説明

現像液塗布ローラ、現像液塗布手段、及び湿式画像形成装置

【課題】 アニロクスローラよりもコストを抑えることができる現像液塗布ローラを提供する。
【解決手段】 複数の微小穴が形成された金属製の無端円筒と、該無端円筒の中空部分に配置され、当該無端円筒の内壁全面にその表面が密着した密着部材を有した現像液塗布ローラの表面に、該無端円筒の外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を担持する現像液担持ローラ表面に当該現像液を均一に塗布する現像液塗布ローラ、及び現像液塗布手段、並びにキャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像を形成する湿式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを記録紙に転写させて画像を形成する装置には、例えば、紛状のトナーを現像ローラ(別の言い方をすると現像液担持ローラ)表面に担持させて画像を形成する乾式画像形成装置や、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を現像ローラ表面に担持させて画像を形成する湿式画像形成装置が知られている(例えば特許文献1)。なお、後者の装置で用いられるトナーは前者の装置で用いられるトナーよりも微細である為、後者の装置では前者の装置よりも高画質な画像を形成することができる。
【特許文献1】特開2002−214920号公報
【0003】
上記特許文献1に示されたような湿式画像形成装置には、現像ローラ表面に現像液を均一に塗布する為の現像液塗布ローラ(特許文献1ではアニロクスローラと称されている)が備えられている。このようなアニロクスローラの表面には所定のピッチで溝が刻まれており、その表面に付着した現像液の一部がブレードによって掻き取られて当該溝部に収容された現像液のみに計量されることにより、適量の現像液が現像ローラ表面に均一に塗布されるようになる。アニロクスローラの作用によって現像ムラが大幅に軽減され、記録紙上に高精細な画像がプリントされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述したようなアニロクスローラを製造する為には微細加工や各種処理が必要となる。この為、アニロクスローラは、非常に高価な部品となっており、湿式画像形成装置のコストアップの要因となっている。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、上述したようなアニロクスローラよりもコストを抑えることができる現像液塗布ローラ、及び現像液塗布手段、並びにアニロクスローラを備えたものよりコストを抑えることができる湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る現像液塗布ローラは、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を担持する現像液担持ローラ表面に当該現像液を均一に塗布するものであり、複数の微小穴が形成された金属製の無端円筒と、該無端円筒の中空部分に配置され、当該無端円筒の内壁全面にその表面が密着した密着部材を有しており、該無端円筒の外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部が配置されている。
【0007】
なお、上記現像液塗布ローラは、無端円筒をニッケルで形成したものであっても良い。
【0008】
また、上記現像液塗布ローラは、密着部材を弾性部材で形成したものであっても良い。この弾性部材はゴム材であっても良い。また、このゴム材はウレタンゴムやまたはシリコンゴム或いはニトリルゴムであっても良い。
【0009】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係る現像液塗布手段は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を担持する現像液担持ローラ表面に当該現像液を均一に塗布するものであり、複数の微小穴が形成された金属製の無端ベルトと、該無端ベルトの内壁側に配置され、当該内壁の少なくとも一部にその表面が密着した密着部材を有し、該無端ベルトの外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部が配置されている。
