説明

現像剤規制部材及び画像形成装置

【課題】帯電特性等の物性に優れ、現像剤を所望のように帯電させることのできる現像剤規制部材及びこの現像剤規制部材を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】電子写真方式による画像形成装置に備えられた現像剤担持体に当接して現像剤の層厚を規制すると共に摩擦帯電により前記現像剤を帯電させるところの、支持体2と金属製ブレード3とを有する現像剤規制部材1であって、前記金属製ブレード3は、耐食用材料から成り、かつ、前記現像剤担持体に当接する部分に、有機金属カップリング剤で処理して成る、0.5〜24(nC)の接触帯電量を有する表面層4を有することを特徴とする現像剤規制部材1、及び、この現像剤規制部材1を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤規制部材及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、現像剤を所望のように帯電させることのできる現像剤規制部材及びこの現像剤規制部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の現像方式は、一成分の現像剤を使用する方式と、トナーとキャリヤとの混合物である二成分の現像剤を使用する方式とに分類され、一成分の現像剤を使用する方式は、さらに、非磁性一成分タイプと磁性一成分タイプとに分類される。これらの一成分の現像剤を使用する方式において現像剤を帯電させるには、二成分の現像剤を使用する方式のように現像剤とキャリヤとを混合することによって現像剤を帯電させることはできないから、現像剤と現像剤以外の摩擦部材との摩擦による静電的な力が必要とされる。例えば、一成分の現像剤を使用する方式における帯電メカニズムとしては、現像剤と現像剤規制部材との摩擦帯電によるもの、現像剤同士の摩擦帯電によるもの、及び、現像剤と現像剤担持体との摩擦帯電によるものに分類することができる。一成分の現像剤を使用する方式においては、これらのメカニズムを組み合わせることにより、現像剤を帯電させている。
【0003】
例えば、従来の画像形成装置においては、図3に示すように、回転する現像剤担持体31に現像剤規制部材30のブレード34を接触させて現像剤担持体31の外周面における現像剤の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤を帯電させている。この現像剤規制部材30は、金属製ホルダ33と、この金属製ホルダ33に装着されるブレード34とから構成されている。金属製ホルダ33は、通常、所定の厚さを有する板状に形成され、その下部はブレード34を支持する支持部35に成っている。ブレード34は、適度な硬度とゴム弾性を有するウレタンゴム若しくはシリコーンゴム等に代表されるエラストマー又は金属を用いて、通常、所定の厚さを有する板状に形成され、金属製ホルダ33の支持部35に支持される(例えば、特許文献1〜3参照。)。そして、現像剤担持体31の外周面に、ブレード34の先端部又はその近傍が線接触又は面接触の状態で、所望の押圧力で、摺接する。
【0004】
このような従来の画像形成装置において、図示しない感光体に現像剤を供給するには、まず、現像剤がホッパから現像剤担持体31上に図示しない現像剤搬送ローラを介して搬送され、現像剤担持体31上に摺接する現像剤規制部材30によって現像剤薄層を均一に形成すると共に、現像剤を摩擦帯電により帯電させる。この際、現像剤同士も擦れ合うから、現像剤の帯電に寄与する。また、現像剤が磁性現像剤である場合、現像剤担持体31のスリーブとの摩擦によっても帯電する。こうして、帯電した現像剤の薄層は、感光ドラムと接触してその外周面上の静電潜像に静電的に結合され、潜像を可視化する。
【0005】
図3に示す従来の現像剤規制部材30は、上述したように現像剤担持体31に接することで現像剤担持体31上の現像剤の層厚を規制すると共に、現像剤を摩擦することにより現像剤を帯電させる。しかし、特許文献1〜3に記載の現像剤規制部材におけるブレードは、摩耗しやすく、現像剤を長期間に渡って安定して帯電させることはできないことがあった。また、これらの現像剤規制部材は、そのブレードと現像剤との摩擦による現像剤の帯電量は小さく、現像剤への帯電は、現像剤と現像剤担持体31、又は、現像剤同士の摩擦帯電による効果に依存することが多く、その結果、現像剤を十分にかつ安定して帯電させることができないことがあった。
【0006】
現像剤を十分にかつ安定して帯電させる技術として、現像剤担持体31に当接するブレード34にゴム等を使用し、これらのゴムに帯電機能を持たせた技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。例えば、特許文献4に記載の現像ブレードは、帯電量が0.5〜30μc/gであるシリコーン系ゴムからなるブレードと、ばね弾性を持つ金属からなるホルダーとを、一体化してなることを特徴とする。この現像ブレードによれば、現像剤を所望のように十分かつ安定して帯電させることができる。
【0007】
ところで、近年、画像形成装置は、高速化及び高精細化が要求されている。例えば、高精細化については、画像形成装置の解像度が、600dpi又は800dpiが主流となり、1200dpiの解像度を有する画像形成装置も少なくない。このような高精細化を実現した画像形成装置においては、これまで以上に、現像剤を十分にかつ安定して帯電させる必要がある。しかし、帯電機能を持たせたゴムにより現像剤担持体31のブレード34を作製しても、このような高精細化を実現した画像形成装置においては、現像剤を所望のように十分かつ安定して帯電させることができないことがあった。
【0008】
【特許文献1】特開平05−11584号公報
【特許文献2】特開平06−110365号公報
【特許文献3】特開平06−258926号公報
【特許文献4】特開2000−137380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、前記問題を解消することを目的とし、帯電特性等の物性に優れ、現像剤を所望のように帯電させることのできる現像剤規制部材及びこの現像剤規制部材を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、電子写真方式による画像形成装置に備えられた現像剤担持体に当接して現像剤の層厚を規制すると共に摩擦帯電により前記現像剤を帯電させるところの、支持体と金属製ブレードとを有する現像剤規制部材であって、前記金属製ブレードは、耐食用材料から成り、かつ、前記現像剤担持体に当接する部分に、有機金属カップリング剤で処理して成る、0.5〜24(nC)の接触帯電量を有する表面層を有することを特徴とする現像剤規制部材であり、
請求項2は、前記耐食用材料は、Crを11%以上含んだ鉄基合金であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤規制部材であり、
請求項3は、前記Crを11%以上含んだ鉄基合金は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項2に記載の現像剤規制部材であり、
