NH−結合のいずれかを有する場合に、特にその効果を発揮することができる。また、上記第四級アンモニウム塩化合物は、例えば鉄粉に対して正帯電性である第四級アンモニウム塩化合物を用いた場合に、その効果が大きい。
【0085】
従来トナーの正荷電制御剤として知られている第四級アンモニウム塩化合物が負帯電性現像剤の帯電量を上げる方向ではなく、帯電量を抑制して現像剤の帯電安定化に寄与する正確な理由は定かではないが、次のように推測される。現像剤担持体上の樹脂被覆層に鉄粉に対して正帯電性である第四級アンモニウム塩化合物を添加すると、結着樹脂中に均一に分散され、更に被覆層を形成する際に結着樹脂中のアミノ基、=NH基又は−NH−結合等の官能基を有する樹脂の構造中に取り込まれ、結着樹脂組成物自身が負帯電性を持つようになるものと考えられる。そのため負帯電性現像剤に対しては、現像剤に負の摩擦帯電量が過剰となることを妨げる方向に働き、負の摩擦帯電量を安定してコントロールすることが可能となる。同様に正帯電性現像剤に対しては、摩擦帯電量を向上させる方向に作用するものとなる。
【0086】
上記した機能を有する第四級アンモニウム塩化合物としては、例えば、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【0087】
【化5】


(式中、R、R、R及びRは、それぞれ置換基を有してもよいアルキル基、置換
基を有してもよいアリール基、アルアルキル基を表し、R〜Rは互いに同一でも異なっていても良い。Xは酸の陰イオンを表す。)
【0088】
上述の一般式において、Xで表される酸イオンの具体例としては、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機リン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、モリブデン原子又はタングステン原子を含むヘテロポリ酸等が好ましく用いられる。
【0089】
本発明に好適に用いられる、それ自身が鉄粉に対して正帯電性である第四級アンモニウム塩化合物としては、具体的には、以下のようなものが挙げられるが、本発明においては勿論、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化6】