【0010】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る湿式画像形成装置は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像を形成するものであって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、該潜像担持ローラにトナーを供給する為に現像液を担持する現像液担持ローラと、該現像液担持ローラ表面に現像液を均一に塗布する現像液塗布ローラを備えている。この湿式画像形成装置に備えられた現像液塗布ローラは、複数の微小穴が形成された金属製の無端円筒と、該無端円筒の中空部分に配置され、当該無端円筒の内壁全面にその表面が密着した密着部材と、該無端円筒の外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部を有したものである。なお、上記湿式画像形成装置は、無端円筒の外壁部に当接し、当該外壁部に付着した現像液を掻き取って複数の現像液収容部に収容された現像液のみに計量する計量ブレードをさらに備えたものであっても良い。
【0011】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係る湿式画像形成装置は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像を形成するものであって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、該潜像担持ローラにトナーを供給する為に現像液を担持する現像液担持ローラと、該現像液担持ローラ表面に現像液を均一に塗布する現像液塗布手段を備えている。この湿式画像形成装置に備えられた現像液塗布手段は、複数の微小穴が形成された金属製の無端ベルトと、該無端ベルトの内壁側に配置され、当該内壁の少なくとも一部にその表面が密着した密着部材と、該無端ベルトの外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部を有したものである。なお、上記湿式画像形成装置は、無端ベルトの外壁部であって、現像液収容部が配置された領域に位置する外壁部に当接し、当該外壁部に付着した現像液を掻き取って複数の現像液収容部に収容された現像液のみに計量する計量ブレードをさらに備えたものであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の現像液塗布ローラ及び現像液塗布手段は、製品一つ一つに微細加工を必要とするアニロクスローラと異なり、その微細形状が単一の母体から多数複製されて製造されている。従って、上記アニロクスローラよりも安価で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例1の湿式画像形成装置である湿式プリンタについて説明する。
【0014】
図1は、本実施例1の湿式プリンタ100の構成を示した側断面図である。湿式プリンタ100は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液DSを現像ローラ表面に担持させて画像を形成する装置であって、コンピュータ等の外部機器から入力される文字または画像情報を、レーザビームを利用した電子写真法によって記録紙Pにプリントして出力する装置である。
【0015】
湿式プリンタ100は、大別して、プリント制御動作や搬送制御動作等を司る制御ユニット20と、各種機構を駆動させる駆動ユニット30と、プリント情報に応じて変調されたレーザ光を出力するレーザスキャニングユニット(Laser Scanning unit、以下、LSUと略記)40と、形成された文字やプリント情報に応じた潜像を、電子写真法によって現像液DSを用いて現像する現像ユニット50と、現像ユニット50で現像されたトナー像を転写位置において記録紙P上に転写する転写部70と、記録紙Pを搬送する搬送機構と、搬送機構により搬送される記録紙P上に転写されたトナー像を定着させる定着ユニット80から構成されている。
【0016】
湿式プリンタ100の各種機構の駆動源である駆動ユニット30は、各種機構を駆動させるアクチュエータを複数備えている。これらのアクチュエータは、全て制御ユニット20に接続されており、この制御ユニット20より駆動制御されている。駆動ユニット30は、例えば、現像ユニット50を構成する現像ローラ55や感光ドラム61、定着ユニット80を構成するヒートローラ81などを回動させることができる。
【0017】
湿式プリンタ100のハウジングの一端側の側面には、記録紙Pがセットされる給紙トレイ11及び記録紙Pが導入される搬入口12が形成されており、他端側の側面にも、記録紙Pが排出される排出口15及び排紙トレイ16が形成されている。搬入口12から湿式プリンタ100内部に搬送された記録紙Pは、搬送路13を搬送されて転写部70が成す転写位置においてその表面にプリント情報を示したトナーが転写され、搬送路14を搬送されて定着ユニット80が成す定着位置においてそのトナーが定着され、排出口15から湿式プリンタ100外部に排出される。
【0018】