請求項4は、前記ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項3に記載の現像剤規制部材であり、
請求項5は、前記表面層は、1〜500μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像剤規制部材であり、
請求項6は、前記有機金属カップリング剤は、チタネート系カップリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像剤規制部材であり、
請求項7は、前記有機金属カップリング剤は、アルミニウム系カップリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像剤規制部材であり、
請求項8は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像剤規制部材を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る現像剤規制部材によれば、現像剤規制部材を構成する耐食用材料で形成された金属製ブレードが、有機金属カップリング剤で処理して成る、0.5〜24(nC)の接触帯電量を有する表面層を有しているから、帯電特性等の物性に優れ、現像剤担持体に当接して、現像剤の層厚を所望の層厚に規制することができると共に、表面層と現像剤担持体及び/又は現像剤との摩擦帯電により、現像剤を所望のように帯電させることができる。
【0012】
また、この発明に係る画像形成装置によれば、この発明に係る現像剤規制部材を備えているから、所望の帯電量及び層厚で現像剤を現像剤担持体に担持させることができ、フィルミング等の問題が生じにくい良好な画像が長期間にわたって得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一例である画像形成装置10を図面に基づいて説明する。この発明に係る画像形成装置10は、図1に示されるように、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11例えば感光体と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11を帯電させる帯電手段12例えば帯電ローラと、像担持体11の上方に設けられ、像担持体11に静電潜像を形成する露光手段13と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に一定の層厚で現像剤22を供給し、静電潜像を現像する現像手段20と、像担持体11の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体11から転写紙16上に転写する転写手段14例えば転写ローラと、転写紙16の搬送方向の下流に設けられ、転写紙16に転写された現像剤22(静電潜像)を定着させる定着手段15例えば定着器と、転写紙16に転写されず像担持体11に残留した現像剤22及び/又は像担持体11に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段17とを備えている。すなわち、像担持体11は、その回転方向において、上流側から順に、クリーニング手段17、帯電手段12、露光手段13、現像手段20及び転写手段14によって、各作用を受ける。
【0014】
前記像担持体11は、従来公知の像担持体を用いることができ、少なくともその表面に設けられる感光層は、例えば、有機系、アモルファスシリコン、Se系合金又はこれらを組み合わせた材料等を用いて形成される。像担持体11が円筒状の場合は、像担持体11は、アルミニウム又はアルミニウム合金を押出し成型した後、表面に感光層等を形成する方法等の公知の製法により製造することができる。また、ベルト状の像担持体を用いることも可能である。前記帯電手段12は、前記像担持体11を帯電させることができればよく、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器、コロトロン帯電器等の帯電器を用いることができる。これらの中でも、帯電補償能力に優れる点で接触型帯電器が好ましい。前記露光手段13は、露光により像担持体11に静電潜像を形成することができればよく、例えば、像担持体11の表面に、半導体レーザ(LD)光、発光ダイオード(LED)光、液晶シャッタ(LCS)光等の光源、又はこれらの光源からポリゴンミラーを介して所望の像様に露光できる光学系機器等を用いることができる。前記転写手段14は、現像された静電潜像を像担持体11から転写紙16上に転写することができればよく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器、コロトロン転写帯電器等を用いることができる。これらの中でも、転写帯電補償能力に優れる点で接触型転写帯電器が好ましい。また、転写帯電器の他、剥離帯電器等を併用することもできる。前記定着手段15は、転写紙16に転写された現像剤22(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、熱ローラ定着器、オーブン定着器等の加熱定着器、圧力定着器等を用いることができる。前記クリーニング手段17としては、像担持体11上の現像剤22及び/又はゴミ等を除去することができればよく、公知のクリーニング装置等を用いることができる。
【0015】
この画像形成装置10は、像担持体11の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段17と帯電手段12との間又は転写手段14とクリーニング手段17との間に、備えていてもよい。除電手段は、例えば、タングステンランプ、LED等を用いることができ、光除電手段に用いる光質としては、例えば、タングステンランプ等の白色光、LED光等の赤色光等が挙げられ、照射光強度としては、通常、像担持体11の半減露光感度を示す光量の数倍〜30倍程度になるように出力が設定される。
【0016】
画像形成装置10における像担持体11、帯電手段12、露光手段13、転写手段14、定着手段15及びクリーニング手段17は、図1に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0017】
この画像形成装置10における前記現像手段20は、図1に示されるように、像担持体11に対向する位置に開口部を有し、現像剤22を収納する現像剤収納部21と、現像剤収納部21内に設けられ、現像剤22を均一に攪拌する攪拌機23と、現像剤収納部21の開口部に、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に現像剤22を一定の層厚で現像剤22を供給する回転可能な現像剤担持体24と、現像剤担持体24の上方に設けられ、現像剤担持体24に当接して現像剤22の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22を帯電させる現像剤規制部材1とを備えている。
【0018】