【0091】
【化7】

【0092】
【化8】

【0093】
上記に示したような本発明で使用する第四級アンモニウム塩化合物の添加量は、樹脂被覆層の結着樹脂100質量部に対して1〜100質量部とすることが好ましい。1質量部未満では第四級アンモニウム塩化合物添加による現像剤の帯電量制御の効果が見られず、また100質量部を超えると結着樹脂中での存在量が過剰となって元の結着樹脂の特性を損ない、樹脂被覆層の被膜強度の低下を招きやすい。
【0094】
また、上記第四級アンモニウム塩との組み合わせで用いられる、構造中にアミノ基、=NH又は−NH−の少なくとも1つを含む好ましい樹脂として、製造工程において触媒として含窒素化合物を用いて製造されたフェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドを硬化剤として用いたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又はこれらの樹脂を一部に含んだ共重合
体等が挙げられる。第四級アンモニウム塩化合物をこれらの樹脂を含む結着樹脂とともに用いることにより、被覆層の形成時に第四級アンモニウム塩化合物が結着樹脂の構造中に容易に取り込まれる。
【0095】
本発明において、上記第四級アンモニウム塩化合物との組み合わせで好適に使用し得るフェノール樹脂の製造工程において触媒として用いられる含窒素化合物としては、酸性触媒としては、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、スルファミド酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウムといったアンモニウム塩又はアミン塩類が挙げられる。塩基性触媒としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジアミルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリアミルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジアミルアニリン、N,N−ジ−t−アミルアニリン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミノ化合物;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン等のピリジン及びその誘導体;キノリン化合物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環式化合物等が挙げられる。
【0096】
また、本発明において上記第四級アンモニウム塩化合物と共に好適に用いられる結着樹脂を構成するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、66、610、11、12、9、13、Q2ナイロン等、又はこれらを主成分とするナイロンの共重合体等、又はN−アルキル変性ナイロン、N−アルコキシルアルキル変性ナイロン等のいずれも好適に用いることができる。更にはポリアミド変性フェノール樹脂のようにポリアミドにて変性された各種樹脂、又は硬化剤としてポリアミド樹脂を用いたエポキシ樹脂、というようなものも、ポリアミド樹脂分を含有している樹脂であればいずれも用いることができる。
【0097】
また、上記第四級アンモニウム塩化合物との組み合わせで好適に用いられる結着樹脂を構成するウレタン樹脂としては、ウレタン結合を含んだ樹脂であれば、いずれも用いることができる。このウレタン結合はポリイソシアネートとポリオールとの重合付加反応によって得られる。このポリウレタン樹脂の主原料となるポリイソシアネートとしては、TDI(トリレンジイソシアネート)、ピュアMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、NDI(ナフタリンジイソシアネート)等の芳香族系ポリイソシアネート;HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、水添XDI(水添キシリレンジイソシアネート)、水添MDI(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)等の脂肪族系ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0098】
また、このポリウレタン樹脂の主原料となるポリオールとしては、PPG(ポリオキシプロピレングリコール)、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリエーテル系ポリオール;アジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートポリオール等のポリエステル系ポリオール;PHDポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等のポリエーテル系の変性ポリオール;その他、エポキシ変性ポリオール;エチレン−酢酸ビニル共重合物の部分ケン化ポリオール(ケン化EVA);難燃ポリオール
等が挙げられる。
【0099】
本発明の現像剤担持体表面の被覆層の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.3〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.4〜2.5μmである。Raが0.3μm未満では、現像剤担持体上における現像剤の帯電量が高くなり過ぎて現像性が不充分となり、また、現像領域への現像剤の搬送性に劣り、充分な画像濃度が得られにくくなる。一方、Raが3.5μmを超えると、現像剤担持体上に形成される現像剤コート層厚にムラが生じ、画像上での濃度ムラの原因となる。
【0100】
次に、メッキ層などの、金属を含有する被覆層について説明する。図4は、被覆層としてメッキ層を有する現像剤担持体の一例の模式的断面図である。図には、マグネットローラー41を内包するスリーブ基体42上に形成された非磁性金属又は合金又は金属化合物からなる層(以下、「メッキ層」と記す)43が示されている。
【0101】
また、図5はガラスビーズブラスト処理したアルミニウムスリーブに対して、メッキ層を設けたときのスリーブ表面の粗さ断面曲線を示す模式図である。メッキ層を設けた場合、そのメッキ層がスリーブ(基体)表面のクレーター状凹部内を鏡面状に覆って、微小凹部を埋め込むように形成される。従って、スリーブ汚染等を防止する効果が発揮される。上記のブラスト処理後にメッキ層を設けた時のスリーブの表面を光学顕微鏡で観察すると、スリーブ表面のクレーター状凹部内の微小凹部はメッキ層によって埋められていることが確認できる。
【0102】
また、先述したように、スリーブゴーストとは、現像スリーブ上にトナー中の微粉及び該トナーに外添されている外添剤からなる微粉層が形成され、この層の上に担持された現像剤は、現像スリーブ表面と十分に摩擦帯電しないために現像能力が低下して発生する現象である。特に、ブラスト処理されたスリーブの基体表面のクレーター状凹部内の微小凹部には微粉が蓄積されやすくなり、これを起点として上記微粉層が形成され、その結果スリーブゴーストが発生する、というのが従来の現像剤担持体(現像スリーブ)における問題点であったが、表面のクレーター状凹部内の微小凹部をメッキ層によって埋めることで、スリーブゴーストのレベルは格段に良くなる。
【0103】
更に、現像剤の部分的な静電凝集による流動性低下に伴うフェーディングに関しても、スリーブ基体表面のクレーター状凹部内の微小凹部はメッキ層によって埋められていることで、凹部にトナーの微粉が蓄積されることがなくなるため、フェーディングのレベルも良化できる。また、メッキ層を設けた場合、上記のようにクレーター状凹部内の微小凹部はなくなるが、メッキ層はクレーター状凹部をかたどって形成されるので、メッキ後の表面の粗さRz、Ra、平均山間隔Sm等は、基体にブラストした状態のものと実質的に大差がなく、従って、現像剤の搬送性等が低下することがない。
【0104】
このようなメッキ層を基体表面に均一に形成することにより、現像剤担持体の長手方向(軸方向)において現像剤に対して均一な帯電を付与することが可能になり、良好な現像性を得ることができる。現像スリーブの基体表面に上記メッキ層を形成する方法としては、電解メッキや無電解メッキが好ましく用いることができる。特に無電解メッキは、化学メッキであるため、ブラスト処理などによって粗面化された基体表面であっても、その上に均一に精度よくメッキ層を形成することができる。
【0105】
具体的には、メッキ層がニッケル、クロム、モリブデン、パラジウムからなる群から選択される非磁性金属又は合金又は金属化合物からなる層より形成されていることが好ましく、例えば無電解Ni−Pメッキ、無電解Ni−Bメッキ、無電解Pdメッキ、無電解Pd−Pメッキ、無電解Crメッキ、電解Moメッキ又は無電解Moメッキなどが挙げられ
る。
【0106】
現像スリーブはスリーブ内部にマグネットロールを有しているため、スリーブ表面は非磁性であることが好ましい。そのため、メッキ層の厚さは0.5〜20μm、より好ましくは3〜15μmであることが良い。メッキ層の厚さが0.5μm未満の場合は、層厚が薄すぎてメッキ層を設けることによる効果が発揮されにくく、またメッキ層厚が20μmを超える場合は、基体表面に存在するメッキ層の厚みを長手方向で均一に保持することが困難になる。また、例えば、上記Ni−Pメッキに関しては、Niは単体では強磁性体であるが、無電解メッキ中ではリン又はホウ素と反応することにより非晶質となり、非磁性化する。無電解Crメッキの場合も、メッキ層が20μm以下であれば、実際には内部のマグネットの磁場を乱すほどではなく、十分に使用できる。
【0107】
現像スリーブの基体としては、ビッカース硬度(Hv)が50〜200の金属材料が好ましく使用できる。Hvが50未満の場合は、強度面で不十分であり、変形や削れの発生の恐れがある。Hvが200を超える場合は、ブラスト処理のような表面に凹凸を形成させる工程において、表面に均一に凹凸を形成することが困難になることがある。基体の具体的な例としてアルミニウム合金、黄銅などの銅合金などが挙げられるが、コスト面からアルミニウム合金がより好ましい。
【0108】
金属層を設けた後の現像スリーブのビッカース硬度(Hv)は、選択した材料によっても異なるが、アニール処理時の温度によってコントロールすることが可能である。本発明に用いることができるものとしては、Hvが200〜1,000のものが好ましい。Hvが200未満の場合は、強度的に不十分であり、スリーブ表面の傷や削れが発生しやすくなる。また、Hvを1,000より大きくすることは、製造面において困難である。Hvを高くする方法としては、例えばアニール温度を高くする方法がある。しかし高温でアニール処理を行うと、スリーブの偏心量が大きくなる傾向が見られ、その結果、画像濃度や画質等に悪影響を及ぼすこともある。
【0109】
また、現像剤担持体の基体表面は、球状ガラスビーズなどの球形の砥粒によって粗面化処理して凹凸面を形成した後に、非磁性金属、合金又は金属化合物からなる被覆層(メッキ層)を形成したものであることが好ましい。これは、予め粗面化処理を行って基体表面に存在する微小なクラックを減らすことで、メッキ後の基体(被覆層)表面をより均一な表面粗さを有するものとできるためである。
【0110】
現像スリーブの表面粗さは、基体上に非磁性金属又は合金又は金属化合物からなる層を形成した後の表面の凹凸の算術平均粗さRa値が、0.1〜3.5μmであることが好ましい。Raが0.1μm未満では、特に低湿度環境下において、現像剤担持体上の現像剤が鏡映力により現像剤担持体表面に不動層を形成し、現像剤への帯電付与が不十分となるため現像性が低下し、ムラ、飛び散り、画像濃度薄などの画像不良が発生する場合がある。また、Raが3.5μmを超えると、現像剤担持体上のトナーコート層の規制が不十分となり、画像の均一性が不十分となったり、帯電不十分のため画像濃度薄となったりする。
【0111】
このように、被覆層としてメッキ層又は導電性粉末を有する樹脂層を基体上に形成することにより、現像剤の摩擦帯電を適正に制御し、耐久使用を通じて現像剤の摩擦帯電電荷を適正化し、良好な画像を得ることができる。
【0112】
次に本発明の現像剤担持体を有する現像装置について説明する。図6は、本発明の現像剤担持体を好適に使用する現像装置の一実施形態の模式図である。図6において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する静電潜像担持体、例えば、電子写真感光ド
ラム501は矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ508は、現像容器503に供給された磁性トナー粒子を含む一成分系現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。なお、図6に示すように、現像ローラー510は、現像剤を現像スリーブ508上に磁気的に吸引し且つ保持する為に該現像スリーブ508内に磁石(マグネットローラー)509を配置してなるものである。
【0113】
この現像装置で用いられる現像スリーブ508は、基体としての金属円筒管506上に形成された被覆層507を有する。また、上述のように、本発明ではこの被覆層507上に、図示せぬ黒鉛化粒子が予め(現像剤が該現像スリーブ508上に搬送されるのに先立って)担持されている。現像容器503中には、図示せぬ現像剤補給容器から現像剤供給部材(スクリューなど)512を経由して現像剤が送り込まれてくる。現像容器は第一室514及び第二室515に分割されており、第一室514に送り込まれた現像剤は攪拌搬送部材505により現像容器503及び仕切り部材504により形成される隙間を通過して第二室515に送られる。第二室515に送られた現像剤はマグネットローラー509による磁力の作用により、予め黒鉛化粒子が担持された現像スリーブ508上に担持される。第二室515中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材511が設けられている。
【0114】
現像剤は、磁性トナー相互間及び現像スリーブ508上の被覆層507との摩擦により、感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図6では、現像領域Dに搬送される現像剤の層厚(即ち、現像剤担持体上に担持される現像剤の量)を規制するために、現像剤層厚規制部材としての強磁性金属製の磁性規制ブレード502が、現像スリーブ508の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ508に臨む様に現像容器503から垂下されている。マグネットローラー509の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に現像剤の薄層が形成される。なお、本発明においては、この磁性規制ブレード502にかえて非磁性ブレードを使用することもできる。この様にして、現像スリーブ508上に形成される現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。
【0115】
本発明の現像剤担持体は、以上の様な現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち非接触型現像装置に組み込むのが特に有効であるが、現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みとなる現像装置、即ち接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。
【0116】
説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記非接触型現像装置を例に採って行う。現像スリーブ508に担持された磁性トナー粒子を含む一成分系現像剤を飛翔させる為、上記現像スリーブ508にはバイアス印加手段としての現像バイアス電源513により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。現像された画像の濃度を高める、又は階調性を向上させるためには、現像スリーブ508に交番バイアス電圧を印加することにより、向きが交互に反転する振動電界を現像領域Dに形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位の中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。