転写部70において、記録紙Pに転写されるプリント情報を示したトナーによる画像形成は、以下のように行われる。は、先ず、制御ユニット20及びLSU40によって感光ドラム61上に潜像が生成される。このLSU40は、感光ドラム61表面に潜像を形成する為の露光手段の一例であり、光源部であるレーザダイオード41、コリメータレンズ42、シリンドリカルレンズ43と、ポリゴンミラー44、結像レンズ45、偏向ミラー46から構成されている。なお、LSU40以外の露光手段は、例えばLED(Light Emitting Diode)や縮小光学系を採用したものであっても良い。
【0019】
レーザダイオード41は、レーザ光を射出する。また、このレーザダイオード41は、制御ユニット20によって駆動制御され、入力される文字・画像情報に基づいて点灯/消灯する(すなわち変調する)。そしてレーザダイオード41から射出されたレーザ光は、コリメータレンズ42、シリンドリカルレンズ43を介してポリゴンミラー44に入射する。し、これによって拡散光から平行光束に変換される。
【0020】
平行光束に変換されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ43によってポリゴンミラー44反射面近傍において副走査方向にのみ収束される。なお、ここでいう副走査方向とは図1の紙面と平行な方向(感光ドラム61周面上ではその回転軸と直交する(接線)方向)であり、これに直交する方向であって、感光ドラム61上においてレーザ光が走査される方向を主走査方向(感光ドラム61上ではその軸方向)とする。
【0021】
ポリゴンミラー44は図示しないモータによって回転している為、ポリゴンミラー44に入射シリンドリカルレンズ43によってポリゴンミラー44反射面のある部分において線状に収束(副走査方向にのみ収束)したレーザ光は、主走査方向に走査するよう偏向される。そして、結像レンズ45に入射したされる。そしてこのレーザ光は、結像レンズ45によって感光ドラム61上において主走査方向に一定速度で走査するよう変換される。変換されたレーザ光は、偏向ミラー46によって感光ドラム61に偏向され、当該感光ドラム61上において結像する。ここで、レーザ光が主走査しつつ変調する為、文字・画像情報に応じた走査ラインが感光ドラム61上に形成される。また、感光ドラム61が副走査方向に回転する為、当該感光ドラム61上において走査ラインが副走査方向に複数形成される。この結果、感光ドラム61上に2次元の文字・画像情報の潜像が形成される。なお、レーザ光は、副走査方向に関して、ポリゴンミラー44反射面と感光ドラム61上とにおいて共役である。この為、ポリゴンミラー44の面倒れが発生しても、副走査方向の走査ラインピッチのずれは発生しない。
【0022】
現像ユニット50は、当該ユニットの各構成要素を支持したハウジングであり現像液DSを溜めておく現像液タンク51を有している。また、この現像液タンク51から現像液DSをピックアップするピックアップローラ52aを有している。また、ピックアップローラ52aによってピックアップされた現像液DSを溜める為のアッドローラ52bを有している。また、アッドローラ52bによって溜められた現像液DSが供給される計量ローラ53を有している。また、計量ローラ53に供給された現像液DSを計量する計量ブレード54を有している。また、計量ブレード54によって計量された現像液DSを担持する現像ローラ55を有している。また、現像ローラ55を帯電させてる当該ローラ55上の現像剤をキャリアとトナーに分離させる現像ローラ用帯電コロナ56を有している。また、現像ローラ55表面から現像液DSを掻き取り除去する現像ローラ用クリーニングブレード58を有している。
【0023】
また、現像ユニット50近傍には、LSU40によりプリント情報の潜像が形成されて現像ローラ55から供給されるトナーによってその潜像が現像される感光ドラム61と、感光ドラム61表面の潜像部分にトナーを付着させる為に当該感光ドラム61を一様に帯電させる感光ドラム用帯電コロナ62が配置されている。またさらに、転写部70が有する後述の中間転写ロール71に転写されることなく残留した感光ドラム61表面のトナーを掻き取る感光ドラム用クリーニングブレード63が配置されている。
【0024】
ここで、現像ユニット50内における現像液DSの流れを説明し、当該ユニット50において行われる現像処理について説明する。図2及び図3は、計量ローラ53近傍の構成を抽出して示した図である。図2は、当該構成をその軸方向と直交する方向に沿って切断したときの側断面図である。また、図3は、当該構成を上側から観察したときの斜視図である。
【0025】
ハウジングとして機能する現像液タンク51は、組立状態において各ローラの両端面の各々を覆うように設けられた壁部51aを有しており、この壁部51aに形成された各穴部によって各ローラを軸支している。
【0026】