前記現像剤収納部21に収納される現像剤22、すなわち、この発明に係る画像形成装置10に使用される現像剤22としては、摩擦により帯電可能で、転写紙16に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。一成分系の現像剤は、一般に、樹脂と色剤とその他添加剤とを含み、樹脂は、定着方式に応じて選択される。熱定着方式の場合には、樹脂として、例えば、スチレン/アクリル系共重合体、スチレン/ブタジエン系共重合体が、圧力定着方式の場合には、例えば、ワックス類、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/ブタジエンラバー混合ワックス状樹脂等が選択される。色剤としては、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、各種染顔料等が用いられ、その他添加剤としては、例えば、帯電制御剤、導電制御剤、補強剤、離型剤等が用いられる。磁性現像剤の場合には、さらに、フェライト等の磁性粉を現像剤22の合計質量に対して数十質量%含有する。一成分系の現像剤は、通常、2〜8μC/g程度の帯電特性を有している。
【0019】
現像手段20における前記現像剤担持体24は、現像剤規制部材1と接触して、現像剤22を帯電させる。したがって、現像剤担持体24は、現像剤規制部材1と接触して、現像剤22を帯電させることができるように構成されている。このような現像剤担持体24として、例えば、円柱状又は円筒状の軸体(図示しない。)と、その外周面に形成された樹脂層(図示しない。)とを有する。
【0020】
現像剤担持体24の軸体は、良好な導電特性を有する材料で形成されていればよく、例えば、現像剤22として非磁性現像剤を使用する場合には中実の軸体又は中空の軸体が用いられ、一方、現像剤担持体24に現像剤22を非接触状態に配置し、現像剤22を現像剤担持体24に飛ばして現像剤担持体24に現像剤22を担持させるジャンピング方式等のような磁性現像剤を使用する場合には、マグネットローラを収納する空間を有する中空の軸体が用いられる。軸体は、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属材料で形成した所謂「芯金」とされる。また、軸体は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化したもの、又は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成されていてもよい。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂等が挙げられる。軸体の材料として、金属を選択する場合には、軸体は、剛性が高く、樹脂に比べて電気抵抗値の安定性が高いという利点を有し、一方、樹脂を選択する場合には、軸体は、耐リーク性が高く、半導電領域における抵抗の保持が容易であるという利点を有するから、用途等に応じて、所望の特性を有するように、軸体の材料を選択することができる。
【0021】
樹脂層は、後述する現像剤規制部材1と共に現像剤22を帯電させることができればよく、その材質、硬度及び強度に関して特に制限されるものではない。通常、樹脂層は、ゴム材質に導電性材料等を添加した材料で形成される。ゴム材質としては、例えば、シリコーン又はシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられ、これら一種又は二種以上の混合ゴム又は変性ゴムを用いることができる。また、上記したゴム材質は、ミラブルタイプ又は液状タイプのものを任意に選択することも可能である。導電性材料としては、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質が挙げられる。導電性粉末は、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、更には金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等を挙げることができる。イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等を挙げることができる。導電性粉末は、後述する電気抵抗値を示す範囲で適宜添加することができると同時に2種類以上を混合して用いることもできる。
【0022】
現像剤22を帯電させることができる点で、現像剤担持体24の樹脂層は、その電気抵抗値が10〜10Ωの範囲にあることが好ましい。現像剤担持体における電気抵抗値は、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、現像剤担持体を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、現像剤担持体の樹脂層全体を載せることのできる長さを有するアルミニウム製板を電極とし、500gの荷重を現像剤担持体における軸体の両端で支持させた状態にして、この軸体と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法により、測定することができる。
【0023】
現像剤担持体24は、樹脂層の外周面にコート層を有していてもよい。コート層の材質としては、永久変形のない材料がよく、例えば、熱硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。
【0024】
前記現像手段20は、この発明に係る現像剤規制部材1を備えている。現像剤規制部材1は、現像剤担持体24に当接して、現像剤22の層厚を規制すると共に摩擦帯電により現像剤22を帯電させる。この現像剤規制部材1は、現像剤担持体24に機械的に当接され、ニップ等の微調整ができるように構成されるのがよい。
【0025】
この発明に係る現像剤規制部材の一例である現像剤規制部材1を図面に基づいて説明する。現像剤規制部材1は、図2(a)及び図2(b)に示されるように、支持体2と金属製ブレード3とから成る。
【0026】
支持体2は、後述する金属製ブレード3を支持し、現像剤坦持体24に金属製ブレード3を適切な圧力で当接させる。したがって、支持体2は、金属製ブレード3を支持して現像剤規制部材1とされたときに、現像剤規制部材1が所望の弾性(ばね弾性)を有するように、形成されるのがよい。ここで、前記所望の弾性は、例えば、金属製ブレード3との組み合わせ(すなわち、現像剤規制部材1)において、弾性係数が0.5×10〜2.0×10kg/mmであるのがよい。現像剤規制部材1の弾性が強すぎると、金属製ブレード3を低圧力で現像剤坦持体24に当接させることが困難であり、また、金属製ブレード3が現像剤坦持体24に当接する圧力を調整することも困難になることがある。それ故、金属製ブレード3及び/又は後述する表面層4に現像剤22が固着し、また、現像剤担持体24の回転トルクを低減させることができなくなり、現像剤22の固着防止及び現像剤担持体24の低回転トルクが要求される高精細化、高速化された近年の静電方式又は電子写真方式の画像形成装置等に現像剤規制部材1を有利に用いることができないことがある。一方、弾性が弱すぎると、金属製ブレード3を適切な圧力で現像剤坦持体24に当接させることができなくなる。
【0027】