【0117】
高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部に現像剤を付着させて可視化する、いわゆる正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電する現像剤を使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、いわゆる
反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電する現像剤を使用する。なお、高電位、低電位というのは絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤は少なくとも現像スリーブ508表面(導電性被覆層507)との摩擦により帯電する。
【0118】
上記のような現像装置において、現像時(画像形成時)には、現像スリーブ508表面に担持された現像剤は、黒鉛化粒子により適正な摩擦帯電量を保持することができるようコントロールされるため、現像初期に発生しやすい現像剤のチャージアップ現象を緩和することが可能となり、結果としてスリーブゴーストやブロッチ等の画像不良をなくすことが可能となる。また、画出し枚数が増えるに従い、黒鉛化粒子は現像剤と共に消費されるため、現像スリーブ508上の黒鉛化粒子の量は減少していくが、前述したように現像スリーブ508上に設けられた被覆層507によって現像剤の良好な帯電状態が維持されるため、現像剤の帯電量が不足したり、チャージアップが生じたりすることもなく、長期にわたって良好な画像形成を達成することができる。
【0119】
図6においては、現像スリーブ508上の現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示したが、図7に示すように、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム弾性を有する材料、又はリン青銅、ステンレス鋼などの如き金属弾性を有する材料の弾性板からなる弾性規制ブレードを使用し、この弾性規制ブレードを現像スリーブに対して、現像剤を介して接触又は圧接させて用いても良い。
【0120】
図7に示すような層厚規制ブレード516を接触又は圧接させるタイプの現像装置では、現像剤層は更に強い規制を受けながら現像スリーブ上に現像剤の薄層を形成することから、現像スリーブ508上に、上記図6に示す磁性ブレード502を用いる場合よりも更に薄い現像剤層を形成することができる。
【0121】
なお、図6及び図7は、あくまでも本発明の現像装置を模式的に例示したものであり、前記した層厚規制部材以外にも、現像容器503(ホッパー)の形状、攪拌翼505、511の有無、磁極の配置、供給部材512の形状、補給容器の有無、などに様々な形態があることは言うまでもない。
【0122】
次に、本発明に用いられる現像剤について説明する。現像剤は主として結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等を溶融混練し、固化した後粉砕し、しかる後分級等を行って粒度分布を揃えた微粉体であるトナー粒子と、必要に応じてこのトナー粒子に外添混合される外添剤とからなる。現像剤に用いられる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。
【0123】
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、パラフィンワックス、カルナバワックス等を単独で又は2種以上を混合して使用する。
【0124】
また、現像剤は着色剤として顔料を含有することができる。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、ランプ黒、スーダンブラックSM、ファースト・イエローG、ベンジジン・イエロー、ピグメント・イエロー、インドファースト・オレンジ、イルガジン・レッド、パラニトロアニリン・レッド、トルイジン・レッド、カーミンFB、パーマネント・ボルドーFRR、ピグメント・オレンジR、リソール・レッド2G、レーキ・レッドC、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチル・バイオレッドBレーキ、フタロシアニン・ブルー、ピグメント・ブルー、ブリリアント・グリーンB、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、ザボン・ファーストイエローCGG、カヤセットY963、カヤセットYG、ザボン・ファーストオレンジRR、オイル・スカーレット、オラゾール・ブラウンB、ザボン・ファーストスカーレットCG、オイルピンクOP等が挙げられる。
【0125】
現像剤を一成分磁性現像剤である磁性トナーとして用いるために、現像剤中に磁性粉を含有させてもよい。このような磁性粉としては、磁場の中におかれて磁化される物質が用いられ、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末;又はマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の合金や化合物が挙げられ、1種又は2種以上が適宜選択して用いられる。この磁性粉の含有量は磁性トナーの15〜70質量%であることが好ましい。
【0126】
また、現像剤には、定着時の定着部材に対する離型性向上や、定着性向上の目的で、ワックス類を含有させることもできる。そのようなワックス類としては、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプッシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体等があり、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。その他、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタム等も利用できる。
【0127】
必要に応じて、現像剤に荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤には、負荷電制御剤及び正荷電制御剤がある。現像剤を負荷電性に制御する負荷電制御剤として下記物質がある。例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等がある。
【0128】
また、現像剤を正帯電性に制御するための正荷電制御剤としては下記のようなものがある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物等がある。
【0129】
本発明における現像剤は、必要に応じて、流動性改善等の目的で無機微粉末などの粉末を外添剤としてトナー粒子に外添混合して用いられる。このような微粉末としては、シリカ微粉末、アルミナ、チタニア、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化チタン等の炭化物;及び窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム等の窒化物等の無機微粉末が用いられる。
【0130】
これらの微粉末は、有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤等で有機処理して用いることが可能である。例えば、有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。
【0131】
また、未処理の微粉末を窒素含有のシランカップリング剤で処理したものを用いてもよい。このようなシランカップリング剤で処理した微粉体をトナー粒子に含有させることは、特に正帯電性現像剤を用いる場合に好ましい。そのような処理剤の例として、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−γ−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−γ−プロピルイミダゾール等が挙げられる。
【0132】
上記シランカップリング剤により微粉末を処理する方法として、例えば、1)スプレー法、2)有機溶媒法、3)水溶液法等がある。一般に、スプレー法による処理とは、微粉末を撹拌し、ここにカップリング剤の水溶液又は溶媒液をスプレーし、その後水又は溶媒を120〜130℃程度で除去乾燥する方法である。また、有機溶媒法による処理とは、少量の水とともに加水分解用触媒を含む有機溶媒(アルコール、ベンゼン、ハロゲン化炭化水素等)にカップリング剤を溶解し、これにピグメントを浸積した後、濾過又は圧搾により固液分離を行って120〜130℃程度で乾燥させるものである。水溶液法とは0.5%程度のカップリング剤を、一定pHの水又は水−溶媒中で加水分解させ、ここにピグメントを浸漬した後、同様に固液分離を行い乾燥するものである。
【0133】
他の有機処理としてシリコーンオイルで処理された微粉末を用いることも可能である。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ0.5〜10000mm/sec、好ましくは1〜1000mm/secのものが用いられ、例えば、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロルフェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0134】
また、側鎖に窒素原子を有するシリコーンオイルを用いてもよい。このようなシリコーンオイルで処理した微粉体をトナー粒子に含有させることは、特に正帯電性現像剤を用いる場合に好ましい。シリコーンオイルによる処理は、例えば、次のようにして行うことができる。必要に応じて加熱しながら微粉末を激しく撹乱し、これに上記シリコーンオイル又はその溶液をスプレーするか又は気化して吹き付ける方法;又は微粉末をスラリー状に
しておき、これを撹拌しつつシリコーンオイル又はその溶液を滴下する方法によって容易に処理できる。これらのシリコーンオイルは1種を又は2種以上を混合物として若しくは併用して若しくは多重処理して用いられる。また、上記シリコーンオイルによる処理をシランカップリング剤による処理と併用して行っても構わない。
【0135】
本発明に用いる現像剤は、種々の方法により球形化処理や表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となるため好ましい。そのような方法としては、攪拌羽根又はブレード等、及びライナー及びケーシング等を有する装置を用い、トナー粒子をブレードとライナーの間の微小間隙を通過させ、その際に機械的な力によりトナー粒子の表面を平滑化したり球形化したりする方法がある。
【0136】
図6に、その一例として本発明に好適に使用できる表面改質装置の模式的断面図の一例を示す。また、図7は図6の分散ローター36の上面図である。図6に示す表面改質装置は、ケーシング30;冷却水又は不凍液を通水できるジャケット(図示しない);表面改質手段としての、ケーシング30内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤状の回転体である分散ローター36;分散ローター36の外周に一定間隔をもって配置され、表面に多数の溝が設けられているライナー34(なお、ライナー表面上の溝はなくても構わない);表面改質された原料を所定粒径に分級する手段である分級ローター31;冷風を導入するための冷風導入口35;被処理原料を導入するための原料供給口33;表面改質時間が自在に調整できるように、開閉可能に設置された排出弁38;処理後の粉体を排出するための粉体排出口37;及び分級手段である分級ローター31と表面改質手段である分散ローター36−ライナー34との間の空間を、分級手段へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面処理手段へ導入するための第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39;から構成されている。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター4及びローター周辺部分が分級ゾーンである。なお、分級ローター31の設置方向は図6に示すように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ローター31の数は図6に示すように単数でも構わないし、複数でも構わない。
【0137】
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁38を閉とした状態で原料供給口33から微粉砕品を投入すると、投入された微粉砕品は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング(案内板)39の内周(第二の空間42)に沿って分散ローター36により発生する循環流に乗り表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれた原料(粗粉)は分散ローター36−ライナー34間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風に乗って、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿って再度分級ゾーンに導かれ、分級ローター4に分級されることにより、再度微粉が機外へ排出される。粗粉は、循環流に乗って再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開とし、排出口37より表面改質粒子を回収する。
【0138】
上記した以外にも、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法や、熱気流中にトナーを曝し、球形化する方法等がある。また、球状のトナー粒子を直接製造する方法としては、水中にトナー粒子の結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー粒子化する方法がある。一般的には、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、更に必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、離型剤、その他の添加剤を均一に溶解又は分散させて単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相中)に適当な攪拌機を用いて適度な粒径に分散し、更に重合反応を行わせることにより、所望
の粒径を有するトナー粒子を得る。
【実施例】
【0139】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0140】
〈実施例1〉
以下の配合比で現像剤担持体の樹脂被覆層用の塗料を作製した。
フェノール樹脂中間体(Mw=1500)の50質量%メタノール溶液
2000質量部
体積平均粒径5.5μmの結晶性グラファイト 360質量部
導電性カーボンブラック 40質量部
体積平均粒径6.8μmの架橋PMMA(ポリメチルメタクリレート)球状粒子
60質量部
イソプロピルアルコール 1700質量部
【0141】
フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の半量、結晶性グラファイト及びカーボンブラックを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。また、フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の残りの半量、PMMA球状粒子及びイソプロピルアルコールを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。次いで、この両分散液を混合し、ホモジナイザーにて均一に攪拌し、現像スリーブ塗工用の塗料Aを得た。
【0142】