ピックアップローラ52aは、その大部分が現像液タンク51内に溜められた現像液DSに浸されている。ピックアップローラ52aが図1及び図2に示したように時計回りに回転駆動すると、その表面に付着した現像液DSは、ピックアップされてアッドローラ52bとの当接部近傍において当該ローラ52bに供給される。このアッドローラ52bは、図1及び図2に示したように時計回りに回転駆動しており、その表面に付着した現像液DSを計量ローラ53に供給している。なお、現像液タンク51内部に溜められた現像液DSは、図示しない攪拌機構によって攪拌され、その温度も図示しない温度制御機構によって制御されている。
【0027】
ここで、本実施例1の計量ローラ53について説明する。図4(a)は、計量ローラ53のみを抽出して示した図である。また、図4(b)は、計量ローラ53をその軸方向に沿って切断したときの断面を概略的に示した図である。
【0028】
計量ローラ53は、多数の微小穴153aを有した金属製(例えばニッケル)のシームレスの円筒型シート53aと、計量ローラ53の回転中心であり、円筒型シート53aの中空部分の中心に設置された回転軸53bと、円筒型シート53aの中空部分を満たすように充填された弾性部材53cから構成されている。なお、弾性部材53cは、例えば、ウレタンゴムや、シリコンゴム、或いはニトリルゴム等のゴム材である。
【0029】
円筒型シート53aは、周知の電気鋳造法を用いて製造されたものである。そのメッキ厚は例えば60μm程度であり、開口率は例えば25%程度である。なお、ここでいう開口率とは、単位面積あたりに占める微小穴153aの面積から算出されるパラメータである。また、計量ローラ53は後述するように現像液DSを現像ローラ55表面に均一に塗布する機能を有しており、その塗布厚量は、円筒型シート53aの厚み及び開口率によって変化比例する。要求される塗布厚量はプリントする画像に必要とされる階調等に応じて異なる為、円筒型シート53aの厚み及び開口率は、上述した値に限ることなく、湿式画像形成装置の種類やグレードによって異なる。また、図4では、微小穴153aの形状が六角形となっているが、例えば円や四角形等の他の形状であっても良い。
【0030】
弾性部材53cは、円筒型シート53aと回転軸53bとを金型にセットしたときに当該円筒型シート53aの中空部分を満たすように充填されて成型されたものである。この為、弾性部材53cの表面は、円筒型シート53aの内壁部全面と密着した状態にある。従って、計量ローラ53の表面には、その側面が各微小穴153aの側壁部253aによって囲われ且つその底面が弾性部材53c表面部から成る凹部が多数存在する。なお、これらの凹部は、計量ローラ53表面側(別の言い方をすると円筒型シート53aの外壁側)のみに開放された空間であって、現像液DSを収容する空間である。以下に、これらの凹部を現像液収容部530と称する。
【0031】
計量ローラ53は、図1及び図2に示したように反時計回りに回転駆動している。また、計量ブレード54は、図1及び図2に示されるように計量ローラ53表面に当接し、その表面に付着した余分な現像液DSを掻き取る。また、弾性部材521は、例えば現像液に対する耐性の高いウレタンゴムやシリコンゴムを用いて一体形成されたモールド部品であり、アッドローラ52bの回転軸を挿通させる穴部521a及び計量ローラ53の回転軸を挿通させる穴部521bを有している。この弾性部材521は、アッドローラ52b及び計量ローラ53の両端面の隣接部の各々において、各回転軸を各穴部521a、521bに挿通させた状態で且つ当該端面と壁部51aとの間に弾性変形されて設置されている。弾性変形された弾性部材521は、自然状態に戻ろうと作用する為、当該端面及び壁部51aに力を及ぼして密着した状態となる。なお、アッドローラ52b及び計量ローラ53は、回転軸方向の長さが同一となるように形成され、現像液タンク51に組み込まれたときに互いの両端面の各々が同一平面上に位置するように配置される。
【0032】
アッドローラ52b及び計量ローラ53並びに2つの弾性部材521を現像液タンク51に組み込むと、上記2つのローラの当接部を底部とし且つその四方を上記2つのローラ表面の一部及び2つの弾性部材521で囲んだ空間Sが形成される。ここで、アッドローラ52bは、空間Sに溜められた現像液DSがオーバーフローして計量ローラ53を乗り越えて現像ローラ55や感光ドラム61に付着することを防止し且つ後述するように現像液DSを現像ローラ55表面に均一に塗布する為に、その最上部hが計量ローラ53の最上部hより低くなるように形成されている。従って、空間Sは、前方(より正確には計量ローラ53側)及び両側面が閉ざされ、後方(より正確にはアッドローラ52b側)の一部(最上部hと最上部hとの高さ方向の差分に相当)及び上方がその幅方向(別の言い方をするとローラの回転軸方向)全域に渡って開放されている。なお、現像液DSに浸される計量ローラ53の表面領域を少しでも多く確保する為に、最上部hの高さ方向の位置は、最上部hの高さ方向の位置に接近して位置するよう設計されている。