支持体2は、所望の弾性を有するように現像剤規制部材1を形成するには、例えば、弾性を有する材料で形成されるのがよく、弾性を有する薄板状等に形成されるのがよく、弾性を有する材料で薄板状に形成されるのが特によい。例えば、支持体2の材質は、弾性を有するステンレス鋼等がよく、薄板状に形成された支持体2は、0.5〜3.0mmの厚さを有するのがよい。また、支持体2は、図2(b)に明確に示されるように、薄板状に形成された後、その長手方向に沿って所定の角度、例えば90〜170°の角度で「略くの字型」に折り曲げられて形成されてもよい。
【0028】
金属製ブレード3は、現像剤坦持体24に当接し、現像剤22の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22を帯電させる。金属製ブレード3は、支持体2に支持されて現像剤規制部材1とされたときに、現像剤規制部材1が前記所望の弾性を有するように、形成されるのが好ましい。したがって、金属製ブレード3は、支持体2と同様に、例えば、弾性を有する材料、弾性を有する薄板状等に形成されるのが好ましく、弾性を有する材料で薄板状に形成されるのが特に好ましい。金属製ブレード3は0.1〜3mmの厚さを有するのが好ましい。また、金属製ブレード3は、図2(a)及び(b)に示されるように、薄板状に形成されてもよく、図示されていないが、前記支持体2と同様に、薄板状に形成された後、その長手方向に沿って所定の角度、例えば90〜170°の角度で「略くの字型」に折り曲げられてもいてもよい。金属製ブレード3は、現像剤担持体24に当接する部分近傍が折り曲げられているのが、後述する表面層4を容易に形成できる点で、特によい。
【0029】
金属製ブレード3は、耐食用材料で形成される。耐食用材料としては、炭素鋼又は低合金鋼、Crを11%以上含んだ鉄基合金、ニッケル又はニッケル合金、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン、ジルコニウム又はタンタル等の不動態を形成する金属等が挙げられる。金属製ブレード3が耐食用材料で形成されると、画像形成装置の設置環境等が変化しても、また、画像形成装置の稼動環境が変化しても、金属製ブレード3の腐食を防止することができ、金属製ブレード3の耐久性、ひいては、現像剤規制部材1の耐久性を向上させることができる。より具体的には、炭素鋼又は低合金鋼としては、例えば、Mo、Nb、Ti、V、Zr等を0.15%未満含有してもよい、「SMA41、50及び58」(JIS分類)等が挙げられ、Crを11%以上含んだ鉄基合金としては、例えば、ステンレス鋼等が挙げられ、銅又は銅合金としては、例えば、リン脱酸銅、アドミラルティ黄銅、アルミニウム青銅等が挙げられる。
【0030】
これらの耐食用材料の中でも、Crを11%以上含んだ鉄基合金が、耐食性に優れるうえ、入手しやすく、かつ、その種類も豊富である点で、金属製ブレード3を形成する材料として好ましく用いられ、Crを11%以上含んだ鉄基合金の中でも、ステンレス鋼が金属製ブレード3を形成する材料としてより好ましく用いられる。ステンレス鋼としては、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼及び析出硬化系ステンレス鋼が挙げられる。
【0031】
これらのステンレス鋼の中でも、オーステナイト系ステンレス鋼が、強度に優れる点で、金属製ブレード3を形成する材料として特に好ましく用いられる。オーステナイト系ステンレス鋼の中でも、Cr含有量が17〜25質量%であり、Ni含有量が7〜20質量%であるステンレス鋼がより一層好ましい。Cr含有量が17%未満又はNi含有量が7%未満であると、ステンレス鋼の耐食性が低下し、長期の使用により金属製ブレード3に錆が発生することがある。一方、Cr含有量が25%又はNi含有量が20質量%を越えると、ステンレス鋼の強度が低下し、長期の使用により金属製ブレード3に歪みが生じて、良好な画像が形成されないことがある。オーステナイト系ステンレス鋼としては、JIS分類によれば、例えば、SUS304、SUS304L、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316J、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347等が挙げられ、Cr含有量が17〜25質量%であり、Ni含有量が7〜20質量%であるオーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS309S、SUS316J、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347等が挙げられる。これらの中でも、へたりがなく接着剤との接着性が高いという点から、SUS304、SUS304L、SUS317がさらに好ましい。
【0032】
金属製ブレード3は、図2(a)及び(b)に示されるように、現像剤担持体24に当接する部分近傍に、有機金属カップリング剤で処理して成る表面層4を有している。表面層4は、金属製ブレード3の全表面に形成されてもよく、図2(a)及び(b)に示されるように、少なくとも現像剤担持体24に当接する金属製ブレード3の表面にその長手方向に延在して形成されてもよい。
【0033】
表面層4を形成する有機金属カップリング剤は、分子中に、金属原子と、この金属原子に結合し、無機物に結合可能な加水分解性基と、この金属原子に結合し、有機物に対する親和性を有する疎水性有機官能基とを有するカップリング剤であればよく、例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0034】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、アルキルチタネート、チタンアシレート等が挙げられる。より具体的には、アルキルチタネートとしては、例えば、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等が挙げられ、チタンアシレートとしては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。これらのチタネート系カップリング剤は、例えば、味の素株式会社製又は味の素ファインテクノ株式会社のチタネート系カップリング剤「プレンアクト(商品名)」等として、各種入手することができる。
【0035】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アルミニウムアルコレート、アルミニウムキレート、環状アルミニウムオリゴマー等が挙げられる。より具体的には、アルミニウムアルコレートとしては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート等が挙げられ、アルミニウムキレートとしては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が挙げられ、環状アルミニウムオリゴマーとしては、例えば、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート等が挙げられる。これらのアルミニウム系カップリング剤は、例えば、味の素株式会社製又は味の素ファインテクノ株式会社のアルミニウム系カップリング剤「プレンアクト AL−K(品種)」、及び、川研ファインケミカル株式会社製のアルミニウムキレート「ALCH」、「アルミニウムキレートA」、「アルミニウムキレートD」等として、各種入手することができる。