次に、この塗料Aを用いて現像スリーブの塗工を行った。現像剤担持体としての現像スリーブの基体には、アルミニウム合金製の肉厚0.8mmで直径16φmmの円筒管で、A3サイズに適用可能なものを用いた。円筒管の両端にマスキングを施し、図8に示すような装置を用いて塗料Aの塗工を行った。即ち、円筒管の両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させ、円筒管を一定速度で回転させた状態で、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料Aを噴射させるによりスプレー塗工を行った。塗工後、更に150℃に設定された通風式乾燥機内に上記円筒管を30分放置し、乾燥及び硬化を行い樹脂被覆層を形成させた。この時の樹脂被服層の付着質量は、約8,600mg/mであり、膜厚測定値は8.2μmであった。樹脂被覆層の表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところ、平均値でRa=1.03μmであった。また十点平均粗さ(Rz)は、平均値でRz=9.8μmであった。この現像スリーブサンプルを現像スリーブA2とする。
【0143】
次に、表11に示すような体積平均粒径3.1μmの黒鉛化粒子Aを、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌して均一に分散させることにより分散液Aを得た。上記図8に示すスプレー装置を用い、スリーブA2の樹脂被覆層上に分散液Aを塗布して樹脂被覆層の表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブA2を低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。この現像スリーブサンプルを現像スリーブA1とする。黒鉛化粒子Aの付着状態を、超深度形状測定顕微鏡VK8500(キーエンス社製)を用いて観察したところ、スリーブの凸部を除いては、黒鉛化粒子が均一に広がり且つほぼ全領域を覆っていた。黒鉛化粒子Aの付着質量を測定したところ、6,100mg/mであった。
【0144】
得られた現像スリーブA1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0145】
スチレン−ブチルアクリレート系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−2-エチルヘキシルアクリレート−2-アクリルアミド-
2-メチルプロパンスルホン酸の75:15:10共重合体;Mw=30,000)
5質量部
ポリエチレン系ワックス 5質量部
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が6.3μm程度となるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行い、D4=6.5μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が18.3%、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.1%のトナー粒子Aを得た。このトナー粒子Aの円形度は0.925であった。このトナー粒子Aを100質量部に対して、シランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理したコロイダルシリカ1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Aを得た。
【0146】
本実施例における各種物性の測定は次のようにして行った。
(1)導電性粒子の粒度測定
黒鉛化粒子等の導電性粒子の粒径はレーザー回折型粒度分布計のコールターLS−230型粒度分布計(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、少量モジュールを用い、測定溶媒としてはイソプロピルアルコール(IPA)を使用した。IPAにて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、洗浄後バックグラウンドファンクションを実行した。次にIPA50ml中に、測定試料を1〜25mg加えた。試料を懸濁した溶液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理して試料液を得た。上記測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定を行い、体積分布から算出した体積平均粒径を求めた。
【0147】
(2)トナー粒子及び非導電性粒子の粒径測定
トナー粒子及び非導電性粒子の粒径測定は、コールターカウンター法を用いて行うが、本実施例においてはコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)を使用した。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いた。このような電解液として、例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法は以下の通りである。上記電解液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定対象の試料を2〜20mg加えた。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、上記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、粒径2.00μm以上の粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出した。
【0148】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いた。
【0149】
(3)表面粗さの測定
現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B0601(2001)の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE−3500を用いて行った。測定条件はカットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとし、軸方向3
点×周方向3点=9点について各々測定し、その平均値をとった。十点平均粗さについては、JIS B0601(1982)の表面粗さに基づき、同様に測定した。
【0150】
(4)樹脂被覆層の付着質量の測定
予め、樹脂被覆層を形成する前のワーク(スリーブ素管)の質量を測定しておき、樹脂被覆層形成後のワーク質量との質量差をとり、単位面積当たりの付着量を算出した。
【0151】
(5)黒鉛化粒子の付着質量の測定
予め、黒鉛化粒子塗布前のワーク(スリーブ)の質量を測定しておき、黒鉛化粒子塗布後のワーク質量との質量差をとり、単位面積当たりの付着量を算出した。
【0152】
(6)樹脂被覆層の膜厚の測定
KEYENCE社製レーザー寸法測定器を用いた。コントローラLS−5500及びセンサーヘッドLS−5040Tを用い、スリーブ固定治具及びスリーブ送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、スリーブの外径寸法の平均値から測定を行った。測定はスリーブ長手方向を30分割して30箇所測定し、更にスリーブを周方向に90°回転させた後更に長手方向に30箇所、計60箇所の測定を行い、その平均値をとった。表面被覆層形成前のスリーブの外径を予め測定しておき、表面被覆層形成後の外径を測定し、その差分をコート膜厚とした。
【0153】
(7)トナー粒子の円形度の測定
シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて23℃、60%RHの環境下で測定を行った。円相当径0.60μm〜400μmの範囲内の粒子を測定し、そこで測定された粒子の円形度を下記式(3)により求め、更に円相当径3μm以上400μm以下の粒子において、円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義した。
円形度a = L/L (3)
〔式中、Lは粒子投影像と同じ面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長を示す。〕
【0154】
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水200〜300ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波発振機で2分間分散し、分散液濃度を0.2〜1.0万個/μlとして粒子の円形度分布を測定した。超音波発振機としては、例えば以下の装置を使用し、以下の分散条件を用いた。
【0155】
装置:
UH−150(株式会社エス・エム・テー社製)
分散条件:
OUTPUT レベル:5
コンスタントモード
【0156】
測定の概略は以下の通りである。試料分散液を、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させた。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラをフローセルに対して相互に反対側に位置するように装着した。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子はフローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影され
た。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。それぞれの粒子の2次元画像の投影像の面積及び周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出した。
【0157】
得られた現像スリーブA1について評価を行った。評価にあたってはキヤノン社製電子写真プリンターLBP−1820用のEP−62カートリッジをウレタン製規制ブレード仕様に改造したものを用いた。上記現像スリーブA1をカートリッジに装着可能なように、該現像剤担持体A1にマグネット及びフランジを取り付け、上記EP−62改造カートリッジに装着した。上記プロセスカートリッジに上記現像剤Aを充填し、LBP−1820により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、及び30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、5%印字パターンを用いた。上記各環境における画像サンプリングポイントを10枚、100枚、500枚、1,000枚、2,000枚、及び10,000枚画出し時とした。各画像サンプリングポイントにおいて、ベタ黒、ハーフトーン(ゴースト評価兼用)、ベタ白、及び画像濃度測定用の5mm角のベタ黒を有する文字パターンをサンプリングし評価した。
【0158】
評価は次のように行った。
(1)5mm角(■)又は5mm丸(●)の画像濃度
文字パターン(又は文字チャート)の各所に、5mm角の正方形のベタ黒画像(■)を配したものを出力し、所定の場所10箇所の画像濃度を測定し、その平均値を5mm角画像濃度とした。又は、上記5mm角の画像の代わりに5mm径の丸形のベタ黒画像(●)を廃したものを出力し、5mm丸画像濃度を得た。画像濃度の測定は、反射濃度計RD918(マクベス製)を用いた。
【0159】
(2)ベタ黒画像濃度
全面ベタ黒を出力し、上記(1)で行ったのと同様に、所定の場所10箇所の画像濃度を測定し、その平均値をベタ黒画像濃度とした。測定は同様に、反射濃度計RD918(マクベス社製)を用いた。5mm角(■)又は5mm丸(●)の画像濃度が優れていても現像剤担持体に担持されている現像剤の状態(摩擦帯電量、現像剤担持量)によっては、現像される現像剤が不足し、ベタ黒画像の濃度が5mm角又は5mm丸の画像濃度よりも小さな値となることがある。
【0160】
(3)ゴースト(スリーブゴースト)
プリンターの出力画像(複写機の場合は画像チャート)において、画像先端の現像スリーブ1周分に相当する領域を白地にベタ黒の象形画像(■や●など)を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用い、ハーフトーン上に象形画像のゴーストがどのように出現するかのランク付けを以下の評価基準に従い行った。(ポジゴーストとは、ハーフトーンより画像濃度が高いゴーストを示し、ネガゴーストはハーフトーンよりも画像濃度の低いゴーストを示す。)
【0161】
(評価基準)
A:ゴーストなし
B:上記画像ではゴーストがわずかに目視で確認できるが、実用画像では問題のないレベル。
C:ゴーストが目視で明確に確認される。実用下限。
D:ゴーストがはっきり濃淡として現れる。反射濃度計で濃度差が測定可能。実用上問題あり。
E:ゴーストがスリーブ2周分又はそれ以上にわたって現れている。
【0162】
(4)ハーフトーンむら
ハーフトーン画像及びベタ黒画像を出力し、画像の一様性、特に画像形成進行方向に沿って現れる、スジ状又は帯状のムラ(濃淡差)の発生の有無を下記評価基準に従い評価した。なお、ゴースト及びブロッチ要因による画像濃度ムラに関しては除外して評価した。
【0163】
(評価基準)
A:画像上、全く確認されない。
B:ハーフトーン画像上で軽微な濃度差は見られるが、実用的には問題なし。
C:ハーフトーン画像上に目視で濃度差のわかるスジ又は帯が確認される。実用下限。
D:ハーフトーン画像上に反射濃度計で明確に測定できる濃度差がスジ又は帯状に現れる。グラフィック画像では問題となるレベル。
E:ベタ黒画像でかなりはっきり白抜けとなって現れるレベル。
【0164】
(5)ブロッチ
上記(4)で得られたハーフトーン画像又はベタ黒画像上に現れる、斑点状、さざ波状、又は絨毯状のブロッチ画像の発生を、下記評価基準に従い評価した。
【0165】
A:画像上、スリーブ上(トナーがコーティングされている状態を観察)ともに発生なし。
B:スリーブ上にはわずかにブロッチが確認されるが、画像上には影響が出ないレベル。C:ハーフトーン画像上の一部にわずかにブロッチ画像が現れるレベル。
D:ハーフトーン画像又はベタ黒画像上の一部に明確なブロッチが現れるレベル。
E:ほぼ全面にブロッチが現れている。
【0166】
(6)カブリ
現像適性条件におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、(ベタ白画像の反射率の最悪値−未使用転写紙の反射率の最高値)をカブリ濃度Dfとした。反射率はTC−6DS(東京電色製)で測定した。ここで、測定値を目視で判断した場合、1.5以下は目視ではほとんど確認できないレベル、2.0〜3.0程度はよく見ると確認できるレベル、4.0を超えると一見してカブリが確認できるレベルである。これを下記評価基準に従いA〜Eランクに分類した。
【0167】
A:Df ≦ 2.0
B:2.0 < Df ≦ 3.0
C:3.0 < Df ≦ 4.0
D:4.0 < Df ≦ 5.0
E:5.0 ≦ Df
【0168】
各環境下における上記各評価の結果を表1−1に示す。
【0169】
また、上記現像スリーブA1について、初期における現像剤の摩擦帯電量に関して調査した。測定は新たな現像スリーブA1のサンプルを用いて行った。スリーブ上の現像剤のトリボは、塗布粒子の影響が出て比較が難しいため、L/L環境及びH/H環境において、感光体上にベタ黒画像を作成し、その現像剤トリボを吸引法にて測定した。測定は、後述する比較例1及び2で用いた現像スリーブA2及びA3で最も画像濃度の低下が目立った、画出し開始から100枚目の時点で比較した。この結果を表2に示す。表中、Q/Mは、現像剤の単位質量あたりの電荷量(摩擦帯電量)を示し、M/Sは、現像スリーブの単位面積あたりの現像剤担持質量を示す。
【0170】
〈比較例1−1〉
実施例1で用いた現像スリーブA2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記EP−62改
造カートリッジに装着し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1−2及び表2に示す。
【0171】
〈比較例1−2〉
体積平均粒径4.5μmのシリコーン樹脂粒子を、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌して均一に分散させることにより分散液A3を得た。得られた分散液A3を、実施例1と同様の方法により現像スリーブA2上に塗布して、上記シリコーン樹脂粒子を現像スリーブA2表面に付着させて、現像スリーブA3を得た。上記現像スリーブA3について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1−3及び表2に示す。
【0172】
【表1−1】