【0033】
空間Sの両側面を弾性部材521によって閉ざすことにより、現像液DSは、当該空間Sの前方または後方からオーバーフローして現像液タンク51に流れ落ちる。本実施例1では上述したようにアッドローラ52bの最上部hの方が計量ローラ53の最上部hより低い。この為、空間Sのキャパシティを超えた現像液DSは、アッドローラ52b表面上を、その回転軸方向全域においてオーバーフローする。従って、現像液タンク51に流れ落ちてくる現像液DSは、当該タンク51の幅方向全域に及ぶ。この結果、現像液タンク51には、現像液DSが、従来の如く周辺部に集中して溜まることなく、周辺部から中央部に掛けて比較的均一に溜まる。
【0034】
現像液タンク51に溜まる現像液DSの分布が上記幅方向全域において均一になることにより、アッドローラ52b(及びピックアップローラ52a)にピックアップされる現像液DSの分布も当該幅方向全域において均一となる。これにより、計量ローラ53に供給される現像液DSの分布も当該幅方向全域において均一となる為、現像ローラ55に対する塗布ムラが無くなる。
【0035】
空間Sにおいて計量ローラ53全面に現像液DSが付着する。そしてアッドローラ52bと計量ローラ53との当接部を通過した現像液DSは、計量ブレード54によってその一部が掻き取られる(すなわち計量される)。ここで、計量ローラ53に供給された現像液DSの一部は、現像液収容部530に収容される為、計量ブレード54によって掻き取られることがない。別の言い方をすると、計量ブレード54は、円筒型シート53aの外壁部に当接し、当該外壁部に付着した現像液DSを掻き取って各現像液収容部530に収容された現像液DSのみに計量する。従って、計量ローラ53表面には各現像液収容部530に収容された現像液DSであって、正確に計量された現像液DSのみが残り、計量ローラ53と転接した現像ローラ55にムラの無い状態で現像液DSが塗布される。
【0036】
なお、現像液DSを計量するときに、計量ブレード54の掻き取りによって計量ローラ53表面に付着した現像液DSが押されてその一部が各現像液収容部530に流入し、各現像液収容部530に収容された現像液DSの内圧が上昇する。ここで、円筒型シート53aと弾性部材53cとの間にクリアランスがある場合、現像液DSが現像液収容部530から滲み出てしまう。これにより、各現像液収容部530に収容されたそれぞれの現像液DSの量に差が生じ得る。その結果、現像ローラ55表面に現像液DSを均一に塗布できなくなってしまう。このような観点から、円筒型シート53aと弾性部材53cは密着する必要がある。
【0037】
弾性部材53cを金属部材に置き換えた場合、円筒型シート53aと弾性部材53cとの間にはクリアランスができる可能性が高い。従って、弾性部材53cの代わりに金属部材を採用することは望ましくない。しかしながら弾性部材53cをABS樹脂やPET樹脂等を用いた部材に置き換えた場合、円筒型シート53aと密着させるように当該部材を成型することができる。すなわち、円筒型シート53aの中空部分を満たすように設置される部品は、ゴムなどの弾性体に限ることなく、上記の如き樹脂であっても良い。
【0038】
本実施例1の計量ローラ53の製造工程では、微細な形状を有する円筒型シート53aを、単一の母体から多数複製している。この為、当該製造工程では、従来採用されていたアニロクスローラと異なり、製品一つ一つに対する微細加工を必要としない。従って、本実施例1の計量ローラ53は、上記アニロクスローラよりも安価で製造することができる。
【0039】
また、上記アニロクスローラを湿式画像形成装置に採用した場合には、例えばハーフトーン等を印刷したときに、その表面に刻まれた溝部の模様が現像ローラに転写されてプリント画像にモアレとして現れてしまうことがある。しかしながら本実施例1の計量ローラ53のように製造工程として電気鋳造法を採用すると、上記溝部に相当する微小穴153aの径を、当該溝部のピッチよりも細目にすることが比較的容易である。すなわち本実施例1の計量ローラ53を採用すると、現像液を収容部する凹部をより緻密に配置し易い為、従来と比較して上記モアレの発生が抑え易い。
【0040】
計量ローラ53から現像ローラ55に塗布された直後の現像液DSはトナーの濃度が均一である。この為、計量ローラ53と現像ローラ55との転接部近傍ではキャリア液中にトナーが一様に分布している。ここで、現像ローラ55は図1及び図2において時計回りに回転駆動している。上述の一様な現像液DSは、現像ローラ55表面に担持された状態で、次に現像ローラ用帯電コロナ56を通過する。
【0041】