【0036】
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート等が挙げられる。より具体的には、ジルコニウムアルコキシドとして、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−ブトキシジルコニウム等が挙げられ、ジルコニウムキレートとして、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。これらのジルコニウム系カップリング剤は、例えば、松本製薬工業株式会社製のジルコニウム系カップリング剤「オルガチックス ZAシリーズ、ZCシリーズ」等として、各種入手することができる。
【0037】
これらの有機金属カップリング剤は、何れを用いても、この発明の目的を十分に達成することができる。表面層4に高い耐久性が要求される場合には、有機金属カップリング剤の中でもアルミニウム系カップリング剤を用いるのがよく、金属製ブレード3の歪及び変形等による劣化を抑えることのできる高い屈曲性が表面層4に要求される場合には、有機金属カップリング剤の中でもチタネート系カップリング剤を用いるのがよく、また、表面層4に耐熱性が要求される場合には、有機金属カップリング剤の中でもジルコニウム系カップリング剤を用いるのがよい。つまり、現像剤22及び現像剤担持体24の仕様、表面層4に要求される特性等に応じて、有機金属カップリング剤を適宜選択することができる。
【0038】
表面層4は、1種又は2種以上の有機金属カップリング剤単独で形成されてもよく、有機金属カップリング剤と、他の成分、例えば、溶剤、バインダ、誘電性及び/又は導電性の充填剤等との混合物で形成されてもよい。
【0039】
表面層4は、金属製ブレード3の表面を有機金属カップリング剤で処理して成る。表面層4は、有機金属カップリング剤の通常の使用方法、例えば、乾式法、湿式法等により、金属製ブレード3の表面に、有機金属カップリング剤を塗設、載置等した後に、熱処理等により、形成することができる。表面層4を均一な厚さに形成するには、例えば、0.2〜10質量%濃度の有機金属カップリング剤を含有する溶液又は懸濁液をスプレーコータ、ロールコータ等の公知の塗布方法により金属製ブレード3の表面に有機金属カップリング剤を塗設し、又は、有機金属カップリング剤を含有する溶液又は懸濁液に金属製ブレード3を浸漬することにより、金属製ブレード3の表面に有機金属カップリング剤を載置するのがよい。
【0040】
表面層4は、1〜500μmの厚さを有するのが好ましい。表面層4の厚さが1μm未満であると、接触帯電量が小さくなり、現像剤22を十分に帯電させることができなくなることがある。一方、表面層4の厚さが500μmを超えると、表面層4の現像剤22に対する離型性が低下して、表面層4の表面に現像剤22が固着しやすくなり、また、表面層4にひび割れ、剥がれ等が生じることがある。これらの観点から、表面層4は、5〜50μmの厚さを有するのがさらに好ましい。
【0041】
このようにして形成される表面層4は、通常、金属製ブレード3の表面と有機金属カップリング剤の加水分解性基とが反応して成る。したがって、表面層4の表面側には有機金属カップリング剤の疎水性有機官能基が配向しやすくなり、したがって、この疎水性有機官能基により現像剤22を十分に帯電させることができると共に、この疎水性有機官能基は一般に未反応性であるから、例えば、現像剤規制部材1の使用環境における温度、湿度等が急激に又は絶えず変化しても、疎水性有機官能基がこの環境変化に影響されることは少なく、有機金属カップリング剤で形成された表面層4を有する金属製ブレード3は、使用環境における変化に対して、極めて安定な帯電特性を有する。
【0042】
表面層4は、0.5〜24(nC)の接触帯電量を有する。表面層4の接触帯電量が0.5(nC)未満であると、表面層4と現像剤担持体24及び/又は現像剤22との摩擦帯電により、現像剤22を十分に帯電させることができなくなることがある。一方、表面層4の接触帯電量が24(nC)を超えると、現像剤22を必要以上に帯電させ、現像剤22が金属製ブレード3及び/又は表面層4に付着して離れにくくなり、表面層4の表面に現像剤22が固着し、カブリの発生、現像剤漏れ等による印刷不良が起こることがある。このような問題が生じないように、現像剤22を所望のように帯電させることができる点で、表面層4における接触帯電量の下限は、0.5(nC)以上であるのが好ましく、10(nC)以上であるのがより好ましく、16(nC)以上であるのが特に好ましく、その上限は、20(nC)以下であるのが好ましく、18(nC)以下であるのが特に好ましい。
【0043】
表面層4の接触帯電量は、例えば、次のようにして測定することができる。まず、カスケード式接触帯電量測定装置(例えば、東芝ケミカル株式会社製、商品名「TS−100AT」)と、基準接触粉体として、球形フェライト粉(パウダーテック株式会社製、商品名「MF−60」)と、試料板として、金属製ブレード3と同一のステンレス鋼で75mm×100mmに形成した板状成形体の表面に、表面層4と同一の有機金属カップリング剤で表面層を形成した成形体とを準備する。次いで、準備した試料板をカスケード式接触帯電量測定装置にセットする。そして、25℃、60%RHの雰囲気下で、基準接触粉体の流しかけ時間5秒で3回の測定を行い、その3回の平均値をその試料板の接触帯電量とする。この試料板の接触帯電量を、金属製ブレード3に形成された表面層4の接触帯電量とする。
【0044】
この発明において、表面層4の接触帯電量は、表面層4を形成する有機金属カップリング剤、バインダの種類及び配合量、有機金属カップリング剤への誘電性充填剤及び/又は導電性充填剤の配合及びその種類と配合量等により、また、表面層4の層厚等により、容易に調整することができる。
【0045】
金属製ブレード3は、支持体2の一方の表面に固定され、支持される。支持体2に金属製ブレード3を支持する方法は、これらを固定することができる方法であればよく、例えば、接着、ねじ止め又はこれらの組み合わせ等の方法が挙げられる。現像剤規制部材1は、図2(a)及び(b)に示されるように、支持体2の長手方向に沿って支持体2の表面下部に金属製ブレード3が重ねられ、支持体2の表面下部の全面に接着されると共に、ねじ止めされて支持されるのが、支持体2と金属製ブレード3との膨張係数等の物性差により生じる歪みを防止して、これらを確実に固定することができるので好ましい。
【0046】
この発明において、現像剤規制部材1、支持体2、金属製ブレード3及び表面層4の大きさは、任意に設定することができる。
【0047】