【0173】
【表1−2】

【0174】
【表1−3】

【0175】
【表2】

【0176】
現像スリーブA1は、画出し初期において両環境ともに画像濃度低下は発生せず、ゴースト画像、ハーフトーンむらの発生もなく良好な画像が得られた。これに対し、現像スリーブA2は画出し初期において画像濃度低下が発生し、また全環境でゴースト画像が発生していた。また現像スリーブA3も画出し初期の画像濃度低下を発生し、更にハーフトーンむらが現像スリーブA2よりも劣っていた。またL/L初期において軽度のブロッチ画像が発生していた。ただし、A2及びA3いずれのサンプルにおいても、画出しが進むにつれて画像の不具合は改善し、2,000枚時点では、いずれも良好な画像となった。その後、カートリッジ保証枚数の10,000枚まで良好な画像が得られた。
【0177】
また、表2の結果より、黒鉛化粒子を塗布したサンプルA1においては、適正なQ/M及びM/Sを有しており、これが良好な評価結果につながっていると考えられる。これに対し、現像スリーブA2及びA3においては、L/L環境でチャージアップ現象が起きていると考察できる。例えば現像スリーブA2はQ/Mが高いにもかかわらずM/Sが低い値となっている。これについて、現像スリーブA2上では現像剤がその下層部においてスリーブ上に鏡映力によりトラップされているため、上層部の現像剤が電荷を持ちづらい状態になっており、このため潜像上に現像されにくくなり、よってM/Sが小さくなるものと考えられる。また、現像スリーブA3においては、シリコーン粒子が絶縁性であるため現像剤がトリボを持ちにくく、更にシリコーン粒子が弱ネガ性であることも現像剤のトリボが不十分となる一因であると推察できる。
【0178】
またH/H環境では、その環境ゆえに現像剤の摩擦帯電性に若干の低下は見られるが、現像スリーブA1においては、一般に黒鉛化粒子は導電性を有することと、樹脂と比較して表面に官能基がないために吸湿性が低いことが摩擦帯電性を保持できる要因となっていると考えられる。現像スリーブA2、A3については、摩擦帯電性が不十分であるために十分な現像性が得られてないと考えられる。画出し耐久を進めていくと、現像剤の攪拌により繰り返しの摩擦帯電が行われていき、結果として十分且つ適正なトリボを保持するようになる。
【0179】
更に、上記現像スリーブA1及びA3を用いた評価を画出し2,000枚まで行ったところで、現像スリーブ上から現像剤を吸引採取して観察したところ、その中に塗布粒子(黒鉛化粒子又はシリコーン樹脂粒子)はほとんど見られなかった。現像剤を吸引採取した後の現像スリーブ上についても観察を行ったが、塗布粒子はほとんど付着してなかった。
【0180】
〈実施例2〉
上記実施例1並びに比較例1及び2の現象を明確化するために次のテストを行った。実
施例1で用いたアルミニウム合金製円筒管に、#150の球状ガラスビーズを用いて、図9に模式的に示すサンドブラスト装置によるサンドブラスト処理を行った。サンドブラスト後の円筒管の表面粗さは、平均値でRa=1.05(μm)、Rz=10.2(μm)であった。このサンプルを「現像スリーブB2」とした。
【0181】
サンドブラスト処理を施したアルミニウム合金製円筒管(現像スリーブB2)上に、実施例1と同様にスプレー塗布により黒鉛化粒子Aの分散液Aを塗布してこの黒鉛化粒子Aを付着させた。更に乾燥後、スリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子Aを均した。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブB1」とした。このときの黒鉛化粒子Aの付着質量は5,500mg/mであった。得られた現像スリーブB1を上記EP−62改造カートリッジに装着し、実施例1と同様の方法により、5mm角の画像濃度及びブロッチの評価を10枚、100枚、200枚、500枚、1,000枚画出し時に行った。画出し環境は23℃/60%RH(N/N)とした。結果を表3に示す。
【0182】
〈比較例2〉
実施例2で用いた現像スリーブB2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記EP−62改造カートリッジに装着し、実施例2と同様の画出し評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0183】
【表3】

【0184】
ブラスト処理をしたままの現像スリーブB2においては、初期からさざ波状のブロッチが発生し、且つ画像濃度も低かった。これに対し、黒鉛化粒子Aを塗布したスリーブB1においては、初期では画像濃度は高く、さざ波状のブロッチは発生しなかった。しかしながら画出しが進んでいくと徐々に画像濃度低下が発生した。現像スリーブ上のトナーを回収し、顕微鏡で現像剤中の黒鉛化粒子A及び現像スリーブ上の黒鉛化粒子Aを確認したが、きわめて微量しか存在しなかった。これらのことから実施例1においても黒鉛化粒子Aを塗布したことによる効果が発揮されていたことが明確となった。更に実施例1においては、画出し初期の特性は黒鉛化粒子Aの塗布で改善されることに加え、現像スリーブ上には、導電性の樹脂被覆層がコートされていることから、現像剤の循環が定常となり、現像剤のトリボが立ち上がった画出し耐久中盤及び後半においても、良好な画像が得られることになる。
【0185】
〈実施例3〉
現像スリーブの基体としてアルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径20mmφの片側フランジ付きの円筒管を用意した。この円筒管に実施例2で用いたサンドブラスト装置を用いてブラスト処理を行った。ブラスト砥粒としては、#100の球状ガラスビーズを用い、ブラスト後の算術平均粗さの平均値がRa=1.35μmとなるように処理を行った。ブラスト処理後の円筒管を洗浄した後、メッキ処理を行った。まずメッキの前処理として、ブラストスリーブの表面にジンケート処理を行い、表面に亜鉛を付着させた。この
ジンケート処理には、市販のジンケート処理剤(商品名:シューマK−102;日本カニゼン株式会社製)を用いた。処理後の円筒管をモリブデン酸溶液中に浸漬し、表面に5μm厚のモリブデン層を形成した。このようにモリブデン酸によるメッキを施した後のスリーブの表面粗さを測定したところ、算術平均粗さは平均値で、Ra=1.31μm、Rz=15.2(μm)であった。このスリーブサンプルを「現像スリーブC2」とした。
【0186】
次に、表11に示すような体積平均粒径3.8μmの球状の黒鉛化粒子Bを10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散することにより分散液Bを得た。実施例1で用いたスプレー装置を用い、現像スリーブC2のメッキ層上に上記分散液Bを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子Bを均した。このときの黒鉛化粒子Bの付着質量は6,000mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブC1」とした。黒鉛化粒子Bの付着状態を、超深度形状測定顕微鏡VK8500(キーエンス社製)を用いて観察したところ、実施例1の場合と同様に、スリーブの凸部を除いては、黒鉛化粒子が均一に広がり且つほぼ全領域を覆っていた。
【0187】
得られた現像スリーブC1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、次のように作製した。
【0188】
スチレン−ブチルアクリレート−無水マレイン酸ハーフエステル系樹脂
100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−2-エチルヘキシルアクリレート−2-アクリルアミド-
2-メチルプロパンスルホン酸の75:10:15共重合体;Mw=20,000)
2質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
1質量部
ポリエチレン系ワックス 5質量部
【0189】
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が6.3μm程度になるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行い、D4=6.2μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が19.1%、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.1%のトナー粒子Bを得た。このトナー粒子の円形度は、0.928であった。このトナー粒子Bを100質量部に対して、シランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理したコロイダルシリカ1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Bを得た。
【0190】
キヤノン社製電子写真プリンターLBP−950用のEP−72カートリッジを用いて画出し評価を行った。現像スリーブC1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブC1にマグネット及びフランジを取り付け、上記EP−72カートリッジに装着した。更に、上記プロセスカートリッジに現像剤Bを充填し、LBP−950により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、5%印字パターンを用いて実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表4に示す。
【0191】
〈比較例3〉
実施例3で用いた現像スリーブC2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記EP−72改
造カートリッジに装着し、実施例3と同様の画出し評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0192】
【表4】

【0193】
現像スリーブC2を用いた比較例3では、画出し初期において画像濃度低下、ゴースト、ハーフトーンムラなどの項目において現像スリーブC1に劣った。L/L環境下の画出し初期には若干ブロッチも見られた。モリブデンメッキスリーブは、トナーの摩擦帯電性を調整し、チャージアップの発生を抑制することが可能であるが、特にH/H環境では初期の摩擦帯電性が不十分である。実施例3では黒鉛化粒子のH/Hにおける摩擦帯電性が良好であることから、初期における画像性能低下を補うことが可能となった。
【0194】
〈実施例4〉
現像スリーブの基体としてアルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径20mmφの片側フランジ付きの円筒管を用意した。この円筒管に実施例2で用いたサンドブラスト装置を用いてブラスト処理を行った。ブラスト砥粒としては、#100の球状ガラスビーズを
用い、ブラスト後の算術平均粗さの平均値がRa=1.55μmとなるように処理を行った。ブラスト処理後の円筒管を洗浄した後、メッキ処理を行った。まずメッキの前処理として、ブラストスリーブの表面にジンケート処理を行い、表面に亜鉛を付着させた。このジンケート処理には、市販のジンケート処理剤(商品名:シューマK−102;日本カニゼン株式会社製)を用いた。処理後の円筒管をNi−Pメッキ液中に浸漬して表面に6μm厚の無電解Ni−Pメッキ層を形成した。Ni−Pメッキ層中のP濃度は10.3質量%で行った。無電解Ni−Pメッキ液としては、市販のメッキ液(商品名:S−754;日本カニゼン株式会社製)を用いた。このようにNi−Pメッキを施した後のスリーブの表面粗さを測定したところ、算術平均粗さは平均値で、Ra=1.48μm、Rz=16.8(μm)であった。このスリーブサンプルを「現像スリーブD2」とした。
【0195】
次に、表11に示すような体積平均粒径6.1μmの球状の黒鉛化粒子Cを10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散することにより分散液Cを得た。実施例1で用いたスプレー装置を用い、現像スリーブC2のメッキ層上に上記分散液Cを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子Cを均した。このときの黒鉛化粒子Cの付着質量は5,400mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブD1」とした。
【0196】
得られた現像スリーブD1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、次のように作製した。
【0197】
ポリエステル系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
1質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−ブチルアクリレート−2-アクリルアミド-2-メチルプ
ロパンスルホン酸の75:15:10共重合体;Mw=27,000)
2質量部
エステル系ワックス 3質量部
ポリエチレン系ワックス 2質量部
【0198】
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が6.3μm程度となるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行い、D4=6.4μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が17.2%、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.2%のトナー粒子Cを得た。このトナー粒子Cの円形度は0.931であった。このトナー粒子Cを100質量部に対して、シランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理したコロイダルシリカ1質量部と、チタン酸ストロンチウム微粉末0.5質量部とを添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Cを得た。
【0199】
キヤノン社製デジタル複写機IR−2000用のカートリッジを用いて画出し評価を行った。現像スリーブD1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブD1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、上記IR−2000用カートリッジに装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Cを充填し、IR−2000により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%文字チャートを用いて実施例1と同様
に画出し評価を行った。結果を表5に示す。
【0200】
〈比較例4〉
実施例4で用いた現像スリーブD2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記IR−2000用カートリッジに装着し、実施例4と同様の画出し評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0201】
【表5】