現像ローラ55は、その表面が導電性を有する部材で形成されており、現像ローラ用帯電コロナ56によるコロナ帯電によってその表面が一様に帯電される。この帯電の作用によって現像ローラ55と現像液DS表層間に電界が発生し、上述した如き液中に一様に分布したトナーは、キャリア液中を移動して現像ローラ55表面側に移動して圧着された状態になる。すなわち現像液DSは、キャリア液のみの層と、キャリア液中に従前より高濃度でトナーを含んだ層の2層に分離される。なお、後者の層が現像ローラ55表面に接した層となる。
【0042】
2層に分離された現像液DSは、感光ドラム61との転接部に到達する。ここで、感光ドラム61表面には、上述したLSU40からのレーザ光によってプリント情報の潜像が形成されている。感光ドラム61は、感光ドラム用帯電コロナ62の作用によって現像ローラ55より高電位に帯電される。また、上記レーザ光によってプリント情報が潜像された部分は、当該レーザ光の作用によって現像ローラ55より低電位となる。この為、感光ドラム61表面の非潜像部分と現像ローラ55表面との間では、トナーは、両者の中で電位の低い方すなわち現像ローラ55表面側に圧着されたままであり、上記非潜像部分に移動しない。つまり非潜像部分では現像されることはない。また、感光ドラム61表面の潜像部分と現像ローラ55表面との間では、トナーは、両者の中で電位の低い方すなわち感光ドラム61表面の潜像部分に向けて電気永動してその表面に付着する。これにより、感光ドラム61表面の潜像が現像されてトナー像となる。
【0043】
現像に用いられなかったトナーを含む現像液DSは、現像ローラ55表面に当接された現像ローラ用クリーニングブレード58によって掻き取られ、現像液タンク51内に回収される。
【0044】
感光ドラム61表面の現像に用いられたトナー像は、転写部70によって記録紙Pに転写される。この転写部70は、中間転写ロール71と、キャリア液スクイーズロール72と、キャリア液クリーニングブレード73と、二次転写ロール74と、中間転写ロール用クリーニングユニット75から構成されている。
【0045】
中間転写ロール71にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加されており、感光ドラム61表面の現像に用いられたトナー像は、感光ドラム61と中間転写ロール71との転接部において、中間転写ロール71表面に一次転写される。なお、前記の転接部において転写されず感光ドラム61表面に付着したままの未転写トナーは、感光ドラム用クリーニングブレード63によりその表面から除去される。また、トナー像と共に中間転写ロール71表面に付着したキャリア液は、キャリア液スクイーズロール72によってその表面から圧搾される。そしてキャリア液クリーニングブレード73によってキャリア液スクイーズロール72表面から除去された後、廃トナーとして図示しない廃トナーボックスに回収される。
【0046】
ここで、中間転写ロール71と二次転写ロール74は、記録紙Pの搬送路を挟んで対向する位置に設置されており、所定のニップ圧で転接している。中間転写ロール71表面に転写されたトナー像は、二次転写ロール74との転接部において転写電界やニップ圧等の作用によって搬送路を搬送される記録紙Pに転写される。なお、中間転写ロール71は、二次転写ロール74とのニップ圧が感光ドラム61に直接掛かることを防止する為に、これらの間に介在している。また、記録紙Pへの転写後に未転写トナーとして中間転写ロール71表面に付着したままのトナーは、中間転写ロール用クリーニングユニット75によって除去された後、廃トナーとして上記廃トナーボックスに回収される。
【0047】
トナー像が転写された記録紙Pは搬送路14によって定着ユニット80に導かれる。この定着ユニット80は、記録紙P上のトナー像(すなわちプリント情報)を加熱及び加圧によって定着させるものであり、記録紙Pを加熱するヒートローラ81と、搬送路を挟んでヒートローラ81と対向した位置に設置されたローラであって、自身とヒートローラ81とによって記録紙Pを挟んで加圧するプレスローラ82から構成されている。この定着ユニット80によってプリント情報が定着された記録紙Pは、排出口15から排出される。
【0048】
図5は、本発明の実施例2の湿式プリンタ100zの構成を示した側断面図である。また、図6は、本発明の実施例2の現像液塗布機構90近傍の構成を抽出して示した図であり、当該構成をその軸方向と直交する方向に沿って切断したときの側断面図である。また、図7は、現像液塗布機構90のみを抽出し、各ローラの軸方向と直交する方向から当該機構90を観察したときの外観図である。なお、本実施例2の湿式プリンタ100zにおいて、図1から図4に示す実施例1の湿式プリンタ100と同一の構成には、同一の符号を付してここでの詳細な説明は省略する。以下に、図5から図7を参照して、本実施例2の湿式プリンタ100zの構成及び作用を説明する。
【0049】