このような構成を有するこの発明に係る現像剤規制部材1は、帯電特性等の物性に優れ、現像剤担持体24に当接して、表面層4と現像剤担持体24及び/又は現像剤22との摩擦帯電により、現像剤22を所望のように帯電させることができる。また、現像剤規制部材1によれば、金属製ブレード3及び表面層4における現像剤22に対する離型性が向上して、金属製ブレード3及び表面層4の表面に現像剤22が固着しにくくなると共に、金属製ブレード3及び表面層4は高い耐久性を有しているので、長期間にわたって、現像剤担持体24に、所望のように帯電させた現像剤22を均一な層厚さで担持させることができる。その結果、従来の画像形成装置だけではなく、高精細化を実現した近年の画像形成装置においても、現像剤を所望のように十分かつ安定して帯電させることができ、所望とする高品質、高解像度の画像が得られる。
【0048】
この発明に係る画像形成装置10は、次にように作用する。画像形成装置10は、前記したように、図1に示される構成を有している。現像剤規制部材1は、その表面層4が所定の圧力で現像剤担持体24の表面に当接するように、金属製ブレード3が湾曲されて、現像手段20の開口部に、配置されている。
【0049】
まず、像担持体11が、図1の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段17により、その表面の現像剤22及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段12により、一様に帯電される。次いで、露光手段13により画像が露光され、像担持体11の表面に静電潜像が形成される。
【0050】
一方、現像手段20において、攪拌機23により均一に混合された現像剤22が、現像剤担持体24に供給され、現像剤担持体24が図1に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体24の表面に付着した現像剤22が、現像剤担持体24と現像剤担持体24に当接した現像剤規制部材1の金属製ブレード3との間を通過する。ここで、現像剤規制部材1は、帯電特性等の物性に優れたこの発明に係る現像剤規制部材1であるから、現像剤22は、所望の層厚に容易に規制されると共に、現像剤22を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤22が、現像剤担持体24と現像剤規制部材1の金属製ブレード3との間を通過することによって、現像剤担持体24の表面上における現像剤22の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材1の表面層4と現像剤担持体24及び/又は現像剤22との摩擦帯電等により、現像剤担持体24上の現像剤22が所望のように帯電される。
【0051】
次いで、このようにして現像手段20から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤22が像担持体11に供給され、像担持体11に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段20は、像担持体11に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤22を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体11上に現像された現像剤像は、図示しない搬送手段により、像担持体11と転写手段14との間に搬送される転写紙16上に、像担持体11及び/又は転写手段14によって転写される。次いで、現像剤像が転写された転写紙16は、図示しない搬送手段により定着手段15に搬送され、定着手段15により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として転写紙16に定着される。このようにして、転写紙16に画像を形成することができる。
【0052】
画像形成装置10によれば、この発明に係る現像剤規制部材1を備えているから、長期間にわたって、所望のように帯電させた現像剤22を均一な層厚さで、現像剤担持体24に担持させることができ、その結果、長期間使用することにより現像剤規制部材に現像剤の樹脂類が固着するフィルミング等の問題が生じにくい良好な画像を長期間にわたって形成することができる。その結果、画像形成装置10を600dpi以上の、特に1200dpiの高解像度を有する画像形成装置としても、現像剤を所望のように十分かつ安定して帯電させることができ、所望とする高品質、高解像度の画像が得られる。
【0053】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、現像手段20に単色の現像剤のみを収容するモノカラー画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノカラー画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【0054】
画像形成装置10における現像手段20は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されていてもよい。また、画像形成装置10において、現像剤22は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。二成分系の現像剤は、通常、10〜25μC/g程度の帯電特性を有している。
【0055】
この発明における現像剤規制部材は、600dpi以上の高解像度を有する画像形成装置においても、現像剤を所望のように十分かつ安定して帯電させることができるから、画像形成装置10は、600dpi以上の高解像度を有する画像形成装置とされても、600dpi未満の解像度、例えば、300dpiの解像度を有する画像形成装置とされてもよい。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304:Cr含有量18.00〜20.00質量%、Ni含有量8.00〜10.50質量%)を、2mm×40mm×300mmの大きさに裁断し、薄板状の金属製ブレード3を作製した。次いで、この金属製ブレード3を、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社、商品名「プレンアクト KR 44」)の10質量%溶液(溶剤:n−プロパノール)に浸漬して、金属製ブレード3における一方の表面にチタネート系カップリング剤を、表1に示す層厚となるように、塗工した。次いで、得られた金属製ブレード3を、120℃で30分間加熱処理して、金属製ブレード3の表面に表1に示す層厚を有する表面層4Aを形成した。このようにして、表面層4Aを有する金属製ブレード3Aを作製した。
【0057】
(実施例2)
チタネート系カップリング剤(商品名「プレンアクト KR 44」)の代わりに、チタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社、商品名「プレンアクト KR TTS」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面層4Bを有する金属製ブレード3Bを作製した。
(実施例3)