【0202】
黒鉛化粒子Cを塗布していない現像スリーブD2においては、L/L環境の初期においてさざ波状のブロッチが発生し、画像濃度低下も現れた。またH/H環境においては、きついポジゴーストが発生していた。耐久画出しを続けるにつれこれらの現象は解消の方向に向かい、実用上問題のないレベルとなった。これに対し、黒鉛化粒子Cを塗布した現像スリーブD1においては、初期の現象については良好であった。本実施例で用いた現像剤とNi−Pメッキコートスリーブの組み合わせ(現像スリーブD2を用いた比較例4)においては、初期にチャージアップしやすい傾向があり、比較例4のような画像性能となったが、黒鉛化粒子Cの作用(現像スリーブD1を用いた実施例4)により初期の性能を改
善できた。現像剤の攪拌が十分に進んだ画出し耐久後においては本来の現像剤とNi−Pメッキコートスリーブの組み合わせの効果が現れ、両者はほぼ同等の画質となった。
【0203】
〈実施例5〉
以下の配合比で現像剤担持体の樹脂被覆層用の塗料を作製した。
フェノール樹脂中間体(Mw=1500)の50質量%メタノール溶液
2000質量部
体積平均粒径4.1μmの結晶性グラファイト
450質量部
導電性カーボンブラック 50質量部
体積平均粒径11.5μmの架橋PMMA球状粒子 100質量部
上記構造式(1)で表される第四級アンモニウム塩化合物 100質量部
イソプロピルアルコール 900質量部
メタノール 900質量部
【0204】
フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の半量、結晶性グラファイト及びカーボンブラックを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。また、メタノール900質量部に、上記構造式(1)の第四級アンモニウム塩化合物100質量部を加え、十分に攪拌し、第四級アンモニウム塩化合物をメタノールに溶解させた。更に、フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の残りの半量、PMMA球状粒子及びイソプロピルアルコールを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。次いで、これら3種類の分散液を混合し、ホモジナイザーにて均一に攪拌し、現像スリーブ塗工用の塗料Bを得た。
【0205】
次に、この塗料Bを用いて現像スリーブの塗工を行った。現像スリーブの基体には、アルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径20mmφの片側フランジ付きの円筒管を用意した。実施例1と同様に、円筒管の両側にマスキングを施し、図8に示す装置を用いて塗料Bの塗工を行った。即ち、円筒管の両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させ、円筒管を一定速度で回転させた状態で、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料Bを噴射させることによりスプレー塗工を行った。塗工後、更に150℃に設定された通風式乾燥機内に上記円筒管を30分放置し、乾燥及び硬化を行い樹脂被覆層を形成させた。この時の樹脂被覆層の付着質量は、約11,000mg/mであり、膜厚測定値は、8.4μmであった。樹脂被覆層の表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところ、平均値でRa=1.45μm、Rz=15.3(μm)であった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブE2」とした。
【0206】
次に、表11に示すような体積平均粒径2.5μmの黒鉛化粒子Dを、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散させることにより分散液Dを得た。実施例1と同様、図8に示すスプレー装置を用い、現像スリーブE2の樹脂被覆層上に分散液Dを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。このときの黒鉛化粒子Dの付着質量は6,500mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブE1」とした。
【0207】
得られた現像スリーブE1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0208】
スチレン−ブチルアクリレート系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
1質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−ブチルアクリレート−2-アクリルアミド-2-メチルプ
ロパンスルホン酸の77:13:12共重合体;Mw=18,000)
3質量部
ポリエチレン系ワックス 4質量部
【0209】
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が6.4μm程度となるように粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行った。更に、図10に示すような、分散ローターとライナーとを有するトナー球形化装置を用いて、上記分級品の球形化処理を行った。この球形化処理により、円形度が0.944であり、重量平均粒径D4=6.8μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が16.3%、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.2%のトナー粒子Dを得た。このトナー粒子Dを100質量部に対して、シランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理したコロイダルシリカ1質量部と、チタン酸ストロンチウム微粉末0.5質量部とを添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Dを得た。
【0210】
キヤノン社製デジタル複写機IR−2000用のカートリッジを用いて画出し評価を行った。現像スリーブE1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブE1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、上記IR−2000用カートリッジに装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Dを充填し、IR−2000により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%文字チャートを用いて実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表6に示す。
【0211】
〈比較例4〉
実施例5で用いた現像スリーブE2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記IR−2000用カートリッジに装着し、実施例5と同様の画出し評価を行った。評価結果を表6に示す。
【0212】
【表6】

【0213】
球形化処理がなされたトナー粒子は、表面が平滑化されやすいことと、粉砕しただけのトナー粒子に比べて磁性体がより内包化されやすいことが観察されることから、現像剤の転写性が向上し、その効果によって現像剤の消費量を抑制することが可能である。しかしながら、現像剤の帯電量が大きくなりすぎてチャージアップを生じることがあるという短所も持っている。実施例5及び比較例5では、この短所を補うため、現像スリーブで現像剤の摩擦帯電量を抑制する目的で、フェノール樹脂に第四級アンモニウム塩化合物を混合した塗料を基体に塗布し熱硬化させた樹脂被覆スリーブを用いている。この樹脂被覆スリーブの効果により耐久的な使用におけるチャージアップ現象などの不具合に関しては対処可能である。しかしながら、この系においても初期の摩擦帯電が不安定化しやすく、その結果、比較例5に見られるように、画出し初期にゴースト及びハーフトーンムラが発生してしまう。実施例5では黒鉛化粒子Dの塗布により、画出し初期の現像剤の摩擦帯電性が安定し、良好な結果を得ることができた。
【0214】
〈実施例6〉
以下の配合比で現像剤担持体の樹脂被覆層用の塗料を作製した。
フェノール樹脂中間体(Mw=1500)の50質量%メタノール溶液
3000質量部
体積平均粒径4.1μmの結晶性グラファイト 450質量部
導電性カーボンブラック 50質量部
体積平均粒径5.5μmの炭化ホウ素粒子 150質量部
上記構造式(10)で表される第四級アンモニウム塩化合物 150質量部
イソプロピルアルコール 950質量部
メタノール 950質量部
【0215】
フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の半量、結晶性グラファイト及びカーボンブラックを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。また、メタノール950質量部に、上記構造式(10)の第四級アンモニウム塩化合物150質量部を加え、十分に攪拌し、第四級アンモニウム塩化合物をメタノールに溶解させた。更に、フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の残りの半量、炭化ホウ素粒子及びイソプロピルアルコールを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用い、ジルコニアビーズにて上記混合物のビーズ分散を行った。次いで、これら3種類の分散液を混合し、ホモジナイザーにて均一に攪拌し、現像スリーブ塗工用の塗料Cを得た。
【0216】
次に、この塗料Cを用いて現像スリーブの塗工を行った。現像スリーブの基体には、アルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径32mmφの片側フランジ付きの円筒管を用いた。実施例1と同様に、円筒管の両側にマスキングを施し、図8に示す装置を用いて塗料Cの塗工を行った。即ち、円筒管の両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させ、円筒管を一定速度で回転させた状態で、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料Cを噴射させることによりスプレー塗工を行った。塗工後、更に150℃に設定された通風式乾燥機内に上記円筒管を30分放置し、乾燥及び硬化を行い樹脂被覆層を形成させた。この時の樹脂被服層の付着質量は、約35,000mg/mであり、膜厚測定値は16.5μmであった。樹脂被覆層の表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところ、平均値でRa=0.61μm、Rz=5.8(μm)であった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブF2」とした。
【0217】
次に、表11に示すような体積平均粒径1.5μmの黒鉛化粒子Eを、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散させることにより分散液Eを得た。実施例1と同様、図8に示すスプレー装置を用い、現像スリーブF2の樹脂被覆層上に分散液Eを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。このときの黒鉛化粒子の付着質量は5,800mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブF1」とした。
【0218】
得られた現像スリーブF1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0219】
スチレン−ブチルアクリレート系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
荷電制御剤(コピーブルー) 3質量部
ポリエチレン系ワックス 4質量部
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次に機械式の微粉砕装置(ターボミル)を用いて重量平均粒径(D4)が6.4μm程度となるま
で粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行った。この分級品の円形度は0.937であり、重量平均粒径D4=7.4μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が14.3%、12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.6%のトナー粒子Eを得た。このトナー粒子Eを100質量部に対し、アミノシランカップリング剤及びアミノ変性シリコーンオイルで処理したコロイダルシリカ1.2質量部と、チタン酸ストロンチウム微粉末2.5質量部とを添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Eを得た。
【0220】
キヤノン社製デジタル複写機GP−605用現像装置を用いて画出し評価を行った。現像スリーブF1を上記現像装置に装着可能なように、該現像スリーブF1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、これをGP−605用現像装置に装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Eを充填し、GP−605用現像装置により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃/80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%印字チャートを用いて実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表7に示す。
【0221】
〈比較例6〉
実施例6で用いた現像スリーブF2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記GP−605用現像装置に装着し、実施例6と同様の画出し評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0222】
【表7】