本実施例2の湿式プリンタ100zは、現像ローラ55表面に現像液DSを均一に塗布する為の構成として、現像液塗布機構90を有している。現像液塗布機構90は、本実施例1の計量ローラ53と同一の位置であって、アッドローラ52bと現像ローラ55との間に配置された第1ローラ91を有している。第1ローラ91は、その中心に挿通された回転軸92に回動可能に支持されており、反時計回りに回転駆動する。なお、この第1ローラ91は、後述するシームレスベルト96を挟んでアッドローラ52b及び現像ローラ55と転接している。
【0050】
また、現像液塗布機構90は、第1ローラ91の上方に配置された第2ローラ93を有している。第2ローラ93は、その中心に挿通された回転軸94に回動可能に支持されており、反時計回りに回転駆動する。
【0051】
なお、第1ローラ91及び第2ローラ93は、それぞれの回転軸を介して、現像液塗布機構90が有するハウジング95に軸支されている。これらのローラは同一部材に支持されている為、互いが回転してもその相対位置は変化しない。また、これらのローラは、例えば、ウレタンゴムや、シリコンゴム、或いはニトリルゴム等の弾性部材で形成されている。
【0052】
また、現像液塗布機構90は、多数の微小穴961を有した金属製(例えばニッケル)のシームレスベルト96を有している。このシームレスベルト96は、第1ローラ91と第2ローラ93に掛けられており、その一部が両ローラに面接触して所定のテンションで張られた状態で設置されている。なお、円筒型シート53aと同様に、周知の電気鋳造法を用いて製造されたものであり、所定のメッキ厚及び開口率を有している。
【0053】
シームレスベルト96は、第1ローラ91及び第2ローラ93の回転に従動して矢印Y方向に可動する。ここで、シームレスベルト96を前記の回転に従動させる為には、第1ローラ91及び第2ローラ93とシームレスベルト96との面接触領域においてある程度の摩擦力が必要とされる。従って、これらのローラを、比較的高い表面摩擦を有した弾性部材で形成することが望ましい。
【0054】
ここで、シームレスベルト96は所定のメッキ厚を有している為、各微小穴961には当該メッキ厚に応じた側壁部962が存在する。上述したように第1ローラ91及び第2ローラ93は所定のテンションでシームレスベルト96を張っている為、それらの面接触領域において、シームレスベルト96の内壁と各ローラの表面部は密着した状態にある。従って、上記面接触領域において、シームレスベルト96の外壁側には、その側面が各微小穴961の側壁部962によって囲われ且つその底面が各ローラの表面部から成る凹部が多数存在する。これらの凹部は、本実施例1の現像液収容部530と同様に、現像液塗布機構90表面側(別の言い方をするとシームレスベルト96の外壁側)のみに開放された空間であって、現像液DSを収容する空間である。以下に、これらの凹部を現像液収容部960と称する。
【0055】
計量ブレード54は、第1ローラ91表面であって、現像液収容部960が配置された部分に当接し、シームレスベルト96の外壁部に付着した現像液DSを掻き取って各現像液収容部960に収容された現像液DSのみに計量する。従って、現像液塗布機構90と現像ローラ55との転接部分手前では、当該現像液塗布機構90の表面には計量された現像液DSのみが残り、現像ローラ55にムラの無い状態で現像液DSが塗布される。
【0056】
なお、第2ローラ93の面接触領域において上述の如き計量を行うと、シームレスベルト96が可動していき当該シームレスベルト96と第2ローラ93とが非接触状態になったときに、各微小穴961に収容された現像液DSが、当該穴961から溢れて第2ローラ93表面に付着してしまうことが想定される。この為、計量を行う箇所は、上述の如く第1ローラ91の面接触領域が望ましい。
【0057】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1の湿式プリンタの構成を示した側断面図である。
【図2】本発明の実施例1の計量ローラ近傍の構成を抽出して示した図であり、当該構成をその軸方向と直交する方向に沿って切断したときの側断面図である。
【図3】本発明の実施例1の計量ローラ近傍の構成を抽出して示した図であり、当該構成を上側から観察したときの斜視図である。
【図4】本発明の実施例1の計量ローラのみを抽出して示した図である。
【図5】本発明の実施例2の湿式プリンタの構成を示した側断面図である。
【図6】本発明の実施例2の現像液塗布機構近傍の構成を抽出して示した図であり、当該構成をその軸方向と直交する方向に沿って切断したときの側断面図である。
【図7】本発明の実施例2の現像液塗布機構のみを抽出し、各ローラの軸方向と直交する方向から当該機構を観察したときの外観図である。
【符号の説明】
【0059】
50 現像ユニット
51 現像液タンク
52a ピックアップローラ
52b アッドローラ
53 計量ローラ
53a 円筒型シート