チタネート系カップリング剤(商品名「KR 44」)の代わりに、アルミニウム系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社、商品名「プレンアクト AL−MBM」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面層4Cを有する金属製ブレード3Cを作製した。
(実施例4〜7)
表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ、表面層4D〜4Gを有する金属製ブレード3D〜3Gを作製した。
(実施例8)
チタネート系カップリング剤(商品名「KR 44」)の代わりに、ジルコニウム系カップリング剤(松本製薬工業株式会社、商品名「オルガチックス ZC−540」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面層4Hを有する金属製ブレード3Hを作製した。
【0058】
(実施例9)
オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304)の代わりに、マルテンサイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS410:Cr含有量11.50〜13.50質量%、Ni含有量0質量%)を用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例1と同様にして、表面層4Iを有する金属製ブレード3Iを作製した。
(実施例10)
オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304)の代わりに、マルテンサイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS410)を用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例3と同様にして、表面層4Jを有する金属製ブレード3Jを作製した。
(実施例11)
オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304)の代わりに、フェライトイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS405:Cr含有量11.50〜14.50質量%、Ni含有量0質量%)を用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例1と同様にして、表面層4Kを有する金属製ブレード3Kを作製した。
(実施例12)
オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304)の代わりに、フェライト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS430:Cr含有量16.00〜18.00質量%、Ni含有量0質量%)を用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例3と同様にして、表面層4Lを有する金属製ブレード3Lを作製した。
【0059】
(比較例1)
実施例1と同様にして、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)製ブレード3Mを作製した。
(比較例2)
チタネート系カップリング剤(商品名「プレンアクト KR 44」)の代わりに、ウレタン樹脂(大日精化工業株式会社、商品名「レザミンD4080」)用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例1と同様にして、表面層4Nを有する金属製ブレード3Nを作製した。
(比較例3)
チタネート系カップリング剤(商品名「プレンアクト KR 44」)の代わりに、クロロプレンゴム溶液(電気化学工業株式会社、商品名「LM−61」)用い、表面層4の厚さを、表1に示す層厚に調整した以外は、実施例1と同様にして、表面層4Oを有する金属製ブレード3Oを作製した。
【0060】
(比較例4)
ジメチルシロキサン生ゴム(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−951U」)100質量部、表面をシロキサン処理した煙霧質シリカ(比表面積217m/g、吸着炭素量2.0%、疎水化度43%)50質量部、及び、ベンゾイルパーオキサイド2.0質量部を配合したシリコーン組成物を、圧力30kg/cm、加熱温度120℃で、10分間プレス成形を行い、シートを得た。このシートを200℃に設定したオーブンで4時間熱処理した。このようにして得られたシートを2mm×40mm×300mmの大きさに切断し、樹脂製ブレード3Pを作製した。
【0061】
(1)接触帯電量
各実施例及び各比較例で作製した金属製ブレード3A〜3O及び樹脂製ブレード3Pとそれぞれ同様にして、接触帯電量測定用の試料板(75mm×100mm)を作製した。この試料板を、カスケード式接触帯電量測定装置(東芝ケミカル株式会社製、商品名「TS−100AT」)を用いて、前記した方法で、試料板の接触帯電量を測定した。測定された接触帯電量を、金属製ブレード3A〜3O及び樹脂製ブレード3Pの接触帯電量として、表1に示した。
【0062】
次いで、オーステナイト系ステンレス鋼(JIS分類 SUS304)を、0.5mm×90mm×350mmの大きさに裁断し、薄板状の支持体2を作製した。次いで、図2(a)及び(b)に示されるように、作製した支持体2の表面下部全体に金属製ブレード3A〜3O及び樹脂製ブレード3Pをそれぞれホットメルト接着剤で接着し、かつ、2箇所をねじ止めして、現像剤規制部材1A〜1Pを作製した。なお、支持体2の表面下部に重ねた金属製ブレード3A〜3O及び樹脂製ブレード3Pは、約35mm×350mmであった。
【0063】
このようにして作製した現像剤規制部材1A〜1Lは、支持体2及び金属製ブレード3が何れもステンレス鋼(SUS304、SUS410、SUS405及びSUS430)で所定の厚さに形成されているから、現像剤規制部材1A〜1Lは何れも、0.5×10〜2.0×10kg/mmの弾性係数を有していた。
【0064】
このようにして作製した現像剤規制部材1A〜1Pをそれぞれ、図1に示される電子写真式プリンタ10(沖データ株式会社製、商品名:「MICROLINE 1032PS」、解像度1200dpi相当)において、現像手段20における現像剤収納部21の開口部に、現像剤担持体24に当接するように、取り付けた。なお、この現像剤担持体は、前記電子写真式プリンタ10に付属の現像剤担持体を使用した。この現像剤担持体の電気抵抗置を前記方法で測定した結果、6.3×10Ωであった。また、現像剤は、前記電子写真式プリンタ10に付属のトナーを用いた。
【0065】
(2)初期印字濃度
この電子写真式プリンタ10を、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、稼動させて、黒べた−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行い、印字した黒べた印字部のマクベス濃度を、マクべス濃度計を用いて測定した。その結果を表1に示す。黒べた印字部のマクベス濃度が1.22未満のものを印字不良と判断した。初期印字濃度は、黒べた印字部のマクベス濃度が1.30以上であるのが、高解像度を有する画像形成装置においても、高品質の画像を形成することができるので、高解像度を有する画像形成装置に特に好適に用いることができる。なお、比較例3の現像剤規制部材1Oを備えた画像形成装置では、現像剤を帯電させて、現像剤担持体に担持させることができなかった。