【0223】
負帯電性の現像剤は原材料がほとんどすべて負に帯電しやすい傾向があることから、一般的にチャージアップ現象を発生しやすい。一方、正帯電性の現像剤は、通常、荷電制御剤(荷電制御樹脂)のみ又は加えて正帯電性の外添剤程度しか正に帯電しやすい材料がないことから、チャージアップを起因とするゴースト、ブロッチなどは発生し難い。本実施例では現像剤担持体として、フェノール樹脂及び結晶性グラファイトからなる樹脂被覆層を有するものを用いている。なお、ここで第四級アンモニウム塩化合物は、フェノール樹脂との作用により樹脂を負帯電性とし正帯電性現像剤の摩擦帯電量を高くする目的で添加されるものである。この樹脂被覆層を有する現像剤担持体では未使用の状態においては、一部では導電性の結晶性グラファイトが表面に存在するものの、一部においては樹脂によって結晶性グラファイトが覆われている。第四級アンモニウム塩の添加により正帯電性現像剤の摩擦帯電量を上げようと試みても、導電性が不十分である場合、現像剤に十分な正電荷を保持させることができないことがある。現像スリーブF2を用いた比較例6においては、初期の画像濃度の立ち上がりが遅く、ハーフトーン画像にスジが発生し、ネガゴーストが発生しているが、これは正帯電性現像剤の摩擦帯電電荷が不十分であるためであり、黒鉛化粒子を表面に塗布し導電性を確保した、現像スリーブF1を用いた実施例6では
そのような現象を押さえることが可能であった。通常、樹脂被覆層は耐久使用の過程で、現像剤の作用により表面の樹脂が磨耗し結晶性グラファイトの表面での存在比率が多くなることから導電性が確保され、十分な画像性能が得られるようになる。
【0224】
〈実施例7〉
現像スリーブの基体としてアルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径24.5mmφの片側フランジ付きの円筒管を用意した。この円筒管に実施例2で用いたサンドブラスト装置を用いてブラスト処理を行った。ブラスト砥粒としては、#200の球状ガラスビーズを用い、ブラスト後の算術平均粗さの平均値がRa=0.85μmとなるように処理を行った。ブラスト処理後の円筒管を洗浄した後、メッキ処理を行った。まずメッキの前処理として、ブラストスリーブの表面にジンケート処理を行い、表面に亜鉛を付着させた。このジンケート処理には、市販のジンケート処理剤(商品名:シューマK−102;日本カニゼン株式会社製)を用いた。処理後の円筒管をNi−Pメッキ液中に浸漬して表面に7μm厚の無電解Ni−Pメッキ層を形成させた。Ni−Pメッキ層中のP濃度は10.3質量%で行った。無電解Ni−Pメッキ液としては、市販のメッキ液(商品名:S−754;日本カニゼン株式会社製)を用いた。このようにNi−Pメッキを施した後のスリーブの表面粗さを測定したところ、算術平均粗さは平均値で、Ra=0.65μm、Rz=5.5(μm)であった。このスリーブサンプルを「現像スリーブG2」とした。
【0225】
次に、表11に示すような体積平均粒径1.2μmの黒鉛化粒子Fを、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散させることにより分散液Fを得た。実施例1と同様、図8に示すスプレー装置を用い、現像スリーブG2のメッキ層上に分散液Fを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。このときの黒鉛化粒子の付着質量は5,200mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブG1」とした。
【0226】
得られた現像スリーブG1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0227】
ポリエステル系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
1質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−ブチルアクリレート−2-アクリルアミド-2-メチルプ
ロパンスルホン酸の77:13:12共重合体;Mw=55,000)
2質量部
ポリエチレン系ワックス 5質量部
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が7.2μm程度となるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行い、D4=7.4μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が14.9%、12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.4%のトナー粒子Fを得た。このトナー粒子Fの円形度は0.924であった。このトナー粒子Fを100質量部に対し、シランカップリング剤で疎水化処理したコロイダルシリカ1.2質量部と、チタン酸ストロンチウム微粉末3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Fを得た。
【0228】
キヤノン社製デジタル複写機IR−6000用のカートリッジを用いて画出し評価を行
った。現像スリーブG1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブE1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、上記IR−6000用カートリッジに装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Fを充填し、IR−6000により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%文字チャートを用いて、評価ポイントを10枚、100枚、1,000枚、2,000枚及び5,000枚画出し時とした以外は実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表8に示す。
【0229】
〈比較例7〉
実施例7で用いた現像スリーブG2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記IR−6000用カートリッジに装着し、実施例7と同様の画出し評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0230】
【表8】

【0231】
本実施例7及び比較例7で用いている、図3に示されるような磁性規制部材が現像剤担持体と一定間隙で離間して現像剤塗布量を規制するタイプの現像装置においても、Ni−
Pメッキを被覆層とした現像剤担持体においては、初期においてチャージアップに関わる画像の不具合が発生しやすい。黒鉛化粒子Fを塗布していない現像スリーブG2においては、L/L環境の初期において斑点状のブロッチが発生し、画像濃度低下も現れた。またH/H環境においてはきついネガゴーストが発生していた。画出し耐久が進むにつれこれらの現象は次第に解消の方向に向かい、実用上問題のないレベルとなった。これに対し、黒鉛化粒子Fを塗布した現像スリーブG1においては、初期の画像についても良好であり不具合はなかった。画出し耐久が進むにつれ、両者はほぼ同等の画質となった。
【0232】
〈実施例8〉
以下の配合比で現像剤担持体の樹脂被覆層用の塗料を作製した。
フェノール樹脂中間体(Mw=1500)の50質量%メタノール溶液
2000質量部
体積平均粒径4.2μmの結晶性グラファイト 360質量部
導電性カーボンブラック 40質量部
体積平均粒径5.3μmの非晶質カーボン球状粒子 160質量部
イソプロピルアルコール 2200質量部
フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の半量、結晶性グラファイト及びカーボンブラックを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。また、フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の残りの半量、非晶質カーボン球状粒子及びイソプロピルアルコールを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。次いで、これらの分散液を混合し、ホモジナイザーにて均一に攪拌し、現像スリーブ塗工用の塗料Dを得た。
【0233】
次に、この塗料Dを用いて現像スリーブの塗工を行った。現像スリーブの基体には、アルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径が24.5mmφ片側フランジ付きの円筒管を用意した。実施例1と同様に円筒管の両側にマスキングを施し、図8に示す装置を用いて塗料Dの塗工を行った。即ち、円筒管の両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させ、円筒管を一定速度で回転させた状態で、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料Dを噴射させることによりスプレー塗工を行った。塗工後、更に150℃に設定された通風式乾燥機内に上記円筒管を30分放置し、乾燥及び硬化を行い樹脂被覆層を形成させた。この時の樹脂被服層の付着質量は約20,000mg/mであり、膜厚測定値は、12.6μmであった。樹脂被覆層の表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところ、平均値でRa=0.75μm、Rz=7.4(μm)であった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブH2」とした。
【0234】
次に、表11に示すような体積平均粒径2.9μmの黒鉛化粒子Gを、10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散させることにより分散液Gを得た。実施例1と同様、図8に示すスプレー装置を用い、現像スリーブH2の樹脂被覆層上に分散液Gを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。このときの黒鉛化粒子の付着質量は5,600mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブH1」とした。
【0235】
得られた現像スリーブH1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0236】
ポリエステル系樹脂 100質量部
マグネタイト 90質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
1質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−2-エチルヘキシルアクリレート−2-アクリルアミド-
2-メチルプロパンスルホン酸の75:18:7共重合体;Mw=15,000)
3質量部
ポリプロピレン系ワックス 4質量部
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次に機械式の粉砕装置(ターボミル)を用いて重量平均粒径(D4)が7.7μm程度となるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行った。この分級品の円形度は0.936であり、重量平均粒径D4=7.9μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が11.3μm、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が1.0%のトナー粒子Gを得た。このトナー粒子Gを100質量部に対し、シランカップリング剤で疎水化処理したコロイダルシリカ0.8質量部、及びチタン酸ストロンチウム微粉末2質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Gを得た。
【0237】
キヤノン社製デジタル複写機IR−6000用のカートリッジを用いて画出し評価を行った。現像スリーブH1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブH1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、上記IR−6000用カートリッジに装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Gを充填し、IR−6000により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%文字チャートを用いて、評価ポイントを10枚、100枚、1,000枚、2,000枚及び5,000枚画出し時とした以外は実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表9に示す。
【0238】
〈比較例8〉
実施例8で用いた現像スリーブH2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記IR−6000用カートリッジに装着し、実施例8と同様の画出し評価を行った。評価結果を表9に示す。
【0239】
【表9】