53b 回転軸
53c 弾性部材
54 計量ブレード
55 現像ローラ
56 現像ローラ用帯電コロナ
58 現像ローラ用クリーニングブレード
61 感光ドラム
62 感光ドラム用帯電コロナ
63 感光ドラム用クリーニングブレード
90 現像液塗布機構
100、100z 湿式プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液中にトナーを含んだ現像液を担持する現像液担持ローラ表面に当該現像液を均一に塗布する現像液塗布ローラにおいて、
複数の微小穴が形成された金属製の無端円筒と、
該無端円筒の中空部分に配置され、当該無端円筒の内壁全面にその表面が密着した密着部材と、を有し、
該無端円筒の外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部が配置されたこと、を特徴とする現像液塗布ローラ。
【請求項2】
前記無端円筒をニッケルで形成したこと、を特徴とする請求項1に記載の現像液塗布ローラ。
【請求項3】
前記密着部材を弾性部材で形成したこと、を特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の現像液塗布ローラ。
【請求項4】
前記弾性部材はゴム材であること、を特徴とする請求項3に記載の現像液塗布ローラ。
【請求項5】
前記ゴム材は、ウレタンゴムまたはシリコンゴム或いはニトリルゴムのいずれかであること、を特徴とする請求項4に記載の現像液塗布ローラ。
【請求項6】
キャリア液中にトナーを含んだ現像液を担持する現像液担持ローラ表面に当該現像液を均一に塗布する現像液塗布手段において、
複数の微小穴が形成された金属製の無端ベルトと、
該無端ベルトの内壁側に配置され、当該内壁の少なくとも一部にその表面が密着した密着部材と、を有し、
該無端ベルトの外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部が配置されたこと、を特徴とする現像液塗布手段。
【請求項7】
キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像を形成する湿式画像形成装置であって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、該潜像担持ローラにトナーを供給する為に現像液を担持する現像液担持ローラと、該現像液担持ローラ表面に現像液を均一に塗布する現像液塗布ローラと、を備えた湿式画像形成装置において、
該現像液塗布ローラが、
複数の微小穴が形成された金属製の無端円筒と、
該無端円筒の中空部分に配置され、当該無端円筒の内壁全面にその表面が密着した密着部材と、
該無端円筒の外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部と、を有したこと、を特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項8】
前記無端円筒の外壁部に当接し、当該外壁部に付着した現像液を掻き取って前記複数の現像液収容部に収容された現像液のみに計量する計量ブレードをさらに備えたこと、を特徴とする請求項7に記載の湿式画像形成装置。
【請求項9】
キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像を形成する湿式画像形成装置であって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、該潜像担持ローラにトナーを供給する為に現像液を担持する現像液担持ローラと、該現像液担持ローラ表面に現像液を均一に塗布する現像液塗布手段と、を備えた湿式画像形成装置において、
該現像液塗布手段が、
複数の微小穴が形成された金属製の無端ベルトと、
該無端ベルトの内壁側に配置され、当該内壁の少なくとも一部にその表面が密着した密着部材と、
該無端ベルトの外壁側のみが開放された、該複数の微小穴の各々の側壁部と該密着部材表面部とが成す空間であり、現像液を収容する為の複数の現像液収容部と、を有したこと、を特徴とする湿式画像形成装置。
【請求項10】
前記無端ベルトの外壁部であって、前記現像液収容部が配置された領域に位置する外壁部に当接し、当該外壁部に付着した現像液を掻き取って前記複数の現像液収容部に収容された現像液のみに計量する計量ブレードをさらに備えたこと、を特徴とする請求項9に記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−64816(P2006−64816A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244867(P2004−244867)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】