【0066】
初期印字濃度を測定した後に、再度、電子写真式プリンタ10を、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、稼動させて、6,000枚の印字を行った(耐久性試験と称する。)。この耐久性試験の終了後に、現像剤規制部材1A〜1Pを備えた電子写真式プリンタ10について、下記項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
(3)現像剤固着評価
耐久性試験後の現像剤担持体24の表面を顕微鏡で観察し、現像剤が固着している程度を評価した。評価は、現像剤担持体24の表面に現像剤がまったく固着していなかった状態を「◎」、現像剤がほぼ固着していない状態を「○」、現像剤がわずかに固着しているものの、実用に十分に耐えうる状態を「△」、現像剤が多量に固着し、印字不良を生じる状態を「×」とした。
(4)カブリ
耐久性試験後に、黒べた−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行い、印字した5%デューティー画像における白地部のマクベス濃度を、マクべス濃度計を用いて測定した。5%デューティー画像における白地部のマクベス濃度が0.025を越えるものは、印字不良と判断した。カブリは、白地部のマクベス濃度が0.015以下であるのが、高解像度を有する画像形成装置においても、高品質の画像を長期間にわたって形成することができるので、高解像度を有する画像形成装置に特に好適に用いることができる。
(5)耐久性試験後の印字濃度
耐久性試験後に、前記カブリ評価と同様にして、印字した黒べた印字部のマクベス濃度を、マクべス濃度計を用いて測定した。黒べた印字部のマクベス濃度が1.22未満のものを印字不良と判断した。耐久性試験後の印字濃度は、黒べた印字部のマクベス濃度が1.30以上であるのが、高解像度を有する画像形成装置においても、高品質の画像を長期間にわたって形成することができるので、高解像度を有する画像形成装置に特に好適に用いることができる。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示されるように、実施例1〜12の現像剤規制部材1A〜1Lは、何れも、帯電特性に優れ、初期印刷濃度と耐久性試験後の印刷濃度との差が小さく、長期間にわたって均一な画像が得られると共に、耐久試験後においても、現像剤固着評価、カブリ及び印字濃度がすべて優れていた。したがって、現像剤規制部材1A〜1Lによれば、1200dpi相当の高解像度を有する画像形成装置に用いても、帯電特性等の物性に優れ、現像剤を所望のように帯電させることができると共に、長期間にわたって、現像剤担持体の外周面に、所望のように帯電させた現像剤を所望の均一な層厚さで担持させることができるから、現像剤規制部材1A〜1Lを備えた電子写真式プリンタによれば、カブリ、白ヌケ等の発生を効果的に抑制して、フィルミング等の問題が生じにくい良好な画像を長期間にわたって形成することができる。特に、実施例1〜8の現像剤規制部材1A〜1Hは、この効果に優れる。これに対して、比較例1、2及び4の現像剤規制部材1M、1N及び1Pは、初期印刷濃度と耐久性試験後の印刷濃度との差が大きく、長期間にわたって均一な画像を形成することができなかった。なお、比較例4の現像剤規制部材1Pを、300dpiの解像度を有する画像形成装置(例えば、沖データ株式会社製、商品名「MICROLINE 400」等)に用いた場合には、現像剤固着評価、カブリ及び印字濃度の何れも十分に満足する結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、この発明に係る現像剤規制部材の一例を示す概略図であり、図2(a)は、この発明に係る現像剤規制部材の一例を示す概略正面図であり、図2(b)は、この発明に係る現像剤規制部材の一例を示す概略側面図である。
【図3】図3は、従来の画像形成装置における現像手段を示す概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 現像剤規制部材
2 支持体
3 金属製ブレード
4 表面層
5 ねじ
10 画像形成装置
11 像担持体
12 帯電手段
13 露光手段
14 転写手段
15 定着手段
16 転写紙
17 クリーニング手段
20 現像手段
21 現像剤収納部
22 現像剤
23 攪拌機
24、31 現像剤担持体
30 現像剤規制部材
33 金属製ホルダ
34 ブレード
35 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式による画像形成装置に備えられた現像剤担持体に当接して現像剤の層厚を規制すると共に摩擦帯電により前記現像剤を帯電させるところの、支持体と金属製ブレードとを有する現像剤規制部材であって、
前記金属製ブレードは、耐食用材料から成り、かつ、前記現像剤担持体に当接する部分に、有機金属カップリング剤で処理して成る、0.5〜24(nC)の接触帯電量を有する表面層を有することを特徴とする現像剤規制部材。
【請求項2】
前記耐食用材料は、Crを11%以上含んだ鉄基合金であることを特徴とする請求項1に記載の現像剤規制部材。
【請求項3】
前記Crを11%以上含んだ鉄基合金は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項2に記載の現像剤規制部材。
【請求項4】
前記ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項3に記載の現像剤規制部材。
【請求項5】
前記表面層は、1〜500μmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像剤規制部材。
【請求項6】
前記有機金属カップリング剤は、チタネート系カップリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像剤規制部材。
【請求項7】
前記有機金属カップリング剤は、アルミニウム系カップリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像剤規制部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の現像剤規制部材を備えたことを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−233070(P2007−233070A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55181(P2006−55181)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】