【0240】
機械式粉砕装置を用いた現像剤は、球形化処理を施された現像剤ほどではないにしろ、やや球形化処理を施した現像剤に近い状態となりチャージアップを発生しやすい。前述したように画出し初期においては、現像剤担持体の樹脂被覆層表面の結晶性グラファイトの存在比率が低めであるということから、現像スリーブH2を用いた比較例8においては初期のチャージアップに伴う画像の不具合が発生した。これに対し、黒鉛化粒子を塗布した現像スリーブH1を用いた実施例8においては、そのような初期における不具合は発生しなかった。
【0241】
〈実施例9〉
以下の配合比で現像剤担持体の樹脂被覆層用の塗料を作製した。
フェノール樹脂中間体(Mw=1500)の50質量%メタノール溶液
3000質量部
体積平均粒径3.8μmの結晶性グラファイト 450質量部
導電性カーボンブラック 50質量部
体積平均粒径5.5μmの炭化ホウ素粒子 200質量部
構造式(1)の第四級アンモニウム塩化合物 250質量部
イソプロピルアルコール 900質量部
メタノール 1300質量部
【0242】
フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の半量、結晶性グラファイト及びカーボンブラックを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。また、メタノール1300質量部に、上記構造式(1)の第四級アンモニウム塩化合物250質量部を加え、十分に攪拌し、第四級アンモニウム塩化合物をメタノールに溶解させた。更に、フェノール樹脂中間体のメタノール溶液の残りの半量、炭化ホウ素粒子及びイソプロピルアルコールを、ディスパーザーを用いて十分に混合した。横型のサンドミルを用いて、上記混合物のビーズ分散を行った。次いで、これら3種類の分散液を混合し、ホモジナイザーにて均一に攪拌し、現像スリーブ塗工用の塗料Eを得た。
【0243】
次に、この塗料Eを用いて現像スリーブの塗工を行った。現像スリーブの基体には、アルミニウム合金製で肉厚0.8mm、外径24.5mmφの片側フランジ付きの円筒管を用意した。実施例1と同様に、円筒管の両側にマスキングを施し、図8に示す装置を用いて塗料Eの塗工を行った。即ち、円筒管の両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させ、円筒管を一定速度で回転させた状態で、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料Eを噴射させることによりスプレー塗工を行った。塗工後、更に150℃に設定された通風式乾燥機内に上記円筒管を30分放置し、乾燥及び硬化を行い樹脂被覆層を形成させた。この時の樹脂被覆層の付着質量は約22,000mg/mであり、膜厚測定値は12.5μmであった。表面粗さ(算術平均粗さ)を測定したところ、平均値でRa=0.58μm、Rz=5.4μmであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブJ2」とした。
【0244】
次に、表11に示すような体積平均粒径1.0μmの黒鉛化粒子H、を10%の濃度となるようにメタノールに混合し、超音波をかけながら攪拌し均一に分散させることにより分散液Hを得た。実施例1と同様、図8に示すスプレー装置を用い、現像スリーブJ2の樹脂被覆層上に分散液Eを塗布して表面に付着させ、そのまま乾燥してメタノールを揮発させた。更にスリーブを低速で回転させながら、シルボン紙をスリーブに当接させ一定速度で移動させることにより付着した黒鉛化粒子を均した。このときの黒鉛化粒子の付着質量は5,200mg/mであった。この現像スリーブサンプルを「現像スリーブJ1」とした。
【0245】
得られた現像スリーブJ1を用い、画出しを行った。画出しに用いたトナー(現像剤)は、以下のように作製した。
【0246】
スチレン・ポリエステルのハイブリッド樹脂 100質量部
マグネタイト 60質量部
負荷電制御剤(ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のAl錯体)
2質量部
負荷電制御性樹脂(スチレン−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート−2-アク
リルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の65:20:5:10共重合体;Mw=45,000)
2質量部
ポリエチレン系ワックス 5質量部
上記材料を、ヘンシェルミキサーにて十分に混合した後、二軸式エクストルーダーにて溶融混練分散し、混練物を得た。これを冷却後、カッターミルで粗粉砕を行い、次にジェ
ット式の粉砕装置を用いて重量平均粒径(D4)が6.6μm程度となるまで粉砕した。次に多分割式の分級装置(エルボジェット)を用いて分級を行った。次に、図10に示す分散ローターとライナーを有するトナー球形化装置を用い、上記分級品の球形化処理を行った。この球形化処理により円形度が0.948であり、重量平均粒径D4=6.8μm、粒径6.35μm以下の粒子の割合(個数%)が15.6%m、粒径12.7μm以上の粒子の割合(質量%)が0.5%のトナー粒子Hを得た。このトナー粒子Hを100質量部に対し、シランカップリング剤及びシリコーンオイルで疎水化処理したコロイダルシリカ1質量部と、チタン酸ストロンチウム微粉末3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることにより一成分磁性現像剤Hを得た。
【0247】
キヤノン社製デジタル複写機IR−6000用のカートリッジを用いて画出し評価を行った。現像スリーブJ1をカートリッジに装着可能なように、該現像スリーブJ1にマグネット及び反対側フランジを取り付け、上記IR−6000用カートリッジに装着した。更に、上記カートリッジに現像剤Hを充填し、IR−6000により画出しを行った。画出しは、15℃/10%RH(L/L)、23℃/60%RH(N/N)、及び30℃、80%RH(H/H)の3環境で行い、画出しには5%文字チャートを用いて、評価ポイントを10枚、100枚、1,000枚、2,000枚及び5,000枚画出し時とした以外は実施例1と同様に画出し評価を行った。結果を表10に示す。
【0248】
〈比較例9〉
実施例9で用いた現像スリーブJ2を(黒鉛化粒子を付着させずに)上記IR−6000用カートリッジに装着し、実施例8と同様の画出し評価を行った。評価結果を表10に示す。
【0249】
【表10】

【0250】
本実施例9及び比較例9においては、トナー粒子の球形化処理に加え、トナー粒子中のマグネタイトの内添量を減少させた一成分磁性現像剤を用いている。この方法により、現像剤の転写性を更に向上させるとともに、トナー消費量を更に減少させることが可能となる。しかしながら、トナー粒子表面のマグネタイト量が減少するため、より摩擦帯電電荷を持ちやすくなり、よりチャージアップしやすい傾向となっている。上記各例においては、現像剤担持体の樹脂被覆層を、前述のフェノール樹脂と第四級アンモニウム塩化合物を用いる効果により現像剤の摩擦帯電量を抑制する処方としているが、それでも現像スリーブJ2を用いた比較例9の初期においてはブロッチなどの画像の不具合が発生した。これに対し、黒鉛化粒子を塗布した現像スリーブJ1を用いた実施例9では、そのような画像不良は発生しなかった。画出し耐久が進んで現像剤が十分に攪拌され摩擦帯電量が安定した後においては、画像は両者ともに良好であった。このメカニズムについては実施例8等と同様である。
【0251】
表11に、各実施例で用いた黒鉛化粒子の一覧を示す。
【0252】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】現像剤担持体の樹脂被覆層上に黒鉛化粒子が担持されている様子の一例を表す模式図
【図2】現像剤担持体のメッキ層上に黒鉛化粒子が担持されている様子の一例を表す模式図
【図3】樹脂被覆層を有する現像剤担持体の構成の一例を示す模式図
【図4】メッキ層を有する現像剤担持体の一例を示す模式図
【図5】図4の表層部分を拡大した図
【図6】本発明の現像剤担持体が用いられる現像装置の一例を示す模式図
【図7】本発明の現像剤担持体が用いられる現像装置の他の一例を示す模式図
【図8】本発明の実施例で用いたスプレー塗工装置の模式図
【図9】本発明の実施例で用いたサンドブラストの模式図
【図10】トナーを球形化する装置の一例を示す模式図
【図11】図10の分散ローターの概略上面図
【符号の説明】
【0254】
1、33、35 基体
2、32 樹脂被覆層
3 粗し粒子
6 添加剤
31 黒鉛化粒子
34 メッキ層
501 感光ドラム
502 磁性規制ブレード
503 現像容器
504 仕切り部材
505、511 攪拌翼
506 金属円筒管(基体)
507 被覆層
508 現像スリーブ(現像剤担持体)
509 磁石
510 現像ローラー
514 第一室
515 第二室
516 層厚規制ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持し、静電潜像を担持する静電潜像担持体に該現像剤を搬送するための現像剤担持体であって、
現像剤担持体上に担持される現像剤の量は現像剤層厚規制部材により規制され、
前記現像剤担持体は静電潜像が担持された静電潜像担持体に対向して配置され、静電潜像担持体との対向部の現像領域へ現像剤を担持搬送し、この現像剤により静電潜像担持体上の静電潜像を現像して可視化するための現像装置に用いられ、
前記現像剤担持体はその表面に、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子が担持されていることを特徴とする現像剤担持体。
【請求項2】
前記現像剤担持体は、少なくとも基体と、該基体の表面に形成された被覆層とを有し、更にこの被覆層表面に、前記少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を担持することを特徴とする請求項1記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記被覆層が導電性を有することを特徴とする請求項2記載の現像剤担持体。
【請求項4】
前記被覆層がメッキ層又は導電性粉末を含有する樹脂層であることを特徴とする請求項2又は3記載の現像剤担持体。
【請求項5】
静電潜像を担持する静電潜像担持体に対向して配置された現像剤担持体上に現像剤を担持し、現像剤層厚規制部材によって現像剤担持体上の現像剤の量を規制し、現像剤担持体と静電潜像担持体の対向部の現像領域へ現像剤担持体から現像剤を担持搬送し、この現像剤により静電潜像担持体上の静電潜像を現像して可視化する現像方法であって、
現像剤担持体が現像剤を担持するのに先立ち、現像剤担持体上に現像剤が存在しない状態で、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子を現像剤担持体表面に担持させ、その後、現像剤担持体上に現像剤を担持させて静電潜像担持体上の静電潜像を現像することを特徴とする現像方法。
【請求項6】
前記現像剤担持体は、少なくとも基体と、該基体の表面に形成された被覆層とを有し、現像剤担持体が現像剤を担持するのに先立ち、現像剤担持体上に現像剤が存在しない状態で、少なくとも表面が黒鉛化された微粒子が前記被覆層表面に担持されることを特徴とする請求項5記載の現像方法。
【請求項7】
前記被覆層が導電性を有することを特徴とする請求項6記載の現像方法。
【請求項8】
前記被覆層がメッキ層又は導電性粉末を含有する樹脂層であることを特徴とする請求項6又は7記載の現像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−119538(P2006−119538A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309817(P2004−309817)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】